○ビー玉ラバーズ○
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#170 [向日葵]
私は180゚回転して階段を早めに降り始めた。

「だったら!」

何段か下りた時、桜井君が叫んだ。
周りが静かなので声がよく通り、大きなその声に立ち止まった私はゆっくりと振り返った。

「信じるまで追いかけてやるよ。」

階段をゆっくり下りながら桜井君はそう言った。

私のいる段まで来ると立ち止まって、ニヤッと笑った。

「覚悟してろよ。」

⏰:07/10/27 00:55 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#171 [向日葵]
その言葉に、私は早くも信じそうになりそうだった。

一番欲しい物が手に入らなかった19年間。

19歳のある日を境に、私の人生が少し変わろうとしていた……。

⏰:07/10/27 00:57 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#172 [向日葵]
ビー玉4*幼い僕達*











「私引越しするんだ。」

暑い暑い夏の日に、幼なじみの灯(あかり)が、買ったアイスキャンディソーダ味を食べながら呟いた。

当時小学生だった僕達はお互い仲良く、学校から帰ってくると公園でよくこうしたものだ。

⏰:07/10/27 01:02 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#173 [向日葵]
「引越しって……もうすぐ夏休みなのに?!」

「あのね巽(たつみ)。引越しに夏休みとか冬休みとか関係ないの。」

と灯は笑いながらアイスを一かじりした。

そんな軽く笑う灯をヨソに、僕の頭パニックに陥っていた。

僕は灯が好きなんだ。
なのに灯が引っ越してもう二度とこんな風に過ごせなくなるなんて……僕は嫌だ。

「?ちょっと巽?何黙ってんの!あ!分かった。私がいなくなるのが寂しいんだぁ〜。」

と人差し指で僕のこめかみ辺りをツンツン笑いながら灯は突いてきた。

⏰:07/10/27 01:07 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#174 [向日葵]
普段の僕なら「そんな訳あるか」と払い退けるが、引越しの事を聞いてしまった今、僕にそんな余裕などなかった。

灯の手を乱暴に振り払う。

「灯は寂しくないのかよ!そんなヘラヘラ笑いやがって……っ。俺は……。」

12歳になった僕は、「好き」と普通に言えなくなってしまった。

大きくなるばかりがいいことじゃない。

昔の様に「好き」と気軽に言う事が出来るなら、灯を引き留める事が出来るんだろうか。

⏰:07/10/27 01:11 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#175 [向日葵]
すると灯は笑顔を段々と消し、うつ向いてしまった。

ヤバイ……強くいいすぎたか……?

「……じゃん……。」

「え?」

僅かに聞き取れる声は理解するのには不十分で、僕は聞き返した。

灯はバッと顔を上げると眉を上げ、目は涙で濡れていた。

「寂しくない訳ないでしょ!巽のバカッ!!巽なら笑い飛ばしてくれると思ったのに!泣きたくないから人が明るく話てるのにぃー……っ。」

⏰:07/10/27 01:16 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#176 [向日葵]
ポテッと溶けてしまった2人のアイスが砂の上に落ちる。

僕は棒もその場に捨てて灯の頭を撫でた。

「ば、馬鹿か……笑える訳ないだろ……。」

「私泣くの性に合わないから好きじゃないの……。知ってるでしょ?」

もちろん知ってる。
いつも見ていた。

笑って、辛くても笑い声溢れる灯だからこそ、その時は愛しいの意味なんか知らなかったけど愛しいと思った。

「俺……灯が好きだよ。」

⏰:07/10/27 01:20 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#177 [向日葵]
「あ……やっぱり?」

「は?」

涙を拭きながら灯はニカッと笑った。

「そんな予感してたんだぁ〜♪」

「なっ……!!」

僕は顔が真っ赤になった。ただでさえ太陽と気温のせいで暑い体が更に暑く熱っていく。

そんな僕を見て、灯はフワッと笑う。

「私も巽が好き。だから離れたくないんだよ……。」

言ってから、灯の顔がほんのり赤くなった。
僕はそれを見て、灯の手をキュッと握る。

⏰:07/10/27 01:23 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#178 [向日葵]
しばらくの間、やかましい程の蝉の声に耳を澄ませた。

「……いつ行くの?」

「明後日……。」

「そっか……。」

僕らは再び黙った。
そして灯がぽそっと呟いた。

「どうにかならないかなぁ……。」

その言葉を聞いて、僕は一生懸命頭を回転させて方法を考えた。

そして思いついた。
今思えばなんて馬鹿な考えだろうと笑える。

でもその時の僕は、それが精一杯だった。

⏰:07/10/27 01:28 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#179 [向日葵]
「今からどっか遠くに行っちゃおうよ。」

「え?」

「それでおじさん達を心配させるんだ!そしたら灯が引越したくないのが分かるんじゃない?!」

僕の考えに、灯は目を輝かせて大きく頷いた。

「“遊ぶのは5時まで”って約束は守らなくていいんだね!」

「むしろ夜になれ!みたいな!」

僕達はまるで冒険にでも行く気分で笑い合って手を繋ぎ、宛てもなく走りだした。

⏰:07/10/27 01:32 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#180 [向日葵]
――――――――

今日はここまでにします

>>22に感想板がありますんで、良ければ感想お願いします

⏰:07/10/27 01:33 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#181 [向日葵]
「ねぇ巽!あんなトコ初めてみたね!」「あれ何かなっ?ね、巽!」

「巽!ねぇ巽!」

灯は何度も僕の名前を呼んだ。
今の彼女は僕が中心の世界だ。それが僕は嬉しかった。

夕暮れになっても、僕らは疲れる事なく笑い、はしゃぎながら走って行った。

そしてもう日が大分落ちてしまった時、知らない公園に立ち寄った。
僕達はブランコに乗り、目一杯漕ぎ始めた。

「灯、どれくらい飛べるかやってみようぜ!」

「ウンいいよ!」

⏰:07/10/28 01:44 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#182 [向日葵]
「「せーのっ!」」

僕達は一緒に飛んだ。

「よっ!」

「えー!巽そんなトコまで飛んじゃったー!」

勝負は僕の勝ちだった。
悔しそうに口を尖らす灯がとても可愛いかった。

気付けば夜になっていた。外灯が少なかったその公園は、とても星が綺麗だった。

「あれが夏の大三角形かな?」

「はくちょう座と……なんだっけ?」

「私も忘れたっ。」

僕達はシシシ!と笑った。

⏰:07/10/28 01:49 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#183 [向日葵]
全てが輝いていて、隣には大好きな灯がいて、僕にはそれで十分だった。

「灯!」

「巽!」

笑い合ってた僕達は一気に表情を消した。

耳慣れたその声は、まさしく僕らの両親のものだった。

「危ないでしょ?!何してるのよ馬鹿!」

「灯!もうすぐ引越すのに何かあったらどうするの!」

「……っやだ……。おばさんやめて!」

⏰:07/10/28 01:52 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#184 [向日葵]
灯を掴んでいたおばさんの手から灯を奪って、僕は灯を抱き締めた。
そしておばさんを睨んだ。

「灯を連れていかないで!灯だってここにいたいって言ってる!灯の面倒なら俺が見るから!!」

必死だった。

僕は灯の世界から僕がいなくなるのが怖かった。
いつまでも灯の世界で僕は生き続けたかった。

おばさんは悲しそうにすると、細い手で僕の頭を撫でた。

そして呟いた。

「ゴメンネ……。」

⏰:07/10/28 01:57 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#185 [向日葵]
絶望と言う言葉の意味を知った気がした。

僕は灯を離して静かに自分の手を見た。

なんて小さなちっぽけな手……。
何一つ守れない幼い自分。この時ほど、早く大人になりたいと願った事はなかった。

「好き」と簡単に言えなくても、大切な人を守れるならば、早く大きくなりたかった。

そして遂に、灯が引越す日が来てしまった…………。

「じゃあね巽。手紙書くから。」

⏰:07/10/28 02:01 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#186 [向日葵]
車に乗る前に、灯が喋りかけてきた。
灯は変わらない笑顔で僕に話す。
知ってる。灯、お前も悲しいんだよな……。

「俺も……書く。」

「うん……っ!」

2人に沈黙が流れた時、車の中から申し訳なさそうにおばさんが「灯。乗りなさい。」と言った。

いよいよ……別れの時だ……。

灯は口元に笑みを残したまま車に乗ろうとした。

「……。――っ!!」

⏰:07/10/28 02:04 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#187 [向日葵]
そんな灯を、僕は引っ張って強く抱き締めた。

僕の目からは、大粒の滴が流れる。

「大好きでいるから……っ。灯も大好きでいろよ……っ?!」

あんまり泣いたら格好悪い。なのに涙は後から後からいくつも丸くなって流れていく。

灯は僕の背中のシャツをギュッと握った。

「……っウン……!!」

決してこれは子供の淡い恋心とか、そんな簡単な言葉で片付けないで欲しい。

⏰:07/10/28 02:08 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#188 [向日葵]
年齢なんて関係ない。
僕らは幼いながらも精一杯お互いを好きで、体一杯の気持ちを持っていたんだ。

――――――――……

「巽ー!朝だよーっ!」

母親の声で、2階の自室で寝ていた僕は、ダルそうに起きた。

「……あー。夢か。」

今年、僕は15歳になった。
遠くにいる灯とは、ちゃんと手紙を書いたり送ってきたりと続いてり。
正直携帯が欲しいが、いくら頼んでも親は「高校入ってから!」の一言。

⏰:07/10/28 02:13 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#189 [向日葵]
それを手紙で灯に告げると、灯もそう言われたと書いてあった。

ほっぺを膨らまして拗ねてる灯の姿が目に浮かんで僕は手紙を読みながらフッと笑った。

「いってきまーす。」

来年の春、僕は高校生。

灯も高校生。

やっと携帯が買えて、文面だけじゃなくて電話が出来て、声が聞ける。

そう思うと待ち遠しくて仕方ない。

灯は未だ変わらない明るい声のままだろうか。

⏰:07/10/28 02:16 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#190 [向日葵]
僕は高い声から、変声期を迎え、男らしい声になった。
この声を聞いたら、灯は驚くかなぁ。

「ん?」

靴を履き慣らして、門を出ようとすると、郵便受けに手紙が何通か入っていた。

いらないものばかりの中に、青色をした便箋が入っていた。

差出人は…………灯だ。

「……!!」

僕は待ちきれなくて、絡まってしまう指先で封を開けた。

⏰:07/10/28 02:24 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#191 [向日葵]
僕は手紙を読み始めた。

「……。……っ!―――ぃやったぁぁぁ!!!!」

カバンと手紙を振り回しながら、僕は学校まで走って行った。

<巽へ。
元気?こっちは大分涼しくなってきたよ。そういえば、巽に嬉しいニュースをあげよう。私、高校はそっちを受けるの。また引越しをして、巽んちの隣に住む事になったんだ!出来れば……巽と同じ高校がいい!だから頑張って勉強するねっ!巽も頑張りなさいよ?それから…………巽、大好き!じゃね!    灯より>

⏰:07/10/28 02:28 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#192 [向日葵]
ビー玉5*弟の君*










「加寿(かず)姉ちゃん!」

「なぁに誠(せい)。」

3つ離れたご近所の誠。
小さい頃から可愛いくて、それはそれは女の子みたいだったのだ。

―――――――――……

それから数年後。

⏰:07/10/28 02:33 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#193 [向日葵]
「せ―――い―――。」

私は高校生2年生。誠は中学2年生になった。

「ハイハイ。いちいち呼ばなくてもいいから加寿姉。」

中高大とエスカレーターになってる私達の学校。なので私達はいつも一緒に行ってる。

じー……。

「……。何……?」

小さい頃から女の子の様な誠は大きくなっても女の子みたいでまつ毛は多くそして長い。少し長いツヤツヤの黒髪なんかすごくいい!

⏰:07/10/28 02:38 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#194 [向日葵]
「相変わらず可愛いなぁーって。」

「……。」

微笑みながら誠の頭を撫でた。
すると誠は静かに私の手をどけて先にスタスタ進んでしまった。

ここ数年で唯一誠が変わってしまったのは、よそよそしくなってしまった所だ。

姉気分の私としては、なんだか寂しい……。

頭撫でられるの嫌いだったのかな……。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「誠今日何かあったりする?」

⏰:07/10/28 02:41 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#195 [向日葵]
――――――――

今日はここまでにします

>>22に感想板ありますんで良ければ感想お願いします

⏰:07/10/28 02:43 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#196 [向日葵]
誠は首を振って「別に」と答えた。

「なら先帰ってね。今日委員会があるからその関係で遅くなっちゃうし。」

「……待っておく。」

「え?なんで?いいよ帰っても。」

誠はこちらをちらっと見てからまた前を向いた。

「この頃、ここらよく痴漢でんだよ。」

誠の横顔を見ながら私は首を少し傾けた。

それがどうしたと言うんだろうか……。

⏰:07/10/29 00:36 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#197 [向日葵]
私の視線に気付いた誠は短くハァ……とため息を漏らした。

「あのさ加寿姉。もうちょっと自分の身について気をつけてくんないかな。」

「そう?私これでもしっかり者よっ。」

誠はまるで「んな訳ない」と言いたいみたいに顔を歪ませて無言で私を非難した。
そしてまた短くため息を漏らすと、足早に下駄箱へと向かってしまった。

中学生と高校生の下駄箱は違う為、誠とはここでお別れだ。

それにしても、誠は何が言いたかったんだろ……。

⏰:07/10/29 00:41 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#198 [向日葵]
「おっはよう!」

「おはよう杏(あん)ちゃん!」

この子は杏ちゃん。同じクラスのお友達。
活発で面白い子です。

「朝から相変わらずラブラブだねー。」

「え?」

「告白は?まだ?」

私は杏ちゃんが何を言いたいのか分からなくて頭の上がハテナの洪水だった。
そんな私を見て、杏ちゃんは「まったまたー!」と言った。

「あの美少年中学生と付き合ってんでしょっ?隠さなくていいってー!」

⏰:07/10/29 00:47 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#199 [向日葵]
杏ちゃんは私をバシバシ叩きながら豪快にアッハッハと笑う。
私は痛さに耐えながら杏ちゃんの手をなんとか掴んだ。

「ちょ、誠はそんなんじゃないって!誠は弟みたいなもので、全く付き合ってなんかないんだからっ。」

私の言葉に杏ちゃんはピタッと叩くのを止めた。
口パクで「マジで?」と聞くので、私も口パクで「マジで」と返した。

「えー!私ずっと付き合ってんのかと思ったのにー!」

「違います!」

⏰:07/10/29 00:51 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#200 [向日葵]
靴を履き変えて、一緒に階段を上がっていると、杏ちゃんが「ウーン」と唸った。

「どうかした?」

「ん?あ、イヤね、その……誠君……だっけ?中高と人気高くってね。」

「?ウン。」

それもそうだろうなぁ。
誠はなんと言ってもあの容姿。しかもすっごく優しいのを知ってる。
そうなると、女の子からは当たり前のように人気があるんだろうなぁ。

いつか彼女とか出来たら大切にするんだろうなぁ……。

⏰:07/10/29 00:56 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


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