○ビー玉ラバーズ○
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#150 [向日葵]
「いつそこに……。」
「さっきの駅。千広は熟睡しかけてたから気づいてなかったんだな。」
ドキ……
また“千広”って呼ばれた……。
私はそんな事に慣れてないせいですぐにときめく。
もしかしたらこんなの今時の人達にしたら普通なのかもしれない。
「千広の絵ってさ、優しいな。」
「え……や、そんな、大した……。」
すると桜井君は私をじっと見た。
男の子の目を見るのは怖い。私は口元らへんを見た。
:07/10/26 00:03
:SO903i
:☆☆☆
#151 [向日葵]
「なんでそんなよそよそしいの?」
「……や。ウン。性分なもんで。」
ってか会って今日名前知ったのによそよそしいも親しいもないだろうて。
「もっと喋れるっしょ?本当は。」
「怖いんだから仕方ないじゃないですかっ。」
あ。しまった。
つい本音がポロリ。
桜井君は目をパチクリしている。
ホラみなさい。
引いたも同然。
どうせデカイ体したお前が何びびってんの?とか嘲笑ってるに違いない。
:07/10/26 00:07
:SO903i
:☆☆☆
#152 [向日葵]
私はもういいだろうとイヤホンに手をかけた。
その時だった。
ポンポン
彼の手が、私の頭を数回優しく叩いた。
「怖くなんかないって。大体俺なんて怖くないっしょ。怖くない。大丈夫。」
優しい優しい言葉。
そんなの言われた事なかった。
[大丈夫。]
何が大丈夫かなんて分からなかったけど、私の心の中はその言葉に満たされていった……。
:07/10/26 00:11
:SO903i
:☆☆☆
#153 [向日葵]
次の日。
いつもの電車に乗り遅れた。
別に間に合わない訳ではないけれど、いつも10分前集合(まぁそれより早く着くけど)を心がけている私はギリギリがそんなに好きじゃなかった。
しばらく待って来た電車は、ラッシュ時よりもかなり空いていた。
おかげで背もたれにもたれる事が出来たので、私は本でも読む事にした。
あ、っと。その前に……。
耳栓代わりの音楽を聞こうと、カバンからイヤホンを出そうとしていた。
「……しょ?」
:07/10/26 00:15
:SO903i
:☆☆☆
#154 [向日葵]
何か近くで話し声が聞こえた。
この時間学生も多いから多分友達同士で喋ってるんだと思い、私は携帯とイヤホンを繋げた。
「……でしょ?桜井君と喋ってた子。」
桜井……?
その名前に作業をしていた私の手は止まってしまった。
「えー…。彼女なの?あり得ないよね?だってデブじゃん。」
え……。これってもしかして……。
「しかもブサイクじゃん。何仲良くなってんのかしらね。」
―――――――っ私だ。
:07/10/26 00:19
:SO903i
:☆☆☆
#155 [向日葵]
私は頭がガンガンした。
「ってか桜井も趣味わりーよな。なんであんなの?」
「しーっ!あんまり声デカかったら聞こえるから……っ。」
とか言いつつ、クスクス笑う男子。
馬鹿にし続ける女子。
桜井君がいつもの降りる駅に着いた時、話していたと思う人達が私の前を通った。
一人一人、私の顔をじろじろ見て……。
ドアが閉まる前に聞こえてしまった。
私を馬鹿にした大きな笑い声。
:07/10/26 00:23
:SO903i
:☆☆☆
#156 [向日葵]
……泣きたくなった。
何故自分の体はこんなに太いんだろう。
何故私は美人ではないんだろう。
太ってる人は生きてる価値すらないのかな。
美人じゃなければ恋をするのもいけないの?
誰がいつ……そんなの決めたんだろう。
桜井君の評判が、私のせいで悪くなる。
もう……関わってはいけない……。
私は自分がちっぽけに思えながら、電車に揺られて行った……。
:07/10/26 00:26
:SO903i
:☆☆☆
#157 [向日葵]
「おはよーチロル!」
いつものように暁子ちゃんが挨拶してきた。
「おはよー……。」
私は力無く笑って暁子ちゃんに挨拶した。
そんな私を暁子ちゃんは「どうしたの?」と言う風に首を傾げた。
「元気ないね……。」
「寝不足なだけだよ。大丈夫……。」
[大丈夫。]
頭に触れられた感触をまだ覚えてる。
優しい温かな掌。
でも忘れなきゃ。
気持ちに身を委ねる前で良かった……。
:07/10/26 00:30
:SO903i
:☆☆☆
#158 [向日葵]
背中に何かが重くのしかかる気がした。
絶望とか、自信の無さとか、卑屈さとか……。
もう私は、自分を好きになれない決定打を打たれてしまった。
醜い自分が、こんなにも嫌い……。
いらないなら消えてしまえばいいのにとさえ思った。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「まだ残るの?」
キャンバスに向かう私に暁子ちゃんは聞いた。
時計の針はもう7時を過ぎている。
:07/10/26 00:35
:SO903i
:☆☆☆
#159 [向日葵]
「ちゃんと届け出したし、少しでも進めないと間に合いそうにないから。」
「そう?じゃあ気をつけて帰るんだよ?お疲れ!」
「お疲れ。」
教室は静かになった。
動物の標本。何かの骨。マネキン。そして私だけが教室にいる。
いささか気持ち悪くて仕方ないけど……。
私は筆を動かす。
油の匂いが少しだけした。
[千広の絵ってさ、優しいな。]
筆が、キャンバスの上で停止した。
:07/10/26 00:42
:SO903i
:☆☆☆
#160 [向日葵]
――――

――――
今日はここまでにします
>>22に感想板がありますんで良ければ感想お願いします

:07/10/26 00:43
:SO903i
:☆☆☆
#161 [向日葵]
「……っ。」
泣くな……。
泣いたって何も変わらないでしょ?
私知ってるもの。
中学生の時も、高校生の時も、大好きな人がいた。
いくら待っても告白される気配なんて全くなかった。でも思い続けてたら振り向いてくれるって思いながら、たまにそれに疲れて泣いてしまう時があった。
もしかしたらこんな私に神様は何かご褒美をくれるんじゃないかと期待して……。
結局は何事もなく卒業し、未練もなさそうに学校からいなくなる好きな人の背中を見るばかりだった。
:07/10/27 00:15
:SO903i
:☆☆☆
#162 [向日葵]
もういい……。
思い続ける自分が馬鹿らしく思えてきた。
こんな自分を好きになる奴が一体どこにいるんだろうかと、私は卑屈になっていった。
でも桜井君だけは違った。
こんな私の頭を撫でて、名前を呼んで……。
そんな桜井君が悪く言われる原因の私は、側にいてはいけない……。
私は誰も好きになってはいけない。
まるで神様から言われてるみたいだった……。
:07/10/27 00:20
:SO903i
:☆☆☆
#163 [向日葵]
窓を見ると、辛そうな私が映っていた。
まるで自分は悲劇のヒロインかもしれない……。
でもそれにしてはあまりにも
「ブサイクすぎ……。」
私は油絵の道具全てを片付けて、教室から出ていった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
帰ったらお風呂に入ろう。それも長風呂。
学校の門に向かいながら私は考えていた。
お風呂は私のストレス発散場所。
うだうだ考えてるのを汗と共に洗い流してくれる。
:07/10/27 00:24
:SO903i
:☆☆☆
#164 [向日葵]
そして寝ながら暗めの失恋ソングチックな歌でも聞こうかね。
と苦笑いしながらイヤホンに手をかけた。
「千広!」
「……?」
暗くて姿が見えない。
僅かにある外灯の下に名前を呼んだ人が一歩踏み出すと、その姿は明らかになった。
「さ……くら、い君……。」
桜井君は私を見るとニコッて笑って寄って来た。
駄目……私に近づいちゃいけない。
:07/10/27 00:28
:SO903i
:☆☆☆
#165 [向日葵]
「たまたまこっち方面に用事あってさ、千広の友達?らしき人が千広はまだ残ってるっつーから。待ってたんだ。」
「そんな事しないで!」
私が急に叫んだので桜井君は驚いていた。
「私は……こんなのだから……桜井君みたいな人は近づいちゃいけない。……帰るなら1人で帰った方がいいと思うよ。」
そう言って、私は桜井君の隣を過ぎた。
「え?ちょ、何。どーゆー事っ?」
私の横につきながら桜井君は私に話しかける。
ひたすら無視して、坂道を下って行った。
:07/10/27 00:33
:SO903i
:☆☆☆
#166 [向日葵]
駅に続く階段に差し掛かった時、行く手を桜井君に遮られた。
「ね、待ってってばっ。どうかしたの?!俺なんかした?!」
「……何で私に構うの?良いことなんかないよ?」
私に構ったら、それだけ桜井君の株が下がってしまうのだから。
「桜井君のお友達っぽい人達も心配してたよ。私に近づいちゃうから、桜井君はどんどん人気なくなっちゃうんだよ?」
「ねぇ何の話それ?」
「とにかく。桜井君だって初めて喋った時言ったじゃない。「助けるんじゃなかった。」つまり私がデブでブスだから損したって思ったんでしょ?ならもう構ってくれなくていいから……。」
:07/10/27 00:38
:SO903i
:☆☆☆
#167 [向日葵]
私は桜井君を避けて階段を降りようとした。
グイッ!
私の太い腕を桜井君は掴んだ。
「違う!……っあぁもう!こんなつもりじゃなかったのに!」
私は眉を寄せて桜井君を見ながら腕を離させた。
そして桜井君が言葉を出すのを待った。
「あれは…っその、シナリオと違うからつい漏れちゃった言葉であって……っ。」
「シナリオ?」
:07/10/27 00:42
:SO903i
:☆☆☆
#168 [向日葵]
桜井君の顔が苦しんでるように見えた。
一体何が言いたいんだろうと私は黙って静かに見つめた。
あ、夜だと暗いからよく顔が見れるや。
ぼんやり考えてると、桜井君が口を開いた。
「単刀直入に言うよ。俺は千広が好きだ。」
「……?!」
私は小さい目を目一杯開いた。
好き?私を…………っ?!
「電車で何回も見かける度に少しずつ気になっていったんだ。痴漢の時は、やっと話せるってめちゃくちゃ嬉しかったんだ!」
:07/10/27 00:46
:SO903i
:☆☆☆
#169 [向日葵]
私は人生初告白に頭が真っ白になって何度も瞬きをした。
初めて絶句と言う意味をしる。
「傷ついた千広を慰めようと思ったのに、千広は全然大丈夫そうだったから俺の予定は全部狂った訳!だからつい出た言葉がそれなの!分かった?!」
私は漫画で言う口から可愛いらしい魂が抜けていく状態で固まっていた。
こんな簡単に事が進んでいいのかと頭がぐるぐるし始めた。
「嘘だ……。」
やっと言葉が出せた。
「私みたいなの好きになるなんて……絶対信じないよ……っ。」
:07/10/27 00:51
:SO903i
:☆☆☆
#170 [向日葵]
私は180゚回転して階段を早めに降り始めた。
「だったら!」
何段か下りた時、桜井君が叫んだ。
周りが静かなので声がよく通り、大きなその声に立ち止まった私はゆっくりと振り返った。
「信じるまで追いかけてやるよ。」
階段をゆっくり下りながら桜井君はそう言った。
私のいる段まで来ると立ち止まって、ニヤッと笑った。
「覚悟してろよ。」
:07/10/27 00:55
:SO903i
:☆☆☆
#171 [向日葵]
その言葉に、私は早くも信じそうになりそうだった。
一番欲しい物が手に入らなかった19年間。
19歳のある日を境に、私の人生が少し変わろうとしていた……。
:07/10/27 00:57
:SO903i
:☆☆☆
#172 [向日葵]
ビー玉4*幼い僕達*
「私引越しするんだ。」
暑い暑い夏の日に、幼なじみの灯(あかり)が、買ったアイスキャンディソーダ味を食べながら呟いた。
当時小学生だった僕達はお互い仲良く、学校から帰ってくると公園でよくこうしたものだ。
:07/10/27 01:02
:SO903i
:☆☆☆
#173 [向日葵]
「引越しって……もうすぐ夏休みなのに?!」
「あのね巽(たつみ)。引越しに夏休みとか冬休みとか関係ないの。」
と灯は笑いながらアイスを一かじりした。
そんな軽く笑う灯をヨソに、僕の頭パニックに陥っていた。
僕は灯が好きなんだ。
なのに灯が引っ越してもう二度とこんな風に過ごせなくなるなんて……僕は嫌だ。
「?ちょっと巽?何黙ってんの!あ!分かった。私がいなくなるのが寂しいんだぁ〜。」
と人差し指で僕のこめかみ辺りをツンツン笑いながら灯は突いてきた。
:07/10/27 01:07
:SO903i
:☆☆☆
#174 [向日葵]
普段の僕なら「そんな訳あるか」と払い退けるが、引越しの事を聞いてしまった今、僕にそんな余裕などなかった。
灯の手を乱暴に振り払う。
「灯は寂しくないのかよ!そんなヘラヘラ笑いやがって……っ。俺は……。」
12歳になった僕は、「好き」と普通に言えなくなってしまった。
大きくなるばかりがいいことじゃない。
昔の様に「好き」と気軽に言う事が出来るなら、灯を引き留める事が出来るんだろうか。
:07/10/27 01:11
:SO903i
:☆☆☆
#175 [向日葵]
すると灯は笑顔を段々と消し、うつ向いてしまった。
ヤバイ……強くいいすぎたか……?
「……じゃん……。」
「え?」
僅かに聞き取れる声は理解するのには不十分で、僕は聞き返した。
灯はバッと顔を上げると眉を上げ、目は涙で濡れていた。
「寂しくない訳ないでしょ!巽のバカッ!!巽なら笑い飛ばしてくれると思ったのに!泣きたくないから人が明るく話てるのにぃー……っ。」
:07/10/27 01:16
:SO903i
:☆☆☆
#176 [向日葵]
ポテッと溶けてしまった2人のアイスが砂の上に落ちる。
僕は棒もその場に捨てて灯の頭を撫でた。
「ば、馬鹿か……笑える訳ないだろ……。」
「私泣くの性に合わないから好きじゃないの……。知ってるでしょ?」
もちろん知ってる。
いつも見ていた。
笑って、辛くても笑い声溢れる灯だからこそ、その時は愛しいの意味なんか知らなかったけど愛しいと思った。
「俺……灯が好きだよ。」
:07/10/27 01:20
:SO903i
:☆☆☆
#177 [向日葵]
「あ……やっぱり?」
「は?」
涙を拭きながら灯はニカッと笑った。
「そんな予感してたんだぁ〜♪」
「なっ……!!」
僕は顔が真っ赤になった。ただでさえ太陽と気温のせいで暑い体が更に暑く熱っていく。
そんな僕を見て、灯はフワッと笑う。
「私も巽が好き。だから離れたくないんだよ……。」
言ってから、灯の顔がほんのり赤くなった。
僕はそれを見て、灯の手をキュッと握る。
:07/10/27 01:23
:SO903i
:☆☆☆
#178 [向日葵]
しばらくの間、やかましい程の蝉の声に耳を澄ませた。
「……いつ行くの?」
「明後日……。」
「そっか……。」
僕らは再び黙った。
そして灯がぽそっと呟いた。
「どうにかならないかなぁ……。」
その言葉を聞いて、僕は一生懸命頭を回転させて方法を考えた。
そして思いついた。
今思えばなんて馬鹿な考えだろうと笑える。
でもその時の僕は、それが精一杯だった。
:07/10/27 01:28
:SO903i
:☆☆☆
#179 [向日葵]
「今からどっか遠くに行っちゃおうよ。」
「え?」
「それでおじさん達を心配させるんだ!そしたら灯が引越したくないのが分かるんじゃない?!」
僕の考えに、灯は目を輝かせて大きく頷いた。
「“遊ぶのは5時まで”って約束は守らなくていいんだね!」
「むしろ夜になれ!みたいな!」
僕達はまるで冒険にでも行く気分で笑い合って手を繋ぎ、宛てもなく走りだした。
:07/10/27 01:32
:SO903i
:☆☆☆
#180 [向日葵]
――――

――――
今日はここまでにします
>>22に感想板がありますんで、良ければ感想お願いします

:07/10/27 01:33
:SO903i
:☆☆☆
#181 [向日葵]
「ねぇ巽!あんなトコ初めてみたね!」「あれ何かなっ?ね、巽!」
「巽!ねぇ巽!」
灯は何度も僕の名前を呼んだ。
今の彼女は僕が中心の世界だ。それが僕は嬉しかった。
夕暮れになっても、僕らは疲れる事なく笑い、はしゃぎながら走って行った。
そしてもう日が大分落ちてしまった時、知らない公園に立ち寄った。
僕達はブランコに乗り、目一杯漕ぎ始めた。
「灯、どれくらい飛べるかやってみようぜ!」
「ウンいいよ!」
:07/10/28 01:44
:SO903i
:☆☆☆
#182 [向日葵]
「「せーのっ!」」
僕達は一緒に飛んだ。
「よっ!」
「えー!巽そんなトコまで飛んじゃったー!」
勝負は僕の勝ちだった。
悔しそうに口を尖らす灯がとても可愛いかった。
気付けば夜になっていた。外灯が少なかったその公園は、とても星が綺麗だった。
「あれが夏の大三角形かな?」
「はくちょう座と……なんだっけ?」
「私も忘れたっ。」
僕達はシシシ!と笑った。
:07/10/28 01:49
:SO903i
:☆☆☆
#183 [向日葵]
全てが輝いていて、隣には大好きな灯がいて、僕にはそれで十分だった。
「灯!」
「巽!」
笑い合ってた僕達は一気に表情を消した。
耳慣れたその声は、まさしく僕らの両親のものだった。
「危ないでしょ?!何してるのよ馬鹿!」
「灯!もうすぐ引越すのに何かあったらどうするの!」
「……っやだ……。おばさんやめて!」
:07/10/28 01:52
:SO903i
:☆☆☆
#184 [向日葵]
灯を掴んでいたおばさんの手から灯を奪って、僕は灯を抱き締めた。
そしておばさんを睨んだ。
「灯を連れていかないで!灯だってここにいたいって言ってる!灯の面倒なら俺が見るから!!」
必死だった。
僕は灯の世界から僕がいなくなるのが怖かった。
いつまでも灯の世界で僕は生き続けたかった。
おばさんは悲しそうにすると、細い手で僕の頭を撫でた。
そして呟いた。
「ゴメンネ……。」
:07/10/28 01:57
:SO903i
:☆☆☆
#185 [向日葵]
絶望と言う言葉の意味を知った気がした。
僕は灯を離して静かに自分の手を見た。
なんて小さなちっぽけな手……。
何一つ守れない幼い自分。この時ほど、早く大人になりたいと願った事はなかった。
「好き」と簡単に言えなくても、大切な人を守れるならば、早く大きくなりたかった。
そして遂に、灯が引越す日が来てしまった…………。
「じゃあね巽。手紙書くから。」
:07/10/28 02:01
:SO903i
:☆☆☆
#186 [向日葵]
車に乗る前に、灯が喋りかけてきた。
灯は変わらない笑顔で僕に話す。
知ってる。灯、お前も悲しいんだよな……。
「俺も……書く。」
「うん……っ!」
2人に沈黙が流れた時、車の中から申し訳なさそうにおばさんが「灯。乗りなさい。」と言った。
いよいよ……別れの時だ……。
灯は口元に笑みを残したまま車に乗ろうとした。
「……。――っ!!」
:07/10/28 02:04
:SO903i
:☆☆☆
#187 [向日葵]
そんな灯を、僕は引っ張って強く抱き締めた。
僕の目からは、大粒の滴が流れる。
「大好きでいるから……っ。灯も大好きでいろよ……っ?!」
あんまり泣いたら格好悪い。なのに涙は後から後からいくつも丸くなって流れていく。
灯は僕の背中のシャツをギュッと握った。
「……っウン……!!」
決してこれは子供の淡い恋心とか、そんな簡単な言葉で片付けないで欲しい。
:07/10/28 02:08
:SO903i
:☆☆☆
#188 [向日葵]
年齢なんて関係ない。
僕らは幼いながらも精一杯お互いを好きで、体一杯の気持ちを持っていたんだ。
――――――――……
「巽ー!朝だよーっ!」
母親の声で、2階の自室で寝ていた僕は、ダルそうに起きた。
「……あー。夢か。」
今年、僕は15歳になった。
遠くにいる灯とは、ちゃんと手紙を書いたり送ってきたりと続いてり。
正直携帯が欲しいが、いくら頼んでも親は「高校入ってから!」の一言。
:07/10/28 02:13
:SO903i
:☆☆☆
#189 [向日葵]
それを手紙で灯に告げると、灯もそう言われたと書いてあった。
ほっぺを膨らまして拗ねてる灯の姿が目に浮かんで僕は手紙を読みながらフッと笑った。
「いってきまーす。」
来年の春、僕は高校生。
灯も高校生。
やっと携帯が買えて、文面だけじゃなくて電話が出来て、声が聞ける。
そう思うと待ち遠しくて仕方ない。
灯は未だ変わらない明るい声のままだろうか。
:07/10/28 02:16
:SO903i
:☆☆☆
#190 [向日葵]
僕は高い声から、変声期を迎え、男らしい声になった。
この声を聞いたら、灯は驚くかなぁ。
「ん?」
靴を履き慣らして、門を出ようとすると、郵便受けに手紙が何通か入っていた。
いらないものばかりの中に、青色をした便箋が入っていた。
差出人は…………灯だ。
「……!!」
僕は待ちきれなくて、絡まってしまう指先で封を開けた。
:07/10/28 02:24
:SO903i
:☆☆☆
#191 [向日葵]
僕は手紙を読み始めた。
「……。……っ!―――ぃやったぁぁぁ!!!!」
カバンと手紙を振り回しながら、僕は学校まで走って行った。
<巽へ。
元気?こっちは大分涼しくなってきたよ。そういえば、巽に嬉しいニュースをあげよう。私、高校はそっちを受けるの。また引越しをして、巽んちの隣に住む事になったんだ!出来れば……巽と同じ高校がいい!だから頑張って勉強するねっ!巽も頑張りなさいよ?それから…………巽、大好き!じゃね! 灯より>
:07/10/28 02:28
:SO903i
:☆☆☆
#192 [向日葵]
ビー玉5*弟の君*
「加寿(かず)姉ちゃん!」
「なぁに誠(せい)。」
3つ離れたご近所の誠。
小さい頃から可愛いくて、それはそれは女の子みたいだったのだ。
―――――――――……
それから数年後。
:07/10/28 02:33
:SO903i
:☆☆☆
#193 [向日葵]
「せ―――い―――。」
私は高校生2年生。誠は中学2年生になった。
「ハイハイ。いちいち呼ばなくてもいいから加寿姉。」
中高大とエスカレーターになってる私達の学校。なので私達はいつも一緒に行ってる。
じー……。
「……。何……?」
小さい頃から女の子の様な誠は大きくなっても女の子みたいでまつ毛は多くそして長い。少し長いツヤツヤの黒髪なんかすごくいい!
:07/10/28 02:38
:SO903i
:☆☆☆
#194 [向日葵]
「相変わらず可愛いなぁーって。」
「……。」
微笑みながら誠の頭を撫でた。
すると誠は静かに私の手をどけて先にスタスタ進んでしまった。
ここ数年で唯一誠が変わってしまったのは、よそよそしくなってしまった所だ。
姉気分の私としては、なんだか寂しい……。
頭撫でられるの嫌いだったのかな……。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「誠今日何かあったりする?」
:07/10/28 02:41
:SO903i
:☆☆☆
#195 [向日葵]
――――

――――
今日はここまでにします
>>22に感想板ありますんで良ければ感想お願いします

:07/10/28 02:43
:SO903i
:☆☆☆
#196 [向日葵]
誠は首を振って「別に」と答えた。
「なら先帰ってね。今日委員会があるからその関係で遅くなっちゃうし。」
「……待っておく。」
「え?なんで?いいよ帰っても。」
誠はこちらをちらっと見てからまた前を向いた。
「この頃、ここらよく痴漢でんだよ。」
誠の横顔を見ながら私は首を少し傾けた。
それがどうしたと言うんだろうか……。
:07/10/29 00:36
:SO903i
:☆☆☆
#197 [向日葵]
私の視線に気付いた誠は短くハァ……とため息を漏らした。
「あのさ加寿姉。もうちょっと自分の身について気をつけてくんないかな。」
「そう?私これでもしっかり者よっ。」
誠はまるで「んな訳ない」と言いたいみたいに顔を歪ませて無言で私を非難した。
そしてまた短くため息を漏らすと、足早に下駄箱へと向かってしまった。
中学生と高校生の下駄箱は違う為、誠とはここでお別れだ。
それにしても、誠は何が言いたかったんだろ……。
:07/10/29 00:41
:SO903i
:☆☆☆
#198 [向日葵]
「おっはよう!」
「おはよう杏(あん)ちゃん!」
この子は杏ちゃん。同じクラスのお友達。
活発で面白い子です。
「朝から相変わらずラブラブだねー。」
「え?」
「告白は?まだ?」
私は杏ちゃんが何を言いたいのか分からなくて頭の上がハテナの洪水だった。
そんな私を見て、杏ちゃんは「まったまたー!」と言った。
「あの美少年中学生と付き合ってんでしょっ?隠さなくていいってー!」
:07/10/29 00:47
:SO903i
:☆☆☆
#199 [向日葵]
杏ちゃんは私をバシバシ叩きながら豪快にアッハッハと笑う。
私は痛さに耐えながら杏ちゃんの手をなんとか掴んだ。
「ちょ、誠はそんなんじゃないって!誠は弟みたいなもので、全く付き合ってなんかないんだからっ。」
私の言葉に杏ちゃんはピタッと叩くのを止めた。
口パクで「マジで?」と聞くので、私も口パクで「マジで」と返した。
「えー!私ずっと付き合ってんのかと思ったのにー!」
「違います!」
:07/10/29 00:51
:SO903i
:☆☆☆
#200 [向日葵]
靴を履き変えて、一緒に階段を上がっていると、杏ちゃんが「ウーン」と唸った。
「どうかした?」
「ん?あ、イヤね、その……誠君……だっけ?中高と人気高くってね。」
「?ウン。」
それもそうだろうなぁ。
誠はなんと言ってもあの容姿。しかもすっごく優しいのを知ってる。
そうなると、女の子からは当たり前のように人気があるんだろうなぁ。
いつか彼女とか出来たら大切にするんだろうなぁ……。
:07/10/29 00:56
:SO903i
:☆☆☆
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