ぼくらのみかた
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#151 [輪廻◆j6ceQ96kak]
気になった俺は休み時間に担任を屋上に呼び出した。


『高見、どうした?』

この雰囲気、まるで刑事ドラマの最後で崖の上などで犯人を説得するシーンみたいだ。


俺は単刀直入に聞いた。


『あの、謹慎になったのって久保なんですよね?』


『え…な、何を言い出すんだ?』

…明らかに動揺してるぞ。


もうちょっと探りを入れてみるか。

⏰:11/08/11 23:57 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#152 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『謹慎って言われた学年集会の次の日から休むなんて、そんな偶然あるんですか?』


『く、久保はだな…風邪をひいて…』

いつも冷静な先生のこの取り乱し様…。


もういい加減認めればスッキリするだろうに。



『久保は俺の友達で、心配だから言ってるんです』

つい、そう言ってしまった。


いつか胸張って奴にそう言える時がくるといいけど。

⏰:11/08/12 00:04 📱:T004 🆔:xSDzl8m2


#153 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『わかった…。でも他の人には言わないで欲しい』

…やっと認めたか。


でもあいにく俺のクラスの奴らは大体、久保だって事に感づいてきてるぞ。


『実はな、久保が携帯電話のネットを通じて知り合った女の子というのは…数学の木下先生の娘さんなんだ』


…え!?

えええええええええ!?



なんだこの衝撃的な展開は…。


俺は先生から聞かされたその衝撃的な事実に、ただ口をポカーンと開けるしかなかった―



〜episode7 END〜

⏰:11/08/12 00:23 📱:T004 🆔:xSDzl8m2


#154 [輪廻◆j6ceQ96kak]
■episode8■
『高見vs木下〜人は見かけによらない〜』



…先生。


俺はどうしたらいいんだ。


久保が彼女だと名乗ったその子は中学生にして、まさかの自身の通っている学校で数学を担当している木下先生の娘だったなんて。


でもこれで久保が先生に呼び出された理由がハッキリした。


担任の話では、久保を呼び出した木下先生は…


『黙っておいてやるから退学しろ』

…と久保に言ったそうだ。

⏰:11/08/12 00:40 📱:T004 🆔:xSDzl8m2


#155 [輪廻◆j6ceQ96kak]
例の知り合った彼女が木下先生の娘だとわかった久保は、以前から担任に相談をしていた。


それを聞いた担任が校長に。


そして校長から木下先生へと確認がいき、職員会議を決行。


木下先生が、久保は退学にすべきと言い続ける中、俺の担任はすかさず久保をフォロー。


退学ではなくせめて謹慎にした方がいいという事を校長に伝えた。

⏰:11/08/12 00:46 📱:T004 🆔:xSDzl8m2


#156 [輪廻◆j6ceQ96kak]
大半の職員が担任の言うことに賛同。


木下先生もそれを認めて受け入れるしかなかったのだという。


それにしても、彼の久保に対する言い方は教師としてどうなんだ?


『黙っておくから退学しろ』なんてただの脅しではないか。


途端に怒りがこみ上げてきた俺は、木下先生と戦う事を決めた。


顔は怖いが生徒思いで優しいと思っていたのだが、それは撤回させてもらう。

⏰:11/08/12 00:54 📱:T004 🆔:xSDzl8m2


#157 [輪廻◆j6ceQ96kak]
今日の放課後にでも屋上に呼び出してやる。


休み時間にそう思っていると…


『高見〜』

久しぶりに聞いたような声がした。


ドアの方を見ると、吉田がニヤニヤしながら立っていた。


久保や木下先生の事で頭がいっぱいで、アンタの存在忘れる所だった…なんて本人に言ったらパンチをくらうな。

⏰:11/08/12 01:05 📱:T004 🆔:xSDzl8m2


#158 [輪廻◆j6ceQ96kak]
今アンタに構ってる暇はないのだが、後が怖いのですぐに彼の元へ。


『久しぶりだな、元気?』


『はあ、まあまあですかね』

意外にも普通の世間話で内心ホッとする。


『久保の野郎、残念だったわな』


『はいそうですね…って! 吉田さん知ってたんですか?』


『当たり前じゃん。俺が木下にチクったんだから』

…え。


この人、今とてつもなく重大な事をサラッと言わなかったか?

⏰:11/08/12 01:15 📱:T004 🆔:xSDzl8m2


#159 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『あのええと…どういう事ですか?』

そう聞きたくなるのは当然だ。


『そのまんまの意味だろ? ちなみに木下の娘の茜ちゃんは俺の妹の友達だから。家にもよく遊びに来るんだよな〜』

普通にケラケラ笑って言ってるが、お前は木下先生の次に最低な奴だよ。


『前に茜ちゃんが家に遊びに来た時さ、彼氏ができたって俺の妹に漏らしてた訳よ。俺それ聞いてどんな奴って聞いてみたんだよ。したら何て言ったと思う?』

…それが久保だったって訳か。

⏰:11/08/12 09:14 📱:T004 🆔:xSDzl8m2


#160 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『お前の予想通り、この高校の1年の久保太一って言いやがってさ。俺、それ聞いて爆笑しまくったわ』

…そこは笑うほどのものではない。


『久保の奴もバカだよな。会った事もない女に軽々しく通ってる学校名とか名前とか暴露しまくっちまうんだもんな』

…こいつ。


彼が年上じゃなかったら俺は今頃殴りかかっていた所だ。

⏰:11/08/12 09:23 📱:T004 🆔:xSDzl8m2


#161 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『お前もさ、そういうのには気をつけろよ〜。じゃな』

…俺は廊下に立ち尽くしていた。


まるで自分の事のように頭が真っ白になりそうだった。


あれ…


なんか息が…


苦しいな…


意識が…


飛びそう―

⏰:11/08/12 09:28 📱:T004 🆔:xSDzl8m2


#162 [輪廻◆j6ceQ96kak]
ここはどこだ?


ゆっくりと目を開ける。


…薬のにおい?


…保健室か。


どうやらあの後、気絶してしまったみたいだな。


『…目覚めた?』

まるで透き通るような綺麗な声がする方に目をやる。


保健室の美人すぎると有名な女の先生が、仰向けに寝転がっている俺の元へやってきた。

⏰:11/08/12 09:34 📱:T004 🆔:xSDzl8m2


#163 [輪廻◆j6ceQ96kak]
俺はこの高校に入ってから保健室には一度もきた事がない為、どんな先生なのかわからなかった。


今初めて知った。


確かに美人だ。


年齢は20代後半くらい。

細いモデル体型に、薄くも濃くもない化粧。


そして触るとぷるんとしそうな唇には綺麗なピンク色の口紅が上品に塗られている。


一見、先生には見えない。


白衣を着ていなければ、この学校の生徒だと勘違いしてしまいそうだ。

⏰:11/08/12 09:43 📱:T004 🆔:xSDzl8m2


#164 [輪廻◆j6ceQ96kak]
当然だけど、俺はその先生を前にして緊張してしまった。


『…あなた過呼吸になったのよ。覚えてる?』

確かに気絶する前に呼吸が激しくなって息をするのがすごい苦しかったな。


…恥ずかしい。

廊下のど真ん中でぶっ倒れたなんて。


『高見くんだっけ…あなた、もしかして恋でもしてるんじゃないの?』

おい、なぜいきなりそんな事を聞く。


しかも的中してるし。


あなたは人の心の中を読む事ができる能力でも持っているのか?

⏰:11/08/12 09:52 📱:T004 🆔:xSDzl8m2


#165 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『恋をするのは悪い事じゃないのよ。むしろ素敵な事』

いや確かにそうだけどさ、今は別にそんな話してる時ではないだろう。


『で…誰なの?』

…はい?


まだ恋をしてるなんて一言も言ってないのに、なぜ恋してる前提で聞いてくる。


…それに言う訳ないだろう。

⏰:11/08/12 09:59 📱:T004 🆔:xSDzl8m2


#166 [輪廻◆j6ceQ96kak]
吉田みたいに誰かに言いふらされたりしたらたまらないからな。


『い、いませんから』

どうせ願いが叶う訳がない恋だし、ここは自信を持って否定しよう。


『ふふふ…可愛い』

え、なんだいきなり。

この意味ありげな微笑みは一体…。


『君のこれからが楽しみになってきちゃった。頑張ってね』

…何を頑張れと言うんだ?


先生はそれ以上何も言わなかった。

⏰:11/08/12 10:08 📱:T004 🆔:xSDzl8m2


#167 [輪廻◆j6ceQ96kak]
だいぶ体調がよくなった俺は、その保健室の居心地の悪さもあり、さっさと教室に戻る事にした。


俺の教室では丁度、数学の授業が行われていた。


チャイムが鳴ったらすぐ木下先生の元へ向かおう。


放課後にしようかと思っていたが、今はなぜか頭が冴えている。


さっきの保健室の先生のおかげかもしれない。


今ならなんでも面と向かって言えるような気がする。

⏰:11/08/12 10:14 📱:T004 🆔:xSDzl8m2


#168 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『そこ! 何くっちゃべってる!』

突然した先生の怒鳴り声に、辺りは驚きの顔をした。


この木下先生が大声を張り上げる所なんて初めて見たからだろう。


『上野! 倉野! お前らだ! ちょっと放課後残りなさいよ!』

…まさか名指しまでするなんて、この先生まるで人が変わったようだ。

⏰:11/08/12 10:30 📱:T004 🆔:xSDzl8m2


#169 [輪廻◆j6ceQ96kak]
上野と倉野はよく数学の授業中に話をしているが、それは今に始まった事ではない。


なぜ今になって注意を始めた?


そしてなぜ今まで注意しなかった?


どうやら、久保の件でイライラしているらしいな。


でもそれで生徒に当たるのはどうなんだろう。


喋ってる二人も悪いけどさ、今まで注意しなかった先生も先生だろ。

⏰:11/08/12 10:34 📱:T004 🆔:xSDzl8m2


#170 [輪廻◆j6ceQ96kak]
それから皆、緊迫したムードの中で授業を受けた。


先生が背を向けて黒板に書くと、今までは携帯電話を開く奴らがいたが、さっきの事があったせいか珍しく誰も携帯電話をいじっていない。


これはこれでよかったのかもしれないが、先生の態度は許せない。


『人は見かけによらない』ってこういう事を言うのか。


いや、元々顔が怖いからこういう場合は『人は見かけによる時もある』が正しいのか?

⏰:11/08/12 10:39 📱:T004 🆔:xSDzl8m2


#171 [輪廻◆j6ceQ96kak]
やけに長く感じた数学の授業も、鳴ったチャイムによって終わった。


木下先生が教室を後にしてから、皆さっきの事を色々と言い始める。


『意外だよね〜』


『びっくりした』

…などの会話。


俺はすぐに席を立って、職員室へ向かう先生に近づいていった。

⏰:11/08/12 10:54 📱:T004 🆔:xSDzl8m2


#172 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『先生、ちょっといいですか?』

ついに話しかけてしまった。


…だが後悔はしてない。


先生はすぐに俺の声に気がついて振り返った。


『…何か用かね』


『あの…久保の事ですけど』


『…来なさい』

ここでは分が悪いと判断したらしい。


先生の後に黙って着いて行くと、なぜかトイレにたどり着いた。

⏰:11/08/13 01:39 📱:T004 🆔:wGsNjQTg


#173 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『それで…久保がどうしたというのかね』

入るなり先生は俺に背を向けて切り出した。


『先生の娘さんと知り合ったっていう久保に、退学しろって言ったそうですね』


『それがどうした?』

生徒に確信を迫られたっていうのに全く動揺するそぶりは見せない。


それどころか、大きな自信に満ち溢れている。

⏰:11/08/13 23:25 📱:T004 🆔:wGsNjQTg


#174 [輪廻◆j6ceQ96kak]
肝が据わっているというのだろうか。


こんな態度でよく教師をしているものだ。


俺は拳を震わせて強気な態度で攻めた。


『久保が先生の娘と付き合ってるからって別に退学に追い込もうとする必要はないんじゃないですか?』


『…君も父親になればわかる。ワタシの娘…茜はまだ中学生だぞ。まだ未熟な娘が知らん男に言い寄られ、強引に交際を迫るなんぞもってのほかではないかね』

…言い分はわかる。

が、先生は勘違いをしている。

⏰:11/08/13 23:42 📱:T004 🆔:wGsNjQTg


#175 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『ちょっと待ってくださいよ。久保はそんな簡単に交際を迫ったり言い寄ったりするような奴じゃありません』

それはなにより俺が知っている。


この先生はどうやら自分の娘の事を棚にあげて久保に責任を全部負わせようとしているようだ。


『しかしC組の吉田くんが教えてくれたのだよ。久保はそういう奴だと』

吉田の奴、久保の事何も知らない癖にそんな事を…。

⏰:11/08/13 23:58 📱:T004 🆔:wGsNjQTg


#176 [輪廻◆j6ceQ96kak]
何か方法を考えろ。


久保だけに問題があると思っている先生の考えをぶち壊す方法を…。



…………あった。


自分でもびっくりするくらい意外にもすぐに思い浮かんだ。


保健室の先生にますます感謝だ。


頭が妙に冴えている。

⏰:11/08/14 00:03 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


#177 [輪廻◆j6ceQ96kak]
でも今は言えないな。


先生を追い詰めるには今日の放課後、久保の家に言って証拠を貰ってくるしかない。


勝負の決着は明日つけてやる。


『言いたい事はもうないようだね。次の授業の準備があるから失礼するよ』

…と、俺の肩をポンと叩いて出て行った。


言いたい事は明日全部言ってやるよ。


それまで先生も、うまい言い訳を考えておく事だな。


俺はその場でニヤリと笑いながらのガッツポーズをとったのだった―



〜episode8 END〜

⏰:11/08/14 00:18 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


#178 [輪廻◆j6ceQ96kak]
■episode9■
『勝利の女神』



木下先生との勝負を明日に控え、俺はニヤけながら授業を受けていた。


でもそのニヤけ顔にストップをかけたのは、帰りの号令の時に先生が言った衝撃的な言葉だった。


『みんな落ち着いて聞いて欲しい。さっき久保の両親から電話があって、久保が…自殺未遂をしたと…』

それを聞いた皆は一瞬だけ静まり、そしてすぐに大騒ぎした。


…久保が自殺未遂?


俺は確認するようにそう思った次の瞬間、廊下まで普通に聞こえる悲鳴のような大声を張り上げた。

⏰:11/08/14 00:34 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


#179 [輪廻◆j6ceQ96kak]
もちろんそれから教室内は大混乱の渦。


担任が『静かに!』と叫ぶように連呼しても、当然だけどこればっかりには一向に収まる気配はなかった。


騒ぎを聞きつけた他のクラスの奴らも、野次馬のように俺達の教室内を廊下から見物していた。


…無理もない。


これで、木下先生の娘である女子中学生と知り合い交際し、謹慎処分を受けたのが久保である事がほぼ知れ渡る事になるだろう。

⏰:11/08/14 00:46 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


#180 [輪廻◆j6ceQ96kak]
久保がそんな事をするなんて…。

それもこれも全て木下先生、アンタのせいだ。


教師が生徒を自殺未遂に追い込んだなんて知られたら大問題になる。


例の女子中学生が木下先生の娘だって事はまだ知られていないみたいだ。


その事実を知っているのは俺の知る限りじゃあ、俺と担任と久保と吉田の四人。


吉田の性格上、この騒ぎを知ったら嬉しそうにその事実をぶちまけるに違いないだろう。


そうすれば久保の自殺未遂は木下先生が原因である事が自然と立証される。

⏰:11/08/14 01:00 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


#181 [輪廻◆j6ceQ96kak]
それで先生に処分が下されれば嬉しい所だ。


時限爆弾がいつ爆発するか…少し楽しみになってきた。



すでに下校時間が過ぎた。


だが教室内にはまだほとんどの人が残っていて久保の話題で持ちきり状態。


俺は、しどろもどろになっている担任の元へ向かった。


『あの、久保の事…心配なので様子見に行ってきてもいいですか?』


『あ、ああ…。今は3条通りにある病院にいるから行ってあげてくれ…』

⏰:11/08/14 01:15 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


#182 [輪廻◆j6ceQ96kak]
俺がすぐに向かおうと廊下へ出ようとすると…


『高見くん…』

後ろからした声に振り返ると、雪乃ちゃんが不安そうな表情で立っていた。


『私も行っていいかな』


『うん、行こう』

そう言った時、俺は反射的に彼女の手をひいて走り出していた。


とにかく久保の事が心配で仕方がなかった。

⏰:11/08/14 01:27 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


#183 [輪廻◆j6ceQ96kak]
学校から10分ほど走った所で、久保が搬送された病院に到着した。


受付で病室の番号を聞き、2階の203号室へと急ぐ。


『久保太一 様』

と名前の書かれたプレートがついた部屋をコンコンとノックすると、しばらくしてから母親が出てきた。


『あの、久保と同じクラスの高見といいます』


『私も久保くんと同じクラスの松下雪乃です』

俺達が名前を言うと久保の母親は無言で、部屋に入るよう誘導した。

⏰:11/08/14 02:07 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


#184 [輪廻◆j6ceQ96kak]
病室の奥に向かうとベッドに仰向けの状態で、頭に包帯が巻かれた久保の姿があった。


『久保くん…』

雪乃ちゃんがものすごい心配そうに呟く。


少しの沈黙の後、ずっと無言だった久保の母親がやっと口を開いた。


『来てくれてありがとう。太一、さっきまで目は覚めてたのよ。でも…』


…でも?

俺は母親のその言葉がとてつもなくひっかかった。


だが、それ以上は下を向いたままで何も言う事はなく時間だけが静かに過ぎていった…。

⏰:11/08/14 02:18 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


#185 [輪廻◆j6ceQ96kak]
久保…


目を開けてくれよ…


どうしちゃったんだ…?


寝たフリでもしてるのかよ?


お前はそんなキャラじゃないだろ?


心の中で久保に問いかけるように言い続けた―


『太一!』

俺と雪乃ちゃんがずっと下を向いていた時、母親の突然出した大きな声でハッとしてから久保の方を見た。

⏰:11/08/14 02:28 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


#186 [輪廻◆j6ceQ96kak]
奴は…うっすらとだけど目を開けていた。


視線は天井を見ていたが、やがて俺達に気がついたのか視線をゆっくりと天井から俺、そして雪乃ちゃんへと順に追うように見てきた。


『久保!』


『久保くん!』

俺達は座っていた椅子から同時に立ち上がった。


『久保! よかったぁ…』

こういう場合は奴の手を両手で握りしめながら言うべきなのだろうけど、どうも照れくさくてできなかった。

⏰:11/08/14 02:39 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


#187 [輪廻◆j6ceQ96kak]
とりあえず一安心だ。


さっき母親が『でも…』と言っていたから、まさかの最悪な展開になるかと思っていた。


目を覚めたのはいいけど、久保は視線を再び天井に戻し一言も喋りかけてはくれなかったので俺達は母親に頭を下げてから帰った。


明日くらいになれば口を利けるようになるだろう。


部屋を去る際に久保に『また明日来るから』と伝えて帰宅した。

⏰:11/08/14 14:39 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


#188 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『久保くん、よかったね』


帰り道で雪乃ちゃんが聞いてきた。

そう言って見せる微笑みは、まるで無理して作っているようだった。


俺に悲しい顔とか暗い顔を見せたくなくて無理に笑っているんだろう。


『…許せない』


『えっ?』

俺が小さい声でポツリと言った言葉に、彼女はすぐに反応した。

⏰:11/08/14 14:46 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


#189 [輪廻◆j6ceQ96kak]
彼女には言っておいた方がいいのかもしれない。


俺は久保の自殺未遂の原因と思われる事を全て話した。


彼女は始めは驚いていたが、最後には納得したような表情を見せて言った。


『木下先生ってそんな人じゃないって思ってたのにな…』


『雪乃ちゃん…俺の言う事信じてくれるの?』

普通であれば『先生はそんな人じゃない』など真っ向から否定すると思っていたが、彼女は違った。

⏰:11/08/14 14:56 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


#190 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『当たり前じゃない。だって高見くんは人を傷つける嘘をつくような人じゃないでしょ?』

…なんて純粋なのだろう。


俺は彼女の言葉に思わず涙が出そうになった。


もちろん、なんとか横と上をを向いたりしてごまかしたが。



『じゃあまた明日ね』

そう言って真っ赤で綺麗な夕日を背に手を振る彼女はやはり天使…


いや、その時は女神に見えた。

⏰:11/08/14 15:04 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


#191 [輪廻◆j6ceQ96kak]
俺はその夕日に向かって


『雪乃ちゃん好きだー!』

と叫びたくなった。


…当然できなかったが。



こういうのが青春というのかとほのぼのと感じていた俺は、その時は全く知るよしもなかった。


病室で久保の母親が言っていた…


『でも…』

その言葉の本当の意味を―



〜episode9 END〜

⏰:11/08/14 15:13 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


#192 [輪廻◆j6ceQ96kak]
■Last episode■
『桜、舞う頃』(前編)



翌日―


学校では昨日の久保の話題がまだまだ続いていた。


俺が席に着くと同時に、クラスの奴らが次々と俺の周りに集まってきた。


『高見! 久保のいる病院行ってきたんだって?』


『久保どうだったの?』

次々と投げかけられる質問。


まるでマスコミの格好の餌食にされているような気分だ。


誰か一人カメラを手にしててもおかしくないくらいに。

⏰:11/08/14 15:28 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


#193 [輪廻◆j6ceQ96kak]
俺が仕方なく答えていこうとした時…


『皆、久保くんの事面白がってるんでしょ?』

そんな言葉が聞こえて後ろを見ると、雪乃ちゃんが険しい表情でクラスの奴らを見ていた。


『ゆ、雪乃ちゃん…』

彼女の強気な顔なんて初めて見た気がする。


おとなしい人ほど怒ると怖いというのはこの事か。

⏰:11/08/14 15:46 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


#194 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『そんなんじゃないよ。俺達は久保が心配で…』

一人の男子がそう言うと、雪乃ちゃんはますます険しい表情になった。


そして言い放った…


『心配ならなんでお見舞いとか行かなかったの?』

もっともだ。


俺は心の中で彼女を応援した。


彼女の言った言葉でクラスの皆は黙り込み、教室は異様な雰囲気に包まれる。

⏰:11/08/14 15:56 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


#195 [輪廻◆j6ceQ96kak]
しばらくその状態が続いてから、鳴ったチャイムによって皆は黙ったまま席に着いた。


雪乃ちゃん…俺は君を見くびっていた。


このクラスで最強なのは野村だと思ってたけど、君もある意味最強だ。


これじゃあ吉田とも気が合う訳だと納得した時であった。


『じゃあ号令』

担任がいつものように言う。


しかし日直は黙ったままで『起立』という言葉を発さない。

⏰:11/08/14 19:14 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


#196 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『今日の日直…市川と斉藤。どうした?』


『…………』

なんだ果てしなくこの気まずい雰囲気は。


二人共…このまま黙ってたら真面目な先生だってキレるぞ多分。


しかし先生は皆の気持ちを悟ったように小さくため息をついてからこう言った…


『皆、久保が心配なんだな?』

この一言に、皆は無言で頷いた。

⏰:11/08/14 20:02 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


#197 [輪廻◆j6ceQ96kak]
その反応に、ちょっと調子がいいなと思う。


おそらく雪乃ちゃんも俺と同じ考えだろう。


『時間がある人は学校が終わってからでも見舞いに行ってあげて欲しい…では日直』


『起立』

この中で俺と雪乃ちゃん以外で本当に心配に思っててお見舞いに行きたがる奴はいるのだろうか。


でも行ったら行ったで、久保に対して好奇心からの質問が飛び交うのは目に見えている。

⏰:11/08/14 20:23 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


#198 [輪廻◆j6ceQ96kak]
俺は、久保の友達としてそれは許せない。


お見舞いは代表を二人か三人くらい決めて行くくらいがちょうどいいだろう。


起立から着席し、俺は手を上げた。


『先生!』


『高見、どうした?』


『お見舞いは何人か代表を決めて行く方がいいと思うんですけど』

俺の提案に、隣に座っている雪乃ちゃんがうんうんと何度も首を縦に振って頷いた。

⏰:11/08/14 20:32 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


#199 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『ああ…確かに高見の言うとおりだな。では今日の放課後、久保の見舞いに行ってくれる人は手を挙げて欲しい』

俺と雪乃ちゃんがすぐに手を挙げた。


周りを見ると、もう一人だけ挙手している女子がいる。


『よし、じゃあ高見と松下と野村。頼んだぞ』

…野村可奈恵か。


一応は雪乃ちゃんの友達だし、彼女なら面白がったりはしないだろう。

⏰:11/08/15 09:03 📱:T004 🆔:VtncYM9w


#200 [輪廻◆j6ceQ96kak]
休み時間―


『高見、雪乃…アンタらは偉いよ』

そう言いながら近づいてきたのは今日、久保のお見舞いに一緒に行く野村可奈恵だ。


ちょっと今の言い方はおばさんくさかった…なんて言えないな。


『カナが手挙げるなんて思ってなかったよ』

隣で雪乃ちゃんが微笑みながら軽々しく言った。


…怖いもの知らずなのか。

俺は一瞬ヒヤっとしたが、野村は雪乃ちゃんと同等の笑みを浮かべた。

⏰:11/08/15 09:15 📱:T004 🆔:VtncYM9w


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