――CHANDAN。

　　

「お前の笑顔は
人を助ける。
どんなに悔しい事が
起こっても
笑顔だけは
忘れるな…？
お前のじいちゃんは
そうだったぞ…？」

「…うん。」

いつになく
真剣な祖母の顔に
思わず頷いた。

これが
ばあちゃんと話す
最期の日だったね。

　　　

「お前は優しい。
良い男だよ。
鶴田家の誇りだ。」

ばあちゃんは
気づいてたのかな？
自分の身体の事……

「…おやすみっ!」

戸惑いを隠せずに
部屋を飛び出した。

真っ暗な廊下を
うつ向いて
早歩きで歩く。

　　　　

目が覚めると
目には涙が
たまっていた。

最近よく見る夢。

ばあちゃん。

俺・どうしたのかな？

　　　

気付くと携帯を
手に取っていた。

「もしもし…？」

相手は返事をしない。

「今日は本当ごめん
親に紹介する前に
あんな事………」

波は続ける。

「明日…ってか今日
記念日だからさ…？」

「俺はずっと由美の事
絶対嫌いなんかには
ならないからね？」

　　

「うん…。
私もごめんなさい。
ひどい事言って…」

由美子が口を開いた

「明日は…
会えない？」

母の言葉が
頭をかすめる。

「…夜なら。」

「夜ぢゃやだよ…」

　　　

「次の日なら!」

波はﾊﾞｲﾄを休む
決意をしていた。

「次の日は友達が
泊まりに来るんだ」

女友達なら良いの？
俺も泊まり行きたい

波は言葉を飲み込み
そっか…と呟いた。

　　

「ごめんっ。
お父さん呼んでる…」

「あー分かった!
ぢゃあおやすみ!」

波は電話を切った。

お香を付けて
深呼吸をする。

ベッドの下の
埃をかぶった
アルバムを取り出す

　　

書道をしている姿

活け花をしている姿

家での写真は
そればっかりだった。

祖母との写真は
小学校の運動会で
終わっていた。

懐かしそうに
祖母を見つめる。

祖母が死んでから
波は変わった。

　　　

髪の毛を染め初めて

万引き。

早退。

親を無理矢理
納得させて
バスケットも始めた

小学生のくせに
いきがってたと
今なら思う。

今の先輩達と
出会ったのも
この時期だ。

そのせいか
小学４年生から
卒業までの写真は
全く無かった。

　　　

中学に入ると
もっと酷くなった。
親に取ってもらった
写真ではなく
自分で撮った写真だ

特に…中学1年。
眉毛は全く無くて
制服もちゃんと
着ていた記憶なんて
少しも無い。

同い年の友達より
先輩とつるんでいた

あんなに好きだった
バスケット部も
入ってすぐ辞めた。

「きもっ……」
写真を見て
波は苦笑いに呟く。