からっぽの心
最新 最初 🆕
#301 [みぃ]

『お姉ちゃんのこと殺したやつなんかと・・・。』

「夢芽ちゃんの中に誤解があるから。」


今度は真剣な表情できっぱりと言った。


『―――は・・・?』

「オレの事はどんなに恨んでくれても構わないけど、
 美優のこと誤解してるから。」

⏰:07/10/07 18:57 📱:SH903i 🆔:iKYy846Y


#302 [みぃ]


何言ってんの、こいつ。


『・・・はぁ?!
 お姉ちゃんのこと、あたしよりも知ったような言い方しないでよ!!』

「気に障ったならごめん。
 でも・・・。」

『うるさいッ!!
 あたしはあんたと話したくない!』

「夢芽ちゃ・・・」

『あんたなんか、大嫌いッ!!』

⏰:07/10/07 19:02 📱:SH903i 🆔:iKYy846Y


#303 [みぃ]







―――パンッ



音がしたと共に、左頬に痛みが走る。

⏰:07/10/07 19:09 📱:SH903i 🆔:iKYy846Y


#304 [みぃ]


「・・・逃げてんじゃないわよ!」


由美の声で、
やっと殴られたことに気付いた。


『―――いった・・・。』


一昨日カッターの刃で切れた傷の痛みと同じ場所。


痛みがシンクロする。

⏰:07/10/07 19:13 📱:SH903i 🆔:iKYy846Y


#305 [みぃ]

『――何すんだよ!
 あたしが何から逃げてるっつーの?!』


痛みの増す左頬を押さえながら由美を睨む。


「全部だよ!
 栗山さんが死んだことからも大志からも自分からも!!」

『―――逃げてねぇよ!
 アンタに何が分かんの?
 関係ないやつが人の事情に首突っ込んでくんじゃねぇよ!!』


そう言って由美の体を突き飛ばす。

⏰:07/10/08 22:56 📱:SH903i 🆔:jx76hIaE


#306 [みぃ]


みんなして土足で入ってこないでよ。


あたしの心の中に入ってこないで。




由美は一瞬フラついたけど、すぐに態勢を取り戻して、続ける。


「―――そうだよ。
 関係ないよ。
 でも、大志を傷つけるのは許さない!!」

⏰:07/10/08 22:59 📱:SH903i 🆔:jx76hIaE


#307 [みぃ]



その瞳は、真っ直ぐだった。


大原も豊も持ってるのに、
あたしは持ってない真っ直ぐな眼差し。

あたしはこの目に弱い。




今、気付いた。

この女、
大原のことが好きなんだ。

⏰:07/10/08 23:02 📱:SH903i 🆔:jx76hIaE


#308 [みぃ]


「由美、もういいから。」


しばらく黙って話を聞いていた大原が口を開いた。


「―――でも・・・。」

「ありがと。
 もう授業戻って?」


名残惜しそうな表情を見せながらも、
由美は三年生の校舎へ歩いていった。

⏰:07/10/08 23:05 📱:SH903i 🆔:jx76hIaE


#309 [みぃ]

「大丈夫?」


大原があたしの頬を触れようと伸ばす手を、弾く。


『・・・触んないで・・・。』


力なく呟いた言葉に、
大原が微笑む。


「はは・・・二回目・・・。」

『―――二回目・・・?』


大原の声が今までと違うように聞こえて、
その言葉が気になった。

⏰:07/10/08 23:09 📱:SH903i 🆔:jx76hIaE


#310 [みぃ]

「あ、ちょ、こっち!」


大原は素早くあたしの手をとって、
体育館の方へと駆け出す。


『ちょ・・・やだ!何?!』


慌てて離そうとするけど、
思った以上に強い力だった。

⏰:07/10/09 09:09 📱:SH903i 🆔:DhfKCPBE


#311 [みぃ]

大きな手。

きっとお姉ちゃんと繋いだこともある手。


こんな時に、
昨日、豊に繋がれた手の温もりを思い出して複雑な気分になってみたり。


この人の考えていることが全くわからない。


人気のない体育館裏に着いたところで、
大原の足が止まった。

⏰:07/10/09 09:12 📱:SH903i 🆔:DhfKCPBE


#312 [みぃ]


『・・・なに?』


あたしの問いに大原は振り向く。


「ごめん、先生来るの見えたから。
 あそこじゃちゃんと話せないし。」

『・・・あたしは話すことなんてないし。』


わざとらしくため息をついた時、
大原が吹き出した。

⏰:07/10/09 09:14 📱:SH903i 🆔:DhfKCPBE


#313 [みぃ]

「ははっ!
 ほんっと頑固だね。」

『・・・はぁ?!』

「美優が言ってたまんま!!」


大原は何がそんなに面白いのか、ケラケラ笑っている。

なんか馬鹿にされてる?


「・・・オレ、夢芽ちゃんに会いたかった。」


急に真面目な顔して言うから、反応できない。

⏰:07/10/09 09:17 📱:SH903i 🆔:DhfKCPBE


#314 [みぃ]

「ずっと美優から話聞いてて、絶対会ったら仲良くなれる気がしたから。」

『・・・話す気ないってば。』

「・・・うん、独り言だと思っていーよ。」


そう言って体育館のドアの前の階段に腰を下ろす。


そんなこと言われたら、
ここに居なきゃあたしが逃げたみたいになるじゃん。

そんなのヤだ。

⏰:07/10/09 09:21 📱:SH903i 🆔:DhfKCPBE


#315 [みぃ]

『・・・・・・・・。』


しぶしぶ、少し離れたところに腰を下ろす。

そんなあたしを見て、
大原が嬉しそうに笑った。


「オレ、美優に会えて良かった。」


大原がふいに呟く。

⏰:07/10/22 08:34 📱:SH903i 🆔:zX/s5lQU


#316 [みぃ]

今、この状況で、
いきなりそんな言葉が出てくるなんて思ってもいなかったあたしは、
馬鹿みたいに口を開けて大原を見る。


「心からそう思う。」

『・・・よっく言うよ。
 お姉ちゃんのこと・・・。』
「殺したよ。」


大原があたしの言葉を遮った声は落ち着いていて、
あたしの心を掻き乱した。

⏰:07/10/22 08:40 📱:SH903i 🆔:zX/s5lQU


#317 [みぃ]


心臓が大きく波打つ。


「美優はオレが殺した。」




―――ドクンッ



ずっと認めさせたかった言葉。

⏰:07/10/22 08:43 📱:SH903i 🆔:zX/s5lQU


#318 [みぃ]


のうのうと生きながらえている彼に自責の念を感じてもらうために。



―――ドクンッ



なのに・・・。

どうして?

⏰:07/10/22 08:44 📱:SH903i 🆔:zX/s5lQU


#319 [みぃ]

大原の口からこんなにはっきりと肯定されると、
胸が苦しい。


心臓が自分のものじゃないみたいにドクドク言っているのが分かる。


うるさいよ。

今、動揺してる場合じゃないの。

せっかく憎い相手が目の前に居るのに。


心が押し潰されそうだ。

⏰:07/10/22 08:48 📱:SH903i 🆔:zX/s5lQU


#320 [みぃ]


「オレが殺したも同然なんだよ・・・。」


そうこぼした大原の声は消えてしまいそうな程か細いものだった。


『・・・どうゆう意味?』


独り言のはずだったのに、
大原に話しかけてしまっている自分がいることに気付いた。


「さっき由美が言ってた通りだよ。」

⏰:07/10/23 18:31 📱:SH903i 🆔:D4maMl0Q


#321 [みぃ]

“自分を犠牲にして
突き飛ばした”


由美の言っていた言葉が頭の中で響く。


「―――あの日・・・
 美優が死んだ日・・・
オレの誕生日だったんだ。」



3月27日


知ってる。

⏰:07/10/23 21:31 📱:SH903i 🆔:D4maMl0Q


#322 [みぃ]

知ってるよ。


お姉ちゃん、
一ヶ月も前から張り切ってたから。


決められたおこづかいをやりくりして

プレゼント買って

施設長に外出時間の延長説き伏せて

朝早くに起きてオシャレして。

⏰:07/10/23 21:33 📱:SH903i 🆔:D4maMl0Q


#323 [みぃ]

「いってきます」


そう言って笑顔で出て行った。


「あの日、
 朝から遊んで飯食って、
 美優を送ってる帰り道だったんだ。」


あたしは何も言わずに大原の言葉を待つ。

いや、何も言えなかっただけなのかもしれない。

⏰:07/10/23 21:36 📱:SH903i 🆔:D4maMl0Q


#324 [みぃ]

「そん時、信号待ちで・・・
 まさかトラックが突っ込んでくるなんて全然考えてなくて・・・。」


大原の声はどんどん小さくなっていき、
少し震えているようにも聞こえる。


「トラックが突っ込んで来た時・・・
 頭ん中が真っ白になった。
 動けなかった。
 ・・・守らなきゃいけないものを・・・
 守れなかった・・・。」

⏰:07/10/23 21:41 📱:SH903i 🆔:D4maMl0Q


#325 [みぃ]

そこまで言うと、
大原は頭を抱えて俯いてしまった。





・・・地面に水滴が落ちて、
一カ所だけコンクリートの色が変わる。



誰の涙?



・・・・・・・・・あたしだ。

⏰:07/10/27 02:47 📱:SH903i 🆔:XMpnRYFs


#326 [みぃ]

大原が唇を噛み締め、
思い出なんて言葉じゃ軽すぎるくらいの苦い記憶を吐き出す。


大原が笑顔で軽快に発していた言葉とは比べものになんないくらい

小さくて

下手な言葉で

情けなく震えてたけど、


今までのどの言葉よりもあたしの心に響いてた。

⏰:07/10/27 02:51 📱:SH903i 🆔:XMpnRYFs


#327 [みぃ]

あんなに頑なだった心が不思議と大原の次の言葉を待ってる。



真実を知りたいって。



「モロにはぶつからなかったけど・・・。
 出血がひどくて・・・。
 病院に着く前にはダメだった。」


俯きながらも大原は話すことを止めない。

まるでそれが義務であるかのように。

⏰:07/10/27 02:56 📱:SH903i 🆔:XMpnRYFs


#328 [みぃ]


「でも・・・。
 美優、最後に笑って言ったんだ。」

『・・・・・・・・・・何を?』


それまで俯いていた大原が顔を上げてあたしを見る。

大原の瞳にも大粒の涙が溜まっている。



言って。

真実を。

⏰:07/10/27 02:58 📱:SH903i 🆔:XMpnRYFs


#329 [みぃ]

「‘ありがとう。
 夢芽のことよろしくね。
 それと、ずっと笑ってて。’
 って、それだけ。」












お姉ちゃん。

⏰:07/10/27 03:00 📱:SH903i 🆔:XMpnRYFs


#330 [みぃ]



「ありがとうなんて・・・
 オレのセリフだって・・・
 最後まで人の心配して・・・馬鹿だよ。」


そこまで言うと、
大原はまた下を向いた。


「・・・ごめん、美優。
 今だけは笑えねぇや。」


そう呟き、肩を震わせて泣いた。

⏰:07/10/31 00:15 📱:SH903i 🆔:KBelshAA


#331 [みぃ]


きっと大原はお姉ちゃんのこと、
心の底から愛してて


お姉ちゃんも同じくらい大原のことが大切で


目の前で自分を守って恋人が死んでしまった大原の心の傷は
あたしよりもっと深くて



毎日毎日こうやって人目に触れない所で泣いていたんだと思う。

⏰:07/10/31 00:18 📱:SH903i 🆔:KBelshAA


#332 [みぃ]


人生で一番幸せな日に
世界一好きな人を失って

あげく、その妹には恨まれてて


みんなの前では‘笑顔’でいることを約束して


どれだけ傷ついたの?


どれだけ自分を責めたの?

⏰:07/10/31 00:21 📱:SH903i 🆔:KBelshAA


#333 [みぃ]

もう とっくにお姉ちゃんのことは吹っ切れて、

新しい人生を歩んでるんだと思った。



でも、逆だよね。



お姉ちゃんのこと、
忘れられないからこそ、


ずっと笑ってたんだよね?

⏰:07/10/31 00:24 📱:SH903i 🆔:KBelshAA


#334 [みぃ]

何も知らないで最低野郎はあたしじゃないか。

どうしてあたしはお姉ちゃんが愛した人を信じられなかったの。



大志くん、ごめんなさい。

信じられなくて。



お姉ちゃん、ごめんなさい。

馬鹿な妹で。

⏰:07/10/31 00:27 📱:SH903i 🆔:KBelshAA


#335 [みぃ]

『・・・ごめ・・・なさ・・・。』


あたしが涙ながらに発した言葉に、
大原はあたしを見つめる。


『あたし・・・何も知らないで・・・
 ずっと大志くんのこと傷つけてた・・・。
 自分の存在隠して・・・
 嫌がらせして・・・。』


そこまで言うと、
大原は首を横に振った。


「知ってたよ、夢芽ちゃんのこと。」

⏰:07/11/05 09:39 📱:SH903i 🆔:Q0ikKyaI


#336 [みぃ]

『・・・え?』

「入学式の日に・・・
 オレら ぶつかったよね。」


入学式の日・・・。


「夢芽ちゃんがよろけて・・・手ぇ跳ねのけられたけど。」


そう言って、
大原は優しく微笑む。


『―――あ・・・。』

⏰:07/11/05 09:43 📱:SH903i 🆔:Q0ikKyaI


#337 [みぃ]

「夢芽ちゃん、豊くんといたよな。」



そうだ。


あたし、豊の手を振り払って、大原にぶつかって・・・。


「思い出した?」

『・・・はい。
 でも、何であたしの顔知って・・・?』

⏰:07/11/05 09:45 📱:SH903i 🆔:Q0ikKyaI


#338 [みぃ]

あたしの問いに、
大原がまた笑う。


「美優にそっくりだったから。」

『――――え・・・?』

「顔見たことなかったけど、すぐ分かったよ。
 美優の妹だって。」




妹――――・・・。

⏰:07/11/05 09:48 📱:SH903i 🆔:Q0ikKyaI


#339 [みぃ]

『嘘つかないで。
あたしとお姉ちゃん、血ぃ繋がってないもん。
 顔、全然似てないし。』

「そうかな?
 そっくりだと思ったけどなぁ。」

『嘘!!どこが!?』


血の繋がりのない姉妹。

別に戸籍上姉妹なわけでもない。


単に寂しさを紛らわすだけの“ごっこ”でしかない姉妹。

⏰:07/11/05 09:53 📱:SH903i 🆔:Q0ikKyaI


#340 [みぃ]


「美優と同じ目してた。」

『・・・目?』

「オレと美優が初めて会った時と同じ目してたよ。
 夢芽ちゃん。

 誰も信じられない、人の中に入ってくるな、って目。」



言葉を失った。


ほんとに?

⏰:07/11/12 09:15 📱:SH903i 🆔:y8As4P4c


#341 [みぃ]


「すぐ分かったよ。
 むしろ、一緒すぎてびっくりした。
 やっぱ、姉妹だね。」




涙が溢れた。



あたしとお姉ちゃんが似てる?

おんなじ目?


・・・ほんとに?

⏰:07/11/12 09:19 📱:SH903i 🆔:y8As4P4c


#342 [みぃ]

適当なこと言ってるのかもしれない。

本当はそんなこと思ってないのかもしれない。


だけど、
血の繋がりのない。

今となっては思い出だけでしかお姉ちゃんと繋がれないあたしにとっては、



最高の褒め言葉だったの。

⏰:07/11/12 09:21 📱:SH903i 🆔:y8As4P4c


#343 [みぃ]


『――ッ・・・ひッ・・・。』


子どもみたいに泣くあたしを大原の大きな腕が包み込む。

まるで、壊れ物を包むような、

ぎこちない。

でも、優しい包み方。



拒絶どころか、
心が落ち着くのが分かった。

⏰:07/11/12 09:25 📱:SH903i 🆔:y8As4P4c


#344 [みぃ]

「美優はもういない・・・。
 どれだけ望んだって還ってこないよ。」


わかってる。


「でも、オレたちが美優のこと想ってる限り・・・
 美優の存在は消えないよ。」


あたしを包み込む大原の腕は震えていた。

まるで自分に言い聞かせているみたい。

⏰:07/11/12 09:28 📱:SH903i 🆔:y8As4P4c


#345 [みぃ]

「夢芽ちゃん、
 もう一度お姉ちゃんのこと、愛してあげよう?」


大原の腕に力が加わる。






――お姉ちゃん。

何も言わなくていいから聞いててね。

⏰:07/11/16 19:39 📱:SH903i 🆔:XuQuAMgc


#346 [みぃ]

バカな妹でごめん。

お姉ちゃんの大切な人を傷つけちゃうような、
どうしようもない妹だよ。

人、見る目ないよね。


これからは2人でお姉ちゃんのこと守るから。

お姉ちゃんは何も気にせず笑っててね。

大好きだよ、お姉ちゃん。

ありがとう。

⏰:07/11/16 19:42 📱:SH903i 🆔:XuQuAMgc


#347 [みぃ]




――――---・・・


「結局、全部授業サボっちったね。」


帰り道の歩道を歩きながら大原は笑う。


『・・・お姉ちゃんが知ったら怒るよね、きっと。』

「はっ!!
 間違いねぇな。
 絶対殴るよ、あいつ。」


そう言って笑う。

⏰:07/11/16 19:46 📱:SH903i 🆔:XuQuAMgc


#348 [続き出現すみません]


お姉ちゃんの話で笑えるのなんて、いつぶりだろう。

でも、前ほど苦しくないや。



まだ10分も歩いてないけど、気付いたことが一つ。

大原は絶対に車道側を歩くこと。

⏰:07/11/16 19:49 📱:SH903i 🆔:XuQuAMgc


#349 [みぃ]

でもたぶんそれは、
普通の男の人がするような気遣いじゃなくて、

彼の中でトラウマになってるんだと思う。


あの日、もしかしたら車道側を歩けてなかったのかな・・・。


また泣かしたら悪いから聞かないけど。

笑ってないとお姉ちゃんに怒られそうだし。

⏰:07/11/16 19:53 📱:SH903i 🆔:XuQuAMgc


#350 [みぃ]

『大志くんはさ・・・
 お姉ちゃんのこと、今でも好き・・・?』


唐突なあたしの質問に、
大原は目を丸くしてあたしを見る。


「好きだよ。
 ずっと。」


迷いのない返事。

でも、引っ掛かってることがまだ一つあるの。

⏰:07/11/26 23:32 📱:SH903i 🆔:Q1VToTac


#351 [みぃ]

『じゃあ・・・
 あの由美って人は?』

「――へっ?由美?!」


予想外の名前だったらしく、大原の表情が驚いていることを表している。


『彼女じゃないの?』


明らかに他人って雰囲気じゃなかった。

固唾を飲んで大原の返答を待つ。

⏰:07/11/26 23:40 📱:SH903i 🆔:Q1VToTac


#352 [みぃ]

「――え?
 ・・・あ!はは!
 違う違う!
 幼なじみだよ。
 ごめんな、あいつ変に正義感強いから。」

『・・・ふぅん。』


そっか。
由美の気持ちに気付いてないんだ。


それはそれで・・・
なんだかなぁ、って感じ。

⏰:07/11/26 23:44 📱:SH903i 🆔:Q1VToTac


#353 [みぃ]

「夢芽ちゃんも、自分の気持ちに素直になんないとダメだよ。」

『―――え?』

「後悔してることあるなら動かなきゃ。」


―――何の話?


「豊くん。
 心配してたよ。
 夢芽ちゃんのこと。」

⏰:07/11/26 23:46 📱:SH903i 🆔:Q1VToTac


#354 [みぃ]



―――――豊?




『――え?
 なん・・・豊??』


訳わかんない。

何で大志くんが豊のこと知ってんの?


「一昨日、会いにきたんだよ、豊くん。」

⏰:07/11/26 23:49 📱:SH903i 🆔:Q1VToTac


#355 [みぃ]

『―――へ・・・?
 おととい・・・?』


会話を中断して、
脳内の記憶を必死に辿っていった時、

豊のメールがぼんやりと浮かんだ。




あ・・・。

あたしが保健室に行って、
豊が先に帰った日だ。

⏰:07/12/04 11:44 📱:SH903i 🆔:qZ.4GDMM


#356 [みぃ]

『でも・・・何で豊が大志くんに・・・。』

「話があるって言って、放課後に3年の教室まで来たんだよ。」


きっと大志くんのクラスの人達は大志くんにタチの悪い後輩がカツアゲにでも来たと思ったんじゃないだろうか。


なんてったってあんな馬鹿みたいな見た目だから。

⏰:07/12/04 11:50 📱:SH903i 🆔:qZ.4GDMM


#357 [みぃ]
 

「そん時に豊くんから聞いて、初めてわかった。

 夢芽ちゃんも豊くんも事件のこと誤解してるんだって。」

『そうなんだ・・・。』

「嫌がらせのことも、夢芽は今混乱してるから許してやってくれって、
 頭下げて頼まれたよ。」



なんで?

⏰:07/12/04 11:53 📱:SH903i 🆔:qZ.4GDMM


#358 [みぃ]
 

なんで?


あたしには関わるな、って言っといて

面倒臭いことは嫌いで
人に頭下げることなんかもっと嫌いで


なのになんで?


頼まれただけだったんじゃないの・・・?

⏰:07/12/04 11:56 📱:SH903i 🆔:qZ.4GDMM


#359 [みぃ]

『――なんで・・・。』


あたしがポツリと呟いた言葉を聞き、
大原が不思議そうな顔であたしを見る。


「なんでって・・・
 夢芽ちゃんのこと心配してんでしょ?」


【心配】・・・。


「いい友達もったね。」

⏰:07/12/04 12:00 📱:SH903i 🆔:qZ.4GDMM


#360 [みぃ]

大原の言葉が、
さっきからずっと頭の中で響いてる。


“素直になんないとダメだよ”


あたしにいつも足りないもの。

自分から逃げちゃいけない。


『大志くん。』

⏰:07/12/04 12:15 📱:SH903i 🆔:qZ.4GDMM


#361 [みぃ]

「え?」


あと100メートルもすれば施設に着くといったところで大原を呼びとめた。


あたりは少し暗くなって、
闇が街を支配し始めている。


街灯に照らされた大原の顔はどこかすっきりしたように感じる。

⏰:07/12/04 12:23 📱:SH903i 🆔:qZ.4GDMM


#362 [みぃ]

制服のスカートの裾を握りしめながら、
大きく息を吸い込む。


『・・・あたしね、
 大志くんのことが羨ましかったんだ。』

「なんで?」


大原の強い瞳を見ると、
醜いあたしの決意は押し潰されてしまいそうになる。

あたしはずっとこの瞳から逃げてきた。


でも、もう逃げない。

⏰:07/12/10 10:09 📱:SH903i 🆔:fAon9AqU


#363 [☆((菜ω摘))☆+゜・゜。・♪]
頑張って

⏰:07/12/10 10:11 📱:W43H 🆔:1J0EXXUI


#364 [みぃ]

『最初はお姉ちゃんが取られたみたいで嫌だったけど・・・。
 大志くんと付き合ってからお姉ちゃんが幸せそうな顔してたから。』


大原の瞳があたしを捉らえる。

その瞳には多分、色々な感情が含まれているんだけど・・・
少し暗闇に包まれているせいかな。


あたしが読み取れるのは二つだけ。

⏰:07/12/10 10:18 📱:SH903i 🆔:fAon9AqU


#365 [みぃ]
☆((菜ω摘))☆+゜・゜。・♪サン

ありがとうございます
誰も見てないと思ってたんで嬉しいです

更新します

⏰:07/12/10 10:21 📱:SH903i 🆔:fAon9AqU


#366 [みぃ]


どこかホッとした安堵の表情

それと、

どこか不思議そうな表情


「・・・なんで、そう思うの?」

『何でかな・・・。
 わかんないけど、あたしはそう感じた。』


大原は、納得いかないような嬉しいような、
なんとも言えない顔をしていた。

⏰:07/12/10 10:26 📱:SH903i 🆔:fAon9AqU


#367 [みぃ]

届いて。
あたしのキモチ。


「・・・そうかな。」


小さく呟いたその言葉は、
横を通る車の音に掻き消されてしまいそうだった。


『―――そうだよ!
 妹のあたしが言うんだから間違いないじゃん!!』

⏰:07/12/10 10:31 📱:SH903i 🆔:fAon9AqU


#368 [みぃ]

予想以上の大きな声が、
日の暮れた住宅街に響いた。

大原は少しびっくりした顔をしたけど、
強張っていた表情は緩んだ。


『だからさ・・・。
 ありがとう』

「・・・え?」


ずっと伝えたかった言葉。

⏰:07/12/10 10:37 📱:SH903i 🆔:fAon9AqU


#369 [みぃ]

『お姉ちゃんを好きになってくれて・・・
 愛してくれて・・・
 ありがとう。

 大志くんがお姉ちゃんの彼氏でよかった。』




同情でも
いたわりでもなくて

偽りのない


真実(ほんとう)の気持ち。

⏰:07/12/16 00:45 📱:SH903i 🆔:c6k9jGDY


#370 [みぃ]


きっと ずっと伝えたかった。


お姉ちゃんから大志くんを紹介してもらった時に、
言おうと決めていた言葉。


遺影の中で屈託なく笑うお姉ちゃんは
大志くんに会わなければ

いないから。

⏰:07/12/16 00:49 📱:SH903i 🆔:c6k9jGDY


#371 [みぃ]

大志くんの瞳からは、
止まる気配のない大粒の涙が溢れている。


一粒
一粒

意味を持って。


何も言わないかわりに
大志くんの気持ちが重力に逆らうことなく

こぼれていく。

⏰:07/12/16 00:51 📱:SH903i 🆔:c6k9jGDY


#372 [みぃ]


あたしは少し乱れた呼吸を整えながら、
その様子をボーっと見ていた。


『ありがとう・・・。
 ・・・夢芽ちゃん。』


大志くんの言葉があたしのからっぽだった心に突き刺さる。


胸のつっかえがスーッと音を立てて消えていくのが聞こえた気がした。

⏰:07/12/16 00:55 📱:SH903i 🆔:c6k9jGDY


#373 [みぃ]

あたしの体中の悪いものが一瞬にして浄化したような開放感。

至福に包まれているようなフワフワした感覚。


本当は ずっと

こんな風に


人と向き合いたかったの。


【アタシ】
を認めて欲しかったの。

⏰:07/12/16 00:59 📱:SH903i 🆔:c6k9jGDY


#374 [みぃ]



――――――――――――



「おかえり。」


大志くんと別れて施設の門をくぐろうとしたあたしの足は、
その声で動くことを止めた。

⏰:07/12/21 19:36 📱:SH903i 🆔:4ZPSdW3c


#375 [みぃ]

破れたポスターの貼りつけてある電柱の影から現れた姿に、
目を疑った。


『豊・・・?』


思わず声に出して確かめてしまった。


「はッ!
 なんで疑問形?」


人を小バカにした様に笑う豊の顔は、
どこか懐かしく思えて涙が溢れた。

⏰:07/12/21 19:42 📱:SH903i 🆔:4ZPSdW3c


#376 [みぃ]

「――は?!
 なに泣いてんだよ!?」


慌ててあたしの元にかけ寄ろうとした豊を、
涙を拭っていない方の手で制する。


『―――わかんないからっ・・・。』

「・・・なにが?!」


踏み出した足を半歩戻して豊は尋ねる。

⏰:07/12/21 19:49 📱:SH903i 🆔:4ZPSdW3c


#377 [みぃ]


「ばーか!!」


その場に似つかわしくない豊の間の抜けた声に耳を疑った。


『・・・・・・は?』


頭の中はぐちゃぐちゃだったけれど、
ぐちゃぐちゃなりに様々なパターンを想定していた。

けれど、豊の言葉はどのパターンにも当て嵌まってはいなかった。

⏰:07/12/21 19:54 📱:SH903i 🆔:4ZPSdW3c


#378 [みぃ]


「ばか!
 ばーか!
 ばか夢芽!」

人を小バカにした様に【ばか】をくり返す豊。


『・・・ばか言うな!』


ふてくされながらも繰り出したあたしの右ストレートを豊は難無くかわし、
あたしの顔面にタオルを押し当てた。

⏰:07/12/21 20:01 📱:SH903i 🆔:4ZPSdW3c


#379 [みぃ]

『―――ぶっ!』

「女みてぇな顔しやがって。
 メソメソ泣いてんなよ、ばか夢芽。」


呆れた様に呟きながら、
押し当てたタオルを顔面に滑らせる。


『女だし・・・。
 ってか、これは豊が泣かしてんだよ!』

⏰:07/12/21 20:07 📱:SH903i 🆔:4ZPSdW3c


#380 [みぃ]


豊からタオルを奪い、
自分で涙を拭っている時になんとなくラベルに書かれた名前に目をやった。

【たかし】


・・・これ、豊のじゃないじゃん。


『―――ほんっとムカつく・・・。』

⏰:07/12/21 20:10 📱:SH903i 🆔:4ZPSdW3c


#381 [みぃ]

「え?
 オレ、ムカつかれてんの?」


半笑いで、あたしを試すような言い方。


もう、どうしたらいいのかわからない。


考えるのが面倒臭くなってきた。


『・・・知んねぇよ!
 ほんっと嫌い、おまえ。』

⏰:07/12/21 20:15 📱:SH903i 🆔:4ZPSdW3c


#382 [みぃ]

吐き捨てる様に言って施設の門をくぐる。



喧嘩がしたい訳じゃないのに。

こんなことが言いたいんじゃないのに。


なんで上手くいかないの。




「オレは夢芽が好きなのに。」

⏰:07/12/21 20:17 📱:SH903i 🆔:4ZPSdW3c


#383 [みぃ]





『―――――え?』



豊の言った言葉の意味を考え直して振り返った時、
豊の足は既に男子棟の方角へと向いていた。


『―――まって、豊!
 今、なんて・・・』

「夢芽ぇーーー!!」

⏰:07/12/23 02:07 📱:SH903i 🆔:F9LNNOLU


#384 [みぃ]

あたしの問いかけは、
突然響き渡った大声によってかき消された。

声のした方向を見ると、
男子棟の二階に加山先生の姿が見えた。


「あんた!
 授業も出ないで学校に何しに行ってたの!!」

『・・・げ。』


そういえば、授業サボったこと忘れてた。

⏰:07/12/23 02:10 📱:SH903i 🆔:F9LNNOLU


#385 [みぃ]


「荷物置いて着替えたら、
 すぐ職員室来なさい!」

「あーあ、お説教。」


鼻で軽く笑うと、
豊は男子棟の中へと消えていった。


『――――ゆたっ・・・』

「ゆーーーめーーー!!」

⏰:07/12/23 02:13 📱:SH903i 🆔:F9LNNOLU


#386 [みぃ]

豊の後ろ姿を追いたいあたしの意志を、
加山先生のハスキーな怒鳴り声が遮る。



その時、
見上げた加山先生越しに、
星が顔を出し始めた夕空が映った。



あぁ・・・。

空なんて見たの、
いつぶりだろう・・・。

⏰:07/12/23 02:17 📱:SH903i 🆔:F9LNNOLU


#387 [みぃ]

首を上に向けると、
こんなにたくさんの光が見えるのに。


そんな簡単なことなのに。

たったそれだけのことなのに。


あたしはずっとこの光から目を反らしてた。


でも、その間にも、
こうやって光を届けてくれてたんだよね。

⏰:07/12/23 02:19 📱:SH903i 🆔:F9LNNOLU


#388 [みぃ]


久しぶりに見た空は

絵の具のケースにある何色かの色を混ぜても
きっと造れない複雑な色で


でも、優しくて


どこか懐かしくて




すごくキレイで

⏰:07/12/23 23:20 📱:SH903i 🆔:F9LNNOLU


#389 [みぃ]

この暗闇を晴らして

早くあの青を見たい


そう思った。


明日が待ち遠しく思える日なんて、
もう来ないと思ってた。



でも

今はこんなにも


早くあの鮮明な青空に会いたい。

⏰:07/12/23 23:24 📱:SH903i 🆔:F9LNNOLU


#390 [みぃ]












――――――------・・・


⏰:07/12/23 23:25 📱:SH903i 🆔:F9LNNOLU


#391 [みぃ]


市街から少し離れた場所へ向かうバスの本数は少なく、
バス停の待合室で、
止む気配のない雨を見つめていた。


予想外の雨は100円ショップで買ったビニール傘では対処しきれずに、
ジャケットの肩は湿ってしまっている。


やっと三月の終わりに咲いた桜だというのに、
この雨で大方散ってしまった。

⏰:07/12/23 23:30 📱:SH903i 🆔:F9LNNOLU


#392 [みぃ]

そんなことを考えているうちにダイヤ表に記された時間になったみたいで、
あたしの前にバスはゆっくりと停まる。


バスに乗ってしばらくすると、
灰色で埋めつくされていた窓の外の景色に
少しずつ緑が顔を出し始め、

あっという間にコンクリートの冷たい色は見えなくなった。

⏰:07/12/23 23:34 📱:SH903i 🆔:F9LNNOLU


#393 [みぃ]

春休みの週末だというのに、
バスの中はあたしの他に二、三人しか乗っていない。


バスの本数と合わせて考えても、
需要が少ないことに納得した。


他の人の傘を見る限り、
この雨は天気予報でも知らされていたのだろう。

雨の被害に遭ったのはあたしだけのようだ。

⏰:07/12/23 23:38 📱:SH903i 🆔:F9LNNOLU


#394 [みぃ]

湿気で髪が濡れてしまうことは分かっていたけど、
ひんやりとしたガラスが気持ち良くて、
バスの窓にもたれかかって目を閉じた。


雨がガラスに当たる音と車内の揺れが心地良くて、
自然に眠りにおちる。


どれぐらいこうしていたのだろう。

車内に流れるアナウンスの声で浅い眠りから呼び戻された。

⏰:07/12/23 23:43 📱:SH903i 🆔:F9LNNOLU


#395 [みぃ]


運賃を払い、
運転手さんにお礼を行ってバスを降りると、
雨はすっかり上がり、
水たまりだけが残っていた。



【吉野霊園】



そう記された石柱の横を通りすぎ、
桶に水を汲んで、
再び歩きだす。

⏰:08/01/01 02:49 📱:SH903i 🆔:FHVRgNWE


#396 [みぃ]

ここに来るのは一年ぶり。


去年の3月27日に来て、
今年で2回目になる。


頭の中の記憶を頼りに進んで行き、
目的の墓石に辿り着いた時、
墓石の前にしゃがみ込んでいる人影が目に入った。


『卒業、おめでとう。』

⏰:08/01/01 02:53 📱:SH903i 🆔:FHVRgNWE


#397 [みぃ]

あたしの声でその人物は振り返り、
顔を上げた。


「夢芽ちゃん。」


声の主は、
卒業式ぶりに会う大志くん。


『大志くん、早いね。
 いつ来たの?』

「ん?
 さっきだよ。
 今来たとこ。」

⏰:08/01/01 03:06 📱:SH903i 🆔:FHVRgNWE


#398 [みぃ]

そう言って笑い、
また墓石と向き合う。






そう。


今日はお姉ちゃんの命日。



お姉ちゃんがいなくなって丸2年が経った。

⏰:08/01/01 03:09 📱:SH903i 🆔:FHVRgNWE


#399 [みぃ]

毎年、この季節は心の傷が疼く。


胸を締め付ける痛みの重さに、
まだ思い出にするには早い年月なのだということを改めて知る。





用意した献花を供え、
墓石に水をかける。


雨で濡れた墓石は色に変化がなく、
水をかけた実感がなかった。

⏰:08/01/01 03:16 📱:SH903i 🆔:FHVRgNWE


#400 [みぃ]

『お墓、きれいにしとあるよね。』


雑草の生い茂っている周りの墓石に比べ、
お姉ちゃんのお墓は去年もきちんと手入れしてあった。


「おばさん、よく来てんだよ、きっと。」



お姉ちゃんが死んでしばらくした後、
施設に一本の電話が入った。

お姉ちゃんの実の母親からだった。

⏰:08/01/10 21:47 📱:SH903i 🆔:g9BX27JI


★コメント★

←次 | 前→
↩ トピック
msgβ
💬
🔍 ↔ 📝
C-BoX E194.194