ぎんいろのおおかみ〈}イラスト付きBL}〉
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#218 [☆Cocomo☆MILK☆]
虎ほどもあるであろう、その大きな体にゆらりと揺れる長い尻尾
グルグルと低くうめき、鋭い牙を見せつけながら一歩、また一歩と近づいてくる
突然現れた狼に唖然ととするも、不思議と恐怖は感じなかった
ふと、狼が輝夜に視線を寄越す
一瞬であったが、その翡翠の瞳に輝夜はハッと息を飲んだ
「もしかして…セツ?」
半信半疑で呟いた声に、狼は小さく笑った気がした
:07/08/31 00:38 :W51S :☆☆☆
#219 [☆Cocomo☆MILK☆]
白銀の毛並を称えた大きな獣は、呆然と見つめる輝夜を通り過ぎ、ガタガタと震え座り込む男の側へと近づいて行く
「くっ来るなァァ!!」
狂ったように叫びながら、男が懐から取り出した刃物を向ける
しかし狼は怯まず、じりじりと殺気にも似たオーラを醸しだし男に牙を剥いた
(こいつがお前をこんなめに合わせたのか)
:07/08/31 12:29 :W51S :☆☆☆
#220 [☆Cocomo☆MILK☆]
不意に頭に響く声色
ハッとして男を見るが、変わらず狼に向けて刃物を振り回している
どうやらこの声は自分だけに聞こえるものだと確信し、輝夜は慌てて立ち上がった
「そう…だけど」
もしもここでそうだと答えるのなら、男は間違いなく噛み殺されてしまうだろう
背後に転がったもう一人の男の死体に、輝夜は言葉を飲み込んでしまった
:07/08/31 12:34 :W51S :☆☆☆
#221 [☆Cocomo☆MILK☆]
確かに男達に陵辱されかけたのは事実だ
暴行を受け、媚薬まで飲まされた
しかし、だからといって殺してしまうなどという決断は下せない
「だけど…」
乱れた羽織の裾を握りしめ、歯切れの悪い輝夜に狼がウロウロとせわしなく動き回る
「でも…」
(だが、なんだ!)
苛立ちにも似た声色と共に、狼がガァッと牙を剥き吠える
「ひぃっ…!!」
男は目の前で威嚇され、 余りの恐怖に刃を投げ出した
:07/08/31 20:30 :W51S :☆☆☆
#222 [☆Cocomo☆MILK☆]
(こいつは生かす価値もない!いずれお前を殺すつもりだったんだぞ!)
鋭い牙を剥きグルグルと睨み付ける狼に、男は殺さないでくれと何度も首を振った
そのあまりにも無情な姿に、輝夜の胸がつきんと痛む
(こんな奴、噛み殺してやる!)
「うわぁぁ!!」
「やめて!」
狼が男に襲いかかるのと、輝夜が走り出したのはほぼ同時だった
:07/08/31 20:35 :W51S :☆☆☆
#223 [☆Cocomo☆MILK☆]
伸ばした両手がガシッと白銀の尾を捕まえた
半ば倒れ込む形でその長い尻尾にしがみついた輝夜に、男の喉元へ口を開いた狼が振り返る
(なんのつもりだ)
「確かに…ひどいことされた…けど…殺すなんて…出来ないよ」
蜂蜜色の瞳から、ポロリと涙が零れ、狼の尾を濡らす
「駄目だ、セツ…お願い…」
(……………)
祈るように見つめられ、狼はスッと口を閉じた
:07/08/31 20:42 :W51S :☆☆☆
#224 [☆Cocomo☆MILK☆]
そのまま静かに身を引いた狼に、小刻みに震える男の体から力が抜ける
そうして余りの恐怖に解放され、そのまま気を失うように地面へと倒れた
(…………)
狼はしばらく倒れた男を見つめ、握りしめられた尾を離せと言うように、ぴしゃりと長い尻尾を振った
もしかして怒らせてしまったのだろうか
「あの…セツ……」
絞り出すような声に、狼はクッと顎を反らせ、輝夜の胸に擦り寄った
:07/08/31 20:52 :W51S :☆☆☆
#225 [☆Cocomo☆MILK☆]
フワフワした堅い毛並
グイグイと胸に身体を押し付けられ困惑していると
(乗れ)
「え…?」
首をかしげた輝夜に呆れ、狼は無理矢理グイと輝夜の身体を自分の背に押し上げた
「う、わっ…」
ぐらりと身体が傾くも、どうにかバランスを保ち首にしがみつく
「セツ…一体…」
(帰るぞ)
「えっ…帰っ…?わぁっ!」
聞き返す前に身体が大きく揺れる
そのまま狼は地を蹴り走り出した
:07/08/31 20:59 :W51S :☆☆☆
#226 [☆Cocomo☆MILK☆]
―――――――――――――――………
辺りはすでに真っ暗だった
厚い雲が月をぼんやりと霞めるなか、狼は森を駆け抜けた
その背に乗った輝夜はめまぐるしく変わる景色とスピードに耐えるように必死にしがみついていた
目を閉じてもぐんぐん感じる風の速さ
経験したことのない感覚
もう気力が持たないと感じた頃合いにゆっくりと狼の歩が緩まった
(大丈夫か?)
:07/08/31 21:44 :W51S :☆☆☆
#227 [☆Cocomo☆MILK☆]
声をかけられ目を開くとそこには見覚えのある洞窟
たった1日なのに、もうずっとここへ来ていないような気がする
同時にホッとする安堵感
輝夜はゆっくりと地に足を着けた
「うん、なんとか…大丈――――…」
言いかけ、ぐらりと目眩が襲い足元が崩れた
(輝夜!)
「ごめん、なんか安心しちゃって…」
労るように低く喉を鳴らし擦り寄った狼に笑みを向ける
:07/08/31 22:14 :W51S :☆☆☆
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