darkness;FROM OZ
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#114 [OZ]
いや、女の子ではなく女の人だった。
僕は立ち尽くし、今にも倒れそうになっていた。
目の前の状況を理解することが出来ない。
長谷川さんも唖然とした表情である。
女の人は涙でぐちゃぐちゃになった顔で、僕を見つめている。
「長谷川さん……」
僕はやっとの思いで、そうつぶやいた。
女の子はそれを引き金に叫び出した。
:07/09/16 22:49
:SH703i
:☆☆☆
#115 [OZ]
助けて、と言っているのがかろうじて聞こえる。
耳をつんざくようなひどい叫び声だったが、僕の耳は耳栓をしたかのようで、叫び声はほとんど聞こえなかった。
女の人は可夜であった。
しかし、飾られていた写真の彼女とは、すっかり変わってしまっていた。
僕が彼女を女の子と見間違えたのも仕方なかったと思う。
:07/09/16 23:01
:SH703i
:☆☆☆
#116 [OZ]
彼女には手足がなかったのだ。
足は膝から下がなく、腕はすっかりない状態だった。
もちろん写真に映っていた可夜には、ほっそりとした手足があった。
切断面には乾燥した赤黒い血がびっちりとこびりついている。
そんな彼女を、長谷川さんは抱き抱えるようにして座っていた。
:07/09/17 18:49
:SH703i
:☆☆☆
#117 [OZ]
これをシルエットだけを見たとしたならば、子供を抱いている老人に見えたはずだ。
僕の心臓は早鐘のように脈打ち、頭は混乱を極めた。
それでも僕の目は可夜にくぎづけとなり、そらすことができない。
可夜は服を着ておらず、胴体の辺りに布を巻いているだけであった。
げっそりと痩せ細り、これ以上人間が痩せることは不可能に思える。
:07/09/17 18:57
:SH703i
:☆☆☆
#118 [OZ]
漆黒の黒い髪は乱れに乱れ、半ば抜け落ちていた。
なにがどうしたらこうなるのだ?
彼女は今にも死んでしまいそうだった。
腕や足がどのようにしてなくなってしまったかはわからないが、見たところなんの処置もされていないのはあきらかで、それで生きていられのが不思議だった。
「……長谷川さん。
説明してください……」
:07/09/17 19:04
:SH703i
:☆☆☆
#119 [OZ]
その時、長谷川さんのそばに包丁が転がっていたのが目に入った。
「……包丁?」
僕がそう言ったと同時に長谷川さんは、可夜に引けをとらない大声で泣き叫びながら後退して行った。
可夜は畳の上に放り出される。
老婆は這うように動き、部屋の壁に当たると頭を抱え込み、めそめそと泣き出した。
長谷川さんがどうしてこのように泣いているのか知らなかったが、僕はなんともいえない軽蔑の心がざわめき立つ。
:07/09/17 19:18
:SH703i
:☆☆☆
#120 [OZ]
可夜の方はようやく少し落ち着いて、静かに涙を流しながら力無く横たわっていた。
僕は無意識のうちに可夜の側へ行くと、長谷川さんがやっていたように、そっと彼女を抱き抱えた。
長谷川さんはそれから暫くの間泣いていたが、泣き止むと、心ここにあらずといった様子で、ボソリボソリと事の顛末を話し出した。
その頃には、僕は完全に長谷川さんを侮蔑し、憎んでまでいた。
長谷川さんがとても醜いものに感じられた。
:07/09/17 19:29
:SH703i
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#121 [OZ]
長谷川さんの話はとても現実に起こったことだなんて信じられなかった。
しかもこの家で。
「可夜は私の孫でもなんでもないわ……」
可夜は、僕と同じような理由で長谷川さんの家に住まわせてもらうことになった女子大生だったそうだ。
両親はずいぶん前に亡くなり、結婚をしていなかった長谷川さんはもちろん家族もおらず、孤独だった。
:07/09/17 19:40
:SH703i
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#122 [OZ]
そんな中、今から一年前くらいに現れた可夜は、長谷川さんにとって、何よりも大切な存在となった。
長谷川さんは可夜の美しさ、優しさを独り占めしたいと渇望した。
そして、可夜が本当の孫であればと思い、実際にそのように接した。
ところがある日突然に、可夜は長谷川さんの家を出ると言い出したそうだ。
それが彼女を哀れな姿に導くことになった。
:07/09/17 19:51
:SH703i
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#123 [OZ]
長谷川さんはなんとかして引き止めようとしたが、彼女の決心は固かった。
可夜を絶対に手放したくなかった長谷川さんは、彼女の手足を切断した。
そして、僕が使っている部屋の押し入れに彼女を隠した。
可夜は奇跡的に死なず、生き続けた。
これが僕がこの家に来る、一週間前のことだという。
:07/09/17 20:02
:SH703i
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