砂糖が甘い理由

鳴り止んだ携帯につられて五人が静まった｡

[さ…紗弥???]

そう｡
校門に立っているのは紛れもなく,紗弥だ｡

[[えっっっ!!!!]]

小声でみんなが荒びる｡

紗弥は真っ直ぐ俺に向かって歩いてきた｡
だんだん暗がりからはっきりと紗弥の姿が浮かび上がる｡

[まだいてよかった｡
メール見てないでしょ]

紗弥は俺の真っ正面まで来て笑った｡

[えっ…]

俺は慌てて携帯を開いた｡
メールが二件｡

一件はついさっき｡あの着信は俺か…

もう一件は一時間前…
騒いでて気付かなかった｡

[悪い…気付かなくて]

[いいよ｡いたなら]

淡々と紗弥は話した｡

ヒュ～

誰かが横で口笛を吹いた｡
それに最初に反応したのは紗弥だった｡

[あれ,篠田…と,誰???]

紗弥は周りに気付いて,最初に優の顔だけを判断して名前を呼んだ｡

[[たっ達也～]]

優以外の三人が小声で俺を促した｡
紹介しろってことだろう｡

[あっ…
右端が藤村で,真ん中が田中～んで,こいつが青木]

[あぁ…なんだ知ってる｡
みんな三組じゃん]

[えっ!!!!俺のこと知ってるの??紗弥ちゃーん]

翼が調子こいた｡

[いつも生徒指導に捕まってるツイスト茶髪｡
授業中もうるさいしね]

紗弥は無表情で翼に強く言い放った｡
みんな爆笑!!!!

[城谷…毒舌だな]

翼は苦く笑った｡

[俺らのことも知っててくれたんだな～]

名津が豪に笑いかけて,紗弥にも愛想よく笑った｡
名津はいつも優しい顔してるんだよな｡

[青木はいつも帰りに机の亀裂整えてくれるよね]

[藤村はギャグセンスないからもっと磨きなよ]

紗弥は二人の様子を語ると俺の脇に回って小さく笑っていた｡

[[えっ…]]

なんかみんな驚く｡
だって紗弥がこんなに知ってるなんて｡
いっつも学校来てないのにさ｡
ちゃんと見ててくれてんだな…
そうゆうところが好きだ｡

紗弥はきっと本当はまじで学校好きなんだろう｡

アゲ

楽しみにしてます

主ｻﾝガンバ

新ｻﾝ

ｽｲﾐｰｻﾝ
いつもぁりがとぅござぃます

翼,豪,名津と別れて優と紗弥と俺でゆっくりと帰り道を歩いた｡

優は俺らの姿を和やかに見て
[なんだか達也は変わった]と言った｡

俺には全くわけがわからかった｡
別に自分では性格変わったと思わないし…
でも,紗弥の前では何と無く素直になれているような気がしたのは,優にそう言われたから｡