短編サスペンス
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#1 [正人] 11/11/01 11:48
 
 
 
 
主人公:丹葉 正人(25)

職業:フリージャーナリスト

考察:彼の行く所、死体がゴロゴロ
 
 
 

#32 [正人]
 
 
 
 
「あ、ところで丹葉君。捜査用の手袋は持っていますか?」

「あ…持ってないですね」

「よければ、海外で購入したものですが…貸してあげますよ?」

そう言ってポケットから白い手袋を取り出すと、俺の方に差し出した。


海外で購入したわりには、日本で売っているものとそう変わりはない普通の手袋である。
 
 
 
 

⏰:12/02/02 13:00 📱:W62P 🆔:☆☆☆


#33 [正人]
 
 
 
 
「意外に普通の手袋なんですね」

思わず口に出すと、北峰はフフっと微笑んだ。


「君にはわからないでしょうね。この手袋は海外でも有数のメーカーが扱う高級な生地で作られたもの。値段は日本のものとは比べものになりませんよ」

「はあ…そうですか」

自慢げに語ってくれた所悪いのだが“そうですか”としか言いようがない。
 
 
 
 

⏰:12/02/02 13:01 📱:W62P 🆔:☆☆☆


#34 [正人]
 
 
 
 
「そうですね、例えて言うならば……」

「あ〜はいはい!もうわかりましたから!高いんですよね?それはすごい!」

やけくそになりながら北峰の台詞を打ち切った。


「やれやれ…本当にわかったのか、疑問ですけどねぇ」

「と、とりあえず…それ借りてもいいですか?」

「いいでしょう。ただし、一つだけ約束して頂きたい事があります」

「“手袋を汚すな”…でしょう?」

「それもありますが…もう一つ。その手袋をつけた手で必ず証拠を見つけだしてください」


そんな無茶を言われても困るが、まあこんなでかい倉庫なのだから何か一つくらいはあるだろうと思い、俺は頷いた。
 
 
 
 

⏰:12/02/02 13:03 📱:W62P 🆔:☆☆☆


#35 [正人]
 
 
 
 
「よろしい。ではくれぐれも丁重に扱ってくださいね」

俺は海外の手袋を受け取ると、早速両手にはめ込んだ。


確かといえば確かだが、生地が高級品というだけあって、とてもやわらかくて俺の手を優しく包み込んでくれているような感じはする。


今や手袋なんて100円均一でも売っているが、これとは雲泥の差であろう。
 
 
 
 

⏰:12/02/02 13:03 📱:W62P 🆔:☆☆☆


#36 [正人]
 
 
 
 
「では、この倉庫内を徹底的に調べましょうか」

「そうですね」


俺達は警官や鑑識らが捜査している所から少し離れた所にやってきた。


遺体があった場所からもかなり離れているので証拠は見つからないような気がしたが北峰はだからこそ、そこは犯人達にとって証拠を隠すには有利な場所になると踏んだのだろう。


被害者は心臓麻痺という事で、まだ殺人事件と断定された訳ではないのだが。
 
 
 
 

⏰:12/02/02 13:04 📱:W62P 🆔:☆☆☆


#37 [正人]
 
 
 
 
まあ、殺人事件の方が調査のしがいがあるという点はわからなくもない。


被害者が何に対して驚いたのか…

その秘密が、この倉庫の調査でわかるのだろうか。


「丹葉君…ちょっと」

「あ、はい」

とにかく、俺が死体の第一発見者なのだから、できる所までやってやる。


そうでないと被害者が浮かばれない。
 
 
 
 

⏰:12/02/04 11:11 📱:W62P 🆔:☆☆☆


#38 [正人]
 
 
 
 
「なんですか?」

「そこの段ボール…匂いますね」

俺達の目の前に積み上げられた大量の段ボールを指差す北峰。


「これ…ですか?別に普通の段ボールだと思いますけど」

「とにかく、これらを降ろすの手伝ってもらえますか?」

言われた通りに、一番上の俺の背より少し高く積まれた一つ目の段ボールに手をかける。


「うわっ!」

だがそれは明らかに重さが20キロほどはあり、どうせ軽いだろうと思って特に姿勢をとらずに持ち上げた為、箱を持った瞬間思わずよろけそうになった。
 
 
 
 

⏰:12/02/04 11:14 📱:W62P 🆔:☆☆☆


#39 [正人]
 
 
 
 
「大丈夫ですか?丹葉君」

焦る俺とは裏腹に軽く爽やかに言う北峰。


「な、なんとか」

はあはあ言いながら20キロほどある段ボールを地面に置く。


「おそらく中身は土木関係の仕事に使われる機材といったところでしょうか」

「よくわかりますね…」

できれば箱を持ち上げる前に言って欲しいものだ。
 
 
 
 

⏰:12/02/04 11:16 📱:W62P 🆔:☆☆☆


#40 [正人]
 
 
 
 
「では次のをお願いします」

「え…」

まさかとは思うが、自分はやらない気なのか?

俺はあからさまにそう言わんばかりの表情を見せる。


が、北峰はそれ以上に“お願いします”と言わんばかりの笑みを浮かべた。


見つめ合うくらいなら、さっさとやった方がマシだ。


「……わかりました!」

「ありがとうございます。感謝しますよ、丹葉君」

本当に心から感謝しているのか疑問であるが、今はそれについて議論している場合ではない。
 
 
 
 

⏰:12/02/04 11:17 📱:W62P 🆔:☆☆☆


#41 [正人]
 
 
 
 
残りの段ボールも全て20〜30キロはあり、全て地面に降ろし終わった時には息切れ寸是だった。


「はあ…はあ…終わりました…」

「お疲れ様です」

地面にへたりこむ俺を、北峰は笑顔で見下ろしながら言う。


だが次に北峰が口にした言葉で、その笑顔が悪魔に変わる。


「さて、では元に戻してもらえますか?」

「…………………………は?」

「あれ聞こえませんでしたか?この段ボールを元の位置に戻してもらえますか、と言いました」

…嘘だろ。

じゃあ何の為にこんな量の…それも一つ何十キロもある段ボールを降ろさせたのだ!?
 
 
 
 

⏰:12/02/04 11:21 📱:W62P 🆔:☆☆☆


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