○ビー玉ラバーズ○
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#561 [向日葵]
余裕たっぷりの笑顔に、俺は苦笑いした。
香月は俺の1回りも2回りも器がデカイ……。
きっと一生敵わないんだろうな……。
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「イルミネーション行かなきゃ駄目?」
源さんに尋ねた。
キッチンで洗い物をしていた源さんは「んー……」と唸る。
「逆に紅葉ちゃんは何で行きたくないの?」
笑顔で聞いてくる源さんに悪気はない。
でも私は思い出したくもない事を蒸し返されたようでイラッとした。
:07/12/08 23:26
:SO903i
:☆☆☆
#562 [向日葵]
私はしばらく黙ったままその場に立ち、くるりと向きを変えて寒い冬のベランダへと向かった。
空を見上げながら、その悲しい思い出をたぐり寄せる。
どうして楽しい思い出はかすんでしまう程儚いのに、悲しい思い出はこんなにも鮮明なのだろう。
――――
―――――――……
丁度、6年生の頃だった。
虐待は日に日に悪化。止める気配すら一向に無かった。
:07/12/08 23:29
:SO903i
:☆☆☆
#563 [向日葵]
今日も帰って来てから虐待の時間。
最早抵抗するのを止めて、ただ殴られるだけの毎日に変わった時の事だった。
今日は終業式。24日。
誰もがクリスマスと言うイベントに胸踊らせている。
私には、クリスマスの意味すらもう無い。
一生、殴られるのだと。
そんな思いで、ランドセルを背負った時だった。
ガチャ!
「!!」
無表情で、母さんが私の部屋へやって来た。
:07/12/08 23:33
:SO903i
:☆☆☆
#564 [向日葵]
そんな……あんまりだ……。
それでなくても明日から冬休み。
学校と言う逃げ場は無くなるのに……。
朝から……殴られる……。
もちろん私は恐怖で凍りつき、顔は真っ青になった。
そんな私に、母さんは歩みよる。
もう駄目だ……っ!
目を瞑ったその時だった。
母さんの香りを身近に感じた。それに、体温も。
どうして?信じられない……。
お母さんが、私を抱きしめてる……。
:07/12/08 23:37
:SO903i
:☆☆☆
#565 [向日葵]
「ごめんね紅葉……。いつもぶったりして……。痛かったよね……。」
母さんの顔を見ると、悲しそうな笑みを見せていた。
夢みたいだ。
母さんが私を殴らないなんて……。謝るだなんて……。
私はその嬉しさに涙を流した。
元の母さんに戻ってくれた。これからまた楽しい毎日がやってくる。
諦めていた希望が、戻り始めていた。
「仲直りの印に、駅前の話題になってるイルミネーション見に行こうね。母さん仕事終わったらすぐに行くから。」
:07/12/08 23:41
:SO903i
:☆☆☆
#566 [向日葵]
この言葉……ちゃんと覚えてる。聞き間違えるなんて絶対ない。
私は珍しく笑顔で登校。
終業式が終わって、家にランドセルを置き、駅前まで待ちきれないように走っていった。
まだ昼前なので、駅前のイルミネーションにはただの電飾しかない。
でも私の心は、正にイルミネーションのようにキラキラ輝いていた。
母さんの仕事はいつも昼過ぎには終わる。
私は母さんが来てからのお話を沢山考えていた。
:07/12/08 23:44
:SO903i
:☆☆☆
#567 [向日葵]
この前、クラスでクリスマス会やった事。苦手な理科で100点を取った事。体育で、鉄棒の見本を見せた事。
言いたい事が、山ほどあった。
それを考えていると、あっという間に時間は過ぎていった。
現在、1時。
母さんはそろそろ来るかもしれない。
母さんが来そうな所を、そわそわと体を揺らしながら見つめる。
―――1時半。
仕事……長引いてるのかな?
母さん……?
:07/12/08 23:48
:SO903i
:☆☆☆
#568 [向日葵]
待っても待っても母さんは来なかった。
お金なんか持ってなかったから、冷えた体を温めるための飲み物も買えず、私はひたすら母さんを待ち続けた。
とうとう辺りは暗くなり、イルミネーションが色とりどりに光始める。
見にくる人達、笑い合う人達、「綺麗だね」といい合う人達。
そんな中、孤独に震えてる子供が……
1人……。
時計を見ると、もう8時を差していた。
:07/12/09 01:57
:SO903i
:☆☆☆
#569 [向日葵]
「君?」
呼ばれる方に、私は見た。
声をかけたのは警察官だった。
「ずっとここにいるけど何をしてるの?誰か待ってるの?それとも今から塾か何か?」
「母さん……来ない……。」
「家はどこかな?送ってあげよう。」
住所を教えると、警察官は私と手を繋いで家へと向かった。
その手の温かさは、今でも覚えている。
:07/12/09 02:01
:SO903i
:☆☆☆
#570 [向日葵]
家に帰ると、灯りがともっていた。
え……。
母さん……?
警察官がチャイムを鳴らすと、愛想良く母さんが出てきた。
「お宅の娘さんですよね?駅前でずっといましたよ?」
母さんは私をじっと見つめる。
そして悲しそうに笑った。
私はその顔を見ていち早く気付いた。
騙されたのだと。
:07/12/09 02:06
:SO903i
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