horrorU〜二重連鎖〜
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#32 [輪廻]
『安井、どうしたの? 桐谷は?』
男同級生が、体を震わせている安井に向かって尋ねる。
『い…いきなり…ナイフ持った男の人が…あ、現れて…』
安井は震わせた声でそう言うと、その場にいた皆の体が固まった。
『そ、それで桐谷…は?』
恐る恐る聞き返す幹事も、みっともないほど動揺している様子だった。
響歌と七瀬は同時に大きく息をのんで、安井の言葉を不安げな顔で聞く。
:11/12/28 11:31 :Android :akMYcjjE
#33 [輪廻]
すると安井は放心状態になりそうなのを抑えつつ、ゆっくり話し始める。
『あ、歩いてたら桐谷が…木の根元に誰かいるって言って…近づいたら…そこからナイフを持った人がいきなり飛び出してきて…』
『か、顔は見たの?』
『いや…顔は暗くて見えなかったけど…ナイフの刃は見えた…』
『それで桐谷は!?』
『わからない…。ただ、私に“お前は早く逃げろ”って…』
それを聞いた七瀬は『キリ!』と大声をあげると、誰も止める間もなく、一人で墓の奥へと走っていった。
:11/12/28 11:33 :Android :A8mKg7FU
#34 [輪廻]
『…ナナ!』
響歌の声も、すでに届かない…。
しばらくの沈黙の後、男同級生が幹事の目の前に行き、胸ぐらをグッと掴むと、下から幹事を睨みながら
『おい! もし桐谷に何かあったら、こんなくだらねぇ肝試しを提案したテメェの責任だかんな!』
と言って手を放すと、彼も墓の中へと走って行った。
『田中まで行っちゃった…どうすんの?』
『こ、こんな時は普通警察に電話じゃないの?』
『3人共、大丈夫かなぁ…』
次第に、皆がガヤガヤと騒ぎ始める。
:11/12/28 11:35 :Android :XXELG/RQ
#35 [輪廻]
幹事は責任を感じているのか、すっかり口を開かなくなり、その場に呆然と立ち尽くしていた。
響歌は、地面にしゃがみ込んで身体を震わせている安井の隣にしゃがみ、声をかける。
『ちょっと…いいかな?』
『…………』
安井はゆっくり響歌に視線を向けると、無言で小さく頷いた。
『襲ってきた人…顔少しでも見えたりしてない?』
『…………』
響歌の質問に、彼女は何度も首を横に振る。
すっかり怯えきった彼女にそれ以上何も言う事ができず、響歌は再び立ち上がった。
『皆…無事でいて…』
プロローグ【完】
:11/12/28 11:38 :Android :IKxaRu/6
#36 [輪廻]
第1話『戦慄の序章』
前編・狂也篇
:11/12/29 09:52 :Android :fIZxwcg.
#37 [輪廻]
朝っぱらから鳴り響く携帯電話の着信音。
狂也は発信者番号を少し見つめてから、眠たい目をこすりながら通話ボタンを押して電話に出る。
『はい……もしもし……』
ダルそうな声で出ると…
『大槻様でいらっしゃいますか? こちらデスネットの者ですが』
今度は機械を通した女性の声ではなく、男性の肉声が返ってきた。
『ああ…はい、そうですけど…』
寝ぼけ眼と声で言い返すと、電話の向こうの男性は少し間を空けてから…
『おいコラ、なんじゃその態度は! ボケ!』
と、突然豹変し怒鳴り声をあげてきた。
:11/12/29 09:54 :Android :gmdcApg.
#38 [輪廻]
その声に驚いた狂也は、携帯電話を耳に当てたまま反射的に布団からガバッと起き上がる。
その一喝で眠気が一気に吹き飛んだのは言うまでもなかった。
『ご…ごめんなさい、ごめんなさい!!』
その場で、頭を何度もペコペコと下げながら謝る。
すると男性は、また間を空けてから…
『では大槻様。今回は、いくつかご紹介できるお仕事が見つかりましたので御電話を差し上げました』
さっきまでの怒鳴り声とは一変して、再び紳士的な声に戻った。
:11/12/29 09:57 :Android :bJyDVTGE
#39 [輪廻]
『…………』
その声の変わり様に、狂也はしばらく口をポカーンと開けたまま黙る。
『大槻様?』
『あ! は、はい! すみません!』
『では早速、いくつかのお仕事の内容を説明をさせて頂きます。メモなどに取っておいてください』
『は、はい!』
またいつ怒鳴り声が飛んでくるかわからない恐怖にすっかり縮こまりながらも、その辺にある紙とボールペンを素早く手にする。
『いいですか? では……』
どんな仕事なのかとドキドキしながら息をのむ。
そして、少し間を空けてから言った男性の言葉に、狂也の身体が一瞬にして固まる…
『一つ目。内容は簡単です。
……女性の遺体を山に埋めてください』
:11/12/29 10:07 :Android :6yBJBiY.
#40 [輪廻]
“は? この人は何を言っているんだ?”と思った。
『……遺体を…埋める……?』
『そうです。簡単ですよね?』
この時“この会社もこの人もまともではない”と直感で思った。
しばらく無言のままでいると…
『おいコラ! …聞いてます?』
再びヤクザのような声で一喝した後、また紳士的な声に戻す。
『や…やめます…いいです!』
さすがにヤバいと感じた狂也は、パニックになりながら震えた声で断った。
:11/12/29 10:10 :Android :sND6McsE
#41 [輪廻]
一つ目から有り得ない内容の仕事なのだから、他も同じようなものに違いないと。
しばらくして電話の男性は、怒鳴る事なく冷静にこう言い放った。
『あなた…殺しますよ?』
そのやんわりとした口調と、言った言葉の内容にどこか気味悪さを感じ、一瞬背筋が凍った狂也だったが、冷静に思い返してみる。
『(…殺しにくる? 場所もわからないのにどうやって殺しに来るっていうんだよ)』
そう考えると自然に笑みがこぼれてきたが、次の男性の一言でその笑みはすぐに引っ込む事になる。
:11/12/30 14:10 :Android :j9L9UqqY
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