-Castaway-
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#5 [主◆vzApYZDoz6]

京介「あれ?あんなとこにドアなんかあったっけ?」
藍「それ今言ったから!…でもあんなとこにドアなんか無かったよね?」

京介「たぶん…無かったと思うけど」


2人ともドアを見つめながら、不思議そうに会話していた。

ドアは全体的に茶色で、ドアノブと思われる水平棒がついている。ノブを回すのではなく、下げて押し開けるタイプのドアだろう。
そのドアがある場所は、今日の朝までは間違いなく壁だった。

少しの間2人とも沈黙していたが、藍が唐突に口を開いた


藍「ねぇ、中に何があるか気にならない?」

⏰:07/12/15 18:11 📱:P903i 🆔:cNAOSz2Y


#6 [主◆vzApYZDoz6]
京介「まぁ気にはなるけど…明らかに怪しいだろアレ」

京介の言うことは最もだ。
ドアがある場所は階段裏のデッドスペースで、せいぜい物置程度の空間しか無いだろう。ましてや人が住んでいるなどあるはずもない。さらに、このドアは恐らく京介達が学校にいる間に突然現れたのだ。
怪しい事この上ない。


藍「分かってるよそんなの。だから中が気になるんじゃない!」
京介「いやまぁ…言いたいことは分かるけど」
藍「ほら京ちゃん、中見てみよ!ちょっと除くだけじゃん!」
京介「万が一人がいたらどーすんだ」


京介の心配もよそに、藍は京介の腕を引いてドアへ向かっていた。
京介も何だかんだで気になるので、そのまま引かれてドアへ向かう。
藍がドアノブに手をかけた。


藍「あっ、一応おじゃましますって言った方がいいかな?」
京介「心配せんでも人はいねぇだろうけど…まぁ、好きにすればいいんじゃね?」
藍「よーし、じゃあ…おじゃましまーす!!」


藍が勢いよくドアを開け中に入る。
京介も中に入った。


京介達が予想外の中の光景に驚きはしゃいでいる後ろで、ドアの蝶番がゆっくりと戻っていく。


やがてドアが完全に閉まり、ドアノブが水平の位置へ戻る。



カチッ、という音と共にドアノブが水平に戻った瞬間、ドアが光に包まれ、忽然と消え去った。

⏰:07/12/15 18:27 📱:P903i 🆔:cNAOSz2Y


#7 [主◆vzApYZDoz6]

藍「すごーい…」
京介「何だここ?」


2人が出た場所は階段裏のデッドスペースなどではなかった。
回りはどこを見渡しても草原が広がるばかりで生き物も見当たらず、建物はおろか、木の1本すら生えていない。水平線の彼方に山が広がっているだけで、まるでモンゴルの大草原を彷彿とさせた。


京介「ドアの向こうは不思議の草原でした。」
藍「あははっ、それ『千と千尋の神隠し』じゃん!…でも何だろうねここ」
京介「てゆうかあのドアってマンション裏にあったはずじゃ…―――げっ!」


京介はドアを見ようと振り返り驚愕した。


京介「ドアが…ドアが無くなってる!」


京介は、今しがた自分が出てきた場所をまさぐったが、空を切るばかりだ。

⏰:07/12/15 18:47 📱:P903i 🆔:cNAOSz2Y


#8 [主◆vzApYZDoz6]

京介「どうやって帰るんだよ…なぁ藍、これからどう―――あれ?」

さっきまで隣にいた藍がいない。
京介は焦って辺りを見回すと、藍が50m程先で佇んでいた。
京介はほっとして胸を撫で下ろし、駆け足で近付いた。

京介「どうしたんだ?」

藍「あ、京ちゃん、あれさっきのドアじゃない?」

京介「えっ?…あっ、ホントだ」

藍が指差してた先を見ると、10mぐらい先だろうか、確かにここに来たときにくぐったのと同じようなドアが見える。

⏰:07/12/15 18:56 📱:P903i 🆔:cNAOSz2Y


#9 [主◆vzApYZDoz6]
京介「よし、ならさっさと帰るぞ」

藍「えっ、どうせならもっと探検してみようよ!」

京介「探検してみようよって、回り何もねぇじゃん…」

藍「だからあっちの山まで…」

京介「遠いわ!これ以上わけわからん事になる前に帰るぞ」

ほら、と藍の腕を引っ張る。
藍は少しふてくされながら渋々ついていった。

⏰:07/12/15 19:01 📱:P903i 🆔:cNAOSz2Y


#10 [主◆vzApYZDoz6]
さっきと同じドアを、今度は京介が開く。

京介「あれ…また変なとこに出たぞ?」


そこはマンションの階段だった。が、明らかに外の風景が自宅のマンションとは違う。
辺りは夜のようで、マンションを出るとレンガの道が左右に伸びており、脇には該当の光が点々と続いている。向かいや隣にもレンガ造りのマンションや家が並んでいる。その町並みはロンドンの市街のようだが、人は全く見当たらず、あまりに閑散としている。

藍「なんか怖いね…」

京介「まぁ…とりあえずまたドアが無いか探してみようぜ。離れんなよ」

やはりドアが消え失せて壁になっている場所を一瞥しながら、藍の手を引いて外に出る。

京介達がレンガ道の真ん中に出ると後ろで、瓦を割ったような大きな音が響いた。

京介「なんだ!?」


見ると、男が立っていた。

⏰:07/12/15 19:38 📱:P903i 🆔:cNAOSz2Y


#11 [主◆vzApYZDoz6]
男はスキンヘッドで、黒いジャケットに黒いカッターを着ていた。肌も褐色で、周囲の薄暗さも相まって景色に溶け込んでいた。
男の足元を見ると、まるで上空からボーリングの球を落としたかのように、レンガが抉れ捲り上がっていた。

京介「何だよお前…?」

後ろの藍を右腕で制しながら言う。

?「やはり来たか…悪いが、死んでもらおう」

京介「はっ?」

男は既に右腕をふりかぶっていた。

⏰:07/12/15 19:58 📱:P903i 🆔:cNAOSz2Y


#12 [主◆vzApYZDoz6]
京介「危ない!!」

京介は藍を抱え右に飛ぶ。

間一髪。
男の右腕は、つい半瞬前まで京介達がいた場所の地面にめり込んでいた。

男が腕を引き抜き、京介達の方へ向き直る。
男の右腕は、左腕の3倍はあろうかというぐらいに膨れ上がっていた。
京介はすぐに立ち上がり、藍を抱え起こす。

藍「ありがとう…でも何あの人!?」

京介「分からねぇけど、とにかく逃げるぞ!!」

京介は藍の腕を引っ張り走り出した。
男もそれを確認し、体をかがめた。

?「逃げるのはいい事だが…遅いな」

一気に飛び出す。
一瞬で京介達を飛び越えた。

京介「げっ」

?「無駄な足掻きはするんじゃない」

男は再度右腕を打ち出す。
京介は走っていて急に止まったため体勢が不安定だった。

京介「やべ…!」

その時、京介の前に見慣れた人物が現れた。

⏰:07/12/15 21:19 📱:P903i 🆔:cNAOSz2Y


#13 [主◆vzApYZDoz6]
藍「…内藤先生?」

京介「えっ?」

内藤「ふぅ…間一髪か」

内藤が男の拳を払いながら溜め息をついた。

(内藤 篤史、35歳。京介と藍のクラスの担任です。)
京介「内藤!!何でここに!?」

内藤「川上、先生を呼び捨てで呼ぶもんじゃないぞ」
?「誰だ、貴様は」


男が左手を前に突きだし構えをとった。
内藤もそれに倣い、体勢を立て直す。

内藤「俺も地球から来た人間だ。…こいつらと同じ、な」

内藤が後ろの京介達を顎で指す。

?「地球人か…ならば貴様も死んでもらうが」

⏰:07/12/15 22:16 📱:P903i 🆔:cNAOSz2Y


#14 [主◆vzApYZDoz6]
京介と藍は困惑していた。
京介は頭の中で数々の疑問が浮かぶ。
地球から来た…って、じゃあここは何処なんだ?
地球人か…って、あいつは地球人じゃないのか?
藍はわけもわからず黙って立っていた。
京介はとりあえず内藤に訊いた。

京介「なぁ、内藤、何か知ってるみたいだけど、一体なんなんだ?」

内藤「ん?それはあとで説明する。てゆうか先生を呼び捨てに―――」

会話を遮るように男が踏み込んだ。
初撃、2撃目よりも遥かに早く右ストレートが打ち出される。

内藤「……全く気が早いな。親から教わらなかったか?」

内藤の左手が男の右拳に添えられた。
男の右拳を、スピードを殺さず手前に引く。

内藤「人が喋っている時は―――」

間髪入れず右手で男の右肩を掴み、さらに引く。
左手は男の拳から離れ、そのまま弧を描きながら男の踏み込み足を掴む。
内藤が左右の腕を勢いよく交差させると、男の体が宙に舞った。
内藤はそのまま右拳を腰に構え―――

内藤「―――邪魔をするんじゃない!」

―――渾身の掌呈突きを繰り出した。

?「ごはっ!!」

男は血を吐き、体は数m吹っ飛んだ。

京介「内藤ってあんな強かったっけ…?」

内藤「だから先生を呼び捨てにするんじゃない」

⏰:07/12/15 23:01 📱:P903i 🆔:cNAOSz2Y


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