あなたの願望叶えます

駅で待ち合わせて
車でドライブに
出かけた。

加奈子にバレて以来
家にも帰らず
会社にも
行っていなかったが
俺はスーツを着て
仕事帰りを装った。

夕食を食べ
ホテルに行った。

叶羽の服を
脱がせた俺は
言葉を失った。

叶羽のからだは
痣だらけになっていた。

叶羽は慌てて
タオルでからだを隠し
下を向いた。

俺はそのタオルを取り
叶羽に聞いた。

「どうしたの、これ？」

「あいつに…」

聞き取れないほど
小さな声だった。

殴られたことを
思い出したのか
叶羽のからだが
震え始めた。

「抵抗したら
　殴られて…何度も…」

震えながらも
必死に説明しようと
声を振り絞る叶羽を
俺は抱きしめた。

「もういい。
　わかったから」

「嫌だったの…
　あいつに触られるの。
　だから…」

「わかったから。
　落ち着いて」

「…嫌だった」

「うん」

「あなた以外の人に
　触れられるのが」

俺は思わず
からだを離し
叶羽の顔を見た。

「抵抗したけど
　ダメだった。
　ごめんなさい…」

「謝まらなくていい。
　叶羽が悪いんじゃない」

俺はさっきよりも強く
叶羽を抱きしめた。

悪いのはあいつだ。

俺は自分の
したことも忘れ
怒りに震えた。

「あたしのこと
　嫌いになった？」

「なってないよ」

「怒った？」

「怒ってないよ」

俺が答えると
叶羽はからだを離し
俺の顔を見つめて

「でもすごく
　恐い顔してる」

と笑った。

その日は
何もしなかった。

痣だらけの
叶羽を抱く気に
なれなかった。

嫌いになったから
じゃない。

むしろ俺は
叶羽を愛していた。

帰りぎわに
叶羽が俺に言った。

「名前…
　聞いてもいい？」

その時になって
叶羽が俺の名前を
知らないことに
気づいた。

「圭太」

俺は答えた。