ぎんいろのおおかみ〈}イラスト付きBL}〉
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#225 [☆Cocomo☆MILK☆]
フワフワした堅い毛並
グイグイと胸に身体を押し付けられ困惑していると
(乗れ)
「え…?」
首をかしげた輝夜に呆れ、狼は無理矢理グイと輝夜の身体を自分の背に押し上げた
「う、わっ…」
ぐらりと身体が傾くも、どうにかバランスを保ち首にしがみつく
「セツ…一体…」
(帰るぞ)
「えっ…帰っ…?わぁっ!」
聞き返す前に身体が大きく揺れる
そのまま狼は地を蹴り走り出した
:07/08/31 20:59 :W51S :☆☆☆
#226 [☆Cocomo☆MILK☆]
―――――――――――――――………
辺りはすでに真っ暗だった
厚い雲が月をぼんやりと霞めるなか、狼は森を駆け抜けた
その背に乗った輝夜はめまぐるしく変わる景色とスピードに耐えるように必死にしがみついていた
目を閉じてもぐんぐん感じる風の速さ
経験したことのない感覚
もう気力が持たないと感じた頃合いにゆっくりと狼の歩が緩まった
(大丈夫か?)
:07/08/31 21:44 :W51S :☆☆☆
#227 [☆Cocomo☆MILK☆]
声をかけられ目を開くとそこには見覚えのある洞窟
たった1日なのに、もうずっとここへ来ていないような気がする
同時にホッとする安堵感
輝夜はゆっくりと地に足を着けた
「うん、なんとか…大丈――――…」
言いかけ、ぐらりと目眩が襲い足元が崩れた
(輝夜!)
「ごめん、なんか安心しちゃって…」
労るように低く喉を鳴らし擦り寄った狼に笑みを向ける
:07/08/31 22:14 :W51S :☆☆☆
#228 [☆Cocomo☆MILK☆]
そのぎこちない笑顔に狼はふっと息を吐き
(少しここで待っていろ)
と倒れた輝夜を一人残し、洞窟の中へと消えて行った
輝夜はゆっくり息を吐き、天を仰いだ
雲が厚いせいか、星はひとつも見えなかったが、またこうして夜空を見上げることが出来るなんて思いもしなかった
初めに思ったのは生け贄の儀式の前夜
次に地下牢に閉じ込められたとき
もう二度も死を覚悟していた
:07/08/31 22:21 :W51S :☆☆☆
#229 [☆Cocomo☆MILK☆]
それでも、まだ自分は生かされ続けている
母親の復讐の為だけに今まで生きてきた
それも今となっては意味を成さない
『妖魔の子供だ』
あの老人が言った言葉が胸に突き刺さる
まるで化物のような目で自分を見つめ、嫌悪する
輝夜はふと目を閉じ、頭を抱えた
一体この先自分はどう生きていけばいいのか―――――…
「…考え事か?」
足音と共によく通る声が響き、顔を向ける
:07/08/31 22:30 :W51S :☆☆☆
#230 [☆Cocomo☆MILK☆]
「セツ…」
洞窟から現れた長身
白い羽織に長い銀髪
静かに近づいてきた男に、輝夜は、ほぅと息を吐いた
「やっぱり、セツだったんだ」
綺麗な顔立ちに、あの狼と同じ翡翠色の瞳
それは彼とあの白銀の狼を容易に連想させた
「すぐにわかったよ」
笑いながらの輝夜の言葉に、セツは苦笑を浮かべる
「…まあ、今更だな。………立てないんだろう、抱いていってやるから捕まっていろ」
:07/09/01 00:47 :W51S :☆☆☆
#231 [☆Cocomo☆MILK☆]
輝夜は頷き、身を屈めたセツの首にしがみついた
「軽いな」
ひょいと抱き上げ、洞窟の中へと足を向けるセツが言葉を漏らす
ちゃんと食っているのか?
と顔を覗き込まれ、瞬時に頬が熱くなる
「たっ食べてるよ…っ」
赤くなった顔を隠すようにうつむく
口を尖らせた輝夜に、セツはくすりと笑った
:07/09/01 00:55 :W51S :☆☆☆
#232 [☆Cocomo☆MILK☆]
(――…静まれ、心臓)
ドクドクと早鐘を打つ鼓動がうるさい
密着した肌越し、鳴り続ける心音がセツに聞かれてしまいそうだ
ふと彼の顔を盗み見上げ、その形のいい唇の端に赤い塊がこびりついているのを見つけた
「血…付いてる」
そっとなぞるように触れた指先に気づき、セツはペロリと口端を舐めた
「…人間の血は不味い」
:07/09/01 01:00 :W51S :☆☆☆
#233 [☆Cocomo☆MILK☆]
苦々しい物を口にしたように顔をしかめるセツ
輝夜は無惨に噛み殺された男を思い出し、顔を曇らせた
―――セツが悪いんじゃない。俺が殺したも同然だ――――
「…………」
くっと唇を噛み締めた輝夜を見下ろしたセツは何も言わず、洞窟の奥へ歩みを進めた
――――――――――――――………
:07/09/01 01:06 :W51S :☆☆☆
#234 [☆Cocomo☆MILK☆]
:07/09/01 01:07 :W51S :☆☆☆
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