砂糖が甘い理由
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#331 [花◆AV8KevAYKk]
ゃっぱり今カラ更新します


俺は病室の番号を見ながら紗弥に連れられるまま,廊下を歩いた。

先端にほど近い,広そうな個室の前で紗弥は足を止めた。205号室…
名前は【城谷 裕也】

うわ…やべ。
俺なんだか緊張してる。
紗弥を横目で見ると,俺の方を見ていた。

[仲良くしてあげてね]
紗弥が裕也君のことを大切にしてる気持ちが伝わる。

[おッおう。ケーキ,一緒に食べるんだもんな]

⏰:06/08/21 21:51 📱:F700iS 🆔:9MSW5YGA


#332 [花◆AV8KevAYKk]
病室の扉を開けると,柔らかい風が吹いた。
紗弥の甘いかおりが漂う…
いや,部屋中紗弥と同じ匂いがする。

[裕也ぁ〜]

紗弥は広い部屋の片隅にある白いベッドのカーテンを勢いよく開けた。

ベッドの上には水色のパジャマを着た,細くてなんとも華奢な男の子が体を半分だけ起こして,空を見上げていた。
髪は茶色くて,目が丸い。髪がもう少し長かったら女の子に間違いそうだ。
[お姉ちゃん!]
裕也君は紗弥を見て嬉しそうに言った。

⏰:06/08/21 22:01 📱:F700iS 🆔:9MSW5YGA


#333 [花◆AV8KevAYKk]
しかし,その愛らしい顔は紗弥の後ろについていた俺の姿を見て,一瞬だけ顔色を曇らせた。

紗弥はそれに気付いて

[ほら,この前写メで見せた…達也だよ?]

[あッ,初めまして!柿山達也でーす…]

一応俺なりの最大の微笑みをしたつもり。
裕也君は写メを思い出したみたいに,あッという顔をして紗弥と目を合わせて笑った。

そしてすぐ俺に向き直して,白くて綺麗な歯を出して笑ってくれた。

[城谷裕也です!]

⏰:06/08/21 22:07 📱:F700iS 🆔:9MSW5YGA


#334 [花◆AV8KevAYKk]
[ねぇ裕也!うちら一緒に裕也の好きなケーキ買ってきたんだよ〜?
ねッ,達也]

[え!ほんとう?]

裕也君は,可愛い笑顔をより一層にして笑い,ベッドの窓側から椅子をとって並べてくれた。

[ほらッ。俺も一緒に食っていい?]

俺は愛想よく裕也君がとってくれた椅子に座って,ケーキの箱を裕也君に渡した。紗弥もすぐ横に座った。

紗弥は学校の紗弥じゃ考えられなかったくらい,裕也君の前ではよく笑って,よく喋った。
俺もなんだかそれが嬉しかった。

⏰:06/08/21 22:14 📱:F700iS 🆔:9MSW5YGA


#335 [花◆AV8KevAYKk]
紗弥は棚から小皿とフォークを出して,ケーキを取り分けた。

[裕也,今は一個ね。]

[うん!]

裕也君にはガトーショコラ。俺と紗弥は苺のショートケーキ。
だけど箱にはまだケーキが残ってる。一体裕也君に何個買ったんだよ。

B人でケーキを食べていると,なんだか俺も家族の一員みたいになれた。

裕也君はおいしいね,と俺に笑ってくれた。
可愛くていい子だな…

みんなが食べ終わると,紗弥はすぐ使った食器を洗ってくると言って,ついでに花瓶を持って病室を出て行った。

⏰:06/08/21 22:22 📱:F700iS 🆔:9MSW5YGA


#336 [花◆AV8KevAYKk]
…おいおいおいおい!!
A人にされると何話したらいいのかわからねえーよ。
と思っていたら案の定沈黙…

裕也君はさっきみたいに窓の外を見て,まぶしそうにしていた。

[あ…カーテン閉めようか?]

俺が立ち上がって動こうとすると,裕也君は俺の服を掴んで,ゆっくり首を横にふった。

[ありがとう!でも僕,空が好きだからいいんだ]
そう言って笑った顔は,決して紗弥には似ていないんだけど,雰囲気や瞳の奥が紗弥にそっくりだった。

⏰:06/08/21 22:30 📱:F700iS 🆔:9MSW5YGA


#337 [花◆AV8KevAYKk]
そういえば,紗弥とはじめて会ったときも,紗弥は空っていうか,太陽を見上げてたよな。
そんな部分がそっくりってわけか。

それからしばらく,俺の話や裕也君の質問攻めに答えたりして,仲良く話した。

[ねぇ,お姉ちゃんって優しいでしょ?僕,お姉ちゃん大好きなんだ〜!
お兄ちゃんは,お姉ちゃんのこと好き?]

裕也君は何とも純粋で真っ直ぐだった。
Aでこんなこと言うのはきっと裕也君くらいだろうな。
菜々子なんか絶対言わない。

でも,そんな顔されるのはすごく嬉しかったけど,少しだけまたなぜか胸が苦しくなった。

⏰:06/08/21 22:39 📱:F700iS 🆔:9MSW5YGA


#338 [花◆AV8KevAYKk]
[俺も好きだよ,紗弥のこと大好きだよ。]

[ほんとー?やっぱりお姉ちゃんは人気者なんだね]

裕也君は無邪気に笑う。
うん…ほんとに,好きだよ。俺は紗弥が大好きだ。

そんな話を終えたころ,紗弥が部屋に戻ってきた。と,もう一人。
白衣を着た長身の男の人。もちろん一目で医者だとわかった。

⏰:06/08/21 22:45 📱:F700iS 🆔:9MSW5YGA


#339 [花◆AV8KevAYKk]
[あッ,中林先生!こんにちは。
お兄ちゃん,僕の担当のお医者さんだよ]

裕也君は,その中林先生という人に丁寧にあいさつをして,嬉しそうに俺に紹介してくれた。

[はいこんにちは,裕也君。元気だね。
えっとお兄さん…?]

中林先生は細い目を俺に向けて,頭を少し下げた。
[あッ俺は…]
俺が自分のことをはなそうとするとすぐ紗弥が横から口を出した。

[私の同級生です。
裕也に会わせたくて,今日連れてきただけで…]

⏰:06/08/21 22:55 📱:F700iS 🆔:9MSW5YGA


#340 [花◆AV8KevAYKk]
[そうかね。優しそうなお兄さんだね〜
裕也君,紗弥さん]

と言って,顔を緩めた。

[はい!
先生,今日はどうしたんですか?]

紗弥も裕也君と同様,隣で頷いてくれた。

[今日はね,大事なお話があるんだよ]

俺はなんだか中林先生の口調と,紗弥の優しそうだけど,深刻を交えた顔付きを見て,手術の話だと思って,席を外そうとした。

⏰:06/08/21 23:00 📱:F700iS 🆔:9MSW5YGA


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