*THE GOD OF DEATH*
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#197 [ま-イ子]
-・ー第4章 狂変ー・-
:07/09/07 15:32 :SH903i :zU9GB9nI
#198 [ま-イ子]
滑稽だ。
‥と、あたしは思った
目の前にいる
女-神崎理奈-は
自分の切り落とされた
手を口に含み
涙を流しながら
驚愕の目であたしを
見ている
――――滑稽だ。
.
:07/09/08 10:46 :SH903i :eQrdq6Ts
#199 [ま-イ子]
「ゥ‥ッウゥ‥‥‥」
体を震わせ
あたしを見つめる
その濡れた瞳に映るのは
―――----"恐怖"
「神崎、あたしが怖いの?」
いつも自信たっぷりで
あたしを見下し
蔑んできた貴女
.
:07/09/08 16:49 :SH903i :eQrdq6Ts
#200 [ま-イ子]
ふ、と口から
笑みが零れる
神崎が恐れているものは
"あたし" と "死" だ
ガタガタと震え出す
神崎の顔は青白く
唇は紫色。
本人も解っているだろう
右手から出ている血は
コンクリートに水溜まりを
作っている
.
:07/09/08 16:54 :SH903i :eQrdq6Ts
#201 [ま-イ子]
もうすぐ――--
「あんたは死ぬんだよ、
神崎理奈。」
貴女に現実と絶望を。
.
:07/09/08 16:57 :SH903i :eQrdq6Ts
#202 [ま-イ子]
その瞳は
大きく見開かれ
止まることを知らない
涙が頬を伝う
「どう?
今まで見下していた奴に
殺される気分は。」
呻きながら何かを
言おうとしている神崎
しかしその口に
更に奴の手を押し込む
「---ゥウッ!!」
.
:07/09/08 17:06 :SH903i :eQrdq6Ts
#203 [ま-イ子]
「駄目だよ。
叫ばれたら厄介でしょ。
もう、あたしは
あんたと話す事なんて
何もないよ」
ニコリ、と
笑顔を作って見せる
神崎の目には
どんな風に
映っているかな。
(―――--あと1分)
.
:07/09/08 17:09 :SH903i :eQrdq6Ts
#204 [ま-イ子]
「ねえ、神崎‥‥‥
あんた‥優真のこと
凄く好きだったよね?」
少し躊躇った後
小さく頷いた
「そっか、じゃあさ‥
優真の為に死んでよ。」
.
:07/09/08 17:16 :SH903i :eQrdq6Ts
#205 [ま-イ子]
握っていた鎌を
思い切り振り上げる
「ッゥ――――---!!」
―――――
――――――---‥
.
:07/09/08 17:21 :SH903i :eQrdq6Ts
#206 [ま-イ子]
「‥クックッ‥これは、
また酷い有様だ」
喉を鳴らし笑いながら
死神が音もなく近付く
足元にあるのは
切り裂かれた
神崎の、死体
‥原型など
留めていないのだが。
「頭は残して
おいたでしょ」
素っ気なく返すあたしに
再度馬鹿にした様に笑い
神崎の頭に手を翳す
.
:07/09/08 21:05 :SH903i :eQrdq6Ts
#207 [ま-イ子]
口から出てきた
神崎の"魂"を喰らう
こいつの姿は
何時見ても悍ましい
「ご馳走様。」
ニヤリと口角を
上げながら
律義に手を合わす
---死神のくせに
魂を抜かれた
神崎を一瞥し
家へと足を向かわせる
.
:07/09/08 21:17 :SH903i :eQrdq6Ts
#208 [ま-イ子]
「スッキリしたかい?
"いじめ"られた
仕返しが出来たんだろう」
後ろから聞こえる
言葉にあたしは
足を止めた
「---‥何度も
言わせないでくれる」
「わかっているさ
"優真の為"なんだろう?」
「‥‥‥‥‥」
.
:07/09/08 21:22 :SH903i :eQrdq6Ts
#209 [ま-イ子]
「そうよ」
鋭い目つきで
真っ直ぐ見つめ答える
それを聞いた死神は
何も言わず歩き出す
「‥でも‥‥」
と、付け足すあたしに
死神は足を止めた
「‥結果的には
あたしの為に
なっているのかもね」
.
:07/09/09 11:43 :SH903i :2a1MXMvg
#210 [ま-イ子]
吊り上げた口元は
更に死神を
不気味にさせた
「それでいいのさ
君は、自分の為に
生きているのだから」
---――なんだって?
.
:07/09/09 11:46 :SH903i :2a1MXMvg
#211 [ま-イ子]
(自分の為――‥?)
「"ヒト"は誰でも
自分の為にしか
生きない。
他人の為に、なんて
"偽善" さ。」
「偽善‥‥?
あたしが偽善者
だとでも言うの?」
なんて腹の立つ奴だ
.
:07/09/09 11:51 :SH903i :2a1MXMvg
#212 [ま-イ子]
「クックッ‥どうだろうね」
それだけ言うと
死神は暗闇に消えた
「‥‥‥チッ‥」
小さく舌打ちした音は
誰に聞こえるわけでも
なく、溶けていった
振り返ると、
"神崎がいた場所"には
大量の血の痕が。
.
:07/09/09 12:00 :SH903i :2a1MXMvg
#213 [ま-イ子]
悲惨な惨劇を
物語らせるソレ。
何も感じないのは、
あたしが
偽善者だから?
―――くだらない
.
:07/09/09 21:50 :SH903i :2a1MXMvg
#214 [ま-イ子]
あたしは神崎の為に
生きていた
わけではないし
あいつも
あんなに好きだった
優真の為に死んだんだ
同情など、
する筈がない
.
:07/09/09 21:52 :SH903i :2a1MXMvg
#215 [ま-イ子]
あたしは、
優真の為に
生きるんだ。
.
:07/09/09 21:54 :SH903i :2a1MXMvg
#216 [ま-イ子]
くるり、と向きを変え
家へと歩き出す
(早く、魂を
集めなければ)
あたしの心が
壊れる前に
.
:07/09/09 21:57 :SH903i :2a1MXMvg
#217 [ぼぼ]
書いてくださぃ(^^)
:07/09/14 12:34 :SH903i :GCHRJV6k
#218 [ま-イ子]
>>217さま
更新遅れてて
すみませんッ
今日テスト終わりました
できれば今日の夜
更新します!
カキ
ありがとうございましたー(∀)
:07/09/14 17:09 :SH903i :Ka01jnAY
#219 [ま-イ子]
..見てくださっている皆様へ更新できなくて
すいません(..)
昨日更新しようと思ったのですが、
テスト期間に小説から
離れていたため
少しブランク入ってます
これから亀更新になります。
それでも、私なんかの小説に付き合って下さる方に
深くお詫びと感謝を
申し上げます。
これからも、お願いします(∵`)
:07/09/15 22:49 :SH903i :WL71sBzA
#220 [ま-イ子]
「‥‥クックッ‥‥」
暗闇の中では
奇妙な笑い声が
響き渡る
家へと足を運ぶ少女を
ビルの屋上から
見下ろしながら
"死神"は 嘲笑う
「それでいい‥
それで、いいんだ」
.
:07/09/16 22:17 :SH903i :sQPTMLR6
#221 [ま-イ子]
"ヒトは皆、
自分の為に──---"
「全ては、
私の為に‥‥な」
ぽつりと呟くと
言葉と共に
闇に消えた
.
:07/09/18 08:11 :SH903i :VutIS6XE
#222 [ま-イ子]
‥‥‥‥・・・
あたしはこの時
死神の"計画"も
"正体"も
何かもかも
わからなくて
ただ 死神の手の上で
踊っていた
.
:07/09/21 11:07 :SH903i :hGEB0dpw
#223 [ま-イ子]
何かに気付いていれば
あたしの"運命"は
変わっていたの
だろうか──--
‥‥‥‥‥・・・
:07/09/21 11:08 :SH903i :hGEB0dpw
#224 [I`む~]
初めまして
私この小説
すごっく好きなんです
どんなに
遅くなっても
いいんで
続けてくださいフ
お願いしますK
:07/09/28 19:56 :W53CA :GYdQKtB6
#225 [でら]
更新待ち(*'。'*)
:07/10/01 00:02 :SH903i :EFw158ao
#226 [ま-イ子]
>>224さま
>>225さま
全く更新できなくて
本当にすみません‥‥
こんな小説を好きと言って頂いて、すごく嬉しいです!
遅い更新になってしまいますが、完結させたいので、どうかお付き合いお願いします!
本当にありがとうございます
+゚
:07/10/02 22:56 :SH903i :wS/ugN4o
#227 [ま-イ子]
---───翌日
いつも通り
登校時間より遅れて
学校に行ったあたしだが
いつも迎えに出て来る
教師は誰もいない
不思議に思いながら
教室に入り
ようやく理解できた
.
:07/10/03 13:11 :SH903i :e7JKCPx2
#228 [ま-イ子]
そこには、大人しく
席に座る生徒達
神妙な空気の中
あたしは席に着いた
未だ来ていない教師
空いている 神崎の席
それだけで
この事態を把握できた
.
:07/10/03 13:13 :SH903i :e7JKCPx2
#229 [ま-イ子]
数十分後、(新)担任が
静かに教室に入って来た
その顔からは
悲しみと、動揺の色が
伺える
教壇に手を掛けると
重たそうな口を開いた
「‥遅れて、すまない‥
実は、皆に‥
聞いてほしいことが‥
‥あるんだ‥」
.
:07/10/03 13:20 :SH903i :e7JKCPx2
#230 [でら]
上げますっ
:07/10/10 03:55 :SH903i :x0AW8GOY
#231 [ま-イ子]
>>230さま
あげありがとう
ございます
(._・)ノ
少し更新
します
...
:07/10/12 12:06 :SH903i :O6MkXvtg
#232 [ま-イ子]
途切れ途切れに
話す言葉には
深刻さがひしひしと
伝わってくる
"良い知らせ"では
ないことも、
「‥神崎が、
行方不明に‥なった」
重たい口から
放たれた一言に
教室内が一気にどよめく
.
:07/10/12 12:08 :SH903i :O6MkXvtg
#233 [ま-イ子]
驚きを隠せない者‥
悲しむ者‥
自分は関係ないと
思っている者‥
それぞれがいる中で
当然の如く
あたしは無表情だった
「このことに、ついて‥
何か知っていることが
あれば‥少しでも良い!
俺に、言ってくれ‥」
再度下を向く教師
周りも又静寂に包まれる
.
:07/10/13 09:33 :SH903i :tnYjbeGQ
#234 [ま-イ子]
他のクラスからも
ざわめきが聞こえる
全校に知れ渡る
"神崎失踪事件"
それは、"村中"の時よりも
生徒達に衝撃を与えた
「理奈死んだのかな‥?」
「縁起でもないこと、
言わないでよ!」
「どうしよう‥私、
理奈と仲良かったし‥
狙われたら─--!!」
「ッ‥‥ 怖 い ‥」
.
:07/10/13 09:54 :SH903i :tnYjbeGQ
#235 [ま-イ子]
聞こえる声に
心の中でにやりと笑う
神崎を心配
しているのではなく、
自分が狙われる危険を
心配しているのか
──----所詮そんなモノ
「人は皆、自分の為に---」
‥‥その通りだ。
.
:07/10/13 10:00 :SH903i :tnYjbeGQ
#236 [ま-イ子]
死神の言葉に
嫌々ながら
納得させられた
それでもあたしは
違うのだと、
自分に言い聞かせながら。
こいつらは、偽善者
偽善者は、こいつら
.
:07/10/23 16:21 :SH903i :mgRvsdWg
#237 [ま-イ子]
──────‥‥
時刻は下校時。
優真と一緒に
家へと向かう途中、
「気をつけろよ」
唐突に放たれた一言に
あたしは目を見開き
優真の方を向いた
.
:07/10/23 16:26 :SH903i :mgRvsdWg
#238 [ま-イ子]
何の事だか
わからない顔をすると
優真は一旦足を止め、
真剣な目を向けると
話し出した
「神崎の事だよ。
最近起きてる"この事件"
俺らの学校の回りで
起きてるだろ?
次は誰が狙われるのか
見当もつかないし。
とにかく、気をつけて」
真っ直ぐあたしから
目を離さない貴方。
あたしは素直に頷いた
.
:07/10/23 16:35 :SH903i :mgRvsdWg
#239 [ま-イ子]
少し高い位置にある
優真の綺麗な瞳を
顔を上げて見つめる
数秒間見つめ合った後
あたしは沈黙を破った
「心配してくれて
ありがとう」
笑顔で告げると、優真も
照れたように笑う
.
:07/10/23 16:43 :SH903i :mgRvsdWg
#240 [ま-イ子]
「大丈夫だよ」
(あたしも────---
そして、優真もね)
.
:07/10/23 16:50 :SH903i :mgRvsdWg
#241 [ま-イ子]
小さくなる優真の背中
見えなくなるまで
あたしは手を振る
角を曲がる。
――ーー‥ゾクッ‥
"あいつ"と出会ってから
優真と別れる時は
悪寒が走る
背中に
死神が見えてしまうから
.
:07/10/26 17:33 :SH903i :bb5hYAbA
#242 [ま-イ子]
(‥死なせない
ーーーーーーーーー絶対に)
とはいうものの、
あたしは焦っていた
死神に関する情報が
ここ最近、
全く増えていないからだ
このままでは
先に魂を
集め終わってしまう
どうすべきか。
.
:07/10/26 17:42 :SH903i :bb5hYAbA
#243 [ま-イ子]
歩きながら
あたしは考え込んだ
死神に勝つ方法を。
(‥‥ー-----ッ!)
身体がビクリ、と
反応する
その目線の先には
あたしの家の前に止まる
真っ赤な車
そう、
―――----"あの人"の
.
:07/10/28 21:37 :SH903i :BoSk1wrg
#244 [ま-イ子]
一気に頭の中が
真っ白になる
"クソッ"と、
心の中で舌打ちし
なるべく静かに
家へ近付いた
人の気配等しないが
車があるという事は
(-ーーーいる。あの人が)
落ち着く為に
一息を吐く
‥慣れてしまった
行動の一つだ
.
:07/10/28 21:42 :SH903i :BoSk1wrg
#245 [ま-イ子]
長い深呼吸で
落ち着きを取り戻した
あたしは扉に手を掛けた
――ーーカチャッ‥
静寂には大きすぎる
音が家の中に響いた
(嗚呼‥何故、扉と
云うものは音が鳴るの)
普段気にしないこの音を
今だけは、酷く怨む。
‥‥意味がないと
解っていても
.
:07/10/28 22:45 :SH903i :BoSk1wrg
#246 [ま-イ子]
出来るだけ
足音を立てずに
あたしは敷居を跨いだ
――ーーもう無駄なのに
こうしなければ、と
動く 身体が 憎い
あたしの前に
ぽつん、と置かれる
真っ赤なヒール
見るだけで
背筋が凍り動けなくなる
(赤は、あの人の色)
.
:07/10/28 22:54 :SH903i :BoSk1wrg
#247 [ま-イ子]
視界を閉ざす様に
あたしは目を閉じた
聞こえてくるのは、
通常より
倍は速くなっている
自分の鼓動
ドッ‥ドッ‥ドッ‥
脳に響き渡るのは
その音だけで
他には全く気配もない
.
:07/10/28 23:15 :SH903i :BoSk1wrg
#248 [ま-イ子]
(寝て、いるんだ)
いつもなら
玄関に入ると
同時に現れ、あたしを
引っ張っていくが
今日はそんな様子がない
きっと、
珍しくこの時間
寝ているのだろう
安堵したあたしの心臓は
徐々に静まってゆく
.
:07/10/28 23:29 :SH903i :BoSk1wrg
#249 [ま-イ子]
それなら尚更
起こさぬようにと、
あたしは家を
出ようとした
扉の取っ手を掴む
開けようとしたが
力を入れる前に
扉 が 開 い た
.
:07/10/30 11:58 :SH903i :9a6QsEw.
#250 [ま-イ子]
隙間から
蒸し暑い空気が
家の中に流れ込む
その空気に対する
汗とは別に
嫌な汗が頬を伝う
外との隙間が広がり
目の前には、
「何処に行くつもり?」
口に孤を浮かべた、
あたしの、母親
.
:07/10/30 12:09 :SH903i :9a6QsEw.
#251 [ま-イ子]
硬直して身体は
全く動かず
あたしは目だけ
泳がせた
獲物を狙うような、
そんな眼球とは
決して交わらさず
目の前の女が履いている
スリッパを 見つめた
(だから、靴があったのか)
.
:07/10/31 15:14 :SH903i :K63YY.hQ
#252 [ま-イ子]
身体とは逆に
冷静な頭は
今の状況を
素早く判断した
(今日は運が悪い)
それは、
"慣れ"なのか
"諦め"なのか――ーーー
どちらでも
変わらないのだけれど
.
:07/10/31 20:19 :SH903i :K63YY.hQ
#253 [ま-イ子]
一向に視線を
絡ませようとしない
あたしに苛立ったのか
"母"は一歩前に出て
敷居内に入ると
音を立てて扉を閉めた
――ーキィ‥バタン!
より一層近くに
なってしまった距離
あたしは自然と後退る
.
:07/10/31 20:24 :SH903i :K63YY.hQ
#254 [ま-イ子]
それすらも
まずかったのか
母は又一歩あたしに
近付いた
逃げても無駄
静かに、目を閉じた
――ーーーバチンッ!
.
:07/10/31 20:26 :SH903i :K63YY.hQ
#255 [ま-イ子]
左から受けた
衝撃に僅かによろめいた
―――ーー痛い
手が開かれているだけ
いつもよりマシなのだが
容赦ない平手打ちに
頭痛と目眩が起こる
母を見上げると、
その顔には先程の
卑らしい笑みはなく
只、憎しみだけが
伝わる
.
:07/11/01 22:28 :SH903i :vICgvZoc
#256 [ま-イ子]
「‥なんで‥‥?」
か細い声で
今にも泣き出しそうな
そんな、声で
「なんで、あんたなんか
生んでしまったの?」
あたしにではなくて
自分自身に、問う
彼女の後悔の念が
"暴力"として
あたしに降り注ぐ
.
:07/11/01 22:36 :SH903i :vICgvZoc
#257 [ま-イ子]
――――ーーー‥‥
「おや、今日は随分
顔色が悪いようで」
わざとらしく、
カンに障る言い方をする
死神を睨み付けた
あの後
殴られ蹴られ続けた
あたしの顔は
所々が、内出血で
濁った紫色をしていた
――身体は顔の比では
ないけれど。
.
:07/11/01 22:58 :SH903i :vICgvZoc
#258 [ま-イ子]
「‥心配してくれて
どうも。」
目を逸らしながら
厭味を言い返す
少しだけ驚いた死神は
直ぐに又、笑みを浮かべ、
「クックッ‥当然の事さ。
君くらいしか心配する
相手は、いないからね」
(‥言うんじゃなかった)
鳥肌が立つ言葉を吐いた
.
:07/11/04 22:35 :SH903i :6ZKGnHdM
#259 [ま-イ子]
死神に友達なんて
いるわけがないから
当然と言えば、当然だ。
(あたしは断じて、
友達なんかでは
ないけれど‥)
心の中で
目の前にいるヤツを
拒絶しながら
共に暗闇の街へ
繰り出した
.
:07/11/04 22:40 :SH903i :6ZKGnHdM
#260 [ま-イ子]
(――--いや、
ちょっと待って)
先程の会話と、
あたしの言動等を
振り返る
("死神に、友達はいない"
‥‥‥‥?‥)
そ ん な こ と 、
誰 が 決 め た ?
.
:07/11/04 22:47 :SH903i :6ZKGnHdM
#261 [ま-イ子]
"他の死神がいない"
なんて、あたしは知らない
もしかしたら
死神はコイツだけでは
ないのかもしれない
―--そいつらが、
優真を狙わない
可能性は‥‥??
背中に嫌な汗が滲む
.
:07/11/04 22:53 :SH903i :6ZKGnHdM
#262 [ま-イ子]
(‥これくらいなら、
聞いても大丈夫‥か?)
横を歩いているヤツを
一瞥し考えた。
死神の情報が入らない
理由の一つが、コレだ
むやみやたらに
本人に聞いてしまうと
もしかしたら、
逆上してしまうかも
しれない。
それを恐れて
情報を聞き出せなかった
.
:07/11/04 23:57 :SH903i :6ZKGnHdM
#263 [ま-イ子]
‥‥しかし。
もうそんな事を
言っていられる程
時間はない
意を決して
聞いてみるしかない
ゴクリ、と唾を呑み
あたしは口を開いた
「‥‥‥そういえば、」
死神の方は見ずに
言葉を発し、
一旦区切る
.
:07/11/05 00:05 :SH903i :yv7D.T76
#264 [ま-イ子]
死神は無言で
次の言葉を待つ
あくまで無表情を
保ちながら、
あたしは続けた
「‥死神って、
あんただけなの?」
何の反応も
動揺も見せない死神を
横目で見ながら
返答を待つ
.
:07/11/05 13:28 :SH903i :yv7D.T76
#265 [ま-イ子]
「クックッ‥そうさ
今は、私一人だ」
何の躊躇もなく
話すコイツに驚いた
それ以上に
他の死神がいない
ということに安堵する
しかし、
気になる事が一つ‥
「‥‥‥"今は"‥?」
.
:07/11/05 13:47 :SH903i :yv7D.T76
#266 [ま-イ子]
疑問を口に出すと
死神は喉を鳴らし笑う
「クックックッ‥‥
ああ。今は、な」
それだけ言うと
あたしの前を歩き出す
(どういう意味‥?)
今は、と云う事は
昔、死神がいたと
いうことになる
―---死んだ?死神が?
.
:07/11/06 11:02 :SH903i :2ljGEOdA
#267 []
あげ
:07/11/08 17:07 :D904i :d/Zn1IVg
#268 [ま-イ子]
‐‐‐‐‐‐‐‐
>>267さま
..
あげありがとう
ございます
今日の夜に更新
予定です!
‐‐‐‐‐‐‐‐
:07/11/09 12:17 :SH903i :vax8H2NU
#269 [Ayumi]
いつも見てます^^
更新頑張って下さい
(・⌒・)
ちなみに、感想板と
かありますか?
見落としてたらゴメ
ンなさい!!:07/11/09 14:33 :P702iD :Rr9lW8Zw
#270 [我輩は匿名である]
:07/11/09 19:50 :D903i :/uJ7tZy.
#271 [我輩は匿名である]
今まとめて読んじゃいましたx
めっちゃおもろいですね
ゆっくりでいいので更新待ってます。
:07/11/09 22:34 :W51S :LiWEB8hI
#272 [ま-イ子]
:07/11/10 00:00 :SH903i :YyPamZAM
#273 [ま-イ子]
「どういうこと‥?」
頭で考えるのも限界が
あるので直接聞いてみる
すると、死神は
僅かに肩を揺らし
反応を示した
――--聞くべきでは
なかったのだろうか
緊張しながら
待っていると
意外にも早く返答が来た
.
:07/11/10 16:26 :SH903i :YyPamZAM
#274 [ま-イ子]
「‥もしかしたら‥
死んでいるのかも
しれないな」
ぽつり、と
独り言のように呟く
コイツが酷く、脆く見えた
「わからないの‥?」
「‥‥‥ああ‥」
それだけ言うと
死神は先を急ぐように
足を早めた
.
:07/11/10 16:38 :SH903i :YyPamZAM
#275 [ま-イ子]
あたしはそれ以上
何も聞かなかった
否‥‥聞けなかった
(やっぱり、悲しい‥
‥のかな)
死神もあたし達と
同じ感情を
持ち合わせているのか
――-仲間や‥家族‥
.
:07/11/11 00:31 :SH903i :rcc6MJ0g
#276 [ま-イ子]
今、あたしは
どんな顔なのだろうか
憎むべき死神に
同情なんかしてしまって
きっと、酷く
情けないだろう
( で も ‥ )
仲間や家族といられない
そんな気持ちは
痛いほど分かるから。
自 分 と 重 な る
.
:07/11/11 00:36 :SH903i :rcc6MJ0g
#277 [ま-イ子]
―――--ボスッ
俯きながら
歩いていたあたしは
目の前にある
黒いモノにぶつかった
打った鼻先を摩りながら
黒物を睨みつけるが
「‥獲物だ」
ソレは詫びを
入れることもなく、
普段通り言い放った
.
:07/11/12 18:47 :SH903i :Mc5nTYR6
#278 [ま-イ子]
あたしが無言で
手を差し出すと
何処から出したのか、
その上に大鎌を乗せる
その柄をギュッと
握り締め、
前を歩く人影に忍び寄る
―――--ザシュッ!
.
:07/11/12 18:51 :SH903i :Mc5nTYR6
#279 [ま-イ子]
慣れてしまった鎌さばき
―――--ビチャッ‥
慣れてしまった
鼻につく血の臭い
何も感じない、
こ の ア タ シ は
「まだ‥"人間の仲間"‥
‥‥だよね‥‥」
.
:07/11/12 18:58 :SH903i :Mc5nTYR6
#280 [ま-イ子]
ヒトを殺して
おきながら
こんなことを言うなんて
可笑しいだなんて
わかっているのに。
言い聞かせないと
迫りくる何かに
押し潰されそうな、
そんな、
自分がいた――--‥
.
:07/11/13 21:13 :SH903i :gYSmP.MY
#281 [ま-イ子]
―――――――
―――‥‥
幼い頃の
あたしがいる
目に溜まる涙を
必死で抑えながら
母の暴力に耐えていた
嗚呼、
何と言うことだ
何と酷く、滑稽な様だ
.
:07/11/14 15:10 :SH903i :MJ9XnUzE
#282 [ま-イ子]
殴られ蹴られるのは
当たり前の事で、
壁に打ち付けられ、
逃げようとすると
紙を引っ張られ
いくら悲鳴を
上げようとも
いくら嘔吐して
苦しんでも
母はその手を
休めることを知らない
.
:07/11/14 15:18 :SH903i :MJ9XnUzE
#283 [ま-イ子]
(こんなに
酷かっただろうか)
----この、行為は。
そんな事を思いながら
目の前で行われている
無情な光景を
只、黙って見つめる
鈍い音を響かせて
腹を蹴られた
幼いあたしは、
その場にうずくまった
.
:07/11/14 16:19 :SH903i :MJ9XnUzE
#284 [ま-イ子]
母が、拳を振り上げ
小さくなっている
あたしに、振り下ろした
―――ピンポーン‥‥
するはずの
鈍い音はせず
代わりに訪問者を
知らせる、
軽快な音が鳴り響いた
.
:07/11/15 13:50 :SH903i :9ziQIBqA
#285 [ま-イ子]
母はハッとして
自分の子供を
一瞥してから、
パタパタと足音を立てて
玄関に消えて行った
"子供"は震えながら
ゆっくりと顔を上げる
玄関から聞こえる
陽気な声に安堵して
一気に肩の力が
抜けたようだ
震えが小さくなった
.
:07/11/15 20:20 :SH903i :9ziQIBqA
#286 [ま-イ子]
「‥‥会いたかった‥」
「‥‥俺もさ。
今から、大丈夫か?」
「‥もちろんよ‥‥」
しかし、
耳に入ってくる声に
"子供"の顔は暗くなり
扉の閉まる音によって
その瞳からは涙が零れた
.
:07/11/15 20:30 :SH903i :9ziQIBqA
#287 [ま-イ子]
独りぼっちの家で
少女の啜り泣く音だけが
静かに、響く
ぽた、ぽた、と
フローリングに
落ちる雫に気付くと
少女はそれを腕で拭った
.
:07/11/15 21:06 :SH903i :9ziQIBqA
#288 [ま-イ子]
ゴシゴシと力強く、
服の袖で何度も。
暫く続けた後、
腕を止めた少女は
勢いよく立ち上がった
その顔には、
清々しい笑顔が。
.
:07/11/15 23:24 :SH903i :9ziQIBqA
#289 [ま-イ子]
―――‥‥
―――――――
目を開くと、
そこには
見慣れた天井があった
ゆっくり体を起こし
辺りを見回すと
やはり、自分の部屋だ
カーテンの隙間から
陽射しがもれている
(‥‥‥夢、か)
.
:07/11/16 12:08 :SH903i :s6v3.oe.
#290 [ま-イ子]
"夢"は、的確な
表現ではない
あれは、あたしの
"幼い頃の記憶"だ
(‥‥胸糞悪い‥‥‥)
心の中で
悪態をつきながら
布団から抜け出す
カーテンを全開にすると
眩しい朝日が
目の奥を刺激した
.
:07/11/17 10:52 :SH903i :PKBBNluc
#291 [ま-イ子]
――――何故、今更。
あんなモノを、
見たのだろうか。
(‥昨日の‥せいかな)
久しぶりに受けた
あの、行為のせいだ
窓から見える
澄んだ青空とは反対に
どんよりとした、心
.
:07/11/17 11:00 :SH903i :PKBBNluc
#292 [ま-イ子]
‥‥ピピピピ‥‥
「―――――!」
突然の音に
心臓がびくり、と跳ねた
鳴り響く音の
正体が分かり、あたしは
ソレに手を掛け止めた
ふう、と短く息を吐き
部屋を出て
キッチンへと足を運ぶ
.
:07/11/17 11:10 :SH903i :PKBBNluc
#293 [ま-イ子]
綺麗にされた
(と、云うか使ってない)
キッチンで、あたしは
朝食を作り始める
(いつから、だっただろう)
あたしが、あの人に
朝食を作るように
なったのは―――‥‥
ごみ箱を見ると、そこには
コンビニで買ってきた
弁当や、おにぎりの空が
詰め込まれていた
.
:07/11/17 11:21 :SH903i :PKBBNluc
#294 [ま-イ子]
その横に並ぶのは
お酒やビールの空き瓶
明らかに体を
蝕むモノばかりで。
だから、
せめて朝食だけは。と
作るようになったのだ
材料を買って
冷蔵庫に入れておく
あの人の行動から
きちんと、食べている
ことが分かった
.
:07/11/17 11:30 :SH903i :PKBBNluc
#295 [ま-イ子]
"どうして"と言われれば
それまでなのだが。
あたしは、あの人を
憎めないのかもしれない
.
:07/11/17 20:57 :SH903i :PKBBNluc
#296 [ま-イ子]
恐怖は何度も感じた
逃げ出したい気持ちで
一杯だった
でも‥‥‥あたしは、
あの人に
"憎しみ"を感じない
あの人はあたしを
憎んでいるけれど
.
:07/11/17 20:59 :SH903i :PKBBNluc
#297 [ま-イ子]
その理由は――‥1つ
父が、"あたしを助けて"
死んだからだ。
.
:07/11/17 21:02 :SH903i :PKBBNluc
#298 [ま-イ子]
- - - - - - - -
昔々、ある所に
平凡な若夫婦が
住んでいました
お互い愛し合い
二人の間には、
愛娘が生まれ‥
幸せな日々を、
送っていました
- - - - - - - -
:07/11/17 21:08 :SH903i :PKBBNluc
#299 [ま-イ子]
- - - - - - - -
しかし、ある日
愛娘が生まれて
間もないころに
一つの事件が、
起きました‥‥
殺人鬼に三人の
家は、襲われて
しまったのです
- - - - - - - -
:07/11/18 10:58 :SH903i :6yw63oM.
#300 [ま-イ子]
- - - - - - - -
殺人鬼は娘を、
殺そうと包丁を
振り上げました
しかし、夫が、
娘を庇い刺され
最期残った力を
振り絞り‥‥‥
殺人鬼と共に、
窓から飛び降り
てしまいました
- - - - - - - -
:07/11/18 11:02 :SH903i :6yw63oM.
#301 [ま-イ子]
- - - - - - - -
妻は愛する夫の
死に、泣き叫び
その後はヒトが
変わったように
娘に暴力を与え
続けました‥‥
失ったモノへの
憎しみを、誰に
向ければいいか
わからなかった
かのように――
- - - - - - - -
:07/11/18 11:08 :SH903i :6yw63oM.
#302 [ぼぼん]
がんばれー\(^O^)/
:07/11/19 19:33 :N700i :NID1N8Kw
#303 [ま-イ子]
‐‐‐‐‐‐‐‐
>>302ぼぼんさま
ありがとうございます!
更新頑張りますね(*''*)
出来れば今日にでも、
更新します(`・・)‐‐‐‐‐‐‐‐
:07/11/19 22:01 :SH903i :KzZNG752
#304 [ま-イ子]
(‥‥‥‥‥。)
あたしは
そんな"あの人"から
逃 げ る 術 を
知 ら な い
.
:07/11/19 22:14 :SH903i :KzZNG752
#305 [ま-イ子]
物心ついた頃に
酔ったあの人から聞いた
‥‥この事実
嗚呼、だから
この人はあたしを
殴るのだ。と、
だからあたしを
憎むのだ。と、
.
:07/11/20 10:57 :SH903i :coETQySo
#306 [ま-イ子]
気付いた時には
もう遅かった
壊れそうな彼女に
手を差し延べる事も
棄てる事も
あたしには
出来なかった――
.
:07/11/20 15:48 :SH903i :coETQySo
#307 [ま-イ子]
只‥彼女の、苦しみを
逃れる方法が
あたしへの
暴行だと云うのなら
受け止めるしかない、と
幼いながらも
それを感じ
今に至るというわけだ
.
:07/11/20 15:53 :SH903i :coETQySo
#308 [ま-イ子]
(‥それ‥なのに‥)
あの夢は、なんだ
あの人の憎しみを
痛みとして味わっていた
はずなのに
幼いあたしは
‥笑顔だった
.
:07/11/21 14:41 :SH903i :x2JYgMJU
#309 [ぼぼん]
がんばれ
:07/12/03 17:46 :N700i :RSdQ4Cuk
#310 [我輩は匿名である]
頑張って!この小説好きだから待ってるよ
:07/12/06 21:24 :P902i :FQAQklDU
#311 [まーイ子]
:07/12/06 22:55 :SH903i :RNudFEDM
#312 [まーイ子]
とっくの昔に
覚悟は決めたはずだ
しかし‥‥‥
あの笑顔が
あの時の想いが
ーーーーー頭を駆け巡る
.
:07/12/06 23:01 :SH903i :RNudFEDM
#313 [まーイ子]
あたしは
あの人を、
信じていたんだ
"きっと
目を醒ましてくれる"
"きっと
あたしを愛してくれる"
それだけを信じて
生きていたんだ
.
:07/12/06 23:08 :SH903i :RNudFEDM
#314 [まーイ子]
(‥‥‥そうだ‥‥)
あたしは、あの人に
愛 さ れ た か っ た
.
:07/12/06 23:10 :SH903i :RNudFEDM
#315 [まーイ子]
「―――ーーーッ!」
込み上げる 何かが
体の奥から 溢れ出す
それを抑えるように
冷たい珈琲を
口に運んだ
喉を潤しながら
器官を流れるソレで
落ち着きを取り戻す
.
:07/12/06 23:35 :SH903i :RNudFEDM
#316 [にや]
今日初めて読んだ
いっきに読んだよー
まぢおもしろい(^ω^)
主たそがむばれー
:07/12/06 23:37 :N902i :/kqcSmdQ
#317 [まーイ子]
:07/12/06 23:49 :SH903i :RNudFEDM
#318 [にや]
はいいっきに読んで
しまいますた(´Pωq`)
頑張ってなあー
応援してる
でわでわここにこれ以上書き込むと読みづらくなると思うンで私わ去ります
ここに感想かかなくても最後まで読むからネ
楽しみにしてるからさッ
/
主たそファイトッッッ
\
:07/12/07 00:04 :N902i :ubC5l9OQ
#319 [まーイ子]
:07/12/07 08:46 :SH903i :MU.2ksv.
#320 [みぃぷ]
:07/12/07 10:29 :F902iS :QTm0nPLo
#321 [まーイ子]
:07/12/08 23:15 :SH903i :9jcIHcGc
#322 [まーイ子]
本日何度目かの
溜め息をつき
掛け時計に目をやると
いつも家を出る時間を
とっくに過ぎていた
朝食の準備も終わり
制服に着替え
家を出ようとした
―――――――が。
.
:07/12/08 23:22 :SH903i :9jcIHcGc
#323 [まーイ子]
玄関に掛けてある
鏡に映っているのは
気持ち悪い程
頬の肌が変色した
あたしの顔
(‥‥これは、さすがに‥)
片足だけ履いてた
靴を脱ぎ捨て
リビングへと
身を翻した
.
:07/12/08 23:24 :SH903i :9jcIHcGc
#324 [まーイ子]
―――――――
―――‥‥
校門をくぐると
見馴れない光景があった
ーーー登校する生徒たち
普通の事だとは
思うのだが、
毎日誰もいない時間に
登校するあたしとっては
新鮮だった
.
:07/12/09 00:08 :SH903i :FinwMbOg
#325 [まーイ子]
何故、かというとーーー
家を出る時間が
遅くなってしまった
あたしは、
いつも時間潰しに寄る
公園には足を止めず
学校を目指したのだ
遅刻の根源とも言える
朝の寄り道をしなかった
そんな訳で、久しぶりに
"普通の登校"が出来た
.
:07/12/09 00:15 :SH903i :FinwMbOg
#326 [まーイ子]
一直線に
自分の教室を目指す
その、長い廊下には
朝からふざけあって
走り回る男子生徒や
友達同士他愛のない
話で盛り上がる
女子生徒がいた
その横を擦り抜けて歩く
あたしの顔を見ては
何事かと驚く
.
:07/12/09 10:46 :SH903i :FinwMbOg
#327 [まーイ子]
(‥驚くのも無理はない)
右側の口端と目尻に
貼られた絆創膏
左頬には、大きな湿布
何処からどう見ても
普通の状態では
ないのだから
‥‥喧嘩‥‥?‥‥‥‥‥‥‥‥なんだ、あれ‥‥‥‥うわっ!‥‥喧嘩だろ‥‥‥やだァ‥怖い‥‥‥
.
:07/12/09 10:54 :SH903i :FinwMbOg
#328 [まーイ子]
――どうしてコイツラは
こんなにも、
人に興味を示すのか
出来れば放っておいて
欲しいあたしとは裏腹に
いろんな"噂"が飛び交い
あたしの耳から滑り込む
溜め息を尽きながら
教室へと入る
.
:07/12/09 11:02 :SH903i :FinwMbOg
#329 [まーイ子]
何処にいたって
それは変わる事等ない
登校してきた生徒は
順番にあたしを見て
知ったかぶる奴から
在りもしない事実を聞く
(前もあったな、
こんな事が)
それは、まだ
中学生だった頃‥。
.
:07/12/09 11:09 :SH903i :FinwMbOg
#330 [まーイ子]
母の前でうっかり、
父の名を出してしまった
あたしが、"しまった"
と思った時には既に遅く
気絶するまで
殴られた事がある
(死んだと思ったな、
あの時は)
顔が変色し腫れた
しかし学校を休むと
家に一日中いる事になる
それが嫌で、渋々登校した
.
:07/12/09 11:17 :SH903i :FinwMbOg
#331 [まーイ子]
あの時と、全く同じだ
‥噂‥勝手な妄想‥
その日はずっと
あたしへの話題が
絶えなかった
(今日も、そうなるのか)
これから始まる1日に
再度溜め息をついた
.
:07/12/09 11:19 :SH903i :FinwMbOg
#332 [まーイ子]
ーーーそういえば誰かが。
"溜め息をつくと
幸せが逃げる"
なんて事を言っていた
この事に
あたしは酷く疑問を持つ
幸せならば
溜め息をつくはずがない
‥‥‥‥だろう?
.
:07/12/09 11:23 :SH903i :FinwMbOg
#333 [まーイ子]
少なくともあたしは、
幸せならば
溜め息等つかない
ー―――実際
優真といる時に
溜め息をついた事なんて
一度たりとも
在りはしなかった
.
:07/12/09 11:28 :SH903i :FinwMbOg
#334 [まーイ子]
"溜め息をついたら
幸せが逃げる"
のではなく、
"溜め息をつく程
幸せがない"
になるのだと思う
それを考えると
自分の幸せの無さに
呆れ返る
.
:07/12/09 11:30 :SH903i :FinwMbOg
#335 [まーイ子]
幸せになりたいなんて
思ってはいない
否、思ってはいけない
母から幸せを奪った
あたしは、
そんな事を
思う資格などないのだ
でも、只――ーーー
.
:07/12/09 11:36 :SH903i :FinwMbOg
#336 [まーイ子]
――――ーガラッ!
「‥なつ!?」
突然開いた扉から
あたしの名を呼ぶ
‥‥叫ぶと言った方が
正しいのだが‥
その人は、やはり
「‥優真‥‥」
.
:07/12/09 11:39 :SH903i :FinwMbOg
#337 [まーイ子]
「どう、したの?」
物凄い剣幕で
近付いて来る優真に驚き
少し言葉が詰まる
「それ、こっちの
台詞だから」
(――ー怒ってる‥)
いつも見せない様な
眉間に皺を寄せた顔で
いつもより低い声で
あたしと話す優真は
誰が見ても憤怒していた
.
:07/12/09 11:47 :SH903i :FinwMbOg
#338 [まーイ子]
「‥別に何でもない‥よ」
「嘘つくな
何だよその顔‥」
教室内では
あたしと優真の声が
静かに響く
生徒達は話す事が出来ず
あたし達を見ている
「‥とりあえず、
教室出よう」
.
:07/12/09 11:56 :SH903i :FinwMbOg
#339 [まーイ子]
――――――‥
「‥‥それで、
一体どうしたんだよ」
教室を出た後
あたし達は
屋上に足を運んだ
夏の陽射しと共に
温い風が汗を誘う
少し落ち着いた優真は
先程より優しい声で
あたしに聞いた
.
:07/12/09 12:03 :SH903i :FinwMbOg
#340 [まーイ子]
「‥優真‥‥‥‥
心配してくれて
嬉しいんだけど、
本当に何もないの」
「‥‥何もなくて
こんな傷出来ないだろ?」
そっ、と
あたしの頬に触れる優真
壊れ物を扱うかの様な
優しく綺麗な指先に
あたしは
自分の手を重ねた
.
:07/12/09 23:34 :SH903i :FinwMbOg
#341 [まーイ子]
安心、する――ー
優真に触れていると
それだけで。
「優真がいるから
もう大丈夫」
微笑みながら言う
あたしを見て
優真は困った顔をした
.
:07/12/09 23:47 :SH903i :FinwMbOg
#342 [まーイ子]
「‥‥なつは、さ」
「‥‥ん?」
顔を少し俯かせ優真は
ぽつりと言葉を紡ぐ
「俺が心配しないように
いつも、我慢する」
「‥‥‥‥‥。」
バレてたか。
分かってはいたけれど。
.
:07/12/11 16:55 :SH903i :WL4oBY1I
#343 [まーイ子]
「‥俺、頼りないか?」
「そんなことない」
即答するあたしを見て
優真は一瞬、
驚いた顔をした
そんな優真の手を
少し強く握る
.
:07/12/11 17:00 :SH903i :WL4oBY1I
#344 [まーイ子]
「そんなんじゃないの‥
‥あたし優真には
いつも助けて
もらってるから‥」
「俺何もしてないだろ」
再び眉間に皺を寄せる
優真に苦笑し
あたしは続ける
「‥してもらってるよ
今も‥‥傍に
いてくれてるでしょ?」
.
:07/12/11 17:05 :SH903i :WL4oBY1I
#345 [まーイ子]
「傍にいてくれるだけで
凄く安心するの。
それだけで、あたしは
何にでも堪えられる」
優真の存在を
確かめるかのように、
その手を握り締め
自然と目を閉じた
――風が流れる
ふわり、ふわりと
肌を撫でるように。
.
:07/12/11 17:11 :SH903i :WL4oBY1I
#346 [まーイ子]
するり、と優真の手が
あたしの手から
擦り抜けた
(‥嫌だったか)
残念に思いながら
ゆっくりと目を開けた
ふわり。
先程の風とは違う
甘い香りのものが
あたしを包み込んだ
.
:07/12/11 17:25 :SH903i :WL4oBY1I
#347 [まーイ子]
「‥‥ゆう、ま?」
突然の出来事に
さすがに驚き
少し焦るあたしを優真は
更に強く、抱きしめた
「‥‥もう聞かない。
なつが話したくないなら
それでいいよ。」
小さく‥でもしっかりと
した声で言葉を紡ぐ
.
:07/12/11 17:34 :SH903i :WL4oBY1I
#348 [まーイ子]
「でも‥‥少しでも
辛いって感じたら、
俺にも話して。
一人で抱え込まないで」
―――嗚呼‥‥
貴方はどうして
こんなにも優しくて
こんなにも愛しいの
「‥ん、‥ありがと‥」
瞳から溢れたモノが
一筋、頬を伝った
.
:07/12/11 19:04 :SH903i :WL4oBY1I
#349 [まーイ子]
あたしには
幸せを求める権利なんて
ないけれど、
でも、只‥‥
このヒトを
愛する資格だけ
求めてもいいですか―ーー
.
:07/12/11 19:30 :SH903i :WL4oBY1I
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