ぼくらのみかた
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#232 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『久保、調子はどうなの?』
野村が心配そうな顔で聞く。
しかし久保は応えない。
黙ったまま俺達をジッと見つめている。
喋りたくても喋れないんだ―
そう思った瞬間に、目に涙が浮かんできた。
なんとかこぼれ落ちないように上を向いて、乾いてくるまで待つ。
でも、その不自然な俺の行動に雪乃ちゃんがすぐ気がついた。
:11/08/18 21:07
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#233 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『高見くん、泣いてるの?』
『えっ? い、いやそんな事ない…け…ど』
…ダメだ。
女に涙を見せるなんて事したくなかったのに。
『雪乃、こういう時は何も見てない事にしておきなよ』
野村が俺をフォローするように雪乃ちゃんに言う。
『あ、ごめん…高見くん。でも私も泣きたいよ…』
そして俺につられて彼女も泣き出した。
:11/08/18 21:21
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#234 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『ちょっとちょっと、雪乃までどうしちゃったのさ!』
いつにもなく野村があたふたしながら言う。
『別に死んだ訳じゃないんだからさ…』
…野村、少しは空気を読んでほしい。
これは悲し泣きではなく嬉し泣きなのだ。
雪乃ちゃんが落ち着くまでの間、俺と野村は久保の傍で顔を見続けていた。
:11/08/18 21:36
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#235 [輪廻◆j6ceQ96kak]
雪乃ちゃんは嬉し泣きだが、俺の場合は悲し泣きだった事は言わなかった。
しばらくして病室のドアがノックされ、担任が入ってきた。
『あ、先生…』
『心配になってな。それより久保はどうだ?』
担任は久保の顔をちょこっと見てから、隅で泣いている雪乃ちゃんの方を見る。
:11/08/18 21:57
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#236 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『松下…どうかしたのか?』
『先生。空気を読んでください』
野村がツッコミを入れるように言うと、どこからか小さな笑い声が聞こえた。
それは雪乃ちゃんでも野村でも担任でもない。
そう、久保だった。
『久保!』
俺は誰よりもすぐに久保に声をかける。
:11/08/18 22:10
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#237 [輪廻◆j6ceQ96kak]
『ちょっと高見…いきなりどうしたの?』
野村が不思議そうに聞いてきたが、俺は無視して久保の顔を凝視した。
『久保…よかった。そうやって笑えるんだな』
『高見、ちょっと聞いてる? というか…生きてるんだから笑うに決まってるじゃん』
『野村…それはなんか失礼じゃないか?』
担任と野村は、漫才のようなやりとりを見せていた。
:11/08/18 22:20
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#238 [輪廻◆j6ceQ96kak]
失声というからには、笑う事すらもできないと思っていたが、違ったようだ。
『先生、ちょっと久保の状態を聞いてくるな』
そう言って担任が病室から出ていった。
担任も、久保が失声症だということは聞かされていなかったようだ。
では、なぜ数学の木下先生には知らされていたのだろうか。
:11/08/18 22:32
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#239 [輪廻◆j6ceQ96kak]
もしかすると木下先生は昨日、ここに来たのではないか?
それなら納得できるけど、あの先生が担任でも副担任でもないクラスの生徒のいる病院にお見舞いに来るのには違和感を覚える。
すると、誰かを通して知った事になる。
…久保の母親だろうか?
木下先生にはもう話す事はないと言ったが、今すぐにでも言いたい事ができてしまった。
:11/08/18 22:40
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:wwhjTjoQ
#240 [輪廻◆j6ceQ96kak]
しばらくして、担任が血相を変えて戻ってきた。
『先生…どうかしたんですか?』
担任は野村を無視して久保の傍に駆け寄る。
『ちょっと! 先生まで無視ですか…』
『野村! いい加減にしろよ!』
久保の事を何もわかっておらず、ふざけている野村に我慢できなくなった俺は彼女相手に初めて声を荒げた。
:11/08/18 22:59
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:wwhjTjoQ
#241 [輪廻◆j6ceQ96kak]
野村は俺の声に驚いて周りの空気を悟ったのか、おとなしくなった。
『先生、久保くんどうかしたんですか?』
そう言う雪乃ちゃんの顔は、たくさん泣いたせいか目の回りが真っ赤になっている。
『今担当の先生から聞いてきた。久保は…心因性失声症という病気にかかったと…』
担任のその言葉を聞いた雪乃ちゃんと野村は、途端に呆然となった。
:11/08/18 23:11
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