短編サスペンス
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#11 [正人]
「あ、俺はフリージャーナリストの丹葉と言います」
「ジャーナリスト…?」
検視官はなぜか不思議そうな表情をする。
それも、まるで「初めて見た」と言わんばかりの。
ジャーナリストなんてそれほど珍しい部類じゃないと思うのだけど。
「警察関係者ではないのなら、なぜここに?」
「あの、一応俺、今運ばれていった死体の第一発見者なので、何かご協力できないかなぁ…なんて」
俺が照れ笑いしながら言うと、検視官の顔の眉間のシワがパッと消え去り、穏やかな表情になった。
:12/01/24 20:51
:W62P
:☆☆☆
#12 [正人]
俺は、その表情が変わる瞬間を見逃さなかった。
もしかしたら俺が今言った言葉に感動してくれたのだろうか?と期待はしたものの、その期待は見事に打ち砕かれる事になる。
検視官は穏やかな表情をしたまま俺を凝視してポツリと言った。
「邪魔だ……出てけ」
さっきまでの高い声はどこへ消えたのか、今度はドスのきいた低い声で。
:12/01/24 20:59
:W62P
:☆☆☆
#13 [正人]
表情は穏やかなのに、なんともいえない威圧感に俺の足が徐々にガクガクと震え出す。
その時
「相変わらずですねぇ…新塚さん」
俺のすぐ後ろで声がして、北峰が冷静な表情で俺の横に立ち、検視官の方を見る。
“新塚”とはこの検視官の名前だろうか。
今の北峰の言葉から察するに、どうやら二人は知り合いのようだ。
:12/01/24 21:12
:W62P
:☆☆☆
#14 [正人]
「北峰くんか…」
検視官…新塚さんは北峰を見るなり「またか」と言わんばかりの表情を浮かべる。
「北峰さん、彼を知ってるんですか?」
俺は横目で北峰を見ながら聞いた。
「いや、以前ちょっと…ね。ただ、顔は恐いけど意外にいい人だから安心していいですよ」
微笑みながら彼がそう言うと、新塚さんは再び眉間にシワを寄せて
「“意外に”は余計だ」
と、口元を少しニヤつかせて言った。
:12/01/28 00:07
:W62P
:☆☆☆
#15 [正人]
意外に仲は良いのかもしれない。
二人を見ながらそう思った。
「それで…被害者の死因は?」
北峰は、俺が言おうとしていた事を察知していたかのようにその質問を新塚さんに尋ねた。
先を越されてしまったのは少し悔しいが、顔見知りの北峰には彼も情報を与えない訳にはいかないはずだ。
彼は少し考えた後、渋い顔をして北峰を見る。
そして一言こうつぶやいた。
「死因は、心臓麻痺…」
俺と北峰はそう聞いた瞬間、反射的に顔を見合わせる。
:12/01/28 00:08
:W62P
:☆☆☆
#16 [正人]
「心臓…麻痺ですか?」
北峰が拍子抜けしたような表情で新塚さんに言う。
おそらく俺も同じ表情をしていると思う。
「ああ、間違いない。遺体に刺し傷や銃創などは見られなかった。おそらく被害者は何かに驚いたショックで心臓麻痺に陥り、立ったまま仰向けになるようにして倒れた」
「…では、これは殺人ではないと?」
「まだ一概にはなんとも言えない。ただ、この倉庫は…」
新塚さんがここまで言うと、その先を察知したかのように北峰が口を割った。
「大物政治家による麻薬売買現場…ですよね?」
:12/01/28 00:10
:W62P
:☆☆☆
#17 [正人]
「さすが北峰くんだな…」
「ボクを誰だと思っているんですか?」
「……そうだったな」
二人のやりとりはどこか楽しげでもあった。
おかげで俺は肩身が狭くなり、二人の会話を黙って聞く事しかできないが。
「目撃者とかがいればいいんですけどね」
会話の途中で北峰がつぶやいた言葉に俺はピクリと反応した。
:12/01/28 00:11
:W62P
:☆☆☆
#18 [正人]
「目撃者か……ん?」
腕を組んで考え込む新塚さんは、何かに気づいたと共に俺の方を見た。
「君…丹葉といったかな?」
「ええ、そうですけど」
「確かさっき言ってなかっただろうか?“死体を最初に発見した”と」
彼がそう言うと、北峰は意外そうな顔をした。
「そうなんですか?丹葉君」
二人の視線が俺に集中する。
:12/01/28 00:12
:W62P
:☆☆☆
#19 [正人]
「ええまあ…」
「怪しい人物などは見ましたか?」
北峰が真顔かつ、目を輝かせながら聞く。
「いや見てませんけど」
「…そうですか。それは残念」
俺の期待外れの答えに北峰は露骨にガッカリし肩を落とすと、新塚さんの方に向き直した。
「新塚さん、これから遺体の解剖ですよね?何か詳しい事がわかったら連絡頂けますか?」
「え…」
新塚さんは、あからさまに困った表情をする。
:12/02/01 21:42
:W62P
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#20 [正人]
彼が困った顔をする理由はわかる。
警察関係者でも探偵でもない彼…北峰に、なぜ遺体の解剖結果を教えなくてはならないのか?という事だろう。
新塚さんは当然の答えをした。
「しかしね、一般の方にそういった情報を与えるわけには…」
当たり前のようにそう言うと北峰は新塚さんの耳に顔を近づけ、何か小声でひそひそと言っている。
「……いやしかし……」
所々で焦りの表情をする彼を北峰は面白がっているように見える。
:12/02/01 21:43
:W62P
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