*THE GOD OF DEATH*
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#245 [ま-イ子]
長い深呼吸で
落ち着きを取り戻した
あたしは扉に手を掛けた
――ーーカチャッ‥
静寂には大きすぎる
音が家の中に響いた
(嗚呼‥何故、扉と
云うものは音が鳴るの)
普段気にしないこの音を
今だけは、酷く怨む。
‥‥意味がないと
解っていても
.
:07/10/28 22:45 :SH903i :BoSk1wrg
#246 [ま-イ子]
出来るだけ
足音を立てずに
あたしは敷居を跨いだ
――ーーもう無駄なのに
こうしなければ、と
動く 身体が 憎い
あたしの前に
ぽつん、と置かれる
真っ赤なヒール
見るだけで
背筋が凍り動けなくなる
(赤は、あの人の色)
.
:07/10/28 22:54 :SH903i :BoSk1wrg
#247 [ま-イ子]
視界を閉ざす様に
あたしは目を閉じた
聞こえてくるのは、
通常より
倍は速くなっている
自分の鼓動
ドッ‥ドッ‥ドッ‥
脳に響き渡るのは
その音だけで
他には全く気配もない
.
:07/10/28 23:15 :SH903i :BoSk1wrg
#248 [ま-イ子]
(寝て、いるんだ)
いつもなら
玄関に入ると
同時に現れ、あたしを
引っ張っていくが
今日はそんな様子がない
きっと、
珍しくこの時間
寝ているのだろう
安堵したあたしの心臓は
徐々に静まってゆく
.
:07/10/28 23:29 :SH903i :BoSk1wrg
#249 [ま-イ子]
それなら尚更
起こさぬようにと、
あたしは家を
出ようとした
扉の取っ手を掴む
開けようとしたが
力を入れる前に
扉 が 開 い た
.
:07/10/30 11:58 :SH903i :9a6QsEw.
#250 [ま-イ子]
隙間から
蒸し暑い空気が
家の中に流れ込む
その空気に対する
汗とは別に
嫌な汗が頬を伝う
外との隙間が広がり
目の前には、
「何処に行くつもり?」
口に孤を浮かべた、
あたしの、母親
.
:07/10/30 12:09 :SH903i :9a6QsEw.
#251 [ま-イ子]
硬直して身体は
全く動かず
あたしは目だけ
泳がせた
獲物を狙うような、
そんな眼球とは
決して交わらさず
目の前の女が履いている
スリッパを 見つめた
(だから、靴があったのか)
.
:07/10/31 15:14 :SH903i :K63YY.hQ
#252 [ま-イ子]
身体とは逆に
冷静な頭は
今の状況を
素早く判断した
(今日は運が悪い)
それは、
"慣れ"なのか
"諦め"なのか――ーーー
どちらでも
変わらないのだけれど
.
:07/10/31 20:19 :SH903i :K63YY.hQ
#253 [ま-イ子]
一向に視線を
絡ませようとしない
あたしに苛立ったのか
"母"は一歩前に出て
敷居内に入ると
音を立てて扉を閉めた
――ーキィ‥バタン!
より一層近くに
なってしまった距離
あたしは自然と後退る
.
:07/10/31 20:24 :SH903i :K63YY.hQ
#254 [ま-イ子]
それすらも
まずかったのか
母は又一歩あたしに
近付いた
逃げても無駄
静かに、目を閉じた
――ーーーバチンッ!
.
:07/10/31 20:26 :SH903i :K63YY.hQ
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