○ビー玉ラバーズ○
最新 最初 🆕
#1 [向日葵]
ビー玉って様々な色があるでしょ?

恋愛も同じ。

様々な恋模様がある。

そんな恋人達のあるお話……。






○ビー玉ラバーズ○

⏰:07/10/12 23:36 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#2 [向日葵]
ビー玉1*甘い煙








新入生である私達と一緒に転任してきた先生は、それは格好良くて皆の憧れの的だった。

私もその中の一人だけど、一つ違うこと。

それは、先生の彼女が、私、大原 初音(17)である。

⏰:07/10/12 23:42 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#3 [向日葵]
なんのヘンテツもない私は、どちらかと言うと地味で大人しめだ。
そんな私が、何故か先生にある日告白されてしまった。

「大原……付き合わねぇ?」

保健医だった彼は、放課後私を保健室に呼び出しこう告げた。

一瞬何を言われたかさっぱりだった私は、先生がつけていたタバコの煙で覚醒した。

先生の事は大好きだったから私はコクンと頷くだけで精一杯だった。

そんな私の赤い顔を見て、先生は微笑みながら煙を吐いた。

⏰:07/10/12 23:50 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#4 [向日葵]
その煙には、媚薬が入っていたかもしれない……。

**********************

「先生ー……?」

今日も密会の場所、保健室に私は足を踏み入れる。

「矢田先生ー……?」

言い忘れてたけど、彼の名は矢田光弥(やだみつや)です。

保健室を見渡すも、先生はいない。
いつもなら自分専用のデスクに座ってタバコを吸っているんだけど……。

ギシッ

ベッドのスプリングの音が聞こえた。

⏰:07/10/12 23:54 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#5 [向日葵]
「先生?」

ひょこんと顔を出すと、先生はベッドに横たわっていた。
どうやら寝てるみたい。よっぽど疲れてるのかな……?

そっと手を出して、先生の肩を叩く。

「先生?大原です。来ましたよ?」

「……ん?あぁスマン……。」

のっそりと起き上がった先生は、いつも以上にネクタイを緩めていて綺麗に型どられた鎖骨が見えていた。

⏰:07/10/12 23:58 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#6 [向日葵]
私はそれを見るなり顔を真っ赤にしてしまい、回れ右をする。

先生のフッて笑う声が聞こえたかと思うと、横を通り過ぎながら

「エッチ。」

と言われた。

「せっ、先生が悪いんじゃないですか!先生なんだから身なりは整えて下さいよっ。」

「クス。ハイハイ。」

先生は涼しい顔で笑いながらネクタイを縛り直した。

「今日も怪我しなかった?」

⏰:07/10/13 00:04 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#7 [向日葵]
デスクにもたれて、タバコに火をつけながら先生は私に聞いた。

私はと言うと、先生の行動に見とれていて、先生の言った事を聞いてなかった。
煙が……私の所まで漂ってくる。

普通なら、煙たい!っとか言って手で払い退けたりするんだけど、先生のタバコの匂いは好きだった。

「大原?」

呼ばれてハッとした。
タバコを片手に首を傾げる先生を見て、私は混乱した。

「えと、……何ですか?」

⏰:07/10/13 00:08 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#8 [向日葵]
「だから、怪我しなかった?」

「ハイ!ってか、怪我したら先生のトコに来ますよ!」

「そうか。」

クスッと笑って、先生はタバコを加えた。

素敵だなぁ……。

うっすら微笑みながら先生を見ると、先生と目があった。
先生は優しい眼差しで微笑む。

「何?」

「いえ。何でもっ!」

⏰:07/10/13 00:11 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#9 [向日葵]
――――……

「デートとかしないの?」

友達の弥生(やよい:通称やよちゃん)ちゃんが言った。

「デートなんてっ!」

やよちゃんは私と先生の関係を唯一知ってる人で、困った時にはいつも応援してくれる私の自慢の友達。

「休みとかにこっそり行けばいいのに。車持ってんでしょ?あの人。」

先生のイメージピッタリの黒い車。
私はいつも先生に送ってもらってる。

⏰:07/10/13 00:16 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#10 [向日葵]
「でも、どこか遠くに行ったとしても誰かに会いでもしたら……。」

「警戒しすぎだよ。……いっそ泊まりにでも行ったら?」

ゴンッ!!

目の前にあった柱に激突。

泊まりって……!

私は17年間、彼氏なんて出来た事なんてないのに……いきなりそんな……っ!

「初音。冗談だから…。そんな真っ赤にならなくても……。」

⏰:07/10/13 00:25 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#11 [向日葵]
――――――――

今日はここまでにします感想よければこちらまでお願いします


bbs1.ryne.jp/r.php/novel/2481/

⏰:07/10/13 00:27 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#12 [向日葵]
赤くもなりたくなる。

先生と私は、実は……キスすらまだなのだ。
私を子供扱いしてるのか、ほっぺくらいにはするけど、決して唇にはしようとしない。

でも唇に触れられてしまったら、きっと私は溶けてなくなってしまいそう。

「やよちゃん!そんな事嘘でも言わないでぇっ!」

頭がパンクしそうになって、思わず半泣きになった。

*********************

「あ、大原。」

「はい?」

担任に呼ばれて私は振り向いた。

⏰:07/10/13 09:55 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#13 [向日葵]
「お前保健委員だろ?保健だよりを保健室まで取りに行ってくれない?」

「はい。」

きっと私の顔ニヤけてる。だって先生に会えちゃうから……。

少し足取りを軽くして歩いていたら、いつの間にか保健室前にいた。
ノックを2回してからドアを開ける。

「失礼します。」

「もう辞めてくんない?」
「え?」

とりあえずドアを閉めて、先生の様子を伺った。

⏰:07/10/13 10:00 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#14 [向日葵]
よく見れば携帯で何か喋ってるみたい。
先生は苛立たし気にタバコに火をつけて、煙を吸った。

私は保健だよりをもらわなければならないので、部屋にある長椅子に腰をかけた。

そういえばよく考えてみれば、常に清潔でいなければならない保健室でタバコを吸うのはどうなんだろうか……。

しばらくして、先生は電話を終えた。

「よぅ。待たせたな。悪い。」

「いえ。保健だより取りに来ました。」

⏰:07/10/13 10:07 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#15 [向日葵]
「おう。ちょっと待って。」

加えタバコで、先生は枚数を数えながら保健だよりを準備する。

「ねぇ先生。」

「うん?」

「保健室でタバコなんて吸っていいんですか?」

先生はハハハ!と笑うと灰皿にタバコを置いた。
そして紙の束を私に渡す。

「ま、換気すりゃあどうにでもなるってなもんだ。」

喋る度、先生が動く度、タバコの匂いが私の鼻をくすぐる。大人の匂いに、私は少し酔いしれた。

⏰:07/10/13 10:11 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#16 [向日葵]
「―原。大原っ。」

「あ、ごめんなさい。なんですか?」

「今日も来んだろ?放課後。そん時に話したい事あるからよ。」

「あ、ハイ。じゃ、失礼しました。」

と言ってドアを開けようとしたら、司会に大きな手が入ってきた。
「ん?」と思うと

「大原。」

「ハイ?」

振り向くと同時に、先生の唇がおでこに触れた。

⏰:07/10/13 10:15 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#17 [向日葵]
一瞬でボッ!と熱をもつ私の顔。
先生はクスクス笑って頭を一撫ですると「あとでな。」と言ってドアを開けてくれた。

ギクシャクしながら保健室を出ると、後ろでドアが閉まる音がした。

先生は大人すぎて、いつも私はドキドキしっぱなしだ。
先生は……私にドキドキしたりすることあるのかな?

私に魅力感じてくれてるのかな……?

保健だよりを教室まで持っていって、午後の授業が始まった。

⏰:07/10/13 10:20 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#18 [向日葵]
そわそわしながら放課後になるのが待ち遠しかった。ロクに授業も聞かず(駄目だけど……)、先生に会って、あの笑顔を見る事を想像する。

話を少し遡れば、先生と初めて言葉を交したのは1年の春だった。

――――
――――――――……

委員会なんて入るつもりがなかった私は、ジャンケンで負けて渋々保健委員になった。

なったその日、しょっぱなから委員会があると言われ、私は先生がいる保健室へ向かった。

「失礼……しまーす……。」

⏰:07/10/13 10:27 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#19 [向日葵]
「ん?何だ1年。」

そこには今と変わらず、自分のデスクでタバコを吸いながら仕事をしている先生がいた。

「え?あの、委員会があるって聞いたので……。」

とドアを閉めながら私が答えると、先生が「は?」と言った。

「保健委員は何もないぞ?ちゃんと委員プリント見たか?」

「え?!うそ!そんな……やよちゃん帰っちゃったのに……。」

私はしょんぼりして、先生に分かりましたと一礼して部屋を出て行こうとした。

⏰:07/10/13 10:31 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#20 [向日葵]
「なぁお前。」

「え?ハイ。」

「名前は?」

「え、お、大原……初音です。1年、4組……。」

先生は灰を灰皿に落として、私に微笑んだ。
当然私の胸はドキッと高鳴る。

「しっかり伝えてなくて悪かったな。送ってやるから仕事手伝ってくれないか?」

私は嬉しくなって、笑顔でハイと答えてしまった。
私の返事に、先生はまた微笑んでくれた。

⏰:07/10/13 10:45 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#21 [向日葵]
それから2ヶ月くらいが経った時だった。

私は先生から呼び出しをくらった。

「失礼します。」

「おー。入れ入れ。」

あれ?珍しい。今日はタバコ吸ってないんだ。

先生はヘビースモーカーらしく、タバコを吸ってない姿は初めてみた。

デスクにもたれた先生は、じっと貫くぐらい鋭い目つきで私を見つめた。
その目に、私の足は床にくっついて離れなくなった。

⏰:07/10/13 10:59 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#22 [向日葵]
――――――――

一旦キリます

良ければ感想お願いします

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⏰:07/10/13 11:01 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#23 [向日葵]
「大原……付き合わねぇ?」

―――――
――――――……

あー私って幸せ者だなぁ。なんて思いながら、放課後になったので保健室へ行く。

ガラガラ

「失礼し……っ。」

思わず言葉を飲み込む。
何故かって?

先生の機嫌が何故か最高潮に悪いからだ。
灰皿には山盛りになったタバコがそれを物語る。

「おー…。気にすんな。別にお前に対して怒ってんじゃねえからよー……。」

⏰:07/10/13 22:38 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#24 [向日葵]
「は、はぁ……。」

例え原因が私でなくてもなんだか気が引けた。

「さてと。」

先生はそう言いながら座ったまま椅子をクルリと回して私の方を向いた。

「今度の日曜、出かけようか。」

「えっ?」

唐突な事に私はすっとんきょんな声を出してしまった。

「出かけようっつってんの。OK?」

「いいですけど……どうして?」

⏰:07/10/13 22:42 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#25 [向日葵]
「ま、別にいいか。お前の友達に言われたんだよ。たまにはどこか連れて行ってやれって。」

「やよちゃんが……。」

先生は立ち上がって私に近づくと私の頭を撫でながら目線を合わせた。

「ゴメンナ。長い間どこにも連れて行ってやれなくて。」

申し訳なさそうな顔をする先生に、その心遣いが嬉しくて笑顔で首を振る。

「私全然何とも思ってませんよ。でもどこかに行けるのは、先生と1日一緒にいれるのは嬉しいです!」

⏰:07/10/13 22:51 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#26 [向日葵]
すると先生はにこぉっと笑って自分の胸に私を寄せた。
触れた瞬間先生が着ていた白衣からタバコの匂いがした。

私も遠慮がちに先生に腕をまわした。

本当に幸せで、大切にしてもらってるのが分かった。

でも、荒波は徐々に近づいていた。
私はそれに、まだ気づかずにいた。

――――――……

「明日何着ていけばいいかなっ?」

⏰:07/10/13 22:55 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#27 [向日葵]
※訂正

初音「明日〜」 ×
「明後日」 ○

----------------------

明後日なのに、私の頭の中は初デートの事で頭が一杯だった。
そのせいで今日は先生に怒られてばっかりだったけど……でもそんなのへっちゃら!

「あまり顔緩みっぱなしになっちゃうと周りにバレちゃうよ?」

やよちゃんの言葉にハッとして、手で顔をグニグニしてしゃっきらさせるけど、やっぱりヘニャアとしてしまった。

⏰:07/10/13 23:01 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#28 [向日葵]
「駄目みたいね……。」

と苦笑いでやよちゃんに言われた。

ザワザワザワ

「「ん?」」

やよちゃんと顔を見合わせて、なんだか騒がしい事に気づく。
主に騒いでるのは男子だ。

その視線の先には……

「わぁ……。」

校門に、何だかまごまごしている綺麗なそれでいて可愛い女の人がいた。

女の人は私と目が合うとニコッと微笑んだ。
私は微笑まれてドキッとする。

⏰:07/10/13 23:07 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#29 [向日葵]
女の人は私に駆け寄って来た。
私はいきなり美人に駆け寄られて半ばパニックになっていた。

「こんにちは……。私、平塚麻(ひらつかあさ)って言います。」

「え?あっ!こんにちは!大原初音ですっ。」

「えと、矢田光弥って人ここにいるかな?」

遠慮がちにかきあげられた髪の毛から、とてもいい香りが私の鼻まで伝わってきた。

あぁ。この人も大人なんだぁ……。

⏰:07/10/13 23:13 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#30 [向日葵]
・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「あ、ここです。保健医なんですよ先生。」

麻さんはまた綺麗に微笑んで頷いた。
どうやら知ってるみたい。
ガラガラ

開けた途端タバコの匂いがした。先生がいる証拠だ。

「失礼します。先生?お客さんです。」

「客?一体誰……。」

「……こんにちは。」

私は何回か2人を交互に見た。
そして何回かに分かってしまった。悟ってしまった。

⏰:07/10/13 23:17 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#31 [向日葵]
先生の驚いた顔。
麻さんの嬉しそうな顔。

私は静かに保健室から出て行った。

あの2人は…………元恋人だ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

今日は日直だったから、教室に残って残りの日誌事項を書いた。

やよちゃんは陸上部に入っているので部活へ行ってしまった。

私はシャーペンの先を見ながら頭がパンクしそうなぐらい色々考えていた。

先生はまだ、あの人が……。あの人は私と先生が付き合ってる事知ってるのかな……。

⏰:07/10/13 23:23 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#32 [向日葵]
「ハァ……。」

ライバル関係になってしまうのなら……私勝つ自信なんてない。
相手は騒がれるほど綺麗で、いい匂いがして……。

試しに自分の毛先に鼻を近付けた。
シャンプーの匂いが微かにするけど、人の鼻に届く程の効力は無さそう……。

シャーペンを置いて、机に伏せる。
少し傾いた西日が眩しい。

私がいなくなった後、2人はどんな話をしたんだろう……。
もしかして……より戻したなんて無いよね……?

⏰:07/10/13 23:28 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#33 [向日葵]
「コーッラ。」

「へ?」

体を起こすと、側には先生がいた。

「何で今日は来ないの?」

「あ……日誌を書いてて……。」

先生はスルリと日誌を取ると、勝手に書きだした。

「なら早く書いて、いつもみたいに来いよな。寂しいだろ。」

「……っハイ。」

先生が、寂しいと言ってくれた。
わざわざ私のクラスまで来てくれた。
それが何より私は嬉しかった。

⏰:07/10/13 23:34 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#34 [向日葵]
「よし。じゃあ帰るか。」

「ハイ!」

そして私達はいつも通り家路を急いだ。

********************

来たる日曜は快晴!
見事なデート日和です!

先生と待ち合わせする場所は、知り合いがいなさそうな駅が5つ向こうの花壇。

大きな時計もあって、行くと私の様に待ち合わせしてる人が一杯だった。

思わず観察してしまう。

⏰:07/10/13 23:38 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#35 [向日葵]
あの人は誰と待ち合わせしてるのかな?
あの人は彼女からメールが来たのかな?
あ!初々しい可愛いカップル!私も今日が初デートですよぉっ!

自分が幸せだと、人も幸せに見えてしまう。
待ち合わせの時間が迫る度、私の心はワクワクした。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

あ、あれ……?
待ち合わせ……11時だったよね?
時計を見上げると、11時10分になろうとしていた。
10分くらい!と私は周りを観察しながら、先生を待ち続けた。

⏰:07/10/13 23:43 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#36 [向日葵]
15分……25分……40分……。

流石に遅すがると思い、電話をかけてみる事にした。

{……もしもし。}

「?!」

女の人?!それも……この声……麻さん……?

私は素早く何故か電話を切った。

「せ……先生……?」

どうして麻さんが?
……ううん。落ち着こう。何かがあったのかもしれない。
とりあえず、改札に行って先生をいち早く見れる様に待ってみよう。

⏰:07/10/13 23:49 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#37 [向日葵]
>>22に感想板を掲載してますんで、良ければ感想よろしくお願いします

⏰:07/10/14 00:26 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#38 [向日葵]
電車は来るも、先生は来なくて、不安が私を何度も押し潰しそうになった。

その時だった。

「……!」

先生が、エスカレーターから降りてくるのが見えた。
私の顔が、ほころんでいくのが分かる。麻さんとは、やっぱり何も無かったんだ。

「先……っ。」

手を、大きく振り上げた時だった。

人混みをかきわけて、麻さんが後ろから追ってくるのが見えた。

⏰:07/10/16 23:48 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#39 [向日葵]
少し振り上げたやり場のない手は、静かに下げられた。
不思議な感じ……。
これだけ人がいるのに、先生と麻さんがやけにはっきり見える。

ガヤガヤうるさい人混みの雑音と距離のせいで、エスカレーターを降りて何か言い合ってる2人の会話は聞こえない。

だから、私は直ぐに待ち合わせ場所へ戻れば良かった。
何も知らない、何も見てないかの様に……。

そうすれば……

2人のキスシーンなんて見なくて良かった……。

⏰:07/10/16 23:52 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#40 [向日葵]
あまりにドラマチックなシュチュエーション。

人混みの中、まるで別れを惜しむ男女。
人はそんな2人を赤い顔をして見つめる。

ねぇ先生……。

私にキスしてくれなかったのは、麻さんを忘れられなかったから?
私が子供だったから?

私は……私みたいな子供は……あの煙すら吸えない子供は……大人の貴方にとって、只の玩具でしたか……?

先生……。
先生……。

⏰:07/10/16 23:56 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#41 [向日葵]
――――
――――――……

学校がこれだけ億劫な事はなかった。
足が重いとは正にこの事。

ゆっくりした速度で靴を履き替える。

「……ん?」

上靴の上に紙切れ。2つにたたんである。

中を開いた。

<放課後。保健室に来る様に。矢田>

そっか……。私昨日結局すっぽかした事になるんだ。

⏰:07/10/16 23:59 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#42 [向日葵]
ううん違う。

私恐くて逃げた。

だってきっと先生からは別れの言葉が出てくるだろうから……。
傷つくのが恐くて……私逃げたんだ。

折り畳んであった紙切れを、手のひらで潰して、靴箱近くのゴミ箱に捨てた。

ごめんなさい先生……。
ダメージを受ける準備をさせて下さい。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「どうしたの初音。なんか元気無いみたいだよ?」

移動教室の時、やよちゃんが私に言った。

⏰:07/10/17 00:03 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#43 [向日葵]
やよちゃんには一杯迷惑かけてるから、出来れば何も言わない方がいいと思い、「お腹痛くて」と嘘をついた。その後に「でもすぐ治るよ」と付け足して。そうじゃないと保健室行きを命じられるからだ。

「……っ。」

「初音?!そんな痛いの?!」

いつの間にか、涙が流れた。「違う」と首を振るのが精一杯で、私はうつ向いたまま足を進めた。

どうして今になって流れたんだろう。

・・・
あの時は、まったく出て来なかったのに。

⏰:07/10/17 00:09 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#44 [向日葵]
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

保健室行きの約束を破って、私はやよちゃんがいるグランドの端っこで座っていた。

やよちゃんはさっきからダッシュしたりして綺麗な体を鍛えている。

私もせめて、何か他の事に集中出来る事があれば、こんなグチャグチャな思いを紛らわす事が出来るんだろうに……。

ヴーヴー

カバンの中の携帯が鳴った。
でも今は見れない。
校則違反で没収されてはいけないからだ。

⏰:07/10/17 00:13 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#45 [向日葵]
どうせメル●ガ類の物だろう。
帰ったらみよう……。


日も大分落ちかけた頃、やよちゃんの部活が終わった。

「ゴメンネ。さて、帰ろう!」

「ウン。」

「私靴履き替えてくるから先に校門で待ってて。」

「分かった!」

そうして二手に別れて私達は歩いた。

校門の外で待とうと思い、私は校門近くの花壇に近付いた。

⏰:07/10/17 00:17 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#46 [向日葵]
「よう。」

「!!」

もっと早く気づくべきだった。
この慣れた煙の匂いに。

先生は校門近くにいつもの黒い車を止めて、少し離れた私の後ろでタバコを吸っていた。

「ちょっと付き合えや。」

「今日は……無理なんですっ!帰ってやる事が一杯あるんでっ!」

出来るだけ普段通りにと、明るく言ったけど、その裏にある感情が先生に伝わってしまった。

⏰:07/10/17 00:21 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#47 [向日葵]
「よく言うよ。俺から逃げてるだけのくせに。」

図星を突かれて顔が赤くなる。早くやよちゃんが来ないかと視線を横にずらすと、その間に先生は間合いを詰め、私の腕を痛いくらいに掴んだ。

「来いよ。言う事があるからよ。」

「私、やよちゃんと……っ。」

「お待たせー!…あれ?先生?」

「おう。ちょっとコイツ借りるわ。気を付けて帰れよ。」

そう言って先生は私をズルズル引っ張っていく。
下校時間が少し過ぎてる為、生徒がいなくて良かった。

⏰:07/10/17 00:25 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#48 [向日葵]
強制且つ乱暴に助手席に載らされて、私は唖然としていた。

私が脳内機能を停止させてる間に先生は運転席に乗り、エンジンをかけ始めた。

その音で覚醒した私は車をお料理とすると

バンッ!!

窓ガラスが割れるくらいに手をついて、先生に行く手を阻まれた。

「逃がすかよ。」

その声は、機嫌が悪い声よりも遥かに低く、恐ろしいものだった。

⏰:07/10/17 00:29 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#49 [向日葵]
氷ついた私をよそに、先生は猛スピードで車を走らせた。景色がグングン通り過ぎていく。

運転してる間、終始無言だった。

私は胸の奥でバクバク言ってる心臓を落ち着かす事で精一杯だった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

キキィッ!

ブレーキ音と共に、少し体がつんのめる。
止まった場所は、どうやら海岸近くらしい。
夜で海が真っ黒だった。

ってそんか場合じゃない。

⏰:07/10/17 00:34 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#50 [向日葵]
※訂正

ってそんか場合×
ってそんな場合○

-----------------------

先生の方に顔が向かない。それ以前に体が動かない。

座ってるせいでお尻が痛くて身動きとりたいのに、この重い空気がそれすらも許してくれないみたいに上手く体が動かせない。

不規則な息遣いになる。
吐息で少し窓ガラスが曇った。

「大原。」

⏰:07/10/17 00:37 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#51 [向日葵]
ビクッ

静かなせいか、先生の声がやけに耳に響く。

先生がこっちを見てるのは分かる。“話す時は人の目を見て話なさい”が鉄則だけど、そうも簡単に実行は出来ず、やっぱり窓ガラスを曇らせてばかりだ。

するとため息が静かに聞こえた。

「何もしないから。こっち向きな。」

まだ恐いけど、さっきよりも優しい声に、私の首はまっすぐ前を向くくらいになった。後は目を横にずらす。

⏰:07/10/17 00:41 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#52 [向日葵]
――――――――――

今日はここまでにします

>>22に感想板がありますんで、良ければ感想お聞かせ下さい

⏰:07/10/17 00:43 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#53 [向日葵]
訂正だけしときます

※訂正

>>48

車をお料理×
車を降りよう○

車料理してどうするんでしょうね

⏰:07/10/17 09:15 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#54 [向日葵]
先生の優しい、でも真剣な目が、私を射抜く。
射抜かれた私は、体のあちこちがなんだか痛い気がした。

「今日、何で放課後来なかった?」

「……。約束なんて、してませんよね。私だって……毎日暇してませんから。」

まるで拗ねた言い方。
どうして昨日遅れたくせに私は貴方の都合で振り回されなきゃいけないんでしょうと、言外に私だけそう聞こえた。

でもこれはちゃんと目を見てないから話せる事で、目を見て喋ってしまえば、私はお口にチャック状態だろう。

⏰:07/10/17 16:08 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#55 [向日葵]
「靴箱。……見たんだろ?」

「……。だからなんですか?靴履き替えますから当たり前」

「文句があんならこっち見て言えよっ!!」

言葉を遮られて、先生は急に怒鳴った。

私はビクッとさっきより震えて、更に先生を見れなくなった。
そして怒鳴られて驚いたせいで、涙がじんわり滲み出した。

泣かまいと我慢して、歯をギュッと食い縛った。

「なぁ。言えよ。俺に不満があんだろ?」

⏰:07/10/17 16:13 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#56 [向日葵]
私はブンブンと首を横に振るので精一杯だった。

私は顔を少し傾けて先生を視界から消した。

「大原。」

先生の怒った声が耳に響く。

この空間から逃げ出したいっていう思いだけが私の頭を一杯にした。

しばらくして、滲んだ視界に先生の大きな手のひらが出現して、私の頬を包んだかと思うと、先生の方へ向かされた。

と同時に、口の中に、タバコの匂いが吐息と共に微かに流れてきた。

今……私は先生と唇を重ねてる。

⏰:07/10/17 16:21 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#57 [向日葵]
離れて先生の目を見た時、堪えれきれなくなった涙が頬をつたった。

それは決して嬉し涙なんかじゃない。

「何で……?何でキスするの?!聞き訳がないから機嫌治しとでも思ってるんですか?!」

「は?!落ち着けよ。何言ってるんだ。」

「私……っ貴方の玩具じゃないんです……っ。」

先生にとったら私はまだまだ子供で、考え方も体も、何もかもが未熟。

でも誰かを好きって気持ちに、年齢なんて関係ないでしょ……?

⏰:07/10/17 16:26 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#58 [向日葵]
「昨日……私がどんな気持ちで待ってたか、先生ご存知ですか……?」

先生と、好きな人との初めてのお出かけは、予想もしない形で裏切られた。
まるで1人で舞い上がっていた私を嘲笑うかの様に。

「私……っ……私は先生の何ですか……?」

そう言って私はうつ向いた。先生はきっと私をフるだろう。この苦しい雰囲気から、早く私を解放して欲しかった。

そんな私を、先生は優しく長い腕の中に収めた。

そして背中をさすってくれる。

⏰:07/10/17 16:33 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#59 [向日葵]
「何って……大切な人に決まってんでしょうが……。俺の事嫌いになったの?」
先生は優しい声で私に話しかける。

「違……っ。だってあの日……麻さんと……。」

「やっぱり見てたか……。遅れたのもアイツのせいだよ。待ち合わせの駅とは逆の場所に連れて行かれてな、ホラ、あそこ普通しか止まんないでしょ?」

私は先生を一旦離してじっと見た。
先生から恐い雰囲気はもう消えて、ただ柔らかい雰囲気が先生を包んでいる。

「アイツが元カノだって事はもう気づいてるだろ?」

⏰:07/10/17 16:42 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#60 [向日葵]
私はコクンと頷く。

優しく微笑んだまま、先生は話を続けた。

「この頃「会いたい」だのなんだの連絡がしょっちゅう来てな。無視したら遂には家前で待ち伏せだ。」

それでこの頃機嫌が悪かったのかとパズルがはまるみたいにパチンと分かった。
「付いてくるわ、無理矢理違う方面のしかも特急乗せられるわ……俺だって散々だった訳よ……。」

「それだけじゃない……。」

「キスの事言ってんの?」

私はまた頷いた。

⏰:07/10/17 16:57 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#61 [向日葵]
「よくあるでしょ?「キスしてくれたら諦める」ってやつ。まんま言ってくれたよ。だからした。それだけ。」

「それだけ……。」

私の声の変化に、先生は眉を寄せた。

「ん…なに?」

「“それだけ”だなんて、私は思えません。」

だってキスは、お互いに好きだって分かりあうもので、その度もっと好きになって、それはまるで宝物で……。
先生の唇が私の頬やおでこに触れる度、私の胸は幸せで一杯だった。

⏰:07/10/18 00:03 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#62 [向日葵]
「先生は……そんな軽いものみたいに……お手軽にしてしまうんですね……。」

「どうでもいい奴にはな。」

先生はまた私を抱き締めた。ギュッとされて、私は息が詰まりそうになる。

「でもお前は別だ。何度も思った。唇に触れたいってな。……でも、勿体無い気がして無理だったんだよ。」

「勿体無い……?」

先生は「そう。」と呟いた。

「減るもんじゃないのに、何でだろうな……。」

⏰:07/10/18 00:08 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#63 [向日葵]
なんだ……なぁんだ……。

先生は、私に触れたがってくれてたんだ。
私をちゃんと好きでいてくれたんだ。
子供だからとか、そんなのじゃなくって、ただ1人の人間として、好きになってくれてたんだ……。

「先生。」

「ん?」

「大好きです……。」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

カチッ

帰りに送ってもらう時、先生がタバコに火をつけた。

⏰:07/10/18 00:11 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#64 [向日葵]
「先生にしては久々にタバコ吸いますね。」

「まぁな。」

「何か理由でもあったんですか?」

先生はハンドルを片手で運転しながら窓を開けて空気抜けをした。
そしてフーッと煙を吐いてから、理由を話してくれた。

「緊張するとな、どうしても上手く吸えないんだ。さっきも、もしかしたらお前にフラレるのかと思ってな……。」

と先生は照れ笑いを浮かべた。

⏰:07/10/18 00:15 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#65 [向日葵]
そして私は先生に告白された日の事を唐突に思い出した。
そういえば、あの時も吸ってなかった。
それは私に告白する時、緊張してたって事……?

そう思うと、自然と笑顔になってしまう。

「でも私、先生のタバコの匂い好きですよ。でもタバコっておいしいんですか?」

私が質問すると、先生は横目で私を見てニヤッと笑った。

「試してみる?」

信号は赤。

⏰:07/10/18 00:19 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#66 [向日葵]
先生はタバコを吸うと私に近づき、直接口へと入れてきた。

それはなんとも言えない、まるで媚薬のような


甘い煙……。

⏰:07/10/18 00:20 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#67 [向日葵]
ビー玉2*子供カレシ*









人混みが大っ嫌い。

よそ見も出来ないくらい周りを見渡さなきゃならないから。人の顔すら見えないような虚しい人だかりはイライラする。……だけど。

彼氏の浮気現場をいち早く見つける私にはもっとイライラする。

私の名前は栄居 奏(さかい かなで)。もうすぐ17歳。

⏰:07/10/18 00:26 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#68 [向日葵]
彼氏である嵐山 満(あらしやま みつる)(18)とデートの待ち合わせ……

……の予定だった。

「あっ!奏ちゃん!」

と駆けよってきた先輩。この人こそ私の彼氏。そして冒頭で話した正に浮気をしている張本人。

「先輩……今日デートって言いましたよね…。しかも先輩から。」

「ん?そうだっけ?」

⏰:07/10/18 00:30 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#69 [向日葵]
さて質問です。
皆さんならこんな返事が帰ってきた場合、どうしますか?

いち。「何よそれ!」と怒ってみる。
に。「ひどいよ……。」と泣いてみる。
さん。「私が間違ってたかぁ!」と彼に合わせる。

さぁどれですか?

え?私?私はよん。

殴る。

ボッコ――――ンッッ!!!!

げんこつアッパーKO勝ち。

⏰:07/10/18 00:33 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#70 [向日葵]
最近の彼は何がしたいか分からない。
自分からデートに誘うわりにはすっぽかして浮気現場を私に見せつけるかのように待ち合わせ場所の前を通り過ぎる。

そして私を見つけると子供のように私の元へ嬉しそうにやってくる。

……いや。彼は実際子供だ。

交際を申し込まれた時

「付き合ってください!」

と告白の花の代わりにペロペロキャンディを私に差し出した。

⏰:07/10/18 00:37 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#71 [向日葵]
私はその可愛いらしさが好きになって、交際を受けた。

……が。

「彼は何を求めてんだろうか津奈。」

友人の津奈に相談。

津奈は困った顔で笑った。

「別れるしかないんじゃない?」

「だね。…うしっ。言おう。」

「言えるのー……?」

う……それが問題なのだ。
私は時計を見た。
8時10分。そろそろだ。

⏰:07/10/18 00:42 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#72 [向日葵]
「奏ちゃ―――ん!おっはよぅ!」

ホラ来た。

満先輩は母親に抱きつくみたいに私に抱きつく。
そしと頬づりをする。

「会いたかった!学校が無いと俺寂しくてやだよーっ。」

昨日私が見ていた事なんか忘れた様な口ぶり。
私は先輩を無理矢理剥がしてキッと睨む。
先輩はヘラヘラしながら首を傾げて頭に「?」を浮かべている。

「先輩。そんなに女の子と遊びたいなら、もう別れません?」

⏰:07/10/18 00:46 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#73 [向日葵]
――――――――

>>22に感想板載せてます
良ければ感想など下さい

⏰:07/10/18 00:47 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#74 [向日葵]
このセリフ何回目だろう。
最早決まり文句のようだ。
そして彼も何故何回も言われてるのにその態度を改めようともせず別れてくれないんだろう。

先輩は一瞬キョトンとしてからほっぺたをプクッと可愛いらしく膨らました。

「やだ!俺奏ちゃんが好きだもんっ!」

「だって私もううんざりなんですけど……。」

このやりとりももう飽きた……。
次に先輩がとる態度は……。

⏰:07/10/18 12:05 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#75 [向日葵]
ポタポタポタ

先輩の水晶のように綺麗な目から、涙がポロポロ流れる。

そう、まるでダダッコかの様に彼は泣くのだ。

「やだぁ……俺奏ちゃんがいいー……。」

こうなってしまう。
そしていつも玩具を買ってあげる母親みたいに妥協するのがこの私だ。

別れ話はまた延長される。
「わかりました……。別れませんから……。」

その途端、先輩は表情を明るくして私に抱きついた。

⏰:07/10/18 12:10 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#76 [向日葵]
「やったぁ!奏ちゃん大好きぃぃっ!」

別に先輩が嫌いな訳じゃない。
むしろこの人のこんな可愛いさが魅力で、放っておけなくて、好きになっていくばかり。

ただ彼の口癖のような「好き」と言われる事に最近疑問を感じる。

ならば何故浮気するのかと……。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「実は愛情の裏返しとか!」

体育で他のチームがバスケをしているのを見ながら私達は喋っていた。

⏰:07/10/18 12:13 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#77 [向日葵]
ダムダムボールをつく音が体育館に響いているので、少し声を張り上げないと聞こえにくい。

「あの人は子供そのものだよ?!そんな駆け引き出来っこないって!」

栗色の癖のあるフワフワの髪、整った顔。
一見どこにでもいるイケメンな先輩。

……しかし裏側はまるっきり……繰り返すのすらしんどくなってきた。

「でも奏は愛されてるねー!毎日奏にべったりじゃん!」

「愛されてたら浮気なんかされないっつーの!」

⏰:07/10/18 12:19 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#78 [向日葵]
好きだから別れない。
でも女の子とは遊びたい。
それじゃ単なるワガママだ。

私はそう言った事が非常にうっとおしいタイプで、小さなワガママならまだしも先輩のワガママは……

「大きすぎる……。」

体育も終わり、着替えながら私は呟いた。

私だって、好きで別れようだなんて言ってる訳じゃないのに……。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「奏ちゃんっ!」

⏰:07/10/18 12:22 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#79 [向日葵]
昼休み。
先輩はいつも私のクラスへ迎えにくる。
その待っている姿はまさしく忠実な犬。
思わずご褒美と骨をあげたくなる。

「今日はどこで食べるー?」

手を繋ぎながら先輩は無邪気に笑う。

「どこでもいいです。」

「じゃ階段で食べよっか!」

私達は出来るだけ人があまり通らない階段へ行った。

「奏ちゃんのおにぎり一口ちょーだい!」

⏰:07/10/18 12:26 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#80 [向日葵]
口を開けて待つ先輩に私はおにぎりを入れてあげた。

何故だろう。
こう言うのって普通「アーン。」とかって甘い雰囲気の筈なのに……全くそんなの感じられない。

なんだか脱力……。

「おいしいねっ。」

でも幸せそうな先輩を見ると、こちらまで温かい気持ちになる。この瞬間がたまらなく好きかもしれない。

「ねぇねぇ!明後日は記念日だね!」

「あぁ。そうでしたっけ。」

⏰:07/10/18 12:30 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#81 [向日葵]
明後日は私達が付き合い出して1周年。
素っ気無い返事をしつつ、私はちゃんと覚えていた。

「お祝いしよっ!学校帰り、下駄箱で待ち合わせて一緒にお出かけしよ!」

「……。ハイ。」

いつからだろう……。
先輩との約束が、上辺だけに感じられて、私はあんまり信用出来なくなってる。

でもまさか、いくら先輩でも記念日に浮気するなんてヒドイ事はしないと思う。

……ウン。きっとしないよ。

⏰:07/10/18 23:43 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#82 [向日葵]
まぁ何はともあれ……先輩を信じて明日を待とうではないかぁ…。

――――――――……

そして記念日。

携帯の目覚まし機能のアラームで目が覚める。

私は少しソワソワしていた。記念日と言う響きがくすぐったいのか、いつもより髪の毛を綺麗にといて、歯はこれでもかってくらいに磨いた。

なんだかいつもの自分じゃないみたい。
デートにだってこんなに気合いをいれなくなったのに。

⏰:07/10/18 23:47 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#83 [向日葵]
「いってきまーす。」

少し寒くなった外の空気に触れた時、塀の向こうからヒョコンと先輩が現れた。
急な事に、私はパチクリと目を瞬きした。

「おっはよ!奏ちゃんっ。」

「あ、おはようございます……って、先輩なんで?」

先輩は私の家から逆報告で、先輩の方が学校には近い。しかも一緒に行くだなんて事は今までには無かった。

「だって今日は特別な日でしょ?だから2ケツで奏ちゃんと行こうと思って!」

⏰:07/10/18 23:52 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#84 [向日葵]
先輩は自分の後ろをバンバン叩きながら私が乗るのを待った。

校則違反と言う言葉が頭の隅に引っかかる。
でも、ま……いっか。

私は先輩の後ろに乗り込んだ。

「しゅっぱ――つ!!」

朝だと言うのに元気な先輩は爽快に風を切りながら自転車をこいだ。
私は後ろで先輩のセーターをキュッと掴む。
そして揺れる栗色をした髪の毛を見つめる。

やっぱり先輩も、記念日は嬉しいんだ。
そう思うとホッとした。

⏰:07/10/18 23:57 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#85 [向日葵]
キュキューッッ!!

「到着っ。」

私が自転車から降りるのを待って、先輩は指定された場所に自転車を置いた。
置くとすぐ隣までやって来て、「今日は寒いね。」と手を繋いだ。

「今日はどこ行きたい?」

「パフェが食べたいです。」

「じゃあいつもん所行こっか。」

空いている手で頭を撫でながら先輩はにこにこしている。
私も連れて口をゆるめた。

⏰:07/10/19 00:02 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#86 [向日葵]
「めずらしくラブラブなんだね。」

教室へ行くと、津奈がキョトンとしながら私に行った。

「今日は記念日だから。」

「いいなー……私も彼氏欲しいよ。」

記念日と言う魔法はすごい。本当だったら学校で2ケツや手を繋ぐ事はあまり好かない。
人がジロジロ見てくるからなんだか嫌なのだ。

でも不思議。
今日は嫌でもなければ、逆にもっとくっついていたい気さえした。

⏰:07/10/19 00:07 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#87 [向日葵]
――――――――

>>22感想板表記してます
良ければ感想お聞かせ下さい

⏰:07/10/19 00:08 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#88 [向日葵]
「たまには……ね。」

今日の放課後が楽しみで仕方なかった。
なんてったって久々のデートなのだ。

――――――……

放課後。
いよいよ待ちに待った放課後。
うずうずして仕方なかった放課後。

待ち合わせの校門に私はいた。下校している友達に時々「バイバイ」と言いながら先輩が早く来ないか下駄箱周辺をチラチラ見た。

掃除当番かなぁ。
遅いなぁ……。

⏰:07/10/21 01:56 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#89 [向日葵]
時計の針が進むに連れ、下校している生徒が少なくなっていく。
先輩はまだ来ない。

学校で先生から見つからない位置で先輩に電話しようか迷っていた時だった。

「あ。」

下駄箱に先輩の姿を発見。

「先……っ。」

「やだ満ってばー!」

先輩の隣にいたのは、3年生の綺麗な先輩だった。

「ちゃんとアクセ一緒に見てよ?満はすぐ飽きてどっか行きそー!」

⏰:07/10/21 02:00 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#90 [向日葵]
「そんな事ないって!約束でしょ?買い物付き合うって。」

私は目の前が真っ暗になった。足が地面に付いてるかどうかさえ分からない。

何言ってんの先輩。
ついさっきまで覚えてたじゃない……。
今日は……記念日なんだよ……?

「あ!奏ちゃん!」

先輩の声で私はピクリと動いた。
いつもみたいに先輩は私の元へ駆けよってくる。

「どうしたのこんなトコでぇ!」

⏰:07/10/21 02:03 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#91 [向日葵]
体がズキズキする。
頭がフラフラする。

「先輩……今日何の日か、知ってますよね……?」

まさか、いつもみたいな返ししないわよね……?
しないよね先輩……っ。

でも先輩は見事に私の期待を裏切ってくれた。

「今日何かあったっけ?」

胸を、ナイフで一突きされたみたいな鋭い痛みが突き抜ける。

だって朝、先輩ちゃんと言ってたじゃない。私嬉しかったのに……。先輩は私なんてどうでもいいの……?

⏰:07/10/21 02:08 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#92 [向日葵]
「今からね、この子と買い物に行くんだ!楽しい事一杯するんだ!奏ちゃんも行く?」

楽しい……?

先輩は本当に子供なんですね。楽しい事があればそれを最優先して、大事な事なんてポーンとすっぽかして…………残酷なくらい胸をえぐって……。

「も……嫌……。」

「え?」

私は手を高くあげて先輩を殴ろうとした。
でも途中でどうでもよくなって、また手を下ろした。

⏰:07/10/21 02:12 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#93 [向日葵]
「も…ぅ……いい……。」

私は回れ右をしてスタスタ家までの道を歩き始めた。

「ま、待って奏ちゃん!」

先輩が後ろから追ってくるのが分かった。
でも私は歩く速度を緩めない。

グイッ!

腕を引っ張られて先輩の方を向かされた。

「待ってって……言ったのに……っ。」

「何故……?今から買い物なんでしょう……?」

⏰:07/10/21 02:15 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#94 [向日葵]
虚ろな目をして私は答えた。
先輩はどうしたらと思ってるのか目の前でまごまごしてる。

「言ったでしょ?……私、もういいですから……。」

「あのね奏ちゃ」

「先輩。」


私は言葉を遮った。
先輩は悲しそうな顔をしている。
何故?私なんかもう放っておけばいい。

「……私、先輩からデート誘われる度、正直嫌だったんです。また……今日もかって思っ……。」

⏰:07/10/21 02:19 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#95 [向日葵]
涙が流れてしまった。
泣くつもりなんてなかったのに……。
でもやっぱり辛かった。

果たされない約束に、いつまでも待たされる私はあまりにも惨めで虚しかった。

「もう先輩の好きなようにして下さい……。私はもう、先輩とは付き合えませんから……っ。」

先輩の手を振り払ってまた歩き出した。
とうとう別れの日が来てしまったんだ。
そう思うと余計に泣けてきた……。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ピリリリリ

⏰:07/10/21 10:47 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#96 [向日葵]
家に帰る訳でもなく、公園のベンチにボンヤリ座っていると携帯が鳴った。
ポケットから出して、サブディスプレイを見ると、津奈からだった。

{もしもし!お楽しみ中ゴメン!あのさぁ…………奏?どうかした?}

私はまたポロポロ涙が流れ始めた。

「……っつ……なぁ……っ。」

{やだ!どうしたの奏?!今どこ?!}

私は場所を告げると、津奈はすぐ行くと言って電話を切った。

⏰:07/10/21 10:53 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#97 [向日葵]
記念日を忘れられたのが悲しいんじゃない。
先輩が私を好きだったのかが不安なんだ。

あの毎日のように言ってた「大好き」は、偽りなの……?
子供のフリして、ずっと私を嘲笑ってたの……?

「奏!」

15分くらい経った時、息を切らした津奈がやって来た。
津奈が来ると手を伸ばして私は彼女に抱きついた。

「よしよし。何かあったのね。話せる?」

頭を優しく撫でてくれる津奈に私は頷いた。

⏰:07/10/21 10:59 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#98 [向日葵]
私はまたベンチに座って涙で切々ながら津奈にさっきの出来事を話した。

津奈は私が鳴咽で詰まる度に優しく背中を擦りながら「ゆっくりでいいよ。」と言ってくれた。

そして何分か時間をかけて、話を終えた。

「そっか……。辛かったね……。でもさ、なんで先輩追って来たんだろう。」

「……知らない。珍しく罪悪感がよぎったんじゃない……?」

私は先輩を悪く言う事しか出来なかった。
別れた男女によくある光景。
でも本当は悪口なんて嫌なのに……。

⏰:07/10/21 11:04 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#99 [向日葵]
「奏はもういいの?先輩の事。」

私は少し間を開けてコクリと頷いた。

「そっか……。」

そうだよ。
もう待ち合わせで待たされる事もない。
無駄に怒らなくてもいい。もういいんだ……。

……なのに、どうして

胸の奥がこんなに苦しいんだろう……。

津奈としばらく話した後、私は家に向かってトボトボ歩き始めた。

帰ってまず何をしよう。
宿題をやって、お風呂に入って……。今日は長風呂にしよ……。

⏰:07/10/21 11:11 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#100 [向日葵]
足元を見ていた目を、家が近づいて来たので少し上にあげた。

「……っ。」

私は息を飲んだ。

塀に持たれながらしゃがんでいる先輩がいたからだ。

先輩は私に気付くと、見た事ないキリッとした真剣な表情をして立ち上がり、私を見つめた。

いつからいたんだろう。
あの時間からは、既に2時間は経ってる筈。
もう肌寒くなってる為夕暮れも早い……。

私は驚いて立ち尽くしていた足を無理矢理動かして先輩の横を通り過ぎた。

⏰:07/10/21 11:16 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#101 [向日葵]
門に手をかけた時だった。

「奏……。」

私はまた驚いた。
彼が私を「ちゃん」無しで呼ぶなんて。しかもそんな低い声で。

「俺が……嫌い?」

「……嫌いじゃないです。でも、もういいです……。」


すると腕を引っ張られて、私は先輩に抱きしめられた。
いつもとは違う先輩に、少しドキッとした私は直ぐに我に帰って先輩から離れようとした。

⏰:07/10/21 11:19 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#102 [向日葵]
「ちょ……!先輩やめて……っ!」

「…………。」

先輩は何も言わずに私を抱き締める。
その腕は1ミリも動かず私を締め付ける。

すると私はある異変に気付いた。
先輩の体が、少し震えているのだ。
寒かったのか?と思い、抵抗するのを少しやめた。

そして次の瞬間、耳元で先輩の息遣いを聞いて、私は分かった。

「先輩……泣いてるの……?」

⏰:07/10/21 11:22 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#103 [向日葵]
先輩は鼻をすすりながら、私をまだ抱き締めたままでいる。

「ゴ……メン。俺、全然別れたいとかそんなの思ってなくて……。ただ、奏が俺を好きか、試したかったんだ……。」

「……え?」

「奏は、俺みたいな子供っぽいのはもううんざりして、好きじゃなくなったのかなって……。でもいつも怒ってくれてる姿見たらホッとしてたんだ……。」

先輩はそれだけ言うと私をやっと解放して、シャツの腕で乱暴に涙を拭いた。
目を真っ赤にしながら私を見つめる。

⏰:07/10/21 11:27 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#104 [向日葵]
「だから、俺、奏が一番好きだから……。今日のはやり過ぎたと、思う。忘れてないよ。今日は記念日だもん……っ。」

先輩はまた涙をたくさん流した。
私はその姿を見て、すごく愛しくなって、先輩を抱き締めた。

「馬鹿ですね……。こうしてずっといるんですから、嫌いになんてなりませんよ。」

ううん。馬鹿は私か……。
知らず知らずの間に先輩を不安にさせていたのだから。
所詮私も子供だ……。

⏰:07/10/21 11:31 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#105 [向日葵]
先輩の顔を両手で包んで微笑んだ。
涙で濡れた先輩の目に鮮やかに私の姿が映っている。

「なんか、大人っぽい先輩、先輩らしくないですよ?無理しないでいつもの先輩に戻ったらどうですか?」

そう言うと、先輩のりりしかった顔が一気にふにゃあと崩れて、派手に泣き始めた。

「うぁぁ……か、な、で、ちゃぁあん……っ!」

「もうこんな事しないで下さいね?」

先輩はコクコクと何回も頷いて私に抱きついた。
耳元で「うぅぅ…っ!」と泣き声が聞こえる度、私はそっと微笑んだ。

⏰:07/10/21 11:36 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#106 [向日葵]
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

寒かっただろうと、先輩を家に招き入れた。

働いてる母はまだ帰ってないらしい。
私は部屋に先輩を案内した。

「どうぞ。散らかってますけど。」

「わぁいっ!」

と一番にベッドにダイブした。
やっぱり子供だ。

「奏ちゃんの匂いがするー。」

私は微笑んで、先輩の近くに座った。

⏰:07/10/21 11:40 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#107 [向日葵]
「先輩……。」

「ん?」

「私、そんな子供っぽい可愛いらしい先輩が……す、……き……ですから。」

私は顔を真っ赤にさせた。
好きだなんて言い慣れてない!先輩はよく言えるなぁっ。

肩にトントンと何かが当たったので振り向くと、ベッドに座った先輩が、隣においでとベッドを叩いていた。
指示通り、私はベッドに座る。

「ありがとう。俺も奏ちゃん大好き!」

と言って、一瞬のキスをした。

⏰:07/10/21 11:45 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#108 [向日葵]
そして二人で微笑みあった。

「ところで奏ちゃん。」

「ハイ?」

「俺、男なんだよね!こう見えても!」

「????はぁ……。」

すると先輩の顔がまた近づいてきて、唇が重なった。
またすぐに離れるだろうと思ってたのに、甘かった。

「ん?!ちょ……っ!」

先輩の唇が、少し離れると、先輩の顔が何故か笑ってるのに意地悪く見えた。

⏰:07/10/21 11:50 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#109 [向日葵]
「なんか……気分盛り上がっちゃった!」

と無邪気に笑いながら私を押し倒した。

「えぇ?!せ、先輩っ?!」

「奏ちゃん好きだよ……。」

そう言ってまた唇を重ねる。急で呼吸の準備なんてしてなかったから、私はすぐに呼吸困難になった。

「……っ。っ!!」

先輩の少しひんやりした指が、首筋に降りたのが分かった。

うそ――――っ?!

その時だった。

⏰:07/10/21 11:54 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#110 [向日葵]
「ただーいまー!」

母さんの声に、少し怯んだ先輩を見た隙に力一杯先輩を押し退けた。

「お、おかえりなさぁぁい!」

まだ心臓がドキドキしてる。体全体が熱を持つ。

「あーぁ!お預けかっ!」

先輩は無邪気にまた笑ってる。
「お預け」って……。近い将来つまりそんな事する日が来るってことっ?!

私が驚いた目を先輩に向けていると、先輩はにこっと笑った。

⏰:07/10/21 11:57 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#111 [向日葵]
そうかっ!今分かった!先輩がさっき言ってた意味!

先輩はこんな子供っぽいけど中身はちゃんとした男の人で……つまり……いつでもそういう準備をしている狼でもあったのだ……。

「…………っ!」

結局、中身が子供なのは、まるっきり私の方だったらしい。

満先輩のような彼をお持ちのそこの貴方!

子供の皮を被った狼にご用心を……。

⏰:07/10/21 12:01 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#112 [向日葵]
>>22に感想板表記してます
良ければ感想お願いします

⏰:07/10/21 12:02 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#113 [向日葵]
ビー玉3*Nineteen*










ブス、デブ。
この2拍子が揃えば悲しいかな好きな人が出来てもその恋は実のらない。

周りの人はそんなにブスじゃないよと言うがどう見たって私は……

「ブス……。」

こんな顔と、体の付き合いはもうかれこれ19年経っている。

⏰:07/10/21 16:24 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#114 [向日葵]
小学校、中1くらいまでは人生楽しくやっていた。
自分がデブでブスでも気にしないかのように明るくて、クラスの中心と言っても過言ではなかった。

でも、中3の時、好きな人が絡んだイジメに会い、それ以来男の子は恐くなり、高校では仲良かった友達何人かとは微妙にズレて付き合いがなくなった。
そんなこんなで対人関係にも嫌気がさして、自分がドンドン卑屈になって行った。

もちろん、ちゃんと仲良くしてくれる友達はいたけど、それに関係なく心の中はいつもどこかダークだった。

⏰:07/10/21 16:29 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#115 [向日葵]
「いってきまーす。」

そんな私も19歳。
短大生になった。

いつもの電車。混み合う車内。うっとおしいなぁ……。

私は音楽で耳を塞ぐ。
1人の時はなるべく自分の世界にいた方が落ち着くからだ。

……にしても混みすぎ。
苦しいっつーの。
……まぁ、私の体格が邪魔してるのもあるだろうけど。

モゾ……

ん……?何か、お尻に触れてる……?

⏰:07/10/21 16:33 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#116 [向日葵]
それに肯定するように、またモゾっと動いた。

えーマジッすかぁー……痴漢とか痴漢する人もっと人選べよー。なして私かぁぁ……。

意外にも、こういう時に何故か冷静になってしまうのが私で、とりあえず体を傾けようとするが、動かないのがオチである。

もしここで「痴漢です!」とか言ってもどうせデブの戯言と取る人が多いかもしれないなぁ。
とりあえずもうすぐ次の駅だし、手で避けながら待つか。そうすれば諦めてくれるだろう。

その時だった。

「おいオッサン。何してんだよ。」

⏰:07/10/21 16:39 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#117 [向日葵]
「?」

男の子の声……?

電車の速度は弱まり、駅に着いた。
すると私は最寄りの駅でもないのに、手を引っ張られて無理矢理降ろされた。

思わず私の乙女思考が妄想へと繋がる。

何故かと言えばその引っ張った男の子はタイプの顔だてた。

……いやそんな場合じゃなくて。

男の子は痴漢であろうおてさんを駅員に渡して私を振り返った。

⏰:07/10/21 16:44 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#118 [向日葵]
男の子と目が合う。

妄想を押し止めて現実的な事を考えた。

絶対「なんだよこんなデブスかよー!絶対可愛い女の子だと思ったのに助けて損したじゃねぇかよー!」とか思っているに違いない。

はぁ……なんとせちがらい世の中だよ。
性格いいとは言えないけど人は中身だよ君達。

と頭の中で┐(´〜`;)┌ ←この絵文字を描いた。

「ねぇ。大丈夫なの?」

「へ?」

⏰:07/10/21 16:48 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#119 [向日葵]
「いやだから、痴漢にあったからショックじゃないの?」

ショック……。
あぁ。か弱い人ならここで泣いたりするって?
残念ながら私は痴漢に同情しちゃうよ。何故私を狙ったかと。

「あー……大丈夫です。」

「は?!アンタそれでも女?」

「まぁ……生物学上は……。」

「助けるんじゃなかった……。」

あーすいませんねぇ。こんな奴で。

⏰:07/10/21 16:52 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#120 [向日葵]
私は男の子にとりあえずもう一度お礼を言ってからホームに並んで、私は次の電車を待つ事にした。

早く行かねば学校に遅れちまうよ。

あぁそれにしても貴重な体験したなぁ。男の子に助けてもらえるなんて夢のまた夢だよ。

そこで私の妄想モードに少しスイッチが入る。

もしかして……漫画でよくある、これが運命みたいな……っ?!…………ウン無いな!!

ボケツッコミを1人で終え、私は来た電車に乗った。

あれ。そういえば男の子どうしたんだろう。
私に呆れてどっか行っちゃったかね。

⏰:07/10/21 16:58 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#121 [向日葵]
**********************

「おはようチロル!」

申し遅れましたが私は五十嵐千広(いがらしちひろ)。あだ名は何故か中学の頃からチロルなのだ。
そんな可愛いあだ名の顔じゃないんだけどねぇ……。

「おはよう暁子(きょうこ)ちゃん。」

暁子ちゃんは私と同じ美術学科で、とてもいい子だ。こんな私と仲良くしてくれてすごく嬉しい。

「聞いてよ暁子ちゃん。あたくし今朝痴漢に会っちまいましたよ。」

「え?!大丈夫?!」

「なんか素敵なお兄さんが助けてくれたよ〜。いやぁ好青年でねー。」

⏰:07/10/21 17:05 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#122 [向日葵]
私はまるで年とったおばはんみたいな喋り方をした。

私が可愛いかったり積極的だったらお兄さんの名前とか聞いて恋に発展するんだろうなぁとしみじみ思う。

はぁ……私はあと何年こんな思いをしなくてはならないのだろうかねぇ……。

「チロル……もしかしてそな人に惚れたとか?」

「あーないない。それ以前に向こうが私をお断りだよ。」

いかにも気のない素振りだが、少しもう一度会えないかと思う自分に少し呆れた。

アンタそんな身分の奴じゃないだろうっちゅーのに。

⏰:07/10/21 17:09 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#123 [向日葵]
「さ、イーゼル用意しよ!」

ガラガライーゼルを用意しながら、私達はいつもの他愛ない話をした。

――――――――……

「じゃバイバーイ!」

「バイバーイ。」

あ゛ー今日も終わったぁー。家帰って早く漫画読みたーい。

私は少女漫画が大好きだ。
あの胸を切り裂かれるような痛み……そして感動的な告白。甘い2人の時間。全てが憧れ。

⏰:07/10/21 17:15 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#124 [向日葵]
私もあんな恋がしたいなぁと読んだ後は悶えに悶えてそして落ち込む。

あぁ……私には無理だっけと……。

現実なんてつまらない。
漫画みたいな奇跡、偶然、運命はそうそうそこらに転がっているものじゃない。

ホームの向かいでイチャつくカップル。
思わず履いてる靴を脱いで力一杯叩いてやりたい衝動にかられた。

あぁ……つくづく思う。
人生は辛いと。

電車に乗り、窓の外の暗くなった街並みを見ながらため息を吐いた。

⏰:07/10/21 17:21 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#125 [向日葵]
耳から流れてくる音楽はこんなにも素敵なのに……どうして私は素敵じゃないかねぇ。

窓に映る自分。
にらめっこは決着つくけとなく、私とのにらめっこは引き分けで終わった。

味わってみたいな……。

冬に一緒に手を温めてくれるような相手。
甘いキスをくれて、ギュッと抱き絞めてくれる相手。

私にとって全て幻想。
いいんだ。
行きてるだけで幸せなんだと思うし……。
そうだよ。私は幸せなんだよ。

⏰:07/10/21 17:25 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#126 [向日葵]
――――――――

休憩します

>>22に感想板あるんで良ければ感想お願いします

⏰:07/10/21 17:26 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#127 [向日葵]
そう思って、私は良しとした。

――――――――……

あぁ……今日もホームに人が溢れかえってる……。何故……。

プシュー……

電車到着と共にドアが開き、人が入れ替わる。

なんとかして車内に乗り込む。今日も昨日と変わらずギュウギュウだ。

あぁ嫌だ……。

すると、前にいた人が揺れのせいで私にもろにぶつかってきた。
私は顔がその人の胸元に埋まった。

⏰:07/10/24 00:19 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#128 [向日葵]
「んぐっ……!」

思わず少し声を漏らす。

全く……満員電車はやっぱり好かない。まぁ好きな人はいないだろうけどさ。
ってか昨日から微妙についてないな私……。

「オイッたら!」

ん?

もしかして私に言ってる?

聞いてる音楽の間間に人の声が混ざって聞こえた。

多分頭上からだろうと顔を少し上に上げた。

「あっ。」

「やっと気付いた……。」

⏰:07/10/24 00:24 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#129 [向日葵]
話かけた相手は昨日痴漢から私を助けてくれたあのお兄さんだった。

……そうすると何かい?さっきまでこのお兄さんの胸に顔を埋めてたっていう……。

顔が暑くなって、少しだけ汗ばんでしまった。

「あ、その節はどうも…。」

「別に。あーゆーの嫌いなだけだから。」

おぉ。正義の見方ですか。凄いなお兄さん。最近の若者にしては珍しい。

私はそう思いながら会話は終了したと思い、またうつ向いて音楽に集中し始めた。

⏰:07/10/24 00:28 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#130 [向日葵]
するとまたもや揺れ。
人が垂れているイヤホンのコードを引っ張ってしまったせいで、それでなくても私の耳の穴にしては少し大きいイヤホンなのに簡単に外れてしまった。

次の駅まで片耳状態は嫌いなので、なんとかして手を出そうとした。

「ねぇ、何聞いてんの?」

突然お兄さんが話出したので、出そうとしていた手がまた引っ込んでしまった。

「何……って……。色々ですけど……。」

「何を一番聞いてるの?」

⏰:07/10/24 00:33 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#131 [向日葵]
「え、EXIL●とか……。Y●Iとか……。」

ってか何でんな事聞く?

自分でも顔を少し歪めているのが分かった。

何故こんな私にそこまで構うかな。

「何かいつも真剣に聞いてるからそんなに好きなのかなと思って。」

「はぁ、そうですか……。……ん?いつも?」

「ウン。俺いつもアンタ見かけてたから知ってるんだよね。アンタは全然ぽいけど。」

だって周りになんて然程(さほど)興味ないんだもん。

⏰:07/10/24 00:38 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#132 [向日葵]
逆に興味持ってキョロキョロしてる方が怪しいだろうし……。

また会話が途切れた時、すぐに駅についた。

「じゃあな。」

「あ、ハイ。どうも。」

私はお兄さんを見ながらイヤホンをつけた。

なるほど。昨日お兄さんがいなくなったのはこの駅で降りるからだ。

着いた駅は昨日降りた駅と同じ。

それにしても変わったお兄さんだ。
私が近くにいても嫌な顔ひとつしないなんて。

⏰:07/10/24 00:42 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#133 [向日葵]
大抵は私の様なデブスは遠ざける筈なのに。

……まぁ満員電車で動けって方が無理か。
お兄さん私なんかが近くでスイマセンでした……。

私は心の中でそっとお兄さんに手を合わした。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

学校までは坂道だ。
涼しくなったとは言え坂道を登れば多少は汗をかいてしまう。
この体が1つは原因だろうがね。

タオル片手に私はひーこらひーこら上がり、やっと学校に着いた。

⏰:07/10/24 00:45 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#134 [向日葵]
教室に行って、即効でさらさらシートと脇シューをする。体が少し清潔になった気がする。

念のため帰りの電車乗る前にもしておこう。
汗臭い奴が乗ってきたら迷惑だよね。ただでさえデブって邪魔なのに。

「おはよーチロル!」

「あぁ暁子ちゃん。」

暁子ちゃんは私の隣に座ると、何だか意味あり気に私を見つめてきた。

私は暁子ちゃんを見つめ返しながら瞬きを何回かする事で「何?」と言う意味を示した。

⏰:07/10/24 00:49 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#135 [向日葵]
暁子ちゃんはにまぁと笑った。

「いやね、昨日の王子様とは会えたのかなってっ。」

私は思わず大笑いしてしまった。

「アハハハハハ!!お、お、王子さ…っまって!んな素敵な言葉ウチの人生にはないねっ。」

「えーっ!そんなことないよ。で、やっぱり昨日っきり?」

「今朝会ったけど?」

それを聞くと暁子ちゃんは目を輝かせた。

可愛いらしいのう……と私は暁子ちゃんのキラキラした目の光を浴びながら思った。

⏰:07/10/24 00:54 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#136 [向日葵]
――――――――

今日はここまでにします

>>22に感想板がありますんで、良ければ感想などお願いします

⏰:07/10/24 00:55 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#137 [向日葵]
「名前は?!」

「さぁ。」

「歳は?!」

「さぁ。」

「どこの人?!」

「さぁ。」

「えぇー!」

「えー。」

私の答えに暁子ちゃんは心底がっかりした。

だって何故に名前やら歳やらを聞かねばならないのだろうか。
別に私がその人にズキュン!ときた訳じゃないのに。

⏰:07/10/25 11:51 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#138 [向日葵]
いやズキュン!ときたとしても、私はそんなに積極的タイプではないし。

「暁子ちゃん。知ってるでしょ?私が男の人恐いって。」

「でも彼氏は欲しいでしょ?なんならその人好きになったらいいじゃない!」

どちらかと言えば相手に選ぶ権利があると思うんだが……。
第一私なんかに好きになられたら相手は困るだろうに。

私は遠い目をしながらそう思った。

「あ、そういえば、どっかの大学から生徒が美術学科の作品見に来るらしいよ。」

⏰:07/10/25 11:55 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#139 [向日葵]
え、何その迷惑な話。

「何の為に……。」

「知らない。でも来るって。今日。」

「今日―――――っ?!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

授業の油絵で私は頭を悶々とさせながらキャンバスに向かっていた。

飾られているのならまだしも、今からここに来てじろじろ見られるだなんて辛抱ならなかった。

あぁ……どこかへ消えてしまいたい……。

唯一それを止めてくれるのが聞いてる音楽だった。
何かに集中したい時はこうするのが一番なのだ。

⏰:07/10/25 11:59 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#140 [向日葵]
ガラガラガラ

「こんにちわー。」

!!!!
来た……。

先生達の挨拶を微かに聞きながら私はキャンバスに集中しようとしていた。
しかしチロリと視線を来た人達に向けると私は絶句した。

なんと女の子だけじゃなく男の子もいたのだ。

あぁー最悪……。

一切私はそちらに気にならない様に音楽の音量をさっきより上げた。

これでいいだろう。

筆をまた動かせた。

⏰:07/10/25 12:03 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#141 [向日葵]
するとトントンと肩を叩かれた。

暁子ちゃんかな?
何かあったのかも。

私はイヤホンを外しながら振り向いた。

「よ。」

「え?!」

私は目を剥いた。
そこにいたのはあの「お兄さん」だったのだ。

「アンタここだったんだ。」

「え……な……えぇっ?!」

明らかに動揺。まさかこんなトコで会うなんて思ってもみなかった。

⏰:07/10/25 12:06 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#142 [向日葵]
「俺らの大学とアンタの短大ってなんか交友あるらしいんだわ。」

んな事あるの……?
だって短大と大学よ?

そういう面に関しては私は全く知識がないので知らなかった。

「これがアンタの絵?」

「――っ。」

見られた。

しばらく黙って私の絵を見るお兄さん。筆を動かしたくても手が上がらなかった。

「綺麗な色遣いすんだな。」

「え……。」

私が視線を向けると、絵じゃなくなんだか上を見ていた。

⏰:07/10/25 12:11 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#143 [向日葵]
「千広っつーの?名前。」

「あ……ハイ。」

どうやらイーゼルに貼ってある名前の紙を見ていたらしい。

「敬語いらないから。多分同い年だし。俺は桜井惇樹(さくらいあつき)な。」

私はポケッとしていた。

さっき暁子ちゃんから質問された事を一気に言われた。

「もうしばらく千広の絵見てていい?」

桜井君はニコッと笑った。

⏰:07/10/25 12:15 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#144 [向日葵]
ヤバイ……暁子ちゃん……。

[その人の事好きになったら?!]

[千広。]

私……ズキュン!ときてしまったかもしれない……。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「「「チロル!!!!」」」

桜井君の学校が帰った後の休憩時間。
絵画コースの子達が一気に私の所へ集まってきた。

「は……はい……。」

思わずタジタジになる私。

⏰:07/10/25 12:19 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#145 [向日葵]
「いつの間に彼氏出来たの?!」

「や、違うんですけ」

「ってか相手めちゃめちゃ格好いいじゃん!」

「そうですね。けどあの人は」

「そうならそうと言ってよー!!水くさいなぁ!!」

もう好きなように言っててくれ……。

言い返す元気もなくなった。
質問責めしてきた子達はまだやんややんやと私の恋路について盛り上がっている。
そんな中、暁子ちゃんが言った。

⏰:07/10/25 12:24 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#146 [向日葵]
「あの人が王子様なんだ?」

「大当たり。桜井君だって。」

名前を口にした途端、桜井君が頭の中にポンッと出てきた。
顔が赤くなるのを自覚しながら脳内で桜井君像をパタパタパタと消した。

「「千広」って呼ばれてたじゃーん。」

「暁子ちゃんの聞き間違いだよ!」

これ以上混乱させないでくれー!

久々のズキュン!に私は少し戸惑っていた。
このまま気持ちに身を委ねていいものだろうか。

⏰:07/10/25 12:29 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#147 [向日葵]
――――――――

ここまでにします

>>22に感想板がありますんで、良かったら感想お願いします

⏰:07/10/25 12:30 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#148 [向日葵]
いい訳ないか……そんなの桜井君に迷惑だもの。

―――――……

帰りの電車に揺られながら私はうとうとしていた。

あぁ眠い……。
今日は一段と眠い……。

電車は帰宅ラッシュで多い為当然立ちっぱ。なので立ったまま寝る訳にはいかない。
どうにかして目を覚まさなければっ。

しかし電車の揺れが意外にま心地よく、目はやっぱり閉じていく。

駄目だってば私……。

⏰:07/10/25 23:49 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#149 [向日葵]
スポッ

イヤホンが外れた。

目を瞑ったままイヤホンを付けようとすると、勝手にイヤホンが耳へ入ってきた。

え?

頑張って眠気と闘い、目を開けた。

「……あ…っ。」

「寝てていいよ。アンタの降りる駅知ってるし。」

横にはいつの間にか桜井君がいた。

この人すっごい神出鬼没だなぁとか思いながら、せっかく付けてくれたイヤホンを片方外した。

⏰:07/10/25 23:55 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#150 [向日葵]
「いつそこに……。」

「さっきの駅。千広は熟睡しかけてたから気づいてなかったんだな。」

ドキ……

また“千広”って呼ばれた……。

私はそんな事に慣れてないせいですぐにときめく。
もしかしたらこんなの今時の人達にしたら普通なのかもしれない。

「千広の絵ってさ、優しいな。」

「え……や、そんな、大した……。」

すると桜井君は私をじっと見た。
男の子の目を見るのは怖い。私は口元らへんを見た。

⏰:07/10/26 00:03 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#151 [向日葵]
「なんでそんなよそよそしいの?」

「……や。ウン。性分なもんで。」

ってか会って今日名前知ったのによそよそしいも親しいもないだろうて。

「もっと喋れるっしょ?本当は。」

「怖いんだから仕方ないじゃないですかっ。」

あ。しまった。
つい本音がポロリ。

桜井君は目をパチクリしている。

ホラみなさい。
引いたも同然。
どうせデカイ体したお前が何びびってんの?とか嘲笑ってるに違いない。

⏰:07/10/26 00:07 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#152 [向日葵]
私はもういいだろうとイヤホンに手をかけた。

その時だった。

ポンポン

彼の手が、私の頭を数回優しく叩いた。

「怖くなんかないって。大体俺なんて怖くないっしょ。怖くない。大丈夫。」

優しい優しい言葉。
そんなの言われた事なかった。

[大丈夫。]

何が大丈夫かなんて分からなかったけど、私の心の中はその言葉に満たされていった……。

⏰:07/10/26 00:11 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#153 [向日葵]
次の日。

いつもの電車に乗り遅れた。
別に間に合わない訳ではないけれど、いつも10分前集合(まぁそれより早く着くけど)を心がけている私はギリギリがそんなに好きじゃなかった。

しばらく待って来た電車は、ラッシュ時よりもかなり空いていた。

おかげで背もたれにもたれる事が出来たので、私は本でも読む事にした。

あ、っと。その前に……。

耳栓代わりの音楽を聞こうと、カバンからイヤホンを出そうとしていた。

「……しょ?」

⏰:07/10/26 00:15 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#154 [向日葵]
何か近くで話し声が聞こえた。

この時間学生も多いから多分友達同士で喋ってるんだと思い、私は携帯とイヤホンを繋げた。

「……でしょ?桜井君と喋ってた子。」

桜井……?

その名前に作業をしていた私の手は止まってしまった。

「えー…。彼女なの?あり得ないよね?だってデブじゃん。」

え……。これってもしかして……。

「しかもブサイクじゃん。何仲良くなってんのかしらね。」

―――――――っ私だ。

⏰:07/10/26 00:19 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#155 [向日葵]
私は頭がガンガンした。

「ってか桜井も趣味わりーよな。なんであんなの?」

「しーっ!あんまり声デカかったら聞こえるから……っ。」

とか言いつつ、クスクス笑う男子。
馬鹿にし続ける女子。

桜井君がいつもの降りる駅に着いた時、話していたと思う人達が私の前を通った。

一人一人、私の顔をじろじろ見て……。

ドアが閉まる前に聞こえてしまった。
私を馬鹿にした大きな笑い声。

⏰:07/10/26 00:23 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#156 [向日葵]
……泣きたくなった。

何故自分の体はこんなに太いんだろう。
何故私は美人ではないんだろう。

太ってる人は生きてる価値すらないのかな。
美人じゃなければ恋をするのもいけないの?

誰がいつ……そんなの決めたんだろう。

桜井君の評判が、私のせいで悪くなる。
もう……関わってはいけない……。

私は自分がちっぽけに思えながら、電車に揺られて行った……。

⏰:07/10/26 00:26 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#157 [向日葵]
「おはよーチロル!」

いつものように暁子ちゃんが挨拶してきた。

「おはよー……。」

私は力無く笑って暁子ちゃんに挨拶した。
そんな私を暁子ちゃんは「どうしたの?」と言う風に首を傾げた。

「元気ないね……。」

「寝不足なだけだよ。大丈夫……。」

[大丈夫。]

頭に触れられた感触をまだ覚えてる。
優しい温かな掌。

でも忘れなきゃ。
気持ちに身を委ねる前で良かった……。

⏰:07/10/26 00:30 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#158 [向日葵]
背中に何かが重くのしかかる気がした。

絶望とか、自信の無さとか、卑屈さとか……。

もう私は、自分を好きになれない決定打を打たれてしまった。
醜い自分が、こんなにも嫌い……。
いらないなら消えてしまえばいいのにとさえ思った。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「まだ残るの?」

キャンバスに向かう私に暁子ちゃんは聞いた。

時計の針はもう7時を過ぎている。

⏰:07/10/26 00:35 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#159 [向日葵]
「ちゃんと届け出したし、少しでも進めないと間に合いそうにないから。」

「そう?じゃあ気をつけて帰るんだよ?お疲れ!」

「お疲れ。」

教室は静かになった。
動物の標本。何かの骨。マネキン。そして私だけが教室にいる。
いささか気持ち悪くて仕方ないけど……。

私は筆を動かす。
油の匂いが少しだけした。
[千広の絵ってさ、優しいな。]

筆が、キャンバスの上で停止した。

⏰:07/10/26 00:42 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#160 [向日葵]
――――――――

今日はここまでにします

>>22に感想板がありますんで良ければ感想お願いします

⏰:07/10/26 00:43 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#161 [向日葵]
「……っ。」

泣くな……。

泣いたって何も変わらないでしょ?
私知ってるもの。

中学生の時も、高校生の時も、大好きな人がいた。

いくら待っても告白される気配なんて全くなかった。でも思い続けてたら振り向いてくれるって思いながら、たまにそれに疲れて泣いてしまう時があった。

もしかしたらこんな私に神様は何かご褒美をくれるんじゃないかと期待して……。

結局は何事もなく卒業し、未練もなさそうに学校からいなくなる好きな人の背中を見るばかりだった。

⏰:07/10/27 00:15 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#162 [向日葵]
もういい……。
思い続ける自分が馬鹿らしく思えてきた。
こんな自分を好きになる奴が一体どこにいるんだろうかと、私は卑屈になっていった。

でも桜井君だけは違った。

こんな私の頭を撫でて、名前を呼んで……。

そんな桜井君が悪く言われる原因の私は、側にいてはいけない……。

私は誰も好きになってはいけない。

まるで神様から言われてるみたいだった……。

⏰:07/10/27 00:20 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#163 [向日葵]
窓を見ると、辛そうな私が映っていた。

まるで自分は悲劇のヒロインかもしれない……。
でもそれにしてはあまりにも

「ブサイクすぎ……。」

私は油絵の道具全てを片付けて、教室から出ていった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

帰ったらお風呂に入ろう。それも長風呂。

学校の門に向かいながら私は考えていた。

お風呂は私のストレス発散場所。
うだうだ考えてるのを汗と共に洗い流してくれる。

⏰:07/10/27 00:24 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#164 [向日葵]
そして寝ながら暗めの失恋ソングチックな歌でも聞こうかね。

と苦笑いしながらイヤホンに手をかけた。

「千広!」

「……?」

暗くて姿が見えない。
僅かにある外灯の下に名前を呼んだ人が一歩踏み出すと、その姿は明らかになった。

「さ……くら、い君……。」

桜井君は私を見るとニコッて笑って寄って来た。

駄目……私に近づいちゃいけない。

⏰:07/10/27 00:28 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#165 [向日葵]
「たまたまこっち方面に用事あってさ、千広の友達?らしき人が千広はまだ残ってるっつーから。待ってたんだ。」

「そんな事しないで!」

私が急に叫んだので桜井君は驚いていた。

「私は……こんなのだから……桜井君みたいな人は近づいちゃいけない。……帰るなら1人で帰った方がいいと思うよ。」

そう言って、私は桜井君の隣を過ぎた。

「え?ちょ、何。どーゆー事っ?」

私の横につきながら桜井君は私に話しかける。
ひたすら無視して、坂道を下って行った。

⏰:07/10/27 00:33 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#166 [向日葵]
駅に続く階段に差し掛かった時、行く手を桜井君に遮られた。

「ね、待ってってばっ。どうかしたの?!俺なんかした?!」

「……何で私に構うの?良いことなんかないよ?」

私に構ったら、それだけ桜井君の株が下がってしまうのだから。

「桜井君のお友達っぽい人達も心配してたよ。私に近づいちゃうから、桜井君はどんどん人気なくなっちゃうんだよ?」

「ねぇ何の話それ?」

「とにかく。桜井君だって初めて喋った時言ったじゃない。「助けるんじゃなかった。」つまり私がデブでブスだから損したって思ったんでしょ?ならもう構ってくれなくていいから……。」

⏰:07/10/27 00:38 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#167 [向日葵]
私は桜井君を避けて階段を降りようとした。

グイッ!

私の太い腕を桜井君は掴んだ。

「違う!……っあぁもう!こんなつもりじゃなかったのに!」

私は眉を寄せて桜井君を見ながら腕を離させた。
そして桜井君が言葉を出すのを待った。

「あれは…っその、シナリオと違うからつい漏れちゃった言葉であって……っ。」

「シナリオ?」

⏰:07/10/27 00:42 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#168 [向日葵]
桜井君の顔が苦しんでるように見えた。
一体何が言いたいんだろうと私は黙って静かに見つめた。

あ、夜だと暗いからよく顔が見れるや。

ぼんやり考えてると、桜井君が口を開いた。

「単刀直入に言うよ。俺は千広が好きだ。」

「……?!」

私は小さい目を目一杯開いた。

好き?私を…………っ?!

「電車で何回も見かける度に少しずつ気になっていったんだ。痴漢の時は、やっと話せるってめちゃくちゃ嬉しかったんだ!」

⏰:07/10/27 00:46 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#169 [向日葵]
私は人生初告白に頭が真っ白になって何度も瞬きをした。
初めて絶句と言う意味をしる。

「傷ついた千広を慰めようと思ったのに、千広は全然大丈夫そうだったから俺の予定は全部狂った訳!だからつい出た言葉がそれなの!分かった?!」

私は漫画で言う口から可愛いらしい魂が抜けていく状態で固まっていた。

こんな簡単に事が進んでいいのかと頭がぐるぐるし始めた。

「嘘だ……。」

やっと言葉が出せた。

「私みたいなの好きになるなんて……絶対信じないよ……っ。」

⏰:07/10/27 00:51 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#170 [向日葵]
私は180゚回転して階段を早めに降り始めた。

「だったら!」

何段か下りた時、桜井君が叫んだ。
周りが静かなので声がよく通り、大きなその声に立ち止まった私はゆっくりと振り返った。

「信じるまで追いかけてやるよ。」

階段をゆっくり下りながら桜井君はそう言った。

私のいる段まで来ると立ち止まって、ニヤッと笑った。

「覚悟してろよ。」

⏰:07/10/27 00:55 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#171 [向日葵]
その言葉に、私は早くも信じそうになりそうだった。

一番欲しい物が手に入らなかった19年間。

19歳のある日を境に、私の人生が少し変わろうとしていた……。

⏰:07/10/27 00:57 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#172 [向日葵]
ビー玉4*幼い僕達*











「私引越しするんだ。」

暑い暑い夏の日に、幼なじみの灯(あかり)が、買ったアイスキャンディソーダ味を食べながら呟いた。

当時小学生だった僕達はお互い仲良く、学校から帰ってくると公園でよくこうしたものだ。

⏰:07/10/27 01:02 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#173 [向日葵]
「引越しって……もうすぐ夏休みなのに?!」

「あのね巽(たつみ)。引越しに夏休みとか冬休みとか関係ないの。」

と灯は笑いながらアイスを一かじりした。

そんな軽く笑う灯をヨソに、僕の頭パニックに陥っていた。

僕は灯が好きなんだ。
なのに灯が引っ越してもう二度とこんな風に過ごせなくなるなんて……僕は嫌だ。

「?ちょっと巽?何黙ってんの!あ!分かった。私がいなくなるのが寂しいんだぁ〜。」

と人差し指で僕のこめかみ辺りをツンツン笑いながら灯は突いてきた。

⏰:07/10/27 01:07 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#174 [向日葵]
普段の僕なら「そんな訳あるか」と払い退けるが、引越しの事を聞いてしまった今、僕にそんな余裕などなかった。

灯の手を乱暴に振り払う。

「灯は寂しくないのかよ!そんなヘラヘラ笑いやがって……っ。俺は……。」

12歳になった僕は、「好き」と普通に言えなくなってしまった。

大きくなるばかりがいいことじゃない。

昔の様に「好き」と気軽に言う事が出来るなら、灯を引き留める事が出来るんだろうか。

⏰:07/10/27 01:11 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#175 [向日葵]
すると灯は笑顔を段々と消し、うつ向いてしまった。

ヤバイ……強くいいすぎたか……?

「……じゃん……。」

「え?」

僅かに聞き取れる声は理解するのには不十分で、僕は聞き返した。

灯はバッと顔を上げると眉を上げ、目は涙で濡れていた。

「寂しくない訳ないでしょ!巽のバカッ!!巽なら笑い飛ばしてくれると思ったのに!泣きたくないから人が明るく話てるのにぃー……っ。」

⏰:07/10/27 01:16 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#176 [向日葵]
ポテッと溶けてしまった2人のアイスが砂の上に落ちる。

僕は棒もその場に捨てて灯の頭を撫でた。

「ば、馬鹿か……笑える訳ないだろ……。」

「私泣くの性に合わないから好きじゃないの……。知ってるでしょ?」

もちろん知ってる。
いつも見ていた。

笑って、辛くても笑い声溢れる灯だからこそ、その時は愛しいの意味なんか知らなかったけど愛しいと思った。

「俺……灯が好きだよ。」

⏰:07/10/27 01:20 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#177 [向日葵]
「あ……やっぱり?」

「は?」

涙を拭きながら灯はニカッと笑った。

「そんな予感してたんだぁ〜♪」

「なっ……!!」

僕は顔が真っ赤になった。ただでさえ太陽と気温のせいで暑い体が更に暑く熱っていく。

そんな僕を見て、灯はフワッと笑う。

「私も巽が好き。だから離れたくないんだよ……。」

言ってから、灯の顔がほんのり赤くなった。
僕はそれを見て、灯の手をキュッと握る。

⏰:07/10/27 01:23 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#178 [向日葵]
しばらくの間、やかましい程の蝉の声に耳を澄ませた。

「……いつ行くの?」

「明後日……。」

「そっか……。」

僕らは再び黙った。
そして灯がぽそっと呟いた。

「どうにかならないかなぁ……。」

その言葉を聞いて、僕は一生懸命頭を回転させて方法を考えた。

そして思いついた。
今思えばなんて馬鹿な考えだろうと笑える。

でもその時の僕は、それが精一杯だった。

⏰:07/10/27 01:28 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#179 [向日葵]
「今からどっか遠くに行っちゃおうよ。」

「え?」

「それでおじさん達を心配させるんだ!そしたら灯が引越したくないのが分かるんじゃない?!」

僕の考えに、灯は目を輝かせて大きく頷いた。

「“遊ぶのは5時まで”って約束は守らなくていいんだね!」

「むしろ夜になれ!みたいな!」

僕達はまるで冒険にでも行く気分で笑い合って手を繋ぎ、宛てもなく走りだした。

⏰:07/10/27 01:32 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#180 [向日葵]
――――――――

今日はここまでにします

>>22に感想板がありますんで、良ければ感想お願いします

⏰:07/10/27 01:33 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#181 [向日葵]
「ねぇ巽!あんなトコ初めてみたね!」「あれ何かなっ?ね、巽!」

「巽!ねぇ巽!」

灯は何度も僕の名前を呼んだ。
今の彼女は僕が中心の世界だ。それが僕は嬉しかった。

夕暮れになっても、僕らは疲れる事なく笑い、はしゃぎながら走って行った。

そしてもう日が大分落ちてしまった時、知らない公園に立ち寄った。
僕達はブランコに乗り、目一杯漕ぎ始めた。

「灯、どれくらい飛べるかやってみようぜ!」

「ウンいいよ!」

⏰:07/10/28 01:44 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#182 [向日葵]
「「せーのっ!」」

僕達は一緒に飛んだ。

「よっ!」

「えー!巽そんなトコまで飛んじゃったー!」

勝負は僕の勝ちだった。
悔しそうに口を尖らす灯がとても可愛いかった。

気付けば夜になっていた。外灯が少なかったその公園は、とても星が綺麗だった。

「あれが夏の大三角形かな?」

「はくちょう座と……なんだっけ?」

「私も忘れたっ。」

僕達はシシシ!と笑った。

⏰:07/10/28 01:49 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#183 [向日葵]
全てが輝いていて、隣には大好きな灯がいて、僕にはそれで十分だった。

「灯!」

「巽!」

笑い合ってた僕達は一気に表情を消した。

耳慣れたその声は、まさしく僕らの両親のものだった。

「危ないでしょ?!何してるのよ馬鹿!」

「灯!もうすぐ引越すのに何かあったらどうするの!」

「……っやだ……。おばさんやめて!」

⏰:07/10/28 01:52 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#184 [向日葵]
灯を掴んでいたおばさんの手から灯を奪って、僕は灯を抱き締めた。
そしておばさんを睨んだ。

「灯を連れていかないで!灯だってここにいたいって言ってる!灯の面倒なら俺が見るから!!」

必死だった。

僕は灯の世界から僕がいなくなるのが怖かった。
いつまでも灯の世界で僕は生き続けたかった。

おばさんは悲しそうにすると、細い手で僕の頭を撫でた。

そして呟いた。

「ゴメンネ……。」

⏰:07/10/28 01:57 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#185 [向日葵]
絶望と言う言葉の意味を知った気がした。

僕は灯を離して静かに自分の手を見た。

なんて小さなちっぽけな手……。
何一つ守れない幼い自分。この時ほど、早く大人になりたいと願った事はなかった。

「好き」と簡単に言えなくても、大切な人を守れるならば、早く大きくなりたかった。

そして遂に、灯が引越す日が来てしまった…………。

「じゃあね巽。手紙書くから。」

⏰:07/10/28 02:01 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#186 [向日葵]
車に乗る前に、灯が喋りかけてきた。
灯は変わらない笑顔で僕に話す。
知ってる。灯、お前も悲しいんだよな……。

「俺も……書く。」

「うん……っ!」

2人に沈黙が流れた時、車の中から申し訳なさそうにおばさんが「灯。乗りなさい。」と言った。

いよいよ……別れの時だ……。

灯は口元に笑みを残したまま車に乗ろうとした。

「……。――っ!!」

⏰:07/10/28 02:04 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#187 [向日葵]
そんな灯を、僕は引っ張って強く抱き締めた。

僕の目からは、大粒の滴が流れる。

「大好きでいるから……っ。灯も大好きでいろよ……っ?!」

あんまり泣いたら格好悪い。なのに涙は後から後からいくつも丸くなって流れていく。

灯は僕の背中のシャツをギュッと握った。

「……っウン……!!」

決してこれは子供の淡い恋心とか、そんな簡単な言葉で片付けないで欲しい。

⏰:07/10/28 02:08 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#188 [向日葵]
年齢なんて関係ない。
僕らは幼いながらも精一杯お互いを好きで、体一杯の気持ちを持っていたんだ。

――――――――……

「巽ー!朝だよーっ!」

母親の声で、2階の自室で寝ていた僕は、ダルそうに起きた。

「……あー。夢か。」

今年、僕は15歳になった。
遠くにいる灯とは、ちゃんと手紙を書いたり送ってきたりと続いてり。
正直携帯が欲しいが、いくら頼んでも親は「高校入ってから!」の一言。

⏰:07/10/28 02:13 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#189 [向日葵]
それを手紙で灯に告げると、灯もそう言われたと書いてあった。

ほっぺを膨らまして拗ねてる灯の姿が目に浮かんで僕は手紙を読みながらフッと笑った。

「いってきまーす。」

来年の春、僕は高校生。

灯も高校生。

やっと携帯が買えて、文面だけじゃなくて電話が出来て、声が聞ける。

そう思うと待ち遠しくて仕方ない。

灯は未だ変わらない明るい声のままだろうか。

⏰:07/10/28 02:16 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#190 [向日葵]
僕は高い声から、変声期を迎え、男らしい声になった。
この声を聞いたら、灯は驚くかなぁ。

「ん?」

靴を履き慣らして、門を出ようとすると、郵便受けに手紙が何通か入っていた。

いらないものばかりの中に、青色をした便箋が入っていた。

差出人は…………灯だ。

「……!!」

僕は待ちきれなくて、絡まってしまう指先で封を開けた。

⏰:07/10/28 02:24 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#191 [向日葵]
僕は手紙を読み始めた。

「……。……っ!―――ぃやったぁぁぁ!!!!」

カバンと手紙を振り回しながら、僕は学校まで走って行った。

<巽へ。
元気?こっちは大分涼しくなってきたよ。そういえば、巽に嬉しいニュースをあげよう。私、高校はそっちを受けるの。また引越しをして、巽んちの隣に住む事になったんだ!出来れば……巽と同じ高校がいい!だから頑張って勉強するねっ!巽も頑張りなさいよ?それから…………巽、大好き!じゃね!    灯より>

⏰:07/10/28 02:28 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#192 [向日葵]
ビー玉5*弟の君*










「加寿(かず)姉ちゃん!」

「なぁに誠(せい)。」

3つ離れたご近所の誠。
小さい頃から可愛いくて、それはそれは女の子みたいだったのだ。

―――――――――……

それから数年後。

⏰:07/10/28 02:33 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#193 [向日葵]
「せ―――い―――。」

私は高校生2年生。誠は中学2年生になった。

「ハイハイ。いちいち呼ばなくてもいいから加寿姉。」

中高大とエスカレーターになってる私達の学校。なので私達はいつも一緒に行ってる。

じー……。

「……。何……?」

小さい頃から女の子の様な誠は大きくなっても女の子みたいでまつ毛は多くそして長い。少し長いツヤツヤの黒髪なんかすごくいい!

⏰:07/10/28 02:38 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#194 [向日葵]
「相変わらず可愛いなぁーって。」

「……。」

微笑みながら誠の頭を撫でた。
すると誠は静かに私の手をどけて先にスタスタ進んでしまった。

ここ数年で唯一誠が変わってしまったのは、よそよそしくなってしまった所だ。

姉気分の私としては、なんだか寂しい……。

頭撫でられるの嫌いだったのかな……。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「誠今日何かあったりする?」

⏰:07/10/28 02:41 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#195 [向日葵]
――――――――

今日はここまでにします

>>22に感想板ありますんで良ければ感想お願いします

⏰:07/10/28 02:43 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#196 [向日葵]
誠は首を振って「別に」と答えた。

「なら先帰ってね。今日委員会があるからその関係で遅くなっちゃうし。」

「……待っておく。」

「え?なんで?いいよ帰っても。」

誠はこちらをちらっと見てからまた前を向いた。

「この頃、ここらよく痴漢でんだよ。」

誠の横顔を見ながら私は首を少し傾けた。

それがどうしたと言うんだろうか……。

⏰:07/10/29 00:36 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#197 [向日葵]
私の視線に気付いた誠は短くハァ……とため息を漏らした。

「あのさ加寿姉。もうちょっと自分の身について気をつけてくんないかな。」

「そう?私これでもしっかり者よっ。」

誠はまるで「んな訳ない」と言いたいみたいに顔を歪ませて無言で私を非難した。
そしてまた短くため息を漏らすと、足早に下駄箱へと向かってしまった。

中学生と高校生の下駄箱は違う為、誠とはここでお別れだ。

それにしても、誠は何が言いたかったんだろ……。

⏰:07/10/29 00:41 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#198 [向日葵]
「おっはよう!」

「おはよう杏(あん)ちゃん!」

この子は杏ちゃん。同じクラスのお友達。
活発で面白い子です。

「朝から相変わらずラブラブだねー。」

「え?」

「告白は?まだ?」

私は杏ちゃんが何を言いたいのか分からなくて頭の上がハテナの洪水だった。
そんな私を見て、杏ちゃんは「まったまたー!」と言った。

「あの美少年中学生と付き合ってんでしょっ?隠さなくていいってー!」

⏰:07/10/29 00:47 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#199 [向日葵]
杏ちゃんは私をバシバシ叩きながら豪快にアッハッハと笑う。
私は痛さに耐えながら杏ちゃんの手をなんとか掴んだ。

「ちょ、誠はそんなんじゃないって!誠は弟みたいなもので、全く付き合ってなんかないんだからっ。」

私の言葉に杏ちゃんはピタッと叩くのを止めた。
口パクで「マジで?」と聞くので、私も口パクで「マジで」と返した。

「えー!私ずっと付き合ってんのかと思ったのにー!」

「違います!」

⏰:07/10/29 00:51 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#200 [向日葵]
靴を履き変えて、一緒に階段を上がっていると、杏ちゃんが「ウーン」と唸った。

「どうかした?」

「ん?あ、イヤね、その……誠君……だっけ?中高と人気高くってね。」

「?ウン。」

それもそうだろうなぁ。
誠はなんと言ってもあの容姿。しかもすっごく優しいのを知ってる。
そうなると、女の子からは当たり前のように人気があるんだろうなぁ。

いつか彼女とか出来たら大切にするんだろうなぁ……。

⏰:07/10/29 00:56 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#201 [向日葵]
と微笑ましく思ってると……

チクン…………

「?」

何だろう。

急に胸のどこかで小さな痛みが走った。
小さすぎて気づかないくらいの、ほんの少しの痛み。

胸に手を当ててみても、別に何のヘンテツもなかった。

「加寿?どうかした?」

「へ?ううん何も。それで?」

「もし彼女が出来たりしたら、加寿行き帰り寂しいんじゃないかなって。」

⏰:07/10/29 01:00 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#202 [向日葵]
寂しい……かぁ。

寂しいかもなぁ。
でもそれなら、ちゃんと「弟をよろしく」みたいな挨拶をして、誠にそれなりに大切にするように言ってあげないと。

誠が彼女と登下校かぁ……。

その映像を脳内に浮かべると、また……

チクン…チクン……

「いたっ!」

思わず声を出してしまった。

「加寿?どこが痛いの?」

⏰:07/10/29 01:03 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#203 [向日葵]
杏ちゃんは心配そうに私に寄ってきた。
私は胸を擦りながらまた頭はハテナで一杯になっていた。

病気なのかな、私……。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「1次関数のグラフっていうのは―――――……。」

私は窓の外をぼんやりと眺めていた。

今日はいいお天気だから外で食べようって誠に言おうかなー……。

私達はいつも一緒にお昼を食べる。
と言うのも、誠がお昼は一緒に食べようと言ってきたのだ。

⏰:07/10/29 01:07 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#204 [向日葵]
私は別に嫌じゃないので、いいよと答えた。

まったく……まだまだ姉離れ出来ないんだから……。

と思いながらも、誠が可愛いくて仕方ないのでとても嬉しいのだ。

「あ。」

グラウンドで、中学生がサッカーしてる。

元気だね若者。さすが14歳……。

何だか心は既に老人化してしまっている私なのだった。
するとその中に見慣れた影が。

⏰:07/10/29 01:11 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#205 [向日葵]
「誠……。」

長袖ジャージを腕も足も捲り上げてボールを奪いあっている。
と思っていたら、スイッとボールを奪い、一気にシュート。

わぁ……うまーい……。

運動神経良いのは知ってたけど、ここまでとは……。

感心していると、急に誠はこちらを見た。
何故かいけない事をした気分になった私はドキッとする。

誠は微笑んで手を振っている。

ん?!それは私に?
いやいやいやそんな訳ないよねっ?

⏰:07/10/29 01:15 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#206 [向日葵]
――――――――

今日はここまでにします

>>22に感想板があるんで、良ければ感想などお願いします

⏰:07/10/29 01:17 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#207 [向日葵]
私の教室は3階にあってグラウンドからはまぁまぁ離れている。
私から誠を見つける事は出来ても誠から私を見つけるのはきっと無理だ。

私は一旦黒板を見て、またゆっくりとグラウンドを見た。

すると誠はまだ私を見ていて手を振っていた。

先生の目を盗んで手を振り返すと、誠の手の振りが一層早まったので私だと確信を持てた。

しばらくして誠はまたサッカーをしに戻っていった。そんな姿を私は微笑ましく見守る。

⏰:07/10/31 00:47 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#208 [向日葵]
元気だなぁ……。

お姉ちゃんは誠が立派になって嬉しいよ……っ。

と、その時。

誠に可愛いらしい女の子が近づいてきた。

どうやら誠と喋ってるみたい。
その時見せた誠の笑顔は、完璧に“弟”ではなく、“男の子”だった……。

「……いつの間に……。」

そんな笑顔を見せる様になったんだろう。

また胸のどこかでチクリと音が鳴った……。

⏰:07/10/31 00:51 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#209 [向日葵]
―――――――――……

「加寿姉。飯。」

「あ、待ってて。すぐ行く。」

迎えに来た誠を待たせて、私はお昼の用意をした。

「へーっ。迎えに来ちゃうのかぁっ!」

「今日はたまたまだよ。いつもなら外で待ってるんだけど……。」

どうしたんだろ?

お弁当のサンドイッチとミルクティーを持って私は誠の元へと行った。

「どこで食べる?」

「中庭の木陰で食べよう!天気もいいし!」

そう言って私達は中庭へと向かった。

⏰:07/10/31 00:57 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#210 [向日葵]
中庭で食べる人は意外に少なく、食べているのは私達と遠くに少しだけ見える人達だけだった。

「いっただっきまーす!」

サンドイッチを1つ持ち、口に頬張る。
お腹が空いていたのでとてもおいしく食べていた。

あぁ……青空の下でおいしい物食べるって幸せだなぁ〜っ。

そこで私はあることに気づく。
さっきから誠が全く喋らないのだ。
ただ黙々とご飯を食べている。

⏰:07/10/31 01:00 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#211 [向日葵]
「誠?どうかした?」

「え……?いや……。」

私は瞬きを何回かして「そう?」と言った。
でも明らかに誠がおかしい気がする。それは長年付き合ってきた私の勘の様なものだ。

しばらく誠を見ていると、誠はお弁当箱に静かにお箸を置いた。

「あの……さ。……告白されたんだ。俺。」

「え?!嘘っ!!」

私はサンドイッチを食べる手を止めた。

「で?!返事したのっ?!」

⏰:07/10/31 01:05 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#212 [向日葵]
誠は眉を寄せてハァ……と悩ましげにため息を吐いた。中学生と思えないその仕草に色気さえ感じた。

「もちろん断った。」

「え―――!!!!断っちゃったの?!誠彼女いらないの?!」

「欲しいよ。でも……好きな人が、いるから……。」

へー!誠好きな人いるんだぁ!と私は目を輝かしていた。

すると急に誠が真剣な顔をして、私を見た。
そのせいで、私達は沈黙した。

⏰:07/10/31 01:09 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#213 [向日葵]
「……分からない?俺加寿姉が好きなんだけど……。」

「……え……。」

ザァァァ……

風が一瞬激しく通り過ぎた。私の伸ばした少し茶色い髪の毛が顔にかかる。

「小さい頃からずっと……。加寿姉全然気づいてないから今が丁度いいと思」

「ちょちょちょっと待って。」

誠が私を?
そんな……私は誠はずっと弟みたいにしか思ってなくて……。

⏰:07/10/31 01:12 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#214 [向日葵]
「せ、誠。勘違いしてない?きっと私がお姉ちゃんずっとやって来たようなもんだから、その……兄弟愛みたいなのと勘違いしてるんじゃないっ?」

私がそう言うと、誠は目を見開いて驚いた。
そして瞬時に怒りが映し出されていった。

私はこんなに怒りを露にした誠を見て少しゾクッと怖くなった。

「勘違いってなんだよ……。」

ギリギリ聞こえるか聞こえないかの声で誠は呟くと、私の手首を掴んで木に私を押し付けた。

⏰:07/10/31 01:16 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#215 [向日葵]
「ヤッ!!誠……っ!!」

「なぁ加寿姉。俺はいつまで弟扱いな訳?兄弟でもないのにさ!」

手首を掴んでいる手に更に力が入った。
痛さで私は少し顔を歪める。
手を動かそうとしても全然ビクともしない。
いつの間にこんなに力が強くなったの……?
ついこの間までは私の方が強かったのに……っ。

「離して……誠っ!」

「ねぇ加寿姉……!俺は男として見れないの……っ?」

「離してよ誠!!」

「俺を見ろよ!!」

⏰:07/10/31 01:21 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#216 [向日葵]
誠が叫んだと思うと、誠の唇が荒々しく私の唇に重なった。

何が起こったか判断するまでに数秒かかった。
分かった時には、息が出来なくなっていた。

それと同時に誠は離れた。

近くで見つめられて、その眼光にドキッとした。
私を真っ直ぐ見ている。
それはまるで誠の想いと同じだ。

誠は黙ったままお弁当を片付けると、その場を静かに去って行った。

私はそのまま腰が抜けたのか立てない。
胸に手をやると、まだドキドキいってる。

⏰:07/10/31 01:25 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#217 [向日葵]
それは息切れのせいじゃない。

「……知ってたよ。」

誠がもう弟じゃない事ぐらい。
だってずっと近くで見てきたもの。

いつの間にか同じくらいにまで伸びた身長も、低くなってしまった声も、骨張ってきたその手すら……。

「全部……知ってたもん。」

誠が男の子に近づくにつれ、誠が誠じゃなくなるんじゃないかって私は思った。

だからワザと、弟扱いしてきたんだ……。

⏰:07/10/31 01:29 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#218 [向日葵]
胸に当てていた手を、今度は唇に当てた。

「唇が…………。」

熱い……。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

委員会が終わって、仕事をしていたら6時になっていた。

外はほぼ真っ暗だ。

「ハァ……。」

誠きっと帰っちゃったよなぁー……。
私ヒドイ事言っちゃったし……って言うか気まずいし……。

窓にもたれながらあれこれ考えていると見回りの先生がやってきた。

⏰:07/10/31 01:32 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#219 [向日葵]
「ん?まだいたのか?暗いから早よ帰れー。」

「あ、ハイ。さようならー。」

下駄箱まで降りて、直ぐに私は家へと向かった。

早く誠に謝ろう。
それで今の気持ちちゃんと伝えなくちゃ。

きっと……誠なら分かってくれる筈だから……。

早歩きから駆け足に。
私は早く早くと気持ちを急がせながら足を進めた。

「あ!近道近道!」

私は少し細い道を通る事にした。
この道は家まで最短距離になる。

⏰:07/10/31 01:39 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#220 [向日葵]
コツ……

後ろでそんな音が聞こえた。
思わず立ち止まる。

……ん?

でも音が聞こえなくなった。
気のせいと思い、ゆっくりとまた歩き出した。
すると……

コツ……コツ……

え……。

早歩きになると後ろも早歩きに。
段々迫ってくる靴音。

コツコツコツコツ……。

⏰:07/10/31 01:42 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#221 [向日葵]
あ、もしかして誠?!


と後ろを向いた。
それが大きな間違いだった。

後ろには全く知らない男の人。深く帽子を被って暗くて目元は見えにくいが、口元が見える。

そしてその口元が、ニヤァ……と歪んだ。

「……ひっ!!」

背筋を駆け抜ける悪寒。
そして凍りついてしまった足。

男の人はニヤニヤしながら私に寄ってくる。

⏰:07/10/31 01:45 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#222 [向日葵]
「怖がらなくていいんだよ?これから楽しいことするんだからねぇ……?」

「ィ……イヤ……っ。」

痴漢らしきその人は動けない私を無理矢理引っ張ってどこかへ連れて行こうとした。

「ヤダ……ッ!!」

助けて……っ。





誠……っ!!

ガスッ

「グッ!!」

「!」

⏰:07/10/31 18:50 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#223 [向日葵]
急に痴漢は頭を押さえながらよたよたと走って行った。
何が起こったかいま一つ分からなかった私は呆然とへたっていた。

そして目の前の人物に気づく。

「加寿姉!大丈夫か?!」

「せ……っ。」

誠だ。
誠が助けてくれたんだ……。

「どーしてここ……に。」
「下駄箱にいるって言ったのに加寿姉が……ってか何で先に帰ってんだよ!俺痴漢出るっつったじゃんよ!!」

⏰:07/10/31 18:53 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#224 [向日葵]
私はビクッと体を震わした。

「ゴ……ゴメン……。」

「ハァ……いいよ。さ、帰ろ。」

誠が手を差し出してくれたので、私はその手を握り、立とうとしたら、その前に涙が出てしまった。

「怖かっ……。」

助かった安心感から涙がポロポロ流れる。
早く泣き止まないと誠が困ってしまうのに。

でも誠は予想と違って私の前に座ると、頭を撫でてくれた。

⏰:07/10/31 18:57 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#225 [向日葵]
「よしよし。怒鳴ってゴメンナ。怖かったな……。」

どちらが年上か分からない。でも今はその撫でてくれる手に、ただただ救われた。

ねぇ誠……。

私分かったよ。

私は……誠が……。

⏰:07/10/31 18:59 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#226 [向日葵]
――――――――

中途半端な終わり方してしまいましたが「弟」終わりです

一旦キリますんで感想良ければこちらに下さい

>>22に感想板があります

⏰:07/10/31 19:05 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#227 [向日葵]
ビー玉6*ありがとう*












今朝……すごい事が分かった。
なのに私はこんなにも冷静。

まだまだ熱い夏休みのある日。私の彼氏が、18と言う若さで死んだ……。

私は今相馬家と彼の名字がかかれた看板の前にいた。

⏰:07/10/31 21:53 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#228 [向日葵]
「薫(かおる)?行かないの?」

友達の実砂(みさ)が私に話しかけた。

私は空を見上げた。

だって……死に方があまりにも過ぎるんだもの……。

私、彼は相馬伊月(そうまいつき)は、かなりの女好きだった。
同学年の女子といつも楽しそうにつるむのを見る度、いつ浮気するのかと気が気で無かった。

そんな彼だけど、意外に浮気はしなかった。
口癖は「薫以外はどうでもいいんだから。」だった。

⏰:07/10/31 21:58 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#229 [向日葵]
それを信用したのが馬鹿だったのか、彼は浮気の最中に死んだらしい。
噂によれば、デート中に車が浮気相手の女に突っ込むのを助けたと言う正に英雄のように死んでいった。

「実砂。私は行くべき……?」

「……うん。行こうよ。」

私は頷いて足を進めて行った。

葬式場にはたくさんの人がいた。
私は周りの人に頭を下げながら奥へと進んで行った。

そして奥へ入った途端……

「ごめんなさい……!!あたしのせいです!!」

⏰:07/10/31 22:02 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#230 [向日葵]
見ると伊月が寝ている……いや、横たわっている布団に女の子がうずくまって、泣いていた。

「貴方のせいじゃないですよ……大切な人を守れたんならあの子も本望よ……。」

女の子を慰めるように、伊月と思われるお母さんはそう言った。

本命がここにいるとも知らず……。
いや、本命はあちらかもしれない。
私はいつからか浮気相手になっていたのかもしれない……。

「実砂……。私帰るよ。」

「え……薫……っ。」

⏰:07/10/31 22:13 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#231 [向日葵]
スタスタ歩く私を実砂は追いかけてきて、慌てて私を止めた。

「薫!お線香あげるだけでもしよっ?言いたい事あるの分かるけど……。」

「なんで?裏切られたのに私が惜別する訳ないじゃない。」

結局はそう言う事だったのだ。
私だけが騙されて、真実を聞けないまま勝手にいなくなられた。

涙は出なかった。
ううん。出したくなかった。出る訳もなかった。
私が泣く意味なんて、どこにも無いのだから。

⏰:07/11/01 00:52 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#232 [向日葵]
「じゃあね薫。」

「ウン。またメールするよ。」

実砂と別れて、私は家へ向かった。

着いてから、まるでそこら辺に遊びに行ってたように「ただいま」と言い、部屋に戻った。

着ていた制服を次の始業式の為にハンガーに綺麗にかけた。
そしてお葬式だからと思い、置いていった携帯を持ってベッドに仰向けにダイブ。

開けば2人で撮った写メの待ち受け。
しばらく黙ってみていた私は、伊月に関係あるアドレス、番号、写真を全部消した。

⏰:07/11/01 00:56 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#233 [向日葵]
伊月なんて人は、いなかったかのように…………。

暑い夏が始まった。
蝉はうるさい。
でも空は綺麗。
何もこんな天気の良い日にお葬式なんて…………。

「バイバイ。」

私は伊月に別れを告げた。

青い空に、入道雲が見えた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

その夜。夢を見た。
いや、夢かどうかも分からない。
もしかしたら現実?

⏰:07/11/01 00:59 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#234 [向日葵]
そこは私の部屋。
時は夜。丁度寝ている時間だ。

ベッドでいつも通り寝ていた私は、なんとなく意識が起きた。
時計を見ればまだ1時。

「薫……。」

少し視線を横にすると、そこには伊月がいた。
私が病気に伏せっているみたいに、すぐそこに座って頭を撫でている。
でも撫でられている感触は全く無い。

「い……つき……。」

……。違う違う。そうじゃない。アンタはもういないし、ここに来るのも間違ってる。

⏰:07/11/01 01:03 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#235 [向日葵]
未練があるの?
それなら、大事に出来なかった、あのアンタの元で泣いてたあの彼女の元に行きなさいよ。

「出ていけ。」

それだけ言うと、私の意識は彼方へ行って、気づけば朝だった。

首元に手をやってコキコキ骨を鳴らす。

結構……リアルだったなぁ……。
でも所詮夢は夢だ。
もう出てこないだろう。

ぼーっとしていると携帯が鳴った。
実砂からだ。

⏰:07/11/01 01:07 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#236 [向日葵]
「薫。お葬式行こう?今日は通夜だけど一目相馬君に会ってたほうがいいと思うよ?」

「いいから。もう伊月の話なんかしないで。行きたいなら実砂1人で行きなよ。」

「……知らないよ。後悔しても……。」

後悔?
なんで私が後悔なんてしなくちゃいけないの。
後悔する事なんて無い。

私は裏切られたと思う事で頭が支配されていた。

伊月の“い”の字も見たくないし聞きたくない。
もう知らない。

⏰:07/11/01 01:11 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#237 [向日葵]
そして次の日。
生身の伊月に会う事は出来なくなった。
伊月が火葬場へ向かったねだ。

今頃煙になって、入道雲に紛れてるのかなって、ベッドに寝転びながら空を見上げて思った。

本当のバイバイだ。

でもやっぱり私は泣かなかった。

冷たいかな。
冷たいよね。

なら聞くよ。
もし貴方の恋人が、こんな死に方をしたら、貴方達はどう思うの?

⏰:07/11/01 01:15 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#238 [向日葵]
―――――――……

その晩の事だった。
やっぱり夢か現実かわからない場所に私はいた。

そしてまた同じくシチュエーション。
伊月は私の頭を撫でている。
悲しそうな顔をしながら。

哀れみでそんな顔をしてるの?だったらいらないから。いちいち私の夢の中まで来ないでよ。

目を瞑って、彼方へ行く瞬間、伊月が私のおでこに唇を触れた。

それは頭を撫でているのと同じ様に感触なんかなかったけど、でも何故か分かった。

⏰:07/11/01 01:19 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#239 [向日葵]
「ゴメンナ……。」

確かにあれは、伊月の声だった。

目が覚めるとなんだか体がダルかった。
体をあちこちに伸ばしてスッキリさせようとしても、体の芯が重い……。

そう感じながら、私はおでこに指先を当てる。

どうしてそんな事するんだろうか。
私なんてどうでもいいんじゃないの?
私に飽きたから浮気したんでしょ?
なら何故毎晩現れるのよ……っ。

訳が分からない……。

⏰:07/11/01 01:23 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#240 [向日葵]
その日は珍しく雨だった。体がダルいのはそのせいかもしれない。

今日は私んちで宿題をやる日。実砂が雨の中やって来た。
傘はさしてるものの風が強いせいか実砂はあちこち濡れていた。

「タオルいる?」

「あ、ゴメン。ありがとう。」

拭きながら私の部屋に入り座る。
音楽でもかけよっかと、コンポから音を流す。

この曲いいよねーと喋りながら勉強の用意。

⏰:07/11/01 01:28 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#241 [向日葵]
実は勉強する気なんかなかったりする。
実際に友達と勉強するのははかどらないし。
でも私達はこれでも一応受験生。
行きたい大学の合格圏内にはいるけど油断してはいけないと親からの叱咤。

こんな口実をつけない限り遊ぶなんて出来ないのだ。

「自由登校になったらバイトする?」

実砂が言った。

「私はやらないな。家でゴロゴロしときたい。」

「ハハ!薫らしい!きっと……。ハッ……。……。」

⏰:07/11/01 01:32 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#242 [向日葵]
その続きなら安易に想像出来る。
実砂は伊月の事を言いたいのだ。実砂はいい子だから、気を遣ってくれているらしい。

「いいよ。もう気にしてないから。私そう言うの苦手だし。」

「う……うん。」

沈んでしまった実砂に、私からワザと伊月の話題を出した。

「そういえばね、この頃毎晩夢に伊月が出てくんの。」

「現実とかじゃなくて?」

「私霊感なんかないもの。見える筈ないでしょ。」

⏰:07/11/01 01:36 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#243 [向日葵]
実砂は少し黙って、真剣な目で私を見つめた。

「ねぇ薫。私やっぱりおかしいと思う。相馬君はきっと薫を裏切るような人じゃないよ。薫達見てたら分かる。あの人、そんな人じゃない。」

私は見つめ返しながら何も言わなかった。
しばらくして息を吐いた。

「今更何弁護しても遅いよ。それは本当かもしれないじゃない。私や実砂が見てる伊月が伊月じゃないんだし。」

実砂は少しうつ向いて悲しそうな顔をして黙ってしまった。
その顔には「どうしてそんな事言うの?」と書いてある。

⏰:07/11/01 01:42 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#244 [向日葵]
私は苦笑いして実砂の頭を撫でやった。

「私はこんなだけど、実砂は私みたいになったら彼氏を信じてあげな……。」

すると

キンコーン

今は母さんはいない。
私が出なきゃならないんだった。

少しダルめに階段を降りて、玄関に辿り着いた。

「ハーイ?」

ガチャっとドアを開けると、何だか見覚えのある人が立っていた。

⏰:07/11/01 01:45 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#245 [向日葵]
女の子は丁度私くらいの歳だった。
私の顔を見るなりなんだか脅えたような、悲しそうな顔をして私を見た。

「あ……あの……。」

「……?……―――!!」

この声……っ!!
あの人だ……。泣き叫んでうずくまっていた人……。

「こんにちわ……。田中知(たなかさと)と言います。」

「はぁ……。何のご用で。」

人間が出来てない私は、彼女に気づくなり対応を雑にした。

⏰:07/11/01 01:49 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#246 [向日葵]
――――――――

今日はここまでにします
>>22に感想板がありますんで、良ければ感想お願いします

⏰:07/11/01 01:51 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#247 [向日葵]
「相馬伊月君の事で、お話があります。」

ああやっぱり。
予想通りと言うかなんと言うか……。

「知ってますから。貴方とデート中にかばって死んだんですよね。なんで話す事はありません。どうぞお帰り下さい。」

ドアを閉めようと、ドアノブを握った。

「違うんですっ。」

その言葉に私の動作は停止した。

違う?一体何が違うと言うんだろうか。

⏰:07/11/01 18:58 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#248 [向日葵]
田中さんを見ると、彼女は目に涙を溜め始めていた。
でも流れないように必死に我慢してる様子だった。

「ごめんなさい……。全部私が悪いんです……。」

「……?」

―――――――
――――――――……

・・・・・・・・事故当日

「伊月お願い待って!」

「しつこいって。もういいだろ?」

私は、伊月の元カノでした。どうしても彼が忘れられなくて、あの日、思いきって彼に会いに行ったんです。

⏰:07/11/01 19:02 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#249 [向日葵]
でも彼は何度も言いした。

「彼女以外はどうでもいいから。」

私は悔しくなってムキになり、車が結構多い道路へと飛びだしました。

「話すらしてくれないなら、私車にひかれて死ぬから。」

ただの脅しでした。
彼が話をしてくれると言うのならすぐに戻ろうと思って。

「分かったから……。話ならするから。早く戻れ。」

やっと許可を得た私は彼の元へ戻ろうと1歩踏み出した時でした。

⏰:07/11/01 19:10 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#250 [向日葵]
ファァァァ……ン!!

猛スピードで車が突っ込んで来たんです……。


―――――
――――――……

私は目を見開いたまま、彼女を見つめた。

「もし勘違いなさっているならば、彼の元に手を合わせに行ってあげてください。本当に……すいませ」

「帰ってください。」

自分でもびっくりするぐらい静かな声だった。

「気が、済まないのなら、好きなだけ殴っても……っ。」

⏰:07/11/01 19:14 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#251 [向日葵]
「殴って伊月が帰って来るならしたたか貴方を殴ってる!!」

彼女はびくっとしていた。
私は玄関の床をずっと見ていた。
そうでもしないと本当に彼女を殴ってしまいそうだから。

「薫?どうしたの……?」

私の声で異変に気づいた実砂が上から降りて来た。
でも私はその声すら聞こえない。

「ど……うぞ。帰ってください……。」

間を開けて、田中さんは一礼すると走って帰って行った。

⏰:07/11/01 19:20 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#252 [向日葵]
なんでよ……どうして今更そんな真実告げてくるのよ……。
どうして……
どうして……っ。

「薫……。」

「ゴメン実砂……。1人に……させて……。」

フラフラしながら私は部屋に行った。
その後ろで実砂はついてきて、荷物を取ると「バイバイ」と小さな声で言った。

私はベッドに横たわった。ただ天井を見上げる。

伊月……。
何で一言も言ってくれなかったの?

⏰:07/11/01 20:22 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#253 [向日葵]
言ってくれたら、私助けたのに。助けれたかもしれないのに。

今……伊月と笑ってるかもしれないのに……。

[後悔してもしらないよ。]

実砂の言葉を思い出した。

呆気なく煙となってしまった伊月。最後に見た生身の伊月は一般的によく言われる、ただ眠ってるようにしか見えなかった。

触れれば良かった……。
冷たくなっていたとしても、その笑顔が見れなくても……最後に触れるのが、私なら……。

⏰:07/11/01 20:26 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#254 [向日葵]
今、思っても、伊月に触れれる事は、もう…………ない。

「……ひっ……ゴメ……。」

伊月、ごめんなさい。
いつも言ってくれてたのに。結局私は伊月を信じてなかったんだ。
信じて欲しかったよね……伊月。

伊月……伊月……。

名前を呼んでも、もう返事してくれないんだね……っ。

「伊月ぃ……っ!」

もう一度……声を聞かせて……っ!

⏰:07/11/01 20:30 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#255 [向日葵]
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「……ん……。」

目を開けると部屋は暗くなっていた。
いつの間にか晴れた空からは月明かりが差し込んでいる。

今何時だ……?

携帯を見ると、12時を差していた。

今日はもうこのまま寝てしまおう。
明日の朝にお風呂入ればいいや。

カタ……

「ん……?」

⏰:07/11/01 20:33 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#256 [向日葵]
携帯から目を離して顔を上げると、なんだか姿が見えた。

「――――!」

伊月だった。
私はまた夢を見ているんだろうか。
……いや、今は分かる。前も、前の前も、あれは夢じゃなかったんだ……。

伊月は私にスー……と近寄ると、いつものように頭を撫でた。

幽霊が出て怖い筈なのに、私は全然怖く無かった。

涙がまた出てくる。

「伊月……ゴメンネ……っ。」

⏰:07/11/01 20:38 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#257 [向日葵]
伊月はただ優しく柔らかく微笑んでいた。

「ゴメンネ……何も出来なくて……っ!」

伊月の透けている手が、頬に伸びる。
おそらく涙を拭こうとしてくれているんだろう。

でも、当たり前かの様に、涙を拭く事はおろか、頬に触れるなんて事は出来ないのだ。

その事実に、伊月は悲しそうに顔を歪めた。

私は包む様にしている伊月の手の上から手を置いた。

そして頑張って微笑んだ。

⏰:07/11/01 20:42 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#258 [向日葵]
「空で……見ててね……私の事……。」

伊月はまた微笑むと、私の唇に触れた。
目を閉じて、その感触を確かる。

次に目を開けた時には、伊月の姿はもうなかった……。

―――――――――……

数日後。

私は実砂と一緒に伊月の家にお線香をあげに行った。

遺影の伊月を見て、その笑顔に少し胸が軋んだけど、「空で元気でね。」と手を合わせて伊月宅を出た。

⏰:07/11/01 20:47 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#259 [向日葵]
――――――――――

今日はここまでにします

>>22に感想板がありますんで良ければ感想お願いします

⏰:07/11/01 22:33 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#260 [向日葵]
帰り道、偶然通りかかったのは伊月の事故現場だった。
事故があった近くのガードレールには花やジュースがお供えしてあった。

「伊月……。」

伊月……痛くなかった?苦しくなかった?つらくなかった?

寂しく……なかった?

その時、フワッと温かい風が私を包んだ。

伊月が「大丈夫だよ。」って言ってるみたいだった。

⏰:07/11/02 15:03 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#261 [向日葵]
その風がなんだか優しく感じて、突然胸がいっぱいになって、堪えきれずに涙が頬を流れていった。

「薫……。」

夏休み。
私は人を愛していました。
この先も愛する事を忘れず、伊月の分まで生きて行く事を誓います……。

ありがとう……。

伊月……。

⏰:07/11/02 15:06 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#262 [向日葵]
ビー玉7*温かい雪*












ウチの学校は雪がよく降る地域にあって、冬になればそれはそれは沢山の雪が辺りを覆い尽くしていた。

そんな俺の学校には、最近こんな事を皆で言い合う。

“雪女を怒らすな吹雪になるぞ”

⏰:07/11/02 15:10 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#263 [向日葵]
かと言って、本当に雪女がこの学校にいる訳じゃない。

雪女とはあだ名のようで本名。
呼ばれているのは、先日転校してきた橘 雪女(たちばなゆきめ)の事である。

――――――……

「うっす燈立!」

「おいーっす!今日もクソさみぃーなぁ!」

俺の名前は日下 燈立(くさかひりゅう)。ついこの間17歳になりました!イッエーイ!!

寒いながらも俺は雪が大好きだ。雪合戦とかかまくらとか作っててワクワクするしっ!

⏰:07/11/02 15:20 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#264 [向日葵]
「放課後雪合戦する奴手ぇあっげて――!」

と勢いよく手を上げた時だった。

バシッ!

何かに当たってしまった。「ん?」と思っていると、手を上げようとしていた奴らが一気に青ざめた。

「痛い……。」

静かに非難の声が聞こえたので、俺は右を見た。

そこに立っていたのは、紛れもなくあの橘雪女だった。

橘は当たったであろう自分の腕を、白くて細い指先でさすっていた。

⏰:07/11/02 15:25 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#265 [向日葵]
男友達は俺をささーっと連れ戻した。

「アハハハ!ゴメンネ橘さん!」

「コイツにはよーっく注意しとくから!」

橘は切長の目で俺達を見ると、興味が無くなったみたいに突然ふいって自分の席まで歩いていってしまった。

「ふー……アイツ気味わりぃよなぁ……。」

「また今日も吹雪になるとこだったぜぇ……。」

「……そっかなぁ……。」

俺は別に橘の事を気味悪いとか、怒らせたら吹雪になるとか、気にしていなかった。

⏰:07/11/02 15:30 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#266 [向日葵]
「燈立は呑気だからな……。でもマジヒヤヒヤするから少しは気をつけれぇ。」

「あーハイハイ。」

俺は橘を見た。

存在感があるようで無い彼女は、もともと髪の毛の色素が薄いらしく、茶色と言うよりも少しグレーが混ざっている。
そして腰ぐらいまである長い髪は綺麗なサラサラストレートだ。

小柄で儚げ。
だから余計に“雪女”扱いされるんだろうな……。

俺はそれに、哀れみさを感じた。

⏰:07/11/02 15:33 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#267 [向日葵]
――――――――――

キリます

>>22に感想板がありますんで、良ければ感想お願いします

⏰:07/11/02 15:36 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#268 [向日葵]
―――――……

「やっべー!カバンー!」

雪合戦をしていたのはいいものの、カバンを持って来るのを忘れていて3階の教室まで戻るハメになってしまった。

外も暗くなってきたし、早く帰んないと母ちゃんが恐い……。

この前も9時とかに帰ったらゲンコツくらったもんなぁ……。多分母ちゃんのゲンコツが世界一痛ぇよ……。

「ん……?」

教室近くまで来ると、まだ電気がついていた。

⏰:07/11/03 14:59 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#269 [向日葵]
誰かいるのか……?

戸を開けると、窓側に誰か寝ていた。

あの姿は……。

そろーっと近づくと、気づいた。
橘雪女だ。

これだけ近くで見るのは初めてだ。
見れば見るほど

「綺麗だなー……橘って……。」

まつ毛長いなぁー。
肌も透き通りそうなぐらい綺麗……。
ほっぺ柔らかそうだなぁ。

ぼんやり思いながら指先でそっと顔に触れた。

⏰:07/11/03 15:08 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#270 [向日葵]
パチッ

「おわぁっ!」

いきなり橘が目を開けたので、驚いた俺は思いっきり飛び退いた。

橘はまだ眠いのか目をショボショボさせながら手で擦っている。

「ゴメン!別に俺、何もしてないからね!」

「別に何とも思ってないわよ。」

そう言いながら橘は帰る支度をしている。
橘の雰囲気に似てる少し水色が入った白いマフラーを巻くと、カバンを持って席を立った。

⏰:07/11/03 15:13 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#271 [向日葵]
「あ、ねぇっちょっと待って!1人で帰るの?」

「そうだけど?」

そうだけどって……。
こんな暗い中、ずっと1人で帰ってたのか?

「なら一緒に帰ろう?送るから!」

俺は急いでカバンを取りに向かった。

「……余計な事しない方がいいと思うわよ。」


教室に彼女の澄んだ声が小さく響く。
橘を見ると、ドアの方を見たままだった。

⏰:07/11/03 15:17 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#272 [向日葵]
「貴方も知ってるんでしょ?私が怒ると吹雪になるって。もし帰りに貴方が私を怒らせて吹雪いてしまったら」

「吹雪になんかならないよ。」

橘は少しびっくりしたのか、目を見開いて俺を見た。

「俺知ってるよ?吹雪なった日って、その日の天気予報大抵天気悪い事伝えてるもん。だから俺、信じてないけど?」

橘は黙ったまま俺を見つめて、しばらくするとマフラーを口元まで上げて呟いた。

「貴方……変な人。」

⏰:07/11/03 15:22 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#273 [向日葵]
その白い頬が、うっすら赤くなっているのに俺は気づいた。
どうやら彼女は感情表現が苦手らしい。
それがなんだか可愛く感じた。

「さ、帰ろっかっ。」

俺も上着とマフラーを巻いて、帰る準備をした。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「さっみぃーなぁー。」

橘と歩きながら、雪で濡れている道を歩いた。

「ねぇねぇ。雪女って事はやっぱり生まれはここら辺なの?」

⏰:07/11/03 15:27 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#274 [向日葵]
「もっと北の方。ここよりも寒いわ。」

「そっかー。綺麗な名前だよな。」

そう言うと橘は無言になった。
そしてまたマフラーで口元を隠す。
照れた時に口元を隠すのが彼女の癖らしい。
それに気づいた俺はうっすら微笑んだ。
すると橘がマフラー越しに呟いた。

「貴方だって綺麗な名前じゃない。」

「俺?どこが?」

「燈立。名前の中に火が入ってる。とっても……あったかそう。」

⏰:07/11/03 15:33 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#275 [向日葵]
目を細めて少し笑う彼女に、俺はドキッとした。

自分の名前を誉められた事は初めてだったし、何より橘の笑顔を見るのも初めてだった。

「じゃあ俺達の名前足して2で割ったら丁度いいかもね!」

「そうかもね。」

ハァーっと、白い指先に息をかけた。
今思えば橘はこの寒いのに手袋をしていない。

「寒い?」

「少しね。」

俺は口元にある彼女の手を握る。

⏰:07/11/03 15:37 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#276 [向日葵]
俺の行動に彼女は目が点になった。
じっと俺の顔を見る。

「俺手袋してるし。この方があったかいでしょ?」

今度は橘の行動よりも、顔が赤くなる方が早かった。
白い肌だから余計に赤いのが分かる。

「やっぱり貴方変だわ……。」

橘にとって、“変”って意味は照れ隠しの1つで、本当は“ありがとう”って言いたいのかもしれない。

そう思うと、また俺は微笑んだ。

⏰:07/11/03 15:42 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#277 [向日葵]
何分か歩くと

「ここまで来たらすぐだから。どうも。」

「そっか。手袋いる?」

橘は首を振った。
繋いでいた手を離してしまうのがなんだか寂しかった。繋いでいる手を俺はただじっと見つめる。

「……。離してもらってもいいかしら……?」

「ハッ!あ、ゴメン!!じゃあまた明日な!」

「ウン。じゃあ。」

そう言ってサラサラの紙をフワッとなびかせて彼女は帰って行ってしまった。

⏰:07/11/03 16:15 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#278 [向日葵]
やっぱり“雪女説”は嘘だったんだ。そりゃ本当だったら驚いてしまうけど、世界って広いからなぁ。

「橘かぁ……。」

意外と不器用でそんでもって優しい子みたいだな……。勘違いされてるのが可哀想なくらい……。

しばらく俺は橘と別れた場所で橘についてを考えてから家へ帰った。

帰ると7時半を回っていて、やっぱり母ちゃんにはゲンコツをくらったけど、痛かった反面、橘にこの話したら笑ってくれるかなとか考えていた。

⏰:07/11/03 16:22 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#279 [向日葵]
―次の日―

今日はいい天気だけど相変わらず寒くはあった。
この状態で上履きを履くのは少し辛い。足が冷えるからだ。

自分のクラスの所までいると、後ろから肩を叩かれた。

「おっはよ!燈立っ!」

「おはよ棗(なつめ)。」

棗は同じクラスの女の子。元気が良くて俺とは仲良くしてくれてる。

「ねねね。昨日あの雪女と帰ったって本当?」

「え?何で知ってんの?」

「見た子がいるみたいよ。来る時に何人か噂してた。」

⏰:07/11/03 16:29 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#280 [向日葵]
「ふーん。」

噂なんて気にしない。
今回の橘の件でよく分かった。
噂にもデタラメな噂があって、本人に関わってみなくちゃ分からない事もあるものだ。

「ふーんて。まさかアンタ橘さんが好きになったの?!」

「な!な、棗に、そんな事関係無いでしょ!」

橘を?!だって昨日の今日だぞ?!まっさかぁー!!

「雪女は男を虜にするからねー。燈立は馬鹿だからすぐ引っかかりそー……。」

⏰:07/11/03 16:39 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#281 [向日葵]
俺は少しムッとしながら棗に言った。

「ってかさっきから雪女雪女って!“ゆきおんな”じゃなくて“ゆきめ”だからっ!!」

すると棗はプクッとほっぺを膨らませた。

「ハイハイ!分かりましたーだっ!燈立なんか凍死しちゃえ―――っ!!」

と言って先に行ってしまった。

ったく棗の奴、なんなんだ?

階段を上がりながら俺は棗に言われた事をグルグル考えいた。

⏰:07/11/03 16:44 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#282 [向日葵]
――――――――――――

キリます

>>22に感想板がありますんで良ければ感想お願いします

⏰:07/11/03 16:45 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#283 [向日葵]
感想板が新しくなりました(◎・ω・◎)良ければ足を運んで下さいね
bbs1.ryne.jp/r.php/novel/2995/

⏰:07/11/03 17:40 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#284 [向日葵]
確かに昨日橘と初めてちゃんと話して、橘を知った事は大きい。
案外照れ屋だとか、笑ったら可愛いとか。

でもだからってさ――!!いきなりそんな好きとか……ねぇ?!

考えて頭がパニックのまま俺は教室のドアを開けた。

「燈立ちぃーっす!」

「ちぃーっす。」

いつものメンバーが俺に寄ってきた。

「なぁ燈立。今度クラス全員で遊ばねぇ?」

「クラス全員?」

⏰:07/11/04 01:59 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#285 [向日葵]
仲間の奴らが更に俺に詰め寄る。

「だって俺らもう17だぜ?なのにクラスの大半が彼女無し。それって悲しくね?実際このクラスの女子って結構可愛い子いるじゃん?だから親睦会ってのは上辺。裏は合コンて事。」

あー皆彼女が欲しい年頃なのね。なんとまぁ切実。

「いいんじゃない?カラオケとかボーリングとかさ。」

ガラガラガラ

あ。

「橘っ!」

⏰:07/11/04 02:04 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#286 [向日葵]
橘が来たので俺が橘の元へ行くと、クラスの皆が一斉に「え?!」って言った。
声をかけられた橘も少し驚いてるのか、数歩進んでから足を止めた。

「おはよっ!」

「……おはよう…。」

今日も手袋をしていない。指先が寒さのせいで赤くそして白くなっていた。

「昨日は大丈夫だった?」

「はぁ……。大丈夫だったわよ。」

「そっか。良かった!」

にこっと笑うと、橘はうつ向いた。知ってる。次に顔を上げた時は

⏰:07/11/04 02:10 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#287 [向日葵]
「心配なんて……いいのよ。」

ほら真っ赤。照れてる。

俺はなんだか嬉しくなってまたにこっと笑った。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

親睦会もとい合コンは土曜日の模試の後でと決まった。

一旦皆着替えて駅前のカラオケに行くらしい。

「なぁ燈立!今日校庭でかまくら作らねぇ?!」

「かまくら?つく……っ。ご、ゴメン!今日は用事があるから無理だわ!」

⏰:07/11/04 02:14 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#288 [向日葵]
「なんだよー。んじゃ今日は帰るかー。」

俺はやる事があるんだ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

掃除を終えて、教室に戻った。
外から見ると電気がやっぱりついてる。

ニマァッとして、俺はドアを開けた。

「たっちば……なぁ……?」

そこには、昨日と同じ場所にいる橘と棗がいた。
棗は俺が入って来るとハッとして急いでカバンを持った。

⏰:07/11/04 02:18 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#289 [向日葵]
まだ怒ってるのか、棗は黙って俺の隣をすり抜けて行ってしまった。

頭にはてなを浮かべながら橘の方を見ると、橘がじっと俺の方を見ていた。

「な……なに……?」

「……。いや、早くドアを閉めてくれないかなと。教室の暖が逃げちゃうから。」

あ……なるほど。

後ろ手にドアを閉めて、橘の前の席に座りに行く。
橘は一連の動作をただ黙って見ていた。

「へへっ。寒いな。」

⏰:07/11/04 02:22 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#290 [向日葵]
すると橘は薄く笑った。
その笑顔に心臓が跳ねる。

ア……アレ……?

橘は無言でポケットからカイロを出すと、机の上に置いてる俺の手の甲にそれを置いた。
とても暖かい。

「あ、ありがとう。カイロあったんだ。」

「本当は昨日もあったの。でも帰る時にはひんやりしちゃっててね。」

昨日遅くまでいたもんなー……ってそうじゃない!
俺にはやる事があるんだ!

⏰:07/11/04 02:26 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#291 [向日葵]
「橘もさ、今度の親睦会行かねぇ?!」

橘は言わなきゃ来なさそう。だから俺は言った。
橘には是非来て欲しい。それで皆に橘の良さを知って欲しい!

沈黙が流れて、少し目を伏せてから橘が言った。

「誘ってくれてありがとう。……でも私、学校でする事あるから。ごめんなさい。」

「そうなの?!なら俺も手伝うよ!」

「中心の貴方がいなかったら友達が寂しがるわよ?それに……私にそんなに気を遣わなくて、いいから。」

⏰:07/11/04 02:32 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#292 [向日葵]
―――ズキン

何故だろう。
とても優しい顔をして、言葉も柔らかなのに……それはまるで「ほっとけ」と言われてるみたいで……。

「そ……っかぁ……。ウン。分かった。」

なんだか……悲しかった。

「じゃあさ、今から一緒に帰って?それならいいでしょ?」

「えぇ……まぁ。じゃあ。帰る?」

「うん!」

俺、橘の良さを知ってもらいたいなんて……嘘だ。

⏰:07/11/04 02:36 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#293 [向日葵]
本当は橘がどんな服着るかとか、どんな歌歌うのかとか楽しい橘と俺の時間を想像してたんだ。

「ハァー……さむ……。」

また昨日みたいに彼女は指先に息を吐き暖めようとする。
俺はそれを見て、何も言わずに手を握った。

橘は驚き、そして照れて、黙ってうつ向いた。

帰り道、俺達は何も言わずに帰った。
でもその無言の道のりは心地悪いものではなかった。

昨日の別れるトコに来て「じゃあ。」とだけ言葉を交した。

⏰:07/11/04 02:41 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#294 [向日葵]
橘の後ろ姿を見ながら俺は分かった。

俺は……橘が好きだ。

――――――――……

―土曜日―

「……。はい終わりー。後ろから集めてー。」

ダルい模試が終わり、俺は体一杯背伸びした。

あ゙――――終わったど―――!

「さって!燈立!行こうぜぇっ!」

「え、お、おう。」

ちらっと橘を見た。
橘ははしゃいでる皆をよそに、静かに机にカバンを置いたままどこかへ行ってしまった。

⏰:07/11/04 02:44 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#295 [向日葵]
橘にしたら、俺なんてどうでもいいのか……。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

着替えて駅前に集合した俺達はカラオケへと行った。結構人数はいて、大部屋を借りなければならなかった。

「燈っ立!」

隣に棗がやって来た。

「おう。何?」

「何か元気なくない?」

「別に?」

誤魔化しながらメロンソーダーをグビッと飲み、うた本をペラペラめくる。

⏰:07/11/04 02:48 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#296 [向日葵]
するとマイクを持ってる奴が言った。

「そーいえば。やっぱり雪女来なかったな!」

クラスの皆がアハハハハと笑う。
果たして何がそんなにおかしいのやら……。

「来られても空気悪くなるってー!」

「怒らせて帰り道吹雪いたら嫌だしなぁ!」

「来たらマジKYだよなー!アハハハハ!」

バリンッ

皆の笑いが止まった。

俺は自分で知らない内に手に力を入れていてグラスを割ってしまっていた。
でもそんな事が大事なんじゃない。

⏰:07/11/04 02:53 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#297 [向日葵]
「お前ら……最低だな……。」

それだけ言って、俺は脱いでた上着を持って部屋を出た。

「ハァハァ……待って燈立!」

エレベーターに続く道で、後ろから棗が声をかけた。

「ゴメン!」

「別に、棗が謝る事じゃないだろ。」

「違うの!……私なの……橘さんに、カラオケ来るなって言ったの。」

俺は口パクで「え。」と言った。
だって橘は用があるから行けないって……。

⏰:07/11/04 02:56 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#298 [向日葵]
「私……燈立が好きっ。だから橘さん来たら、燈立絶対橘さんとずっと一緒にいると思って……。ゴメン!」

あの時……あの言葉……。

[私に気を遣わなくていいから。]

全部、棗の為に……。

俺はゆっくり棗に近寄って、頭を撫でた。

「ありがとう。ゴメン……。」

エレベーターに乗って、降りた後ひたすら走った。

学校まで。

⏰:07/11/04 03:02 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#299 [向日葵]
橘の1つ1つの仕草や言葉が、俺はすごく好きで、それはまだほんの一部分だろうけど、これからもっともっと見てみたい……。

「はぁ……着いた……。」

学校に着いたのはいいものの、これからまだ3階まで上がらなければならない。そう思うと、まだ道のりは長い……。

ふと顔を上げると……

「……あ。」

俺の教室の電気がついていた。

いる……橘はまだいる。

⏰:07/11/04 03:06 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#300 [向日葵]
急いで3階まで向かう。

「ハァハァ……ッハァッ!」

橘。
俺もっと橘に近付きたい。
近付いても……

ガラッ!

いいかな?

ドアを開けると、橘が帰ろうと立ち上がった所らしかった。

「ハァ……ハァ……。」

「え?日下君?」

不思議がってる橘をよそに、俺はドンドン橘に向かって行った。

⏰:07/11/04 03:10 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#301 [向日葵]
息が整うのを急かすように何度も深呼吸した。
何回目かにやっと落ち着いてきた。

「大丈夫?座る?」

「ううん。いい。」

教室に静寂がやって来る。俺達はただ見つめ合ったままだ。
橘までの距離はあと3歩。

「俺橘が好きだ。」

橘はただ瞬きをしていた。俺の言葉に動じていないかのように。
でも俺はそんなの気にせず続ける。

「ついこの間喋っただけで何言ってんだって思うかもだけど……。……でも、いくら考えてもやっぱり橘が好きなんだ。」

⏰:07/11/04 03:15 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#302 [向日葵]
橘はまだ俺を見つめたままだ。
俺はもう一度深呼吸した。

「橘の……側にいていいですか……?」

あぁ……俺ばっかが喋ってる。反応がこれだけ無いって事はきっと答えはNOだ。

そう思っていた時だった。

ポロ……

橘の左目から一筋涙が流れた。

え……えぇ――――っ?!?!泣く程俺が嫌だって事?!

⏰:07/11/04 03:19 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#303 [向日葵]
――――――――――――――

今日はここまでにします(◎・ω・◎)

>>284に新しい感想板がありますんで良ければ感想お願いします

⏰:07/11/04 03:20 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#304 [向日葵]
すいません
>>283でした

⏰:07/11/04 03:21 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#305 [向日葵]
「え……橘?!もしかして死ぬほど俺が嫌い?」

涙を流したまま橘は首を横にゆっくり振った。

「嬉しくて……。」

小さくそう呟くと、橘の涙は更に溢れた。

「いつも普通に私と接してくれたのは……日下君だけだった……私……嬉しかったの……。」

「なら、ずっと一緒にいてくれる……?」

今度は縦に首を振った。
そして涙を細い指先で拭うと、フワッと微笑んだ。

俺の胸が、熱を持つ……。

⏰:07/11/06 00:42 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#306 [向日葵]
“雪女を怒らすな。吹雪になるぞ。”

一体誰がそんな事を言い出したのだろう。

彼女はこんなにも可愛らしくて……優しくて……温かい……。

彼女の心は、今日も太陽のようにほっこりとして、俺の体を癒してくれる……。

⏰:07/11/06 00:46 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#307 [向日葵]
ビー玉8*歌にのせて*












「こんのぉ……ボケがぁぁぁっ!!」

バキッ!!

「お前なんか大っ嫌いじゃ!さいっなら!」

私は西海 碧(にしうみ みどり)もうすぐ16。

⏰:07/11/06 00:49 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#308 [向日葵]
先程彼氏に別れの一発をくらわして別れました。

原因は浮気。まぁよくある話で。

男兄弟に囲まれて育った私は拳で語り合う方法を覚え、以来こうしてケリをつけることもしばしば……いや毎回……。

初めて出来たら彼氏だった。自分でも自覚してる通り私は乱暴者だ。
でもこんな私を、彼は好きだと言ってくれたのだ。

「帰ってサンドバック殴りまくろー……。あぁムシャクシャ――!!」

「クスクスクス……。」

⏰:07/11/06 00:54 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#309 [向日葵]
ん……?

後ろを向いてみると、ギターを肩にかけたお兄さんがいた。

もしかして、笑われているのは私かい?

「クスクス……あーゴメンネ?いや、元気な子だなって思って。」

「お兄さん……何?」

見た目爽やかで落ち着いた感じなお兄さんはギターを持つとジャーンと1回だけ弾いた。

「よくいるでしょ?こーゆー場所に。ストリートミュージシャンってやつさ。」

⏰:07/11/06 00:58 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#310 [向日葵]
「へー。今日が初めて?」

「いや?何回も来てるよ。」

私はこの駅を通学に使うからお兄さんを見てると思うんだけど……時間帯が違うのかな……?

「バンド名みたいなのあるの?」

「いや。1人だから本名だよ。」

「私は西海碧。お兄さんは?」

「田浦 颯太(たうら そうた)。碧ちゃん。1曲聞いていかない?」

⏰:07/11/06 01:02 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#311 [向日葵]
にこりと笑ってお兄さんはまたギターを鳴らした。
ギターの音から、まぁ私は楽器の上手い下手は分からないけど、上手い感じがした。

私が聞こうとしているのが分かったのか、お兄さんは歌が書いてある楽譜をペラペラとめくる。

「どんな曲がいい?」

「分かんない。お勧めでいいよ。」

「りょーぅかいっ。」

ギターがさっきとは違い、大きく駅前に鳴り響く。

胸がハッとした。

お兄さんの歌声は澄んでいるのにとても甘くて、歩いてる人が次々止まっていくのが分かった。

⏰:07/11/06 01:07 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#312 [向日葵]
お兄さんの歌が終わると、聞いていた人達から大きな拍手が……。
私もその1人だ。

「ありがとうございます。良ければこのまま聞いて行ってください!」

そう言うと、お兄さんのギターがまた鳴り始めた。

もう足が動かない。

私はお兄さんの歌の虜になってしまった……。

―――――――――……

気がつけば、空が藍色になりかけていた。

「どうだった?」

私はピクッとして、我に返った。
まだ耳に余韻が残ってる。

⏰:07/11/06 01:12 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#313 [向日葵]
「なんて……?」

「俺の歌、どうだった?」

歌っている時とはまた違うお兄さんの声。
一体どうやったらあんな声が出せるのかが不思議で、お兄さんの喉元をじっと見た。

「?どうかした?」

「いやーすっごいね!あんな声出せるんだもん。お兄さんミュージシャンになれちゃうよー。」

喉元の観察を止めずに、でも気持ちは込めてお兄さんに言った。

すると頭にお兄さんの手が乗ったと思うと、ワシャワシャ撫でまわされた。

⏰:07/11/06 01:16 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#314 [向日葵]
――――――――――――


今日はここまでにします

>>283に感想板があるんで良ければ感想をお願いします

⏰:07/11/06 01:18 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#315 [向日葵]
「ありがとね。碧ちゃんはいい子だわ。」

髪の毛を直しながら「どういたしまして」と呟いた。

「そーいえばお兄さん何歳?」

「19だよ。」

ウチの兄ちゃんと同い年だ。ウチの兄ちゃんでもこんなに輝いてないべな。

「頑張ってね。また聞かせてもらうよ。」

「うん。いつでもおいでっ。」

私はお兄さんと別れて家に帰った。

⏰:07/11/08 11:58 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#316 [向日葵]
――――――……

「ただいまー。」

靴を脱いでいるとキョトンとしたお母さんが玄関へやって来た。

「いつもより早いじゃない。どうかした?」

「別にー。」

階段を上がりながら適当に答えた。
部屋に入ろうとすると、隣のドアが開いた。

「おぅ碧!お帰り。」

さっきのお兄さんと同い年の武(たけ)兄ちゃん。武兄ちゃんは次男だ。

⏰:07/11/08 12:01 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#317 [向日葵]
私の兄弟は8つ上でシェフをやってる啓(けい)兄ちゃん。フリーターでバイトばかりしてる武兄ちゃん。4つ下で小学生の柴(しば)。見事に男に囲まれた私だ。

私は武兄ちゃんを見てため息をついた。

「武兄ちゃんはさぁ、夢とかないのー?」

「ん?夢?んー……。特に!」

……。聞いた私が馬鹿だったか。武兄ちゃんは私でもびっくりする様な楽天家だ。柴がこうならない事を祈る。

「なんで?」

「別に。聞いてみただけだよ。」

⏰:07/11/08 12:06 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#318 [向日葵]
それだけ言って部屋に入った。
「あ゙ー。」と言いながらベッドにダイブ。

あ、そういえば私今日彼氏と別れたんだっけ?
さっきまであんなに腹が立って虚しかったのに、もうすっきりしてる。

それは、お兄さんの歌声聞いたからかな?

今でも耳に残るお兄さんの声。低すぎず高すぎない心地よい声。
かき鳴らすギターの響き方……。

また、聞きたいと……会いたいと、心から思った。

⏰:07/11/08 12:12 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#319 [向日葵]
―――――――――……

「碧――っ!」

「あぁ。肇(はじめ)。おはよう。」

肇は私の友人。
男の子みたいな名前だけどれっきとした女の子。

「ん?なんかすっきりした顔してるね。どうかした?」

「んー。別に?」

「え――何その曖昧な返事ー!」

歩いてると、前から元カレがやって来た。
耳打ちで肇が「旦那さんの登場だよー。」と言ったけど、私はその言葉を無視して元カレの横を通り過ぎた。

⏰:07/11/08 12:18 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#320 [向日葵]
その行動に驚いた肇はパタパタ後ろから追いかけてきて

「え?!何?どーしたのっ?」

と何故かパニクっていた。

「別れたの。昨日たまたま浮気が発覚したから。」

さらりと告げて教室に入った。
私があまりにあっさりしているので、情報を根掘り葉掘り聞きたい肇は物足りなくて私に詰め寄った。

「どーして昨日連絡くれなかったのよー!言ってくれたら行ったのにぃっ!」

⏰:07/11/08 12:22 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#321 [向日葵]
「別に悲しくもなかったし。見なかった?アイツのほっぺ。腫れてたでしょ?あれですっきりしたの。」

まぁそれだけじゃないけど。

肇はなんとかして私を慰めたいのか、いきなり抱きついてきた。

「もー!心配するでしょ!」

「あーハイハイ。ゴメンネ。」

今日の帰り、あそこに行けば、またお兄さんの歌聞けるかな……?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「碧!かーえろっ!」

⏰:07/11/08 12:25 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#322 [向日葵]
「あ、ゴメン。私行きたいトコ……そうだ。肇も一緒に行かない?」

肇は何が何だか分からないようだったけど「ウン」と言って一緒についてきた。

「あ、碧っ。」

教室を出るとすぐに呼び止められた。
元カレ。もとい、浮気男の長田。

「あ、のさ!昨日は……ゴメン。」

「もういいから。昨日の彼女とお幸せに。」

今頃何言っても遅い。ってかアンタに未練なんかない。

⏰:07/11/08 12:29 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#323 [向日葵]
私は肇の手を引っ張って走って行った。
後ろで長田が何回も私を呼んだけど、私はもう長田なんて眼中になかった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ん?駅前に来てなんかするの?」

人が行き交うのを避けながらキョロキョロしてる私に肇が聞いた。

「違うの?確かこの辺だったんだけどなぁ……。」

人混みがさっと切れた時、その人はいた。

「あ!」

私はまた肇の手を引いて、あのお兄さんがいる場所に行った。

⏰:07/11/08 12:32 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#324 [向日葵]
――――――――――――

キリます(。・ω・。)

>>283に感想板がありますんで良ければ感想お願いします

⏰:07/11/08 12:34 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#325 [向日葵]
お兄さんは丁度準備してる所で、ギターを肩にかけていた。

「お兄さん!」

私の声に気づいたお兄さんは準備する手を止めて私の方を向いた。

「こんにちはっ。私のこと覚えます?」

「……誰?」

……昨日の今日なのにもう忘れるだなんて、早いよお兄さん……。

シュンとうなだれていると、クククと声が聞こえた。

「嘘嘘っ。覚えるから。碧ちゃん。」

⏰:07/11/10 16:36 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#326 [向日葵]
私の顔が笑っていくのを自覚した。

良かった。覚えてもらって。

「今日はお友達と一緒?」

「うん!肇って言うの!」

お兄さんは肇に向かってにっこりと笑うと、ギターの調子を確かめ為か小さく音を鳴らした。

「ウン。今日もいい音。」

まるでギターが恋人かのようにお兄さんは優しく柔らかく笑った。

⏰:07/11/10 16:40 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#327 [向日葵]
お兄さんの恋人がうらやましい……。
こんな素敵な歌を毎日側で聞いていられるんだもん。

「では初めてのお客さんの肇ちゃん。なんかリクエストありますか?」

お兄さんはにっこり笑って肇に聞いた。
肇はリクエストが出来る嬉しさに目を輝かせていた。

「私、恋の歌がいいな!」

「かしこまりました。」

ギターを鳴らし始めるお兄さん。
恋の歌はバラードのようで、優しく、そしてどこか切ないメロディーだった。

⏰:07/11/10 16:44 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#328 [向日葵]
<恋を失ってしまった僕を切なげに空が包みこむ。>

そんな歌詞が、なんとなく耳に残った。

お兄さんが作っただろう歌詞は、どこか現実味に溢れていて、もしかしたら実体験をもとにしてるのかなと聞きながら思った。

最初は昨日の私みたいにお兄さんの声に驚いていた肇だったけど、やがてその声、その歌詞に感動してウルウルしていた。

また昨日みたいに、歩いていた人達の足が止まっていく……。

皆、お兄さんの声の引力に惹き付けられて……。

⏰:07/11/10 16:49 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#329 [向日葵]
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「――……り。碧ったら!」

私はハッとした。
いつの間にかぼーっとつっ立っていた。
目の前には、様子がおかしい私を心配そうに見ている肇と、そんな私が面白いのかにこにこ笑いながらギターを片付けるお兄さん。

「あ……ゴメン……。」

「そんなに俺の歌良かった?」

「そ!そんなんじゃないっ!!」

図星だったので思わず否定してしまった。
本当はそうだった。
時間を忘れてしまうようなお兄さんの歌……。

⏰:07/11/10 16:53 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#330 [向日葵]
でもお兄さんはそんな失礼な態度をとった私ににこにこ笑うだけだった。

「またおいで。」

そう言って頭をグシャグシャ撫でてくれた。

それからと言うもの、「また」ではなく時間の許す限り私は毎日毎日お兄さんに会いに行った。

そんな私をウザがりもせず、お兄さんはやっぱり笑って「なんかリクエストある?」とギターを一鳴らしするのだ。

私はいつも「なんでも。」と言う。

だって聞いてみたいから。

⏰:07/11/10 16:58 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#331 [向日葵]
優しい曲のお兄さんの歌。
激しく、だけど楽しそうなお兄さんの歌。
寂しく切ないお兄さんの歌。

全て歌い終わった後で、私はやっぱりぼんやりしてしまう。

「クスクス。大丈夫?」

「だ、大丈夫だよっ!」

いつも乱暴に言ってしまう。カワイイ女の子ならここで一言感想を言うんだろうなぁ。

「ハハハ。じゃあ、また明日ね。」

いつからか、お兄さんとの別れの挨拶は「また」ではなく、「明日」になった。

⏰:07/11/10 17:02 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#332 [向日葵]
――――――――……

「っと言う訳で、碧はあのお兄さんに惚れちゃったって訳か。」

ブー!!

飲んでいたフルーツオーレを吹き出してしまった。

「あら何?違うかった?」

「違っ……。」

[碧ちゃん。]

お兄さんが私を呼ぶ声が頭の中で響く。

「ち、ち、……違わ……ない……。」

⏰:07/11/10 17:11 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#333 [向日葵]
私の答えに満足したのか、肇はにーっこり笑った。

「じゃあ早いとこ告白しなきゃね。」

「ムリムリムリムリ!!」

「あのねぇ。あれだけ素敵な声の持ち主だよ?早くしないと誰かに取られちゃうんだからっ!」

誰かに……。

それは……嫌かも。

「分かったら、今日にでもちゃんと言ってきな!これ使命ね!」

使命って……。そんなヒーローじゃないんだから。

⏰:07/11/10 17:15 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#334 [向日葵]
でも……。

「ウン。分かった……っ。」

―――――――――……

とは言ったものの。

いつもの様に私は駅前にいた。
このまま真っ直ぐいけば、多分お兄さんがいつもの場所にいるんだろうな。
って場所で私は立ち止まったままだった。

告白だなんて、人生初だ。
前は告白された側だったし。

少し人の波が切れた時、お兄さんはいた。

⏰:07/11/10 17:18 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#335 [向日葵]
……っ。よし!!

「お兄」

「碧!」

名前を呼ばれたと同時に私は後ろに腕を引かれた。

誰かと思って振り向くと、そこには長田がいた。

「何?」

自分の声が冷たいのが分かる。
目も絶対据わってる。

「ゴメン!気づかなくて!お前がそんなに俺の事思ってたなんて!」

え?どうやったら放しがそんな方向に行くの……?

訳が分からず私はポカンとしてしまった。

⏰:07/11/10 17:23 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#336 [向日葵]
「お前、俺の気を引く為にワザと冷たくしてたんだろ?今日だって、俺がいるの知ってて告白するとか言ってたんだよな?」

……。……はぁ?

何を勘違いしてんだこの馬鹿男。
浮気した分際でよくそんな思考が働くよな。

「そんな気一切ないから。離してくんない?」

「んな照れんなってーっ!」

長田は嬉しそうに私に抱きついた。
私は逆に殴りたくて仕方なかったけど、腕ごと抱き締められてるせいで自慢のパンチが打てない。

⏰:07/11/10 17:27 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#337 [向日葵]
「馬鹿っ……ちょ、離して!」

こんなトコ、お兄さんに見られたら……っ!

そう思い、お兄さんの方に向くと。

「……っ!!」

抱き合ってる私達を不謹慎だと見る人達に混じって、驚いた顔をしているお兄さんがいた。

違う!違うのお兄さん!!
私こんな奴、好きじゃないよ……っ!

「これからは大切にするからな。」

と強制的に長田の方に顔を向けられ、その瞬間長田の唇が重なった。

⏰:07/11/10 17:31 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#338 [向日葵]
「っ!!」

長田がキスに夢中になって、腕の力が少し緩るまった時、思いきり押し退けてグーをお見舞いした。

急な事にしりもちをつく長田。

反撃してやりたいのに、涙が先に出てしまった。

「最低……っ!!」

お兄さんの前で、よくも……よくも……っ!

ゴォォォン!!

「へ?」

えらい音にびっくりして、悔しさでギュッと閉じた目を開けると、お兄さんがギターで長田の頭を殴っていた。

⏰:07/11/10 17:36 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#339 [向日葵]
「いけないなぁ。女の子を泣かしちゃあ。しかも俺の常連さんじゃない。」

いつもみたいに、にこにこ笑ってるお兄さん。
でも目が笑ってない。どうやら怒ってるみたいだ。

「お兄さ……ギター……!」

お兄さんは私の方を向くと「へーき。」と言う風に頭をポンポンとしてくれた。

「お前……なんだよ!」

長田がキレて、お兄さんに掴みかかった。
私が止めに入ろうとすると、少し手を上げてお兄さんが私を止めた。

⏰:07/11/10 17:40 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#340 [向日葵]
――――――――――――

キリます

>>283に感想板がありますんで良ければお願いします

⏰:07/11/10 17:42 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#341 [向日葵]
お兄さんは相変わらず笑っている。
そして掴まれた長田の手を力強く掴んだ。

「ただのしがないストリートミュージシャンだよ。でもね、そんな俺でもこんな事は許せないんでね……っ。」

最後の言葉らへんで手をギュウッと握ると、長田は「痛い痛い痛い!」と騒いだ。

「さ、行こうか碧ちゃん。」

「え、あ、え、ハイ……。」

⏰:07/11/10 23:43 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#342 [向日葵]
片手にはギター。もう片方は長田の手を投げるように捨てて優しく私の手を包んだ。

「オイ碧!」

私は立ち止まって振り向いた。

「だから言ったでしょ?彼女と幸せにって。」

私はそれでまた歩き出した。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ゴメンネ。早く止めてあげれば良かった。」

公園のベンチに座って、お兄さんがジュースを買ってくれたので、それを一緒に飲んでた。

⏰:07/11/10 23:50 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#343 [向日葵]
「別に大丈夫。あんなの回数にはいれてやらんから。……それより、私の方がゴメン……。」

私は傷ついたギターを見た。弾けない事はないだろうけど、もし変な音しか出なくなってたらどうしよう……。

そんな私を見て、お兄さんは頭を撫でる。

「大丈夫。ギターが壊れても俺には」

と言って喉を指差した。

「があるからね。」

優しい言葉をくれるお兄さんにホッとして、私は微笑んだ。

⏰:07/11/10 23:54 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#344 [向日葵]
「私、お兄さんの声好きだよ!歌も!」

お兄さんはパチパチ瞬きしてから何か残念そうにハァーとため息をついた。

「好きなのはそれだけ?」

「へ?」

言ってる意味が数秒後に分かって、首から赤くなっていく。

「ミュージシャン向いてるって言ってくれたのは碧ちゃんだけだよ。他は皆駄目の一言。だから俺、嬉しかったよ。」

と言ってお兄さんはギターを持った。
ジャーンと鳴らすと、なんとか綺麗な音を奏でていた。

⏰:07/11/10 23:57 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#345 [向日葵]
「今度新しい歌作りたいんだ。碧ちゃんのリクエストで。何がいい?」

お兄さんは相変わらずにこにこして私の答えを待っている。
私もつられて笑顔になった。

「じゃあね、私の為に作った歌がいいな。」

貴方の歌にのせた想いを受け止めた後、今度は私が貴方に想いを告げるよ。

声の限りに、大好きと……。

⏰:07/11/11 00:01 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#346 [向日葵]
ビー玉9*Sixteen〜相変わらずの日々〜*












あぁ……だから夏は嫌いなんだ。
暑いし……なんてったって暑いし……。それこそデブには最大の敵だ。

「ねぇ寒くない?」

「ウン。冷房少し消しちゃおっかぁ。」

⏰:07/11/11 00:08 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#347 [向日葵]
おのれ小娘どもー!!少しはデブの気持ちを知れ!ってか寒くなるの大体分かってんだから何か羽織る的なものを持ってこい!

と、冒頭からの暴言失礼。

私は五十嵐 千広。夏が大嫌いなご存知デブスです。

只今授業中。
はっきり言って冷房無しの授業と言うのは私にとって拷問に近いものなのですが……。
近頃の娘さん方は細いせいかやたら寒がりだ。

こちら側代表として言わせてもらおう。

デブの気持ちも分かれ!

⏰:07/11/11 00:13 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#348 [向日葵]
そして拷問のような時間が終わり、外の蒸し暑ーい空気を肌で感じながら私は帰るのだった。

さ……さらさらシート……。

この時期に、タオルとさらさらシートほどかかせないものはない。

人の目がないか周りを見ながらさっと出してさっと拭いて空き缶のゴミ箱に入れた。

はぁ。もうすぐ夏休みか……。
高校の友達と遊びたいなぁ。漫画も山ほど買いたいし。ちょっとワクワクしてきたかも……。

⏰:07/11/11 00:18 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#349 [向日葵]
さて、帰り支度をするか。

携帯にイヤホンのコード装着。右耳よーし。左耳よーし。携帯の音楽モードよー

「ちっひろーぃ!」

ガバッ!

「?!」

「今帰り?ぐっうぜーん!俺も!だから一緒に帰ろうよ!」

「さ、桜井君……っ。」

この人は桜井君。
なんだかんだあって出会ったのは丁度1ヶ月前くらい。

⏰:07/11/11 00:23 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#350 [向日葵]
そしてなんと……この今私に抱きついているかっこいい方は……あろう事か私が好きとかおっしゃいました!!

[覚悟しとけよ。]

と言われたのは2週間前ほどでしたか……。
私は桜井君の想いを素直に受け入れられず、拒否した所、私を惚れさすと言う宣言をしました。

そんな事をしなくても私は既に桜井君が好きなんですが……私は自分に自信がないせいで未だ彼に返事をしていません。

「あの……いい加減離れてくれませんか……。」

「まった他人行儀!同い年だっつってんのにぃ!」

⏰:07/11/11 00:27 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#351 [向日葵]
私は男の子と話すのが得意じゃない為、桜井君にはいつも敬語だった。

「はぁ……すいません……。」

「そんな事より千広。」

そんな事って貴方が言い出したんでしょうがよ。とツッコミをいれながら桜井君の話を聞いた。

「明後日の休み。水族館行かない?」

一瞬水族館と言う単語に反応した。
私は大の水族館好きだ。特にジンベエザメは最高にヤバイ……っ!
……でもそれって……つまり……。

⏰:07/11/11 00:32 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#352 [向日葵]
「2人じゃ……ないですよね?」

「2人に決まってんじゃん。デートしよっつってんのに。」

やっぱりか!
どうしよう私デートなんか19年生きてきて1度もしたことねぇよ!
妄想ではしてたけど……。

「他の方誘ったらどうですか……?1日私といても楽しくないですよ?」

こんな私が水族館に入ってはしゃいでたりしたら絶対桜井君は

引く。

⏰:07/11/11 00:35 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#353 [向日葵]
「やだね。俺は千広と行くって決めてんだから。割引チケットせっかく貰ったし、行こうよ。ね?!」

詰め寄られて、桜井君の顔が近くにある。
頼むから近づかないで欲しい。汗が……変な汗が出てくる。

「………………はい。」

あーぁ。言っちゃったよ。とうとう言っちゃったよ……。

後悔してる私とは裏腹に、桜井君はガッツポーズを作って「よっしゃぁ!」と言っていた。

そこまで喜ばれてしまうと……嫌な顔出来ないじゃないか……。

⏰:07/11/11 00:40 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#354 [向日葵]
・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「水族館ってどこのですか?」

電車に揺られながら私は桜井君に聞いた。
相変わらず目は見れないけどなんとかして顔をチラリと見る。

「逆方面だよ。西の方。」

「フーン。」

「ってかさ。」

と言って片方だけ付けてたイヤホンをコードを引っ張られて抜かれた。

「俺といんのに音楽聞くの止めてくんない?そんなに俺と話すの嫌?」

⏰:07/11/11 00:44 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#355 [向日葵]
桜井君の目が私を射抜く。
逃げられないかのように私は桜井君をじっと見つめたままになってしまった。

だけど身がもたない私は必死に目から逃れて少しうつ向いた。

「仕方ないじゃないですか……。桜井君と喋れる様になっても、恐いは恐いんですから……。」

桜井君と話す時は音楽は言わば精神安定剤。
気持ちを落ち着かせてくれる為に聞いてる。

イヤホンをまたつけようとしたら、その手を掴んで桜井君に止められた。

――ドキ……。

⏰:07/11/11 00:50 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#356 [向日葵]
私のまるっこい饅頭みたいな手に、骨張った桜井君の手が重なる。

「大丈夫だから……。」

うわ……どうしよ……憧れだった甘い雰囲気が信じられないくらい私の周りに漂ってる。
心臓も……すごいうるさい……っ。

「千広……。」

ビクッとした。
一際低い声に、ただただ私は下を見つめるしかなかった。

「この前の、返事」

「○○駅〜○○駅です。」

⏰:07/11/11 00:54 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#357 [向日葵]
2人の手が、アナウンスにびっくりしてパッと離れた。
桜井君を見ると、少し赤くなっていて、顔を背けた。

プシュー

ドアが開くと共に人が入れ替わる。
しばらくして、またドアは閉まった。

「……桜井……君?」

前から声がした。

見てみると、栗色のフワフワした髪の毛をした可愛らしい女の子が桜井君を見つめていた。

「…あ!神崎?」

⏰:07/11/11 00:58 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#358 [向日葵]
名前を呼ばれた女の子はパァッと笑うと、こちらに近寄ってきた。

「久しぶり!元気?」

「ウン。神崎もこれくらいの時間に帰ってるんだ。」

「ウン。そうなの。」

すると女の子は私の方を向いた。
パチッと音がしたかのようにバッチリ目が合った。
女の子はにっこり笑った。

「桜井君の彼女?」

どこをどう見てそういうかねお嬢さんよ……。

⏰:07/11/11 01:02 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#359 [向日葵]
「ウン。そうだ」

「違います。ただの友人Aです。」

アンタも何肯定しようてしてんだよ。

女の子はクスクス笑うと私に向き直った。

「私、神崎 嘉穂(かんざき なほ)。桜井君とは高校の時、同じクラスだったの。」

「あ、ども。五十嵐千広です。桜井君とは美術関係で仲良くさせてもらってます。」

何か不満でもあるのか桜井君は何か文句を言おうとしたけど、私が一睨みすると口を閉じた。

⏰:07/11/11 01:06 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#360 [向日葵]
「そっか。仲良くしてね千広ちゃん。」

なんと可愛らしい人なんだろうかね……。
そうかー桜井君とクラスメイトだったのかー。
この子モテただろうなぁ……うらやましい……。

「桜井君。同窓会の手紙来た?」

「あぁ。でも俺行かないから。」

なんか……私邪魔みたいだな……。

少し胸が痛むのを感じながら、私は両耳にイヤホンをはめた。
そしてなるべく2人の会話を聞けないように音量を上げる。

⏰:07/11/11 01:10 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#361 [向日葵]
音楽を聞き始めて少しした時、チロッと2人を見た。

旧友と会った2人は、思い出話に花を咲かせているのか、楽しそうに笑って話続けていた。

ホラね……。やっぱりそうだよ。
桜井君は、私と一緒にいて楽しい訳がない。
きっと「覚悟しろ」なんて言ってしまったせいで引っ込み出来ないようになったんだ。

本当は私の事なんて、とうに冷めてるだろうに……。

そう思うと、胸が痛くなった。

⏰:07/11/11 01:14 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#362 [向日葵]
やっと駅に着いた。
もう1度2人を見る。まだ楽しそうに話している。

じゃあさようならーっと……。

心の中で挨拶して、私は電車を出た。

「千広っ!」

イヤホンの隙間から、私を呼ぶ声が聞こえた。
でもその声に笑顔で対応出来る程大人ではない私は、聞こえないフリをしてその場を去った。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

今日はもちろん長風呂の日だ。
じゃなきゃ家族に八つ当たりしてしまいそうだ。

⏰:07/11/11 01:17 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#363 [向日葵]
あぁ……自分が嫌いだ……。

どうして私は、痩せてないんだろう……可愛くないんだろう……。
人生はせち辛い……。

「ダメだ……暑い……。」

おのれ夏……。私からリラックスタイムさえも奪う気かこの野郎。

お風呂を上がって部屋に行くと天国だ。
クーラー最高!

などと思ってると、携帯のバイブが鳴り出した。

「あ、暁子ちゃんだ。」

⏰:07/11/11 01:22 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#364 [向日葵]
暁子ちゃんは大学の友達で、一番仲の良い子だ。

<チロルこんばんわー(。・ω・。)ニュースだよー☆明日の絵画の時間王子様の学校また見に来るってー!>

いらんっ!
そんなニュースいらないから!
ってかあの大学いくら交流あるからって来すぎだから!

<へー……それはまた迷惑な話だ……。来なくていいのに(-”-)>

送信。

私帰り無視しちゃったしなぁ。絶対明日文句言われるんだ……。あぁ……嫌だ。言い訳考えとこう……。

⏰:07/11/11 01:26 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#365 [向日葵]
――――――……

「もーすぐ来るねっ。」

耳栓、もといイヤホンをつけようとすり私に暁子ちゃんがウフフと笑いながら言った。

「ねー。」

それだけ返すと暁子ちゃんは「もう!」と言った。

「なんでチロルはそうドライなのよー!好きなんでしょ?!」

好きでもなぁ。
昨日のあの子を見てしまったら、余計に返事なんて出来なくなっちゃったよ。
どの口が好きと囁くかっつーの……。

⏰:07/11/11 01:31 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#366 [向日葵]
――――――――――――

今日はここまでにします

>>283に感想板がありますんで、良ければ感想お願いします

⏰:07/11/11 01:33 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#367 [向日葵]
今日はラッキーな事に油絵で何を描くかのデザインを考える為色々な場所に出歩くのがありだった。

良かったと言わんばかりに私は教室から離れた所に行った。

私は景色を描きたかったので携帯で写メを何枚か撮った後、それをイメージした奴を何枚かスケッチブックに描いていた。

しかし……暑い……。

さっきまでクーラーの効いてるとこにいたせいか余計暑い……。
汗が額に浮かぶ。

夏の間だけでも太陽なんか滅びてしまえー。

⏰:07/11/12 01:10 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#368 [向日葵]
ブーブーとバイブが鳴った。

「ん?」

<暁子ちゃん:チロルどこ?!王子様がチロル探してるよ!>

絶対に行くまい!
行きたくもないし。
メール気付かなかったことにしちゃえ……。

桜井君の学校が去ってくれるまで、ここで待機するしかないっかぁー……。

私がいるのは外にあるベンチ。
教室からは離れてるから見つかる事はないだろう。
桜井君の学校は多分裏門から帰るだろうし……。

⏰:07/11/12 01:13 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#369 [向日葵]
それにしても……昨日の人可愛かったなぁ……。神崎さんだっけ。

景色を眺めながらイヤホンから音楽に酔いしれる。

ずーっとこんな心穏やかだったらいいのに。

「しんどい……。」

スポッ

「?!」

「何がしんどいの?」

振り向けば抜いた片方のイヤホンを持って、桜井君がそこにはいた。

「返してっ。」

⏰:07/11/12 01:17 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#370 [向日葵]
イヤホンを奪い取ってから私は教室に向かう為立ち上がり教室に向かった。

階段を登ってる途中、服を引っ張られた。

「っ!何……っ?!」

片方のイヤホンを外して私は桜井君を睨んだ。

「何怒ってんの。」

「暑いからイライラしてるだけだよ。」

「じゃあ昨日無視したのもそのせい?」

私はぎくっとした。
前を向いて、顔から悟られないようにする。

⏰:07/11/12 01:22 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#371 [向日葵]
「無視?した覚えないけど?」

「帰りの電車。俺千広っ!って呼んだんだぞ?」

知ってる。
でも返事なんてしたくなかったんだもん。

「音楽聞いてるんだから聞こえないよ。」

私はまた足を進めた。
すると桜井君が駆け上がって来て私の前に立ち塞がった。

「俺ショックだったんだからな。いい加減少しは俺の事意識してよ。」

意識なんかしっぱなしに決まってるじゃない。
だけど、それとこれとは別なんだから……。

⏰:07/11/12 01:26 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#372 [向日葵]
大体意識しろって偉そうに言うけど、私なんかほったらかしで自分は楽しそうに可愛い神崎さんと喋ってたじゃない。
そんなの……矛盾してるよ。

「……水族館。やっぱり行かないから。」

「は?!なんで。」

「私じゃなく昨日の子誘えばいいよ。きっとお似合いだから。」

私は桜井君の隣を通り過ぎようとした。

「ちょっとお前こっちこい……っ。」

力一杯汗ばんでいるだろう私の太い手首を桜井君は掴んで私を引っ張っていく。

⏰:07/11/12 01:30 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#373 [向日葵]
どこかの空き教室だ。
いつの間にチェックしてたんだか。

入れられると戸をバタン!と閉めて私を睨む。

痴漢は全然恐くなかったのに、何故かこう言う状況に恐怖を抱く私。
我ながら謎だな自分。

「昨日千広をほったらかしにした事怒ってんの?」

なんで分かるかなぁ……。
でもそんな事言ったら気持ちモロバレじゃんね?

「ないないないない。私別に彼女じゃないのになんでそんなヤキモチみたいなのを。」

⏰:07/11/12 01:35 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#374 [向日葵]
私は窓際までさりげなーく移動して、戸付近にいる桜井君と距離をとった。

ヘルプミー!!と叫びたいとこだけど……。

「なんで……俺ばっかかよ……。」

ヘナヘナ……と弱々しくしゃがみこむ桜井君。

え?え?何事?

「頼むからさ……行こうよ水族館……。俺男として千広に早く見てもらいてぇーもん……。」

――ドキッ…

それは……反則ではなかろうか……。

⏰:07/11/12 01:39 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#375 [向日葵]
ダメだ……。思考が鈍る……。
そんな男前発言されてしまっては……弱いよ。

「ぅ……嘘だよ。ちょっと言ってみただけだから。明日、何時待ち合わせなの?」

「え?いいのっ?!」

桜井君は嬉しそうに笑った。その笑顔にまた心臓がうるさくなる。

「じゃ、明日10時に水族館がある駅に!」

「わ……分かった……。」

そんなにはしゃがれると、反応に困ってしまう……。

⏰:07/11/12 01:44 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#376 [向日葵]
―――――――……

OKしたのはいいものの……

「何着ようか……。」

可愛い服が無い訳じゃないけど……いかにもデートします!みたいにめかしこんでも馬鹿みたいじゃなかろうか……。

とりあえずTシャツにジーパン履いて、アクセサリーと髪型でそれらしくみせようかね……。

「メイク……どうしよう。」

学校でもすっぴんだ。
マスカラやアイシャドウをがっつり付けたりなんかしてない。

⏰:07/11/12 01:47 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#377 [向日葵]
むしろそんな事してしまったら化物になってしまう可能性大……だけど。

「ファンデーションとグロスくらいはつけるか……。」

どうせ汗で落ちるだろうけどその時はその時だ……。

「よし!財布OK!携帯充電OK!持っていくカバンOK!服OK!目覚ましOK!寝るべ!」

電気を消して、バフッ!と布団に倒れこむ。

実を言うと、明日ものすごく楽しみだったりしている。もしかしたら手つないじゃったりするのかな?

⏰:07/11/12 01:50 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#378 [向日葵]
もし……いい雰囲気になったら、思い切って言ってみよっかな……。

桜井君が好きって……。

――――――……

自分ながら浮足だってるのは分かってる。
ガラにもなく電車の窓で髪型チェックしたり服装正したり……。

でもドキドキして、ちょっとワクワクして……。
始め会った時どんな会話すればいいのかな……。

今日は音楽類は携帯以外持って来なかった。
行きはともかく、帰りはもしかしたら違う雰囲気が私達を包んでるかもしれないから……ってなんってなぁ―――!!

⏰:07/11/12 01:55 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#379 [向日葵]
アハハハハハ……ハァーァ……。
妄想癖治んないかなぁ……。

ちょっと自分が惨めになりつつ、駅に着いたので改札で待つ事にした。
桜井君はまだらしい。

ハァー……。桜井君今日はどんな格好してくるんだろうなー……。

「千広!」

ドキ―――ィ!!

「おっ、おはよっ……う……?」

「こんにちは。」

桜井君の横には、にっこり笑った神崎さんがいた。

⏰:07/11/12 01:59 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#380 [向日葵]
「神崎も一緒に行きたいって聞かなくて……千広……いい?」

はぁ……?
何な訳?あれだけ私と行きたいって言ってたくせに……。
もう……どうにでもなれ……。

「全然いいよ!2人なんか味気なかったの!神崎さんよろしくね!」

「良かったー。ありがとう千広ちゃんっ。」

我ながらなんて八方美人面……。
ここでヤキモチ妬いて、可愛らしく泣きでもすればいいんだろうけどなぁ……。

⏰:07/11/12 02:02 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#381 [向日葵]
違うか……私がしても、ウザイだけか……。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ねー!見て千広ちゃん!可愛いねー!」

貴方の方が可愛いですよー。って言いたくなるほど可愛い神崎さん。

「ペンギンだね。可愛い。……ごめんトイレ行くね。」

私はそこから逃げた。
休日のわりに、水族館は空いてたので、すんなりトイレまで行けた。

「あー……。痛い……胸、痛い……。」

⏰:07/11/12 02:05 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#382 [向日葵]
落ち着け……余計な波風立ててはいけない……。
今日私が我慢する事で、楽しかったね、って神崎さんと桜井君の2人にとって思い出になるんだから!

私はまたペンギンのところへ向かった。

「あのカップル可愛いねー。」

「あ、ホントだー。」

誰かの会話の視線を追った。そこには……桜井君達2人の姿。

「あ、千広ちゃん!おかえり!」

少し遠くにいる私を、神崎さんが見つけた。

⏰:07/11/12 02:09 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#383 [向日葵]
私は気まずいながら、そこへ足を運ぶ。

「お、お待たせ……。次行こうか……。」

「うん!」

「次は、アフリカゾーンだってよ。行こうぜ。」

楽しそうな2人を、どこか客観的に見てる自分がいた。

「え?あの子も?1対2?」

「ぷっ……超邪魔じゃんあの子。」

…………っ!!
大丈夫……いつもの事じゃない。こんな事……。

⏰:07/11/12 02:12 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#384 [向日葵]
アフリカゾーンまで、私は拳を握って進んで行った。

着いてから3人別々に水槽を見ていた。

はぁー……おっきな魚っすなぁー。
こんなのが泳いでるんだ。世界のどこかで。

「デカイな。」

「!!びっくりしたな!いきなり来ないで下さい……。」

「あれ?また敬語になってる。昨日は普通だったのに。」

どーだっていいよ。そんな事……。

⏰:07/11/12 02:15 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#385 [向日葵]
「楽しい?」

んな事ある筈ないでしょうがお兄さん……。

「楽しい。水族館好きですから。」

あ、最後のいらなかった。

桜井君を見ると「そっか」と微笑んでいた。
水族館好きと言ったのが良かったらしい。
その笑顔を見て、ちょっと胸の痛みがおさまった……。

だけど……。

「あ、あの、止めて下さいっ……。」

⏰:07/11/12 02:18 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#386 [向日葵]
桜井君と顔を見合わせて「ん?」と言ってから振り向いた。
すると神崎さんが絡まれていた。

「いいじゃん1人っしょ?遊ぼうよ。」

「連れがちゃんといますから……っ!」

ありゃりゃりゃ……!大変!助けなきゃ!

「ちょっと!」

桜井君が叫んだ。

神崎さんの方に近づいていくと、2人の間に入って、絡んでいた奴を睨みつける。

⏰:07/11/12 02:22 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#387 [向日葵]
「コイツ、俺のですから。触らないでくれます?」

―――――ギィィンッ!!

……あいったー……。そりゃないよ桜井君。すっごく痛い……。
いくら、助ける術だとしても……それは……キツイ……。

2人は何だかいい雰囲気になっていた。
それは私が望んでいたもの。

そりゃ守りたくなるよね……。
クリクリして潤んだ瞳。長くて細い手足。華奢な体。正に守られる為に作られたような……。
それに比べて……。

⏰:07/11/12 02:25 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#388 [向日葵]
私は水槽を見た。
憐れにも、可愛くない自分がそこにはいた。

黒いだけの髪。パンパンなほっぺ。逆に守ってあげれそうな太い体……。

完敗だ……。
もしかしたら桜井君。今日は私にさよならを言う為に呼んだのかな?
神崎さんと付き合うからって……だから私を無理矢理誘ったのかな……。

「……ろ。千広っ。」

「え……。」

いつの間にか2人は目の前にいた。

あ、どうしよ……涙……出そう……。

⏰:07/11/12 02:30 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#389 [向日葵]
「ご、……ごめんなさい!実は急用があったの忘れてて、今から……帰らなくちゃ……っ。2人は、仲良く回ってくれて構わないから!じゃ、また!」

私は出口の方まで早歩きで行った。

「千広!」

やだ……っ。追いかけないで……。

人の間をぬって、私は出口へ向かう。
早く……っ早く出口……。
「待って千広!」

肩を掴まれた。
私は止まるしかなくなった。

⏰:07/11/12 02:33 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#390 [向日葵]
「どうしたの?何か変じゃない?」

「……ごめん。本当、用事があるから……。」

私は手を振りほどいてまた歩いて行った。

あぁ……馬鹿だ私。
何期待してたんだろう。
いつも期待して、裏切られる事分かってるじゃない……。
それなのに……。

馬鹿みたい……。

こんな時に、音楽が聞けないだなんて……。

水族館をやって出れた。
太陽が真上だ。

太陽なんか……太陽なんか……。

⏰:07/11/12 02:37 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#391 [向日葵]
眩しい太陽なんか……

「大っ嫌いだ……。」

私はいつまでも闇の存在だ。
それを改めてしらされた。

所詮デブスには恋なんて出来っこなかったんだ。
恋なんて、でしゃばった事、しちゃいけなかったんだ……。

「う……っうぅぅ……っ。」

消えたい……こんな私なんか……っ!


大嫌いだ…………っ!!

⏰:07/11/12 02:39 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#392 [向日葵]
――――――……

「チーロール!」

「お!おっはよーぅ!」

数日後。
失恋した私は意外にも元気だった。
色々あったモヤモヤが消えたせいかな……?

電車の時間を、ちょっとずらしたり、帰る時間の調整で、桜井君に会う事は、ここ何日か無かった。

「今日の帰り買い物行かない?」

「いいよ。私も漫画買いたいし!」

漫画を読んで、また妄想を膨らませながら夢に浸っておこう。
その方が……何倍も現実より楽だもの……。

⏰:07/11/12 02:45 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#393 [向日葵]
・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「暁子ちゃん。帰ろ!」

「ごめんチロル!一回寮に戻らなきゃいけないから校門で待ってて!」

「ウン。分かった。」

私は校門へ向かった。

漫画何買おうかなぁー。
あんまーいラブストーリー読みたいなぁ。って言ってもいつも甘いの買っちゃうんだけどね……。

「音楽聞きながら待つか!」

イヤホンをつけて、携帯をいじる。
音楽で、私の耳は塞がれた。

⏰:07/11/12 02:49 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#394 [向日葵]
と思った。

スポッ

「?もー!暁子ちゃんったら」

「誰が暁子ちゃんだよ。」

――!!
桜井君がいた。
音楽で自分の世界にいた私は、彼に全く気付かなかった。

「やっと会えたし……。何避けちゃってくれてるの?」

「……避けてなんかない。たまたまでしょ?しょっちゅう会ってる方がおかしいんですよ。」

⏰:07/11/12 02:52 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#395 [向日葵]
「イヤホン取れよ!!」

ビッ!!

携帯から何から、音楽を聞いてた一式を取られてしまった。

「どーして何も言わせてくれないの?!俺千広に言いたい事一杯あるんだけど……っ!」

私には無い。
失恋は決定されたんだ。
大方諦めるとか言いたいんでしょ?

「悪いけど先約がありますから……失礼します……。」

ガシッ!

「!」

腕を掴まれた。
それも、今まで掴まれた中で、一番強く……。

⏰:07/11/12 02:56 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#396 [向日葵]
「今度は逃がさねぇから。」

「舐めないで!」

力に自信があった私は、振りほどいて暁子ちゃんの寮がある方まで走った。

「私は話す事なんてありませんから!」

「俺はあるんだよ!」

と言って後ろから凄いスピードで追いかけてきた。
すると前方に暁子ちゃん発見。

「あ、チロル。お待たせー。」

「暁子ちゃん!早く行こ!漫画早く買いたいしっ!」

⏰:07/11/12 02:59 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#397 [向日葵]
「あ、千広の友達だ。」

え……もう後ろにいるの……?

そろーっと振り返ると、そこには走った筈なのに、呼吸が全然乱れてない余裕そうな桜井君がいた。

ば……化物……?

「あー貴方、チロルと仲良しのー!」

「ゴメンネ。今日用事があったみたいだけど千広貸してもらえる?」

「ノープログレム!」

いやプログレムあるから!!私が!

⏰:07/11/12 03:02 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#398 [向日葵]
「ありがとう。千広、行こうか。」

爽やかな表向き笑顔とは裏腹に、有無を言わせぬオーラに私は成す術なく連れて行かれる。

暁子ちゃんは呑気に口パクで私に「頑張って!」と言っとる。

暁子ちゃんよ……私に何を頑張れと言うか……。

私は……頑張る事をとうに諦めた人間なんだよ……。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「さぁー。まず何から話そうか。」

どこだここ……。

なんか河原みたいなとこに連れてこられた私、

⏰:07/11/12 03:06 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#399 [向日葵]
私は桜井君と少し距離を置いて座った。

失恋の痛みならもうとっくに乗り越えた。
もうこの際ヤケだ。何でも来やがれ!!

「お前神崎どう思う?」

「……っ。可愛くていい子だと思う。」

ホラね。やっぱりだよ。
やっぱり私が好きじゃなくなってたんだ。

「そっか……。じゃあ神崎と付き合ってみるか。」

何が言いたいんだろう……。私を痛めつけたいのかな。でも残念だったね。そっち系の痛みには結構免疫ついてんだよ。

⏰:07/11/12 03:11 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#400 [向日葵]
――――――――――――

今日はここまでにします

>>283に感想板がありますんで、良ければ感想お願いします

⏰:07/11/12 03:12 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#401 [向日葵]
「そっか。あ、もしかして私に応援しろって言いたいの?もちろん応援するよ。だからさ、私にかまってないで、早く行かなきゃ。」

桜井君は黙ったまま流れている川を見つめていた。
私の頭にハテナが何個も浮かぶ。

一体どうしたんだろうか……?

「あぁぁ――――っ!!」

立ち上がったと思ったら、いきなり桜井君は叫びだした。
そこらを通っていた人は何事?と私達をじろじろ見ていく。

⏰:07/11/12 09:56 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#402 [向日葵]
私は恥ずかしくなって桜井君の服の裾を引っ張ってとりあえず座るように指示した。

「お、落ち着け桜井君よ!何があったか知らないけどまぁ落ち着けっ!!」

「落ち着け……?人の気も知らねぇくせにっ!!」

空が見えるなぁと呑気に考えていたら、実は私は押し倒されていた。
こんな経験ない事をされて、頭がぐるぐるしだす。
だって上には桜井君が覆い被さってるんだから。

「え?!桜井君?!何何何!!」

「どうしてお前はそんなんなんだよ……。」

⏰:07/11/12 10:00 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#403 [向日葵]
「いやー……デブなのは最早どうしようもない事で」

「そうじゃない!どうして俺を追いかけてくんないんだよ……!!」

は、はい……?

「俺ばっかりかよ……好きなのは……。神崎なんか知るかよ!俺は千広が好きに決まってるだろ!!」

まっすぐ見つめられて、私は目をハッと見開いた。

桜井君は……嘘なんかついてない。
それは騙されやすい私でも分かってしまうくらい、偽りない気持ちだった。

⏰:07/11/12 10:04 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#404 [向日葵]
「俺の事、嫌いなの……?」

どうしよう……言いたい事がいっぱいあって……喉に絡まって言えない。

私は嬉し涙を初めて流した。
それを見て焦ったのか、桜井君は慌てて私を起こして、背中についた土をはらってくれた。

「ご、ごめんな。強く言い過ぎた……。」

「違います……。私、こんなだから……離れて行く気持ちに慣れてるから……。桜井君も、「しょうがない」って、思ってたんです……。」

⏰:07/11/12 10:08 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#405 [向日葵]
可愛い子ならまだしも、私みたいなのがいくら引き止めても無駄な事は経験上分かってた事だった。
だから私は何もしなかった。

「私も……桜井君が好きです……。」

涙を拭いていると、桜井君の香りが近づいた。
すると、私は抱き締められていた。

「あーもー良かったー!俺疲れたっつーの!」

涙が大分おさまった頃、桜井君は私を離してくれた。
そして優しく笑って私を見つめる。

⏰:07/11/12 10:12 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#406 [向日葵]
「千広はさ、自分が嫌いみたいに言うけど、俺は千広が可愛いと思うよ。外見とかそんなんじゃなく、全部大好き。」

「それに。」と言って、桜井君はクククと笑った。
なんだろうと私は首を傾げて桜井君の言葉を待った。

「千広随分前から俺の事好きでしょ?」

「……っ?!」

顔が赤くなるのが分かる。

「ど……っどうして……!」

「言葉遣いだよ。冷静さなくなったら、いつも千広は普通に喋るの。だから神崎が現れたりした時、もしかしたらヤキモチかなぁーって。」

⏰:07/11/12 10:16 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#407 [向日葵]
知らなかった。
自分がそんな事になってるだなんて……。

「ひ、……引かないで下さいね……。」

「何が?」

「私、こう見えて……ものすごいヤキモチ妬く人なんです。」

すると桜井君はアハハハハ!と笑った。

「引かないよ。可愛いじゃんか。」

私は顔が赤くなっていった。




今日も相変わらず何も変わらない1日。

⏰:07/11/14 02:01 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#408 [向日葵]
でも隣には、いつの間にか大好きな人が……。

私達は今日も手を繋いで笑い合い、一緒に歩いている。





19年で、一番の宝物です。

⏰:07/11/14 02:03 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#409 [向日葵]
ビー玉ラバーズ*スペシャルストーリー1*きらきら











あぁ……。

「いいかー。今回のテストで赤点があった奴は冬休みな最初、追試だからなー。」

クラス中から非難の声が続々上がる中、私は下を向いて目を見開いていた。

⏰:07/11/14 02:10 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#410 [向日葵]
皆さん、お久しぶりです……。
只今氷河期が一気にやって来た東雲 友姫です。

久しぶりなのにテンションが低くてすいません。
でも私に大変な事が起こってしまいました……。

「友姫!テストどうだった?」

「ちょ、アンタなんでそんな顔色悪いのよ!」

「秋帆……律ぅ……。」

ご存知友達の秋帆と律です。

「友姫……もしかして……。」

「ウン……律正解……。」

⏰:07/11/14 02:14 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#411 [向日葵]
そうなのです……。

私、東雲 友姫は……、人生初の赤点を取ってしまったのです……っ!!
しかも悲しいかな苦手な数学……。

私のテンションは谷底へと消えていきました。

「友姫ちゃん赤点取っちゃたの?」

「あ、佳苗ちゃん……。」

佳苗ちゃんはフワフワした髪の毛を揺らして心配そうに私の顔を覗き込んだ。

私はうなだれながら小さく頷く。

⏰:07/11/14 02:18 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#412 [向日葵]
「友姫ちゃんお揃い!俺もだよ!」

「暁頭悪そうだもんな。」

「アンタも人の事言えないでしょ直。」

皆ありがとう……勇気づけてくれて。
でも赤……赤……赤点だなんて―――っ!

「え?友姫、お前赤点取ったのか?」

「あ……珊瑚君……。」

私の大事な人、珊瑚君。
綺麗な容姿を私に近づけ、心配そうに私を見ている。

⏰:07/11/14 02:22 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#413 [向日葵]
「ごめんなさい。せっかく珊瑚君が教えてくれたのに……。」

数学が苦手な私は、珊瑚君に教えてもらいなんとか勉強出来ていた。
今回は結構出来たと思ったんだけど……。
痛恨の計算ミスが響いてあえなく

「「「赤点……。」」」

皆が口を揃えて言うので私はさらにうなだれた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

頭に石が乗っているかのように私は下を向いて落ち込んでいた。

「友姫。元気出せって。」

廊下の窓で珊瑚君と2人で喋っていた。

⏰:07/11/14 02:27 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#414 [向日葵]
「だって計算ミスですよ珊瑚君……。ミスしすぎて赤点って……。」

自分がいかに抜けてて馬鹿かが分かる。
思わず現実逃避したくなるほどに。

すると頭をポンポンて軽く叩かれた。
見れば珊瑚君が頭にその大きな手を乗せている。

「追試なら問題がまだ簡単だから。大丈夫だ。教えてやるから。な……?」

その優しい微笑みにキューンとさせられながら私はコクリと頷いた。

「頑張る……。」

⏰:07/11/14 02:31 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#415 [向日葵]
そう言うとワシャワシャ珊瑚君は頭を撫でた。
軽く目を瞑りながらも、珊瑚君に頭を撫でられるのはすごく好きなので喜んだ。

「よし!やる気でた!珊瑚君、お願いします!!」

「分かった。」

「と言う訳でー!」

急にどこからか白月君がニュッ!と出てきた。

「俺達もお邪魔さしてもらうー!」

俺達……って……。

「赤点は私と白月君だけだよね?」

⏰:07/11/14 02:35 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#416 [向日葵]
「何言ってんの友姫!」

肩をガシッと掴んで秋帆と律が私に迫ってきた。
びっくりして体が少し反ってしまった。

「友姫。油断しちゃダメよ。寛和の事だから2人になったらエロいことしようと企んでんだから!」

「お前の彼氏と一緒にするな。」

「誰がエロいって?ナイト様。」

思わず苦笑い。
珊瑚君はそんな事考えてはない。……と思うけど。
実際今年の夏にそれまがいの事が起こったけど、それ以降はいつも通りだし。

⏰:07/11/14 02:40 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#417 [向日葵]
――――――――――――

今日はここまでにします(。・ω・。)

>>283に感想板がありますんで、よければ感想お願いします

⏰:07/11/14 02:41 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#418 [向日葵]
いや……いつも通りで十分なんですけどね。

「題しましてぇっ!」

秋帆が叫んだ声で我に帰った。

「友姫ちゃん追試合格までの道ー!」

「え?!俺は?!」

皆が騒ぐ中、私はふと思った事があった。

「それって……どこでやるの……?」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「あーナイト様の家久々ぁ!」

結局珊瑚君の家(私の家でも半分ある)でお勉強会を実施。
どこかでこうなる事を予想していた私。

⏰:07/11/16 00:16 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#419 [向日葵]
とりあえず皆は居間で適当に座る。
私は皆にお茶を出す為に台所に立った。

「友姫そんなんいいから。」

後ろから珊瑚君がコップを出しながら言った。

「あ、いいのいいの。気にしないで。これくらいしなきゃ。」

「じゃなくて。」

と言いながら棚から出したコップを置き、コツンと軽く私のおでこを叩いた。

「お前、まぁ暁もだけど。お前らの為の勉強会なんだから、友姫は勉強の用意して来い。」

⏰:07/11/16 00:21 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#420 [向日葵]
そこで私は大きくため息を吐いた。
珊瑚君が「何?」と言う風に首を傾げて私を見る。

「私も珊瑚君みたいに頭が良ければなぁ……。」

ポツリと言って、私は居間に向かい、カバンから勉強道具を出してセッティングしていた。

「友姫ちゃんはどこが分からないの?」

佳苗ちゃんがにこやかに聞いてきた。

「えっと……分からないって言うか、計算ミス。あ、でもここちょっと分かんないかも。」

⏰:07/11/16 00:25 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#421 [向日葵]
「これはね……。」と教科書に指を差しながら私に丁寧に教えてくれる佳苗ちゃん。
そんな佳苗ちゃんを見ながら、私はまたため息を静かにした。

可愛くて、頭が良いなんて……佳苗ちゃんは完璧すぎだよ……。

「あ、ここもう1回教えて!」

白月君が寄って来て、3人揃って佳苗ちゃんの話を聞く。

「ぐぇっ!!」

「え?!」

いきなりの白月君の変な声に、近くにいた私はびっくりした。
見れば珊瑚君が白月君の襟を引っ張っている。

⏰:07/11/16 00:30 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#422 [向日葵]
「くっつきすぎ。」

それを見ていたしい千歳君はプッ!と吹き出した。

「ナイト様何暁にヤキモチ妬いてんのさ!」

あ、近かったからかな。

「そんなに嫌なら友姫を連れて自分の部屋にでも行きなさいよ。」

律。それならば何故皆ここに来たのかが分からないよ。目的は仮にも私と珊瑚君を2人にしとはいけない!から始まったんじゃなかったっけ……?

「いくらなんでもそれは……。」

⏰:07/11/16 00:35 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#423 [向日葵]
と弁解をしていると、パタンと音が聞こえた。
「ん?」と思い、手元を見ると、珊瑚君の両手が私の勉強道具を片付けている。

……?何で……?

「ハイ友姫持つ。」

ずずいっと道具一式を渡されて、意味も分からず私はそれを受け取った。
すると珊瑚君が両腕を持って私を無理矢理立たせた。

「了承も得た事だし。じゃあ俺達は好きなようにさせてもらうから、皆ごゆっくりな。」

⏰:07/11/16 01:47 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#424 [向日葵]
え?

「珊瑚君何言っ……て――?!」

腕を引っ張られて、私は珊瑚君に無理矢理歩かされた。
何故急にそんな展開になったかパニックになっていた私は、気がついたら珊瑚君の部屋にいた。

バサッ!

その音に振り向くと、珊瑚君が制服の上着をベッドに投げたところだった。

「……え、さ、珊瑚……く……?」

まさか……え、まさかっ!そんなっ!

⏰:07/11/18 11:50 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#425 [向日葵]
「何?どうかした?」

どうしたもこうしたも!

「え、あ、えぇっ!」

パニックな私をよそに、珊瑚君は私の方に歩み寄ってきた。

嘘でしょ?!だって下には皆いるし……っ!!

「……っさ、珊瑚君待って!!」

「え?腹でも減った?ってか食べたら眠くなるぞ。なんてったって友姫が嫌いな数学だからなぁ……。」

あ、……あれ?

私は首からおでこの生え際まで真っ赤になっていくのが分かった。

⏰:07/11/18 11:54 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#426 [向日葵]
勘違い!

私の頭にでかでかとその3文字が出現する。

馬鹿だよ私っ!
私こそ本当のスケベかもしれないよぉ―――!!

「友姫?何してんだ?早く始めるぞ。」

「あ……ハイ……。」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「で、この公式をここに当てはめるわけ。」

珊瑚君の教えにより、順調に問題を解いていく私。
珊瑚君は教え方上手いのか、学校の先生よりも理解しやすい。

⏰:07/11/18 11:57 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#427 [向日葵]
「……で、こう?」

自信満々でノートに書いた答えを指差した。
その答えをチェックしていた珊瑚君は、段々と眉間にシワを寄せて、最後にはハァァ……と大きくため息を吐いた。

「あのさ友姫……なんで8+3が21になってんだよ……。かけ算になってるし。」

またしても計算ミス。

あまりの凡(?)ミスに机に顔を突っ伏してしまった。
「本当……申し訳ありません……。」

ダメだ……こんな事じゃ絶対次の追試も不合格だよぅ……。

⏰:07/11/18 12:04 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#428 [向日葵]
「ハァァ……休憩でもするか……。」

珊瑚君は椅子から立ち上がり、部屋を出ていった。

呆れられちゃった……。

私は自分の頭をワシャワシャ乱暴にかき回した。

しっかりしなくちゃ。
珊瑚君にまで協力してもらって、父さん母さんを説得してここにいるんだから。
赤点なんか……取ってる場合じゃ……。

――――――……

ガチャ

帰ってくると、友姫は机に顔を付けたままだった。

⏰:07/11/18 12:08 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#429 [向日葵]
友姫の事だからまたいらん心配でもして落ち込んでるんだろう……。

「友姫。」

名前を呼んでも返事がない。

オイオイ……そこまでショックだったのか?

俺はただ単にトイレへ行って、その後飲み物でもと思って下に行っただけなんだが……それがなんかいけなかったか?

「友姫?どうした?」

友姫に近づいて、肩を揺すってみると……

スー……スー……

⏰:07/11/18 12:12 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#430 [向日葵]
え……。寝てるのか……。

「たく……。友姫、寝るなら布団いけ。風邪引くぞっ。」

「ぅんんー……。」

駄目だ。

なんとかして友姫を抱き上げてから、俺のベッドに横たわらした。

布団をかける時、ふと友姫の顔を見ると、目元がなんだか濡れていた。

「泣いたのか?」

指先で濡れている辺りを拭ってやる。

⏰:07/11/18 12:16 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#431 [向日葵]
……なるほど。

「俺が呆れたと思ったって?」

答える筈もない友姫の寝顔に穏やかな声で問う。

「本当お前は……。」

苦笑いしながら、友姫の瞼に唇を触れた。

「おやすみ。」

そう言って部屋の電気を消した後、俺は部屋を出て行った。

リビングではまだあの6人がワイワイ騒いでいる。
俺の姿が再び見えると、6人は一気に俺を見た。

⏰:07/11/18 12:20 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#432 [向日葵]
さっき水を飲みに来た時もだが、この6人はやけに俺をきらきらした眼差しで見るんだが……

「一体何……?」

「あー駄目だ!珊瑚普通通りだ!」

暁が面白くなさそうに床に倒れ込む。

「アンタホントに男な訳?」

石垣が腕組みしながら俺に寄って来る。
小さな背からは考えられない程強い眼光は、少し呆れて見えた。

「何を期待してるんだお前らは……。」

⏰:07/11/18 12:25 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#433 [向日葵]
佳苗がにこっと笑ってエライ発言をした。

「だって珊瑚君、友姫ちゃんとはまだでしょ?」

後ろの壁に後頭部を思いっきし打った。

佳苗はある意味恐ろしい。
そんなフワフワした雰囲気を漂わせておきながらそんな発言をするなんて……。

「あのね寛和君……友姫ってあー見えてお子様なトコあるからその気になるまで我慢してね?」

「真野……哀れんでるのか手を出すなと言ってるのかどっちだ。」

⏰:07/11/18 12:29 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#434 [向日葵]
「「両方?」」

一同が面白そうな顔で首を傾ける。
こめかみ辺りに瞬間的な青筋が出来た気がする。

「ナイト様……仲間仲間……。俺だってさ……律が……律がぁぁ!!」

と泣き真似をしながら俺に抱きつく千歳。
若干うんざりしながらされるがままになる。

「あら直。力づくでもいいのよ?」

「どうせその後往復ビンタ10回くらいして2ヶ月は俺を放置するんだろ?」

「よく分かってるじゃない。」

⏰:07/11/18 12:34 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#435 [向日葵]
満足気に石垣が頷くものだから千歳はよりきつく俺に抱きついてオイオイ泣き始めた。

「人それぞれだよね。」

穏やかに、少し遠慮がちに三浦が言った。
そんな三浦に暁はぐるりと振り向いて詰め寄る。

「三浦違う。珊瑚は理性が強すぎなんだよ。」

「その分弾けたら大変そうだよね〜珊瑚君は。」

誰かこのカップルを閉じ込めてはくれないだろうか……。

「理性の強い弱いじゃない。問題は友姫だろ。友姫が嫌がる内は何もしたくない。」

⏰:07/11/18 12:38 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#436 [向日葵]
すると一斉に6人(いや三浦は別)の動きが止まって、今度は変な視線を送ってきた。

「私が言うのも何だけど……寛和君クサイ台詞吐ける癖にそんな気配ってるのが不思議。」

「控え目に言ってるつもりかもしれないが真野の言葉が一番刺さるぞ。」

「ナイト様……男は時に狼にならなきゃいけないんだぜ?」

「「黙れエロ眼鏡。」」

ここには石垣も参戦。
いや、石垣も眼鏡じゃん……。

⏰:07/11/18 12:45 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#437 [向日葵]
――――――――――――

一旦キリます(◎・ω・◎)


>>283に感想板ありますんで良ければ感想お願いします

⏰:07/11/18 12:47 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#438 [向日葵]
ってそんなの恐いから言えないのが事実だけど……。

「意外にさ……友姫ちゃん待ってたりするんじゃない?ナイト様。」

「友姫に限ってあり得ない。」

断言した。
しかしこれには女子一同から非難の声が。

「そんな事ないと思うよ珊瑚君。」

「大体アンタのせいで友姫は大分色々と感化されてるんだからね。」

「友姫前とは全く変わっちゃったもんねー。」

⏰:07/11/19 23:33 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#439 [向日葵]
俺は最早頭を抱えるしかなくなった。

「もうお前ら帰れ……。」

そう言うと皆「あぁそうだな」とか言って帰る支度を始めた。

ようやく帰ってくれるのかと思うと心底ホッとした。どうして勉強会が「俺と友姫の色々な関係」について会議されなきゃならないんだ……。

「「お邪魔しましたー。また明日ねー。」」

台風一過。

騒がしい奴らがいなくなった部屋はシーンと静まり帰った。

⏰:07/11/19 23:37 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#440 [向日葵]
トントントン……

「ん……?珊瑚君?」

階段を降りながら、友姫が眠たそうに目をこすっていた。

――約3分前程

「ん……?」

あったかぁーい……。

少し身じろぎすれば珊瑚君の匂いがした。

……え?珊瑚君の匂い?

ガバッと起きると、珊瑚君のベッドに入っていた。

「え?!何で?」

⏰:07/11/19 23:43 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#441 [向日葵]
記憶をフル回転で巻戻していく。

グルグルグルグル映像が頭の中で巻戻り、たどり着いた最後の記憶は、珊瑚君の後ろ姿だった。

「……あ……寝ちゃったんだ……。……あぁぁぁ……。」

バカバカ!
余計呆れられるような事してどうすんだ私!

しかもただでさえ珊瑚君に教えてもらう時間は限られてるのに……っ。

私どんだけ駄目になったら気がすむのよぉぉ……。

自己嫌悪していると、階下から声が聞こえた。

⏰:07/11/19 23:49 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#442 [向日葵]
「「お邪魔しましたー。また明日ねー。」」

あ!皆帰っ…………ちゃった……。

走って動く元気もなく、のそのそ起きて下へ行く事にした。

階段を降りると、リビングへ続くドアのヘリに珊瑚君がよっかかっていた。

「珊瑚君……?」

「?あ、友姫。目覚めたか?」

優しく言う珊瑚君だけど、その顔はどこか疲労感が漂っていた。

「ど、どうかした……?」

⏰:07/11/19 23:53 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#443 [向日葵]
「いや……自分達のダチはキャラが濃いぃなと今更ながらな……。」

と顔を手で覆って本当に参ったと言う感じで壁にもたれた。

一体何があったんだろうか……。

するとしばらく黙っていた珊瑚君が少し覆ってる手をずらして私を見た。

「……?」

*****************

果たして友姫はアイツらが言ったみたいにそんな欲望があるんだろうか……?

俺はと言うと別に友姫をどうこうしたいとは思っていない。

⏰:07/11/21 20:18 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#444 [向日葵]
一度夏休みに理性がぶっ飛びかけた事はあったが、それ以降はこれと言って何もない。

それは別に友姫に魅力を感じないとかそんなんじゃなくて、別にそんな気がないのだ。

[アンタ本当に男なの?]

石垣から言われた事が頭に響いた。

「なぁ友姫……。」

*******************

「なぁ友姫……。」

しばらく私を見つめていた珊瑚君がやっと口を開いてくれた。

⏰:07/11/21 20:21 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#445 [向日葵]
「は、はいっ!」

「お前は全てを俺に捧げたいと思うか?」

……。
ん?それはー……気持ち全てって事だよね?

「もちろんっ!ってか捧げてるつもりなんだけどなぁ……。」
********************

あー駄目だ……。
友姫やっぱり全然分かってない。

まぁ、問い正す必要はない事だし。
時期にその時が来るならば、その時は、これ以上ないほど友姫を優しく扱おうではないか……。

⏰:07/11/21 20:25 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#446 [向日葵]
********************

「あのー…。珊瑚君?」

再びフリーズしてしまった珊瑚君に首を傾げて動き出すのを待つ。

すると珊瑚君はフッ……と微笑んで私の頭を撫でた。

「晩飯の用意するか……。」

「うんっ!」

そして私達は今日も仲良く晩御飯を作るのでした。

――――――……

「友姫!」

次の日、教室に入るなり秋帆を筆頭に律と佳苗ちゃんに廊下へ連れて行かれた。

⏰:07/11/21 20:30 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#447 [向日葵]
「え。何ですか何ですか何ですかっ?!」

「昨日、あれからどうだったか気になってたんだぁ。友姫ちゃん寝てたみたいだったから。」

どうだったって……

「な、何が……?」

3人は目が点になって、少ししてからグリンと後ろを向いた。
残念ながら私にはその会話は聞こえない。

--------------------

「やっぱり何もなかったみたいだねー。」

佳苗の言葉に秋帆、律は頷いた。

⏰:07/11/21 20:44 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#448 [向日葵]
「あの2人は進展早いようで遅いからね。」

「なんて言うか……単にのほほんとしたカップルなのよ……。」

「友姫、図書室行かないか?」

珊瑚君の呼びかけに私は大きく頷いて珊瑚君の隣についた。

「はぁーぁ。なんって言うか。」

「幸せそうだよね。あの2人。」

友姫と珊瑚以外の一同が目論むおもしろい展開は、まだまだ先の話みたいだ。

「ま、仲良いいなら、いっか。」

⏰:07/11/21 20:48 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#449 [向日葵]
暁の言葉に「まぁね、」と呟く一同。

どんな事であれ、今日も笑ってあの2人が一緒にいることが、何より安心出来る事なのかもしれない。

友姫と珊瑚は、これからもずっと握ったその手を離さない事だろう。

そうしてくれる事を、心から願って……。







きらきら*END

⏰:07/11/21 20:52 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#450 [向日葵]
ビー玉ラバーズスペシャルストーリー

*恋愛喫茶店―世津&マスター―*









季節は秋に移り変わろうとしていた。

半袖では少し寒く、長袖では少し暑いこの時期。

そんなむしゃくしゃする季節には、あそこが一番。

その名も、「恋愛喫茶店。」

⏰:07/11/21 20:57 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#451 [向日葵]
私こと相模原 世津(さがみはら せつ)は、そのなんともうさんくさい喫茶店の常連だ。
いや、常連と言うか……。

カランカラーン……

「マスター。こんにちはー。」

挨拶をしながらドアをくぐると、カウンターにはお湯を沸かしているマスターがにっこり笑って私を迎えてくれた。

「世津さん。いらっしゃいませ。」

常連なんて半分嘘。

私はこの綺麗な顔立ちをしたマスターさんの恋人だったりします。

⏰:07/11/21 21:01 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#452 [向日葵]
マスターから告白されてもうすぐ4ヶ月程が経とうとしている。

告白はなんとマスターからだった。

マスターと言っても私とは6歳差。
そこらにいるおじさんではない。

「なんか飲み物下さいな。」

「かしこまりました。丁度新しい紅茶の葉が入りましたんで。少々お待ち下さい。」

用意しているマスターを見ながらふと思った。

「ねぇマスター。私そういえばマスターの誕生日知らないですけど。」

⏰:07/11/21 21:05 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#453 [向日葵]
コポコポお湯を注ぎながらマスターは穏やかに笑った。

「あまり、誕生日と言うのは好かないもので。なんと言っても私を捨ててしまわれた両親の元に生まれた日ですからね。」

いい香りの紅茶が出てきた所で私は「しまった……っ。」と後悔した。

マスター。もとい那月さんは、幼い頃捨てられ、今は亡き喫茶店のマスターに育ててもらったと言う。

23歳の大人とは言え、捨てられた傷は大きい筈。
出来るだけ触れないようにしてたんだけど……。

⏰:07/11/21 21:11 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#454 [向日葵]
――――――――――――

キリます(◎・ω・◎)

>>283に感想板がありますんで良ければ感想お願いします

⏰:07/11/21 21:11 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#455 [向日葵]
「ごめんなさい……。」

「何故謝るのです?世津さんは何も悪い事はしてませんよ。だから……。」

と言って、カウンター越しに片手を伸ばして、優しく私の頬を包んだ。

その行為に、反省で少し伏せていた目を開き、固まった。

「そんな顔なさらないで下さい。」

マスターを見ると、やっぱり穏やかに微笑んでるだけで、でもその笑顔に苦しみのような感情はなさそうだった。

「……ハイ。」

⏰:07/11/24 00:02 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#456 [向日葵]
喫茶店ならではの温かな雰囲気が私達を包もうとした。

その時だった。

バターン!
ガランガランガラン……

派手に喫茶店の扉が開いて、来客を告げるベルがうるさいくらいに鳴り響いた。

「マスター!」

振り向くと、中学2年生くらいの活発そうな女の子が満面の笑みで入ってきた。

「あぁ梨子(りこ)さん。いらっしゃいませ。」

⏰:07/11/24 00:06 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#457 [向日葵]
「ウフフー!いらっしゃいましたぁっ!」

と言いながらカウンターに座り、マスターに「アイスカフェオレ!」と元気よく頼んだ。

半ば驚いていた私は彼女を呆気にとられて見ていた。
でも私は気付いた。

この子、マスターが好きだな……?

「ねぇマスター!私今日部活のレギュラーに選ばれたんだ!誉めて誉めて!」

見た所彼女は体育系で、しかも外の競技っぽい。
小麦色に焼けたその肌が物語っていた。

⏰:07/11/24 00:10 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#458 [向日葵]
マスターは注文されたカフェオレを作りながら相槌を打っていた。
すぐ近くの私は少しいたたまれなくなって、後ろのテーブル席に移動した。

「だからマスター頭撫でて!いつもみたいに!」

移動して座ろうとしていた私はピクッと反応してしまった。

頭撫でる……?

いつもみたいに……?

「偉いですねー。」

マスターは何の躊躇もなくその子の頭を丁寧に撫でた。

⏰:07/11/24 00:15 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#459 [向日葵]
「……。」

落ち着け。落ち着け私……。
大丈夫。ヤキモチなんて……妬くだけ無駄って言うか。マスターが好きなのは(自分で言うのも何だけど)私な訳だし……。

と思いつつも気持ちを抑えられない私は飲もうとしていた紅茶のカップをプルプル震わせた。

再び「落ち着け」と暗示をかけていると、お店の奥から電話が鳴りだした。

「あ、少し、失礼しますね。」

そう言って奥へ消えて行ったマスター。
なんとなく気まずい空気が流れていると感じているのは私だけだろうか……。

⏰:07/11/24 00:19 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#460 [向日葵]
「ねぇちょっと。」

「え……?」

さっきより低めの声はまさしく梨子ちゃんとか言うあの子から発せられたもので、私は紅茶から彼女に目を向けると、梨子ちゃんは椅子を少しクルリと回してカウンターに肘をつきながら私を見ていた。

「あの……何か?」

「アンタ、マスターの彼女でしょ。」

おおっと落ち着け私ぃ。
いくら年上に敬語が使えない上“アンタ”呼ばわりされたからって怒るな怒るなっ。

⏰:07/11/24 00:24 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#461 [向日葵]
「そ……そうだけど……。」

作り笑いをしていても自分の顔がどうなっているかが薄々分かっていた。
多分青筋立ててる。

「ハァ……やっぱりね……。」

そっぽを向きながら梨子ちゃんは呟いた。
そして何か考えてからまた(偉そうに)私を見た。
私はその目線に不快感を隠せそうになかったが、なんとか頑張った。

「最近、マスターの感じ変わったからもしかしたらと思ったのよねー……。まさか先に越されてるだなんてなぁー。」

⏰:07/11/24 00:28 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#462 [向日葵]
「ハァ……。」

「一体どんな手を使ってマスター落とした訳?色仕掛け?……でもないか。」

コイツ……今確実に胸当辺り確認しやがった……っ。
どうせAカップだよバカヤロウ!!

「私、マスター好きなの。アンタみたいなおばさんに負ける気しないから。むしろ奪うし。」

「そ……そう……。」

「落ち着け」の代わりに、今度は「私の方が大人」と暗示し続けた。
でなければ今直ぐにでも胸ぐらを掴んでしまいそうな自分が怖かった。

⏰:07/11/24 00:32 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#463 [向日葵]
「別に10歳差とか、この頃じゃ普通じゃん?だから「無理だ」とか余裕ぶらない方がいいと思うよ?今の中学生舐めたら痛い目見るかんね。」

それだけ饒舌なら舐めてなんかいられないって…。

「お待たせしました。」

奥からマスターが帰ってくると、目を見張るぐらいの早さで梨子ちゃんは椅子をマスターの方へ戻した。

「ぜぇんぜんっ!そこの美人なお姉さんとお話してたからっ!」

あぁ……どうしよう……女って怖いなぁー……。なんだその極端な二重人格。

⏰:07/11/24 00:38 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#464 [向日葵]
―――――――……

結局梨子ちゃんは私が帰ろうと思う時間までいて、ロクにマスターとは会話する事が出来なかった。
諦めて、カバンとお金を置いた私は静かに喫茶店をあとにした。

しかし……最近の中学生ってすごいなぁ……。
私が中学生の時ってあんなだっけか?

ってか……嫌だったな……。

マスターがあの子の頭に優しく触れた瞬間、胸の奥がジリジリ痛くなった。

「馬鹿みたい……。」

年下に妬くだなんて……。

⏰:07/11/24 00:42 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#465 [向日葵]
――――――――――――

今日はここまでにします(◎・ω・◎)

>>283に感想板がありますんで、良ければ感想お願いします

⏰:07/11/24 00:43 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#466 [向日葵]
トボトボ家へ帰る。
足取りは驚くほど重い気がした。

「世津さん!」

「え?」と思い、重かった足を止め、後ろを振り向いた。
すると、蝶ネクタイもチョッキも、どこかの貴族のような片方だけの眼鏡も外したマスターが向こうから走ってきといた。

私の前まで辿り着いたマスターは息を少し切らしながら私を見つめた。

「帰らないで下さいよ……私は毎日送らせて頂いてるじゃないですか。」

⏰:07/11/25 01:28 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#467 [向日葵]
「だ…っ、……だって……。」

お客さんの機嫌を損ねてしまえば、マスターに迷惑がかかる。
それならば、私が幾分か我慢した方が事は丸くおさまるし

……何より、私があそこにいたくはなかったんだもの……。

「…?世津さん……?」

マスターは気遣わし気に私を見る。
そして右手をそっと差し出して、私に触れようとした。

それを視界の隅に認めた私は、反射的にその手を払ってしまった。

⏰:07/11/25 01:32 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#468 [向日葵]
パシッと乾いた音が響いた所で私はハッとした。

「あ、ごめんなさ……。」

マスターはびっくりしていた。
目には少し悲しそうな雰囲気が漂っていた。

「ごめんなさい……。」

私はもう1度謝った。

でも、触れて欲しくはなかった。

あの子を触った手で、私を触って欲しくはなかったの……。

「私は、世津さんに何か気に障る事をいたしましたか……?」

⏰:07/11/25 01:36 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#469 [向日葵]
それがあの子に対する嫉妬だと知ったら、マスターは私をみっともないと蔑ずんでしまうかもしれない……。

「す……拗ねてたんですっ!」

だから嘘をついた。

「マスターが誕生日を教えてくれないから。何でよ!って。ただそれだけです。」

マスターはしばらく私の顔をじっと見つめた。
私は嘘と見極められない為ぐっと神経を集中させた。

するとマスターの顔から緊張がとけた。

⏰:07/11/25 01:40 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#470 [向日葵]
「10月14日ですよ。丁度明後日の日曜に24になります。」

「え?!そんな間近だったの?!」

もっと余裕がある事を期待していたから、嘘をついたのは自分と言えど動揺を隠せないでいた。

「でも……教えてくれて、ありがとう。お陰で、マスターの誕生日見逃さずにすみましたっ。」

マスターは、今度は嫌がらなかった方の手で私の顔を包む。
それに気づいたから、私は今度は抵抗しなかった。

⏰:07/11/25 01:44 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#471 [向日葵]
「こんな事で、世津さんの笑顔が見れるならばいつでもお教えしますよ。」

私は嬉しくなって、顔をほころばせた。

「ありがとう。」

そう言うとマスターも穏やかに笑った。
と、急にマスターの顔が近づいて、ほんの2秒ほど唇が重なった。

半時遅れて、私の体温が首から上がっていくのが分かった。

「……マッ……!マスター!」

「クスクス。すいません。」

⏰:07/11/25 01:48 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#472 [向日葵]
顔が赤い私を引っ張る形で、マスターはいつもみたいに私をちゃんと家まで送ってくれた。

――――――――……

「マスターの誕生日明日なんですってね。」

土曜日。
本来なら中学生で部活をやっているのならば学校に行ってる時間に梨子ちゃんはいた。

「……ん?なんでそれ……。」

「昨日マスターアンタが出ていったって気づいてからあたしを放って出て行ったのよ。」

その言葉に少し胸が温かくなる。

⏰:07/11/25 01:52 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#473 [向日葵]
そんな私を気にもせず、梨子ちゃんは喋り続ける。

「で、気になって追い掛けたら思わぬ収穫ってわけ。ってかさ、キスされたとか超ムカつくんですけどっ。」

つまり尾行されてたんだマスター……。
しかもキスされてたトコまで見られてただなんて……っ。

「で、でも、私彼女なんだからキスぐらいするもん。」

とりあえず威厳みたいなものを見せ付けるために反論してみる。

効果はまぁまぁあったみたい。梨子ちゃんは悔しげに歯を食い縛っている。

⏰:07/11/25 01:56 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#474 [向日葵]
「アンタなんか……マスターにふさわしくないっ!」

「それを決めるのは貴方じゃない。」

その時マスターが奥から出てきた。

「お2人共仲がよろしいんですね。」

「ウンそうなのぉーっ!」

相変わらずの豹変ぶりは拍手を送りたくなる。
私には絶対不可能だ。
梨子ちゃんは猫なで声を続ける。

「マスター、そこのお姉さんから誕生日の事聞いたの!お祝いしたいんだけどダメェ?!」

⏰:07/11/25 02:01 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#475 [向日葵]
おいおいっ!それは私のセリフなんだけど?!

「そんなお気遣いいりませんよ。梨子さんがこうしていつも来て頂く事が何よりも宝物です。」

梨子ちゃんはお祝いを断られて明らかなシュンとしていた。
これはきっと演技でもなんでもなく、この子の素の部分だろう。

「じゃあ!私が一番にお祝いするっ!」

え?

「マスター!おめでとう!」

マスターは目を細めて喜んだ。

⏰:07/11/25 02:05 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#476 [向日葵]
私はそんなマスターと梨子ちゃんをぼんやり見ていた。

あ……また胸がザワザワする……。

「世津さん?」

私はハッとしてマスターを見た。
その横には「してやったり」とニヤけている梨子ちゃん。
私はあり得ないくらいの怒りの炎を燃やした。

「マスター。ごめんなさい、一旦帰りますっ。まだ朝なので送るのはいいですからっ!」

出て行く時に、マスターが私の名前を呼んだ気がした。

⏰:07/11/25 02:09 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#477 [向日葵]
――――――――――――

今日はここまでにします(◎・ω・◎)

>>283に感想板がありますんで、良ければ感想お願いします

⏰:07/11/25 02:10 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#478 [向日葵]
家に帰ると双子で妹の世衣せい)が私を出迎えてくれた。

「お帰りせっちゃんっ。マスターのトコに行ってたんじゃなかったの?」

「ウン……。ちょっとね。ねぇ世衣。ちょっと買い物行かない?」

「行くー!あたしね、服せっちゃんと見たかったんだぁ!!」

本当は買い物なんて気分じゃない。
でもなんとかして怒りの炎を沈めたかった。

マスターが追いかけてこない。
それもイライラしてる1つなのかもしれない。

⏰:07/11/26 01:18 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#479 [向日葵]
自分で「追いかけてくんな」と言ったようなものなのに……。
矛盾してるよね……。

――――――……

買い物から帰ってきてから私はずっと部屋に閉じ込もった。

モヤモヤ考えながらベッドの上で行ったり来たりとゴロゴロする。

「ハァー……。明日どうしよう……。」

チラッと、ベッド前に置いてあるミニテーブルの上を見た。

ラッピングされた小包が1つだけコソンとある。

⏰:07/11/26 01:22 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#480 [向日葵]
私はそれを今度はジーッと見つめた。

それはマスターへのプレゼントなのだ。

明日、渡したいんだけど……今日あんな態度を取ってしまったからなぁ……。

マスターも別にあれから何も言ってこないし……。
今度こそ……嫌われちゃったのかもしれない。

「短気は損気……。」

言葉の意味がよく分かる。

でも……私はウジウジするのが人一倍大っ嫌い。

時計を見ると、もうすぐ10時。
部屋を出てお風呂に入り、隅々まで洗う。

⏰:07/11/26 01:27 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#481 [向日葵]
そしてあがってから階段を駆け上り、ドアを閉める前に家の皆に聞こえるくらいの声で

「おやすみっ!」

と言った。

でも実際は寝るんじゃない。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

11時40分。

私はそろーっと部屋のドアを開けた。
家の中はシーンとしている。

ここで嬉しいのが私の家の就寝時間が早いって事だ。

⏰:07/11/26 01:30 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#482 [向日葵]
私がやる事。
それは1つ。

今からマスターに会いに行くのだ。

マスターに24歳おめでとうって、仲直りするつもりで言いに行く。

足音を出来るだけ立てず、玄関のドアを静かに閉めて、作戦へ移る。

とにかくダッシュでマスターの元へ。
秋になりかけの夜中は思っていたよりも涼しかった。

せっかくのお風呂も汗ばんだ肌には意味がないような気がしたけど、多分マスターは気にしないだろう。

⏰:07/11/26 01:34 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#483 [向日葵]
「ハァ……ハァ……あれ……?」

閉店時間はとっくに過ぎている筈の喫茶店に、灯りがまだついていた。
さすがにドアには「Close」の看板がかけてあったけど。

中を覗くと、マスターがまだカウンターにいた。

思い切って、ドアを軽くトントンと叩いてみる。

「こんな時間なのに誰だ。」と言う驚きは見せなかったマスターだが、訪問者が私と分かると目を見開いてすぐにドアを開けに来た。

「世津さんっ!何をなさってるんですかこんな時間にっ!」

⏰:07/11/26 01:39 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#484 [向日葵]
腕を引っ張って中へ入れてもらった。

マスターの少し怒った目を無視して、私は携帯の時計を見た。

「……50分……。」

「え?」

「マスター、文句は後で聞くから、黙って10分間私をここにいさせて。」

マスターは何が何だかと言った風に顔をしかめたが、直ぐに口元に笑みを戻した。

「お飲み物でも用意しますね。」

そう言ってカウンターに行ってしまった。

⏰:07/11/26 01:43 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#485 [向日葵]
今の会話で約2分……。

私の胸はウズウズして仕方なかった。

早く早くと体を揺らしたい気分。
でも貧乏揺すりは品が無いと思い、必死に高まる体を押さえつけた。

すると段々と喫茶店に甘い香りが漂ってきた。

カウンターを見ると丁度マスターと目が合い、私ににっこり微笑んだ。
それだけで私の心臓がドキンとする。

「な、何を作ってるの……?」

「もう少しお待ち下さい。すぐ出来ますから。」

⏰:07/11/26 01:51 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#486 [向日葵]
しばらくしてテーブルに出てきたのは

「キャラメルマキアーとです。いい香りでしょう。」

甘い匂いの原因はこれだった。

「あ……ありがとう……。」

一口飲もうとしたけど、見るからに熱そうなのでじっと見るだけにした。

マスターは私の向かい側に座って黙っている。

「――っ何か喋ってぇ!」

⏰:07/11/26 01:54 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#487 [向日葵]
沈黙に耐えきれなくなった私はマスターに懇願した。
いきなりの私の言葉に珍しくマスターがビクッとしていた。

「いえ……何かジリジリしておられましたんで、黙っていた方が良いと思いまして。」

「黙られた方がジリジリするわよ……。」

ため息をついて時間を見た。
只今56分……。

「梨子さんが……。」

その名前を聞いて、今度は私がビクッとしてしまった。
何しろ気まずくなった元はあの子にもあるのだから。

⏰:07/11/26 01:57 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#488 [向日葵]
「私を好きだと……おっしゃいました。」

「……うん。そう……。」

57分……。

マスターは指先を絡めたり外したりを繰り返している。
私はそれをじっと見ながら、マスターの次の言葉を待っている。

「失礼ながら……お断りさせて頂きました。」

「失礼ながら……?」

失礼って何?
断るのなんか……当たり前だと思ってた。

⏰:07/11/26 02:01 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#489 [向日葵]
「マスターは優しすぎる!」

ガタッと席を立った。
机に少し当たってしまい、振動でキャラメルマキアートがチャポンと音を立てた。

「マスターは、私が好きじゃないの?!なのに「失礼ながら」って……っ。マスターはあの子の事が少しでも好きだったとかそういう訳?!」

58分……。

「違いますよ。大切なお気持ちを私は踏みにじってしまったんです。だから」

「そういうのが、私は嫌なのっ!」

⏰:07/11/26 02:05 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#490 [向日葵]
ああ!私仲直りするつもりで来たのに何ケンカしちゃってるのよ!

……でもどうしよう……止まらない……。

「目の前で他の人の頭撫でたり、優しく笑ったりするの嫌なの!仕方ないって分かってる!それがマスターの仕事だもんっ!……でも納得出来ない所があるんだもん!」

「世津さ」

「マスターが私を大事にしてくれてるのは分かってるの!でも、そんな寛大に見れるほど私には余裕がないのっ!」

59分……。

あと1分と気づいた所で私は黙った。
一気に言いたい事を言ったから息が軽く上がっていた。

⏰:07/11/26 02:10 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#491 [向日葵]
感情が高ぶって、涙ぐんでるのが分かる。

マスターは、唖然と、だけどどこか冷静に私を見つめていた。

もう終りだ。
そんな気がした。

自分の隣に置いてあるプレゼントを掴んでマスターに押し付けた。

「プレゼントです……。本来なら私が一番におめでとうって、お祝いしてあげたかった……。」

そう告げて、私は席を立った。
現在、0時1分。

「じゃあ……帰りますんで……。」

⏰:07/11/26 02:14 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#492 [向日葵]
ドアを開けたと思うと、すぐにしまった。
ドアノブにかかっている私の手に、マスターの手が重なっている。

「マス……。」

マスターが後ろからゆっくり私を抱き締めた。
私はドキドキしながら固まる。

「私は……そんなにも世津さんを傷つけていたんですね……。」

マスターの腕の力が少し加わった。

「でも嬉しいんです。世津さんがここまで打ち明けて下さった事が……。」

⏰:07/11/26 02:17 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#493 [向日葵]
腕をほどいて、マスターに向き直った。
マスターはいつものように穏やかに笑っている。
手は、私の腰辺りを抱き締めている為、マスターとの距離は近かった。

「世津さんは何かいつも我慢してるようだったので不安だったんですよ。」

「だって……こんな私は嫌われると思ったから……。」

マスターはゆっくりと首を横に振った。

「嫌いになるだなんて……絶対にしませんよ。」

急に、マスターがとても愛しくなって、腕をマスターの首に巻き付けた。
マスターも抱き締め返してくれる。

⏰:07/11/26 02:23 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#494 [向日葵]
「あれ、いいですね。大事にしますよ。」

マスターが指してる“あれ”は、私が渡したプレゼント。
中身はコーヒーカップだ。

「無理しなくていいですよ。あんまり嬉しくないでしょ。」

「そんな事ないですよ。世津さんから頂いた物ですから……。」

「じゃあ使って?今から一緒にコーヒー飲みましょうよ。那月さん……。」

クスッとマスターの笑い声が聞こえた。
体を離すと、マスターの顔が少しだけ赤くなっていた。

⏰:07/11/26 02:28 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#495 [向日葵]
「世津さんから名前を呼ばれるのは、またとない幸福ですね……。」

私達はまた笑い合って、一緒にコーヒーを飲みながら時が経つのを忘れて話した。

ぬるくなってしまったキャラメルマキアートは、その日の後何回も飲んだけど、マスターの誕生日程、美味しいとは思わなかった。

一緒に飲んだからこそ、美味しくそして、優しい味がするんだと、後々に分かった。




*恋愛喫茶店*END

⏰:07/11/26 02:32 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#496 [向日葵]
ビー玉ラバーズ*スペシャルストーリー*
*黒蝶・蜜乙女*












「大っっ嫌い!!!!」

「なんだと?!」

冒頭から何事と思いますよね。
でも私はどうしても許せなかったんです。
なので……ケンカ勃発中……。

⏰:07/11/26 02:35 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#497 [向日葵]
どうもこんにちわー!
お久しぶりですっ!

専門学生になって早4ヶ月の本山 蜜(もとやま みつ)。18歳です。

何故私達がケンカしてるかと言うと、原因は皆さんご想像の通り……

・・・
アイツです。

そう。忘れもしない超超超美形でクサくてサブいセリフが大好きでスケベで横暴でミスター俺様!

その名も……

「セツナ!!」

そして私達がケンカをしてるかと言うと、今から数時間前に上ります……。

⏰:07/11/26 02:41 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#498 [向日葵]
――数時間前――

「くぁーっ!あっつーい……。」

夏休みに入った私は、いつもの様に家事を頑張っていました。
只今外で洗濯干してまぁーす!

「蜜。」

「なぁにラフィーユ。」

「俺とラフィでちょっくら蜜吸ってくるわ!」

ラフィーユとオウマ君は私の友達のような存在で、今は家に一緒に住んでます。ついでに学校も一緒だったりしています。

「そう。気をつけてね。」

⏰:07/11/26 02:45 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#499 [向日葵]
「おうよぉ!」

と2人は元気に飛んでいきました。
残りは……。

「おい蜜。」

ほーら来た。

「何ですかセツナ。」

「何ですかじゃない。いつになったら相手をしてくれるんだ。」

実はこの所、課題やら家事やら睡眠やらでセツナをおざなりにしすぎていて、セツナのご機嫌急降下……。

そりゃいいですよねセツナは。単位とか気にしなくていいんですもの。

⏰:07/11/26 02:49 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#500 [向日葵]
というか、セツナは学校には行ってない。
セツナはセツナで、あちらの世界で忙しいらしく、私達はほとんどがすれ違い状態だった。

ところが、私が夏休みと言う理由から、セツナも仕事を放棄して私にべったり……と言うことらしい。
しかし、私がそれどころしゃなかったって事で……。

「仕方ないじゃないですか。ラフィーユにはお料理やら何やら手伝ってもらってるんですから。たまには私がしないと。」

と言いながら洗濯物を干していると、「チッ」と聞こえよがしに聞こえた。

⏰:07/11/26 02:53 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#501 [向日葵]
「舌打ちしてイライラしてるリアクション見せても急ぎませんからね。」

「イライラさせて後でヒドイ事になるのはお前だからな蜜。」

それを思うと多少急ぎたくなるけど……。
でも私も忙しいんだいっ!

反抗心を持ちながら、後の事を聞かされた私はどこか焦りながら洗濯を干し終えた。

「フー……。オッケーオッケー。」

と思ったら。

「うわぁぁ!」

⏰:07/11/26 02:56 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#502 [向日葵]
急にセツナが私を抱き上げて家へ連れて行った。

無言でソファーに降ろして、履いていた庭用スリッパを脱がされた。

あぁ……ヒドイ事されるのね……。

「さて蜜……。償いはしてもらえるだろうなぁ?」

私は黙って肯定も否定もしなかった。

どうにかしてこの場を切り抜けようと頭を働かす。……けど、思考の回転よりまセツナの手が私の顔を包む方が早かった。

「私だって、いつまでもセツナの思い通りだとか思わないで下さいっ。」

⏰:07/11/26 03:01 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#503 [向日葵]
――――――――――――

今日はここまでにします(◎・ω・◎)

>>283に感想板がありますんで、良ければ感想お願いします

⏰:07/11/26 03:02 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#504 [向日葵]
「蜜は強がりだからな。俺がくちづけ1つすればいい子になるだろう。」

「私いい子だから必要ありませーん。」

ベーッと舌を出すと流石のセツナも頭にカチンと来たらしい。
目を細めて目元をピクッとさせた。

その瞬間……

「ん……っ!」

唇が重なる。
顔を掴まれてるせいで逃れることすら許されない。

私の思考は段々真っ白になっていく。
気温が手伝って私の体温が上がっていく。

⏰:07/11/26 23:57 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#505 [向日葵]
少しだけ口からクチュッといやらしい音がしたかと思うと、セツナの唇は離れた。
息が上がってる私に対して、セツナは余裕しゃくしゃくだ。

「この……スケベ蝶々……っ!」

「そのスケベ蝶々とやらを好きなのはお前だろ。」

勝ったと言わんばかりに笑い、私を見下ろす。
それが何だか気に入らない……。
……よし。

私はまだフラつく足を叱咤しながら立ち上がり、階段へと行った。

⏰:07/11/27 00:01 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#506 [向日葵]
後ろから私の足取りを面白おかしく思いながら、セツナはついてくる。

階段を上がり、自分の部屋に入る。
と、その前に……

「セツナ。ここから先、立ち入り禁止ですから。」

「は?何を言ってるんだ。」

「ラフィーユ達が帰ってくるまで私は課題の残りやってしまいますから。」

「また課題か?!お前俺を暇で仕方なくして殺す気か?!」

そんな事で死んだ人は見た事ありません。

⏰:07/11/27 00:05 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#507 [向日葵]
私はそんな不満タラタラのセツナをギロリと睨み、もう一言。

「早く課題が終わればそれだけセツナと遊べるんですよ?なら我慢です!忍耐って言うのがセツナには足りないです。」

そう言ってからバタンと扉を閉めた。

私勝利ぃぃっ!!

と高く拳を上げた。

「納得出来んっ!」

セツナ再び登場。
まだ扉前にいた私はセツナのせいで思いきり後頭部を打った。

⏰:07/11/27 00:09 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#508 [向日葵]
「今遊んでも別にかまわんだろ!なのに何で俺ばかり我慢しなきゃならないんだ!」

「とりあえず頭ぶつけた事謝って下さい。」

そんな私の非難の声も聞かず、セツナは私のベッドにボスッと寝転がった。
長い足を組み、無言でも分かるこの圧迫感……。

「私が納得するまでここに居座ろうたってそうはいきませんよ。」

セツナをじとっと睨みながら言った。
セツナは涼しげな顔で目を瞑っている。

どうやら動く気がないらしい……。

⏰:07/11/27 00:14 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#509 [向日葵]
――――――――――――

今日はここまでにします

>>283に感想板がありますんで、良ければ感想お願いします

⏰:07/11/27 00:15 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#510 [向日葵]
そういえば……説明するの忘れてましたね。
初めて私達を見る方は、さっきから「あちらの世界」やら、「飛んでいった」だ、「エロ蝶々」だと言っても何がなんだか分からないでしょう。

簡単にご説明しますっ。
あまりにファンタジックなので「何が何だか」と思うかもですが、頑張ってついて来てください!

ここに寝ているセツナという人物。
実は黒蝶族という自然界ではほぼ頂点に近い存在の方なんです。

……はい!そこで最早「はい?」とか思わないで下さい!私だって最初は信じられなかったんですから!!

⏰:07/11/27 22:11 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#511 [向日葵]
と言うわけで話を続けます。

彼等には伝説の存在、「蜜乙女」と言う人がいます。
なんでもその人は黒蝶族の運命の人らしいのですが、現れるのはとても稀な存在らしいです。

そこで私とセツナの関係に結びつくのです。

早い話が私がその「蜜乙女」だったんです。

最初、私はそんな義務的関係は断固として受け付けませんでしたが……。
セツナは「蜜乙女」としてではなくちゃんと「私」として見てくれてるんです。

⏰:07/11/27 22:16 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#512 [向日葵]
そんなセツナの真っ直ぐな想いに惹かれた私は……今じゃこんな関係で……。

家に住んでいるのを説明するのはまた長引いてしまうので……本編を読んで下さると嬉しいです。(宣伝?)

と言う事で、特別編の話に戻りますっ。




一向に動く気配がないセツナを見かねて、セツナの両手を引っ張ってみる。

「出て…って…くだ…さい…よっっ!」

「いーやーだーねっ!」

⏰:07/11/27 22:20 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#513 [向日葵]
「課題が済まないでしょ!私を留年さす気ですか!」

すると少しずつ引きずられているセツナは、不満そうに顔を歪めると、さっと私の手を払い、起き上がった。

一際長い指でパチンと鳴らすと、急に風が吹いてきた。

「あ!風さん達!」


風さんとは、セツナの下僕の妖精さんで、ほんの2センチ程しかないんです。

セツナはなにやら風さんにこしょこしょ話。
この時、無理矢理にでも聞いておけば良かった……。

⏰:07/11/27 22:25 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#514 [向日葵]
私が黙って見ていると、風さん達は私の机に移動。

すると……

ビュオォォォォ!!!!

急な突風に、部屋の中があれる。
目も開けれない状態の中、私は見てしまった。

空気抜けの為に開けておいた窓から、課題専用の紙が飛ばされてしまうのを。

「!!……っちょ、待ってぇ!!」

叫ぶ頃には、風さん達と一緒に、紙はどこかへ飛んでいってしまった。

唖然と窓の外を見る。

⏰:07/11/27 22:29 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#515 [向日葵]
しばらくそうしてから、沸々と胸の中で何かが煮えてきた。

振り向くと、腕を組んで「上出来」と言わんばかりにセツナは頷いていた。

「セェーツゥーナァー……。」

自分でも驚く程の低い声。
でもどんなに凄味をかけてもセツナの顔はケロリとしている。

私はそんなセツナにさらに怒りを覚えた。

「何してんですか!いくら何でもやっていい事と悪い事があるんですよ?!」

⏰:07/11/27 22:33 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#516 [向日葵]
――――――――――――

一旦キリます(◎・ω・◎)


>>283に感想板がありますんで、良ければ感想お願いします

⏰:07/11/27 22:34 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#517 [向日葵]
「言っただろ。ヒドイ事するって。」

イラーッ!として歯ぎしりした私は息を深く吸って半ば叫ぶようにセツナに言った。

「大っっ嫌い!!」

―――――――……

ここで冒頭に戻る訳でございます。
長い前フリすいません。

私は家を出て、紙が飛んでいったと思われる方へ探しに行ってる最中です。

唸るような暑さにぐったりしていますが、そうもいかない。学生にとって単位は命です!

⏰:07/11/28 00:16 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#518 [向日葵]
今回はセツナから謝ってくるまで絶対に許さない!
いくらあの魅力満点の何も考えられないくちづけで説得しようったってそうはいかないんだから……っ!

「ってか……。」

どこまで飛んで行っちゃったのよーぅ……。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ウィー!ただいまーっとぁ!」

オウマとラフィーユが帰って来た。
だが、いつも「おかえりなさい」と向かえる蜜がいない。
いるのはソファーにブスーッとしたセツナだけ。

⏰:07/11/28 00:20 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#519 [向日葵]
「セツナ。蜜、どこいる。」

ラフィーユがセツナに話かける。
が、セツナは「ヘッ!」と言ってそっぽを向く。

「あんな奴もう知らんっ。最近毎日“課題課題”とうるさくて敵わん!」

「なんだケンカかよー。セツナも少しは蜜の事考えてやれよなぁ。」

セツナはオウマをギンッと睨み、目をつり上げる。
その様子に肩をすくめて少し呆れるオウマ。

「セツナ。夏、危険。」

「なんでだ?」

「暑い。水分不足する。日射し、強い。」

⏰:07/11/28 00:25 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#520 [向日葵]
「知るかよ。」

セツナの態度に、ラフィーユがムカッと来たらしく、セツナの前までくると、座っているソファーを思いきり蹴った。

細く長い足からは考えられないほどの脚力はまさしく人外特有のもの。
セツナの座っているソファーはグラグラと揺れた。
まるで大きなロッキングチェアーだ。

「お前……何をするんだ!」

「セツナの態度、良くない。改めるべき。」

「お前誰に物を言ってやがる……。」

⏰:07/11/28 00:29 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#521 [向日葵]
ラフィーユはその言葉の意味を理解しつつも痛くもかゆくもないと言う風に涼しげな、だけど厳しい顔でセツナを睨む。

一方のセツナも、自分を馬鹿にされたような扱いを受け、イライラした目つきでラフィーユを睨む。

そんな2人の間から、オウマがおずおずとセツナに話しかける。

「あのさセツナ。なんでセツナがイライラしてるか蜜は知ってるのか?」

「知ってるだろ。それぐらい。」

ぶっきらぼうに言い捨てて、ソファーに深く座る。

⏰:07/11/28 00:36 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#522 [向日葵]
――――――――――――

今日はここまでにします

>>283に感想板がありますんで、良ければ感想お願いします

⏰:07/11/28 00:37 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#523 [向日葵]
「前にも言ったけどさ、蜜は口でちゃんと伝えなきゃ嫌だと思うぞ?」

セツナは肩をピクッと動かせた。

ずっと黙ってセツナを睨みつけていたラフィーユも口を開く。

「お互い好き、だからと言って、何も言わない。それ一番いけない。」

「そーそー。何も言わず全て分かれだなんて、ちょっと強引だと思うぞ。」

セツナはハァー……っと深くため息をついて目を閉じた。
そして暫くして……

「蜜を探してくる……。」

⏰:07/12/02 11:48 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#524 [向日葵]
その言葉に、オウマとラフィーユは微笑んだ。

「俺達も手伝おうか?」

「いや、そんな遠くには行ってないだろうし。飛ぶ必要もないだろうから。俺だけで行く。」

そう言って立ち上がり、玄関へ向かった。

――――――……

「あっ……つい……。」

もうどれくらい歩いた……?

滝のように汗を流しながら、紙を探し回る。

そんな事をしなくてもコピーを取らせてもらえば……と最初考えた。

⏰:07/12/02 11:53 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#525 [向日葵]
でも、ラフィーユもオウマ君もいつの間にかパッパと終らしてる為コピーは不可。他の友達で地元の人がいない為これも不可。

……となれば

歩くしかないと言う訳だ。

少し認めるのであれば、意地が入ってるのは認める。
見つけて見返してやりたい。
もちろん誰かと言えばこんな事をした張本人だ。

「……っ?」

突然、めまいがした。

原因はなんとなく分かる。長時間に太陽に当たりすぎた。

⏰:07/12/02 11:57 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#526 [向日葵]
もう1時間くらいは歩いてるかな。
どこか日陰……。

と言っても、周りには家ばかり。
ちょっと休めそうな公園が見当たらない。

まだそんなフラフラになってる訳でもないし、探してみよう。

だけど歩く内に、めまいの回数が増えてきた。
本能的にヤバイと感じる。

「……あ……。」

バス停のベンチを発見。
近くの木が木陰になってる。

⏰:07/12/02 12:02 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#527 [向日葵]
「ふー……。」

助かった……けど休憩したらすぐに探しにいかなきゃ。
夏だから日が長いとは言え夕暮れになる前には見つけたい。

そう思うのに体が重い……。

少しでも早く疲れがとれるようにと目を閉じたけれど、目を閉じても頭がくらくらしてるような気がした。

早く……立たなきゃ……。

――――――――……

ふと意識が戻る。
まだ目は閉じたままだ。
世界が暗い。
でも瞼ごしに分かる太陽の光。

⏰:07/12/02 12:07 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#528 [向日葵]
そよそよと風が吹いている。とても心地よい。

私寝ちゃったのか……。
……ん……?

ぼやける頭の中で、気がついた。
誰かが私を抱き上げていると。

うっすら目を開けた。

顔の近くには、逆光で見えにくいあの綺麗な顔があった。

「セツ……ナ……?」

セツナは私に顔を向けると、優しく微笑んでくれた。

「心配するな。眠っておけ。」

⏰:07/12/02 12:13 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#529 [向日葵]
「はい……。」

気だるさがまだ抜けない私は素直に言う事を聞いて目を瞑った。

そして意識はまた闇の中へ……。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ヒヤリとした物が頭に乗った気がした。

あ……アレは夢だったのかな?
セツナが私を運んでくれていたんだけど……。

でもさっきのような眩しさは感じない。
それはやっぱりまだ木陰にいるから?

⏰:07/12/02 12:17 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#530 [向日葵]
「セツナー蜜大丈夫かー?」

オウマ君?

「多分日射病だろう。ゆっくり休ませる。」

ガチャ

「セツナ。あった。ここ置いておく。オウマ、行くぞ。」

トタトタ……パタン……。

音しか聞こえない。
でも分かる。

アレは夢じゃなく現実だったんだ。
私は今きっと、自分の部屋にいる。

⏰:07/12/02 12:21 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#531 [向日葵]
そう思ってると、さらって頭を撫でられた。

それを合図に、私は目をゆっくり開く。

「あ……。目、覚めたか?気分はどうだ?」

少し横を見ると、側にはセツナがいた。

「私……。」

「とりあえず水だ。飲んどけ。」

セツナは手をかして私を起こすと、ガラスのコップに入った水を渡してくれた。

無意識ながら喉が渇いていたのか、私は水をゆっくり一気飲みした。

⏰:07/12/02 12:34 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#532 [向日葵]
セツナは飲み終えたのを見て、私のコップを取ると、また私を寝かせた。

「……。飛ばした紙は、見つけたからな。」

「え……?」

「俺、蜜が課題を終えるまで、あちらの世界にいる事にする。」

セツナは私が水を飲んでいたようにゆっくり一気に喋りだした。

「邪魔をしたのは悪かった。反省してる。蜜をこんなにしたのも自分が悪いしな。……だから、また頃合いを見てこちらへ来る事にする。」

「そんな……っ。」

⏰:07/12/02 12:39 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#533 [向日葵]
セツナは薄く笑って私の頭をポンポンと叩いた。
私はその手を取る。

「そんな事しなくていいですよ?セツナがじっとしといてくれるなら」

「寂しかったんだ。」

うつ向いてそう言うセツナを、私は上体を起こして見つめた。

寂しかった?
それはどういう事だろう……。

「高校の時のように、俺はお前やラフィーユ達とは共に行動を取ってないからな……。1人、おいてきぼりされた気分だった。」

⏰:07/12/02 12:44 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#534 [向日葵]
確かに、セツナはあちらとこちらを行ったり来たり。たまに来た時に私達がいない場合は、大抵が学校だった。
高校時代、あれだけ一緒にいた私達は、会う時間が確実に減っていたのは目に見えていた。
そんな中、私はセツナに構う事はほとんどなかった。

すれ違いが、セツナを寂しくしてたのかもしれない。

「だからと言って、邪魔する事はよくないよな。すまん……。」

いつも……自身満々で、俺様で、偉そうなセツナが、今はこんなにも弱々しい……。

⏰:07/12/02 12:49 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#535 [向日葵]
そうしたのは紛れもなく、私だ。

私は手を伸ばして、ギュッとセツナの頭を抱き締めた。

「ごめんなさい……。そんなに寂しくしてたのに気がつかなくて……。」

やる事は間違いだらけの時もあるけど、セツナがどれほど私を好きでいてくれてるかは知ってる。

こんなに弱々しい姿を見せてくれるのも、きっと私だけだ。

そんな姿が、とても愛しい……。

「課題、早く済ませますから……残った時間、沢山一緒にいましょ……?」

⏰:07/12/02 12:54 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#536 [向日葵]
「……うん。」

どうしたんだろう……セツナが本当に弱い……。
こんなに素直に……しかも少し可愛いく感じる返事をするだなんて……。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ご飯を食べたり、お風呂に入ったり、全て終らせて寝る準備をする。

「セツナ、今日は一緒に寝ません?」

例え、私の夏休みを利用してあちらの世界での仕事をほったらかしにしたとは言え、セツナは夜になると少しでもその仕事を片付けに行っていた。

⏰:07/12/02 13:02 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#537 [向日葵]
窓枠に座って空を眺めているセツナに私は言ってみた。
セツナは不思議そうに私を見つめる。
断られるかもと言う不安が胸によぎる。

「あぁ……いいけど。」

とりあえずホッとして、電気を消した。
布団に入ると、一緒になってセツナも入ってきた。

「珍しいな。蜜がそう言うだなんて。」

「あのねセツナ。私だって、セツナと一緒にいたいんですよ?こうやって……。」

と言って私はセツナに寄って、胸元にピタッとくっついた。

⏰:07/12/02 13:16 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#538 [向日葵]
「寄り添いたいですし……。」

セツナは私をゆっくりと抱き締めた。
そして何か切なげにため息をついた。

「私がセツナをワザと拒否していたとでもお思いで?」

「……少し。」

口調はなんだか拗ねていた。
それがおかしくて、私はクスクス笑った。
そんな私の顔を、顎に指を添えて上げると、優しく唇を重ねた。

「蜜……好きだ……。」

⏰:07/12/02 13:21 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#539 [向日葵]
「私もですよ……。」

するとセツナがじっと私を見つめた。

「?何か?」

「俺がどれだけお前が大事か、言った方がいいか?」

頭にハテナを浮かばせながら私はセツナを見つめ返す。

「どうしてです?」

「オウマやラフィーユに言われた。蜜は何でも言った方がいいとな。」

「ふぅん。」と呟きながら、私はセツナの胸におでこを当てた。

⏰:07/12/02 13:24 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#540 [向日葵]
セツナは私の頭のてっぺんに口を当てている。

しばらく考えた。

確かに何でも言ってもらえるのはとても嬉しい。
今みたいに「好き」と言ってくれるなら尚更。

でも、セツナの気持ちは痛い程分かる。

「言わなくても、セツナの気持ちは伝わってます。ただ、寂しかったり、自分がどうして欲しいかとかは言って欲しいかもですねー。」

「そうか……。」

なんだかまた私は笑えた。

頭上でセツナが不機嫌そうに「ん?」と唸るのが聞こえた。

⏰:07/12/02 13:29 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#541 [向日葵]
――――――――――――

キリます(◎・ω・◎)

>>283に感想板がありますんで、よければ感想お願いします

⏰:07/12/02 13:31 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#542 [向日葵]
「セツナは色々器用なくせに変な所不器用ですよね。」

私がまだくすくす笑っていると、セツナはスッと表情を引き締めた。

「でも……お前はちゃんとそれを教えてくれる。それがどんなに嬉しいか、知ってるか……?」

ついつい胸がドキッとしてしまった。

私はまたセツナをじって見つめた。
私だって、セツナに色んな事を教えてもらった。

例えば……こんなにも人を好きになる気持ちだとか……。

⏰:07/12/04 01:13 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#543 [向日葵]
「足りない部分は、これから補い合いましょうね。」

まだまだ先は長いんですから……。

私の言葉の意味を理解したセツナは、私が大好きなあの優しい笑みを浮かべて頭を撫でてくれた。

まだまだ歩き始めたばかりの私達。
でもこれからも隣には絶対セツナがいる。

それならどんな事も乗り越えていける気がするよ。

⏰:07/12/04 01:18 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#544 [向日葵]
そして、いつか、何も言わなくても分かりあえるようになったらいいね。

でも時々「好き」と囁いて欲しいかな……。

私は今日も

大好きな人と学び、笑いあいながら

未来へ歩いていく……。





黒蝶・蜜乙女*END*

⏰:07/12/04 01:22 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#545 [向日葵]
ビー玉ラバーズ*スペシャルストーリー*
*―温―*










寒……。
そりゃそうか。もう12月だ。
なのにベランダに出る馬鹿がどこにいるんだろうか。

……いやここにいるんだけども……。

⏰:07/12/04 01:24 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#546 [向日葵]
「コラ紅葉!!」

襟を後ろから掴まれ、私は強制的に部屋へ連れていかれた。

「あのね静流。私は猫じゃないの。こんな扱いやめてもらえないかしら。」

襟を正しながら私は静流を睨みつけた。
静流は肩をすくませて呆れたように私を見る。

「似たようなもんじゃん。紅葉猫っぽいし。」

その言葉に、少し頭がイラッとした。

私が静流宅へ拾われてから約半年が過ぎた。

⏰:07/12/04 01:28 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#547 [向日葵]
そして今始めての冬を迎えようとしている。

一応自己紹介しておくと、私の名前は紅葉(くれは)。15歳。

梅雨の時期、虐待を受けた挙句ゴミ捨て場に捨てられた私を拾ってくれたのが、さっき私に失礼なことをした静流(しずる)(17歳)の父だった。

それから色々あって、まぁ……私と静流は恋人同士でもある。

「静流君。紅葉ちゃん。今年のイルミネーションどうするの?」

ボサボサした髪に丸眼鏡。この人こそ、拾ってくれた張本人、源さん(げんさん)だ。

⏰:07/12/04 01:34 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#548 [向日葵]
「いるみねぃしょん?」

明らかに棒読みだ。

それもその筈。

私には何のことだかさっぱり分かってないからだ。
いや、イルミネーションの意味くらいは分かるけど、イルミネーションがどうかしたのかと言う話であって……。

「毎年12月中に街の方でイルミネーションやってるんだ。結構有名でデートスポットとかに選ばれてるんだよ。」

デートスポット……っ?!

静流の説明に私は鳥肌がたった。

⏰:07/12/04 01:41 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#549 [向日葵]
私にそんなうすら寒い場所へ行けと……っ?!
冗談じゃない……!
そんなスポットで注目されてる所なんかまっぴらゴメンだ。

「紅葉行かない?丁度もうすぐクリスマスだし。」

「私仏教だからいかない。」

「お前は中年のババアか……。何だその理屈。」

クリスマスなんて、とうの昔に飽きた。
と言うか……虐待を受け始めてからは、イベント事とかどうでもよくなった……。

「ってか静流前言ってなかったっけ。クリスマスの日は強制参加のクラスクリスマス会があるって。」

⏰:07/12/04 01:47 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#550 [向日葵]
――――――――――――

今日はここまでにします(◎・ω・◎)

>>283に感想板がありますんで、よければ感想お願いします

⏰:07/12/04 01:47 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#551 [向日葵]
アンカーです

>>1-100>>101-200>>201-300>>301-400>>401-500>>501-551

⏰:07/12/04 07:55 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#552 [向日葵]
アンカーです

>>1-100
>>101-200
>>201-300
>>301-400
>>401-500
>>501-551

⏰:07/12/04 07:56 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#553 [向日葵]
「そんなん強制とかいいながら来ない奴だっているよ。ま、俺は抜けるの簡単だろうな。なんてったって主催者は香月だから。」

香月さんは静流の友達で、私の良き理解者。
香月さんには、返せきれない程の恩がある。

「私は行かないわよ。クリスマスだなんとお子様がやる事じゃない。」

「俺よりお子様が何を言うか。いいじゃん。行こうよ。ベランダからの景色ばっかじゃつまんないっしょ?」

「別に。」

素直ないい子じゃない私に、静流は段々イライラしてきたみたい。笑顔が堅い。

⏰:07/12/06 00:33 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#554 [向日葵]
「これだけ頭下げてんのに行かないってかお前は。」

「頭下げてないじゃない。」

さてそろそろ限界らしい。
静流の口の端がピクピク痙攣し始めた。

ケンカしたい訳じゃないけど、私は“イルミネーション”なんか行きたくもない。

「たまには自分が折れてやろうとかさ……思わない訳?」

「折れて自分の特になるならとっくの昔に折れてるわよ。」

⏰:07/12/06 00:37 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#555 [向日葵]
カーン。

ケンカ開始のゴングが2人の頭に鳴り響く。
こうなってしまえば決着がつくまで誰にも止められない。

「俺は紅葉が楽しむと思って言ってんのになんでそんな態度とられなきゃなんないんだよ!」

「楽しめないから行かないっつってんの!クリスマス=何かイルミネーション的な物って方程式なんかちゃんちゃらおかしいわよ!」

第一……私には嫌な思い出があった。

「誰もイルミネーションにこだわってねーよ!」

「嘘だね!」

「違う!」

⏰:07/12/06 00:42 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#556 [向日葵]
ガルルと唸り声をあげながらしばらく睨み合い、「ふんっ!」と同時にそっぽを向く。
お決まりのケンカの仕方なので、源さんもただ見てるだけで止めになど入らない。

あぁあ……またやっちゃったよ……。

――――――――……

*****************

次の日。
学校に行きながら俺はウンウン悩んでいた。

せっかくのクリスマスに自分の彼女は興味皆無って……。

⏰:07/12/06 00:46 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#557 [向日葵]
挙げ句、ケンカ……。

「あぁぁぁ……。」

下駄箱に反省のポーズのように手をついて悩みに落ち込みをプラスさせる。

あそこまで固くなに嫌がると言うことは、もしかしたら昔何かあったのかもしれない。
訳を聞きたい所だが、果たしてちゃんと話してくれるんだろうか……?

「……どこの猿軍団出身だお前は。」

「あ、香月。」

香月がグレーのマフラーの垂れてしまった方をうっとおし気に後ろへ巻き直しながら俺に近づいてきた。

⏰:07/12/06 00:52 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#558 [向日葵]
――――――――――――

少しですが今日はここまでにします

>>283に感想板がありますんでよければ感想お願いします

⏰:07/12/06 00:53 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#559 [向日葵]
「紅葉が反抗期で……。」

「んなのいつも似たようなもんじゃん。」

あながち否定できないこのツラさ。
紅葉が反抗期のような態度をとるなんて最早日常茶飯事なのだ。

「なぁ香月。俺ー……クリスマス会……。」

「へー。抜けるとか言う気かお前。」

学校一の人気者の流し目のような鋭く、それでいて茶目っ気を含んだ視線が俺を捕らえる。

その視線に思わず口にチャックする仕草をした。

⏰:07/12/08 23:13 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#560 [向日葵]
その様子に満足した香月はにっこり笑って「そーそー。」と頷いた。

「俺様主催っつーことをよーく肝に銘じとけよ静流。クリスマス1人で過ごす事になっちまったのも、お前らがくっついちまったせいなんだからな。」

それを聞いて、俺は押し黙った。
香月は、色々協力してくれたのに、俺は……傷つけてしまった……。

暗くなった俺の表情を見て、香月は俺の頭を派手に数回叩いた。

「冗談だっつーの。分かれよな。この俺が引きずってるとでも思った訳?」

⏰:07/12/08 23:18 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#561 [向日葵]
余裕たっぷりの笑顔に、俺は苦笑いした。

香月は俺の1回りも2回りも器がデカイ……。
きっと一生敵わないんだろうな……。

********************

「イルミネーション行かなきゃ駄目?」

源さんに尋ねた。
キッチンで洗い物をしていた源さんは「んー……」と唸る。

「逆に紅葉ちゃんは何で行きたくないの?」

笑顔で聞いてくる源さんに悪気はない。
でも私は思い出したくもない事を蒸し返されたようでイラッとした。

⏰:07/12/08 23:26 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#562 [向日葵]
私はしばらく黙ったままその場に立ち、くるりと向きを変えて寒い冬のベランダへと向かった。

空を見上げながら、その悲しい思い出をたぐり寄せる。

どうして楽しい思い出はかすんでしまう程儚いのに、悲しい思い出はこんなにも鮮明なのだろう。

――――
―――――――……

丁度、6年生の頃だった。

虐待は日に日に悪化。止める気配すら一向に無かった。

⏰:07/12/08 23:29 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#563 [向日葵]
今日も帰って来てから虐待の時間。
最早抵抗するのを止めて、ただ殴られるだけの毎日に変わった時の事だった。

今日は終業式。24日。
誰もがクリスマスと言うイベントに胸踊らせている。

私には、クリスマスの意味すらもう無い。
一生、殴られるのだと。

そんな思いで、ランドセルを背負った時だった。

ガチャ!

「!!」

無表情で、母さんが私の部屋へやって来た。

⏰:07/12/08 23:33 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#564 [向日葵]
そんな……あんまりだ……。
それでなくても明日から冬休み。
学校と言う逃げ場は無くなるのに……。
朝から……殴られる……。

もちろん私は恐怖で凍りつき、顔は真っ青になった。
そんな私に、母さんは歩みよる。

もう駄目だ……っ!

目を瞑ったその時だった。

母さんの香りを身近に感じた。それに、体温も。

どうして?信じられない……。
お母さんが、私を抱きしめてる……。

⏰:07/12/08 23:37 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#565 [向日葵]
「ごめんね紅葉……。いつもぶったりして……。痛かったよね……。」

母さんの顔を見ると、悲しそうな笑みを見せていた。

夢みたいだ。
母さんが私を殴らないなんて……。謝るだなんて……。

私はその嬉しさに涙を流した。

元の母さんに戻ってくれた。これからまた楽しい毎日がやってくる。

諦めていた希望が、戻り始めていた。

「仲直りの印に、駅前の話題になってるイルミネーション見に行こうね。母さん仕事終わったらすぐに行くから。」

⏰:07/12/08 23:41 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#566 [向日葵]
この言葉……ちゃんと覚えてる。聞き間違えるなんて絶対ない。

私は珍しく笑顔で登校。

終業式が終わって、家にランドセルを置き、駅前まで待ちきれないように走っていった。

まだ昼前なので、駅前のイルミネーションにはただの電飾しかない。

でも私の心は、正にイルミネーションのようにキラキラ輝いていた。

母さんの仕事はいつも昼過ぎには終わる。
私は母さんが来てからのお話を沢山考えていた。

⏰:07/12/08 23:44 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#567 [向日葵]
この前、クラスでクリスマス会やった事。苦手な理科で100点を取った事。体育で、鉄棒の見本を見せた事。

言いたい事が、山ほどあった。
それを考えていると、あっという間に時間は過ぎていった。

現在、1時。

母さんはそろそろ来るかもしれない。

母さんが来そうな所を、そわそわと体を揺らしながら見つめる。

―――1時半。

仕事……長引いてるのかな?
母さん……?

⏰:07/12/08 23:48 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#568 [向日葵]
待っても待っても母さんは来なかった。
お金なんか持ってなかったから、冷えた体を温めるための飲み物も買えず、私はひたすら母さんを待ち続けた。

とうとう辺りは暗くなり、イルミネーションが色とりどりに光始める。

見にくる人達、笑い合う人達、「綺麗だね」といい合う人達。

そんな中、孤独に震えてる子供が……



1人……。

時計を見ると、もう8時を差していた。

⏰:07/12/09 01:57 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#569 [向日葵]
「君?」

呼ばれる方に、私は見た。
声をかけたのは警察官だった。

「ずっとここにいるけど何をしてるの?誰か待ってるの?それとも今から塾か何か?」

「母さん……来ない……。」

「家はどこかな?送ってあげよう。」

住所を教えると、警察官は私と手を繋いで家へと向かった。

その手の温かさは、今でも覚えている。

⏰:07/12/09 02:01 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#570 [向日葵]
家に帰ると、灯りがともっていた。

え……。
母さん……?

警察官がチャイムを鳴らすと、愛想良く母さんが出てきた。

「お宅の娘さんですよね?駅前でずっといましたよ?」

母さんは私をじっと見つめる。
そして悲しそうに笑った。

私はその顔を見ていち早く気付いた。




騙されたのだと。

⏰:07/12/09 02:06 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#571 [向日葵]
「すいませんお巡りさん……。この子精神状態がよくなくて、よく出歩くんですよ……。」

母さんが警察官に話してる間、全て私は把握出来た。

これも虐待の1つ。

希望を抱かせて一気に奈落の底へ突き落とす。
その絶望的な私に、母さんはまた一興する。

その証拠に、悲しそうな笑みは、私を哀れんでじゃない。

面白くてたまらないといった、ほくそ笑み……。

警察官との会話が終り、母さんは私の腕を引っ張ると、壁に私を叩きつけて一言。

⏰:07/12/09 02:11 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#572 [向日葵]
「バーカ。」

高らかに笑いながら、夜の暴力が始まる……。

――――
――――――……

「……っっ!」

寒さじゃない寒気が、私の体を駆け巡る。

両腕を強く抱いて、私はその場に座りこんだ。

当時の事を思い出すのはすごく辛い……。

自分の無力さを思い知らされ、あの鈍い痛みが、体に流れる。

私は少し息を乱した。
口からは白くなった吐息が漏れる。

⏰:07/12/09 02:16 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#573 [向日葵]
――――――――――――

今日はここまでです(。・ω・。)

>>283に感想板がありますんで、よければ感想お願いします

⏰:07/12/09 02:17 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#574 [向日葵]
「ただいまー。」

静流が帰ってきた。
私は振り向いて、「おかえり」の一言も言えないでいた。

それはケンカした気まずさとかじゃなくて……。

「おかえり。ちょっと今から出かけるからお留守番お願いしますね。」

「ハイヨー。」

そう言って、源さんは階段を降りて行った。

リビングに沈黙が流れる。

思い出の恐怖は、まだ私の心臓を休ませてはくれない。

⏰:07/12/09 13:18 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#575 [向日葵]
「紅葉……寒いから中入れ。」

静流の声は落ち着いていた。
まだ怒ってると思ってたから、口はその内聞くだろうと思って。

でも、反抗心からでなく、ただ単にその場から動けない私は、結果的に静流の言葉を無視して震えてるだけだった。

キシッとフローリングが軋んだ。
静流が近づいてくる気配を感じる。

体育座りしている足を包んでいる私の腕を見つめていた私の視界に、静流の手が出現する。

⏰:07/12/09 13:23 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#576 [向日葵]
そしてそのまま私をギュッと抱き締めた。

静流の体温が、冷えた体に心地いい。

「どうかした?まだ怒ってんの?」

優しく私に声をかける静流。
私は首を振って否定した。

「じゃあどうしたのさ。」

私は静流に向き直って、一瞬見つめてから静流の胸に抱きついた。
静流も優しく包んでくれる。

「私は……イルミネーションが恐いの……。」

⏰:07/12/09 13:28 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#577 [向日葵]
話を聞いてるだけだと、「何言ってんだコイツ」と反応されるだろう。
でも静流は、静かに「うん。」と言って、話の先を促す。

「だから静流と出かけるのが嫌なんじゃない。私の問題だから……だから……。」

言葉が途切れると、静流はゆっくり頭を撫でてくれた。

「分かったから。……大丈夫だよ。」

静流から離れて、顔を覗くと、理解ある顔で、優しく微笑んでくれていた。

無意識に、何故かホッとする。

⏰:07/12/11 11:06 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#578 [向日葵]
「辛いのに話してくれてありがとう。」

静流の掌が、私の頬を包む。外気で冷えた私の頬に、静流の掌はとても温かく感じた。

「出かけるのだったら別にいいの。まぁどちらにしても、静流はクリスマスは香月さんに監禁状態だとは思うけどね。」

静流はパチパチと瞬きした。

「なんでそんな事分かるの?」

「香月さんから謝罪メールが来たの。」

静流は「なるほど。」と呟く。

⏰:07/12/11 11:11 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#579 [向日葵]
静流は私の顔から手を離した。温かくなくなった私の頬はスースーする。
その離した手で、私の指先をいじりながら、しばらく静流は、夜の冷蔵庫みたいに「んー……。」と考え事をしていた。

「……。いけるかな……。」

静流が聞こえるか聞こえないかの声でボソッと呟いた。

「え?」

「いやな、クリスマス会出席するわするけど、早めに切り上げて紅葉とどっか行けないかなぁって。」

「私は別にいいわよ。クリスマスって2日あるし。」

⏰:07/12/11 11:16 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#580 [向日葵]
すると静流は私にデコピンした。
軽くのけぞり、おでこをさすりながら静流に非難の目を向ける。

「お前には乙女のロマンがないのか。イヴが一番盛り上がるっつーのに。」

「なんかその言い方、静流が乙女みたい。」

少しおかしくて、フフッと笑った。
すると静流の顔が少し赤くなった。

どうしたんだろう……。

「わ……笑うな。」

「ごめん。面白かったから。」

⏰:07/12/11 11:20 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#581 [向日葵]
「そうじゃ……なくて……。」

じゃあ何なんだ……?
歯切れが悪いなぁ。

「とにかく、それぐらいなら香月は許してくれると思う。帰り遅くなっても父さんは咎めないだろうし。な?行こう?」

私はうつ向いた。

私に待つ勇気があるだろうか。
もちろん、静流がほったらかしにする訳ない。
それは信じてる。

でも悪いイメージって、いつでも付いてくるものだから……。

⏰:07/12/11 11:23 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#582 [向日葵]
静流は今度は両手で私の顔を包む。
そして真っ黒な潤んだ瞳で私をじっと見つめた。
私も見つめ返す。

「……待つのは恐い?」

嘘はつけない。
目を伏せて、小さく頷いた。

「紅葉……。」

再び静流を見ると、優しく静流の唇が私の唇に重なった。
胸がドキン……と高鳴る。

離れて、間近くで見つめ合う。

「絶対、紅葉を1人ぼっちにはさせないから。俺の事信じて?」

⏰:07/12/11 11:28 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#583 [向日葵]
少し悲しそうな静流の瞳。

私もいつまでも立ち止まってないで、勇気出さなくちゃ……。

私はまた小さくコクンと頷いた。
頷いてから静流はゆっくり私を胸元に抱きよせた。

大丈夫。

静流の抱擁が、そう告げた気がした。

――――――……

「ま……それぐらい許してやるかな……。」

次の日。俺は昨日の件を香月に伝えた。

⏰:07/12/11 11:32 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#584 [向日葵]
「香月愛してるっ!」

香月は抱きつこうとした俺の顔を掌でがっつり掴んで阻止した。

「そーゆーのは紅葉にやってろ。」

「マジ感謝するっ!」

やれやれと言う風に香月はため息をついた。
そして「皆ちゅうもーく!」とクラスの視線を集める。

「クリスマス会は終業式の後、着替えてから行くぞー。だから着替え持参なぁ!時間は昼からー。学校近くのカラオケ予約してっからー。」

⏰:07/12/11 11:37 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#585 [向日葵]
――――――――――――

更新終了です

>>283に感想板がありますんで、良ければ感想お願いします

⏰:07/12/11 11:39 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#586 [向日葵]
香月が話している間、お許しが出た事を紅葉に告げるため、早打ちでメールを送った。

*******************

ブーブー

携帯のバイブが鳴る。
ぼんやりとテレビを見ていた私は、目の前にあるテーブルの上に乗ってる携帯を見た。

「静流?」

パキッと携帯を開けて、内容確認。

<香月様様!お許し出たぞ!帰ったらまた予定決めような♪>

⏰:07/12/13 12:04 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#587 [向日葵]
お許しもらったんだ。

返信はせず、携帯を閉じ、私はベランダに出た。

きっと静流とのクリスマスは幸せに溢れると思う。

苦手な食事、睡眠、人との触れ合い。
それを全部克服させてくれたのは静流だ。

静流となら、乗り越えられる。そんな気がする……。
―――――……

来たるクリスマスの日。

玄関まで静流を見送る。

「じゃ、行ってくるわ。」

⏰:07/12/13 12:08 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#588 [向日葵]
「ハイハイ。」

靴を履き慣らした静流はぐるりと私に向き直る。

「今日の予定復唱してみ?」

「アンタそれ何回やらす気?」

今日まで静流は決めた予定を何回も私に言わせた。
今みたいに朝学校へ行く時、帰って来て一段落してから、夜寝る前の最低でも3回。

予定はこうだ。

5時、駅前のツリーで待ち合わせ。
私は駅前に行くまでに、戸締まりをし、ちゃんと可愛いく着替える。(静流希望)

⏰:07/12/13 12:13 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#589 [向日葵]
携帯必ず持参。お金は持たなくて良し。しっかり暖かい恰好をする。

ってかいつも思うけど、これ予定じゃなくて私についてだよね。

「ちゃんと頭に入ってんだから、さっさと学校行って頂戴。」

「ハイハイ。じゃ、後でな。」

と言いながら頭を撫でて、静流は学校へ向かった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

可愛い恰好……と言われてもなぁ……。

つい最近買ってもらったクローゼットを勢い良く開ける。

⏰:07/12/13 12:17 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#590 [向日葵]
寒いのにスカート履けとか言ってたんだよね静流……。

これについて抗議すると「ブーツ履けばあったかいだろ」と反論。
女の冷えを甘く見るなよこの野郎……。

とは言え、仕方ないので、多くある中の気に入っている黒いスカートを手に取った。

全部着替えてから鏡を見る。
まぁ……許してくれるだろう……。

時計を見ると4時40分。
駅前までは15分。5分前についても悪くないだろう。

⏰:07/12/13 12:22 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#591 [向日葵]
窓よし、ガスの元栓よし、電気消した、鍵持った。
さて……行こうかな。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

流石クリスマス……。ツリー前にはカップルカップルカップル……カップルだらけ。

ってか……。

「ツリーデカイ……。」

どうやってここまで運んだか見てみたいくらいデカイ……。まぁツリーの感想はこれくらいにして、静流が来るのを待とう。

北風が寒い。暖かい恰好をしても尚、生地の隙間から冷気が入ってくる。

⏰:07/12/13 12:26 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#592 [向日葵]
ブルっと震えて腕を摩擦で暖める。
気休めにもならないけど……。

携帯を見て時間を確認しようとすると

ゴーン…ゴーン…

駅前のロータリーにある時計が5時を告げた。

静流め……。5時って言ったからにはちゃんと5時には着いてなさいよ。
寒い中私を待たすなんて。風邪引いたらただじゃおかないんだから。

冬の5時は結構暗い。
ツリーに付いてる電飾がポツポツと点き始めた。

⏰:07/12/13 12:30 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#593 [向日葵]
どうしようもない不安が私を襲う。

静流……来てくれるよね?
私信じていいんだよね……?

[バーカ]

あの日の言葉が私を闇へと飲みこもうとする。
それをかき消すかね様に、四方八方、静流が来ないか見渡す。

静流……。
静流……。

「やだ……。静流……。」

手が震え始めてきた。

⏰:07/12/17 00:37 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#594 [向日葵]
恐いよ……。

私そんなに強くないの……。

恐い……。
恐い……。

「静流……っ。」

その時だった。

「――……は!」

……!

今のは確かに静流の声だった。
でもどこにいるんだろう。姿がまったく見当たらない。

「し、静流……っ?」

⏰:07/12/17 00:39 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#595 [向日葵]
すると……人混みをかき分けてこちらに息を切らしながら走ってくる静流が姿を現した。

「ハァ……ゴメン……。中々抜けられなくてさ……。ちょっと遅れ……。」

静流が全部言ってしまう前に、私は静流の胸に飛込んだ。
静流の腰辺りをギュッと抱き締めて、胸に顔を埋める。

「……。……遅い。」

ボソッと呟く。
静流の呼吸が段々落ち着いてくるのを耳で聞いていると、静流は私を優しく包んだ。

⏰:07/12/17 00:43 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#596 [向日葵]
「ウン。ゴメン。」

口調は笑みを含んでいてとても優しい。

「5時前にはちゃんといてよ……。」

「ウン。」

「寒かったし……。」

「ウン。」

「……恐かったし……。」

静流はクスッと笑うと、頭を丁寧に撫でてくれる。

私は安堵感が広がっていった。

「大丈夫だから。ホラちゃんと来たでしょ?」

⏰:07/12/17 00:47 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#597 [向日葵]
――――――――――――

今日はここまでにします

>>283に感想板があるんで良ければ感想お願いします

⏰:07/12/17 00:48 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#598 [向日葵]
「えぇそうね……。」

私は抱き締める力を少し強めた。

「……紅葉?もう離れて?置いてったりしないからさ。」

私は力を緩めて、のろのろと離れた。
静流の顔をチラッと見る。すると、静流の頬が少し赤くなっていた。

「……!静流、熱あるの?!」

静流は苦笑して「ハァ……」と大袈裟にため息をつく。

「無自覚なのが紅葉のいい所って言うか……。」

⏰:07/12/17 14:59 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#599 [向日葵]
私は眉を寄せて何が何だかと言った視線を送った。

静流は苦笑したまま私の頭をガシガシ撫で回す。

「いきなり抱きつかれたらドキドキするでしょーが。」

それを言われて、やっと意味が分かった私は顔が熱くなった。

思えば公衆の面前で何大胆な事をしてるんだ私……っ!

「さて……と。俺が紅葉に襲いかからない内に行きますか。」

「ば、馬鹿じゃないの……っ!」

⏰:07/12/17 15:05 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#600 [向日葵]
静流はくっくっと喉で笑うと、至って普通に自然に私と手を繋ぐ。

静流の指先が思ったより冷たくてビクッと少し震えた。

「何か欲しい物ある?」

「別に……。」

「エリカ様かお前は。」

欲しい物なんて浮かばない。
服だって足りてるし、食べ物はあまり好きじゃないし、アクセサリーなんかもっての他だ。

「んー……じゃあさ、俺が選んだプレゼントあげる。それでいい?」

「静流がー……?」

⏰:07/12/17 15:10 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#601 [向日葵]
いらない物をくれそうなので私は嫌そうな顔をした。
そんな事構わないのか、静流はにこにこしたまま私の手を引っ張って行った。

店に入って、静流が手にした物は

「え?リボン?」

静流はにこにこしながら頷いた。

まさか……私は静流へのプレゼントなんか考えてないからもし私が「考えてない」と答えた場合……。

「紅葉が俺へのプレゼント!」

とかクサイ事やるんじゃないでしょうね……。

⏰:07/12/17 15:15 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#602 [向日葵]
「紅葉何色が好き?」

「んぇ?オレンジ。」

「りょーかいっ!」

50センチ程に切ってもらったオレンジと緑のリボン。
私が赤を選んだなら、ちょっとしたクリスマスカラーだ。

店を出ると、駅前からずっと離れた所へ歩いていく。

「ちょっと静流?どこ行くの?」

「見てからのお楽しみっ。」

⏰:07/12/17 15:18 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#603 [向日葵]
「なんだか楽しそうね。」

「紅葉は楽しくない?」

そんな事……言わせないで。

「なかったら……今いないわよ。」

静流はニカッと笑って進む足を早めた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「とーぅちゃぁくっ!!」

「えー……。」

着いた場所には、電飾が全く付いてない大きなツリーと、ツリーを照らす照明があった。

⏰:07/12/17 15:22 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#604 [向日葵]
ツリーをよく見てみると、色とりどりのリボンが結んであった。

そこでようやく静流がリボンを買った意味が分かった。

「ツリーに飾りつけ?」

「んーまぁ近いかな。」

そう言うと、さっき買ったリボンを出し、重ねてツリーに結んだ。

「毎年この街恒例のものなんだ。“好きな色のリボンを結ぶと願いが叶う”って。」

「なんか七夕みたい。」

そんな恒例のものを静流がしようだなんて、ますます静流は私より女の子っぽい。

「そうだな。」

⏰:07/12/17 15:26 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#605 [向日葵]
静流は私の両手を握ると、私の目の高さに合わせて私を見つめた。

「紅葉の願い事は?」

「願い事って口に出したら叶わないんじゃ……。」

「いいからさ。」

あちこちに視線を向けて、私は「うー……」と唸った。

私の願いは……

「食べ物がもうちょっと食べれるようになりたい。」

「ブハッ!そんなんでいいの?!他は?」

⏰:07/12/17 15:30 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#606 [向日葵]
他?!

私は必死に頭をねじって他の願い事を考えた。

静流はその間も私をじっと見つめる。
なんだか急かされてる気分……。
当然本人にはそんな気ないのだろうけど……。

「少し丈夫な体になりますように……とか?」

「お前の願い事は健康な事についてばっかりか。」

「だったら静流言ってみなさいよー!」

すると静流はおでこをコツンと当てて目を閉じた。

⏰:07/12/20 00:13 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#607 [向日葵]
「紅葉がずーっと俺といてくれますように……。」

「……っ。」

静流はゆっくり目を開けて、優しい目をして間近で私を見つめる。

「わ……私が出て行くとでも思ってる訳?」

「実際出て行った事あんじゃん。俺の気も知らずひっでぇーよなぁっ。」

非難の言葉とはうらはらに、静流は茶目っ気たっぷりの目でからかう様に言った。

「さて!手本は見せた。……紅葉の願いは?」

⏰:07/12/20 00:17 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#608 [向日葵]
そんなの言われたら、私が言う事は1つって分かってるくせに……。
つくづく静流はズルイ。

「……静流が私に飽きませんように。」

私の素直じゃない願い事に、静流は声を上げて笑った。
握られている手が、2人の体温であったかくなっていく。

手だけじゃなく、私の心に、いつまでも……いつまでも温かさをくれるのは……

きっと…静流だけだから……。



―温―*END

⏰:07/12/20 00:21 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#609 [向日葵]
アンカーです
よかったら使ってください

>>2-100
>>101-200
>>201-300
>>301-400
>>401-500
>>501-600
>>601-610

感想板
>>283

⏰:07/12/20 00:24 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#610 [向日葵]
ビー玉ラバーズ*スペシャルストーリー
*弟の君〜気持ちを箱に〜*











Q.好きな人はいますか?

A.はい。

Q.どんな人ですか?

A.それは……

⏰:07/12/22 17:53 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#611 [向日葵]
「加寿姉。」

ドキッ……。

日曜日。
私の家に遊びに来ていたご近所の3つ離れた誠。

声をかけられた私の心臓は不規則な動きをする。

「な…、何?」

リビングでゲームをしながら誠は私に話しかける。

「腹減ったんだけど……。何かない?」

「あ……じゃ、何か作るよ。もうすぐお昼だし……。」

私が何故こんなにぎこちないか。
それは最近、こちらにいる女の子の様に可愛い容姿の誠(せい)に告白されたからです。

⏰:07/12/22 18:01 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#612 [向日葵]
そして私、加寿(かず)は返事出来ないまま今までズルズルズルズル引きずっています。
でも、誠は返事を急かす事なく至って普通の態度。

私は誠が好きと気づきました。
でもいざ誠に言おうとすると上手く言葉が出てきません……。

このままじゃいけない!そう思った私に天の助けかありがたいイベントが迫ってきています。

それは女の子も男の子もソワソワしてしまうバレンタインデーなのです。

そのバレンタインデーも明後日に迫っている為、私の心臓は2倍速。

⏰:07/12/22 18:06 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#613 [向日葵]
「加寿姉?」

私の肩に顎を乗せて、私の料理行程を見に来た誠に私はびっくりすると共に顔が赤くなる。

「な!ななな何?!ご飯まだだよ!」

「何作んのかなぁーってさ。」

と言いながら誠は私の腰に腕を回してきた。

えぇぇぇぇっ!!

最早料理どころじゃなくなる。
包丁持ってる私の手は危なっかしく動く。

「あ、チャーハン?いぃねいぃね。ネギ入れてなー。」

⏰:07/12/22 18:11 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#614 [向日葵]
そんな事より離れてーっ!

体温が上昇してる気がする。こんなの服ごしに誠にバレちゃう……っ。

すると誠はするりと腕を離した。

「早く作ってよー?俺腹ペコなんだからさー。」

そう言ってまた再びゲームをやり始めた。

誠に聞こえないように大きく深くため息をつく。

心臓……どうにかなっちゃいそうだった……。
危ない危ない……。

……どうして……誠はあんなに普通にしてるんだろう……。

⏰:07/12/25 00:01 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#615 [向日葵]
もしかして……返事を急かさないのも、私の事、好きじゃなくなっちゃったのかな……。

――――――――……

「だぁっと思うなら!尚更バレンタインデーなんて待ってないでさっさと言いな!」

学校。
私は誠との事を杏ちゃんに相談した。
杏ちゃんは机に乗り出して至近距離で私を見つめる。

「だ……だだ、だって……。言えないんだもんっ。恐い……し……。」

「今のままじゃ弟君は生殺し状態よ?!そんな加寿の勇気の問題で待たせたままじゃあまりにも可哀想じゃないっ!」

⏰:07/12/25 00:06 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#616 [向日葵]
私はウッと唸った。

確かに、私は誠が何も言わない事に甘えてる。
もちろん、勇気が出せないのも嘘じゃない。
誠がこのままの状態をどれだけ我慢強く待ってくれているのかも知ってるけど……。

「もしも……誠が好きな人別にいたりしたらさ……初告白なのにいきなり玉砕だよ?しかもバレンタインデー前っ!ショックすぎるよーぅぅ……。」

「まったく……。」と言って杏ちゃんは呆れかえってしまった。
こんな自分、自分でも呆れちゃうよ……。

⏰:07/12/25 00:11 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#617 [向日葵]
「弟君がもし加寿の事好きじゃないなら、いつも通り一緒に登校しないと思うよ?弟君って多分彼女が傷ついたりする事出来るだけしなさそうなタイプだし。」

だって誠は優しいもの。
優しくて優しくて……年上の私がどんどんのめり込んでしまうぐらい存在が大きい人……。

「とにかく!バレンタインデーはちゃぁぁんっと心込めなさいよ?!」

「……うん。」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

昼休み。
いつもの時間に誠が来ない。

⏰:07/12/25 00:15 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#618 [向日葵]
授業が長引いてるのかな?

迎えに行きたいけど行き違いにはなりたくないし……。
なら、誠がいつも通る階段のトコで待っててみよっ!
そしたら絶対会うだろうし。

私はその階段へと向かった。

「――――。」

「ん?」

階段を下りきろうとした時、どこかから話声が聞こえた。
昼休みだから人はそこここにいる。
でもその声は、人気の無い場所から聞こえた。

⏰:07/12/25 00:18 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#619 [向日葵]
階段の下の……用具室……?

そう思った時。

ガタガタガタ!

「?!」

もしかして……ケンカ?!

気づかれないように私は用具室に忍び寄り、そーっと半開きになっていたドアから中を覗いた。

「え……。」

小さく呟いたその声はきっとその2人には聞こえなかっただろう。

中には、中等部の男女。
1人はセミロングの黒髪が綺麗な女の子。

もう1人は……。

「せ……い……?」

⏰:07/12/25 00:23 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#620 [向日葵]
2人は抱き合っていた。

私は目を見開いて1歩、また1歩と後退りした。

そして走る。

また教室へと戻って来た。

他の友達とお弁当を食べていた杏ちゃんは走って来た私に驚いていた。

「加寿?どうかした?」

どうして……?
何で……。
ウウン違う。
何か理由があったに違いない。
じゃなきゃ誠が……あんな安々と女の子を抱き締める訳……。

⏰:07/12/25 00:26 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#621 [向日葵]
あぁ……分かんない……。

結局その昼休み、誠が私の教室に現れる事はなかった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「はぁ……。」

私は1人教室に残っていた。誰もいない教室は意外にも寒い。少し身震いした。

早く……帰らないと……。

ガラガラガラ

「あれ?橋田(加寿の名字)?」

「あ、丹波君。」

⏰:07/12/25 00:31 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#622 [向日葵]
同じクラスでバレー部のキャプテンの丹波君は、バレーをやってるだけあって背が高く、入口を頭を低くしなければ通れないほどだった。

「どうかしたの?」

「丹波君こそ。部活は?」

「今日はミーティングだけ。んで自主練しようと思ってシューズ取りに来た。」
丹波君はかけてる深緑のフチのメガネをくいっとあげて、自分の席まで移動した。

私はそれをただ観察して、彼がドアを閉める瞬間を見送ろうとしていた。

⏰:07/12/25 00:36 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#623 [向日葵]
シューズを取った丹波君は私を見た。

「何か悩み事?」

「へ?どして?」

座ってるせいか、こちらへ向かってくる時の丹波君の背は迫力満天だった。
そして今は、長い足を組んで小さく見える椅子に座っている。場所は2、3個離れて私の前だ。

「なんかこーやっているのって、悩み事ある人が多いんじゃないかなぁーって思っただけ。」

「そんな漫画じゃないんだから。」

「でも実際悩んでる時って1人で黄昏たくない?」

⏰:07/12/25 00:41 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#624 [向日葵]
メガネ越しに、意外に柔らかな目線で私を見つめている丹波君。
背が高いせいか目つきはもっとキツク感じた。

「うん……分かるそれ。」

「で?何かあったとか?」

「……んーん。いいやっ。」

なんだか自分の気持ちを分かってくれてる人がいた事に、少しだけ心が軽くなった。

「そかっ。じゃ、帰ろうかねーぃ。」

「自主練は?」

「今日はもういいや。」

⏰:07/12/25 00:53 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#625 [向日葵]
私達は下駄箱まで一緒に行った。

「加寿姉!」

私の下駄箱の前に、誠が待っていた。
誠は立ち上がって、私の横にいた人物に目をやる。

「……。」

「あ、遅くなってゴメンね。こちらクラスメートの丹波君。ちょっと会話が弾んでてね。」

「橋田弟いたんだ。」

「あ、誠は」

「弟じゃねえよタコ。」

誠は私の手を掴むと引っ張って外へ出て行った。

⏰:07/12/25 00:57 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#626 [向日葵]
「ちょ、誠、靴靴靴!!」

私の訴えも無視して誠はズンズン進んで行った。

早歩きで少し息が上がった頃、ようやく誠は止まって私に向き直った。

その表情は、悔しさと怒りが混じった感じだった。

「何で早く来てくんなかったのさ。」

「だから喋ってたの。いいじゃない少しくらい。」

「アイツが好きなの?」

「ちっがーうっ。何言ってんの誠はぁ!」

どうして丹波君を好きにならなきゃいけないの。
しかもまともに喋ったの今日が初めてだし。

⏰:07/12/25 01:02 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#627 [向日葵]
――――――――――――

今日はここまでにします

>>283に感想板がありますんで、良ければ感想お願いします

⏰:07/12/25 01:03 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#628 [向日葵]
私の困った顔を見つめて、誠はうつ向いた。

「……よ……。」

「え?」

誠が何か呟いた。
けどその声は私の耳には届かず、聞き直した。

うつ向いてた誠はキッと私を睨んで「なんでもないっ!」と言葉を吐き捨ててまた早歩きで行ってしまった。

「もー…なんなのー……?」

―――――――……

「加寿ー。」

「何?ママ。」

⏰:07/12/26 23:05 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#629 [向日葵]
ママは何か入ったタッパを私に渡した。

「これ、誠君んちに届けきて。この前ケーキ貰ったお礼にって。」

誠んちかぁ……。
仲直りする為に行った方がいいかもなぁ。

「ウン分かった。」

そう言って家から1分もかからない誠宅へと足を運んだ。

インターホンを鳴らして、誰か出てくるのを待つ。

『はぁい。』

「あ、おばさん?加寿です。」

⏰:07/12/26 23:10 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#630 [向日葵]
『あーハイハイ。ちょっと待っててね。』

ガチャリと切られて、私はおばさんが来るまで待った。
周りを意味なく見渡したり……端から見たら挙動不審に見えちゃうかも……。

するとドアが開いた。

「あ……。」

中から出てきた誠は小さな声でそう呟いた。
私もてっきりおばさんが出て来ると思ってたから、誠にびっくりした。

「や、やほ……。あ、これ、ママから。」

「ん。サンキュ……。」

⏰:07/12/26 23:13 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#631 [向日葵]
会話が止まってシーンと言う音が聞こえた。

内心顔に汗がダッラダラ出ている私は、仲直りのつもりで来たくせに沈黙に耐えれず今にも足が回れ右をしそうだった。

「……ゴメン。」

「え?」

また呟くように誠が言った。でも今回はなんとか私の耳に届く音量だった。

「いきなり怒鳴り散らして……。嫌な思いさせた。」

あまりに素直な誠に静かに微笑んで、私は頭を撫でた。

⏰:07/12/26 23:17 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#632 [向日葵]
「気にしてないからいいよ。私も、誠が待ってくれてるのに遅くなってゴメンね。」

「……それで怒ってたんしゃない。」

頭を撫でていた手を誠は掴んだ。
改めて感じる誠の掌の大きさに私は一瞬ビクッとしてしまった。

「分かってんでしょ?俺の気持ち。俺は……他のヤツと仲良くして欲しくなかっただけ。……嫉妬してたんだよ……。」

真っ直ぐな誠の目……。
私の思考を真っ白にしてしまいそうだった。
でもそれと共に安心した。
誠はまだ私を想ってくれてた。

⏰:07/12/26 23:22 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#633 [向日葵]
「あ……ありがとう……。」

そう言うのが精一杯だった。
この雰囲気で告白するべきかを一瞬悩んだけど、やっぱり止めた。

『誠!お話するなら加寿ちゃんに上がってもらいなさい!加寿ちゃんが冷えちゃうでしょっ。』

インターホンでそう告げるおばさんのおかげで、2人の間のちょっとした空気が元に戻った。

「あ、じゃあまた明日っ!おやすみ。」

「うんおやすみ。」

⏰:07/12/28 23:18 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#634 [向日葵]
家に入る前、もう1度誠を見ると、誠はまだ数メートル先から私を見つめたままだった。
そんな誠に手を振ると、誠はちゃんと振り返してくれた。
それに静かに微笑みながら私は家に入っていった。

「おかえりー。ご飯食べるー?」

「ウン。」

私はそのままリビングへと向かった。

今日は私が好きなグラタンだった。
ママのグラタンはルーから作るからとても美味しくて好き。

⏰:07/12/28 23:22 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#635 [向日葵]
「そーいえば……。」

お茶をいれながらママが台所から少し声をあげて私に話かける。

「誠君にチョコあげるの?」

「はいっ?!」

すっとんきょんな声を出してしまった。
普通、ママは相手が誰であろうとそんな事は聞かない人なのに。
よりによってなんで今回は……っ。

「だぁって。最近の加寿って誠君にぎこちないから。」

「だからって何で聞くの!」

「誠君がお婿さんになってくれたらママ嬉しいなぁぁって!」

⏰:07/12/28 23:26 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#636 [向日葵]
まったくママったら……。

ママは昔から誠大好き人間で、ずっとこんな事を言う。対する誠のママ(つまりおばさん)も私に「誠の嫁に来てね。」とよく言う。

昔はアハハと笑いとばして冗談半分に聞いていたけど、今はそんな笑いとばせる力はどこにも残っていなかった。

「もちろん渡すわよ。でもねママ。いくら身内で、しかもご近所付き合いの人にそれをあげるからって、娘のプライベートの中のプライベートまで根掘り葉掘り聞かないでちょうだいっ。」

⏰:07/12/28 23:31 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#637 [向日葵]
そんな無邪気で好奇心旺盛なところがママの良いところでもあるけれど……。
あんまり何もかもをベラベラ話して娘の嫁ぎ先が決まったと勘違いして小踊りされてはこちらが恥ずかしくて仕方ない。

「はぁい。分かりましたぁ。」

ママは降参のポーズをして、私の前にグラタンを置いた。
焦げめがついたチーズの匂いが食欲をそそる。
いつも通り、ママと楽しく美味しく食事を済ませた。
さっきの注意の効果か、ママがバレンタインについて聞いてくることはもうなかった。

⏰:07/12/28 23:36 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#638 [向日葵]
・・・・・・・・・・・・・・・・・

部屋に戻ってから、部屋にある小さなテーブルに乗っている小箱を見つめる。

これが正真正銘、誠へのチョコだ。

明日……明日で……私の気持ちを誠に伝える事が出来る……。

――――――……

「う……わぁぁぁ!」

遂に決戦(?)の日。
平静を保ちながら私はいつも通り誠と登校。

すると中等部から誠の叫び声。

⏰:07/12/28 23:39 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#639 [向日葵]
「せ、誠?!」

ただならぬ誠の様子にびっくりした私は、誠の元へと行った。

するとそこには、漫画のように、チョコが入っているだろう小包に誠が若干埋もれていた。

予想からして、下駄箱開けるといきなりチョコ。
まるで玄関あけたら2分でご飯。みたいな……。

「な……んだよこれ……。」

「チョ……チョコ……でしょうね。きっと……。」

そこで改めて、誠がモテていると言う現実に気付いた。

⏰:07/12/28 23:45 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#640 [向日葵]
――――――――――――――

ちょっと休憩します

>>283に感想板がありますんで、良ければ感想お願いします

⏰:07/12/28 23:48 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#641 [向日葵]
「た……大量だね……。捨てるとか、そんな人の気持ちを踏みにじるような事しちゃ駄目だからね。」

それだけ言って、私は誠に背を向けた。

「ちょ、待って加寿姉!」

誠の声を、聞こえなかったフリして、私は教室へと向かった。

「あれ、いいの?」

階段を上ろうとした時、後ろから呼びかける声がした。

「あ……丹下君……。」

「あの子、君が好きなんでしょ?」

⏰:07/12/29 00:21 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#642 [向日葵]
丹下君の言葉に、赤面する反面、うつ向いて落ち込んだ。

あんなにモテる誠に、自分なんかがふさわしいんだろうか……。

丹下君と話ながら階段を上っている途中、ある物が目についた。

それは、昨日誠と知らない女の子が抱き合っていたあの用具室だった。

誠……昨日私にあぁは言ってくれたけど……本当は同年代の女の子に気持ちが傾いてるんじゃないだろうか……。

「はーしーだっ。朝から暗すぎ。テンション上げてこうぜー。なんてったって今日は魅惑のバレンタインなんだからさっ。」

⏰:07/12/29 00:26 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#643 [向日葵]
「うん……。」

「返事の割りに全然だな。…そうだ!テンション上げる方法教えてやるよ!」

「え?」

「ひたすらサムイダジャレ連発してみる!」

逆にテンションが下がりそうな丹下君の提案に、思わず吹き出してしまった。

「それ、逆効果だからっ!」

「お、笑ったな。その調子っ。」

丹下君の気遣いに、少しだけ胸のモヤモヤが晴れた気がした。
顔が自然とほころぶ。

⏰:07/12/29 00:29 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#644 [向日葵]
「ところで丹下君は――――。」

この時、私は知らなかった。

階段の下で、楽しそうに話している姿を、誠に見られてただなんて……。

――――――……

昼休み。

誠にあんな態度を取ってしまったので、正直会う事を避けたかった。
でもチョコを渡すには、それなりの雰囲気作りをしとかなきゃいけないと思っている私は、今回のチャンスを逃す訳にはいかなかった。

⏰:07/12/29 00:35 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#645 [向日葵]
だから自分から教室を出て、誠が来たらすぐに行ける様に準備していた。

でも、昨日に引き続き、誠が来るのが遅い。

もしかして……告白する人の列に追われてたりするのかな……。

と思ったら

「加寿姉。」

誠が向こうからやって来た。
でもなんだか様子がおかしい。暗くて、悲しいような怒っているようなそんな雰囲気をまとっていた。

「誠……どうかした?」

「……別に。早く行こう。次体育なんだ。」

⏰:07/12/29 00:40 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#646 [向日葵]
「う、うん……。」

やっぱり、変だ……。

今日は小さな空き教室に入って食べた。
でも、隔絶された部屋に、沈黙が重くのしかかる。

いつもならこんな空間で食べる時、まるで隠れ家を見つけたみたいに嬉しいのに……今回はそうもいかなかった。

黙々と、箸を進める誠。
それを垣間見る私。

何を話せばいいのか、話題がまったく見つからない。

と、そういえば、さっき誠が次体育だという事に気がつく。

⏰:07/12/29 00:44 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#647 [向日葵]
――――――――――――――

今日はここまでにします

>>283に感想板がありますんで、良ければ感想お願いします

⏰:07/12/29 00:45 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#648 [向日葵]
「次、体育なら早く食べなきゃね。」

「……。」

「今は何してるの?あ、この時期ならバレー?バレーと言えばね、昨日喋ってた丹下君」

ガンッ!!

喋っている最中、机を思いきり殴った誠は、私の話を中断さした。

その音に驚いた私は思わず持っていたお箸を手放し、床に落としてしまった。

虚しいほどに音を立てて、静けさをかき消す……。

「……結局……加寿姉は何も分かってない。」

⏰:08/01/06 00:12 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#649 [向日葵]
何……も……?

誠は私をギッと睨む。
それは嫉妬のようで、軽蔑のような思いをこめた目だった。

「俺の気持ち、分かったフリして振り回して、遊んでるんだろ?……だからあのアイツと楽しそうにしたり話題だしたりしてるんだろ?!」

――パンッ………

私はいつの間にか平手を誠にお見舞いしていた。
手が軽くジンジンする……。

「分かってないのはどっち……?誠だって、私を好きって言ったくせに女の子と抱き合ってたじゃないっ!!」

「?!……まさか、あれ見て……っ?」

「遊んでるのは誠じゃない!!せっかく私は……。」

⏰:08/01/06 00:18 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#650 [向日葵]
涙が出そうになって、急いでお弁当を片付けた私はそこを逃げ出した。

後ろで切羽詰まった誠の声が聞こえた気がしたけど、私は振り向く余裕すらなく、廊下を走って行った……。

―――――――……

昨日同様、また1人教室で座っていた私は、誠に渡す予定のチョコを眺めていた。

告白のつもりだったバレンタインデーはパー。
逆に喧嘩してしまった。

どうしてこうなっちゃうの……?

ガラガラガラ

⏰:08/01/06 00:22 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#651 [向日葵]
ドアを開ける音に、滲んできた涙を慌てて拭いた。

「なぁんだ。また橋田か。」

「丹下君……。」

丹下君は今日は私の隣に座って私をじっと見る。

「チョコなんて眺めて……何、お目当ての男に失恋でもしたか?」

「……かもね。」

誠は呆れてしまったかもしれない。
こんな恋愛ベタな私に。
年上のクセに、すごく情けない……。

「あの中坊だろ?有名だよなあの子。」

「……うん。」

⏰:08/01/06 00:28 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#652 [向日葵]
誠の顔を思い出すと、ふいに引っ込めた筈の涙が1粒流れ落ちた。

私何やってんだろ。
不安にさせたのは、原因は私なのに、誠にヒドイ事言っちゃった……。
誠は私の為に、常に自然体で接してくれた。

なのに私は、ギクシャクするわまともな返事出来ないわ……挙句の果てには文句まがいの事まで……。

こんな事なら、もっと早くに言っておくんだった。

気持ちが離れるその前に……。

「橋田。泣くなって。」

⏰:08/01/06 00:33 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#653 [向日葵]
そう言いながら私の頭を撫でようとしたらしい丹下君は、手を私の方へ伸ばしてきた。

その時だった。

ガラガラガラ

誰かがドアを開けた。

私は涙を拭いて、ぼやける視界をクリアにする。

そこに立っていたのは

誠だった。

「お前……よくも加寿姉泣かしやがったな……っ!!」

へ?

⏰:08/01/06 00:36 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#654 [向日葵]
誠は私の鞄を持つと、グイッと私を引っ張って教室から連れ去った。

「何されたの?」

昇降口まで来て、私に向き直った誠は心配そうに私を見上げた。

私は涙で濡れたまつ毛をパシャパシャ瞬きしながら誠を見た。

「何もされてないよ……?丹下君は、慰めようとしてくれただけ。」

「慰め?」

「泣いてたのは……自分が情けなかったから……。」

誠は眉を寄せて困った顔をしながら私を見つめる。

⏰:08/01/06 00:40 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#655 [向日葵]
「……私、誠が好き。私はこの通り、恋愛なんてこれっぽっちもわからないから、誠にどう接したらとか迷ってたの。告白の返事だって……するのすごく恥ずかしくて今まで言えなかった。」

私は自分の手の中にある物に気づく。

今日の為に、沢山の誠への気持ちを詰め込んだ、小さな、でも中身は一杯詰まった箱……。

それを誠に差し出す。

「誠は人気者だから……自分に自信がなかったの。だからバレンタインデーって言う特別な日から勇気をもらって、今日伝える事に決めてた。……受け取って、くれる?」

⏰:08/01/06 00:46 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#656 [向日葵]
その瞬間……

ポロ……

また1粒涙が落ちた。
でも今度は自分の目からじゃない。

落ちたのは、誠の目から。

「……わ、カッコ悪……っ。男のくせに、嬉し泣きとか……っ。」

誠は乱暴に袖で目を拭くと、箱を包みこんでいる私の手ごと、いつの間にか私より大きくなった手で温かく包んだ。

「ありがとう……加寿姉。」

「私も……好きになってくれて、ありがとう誠……。」

⏰:08/01/06 00:50 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#657 [向日葵]
・・・・・・・・・・・・・・・・

幸せな気持ちで、だけどどこかお互い初々しい雰囲気を漂わせながら、仲良く手を繋いで帰っていた。

「気にしないでいいからね。俺の抱き合ってた事。あれ、無理矢理抱きつかれただけだから。」

「なら、誠も気にしなくていいからね。丹下君。彼、彼女いるから。」

「そっか……。」と呟いた誠の顔は、ホッとして嬉しそうに微笑んでいた。

そんな彼が、とても愛しくて、頬に唇を一瞬押し付けた。

⏰:08/01/06 00:54 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#658 [向日葵]
「――――っ!!」

手を繋いだまま、距離をおく誠。

「クスクス……。すごい顔赤い……っ。」

箱に詰め込んだ、大好きって気持ちが、ちゃんと誠に届いたみたい。

今、とても穏やかな気持ち……。

みんな……そうじゃないのかな。

大好きな人といれば、嬉しい事、辛い事、楽しい事、悲しい事……。
沢山、共有出来る。

様々な形。
様々な色。

⏰:08/01/06 00:57 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#659 [向日葵]
そんな恋愛模様を、人はこんな風に例えるのだった。







まるで、ビー玉みたいだと……。

⏰:08/01/06 00:59 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#660 [向日葵]
*ビー玉ラバーズ*

*END*

⏰:08/01/06 01:00 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#661 [向日葵]
*あとがき*

と、言う訳で

ビー玉ラバーズはこれにて終わりでございます
読んで頂いた皆様、又、応援して頂いた皆様、本当にありがとうございました


よろしければ
>>283の方に感想板がありますんで、感想頂けると嬉しいです

⏰:08/01/06 01:02 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#662 [向日葵]
アンカーよければお使い下さい

>>1-100
>>101-200
>>201-300
>>301-400
>>401-500
>>501-600
>>601-670

⏰:08/01/06 01:06 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#663 [我輩は匿名である]
集まり

⏰:10/03/23 14:30 📱:W43H 🆔:☆☆☆


#664 [我輩は匿名である]
>>1-50
>>50-100
>>100-150
>>150-200
>>200-250
>>250-300
>>300-350
>>350-400

⏰:10/04/07 19:40 📱:SH06A3 🆔:☆☆☆


#665 [我輩は匿名である]
>>400-450
>>450-500
>>500-550
>>550-600
>>600-650

⏰:10/04/07 19:41 📱:SH06A3 🆔:☆☆☆


#666 [我輩は匿名である]
666 666 666
666 666 666
666 666 666

⏰:10/04/07 22:23 📱:SH904i 🆔:☆☆☆


#667 [我輩は匿名である]
>>651-680

⏰:10/04/07 23:26 📱:N08A3 🆔:☆☆☆


#668 [我輩は匿名である]
大好き!あげ!

⏰:11/02/12 03:49 📱:SH03A 🆔:☆☆☆


#669 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>1-40

⏰:22/10/04 23:19 📱:Android 🆔:☆☆☆


#670 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>600-630

⏰:22/10/05 00:12 📱:Android 🆔:☆☆☆


#671 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>630-650

⏰:22/10/05 00:13 📱:Android 🆔:☆☆☆


#672 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>30-60

⏰:22/10/05 01:01 📱:Android 🆔:☆☆☆


#673 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>60-90

⏰:22/10/05 01:02 📱:Android 🆔:☆☆☆


#674 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>90-120

⏰:22/10/05 01:03 📱:Android 🆔:☆☆☆


#675 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>110-140

⏰:22/10/05 01:04 📱:Android 🆔:☆☆☆


#676 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>140-170

⏰:22/10/05 01:05 📱:Android 🆔:☆☆☆


#677 [○○&◆.x/9qDRof2]
>>170-200

⏰:22/10/05 01:07 📱:Android 🆔:☆☆☆


#678 [わをん◇◇]
それに気付いてほしかった

―――――――――……

目を覚ました。
あれからどれくらい経ったのだろう?
ここは天国‥?

「橘様!ナナシが目覚めました…!」

たち‥ばな……橘?
何故…?

「私がお前を手放すと思ったか?」

何故父がいるの。
私は…死んでいないの?

⏰:22/11/03 18:37 📱:Android 🆔:☆☆☆


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