horrorU〜二重連鎖〜
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#70 [輪廻]
今まで見られなかった後部座席を主に調べていると、土木や建設関係に使われるような材料が無造作に置かれている。
それで、あの男はそういった職業なのだろうと納得した。
そんな様々な材料の中、携帯電話のライトに反射して、チェーンソーの刃が見えた。
男に襲われた場合の武器に最適かもしれないー
一瞬そう思ったが、これは立派な刃物。
自分は殺人者にはなりたくないというのもあり、チェーンソーを手にするのはやめる事にした。
別の方向にライトを照らそうとした時、チェーンソーの刃の一部に何か見えたような気がして、そこにライトを当て直す。
:12/02/21 13:28 :iPhone :8biSCrPU
#71 [輪廻]
その刃先には薄黒い血のようなものに混じって、何かがこびりついていた。
『うっ…』
それを見て思わず声を出し、口元を手で抑えつつ、こびりついたものに顔とライトを近づける。
『(うわ…これ…)』
それは、何かの肉片のようなものだった。
それが血と一緒にこびりついているという事はー
背筋が一瞬にして凍りついた。
人は、予想外の事が起こったり、予想外の結論に至った時、一瞬思考が停止するー
まさにその通りの事が起きた。
:12/02/22 18:54 :iPhone :V9qdvDAI
#72 [輪廻]
同時に身体がまるで金縛りにあったかのようにいう事がきかなくなり、唯一動く視線だけを車内のあちこちに向ける。
そこで、さっきは気づかなかったが、よく見ると座席には所々に斑点模様のようにできた薄黒い血のようなものが付着しているのに気づいた。
『(まさか…)』
それを見て、考えたくもない結論に達する。
“あの埋められた死体は、生前この車内であの男に殺られたもの?”
それも、このチェーンソーを使って…
:12/02/22 18:55 :iPhone :V9qdvDAI
#73 [輪廻]
そんな外国のホラー映画のような事があるのかと疑いたくはなったが、事実ここに今、刃先に血と肉片がこびりついたチェーンソーが存在しているのだ。
自分は今までそんな残虐な殺し方をする男と一緒にいたのだと思うと、余計に背筋が凍った。
そんな時ー
林の向こうから木の葉や枝を踏みつけながらこちらに向かってくる足音が聞こえた。
逃げなければー
それしか選択肢はなかった。
途端にさっきまで動かなかった身体がフッと動くようになり、後部座席に向けていた首を引っ込め、助手席側から素早く外に出る。
:12/02/23 10:10 :iPhone :q7HgzDwU
#74 [輪廻]
大きな足音を立てないように駐車場を出て道に出ると、そこから離れるべくダッシュで最初にきた道の方向へと走った。
走っている最中は段々と、家に着いたらデスネットの会社に自分の命が狙われそうになったと苦情を入れたい一心になり、怒りに任せて走り続ける。
途中、別の車が通ったら乗せてもらおうかとも思ったが、夜になぜこんな山の中に一人でいるのだと不審に思われかねない。
当然その理由を言える訳もないし、別の言い訳も思いつかない。
ここは逆に、人に見つかってはならないと踏んだ。
:12/02/24 10:42 :iPhone :6cuUJ.72
#75 [輪廻]
15分ほど走り息も切れかかってきたところで、ポケットに入れていた携帯電話のバイブが鳴った。
バイブに気づいた狂也は、ふらふらと道の脇に移動し、足を止めて携帯電話を取り出す。
“03-XXXX-XXXX”
ディスプレイに表示されている番号。
デスネットからの着信だった。
こちらも言いたい事があったので丁度いいと思い、すぐ電話に出る。
『はい』
不機嫌かつ、疲れた声で狂也が言うと
『大槻様ですか? こちらデスネットの日向ですが』
狂也の今の状況を知ってか知らずか冷静な紳士的口調で返す日向。
:12/02/24 10:44 :iPhone :6cuUJ.72
#76 [輪廻]
『はい、大槻です』
『大槻様。現在どちらにいらっしゃいますか?』
『え…』
日向の質問に、言葉に詰まる狂也。
あの男がデスネットに、自分が逃げ出した事を報告したのだろうという事はすぐわかった。
狂也も負けじと殺されそうになった事を説明する。
『実はさっき、死体を埋めた男に殺されそうになって…思わず逃げちゃったんですけど』
そう説明すると向こうは少し間を置いた後…
『なるほど、そうでしたか。しかし先ほどその男性から電話がありましてね。彼は、大槻様…あなたが仕事を途中放棄して逃走されたと仰られていましたが…』
『…え?』
『仕事の途中放棄はデスネットでは禁止行為となっております。この意味、わかっていますね?』
『いやちょっと…!俺は…!』
『仮にあなたが殺されそうになったのだとしても、そういった依頼者側の私情につきましてはデスネットは一切の責任を負わない事となっておりますので』
日向の一方的かつ不条理な説明を聞いて、狂也は携帯電話を耳に当てたまま呆然と立ちつくす。
:12/02/26 07:01 :iPhone :DkYIXvO.
#77 [輪廻]
『もしもし大槻様? おわかり頂けましたか?』
『……けんな…』
『はい? なんですって?』
狂也は片方の拳を強く握り、ぶるぶると震わせた。
そしてー
『ふざけんな! 人に死体埋める仕事させといて何が責任負えないだよ!! アンタの会社頭おかしいんじゃねぇの!?』
大声で怒りを電話の向こうの日向にぶつけた。
相手が冷静な口調だからこそ、怒りは倍になる。
:12/02/26 07:02 :iPhone :DkYIXvO.
#78 [輪廻]
夜の山に狂也の大声がこだまするように響く。
一方、電話口越しに大声を出された日向は狂也の豹変ぶりに驚いたのか、黙っている。
が、すぐに口を開いた。
『大槻様。お言葉ですが、お金はそう楽に手に入るものではありません。
それなりの報酬にはそれなりのお仕事がある訳です。
それに元々あなたの方から求人広告をご覧になった上で我が会社にお電話した訳ですよね?
ご自分の事を棚に上げて、頭がおかしいと仰られるのは誠に心外ですね』
日向は態度を変える事なく冷静な口調で長々と返した。
狂也は反論しようにも、頭の中は、あの男に命を狙われているという恐怖感とデスネットに対する怒りで混乱し、思うように声が出ない。
『もしもし、大槻様? 大槻…』
ピッー
ここで狂也は電源ボタンを連打し通話を切ると、携帯電話を地面に思い切り強く叩きつけた。
:12/02/29 09:54 :iPhone :b2PBU4DM
#79 [輪廻]
同時に髪をくしゃくしゃに掻き毟りながらその場にしゃがみ込む。
数分して、地面に転がっていた携帯電話のバイブが鳴った。
ゆっくり手を伸ばして拾い上げ、画面を見る。
“090-XXXX-XXXX”
今度は見知らぬ携帯電話からの着信だった。
だが、狂也がそれに応答する事はなかったー
電源ボタンを押し通話を切り、長押しして携帯電話の電源をも切ると、それをポケットに入れて立ち上がる。
そしてそこからとぼとぼと街へ向けて歩き出したー
前編・狂也篇【完】
:12/02/29 09:59 :iPhone :b2PBU4DM
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