ぼくらのみかた
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#101 [輪廻◆j6ceQ96kak]
不良もタチが悪いが、その不良に更にオマケがついている事が何より嫌だ。


そう、久保というオマケが。


もうこれは辞めるしかないのだろうか。


ドラマなどでは主人公がそういう事に勇気を持って立ち向かうものが多いが、そんな主人公のような奴は俺の知る限り現実にはそういないだろう。


この学校にはまずいないだろうな。


それは、何円賭けてもいい…それくらい自信持って断言できるぞ。

⏰:11/08/10 13:30 📱:T004 🆔:MB0qIJlY


#102 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『はい、どうぞ』


『サンキュー! あ、お前今日放課後時間空けとけよ』

…とほほ。


今度は何をさせるのだろうと、これから授業を受けるのも憂鬱になる。


『吉田さん、コーラご馳走さんです』

おい、久保。


金払ったのは俺だぞ。


礼を言うなら俺にだろ、俺に。

⏰:11/08/10 13:41 📱:T004 🆔:MB0qIJlY


#103 [輪廻◆j6ceQ96kak]
まあ人の顔色ばかり伺ってベタベタ張り付いてるお前なんかよりは、俺のがマシかな。


そう思う事にした。


それからの授業はなぜか時間の経過が早く感じた。


時計のやつ、こんな時だけ早く進みやがって。


ただでさえ吉田に何を付き合わされるのかビクビクしてるってのに。


運命のチャイムが鳴り響き、早くも帰りの号令。

⏰:11/08/10 13:47 📱:T004 🆔:MB0qIJlY


#104 [輪廻◆j6ceQ96kak]
久保が、礼を終えると同時に鞄を持って駆け足で廊下へ出ていった。


行く先はわかりきっている。


できればこのまま帰りたい。


早く帰ってニンテンドー3DSをやりたいんだよ俺は。


不良なんかに付き合ってる暇なんてないのだ。


そう思ってるそばから…


『高見ちゃん〜』

吉田の1オクターブ高い声が背後からした。

⏰:11/08/11 00:00 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#105 [輪廻◆j6ceQ96kak]
振り返ると予想通り久保が吉田の隣にいた。


『早く来いよ』

吉田がそう言うと、久保も続いて


『高見。吉田さんが待ってんだから早く来いよ!』

…お前、いつか覚えてろよ。


吉田と一緒にいると、途端に調子に乗りやがって。


こういう奴は将来ロクな大人にならないだろう。

⏰:11/08/11 00:08 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#106 [輪廻◆j6ceQ96kak]
仕方なく、しぶしぶ二人の元にきてやった。


『よおし、じゃあ荷物持ちジャンケン。負けた奴は俺の家まで荷物持ちな』

…小学生かよアンタは。


まあいい、それくらいなら軽いもんだ。


廊下のど真ん中で三人一斉にジャンケンした。


吉田はパー。

久保はチョキ。

そして俺もチョキ。


…まさかの勝ちだ。

⏰:11/08/11 00:17 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#107 [輪廻◆j6ceQ96kak]
言い出しっぺが負けるとは、かなりの恥だろう。


とりあえず安心と思っていたのだが…。


『悪ィ悪ィ! 今の練習って言うの忘れてたわ』

…なんだそりゃ。


どう考えても自分が負けた事に納得できない事の言い訳だろう。


『ってな訳で本番行くぜ、本番』

卑怯だ、卑怯すぎる。


これでまた負けたら、これも練習だったなんて言うんだろどうせ。

⏰:11/08/11 00:23 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#108 [輪廻◆j6ceQ96kak]
アンタ見た目は大人びいてるが、中身は子供だろ。


見た目は大人、頭脳は子供って訳か。


…似たようなフレーズをどこかで聞いた事がある気がする。


『よし、ジャンケンしょいっ!』

再度のジャンケンの結果は…


俺はグー。

吉田もグー。

そして久保はチョキ。


残念だったな、久保。


これは本番なのだ。


でも自分の荷物は自分も持つのが安全だから、お前には持たせないでおいてやる。

⏰:11/08/11 00:31 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#109 [輪廻◆j6ceQ96kak]
俺が心の中でガッツポーズをしていると、吉田がまさかの発言をした。


『今のは久保の練習だな。ちゃんと練習って言わねえとダメだぞ?』


『すみません吉田さん!』


…は?


まるで久保をフォローするかのような発言。


吉田の次は久保の練習?


って事は、次は俺の練習って事になる訳か?


もう意味わからないぞ。

⏰:11/08/11 00:38 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#110 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『じゃあ次こそ本番な』

おいおい、アンタさっき言った自分の言葉忘れたのか?


これってもしかしてもしかすると、俺が負けるまで続けるパターンか?


こいつらならやりかねないだろう。


なら意地でも負ける訳にはいかないな。


『ジャンケンしょいっ!』

人が少なくなった廊下に吉田の掛け声だけが響く。


『どうもうまくいかねえなぁ…』

おい、ちょい待ち。


今の発言は矛盾しているぞ吉田。

⏰:11/08/11 00:47 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#111 [輪廻◆j6ceQ96kak]
このジャンケンってうまくいったとかいかないの問題じゃないだろ。


アンタが言った通り荷物持ちを一人決めるジャンケンだぞ。


普通なら相子が出ない限り一回で済むジャンケンを、何回やるんだよ。


吉田か久保が負けると、練習だとか言いがかりをつけて再びやるとか。


それなら素直に、俺に荷物を持ってくれと言ってくれた方がスッキリする。

⏰:11/08/11 00:52 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#112 [輪廻◆j6ceQ96kak]
もう俺が負けるまでジャンケンを続けるくらいなら自分から荷物持ちを立候補してやるよ。


『あの、俺が持ちますよ』

どうせ俺がそう言うのを待っていたんだろうさ。


『え、マジで? お前って人がいい奴だな!』

…なんか一言というか一文字多い気がする。


俺は吉田、久保の鞄を肩にかけて三人で学校を後にした。


卑怯なジャンケンで思わぬ時間を無駄にしてしまった。


荷物持ちは吉田の家までという事だが、その肝心の家はどこにあるのだろう。

⏰:11/08/11 01:01 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#113 [輪廻◆j6ceQ96kak]
なるべく近い所にあってくれと願いながら、吉田と久保の後ろを歩く。


5分…10分…15分…20分。


一体どこまで歩くつもりだ。


そろそろ鞄の重さで体力に限界がきていた。


…息切れしそうだ。


俺の激しい息づかいに気がついたのか、吉田が振り返って俺の方を見た。

⏰:11/08/11 01:07 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#114 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『高見、ファイトだ!』

その言葉自体は嬉しいのだが、その一方でバカにしたような目をしているのは気のせいだろうか。


『久保も応援してやれ!』


『はい吉田さん!』

こいつら…絶対俺の事見下してるだろ。


『高見、ファイト一発!』

…もうツッコミを入れる気も起きない。

⏰:11/08/11 01:12 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#115 [輪廻◆j6ceQ96kak]
更に5分…10分…15分くらい歩いた所で、吉田がマンションの前で足を止めた。


やっと着いたらしい。


吉田の住んでいると思われるそのマンションは、軽く10階以上はありそうだ。



『高見、俺の部屋まであと少しだ』

…え?


もうここで終わりなんじゃないの?


まさか部屋まで運べと?


『あの、吉田さんの部屋は何階ですか?』


『13階。んじゃ後は頼んだ。俺はこれから雪乃と制服デートだから』


…そんな無責任な。

⏰:11/08/11 01:25 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#116 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『あ、そうそう。俺のが終わったら久保の荷物も家まで運んでやれよ』

…何様ですかアンタは。


それにしても、久保の家は全くの逆方向ではないか。


ここから向かうとなると、普通に20分以上はかかる。


しかもこいつと二人きりだなんて気まずすぎる。

⏰:11/08/11 01:29 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#117 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『じゃあまた明日な〜』

そう言って手を振ると、やがて街中へと消えていった。


明日なんて来なければいいのに。


吉田がいなくなってからシーンとなり始める。


俺は奴と目を合わさずに吉田のマンションの部屋に荷物を置きにいった。


彼の母親は申し訳なさそうに俺にペコペコと謝った。


それから久保の一歩前を歩いて、早足で奴の家へと向かった。

⏰:11/08/11 01:39 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#118 [輪廻◆j6ceQ96kak]
まったく。


吉田がいなくなった途端、拾った犬みたいにおとなしくなりやがって。


20分ほど歩いて奴の家の前にきた。


『ここでいいだろ』

持っていた奴の荷物を地面に乱暴に叩きつけてやった。


俺はすぐに退散したくて奴に背を向けて帰ろうとした。


だが…

俺の後ろで奴はポツリと言った。


『高見、俺を助けてくれ』

…え?

今何と?

⏰:11/08/11 10:26 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#119 [輪廻◆j6ceQ96kak]
一瞬聞き間違いをしたかと思ったが、確かに奴は言ったな。


助けてくれ?


…馬鹿か?


もう俺とお前は助け合うなんて義理はないんだよ。


しかし何を助けてほしいのか気になりもしていた。


『なんだよ』

奴に背を向けたまま言ってみた。

⏰:11/08/11 10:30 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#120 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『高見、今まで悪かった』

え、今更何ですか?


それも何かの作戦の内ですか?


『馬鹿じゃねーの? 何考えてんのか知らんけど、その手には乗らねーよ』

さすがに頭に来た俺はそう言い放って、走ってその場を後にした。


悪いけど俺はそこまでお人好しじゃないんでね。


その後奴がどういう表情で家に戻っていったのかはわからない。


どうせあざ笑っているんだろうと俺は勝手に解釈したが。

⏰:11/08/11 10:38 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#121 [輪廻◆j6ceQ96kak]
次の日。


次は何をされるのだろうと憂鬱に思いながらも登校した。


久保…奴は席にポツンと座っていた。


何を考えているのか全くわからないオーラが出ている。


『高見くん、おはよ』

あれから隣の雪乃ちゃんに話しかけられるとビクッとする。


そして辺りに吉田の気配がないか気になって仕方がない。


まさに挙動不審だ。

⏰:11/08/11 10:50 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#122 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『高見くん。そういえばさ、私があげたストラップちゃんと持っててくれてる?』


『げっ!』

思わず声をあげてしまった。


雪乃ちゃん…そんなわかりきった質問を俺に聞くのはNGだろう。


当然吉田から聞いているであろうし。


わざとそういう質問をして俺が持ってると答えると『おかしいな〜』とか言い出すんだろ?


この子もある意味吉田に似ているじゃないか。


おとなしい分、彼女の方が数倍マシだが。

⏰:11/08/11 10:56 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#123 [輪廻◆j6ceQ96kak]
ここは直接言ってやるか。


『あ〜あれね。そういう自分がよくわかってるんじゃないの?』


『…ん?』

この女…まだとぼけるつもりか?


強く言い過ぎて泣かれたりすると後から吉田に呼び出されるだろうから、ここからはやんわりといこう。

⏰:11/08/11 11:04 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#124 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『吉田さんから聞いてるんでしょ?』


『吉田って…優斗くんのこと?』

いや、下の名前は聞いた事ないからわからないが間違いはないだろう。


『…そう。俺がその…吉田さんにストラップ取られた事、聞いてるんでしょ?』


『え、もしかしてあれ優斗くんに取られちゃったの?』

彼氏とはいえ年上を君付けで呼ぶとは…。


それにしても、さすがにとぼけすぎだろう。

⏰:11/08/11 11:15 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#125 [輪廻◆j6ceQ96kak]
ここいらで白状すればいいものを、どこまでしらを切るつもりだ。


『え、なんで取られちゃったの?』

…まだ言うかこの女。


俺のあの情けない出来事を俺自身の口から話せと?


そろそろ限界だ。


頭の血管がブチっと切れそうだ。


『わかってる事、今更聞いてくんじゃねーよ!』

よせばいいのについ声を荒げ、しかも女の子相手にキツく言ってしまった。

⏰:11/08/11 11:23 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#126 [輪廻◆j6ceQ96kak]
俺の声を聞いてか、彼女の友達の女子などが周りに集まってきた。


果てしなく嫌な予感…。

そして額からコメカミにかけて、朝から尋常じゃないほど大量の冷や汗。


『雪乃、どうしたの?』

下を向いてうつむく彼女に心配そうに話しかける友達。


…まずい。

これはまずい。

⏰:11/08/11 11:30 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#127 [輪廻◆j6ceQ96kak]
今すぐこの場から逃げたい。


だが足が震えて動かない。



『ねえ、高見。アンタ雪乃に何した?』

…出た。

クラスの気が強い女子トップ5に入る野村可奈恵。


この女はおそらく、吉田に対抗できる唯一の存在だと俺は思う。

⏰:11/08/11 11:35 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#128 [輪廻◆j6ceQ96kak]
女子達の視線が俺が集中した。


『え…ええと…』

…言葉が全く出てこない。


かつてフォローしてくれたりストラップをくれたりした彼女にいつかお礼をしたいと思っていたのだが、それをまさかアダで返す事になるなんて。


『ちょっと聞いてんの?』

野村のこの視線とプレッシャーにビクビクする俺。


もう終わったと思ったその時だった―

⏰:11/08/11 11:43 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#129 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『高見は…悪くない』

俺達は突然したその声の元を視線でたどった。


視線が行き着いた先には久保がいた。


…まさか正義の味方気取りで綺麗事でも言ってポイントを稼ごうという気か?


…いや、こいつはそういうキャラではないか。


それは俺がよく知っている。

⏰:11/08/11 11:50 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#130 [輪廻◆j6ceQ96kak]
野村が俺に背を向けて久保の元へ向かった。


『どういう事?』


『高見は、松下さんと吉田さんが付き合ってるなんて知らなかったんだよ』


『は? それ何の話してんの?』

容赦なく野村が言う。


久保の奴…どういうつもりだ?


作戦のようにも見えるが、何かの作戦だったら奴の性格上こんな大勢の前で直接言ったりはしないだろう。

⏰:11/08/11 11:57 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#131 [輪廻◆j6ceQ96kak]
>>128 訂正
俺が集中した ×
俺に集中した ○

――――――――――


まさか本心で俺をかばう気なのか?


昨日も、突然助けてくれだなんて言い出すし…

奴は本当に改心するつもりなのか?


いいや、まだわからないぞ。


俺は半信半疑な気持ちで久保を見ていた。

⏰:11/08/11 12:03 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#132 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『松下さん、高見を許してやってくれよ』


…なに!?

こいつが人の為に、人に頭を下げている?



まさか本当の本当の本当に…本気なのか?


俺の事で雪乃ちゃんに深く頭を下げる久保を見て、奴に対して抱いていた疑心が薄れていきそうになった。

⏰:11/08/11 12:16 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#133 [輪廻◆j6ceQ96kak]
野村も含む女子達は久保の姿を見て黙ってしまった。


その時、チャイムが鳴った。


それを聞いて慌てて席に戻る皆。


担任がやってきて朝の号令をした後に、先生が久保に視線をやった。


『久保…数学の木下先生がな、放課後残ってくれと君に伝えてくれって』

…先生がそう言うと


『お前なんかしたの?』


『まさかの補習?』

と、男子が寄ってたかって久保をからかうように言った。

⏰:11/08/11 12:29 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#134 [輪廻◆j6ceQ96kak]
成績に関しての呼び出しか、先生と二人きりの教室で補習を受けるのも嫌だが、久保のあの後に起きる出来事と俺らが知らされる事実に比べれば補習なんてまだ可愛いものだと思った。


俺の席は久保の後ろで離れているので表情はわからないが、ふと見ると体が小刻みに震えているような気がした。


そんなに補習が嫌なのだろうか、とその時は気にも止めなかった。


休み時間も久保はずっと席に座ったまま動かない。


この状態が下校時間までずっと続いていた。

⏰:11/08/11 12:41 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#135 [輪廻◆j6ceQ96kak]
以前の俺だったら、奴に頑張れと声をかけて肩をポンポンと叩いていたかもしれない。


久しぶりにそれをやってやろうかと思ったが、さすがにあの後じゃな。


皆が続々と下校していく。


俺は久保が一人教室の椅子に座っているのを見送ってから下校した。


心の中で『頑張れ』と言ってから。


翌日、一難去ってまた一難という言葉が思い浮かぶほどの、久保の事が原因で事態が急展開されるなんて俺を含むクラスの奴ら…いや、ここの全校生徒の皆が想像なんてしていないだろう―



〜episode6 END〜

⏰:11/08/11 12:55 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#136 [輪廻◆j6ceQ96kak]
■episode7■
『昨日の敵は明日の味方』



次の日、久保の事が気になって早めに学校へと登校した。


しかしまだ奴は来ていない。


昨日は、普段呼び出したりしない数学の木下先生に久保がどんな事で呼び出されたのか気になって仕方がなかった。


それともう一つ。

昨日の雪乃ちゃんの件だ。


もし彼女が吉田に伝えていたら…俺は彼にどんな目に合わされるのか。

⏰:11/08/11 13:19 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#137 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『おはよ、高見くん』


『うわっ!』

噂をすれば影が立つとはこの事かと思うほどよいタイミングで登校してきた雪乃ちゃんが後ろから話しかけてきた。


『あ、あのさ…昨日はその…ごめん』

昨日謝ろうとして言えなかった謝罪の言葉を今日、今ここで頭を下げて伝えた。


『大丈夫。気にしてないし、もういいよ』

…君は天使か?

満面の笑みを浮かべてそう言う彼女の顔はまさに天使だ。

⏰:11/08/11 13:27 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#138 [輪廻◆j6ceQ96kak]
やばい。

やっぱり俺は君の事が…


いやいや、でもダメだ。


彼女には吉田というれっきとした彼氏がいるのだ。


吉田みたいな奴と取り合う気もない。


どうせパンチが飛んでくるのはわかりきっている。


でも、せめて番号とアドレスくらいは知りたいぞちくしょう。

⏰:11/08/11 21:31 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#139 [輪廻◆j6ceQ96kak]
いや、それも無理だな。


吉田はああ見えて意外と束縛が激しそうだ。


彼女の携帯電話をチェックして、俺のデータが入っているのを見つけた時点で俺の人生は終わったも同然。


…諦めるしかないか。


そうこう思っている間に教室にはほとんどの奴らが登校してきていた。


その中に久保もいた。


昨日と同じく席に携帯電話もいじらずに座っている。


あの様子じゃ、もしかして昨日は木下先生にこっぴどく怒られたのではないだろうか。


見た目は怖そうな先生だけど怒った所は見た事がないからそういう姿は想像できないが。

⏰:11/08/11 21:54 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#140 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『ちょっと皆、聞いてほしい!』

チャイムが鳴る10分前に、担任が急ぎ足で駆け込んできて言った。


皆は、なんだなんだという顔で担任を凝視。


『この後、体育館で1年生だけの学年集会を開くらしいから準備してくれ』

教室内は担任のその一言でざわめき始めた。


誰かが何かをやらかしたのかもしれないな。


例えば煙草を吸っただとか飲酒しただとか。

⏰:11/08/11 22:11 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#141 [輪廻◆j6ceQ96kak]
そんな校長やら教頭のダラダラとした長い話を立ちっぱなしで聞かないといけないなんて地獄だ。


あいにく俺は煙草も酒も興味ないから安心してくれ。


あるのは雪乃ちゃんとゲームだけなんだ。



それから担任の誘導で廊下に並んで、A組からD組までの計4クラスが一斉に体育館へと向かった。


皆、ダルそうな姿勢だ。


…俺もその一人だけど。

⏰:11/08/11 22:27 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#142 [輪廻◆j6ceQ96kak]
早速、頭がハゲた校長がステージに上がった。


『皆さんお静かに』

ガヤガヤ言っていた館内が校長の一言で収まり、大きな咳払いをしてから話を始めた。



『ええ、名前は伏せておきますが、ここにいる皆さんの中のとある生徒の一人が携帯電話のネット掲示板を通じて中学校の見知らぬ女子生徒と出会い、交際しているという情報を聞きました』


…予想外だ。


飲酒か喫煙の話かと思っていたのだが。

⏰:11/08/11 22:39 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#143 [輪廻◆j6ceQ96kak]
しかし、何かひっかかる。


…ネットで中学生の女子と出会って交際?


なぜか胸騒ぎがした。

何か心当たりがあるような気がするからかもしれない。


いや…というより心当たりはあるではないか。


まさかとは思うがその人物は…



…久保なのか?

⏰:11/08/11 22:44 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#144 [輪廻◆j6ceQ96kak]
あの日、あいつが俺だけに話すと言って彼女ができたと告白してきた。


その彼女とは…確か年が二つ下の中学生だったと記憶している。


おい、久保…これはさすがにやばいのではないか?


でもこの学校には他の学校の生徒と付き合っているという奴は多いはずだ。


なぜ学校は久保の件だけを持ち出してきたんだ?



校長はまた咳払いをして話を続けた。

⏰:11/08/11 22:52 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#145 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『この事を職員会議で話し合った結果、学校はその生徒を2学年に進級するまでの期間、謹慎処分とする事を決定しました』

…おい校長。


さっき名前は伏せておくと言っていたが、謹慎処分という事はどの道そいつが誰がなのかいずれわかる事になるぞ?


謹慎ならいっそ今すぐここで名前を挙げてくれた方が久保はまだスッキリするんじゃないのか?


まさかのハードルをあげられるような真似をされて、奴もいい迷惑だろう。

⏰:11/08/11 23:03 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#146 [輪廻◆j6ceQ96kak]
しかも、こうも言ってたな。


『女子生徒と出会って』って。


それですでに、そいつが男子だって事に絞られてしまっただろ。


ただでさえこの学校は男子が少ない。


そいつが1学年という事と男子だという事に限られた時点で男子が劣勢になる。


これじゃあ女子の男子に対する視線が変わってしまうだろうが。

⏰:11/08/11 23:11 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#147 [輪廻◆j6ceQ96kak]
自分の発言には気をつけろよ校長。


館内は先生が注意しても騒ぎは一向に収まらず、学年集会は閉会された。


俺は一つ安心した事がある。


久保のせいで俺に彼女ができた事になったあの時、色んな女子が、その彼女は何歳なのかと聞いてきた。


その時に年齢を言ってしまっていたら今頃危なかっただろう……ん?



いや、待て待て待て待て!

⏰:11/08/11 23:22 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#148 [輪廻◆j6ceQ96kak]
その後の黒板事件で、久保が黒板に書いたのは確か…


『高見順一 初カノは年下の中学生!?』


…まずい。

いや、でもそれは去年の事だし皆はさすがに忘れているか?


言うまでもなく、それからは誰かが思い出すかもとヒヤヒヤしながら学校生活を送る日々が続いた訳だ。


俺の予想通り、あの学年集会の翌日から久保は学校に来ていない。

⏰:11/08/11 23:29 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#149 [輪廻◆j6ceQ96kak]
当然といえば当然だが、やがて学校に来なくなった久保に皆が疑いを抱き始める。


担任は風邪だとか言ってごまかしているが、もう一週間以上も休んでいては、じきに言い訳は難しくなってくるだろう。


久保…なんとかしてやりたいが、策が思い浮かばない。


でもわかってくれ。


今の俺はお前の味方だ。

⏰:11/08/11 23:33 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#150 [輪廻◆j6ceQ96kak]
カレンダーは1月が終わって2月に突入した。


この月は、魔の期末試験がある。


これで赤点で、さらに追試もダメだったら留年決定だ。


進級できるか否かの最後のチャンス。


俺は自信あるが久保はどうだろうか。


進級するまで謹慎って言っていたが、それじゃあ試験はいつやらせるんだ?


あの校長、言う事が矛盾だらけだ。

⏰:11/08/11 23:46 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#151 [輪廻◆j6ceQ96kak]
気になった俺は休み時間に担任を屋上に呼び出した。


『高見、どうした?』

この雰囲気、まるで刑事ドラマの最後で崖の上などで犯人を説得するシーンみたいだ。


俺は単刀直入に聞いた。


『あの、謹慎になったのって久保なんですよね?』


『え…な、何を言い出すんだ?』

…明らかに動揺してるぞ。


もうちょっと探りを入れてみるか。

⏰:11/08/11 23:57 📱:T004 🆔:nizZW2bo


#152 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『謹慎って言われた学年集会の次の日から休むなんて、そんな偶然あるんですか?』


『く、久保はだな…風邪をひいて…』

いつも冷静な先生のこの取り乱し様…。


もういい加減認めればスッキリするだろうに。



『久保は俺の友達で、心配だから言ってるんです』

つい、そう言ってしまった。


いつか胸張って奴にそう言える時がくるといいけど。

⏰:11/08/12 00:04 📱:T004 🆔:xSDzl8m2


#153 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『わかった…。でも他の人には言わないで欲しい』

…やっと認めたか。


でもあいにく俺のクラスの奴らは大体、久保だって事に感づいてきてるぞ。


『実はな、久保が携帯電話のネットを通じて知り合った女の子というのは…数学の木下先生の娘さんなんだ』


…え!?

えええええええええ!?



なんだこの衝撃的な展開は…。


俺は先生から聞かされたその衝撃的な事実に、ただ口をポカーンと開けるしかなかった―



〜episode7 END〜

⏰:11/08/12 00:23 📱:T004 🆔:xSDzl8m2


#154 [輪廻◆j6ceQ96kak]
■episode8■
『高見vs木下〜人は見かけによらない〜』



…先生。


俺はどうしたらいいんだ。


久保が彼女だと名乗ったその子は中学生にして、まさかの自身の通っている学校で数学を担当している木下先生の娘だったなんて。


でもこれで久保が先生に呼び出された理由がハッキリした。


担任の話では、久保を呼び出した木下先生は…


『黙っておいてやるから退学しろ』

…と久保に言ったそうだ。

⏰:11/08/12 00:40 📱:T004 🆔:xSDzl8m2


#155 [輪廻◆j6ceQ96kak]
例の知り合った彼女が木下先生の娘だとわかった久保は、以前から担任に相談をしていた。


それを聞いた担任が校長に。


そして校長から木下先生へと確認がいき、職員会議を決行。


木下先生が、久保は退学にすべきと言い続ける中、俺の担任はすかさず久保をフォロー。


退学ではなくせめて謹慎にした方がいいという事を校長に伝えた。

⏰:11/08/12 00:46 📱:T004 🆔:xSDzl8m2


#156 [輪廻◆j6ceQ96kak]
大半の職員が担任の言うことに賛同。


木下先生もそれを認めて受け入れるしかなかったのだという。


それにしても、彼の久保に対する言い方は教師としてどうなんだ?


『黙っておくから退学しろ』なんてただの脅しではないか。


途端に怒りがこみ上げてきた俺は、木下先生と戦う事を決めた。


顔は怖いが生徒思いで優しいと思っていたのだが、それは撤回させてもらう。

⏰:11/08/12 00:54 📱:T004 🆔:xSDzl8m2


#157 [輪廻◆j6ceQ96kak]
今日の放課後にでも屋上に呼び出してやる。


休み時間にそう思っていると…


『高見〜』

久しぶりに聞いたような声がした。


ドアの方を見ると、吉田がニヤニヤしながら立っていた。


久保や木下先生の事で頭がいっぱいで、アンタの存在忘れる所だった…なんて本人に言ったらパンチをくらうな。

⏰:11/08/12 01:05 📱:T004 🆔:xSDzl8m2


#158 [輪廻◆j6ceQ96kak]
今アンタに構ってる暇はないのだが、後が怖いのですぐに彼の元へ。


『久しぶりだな、元気?』


『はあ、まあまあですかね』

意外にも普通の世間話で内心ホッとする。


『久保の野郎、残念だったわな』


『はいそうですね…って! 吉田さん知ってたんですか?』


『当たり前じゃん。俺が木下にチクったんだから』

…え。


この人、今とてつもなく重大な事をサラッと言わなかったか?

⏰:11/08/12 01:15 📱:T004 🆔:xSDzl8m2


#159 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『あのええと…どういう事ですか?』

そう聞きたくなるのは当然だ。


『そのまんまの意味だろ? ちなみに木下の娘の茜ちゃんは俺の妹の友達だから。家にもよく遊びに来るんだよな〜』

普通にケラケラ笑って言ってるが、お前は木下先生の次に最低な奴だよ。


『前に茜ちゃんが家に遊びに来た時さ、彼氏ができたって俺の妹に漏らしてた訳よ。俺それ聞いてどんな奴って聞いてみたんだよ。したら何て言ったと思う?』

…それが久保だったって訳か。

⏰:11/08/12 09:14 📱:T004 🆔:xSDzl8m2


#160 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『お前の予想通り、この高校の1年の久保太一って言いやがってさ。俺、それ聞いて爆笑しまくったわ』

…そこは笑うほどのものではない。


『久保の奴もバカだよな。会った事もない女に軽々しく通ってる学校名とか名前とか暴露しまくっちまうんだもんな』

…こいつ。


彼が年上じゃなかったら俺は今頃殴りかかっていた所だ。

⏰:11/08/12 09:23 📱:T004 🆔:xSDzl8m2


#161 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『お前もさ、そういうのには気をつけろよ〜。じゃな』

…俺は廊下に立ち尽くしていた。


まるで自分の事のように頭が真っ白になりそうだった。


あれ…


なんか息が…


苦しいな…


意識が…


飛びそう―

⏰:11/08/12 09:28 📱:T004 🆔:xSDzl8m2


#162 [輪廻◆j6ceQ96kak]
ここはどこだ?


ゆっくりと目を開ける。


…薬のにおい?


…保健室か。


どうやらあの後、気絶してしまったみたいだな。


『…目覚めた?』

まるで透き通るような綺麗な声がする方に目をやる。


保健室の美人すぎると有名な女の先生が、仰向けに寝転がっている俺の元へやってきた。

⏰:11/08/12 09:34 📱:T004 🆔:xSDzl8m2


#163 [輪廻◆j6ceQ96kak]
俺はこの高校に入ってから保健室には一度もきた事がない為、どんな先生なのかわからなかった。


今初めて知った。


確かに美人だ。


年齢は20代後半くらい。

細いモデル体型に、薄くも濃くもない化粧。


そして触るとぷるんとしそうな唇には綺麗なピンク色の口紅が上品に塗られている。


一見、先生には見えない。


白衣を着ていなければ、この学校の生徒だと勘違いしてしまいそうだ。

⏰:11/08/12 09:43 📱:T004 🆔:xSDzl8m2


#164 [輪廻◆j6ceQ96kak]
当然だけど、俺はその先生を前にして緊張してしまった。


『…あなた過呼吸になったのよ。覚えてる?』

確かに気絶する前に呼吸が激しくなって息をするのがすごい苦しかったな。


…恥ずかしい。

廊下のど真ん中でぶっ倒れたなんて。


『高見くんだっけ…あなた、もしかして恋でもしてるんじゃないの?』

おい、なぜいきなりそんな事を聞く。


しかも的中してるし。


あなたは人の心の中を読む事ができる能力でも持っているのか?

⏰:11/08/12 09:52 📱:T004 🆔:xSDzl8m2


#165 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『恋をするのは悪い事じゃないのよ。むしろ素敵な事』

いや確かにそうだけどさ、今は別にそんな話してる時ではないだろう。


『で…誰なの?』

…はい?


まだ恋をしてるなんて一言も言ってないのに、なぜ恋してる前提で聞いてくる。


…それに言う訳ないだろう。

⏰:11/08/12 09:59 📱:T004 🆔:xSDzl8m2


#166 [輪廻◆j6ceQ96kak]
吉田みたいに誰かに言いふらされたりしたらたまらないからな。


『い、いませんから』

どうせ願いが叶う訳がない恋だし、ここは自信を持って否定しよう。


『ふふふ…可愛い』

え、なんだいきなり。

この意味ありげな微笑みは一体…。


『君のこれからが楽しみになってきちゃった。頑張ってね』

…何を頑張れと言うんだ?


先生はそれ以上何も言わなかった。

⏰:11/08/12 10:08 📱:T004 🆔:xSDzl8m2


#167 [輪廻◆j6ceQ96kak]
だいぶ体調がよくなった俺は、その保健室の居心地の悪さもあり、さっさと教室に戻る事にした。


俺の教室では丁度、数学の授業が行われていた。


チャイムが鳴ったらすぐ木下先生の元へ向かおう。


放課後にしようかと思っていたが、今はなぜか頭が冴えている。


さっきの保健室の先生のおかげかもしれない。


今ならなんでも面と向かって言えるような気がする。

⏰:11/08/12 10:14 📱:T004 🆔:xSDzl8m2


#168 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『そこ! 何くっちゃべってる!』

突然した先生の怒鳴り声に、辺りは驚きの顔をした。


この木下先生が大声を張り上げる所なんて初めて見たからだろう。


『上野! 倉野! お前らだ! ちょっと放課後残りなさいよ!』

…まさか名指しまでするなんて、この先生まるで人が変わったようだ。

⏰:11/08/12 10:30 📱:T004 🆔:xSDzl8m2


#169 [輪廻◆j6ceQ96kak]
上野と倉野はよく数学の授業中に話をしているが、それは今に始まった事ではない。


なぜ今になって注意を始めた?


そしてなぜ今まで注意しなかった?


どうやら、久保の件でイライラしているらしいな。


でもそれで生徒に当たるのはどうなんだろう。


喋ってる二人も悪いけどさ、今まで注意しなかった先生も先生だろ。

⏰:11/08/12 10:34 📱:T004 🆔:xSDzl8m2


#170 [輪廻◆j6ceQ96kak]
それから皆、緊迫したムードの中で授業を受けた。


先生が背を向けて黒板に書くと、今までは携帯電話を開く奴らがいたが、さっきの事があったせいか珍しく誰も携帯電話をいじっていない。


これはこれでよかったのかもしれないが、先生の態度は許せない。


『人は見かけによらない』ってこういう事を言うのか。


いや、元々顔が怖いからこういう場合は『人は見かけによる時もある』が正しいのか?

⏰:11/08/12 10:39 📱:T004 🆔:xSDzl8m2


#171 [輪廻◆j6ceQ96kak]
やけに長く感じた数学の授業も、鳴ったチャイムによって終わった。


木下先生が教室を後にしてから、皆さっきの事を色々と言い始める。


『意外だよね〜』


『びっくりした』

…などの会話。


俺はすぐに席を立って、職員室へ向かう先生に近づいていった。

⏰:11/08/12 10:54 📱:T004 🆔:xSDzl8m2


#172 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『先生、ちょっといいですか?』

ついに話しかけてしまった。


…だが後悔はしてない。


先生はすぐに俺の声に気がついて振り返った。


『…何か用かね』


『あの…久保の事ですけど』


『…来なさい』

ここでは分が悪いと判断したらしい。


先生の後に黙って着いて行くと、なぜかトイレにたどり着いた。

⏰:11/08/13 01:39 📱:T004 🆔:wGsNjQTg


#173 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『それで…久保がどうしたというのかね』

入るなり先生は俺に背を向けて切り出した。


『先生の娘さんと知り合ったっていう久保に、退学しろって言ったそうですね』


『それがどうした?』

生徒に確信を迫られたっていうのに全く動揺するそぶりは見せない。


それどころか、大きな自信に満ち溢れている。

⏰:11/08/13 23:25 📱:T004 🆔:wGsNjQTg


#174 [輪廻◆j6ceQ96kak]
肝が据わっているというのだろうか。


こんな態度でよく教師をしているものだ。


俺は拳を震わせて強気な態度で攻めた。


『久保が先生の娘と付き合ってるからって別に退学に追い込もうとする必要はないんじゃないですか?』


『…君も父親になればわかる。ワタシの娘…茜はまだ中学生だぞ。まだ未熟な娘が知らん男に言い寄られ、強引に交際を迫るなんぞもってのほかではないかね』

…言い分はわかる。

が、先生は勘違いをしている。

⏰:11/08/13 23:42 📱:T004 🆔:wGsNjQTg


#175 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『ちょっと待ってくださいよ。久保はそんな簡単に交際を迫ったり言い寄ったりするような奴じゃありません』

それはなにより俺が知っている。


この先生はどうやら自分の娘の事を棚にあげて久保に責任を全部負わせようとしているようだ。


『しかしC組の吉田くんが教えてくれたのだよ。久保はそういう奴だと』

吉田の奴、久保の事何も知らない癖にそんな事を…。

⏰:11/08/13 23:58 📱:T004 🆔:wGsNjQTg


#176 [輪廻◆j6ceQ96kak]
何か方法を考えろ。


久保だけに問題があると思っている先生の考えをぶち壊す方法を…。



…………あった。


自分でもびっくりするくらい意外にもすぐに思い浮かんだ。


保健室の先生にますます感謝だ。


頭が妙に冴えている。

⏰:11/08/14 00:03 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


#177 [輪廻◆j6ceQ96kak]
でも今は言えないな。


先生を追い詰めるには今日の放課後、久保の家に言って証拠を貰ってくるしかない。


勝負の決着は明日つけてやる。


『言いたい事はもうないようだね。次の授業の準備があるから失礼するよ』

…と、俺の肩をポンと叩いて出て行った。


言いたい事は明日全部言ってやるよ。


それまで先生も、うまい言い訳を考えておく事だな。


俺はその場でニヤリと笑いながらのガッツポーズをとったのだった―



〜episode8 END〜

⏰:11/08/14 00:18 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


#178 [輪廻◆j6ceQ96kak]
■episode9■
『勝利の女神』



木下先生との勝負を明日に控え、俺はニヤけながら授業を受けていた。


でもそのニヤけ顔にストップをかけたのは、帰りの号令の時に先生が言った衝撃的な言葉だった。


『みんな落ち着いて聞いて欲しい。さっき久保の両親から電話があって、久保が…自殺未遂をしたと…』

それを聞いた皆は一瞬だけ静まり、そしてすぐに大騒ぎした。


…久保が自殺未遂?


俺は確認するようにそう思った次の瞬間、廊下まで普通に聞こえる悲鳴のような大声を張り上げた。

⏰:11/08/14 00:34 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


#179 [輪廻◆j6ceQ96kak]
もちろんそれから教室内は大混乱の渦。


担任が『静かに!』と叫ぶように連呼しても、当然だけどこればっかりには一向に収まる気配はなかった。


騒ぎを聞きつけた他のクラスの奴らも、野次馬のように俺達の教室内を廊下から見物していた。


…無理もない。


これで、木下先生の娘である女子中学生と知り合い交際し、謹慎処分を受けたのが久保である事がほぼ知れ渡る事になるだろう。

⏰:11/08/14 00:46 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


#180 [輪廻◆j6ceQ96kak]
久保がそんな事をするなんて…。

それもこれも全て木下先生、アンタのせいだ。


教師が生徒を自殺未遂に追い込んだなんて知られたら大問題になる。


例の女子中学生が木下先生の娘だって事はまだ知られていないみたいだ。


その事実を知っているのは俺の知る限りじゃあ、俺と担任と久保と吉田の四人。


吉田の性格上、この騒ぎを知ったら嬉しそうにその事実をぶちまけるに違いないだろう。


そうすれば久保の自殺未遂は木下先生が原因である事が自然と立証される。

⏰:11/08/14 01:00 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


#181 [輪廻◆j6ceQ96kak]
それで先生に処分が下されれば嬉しい所だ。


時限爆弾がいつ爆発するか…少し楽しみになってきた。



すでに下校時間が過ぎた。


だが教室内にはまだほとんどの人が残っていて久保の話題で持ちきり状態。


俺は、しどろもどろになっている担任の元へ向かった。


『あの、久保の事…心配なので様子見に行ってきてもいいですか?』


『あ、ああ…。今は3条通りにある病院にいるから行ってあげてくれ…』

⏰:11/08/14 01:15 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


#182 [輪廻◆j6ceQ96kak]
俺がすぐに向かおうと廊下へ出ようとすると…


『高見くん…』

後ろからした声に振り返ると、雪乃ちゃんが不安そうな表情で立っていた。


『私も行っていいかな』


『うん、行こう』

そう言った時、俺は反射的に彼女の手をひいて走り出していた。


とにかく久保の事が心配で仕方がなかった。

⏰:11/08/14 01:27 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


#183 [輪廻◆j6ceQ96kak]
学校から10分ほど走った所で、久保が搬送された病院に到着した。


受付で病室の番号を聞き、2階の203号室へと急ぐ。


『久保太一 様』

と名前の書かれたプレートがついた部屋をコンコンとノックすると、しばらくしてから母親が出てきた。


『あの、久保と同じクラスの高見といいます』


『私も久保くんと同じクラスの松下雪乃です』

俺達が名前を言うと久保の母親は無言で、部屋に入るよう誘導した。

⏰:11/08/14 02:07 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


#184 [輪廻◆j6ceQ96kak]
病室の奥に向かうとベッドに仰向けの状態で、頭に包帯が巻かれた久保の姿があった。


『久保くん…』

雪乃ちゃんがものすごい心配そうに呟く。


少しの沈黙の後、ずっと無言だった久保の母親がやっと口を開いた。


『来てくれてありがとう。太一、さっきまで目は覚めてたのよ。でも…』


…でも?

俺は母親のその言葉がとてつもなくひっかかった。


だが、それ以上は下を向いたままで何も言う事はなく時間だけが静かに過ぎていった…。

⏰:11/08/14 02:18 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


#185 [輪廻◆j6ceQ96kak]
久保…


目を開けてくれよ…


どうしちゃったんだ…?


寝たフリでもしてるのかよ?


お前はそんなキャラじゃないだろ?


心の中で久保に問いかけるように言い続けた―


『太一!』

俺と雪乃ちゃんがずっと下を向いていた時、母親の突然出した大きな声でハッとしてから久保の方を見た。

⏰:11/08/14 02:28 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


#186 [輪廻◆j6ceQ96kak]
奴は…うっすらとだけど目を開けていた。


視線は天井を見ていたが、やがて俺達に気がついたのか視線をゆっくりと天井から俺、そして雪乃ちゃんへと順に追うように見てきた。


『久保!』


『久保くん!』

俺達は座っていた椅子から同時に立ち上がった。


『久保! よかったぁ…』

こういう場合は奴の手を両手で握りしめながら言うべきなのだろうけど、どうも照れくさくてできなかった。

⏰:11/08/14 02:39 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


#187 [輪廻◆j6ceQ96kak]
とりあえず一安心だ。


さっき母親が『でも…』と言っていたから、まさかの最悪な展開になるかと思っていた。


目を覚めたのはいいけど、久保は視線を再び天井に戻し一言も喋りかけてはくれなかったので俺達は母親に頭を下げてから帰った。


明日くらいになれば口を利けるようになるだろう。


部屋を去る際に久保に『また明日来るから』と伝えて帰宅した。

⏰:11/08/14 14:39 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


#188 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『久保くん、よかったね』


帰り道で雪乃ちゃんが聞いてきた。

そう言って見せる微笑みは、まるで無理して作っているようだった。


俺に悲しい顔とか暗い顔を見せたくなくて無理に笑っているんだろう。


『…許せない』


『えっ?』

俺が小さい声でポツリと言った言葉に、彼女はすぐに反応した。

⏰:11/08/14 14:46 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


#189 [輪廻◆j6ceQ96kak]
彼女には言っておいた方がいいのかもしれない。


俺は久保の自殺未遂の原因と思われる事を全て話した。


彼女は始めは驚いていたが、最後には納得したような表情を見せて言った。


『木下先生ってそんな人じゃないって思ってたのにな…』


『雪乃ちゃん…俺の言う事信じてくれるの?』

普通であれば『先生はそんな人じゃない』など真っ向から否定すると思っていたが、彼女は違った。

⏰:11/08/14 14:56 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


#190 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『当たり前じゃない。だって高見くんは人を傷つける嘘をつくような人じゃないでしょ?』

…なんて純粋なのだろう。


俺は彼女の言葉に思わず涙が出そうになった。


もちろん、なんとか横と上をを向いたりしてごまかしたが。



『じゃあまた明日ね』

そう言って真っ赤で綺麗な夕日を背に手を振る彼女はやはり天使…


いや、その時は女神に見えた。

⏰:11/08/14 15:04 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


#191 [輪廻◆j6ceQ96kak]
俺はその夕日に向かって


『雪乃ちゃん好きだー!』

と叫びたくなった。


…当然できなかったが。



こういうのが青春というのかとほのぼのと感じていた俺は、その時は全く知るよしもなかった。


病室で久保の母親が言っていた…


『でも…』

その言葉の本当の意味を―



〜episode9 END〜

⏰:11/08/14 15:13 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


#192 [輪廻◆j6ceQ96kak]
■Last episode■
『桜、舞う頃』(前編)



翌日―


学校では昨日の久保の話題がまだまだ続いていた。


俺が席に着くと同時に、クラスの奴らが次々と俺の周りに集まってきた。


『高見! 久保のいる病院行ってきたんだって?』


『久保どうだったの?』

次々と投げかけられる質問。


まるでマスコミの格好の餌食にされているような気分だ。


誰か一人カメラを手にしててもおかしくないくらいに。

⏰:11/08/14 15:28 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


#193 [輪廻◆j6ceQ96kak]
俺が仕方なく答えていこうとした時…


『皆、久保くんの事面白がってるんでしょ?』

そんな言葉が聞こえて後ろを見ると、雪乃ちゃんが険しい表情でクラスの奴らを見ていた。


『ゆ、雪乃ちゃん…』

彼女の強気な顔なんて初めて見た気がする。


おとなしい人ほど怒ると怖いというのはこの事か。

⏰:11/08/14 15:46 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


#194 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『そんなんじゃないよ。俺達は久保が心配で…』

一人の男子がそう言うと、雪乃ちゃんはますます険しい表情になった。


そして言い放った…


『心配ならなんでお見舞いとか行かなかったの?』

もっともだ。


俺は心の中で彼女を応援した。


彼女の言った言葉でクラスの皆は黙り込み、教室は異様な雰囲気に包まれる。

⏰:11/08/14 15:56 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


#195 [輪廻◆j6ceQ96kak]
しばらくその状態が続いてから、鳴ったチャイムによって皆は黙ったまま席に着いた。


雪乃ちゃん…俺は君を見くびっていた。


このクラスで最強なのは野村だと思ってたけど、君もある意味最強だ。


これじゃあ吉田とも気が合う訳だと納得した時であった。


『じゃあ号令』

担任がいつものように言う。


しかし日直は黙ったままで『起立』という言葉を発さない。

⏰:11/08/14 19:14 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


#196 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『今日の日直…市川と斉藤。どうした?』


『…………』

なんだ果てしなくこの気まずい雰囲気は。


二人共…このまま黙ってたら真面目な先生だってキレるぞ多分。


しかし先生は皆の気持ちを悟ったように小さくため息をついてからこう言った…


『皆、久保が心配なんだな?』

この一言に、皆は無言で頷いた。

⏰:11/08/14 20:02 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


#197 [輪廻◆j6ceQ96kak]
その反応に、ちょっと調子がいいなと思う。


おそらく雪乃ちゃんも俺と同じ考えだろう。


『時間がある人は学校が終わってからでも見舞いに行ってあげて欲しい…では日直』


『起立』

この中で俺と雪乃ちゃん以外で本当に心配に思っててお見舞いに行きたがる奴はいるのだろうか。


でも行ったら行ったで、久保に対して好奇心からの質問が飛び交うのは目に見えている。

⏰:11/08/14 20:23 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


#198 [輪廻◆j6ceQ96kak]
俺は、久保の友達としてそれは許せない。


お見舞いは代表を二人か三人くらい決めて行くくらいがちょうどいいだろう。


起立から着席し、俺は手を上げた。


『先生!』


『高見、どうした?』


『お見舞いは何人か代表を決めて行く方がいいと思うんですけど』

俺の提案に、隣に座っている雪乃ちゃんがうんうんと何度も首を縦に振って頷いた。

⏰:11/08/14 20:32 📱:T004 🆔:sDNo2Lo.


#199 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『ああ…確かに高見の言うとおりだな。では今日の放課後、久保の見舞いに行ってくれる人は手を挙げて欲しい』

俺と雪乃ちゃんがすぐに手を挙げた。


周りを見ると、もう一人だけ挙手している女子がいる。


『よし、じゃあ高見と松下と野村。頼んだぞ』

…野村可奈恵か。


一応は雪乃ちゃんの友達だし、彼女なら面白がったりはしないだろう。

⏰:11/08/15 09:03 📱:T004 🆔:VtncYM9w


#200 [輪廻◆j6ceQ96kak]
休み時間―


『高見、雪乃…アンタらは偉いよ』

そう言いながら近づいてきたのは今日、久保のお見舞いに一緒に行く野村可奈恵だ。


ちょっと今の言い方はおばさんくさかった…なんて言えないな。


『カナが手挙げるなんて思ってなかったよ』

隣で雪乃ちゃんが微笑みながら軽々しく言った。


…怖いもの知らずなのか。

俺は一瞬ヒヤっとしたが、野村は雪乃ちゃんと同等の笑みを浮かべた。

⏰:11/08/15 09:15 📱:T004 🆔:VtncYM9w


#201 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『ホラ、雪乃のイチ親友として放っておけないじゃん?』

…そこかよ。

久保はどうでもいいのかよ。


『カナ、ありがとう』

…おいおい、雪乃ちゃん。

君もそこは礼を言う所じゃないから。


この二人が揃うと…とりあえず怖いと思った。

⏰:11/08/15 09:23 📱:T004 🆔:VtncYM9w


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