-Castaway-
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#167 [◆vzApYZDoz6]
リーザ「シーナ!!」
レイン「間に合わなかったか…!」

倒れている妹と弟の元に、姉と兄が駆け付ける。
後ろにはラスダンと、ガリアスの母親と共に囚われていた女性…ハル兄弟の母親がいた。

ラスダン「くそっ!…2人は?」
リーザ「シーナは…息があります…!でもラインさんが…」
レイン「相当やられているが、治せるさ」

ハル・レインがハル・ラインの裂目に手を当てる。
手が金色に光り輝き、裂目に被さるように光が覆った。

レイン「『ツインキャンサー』発動中の俺達は一心同体。俺の自己治癒力をすべてラインに注げば大丈夫だ」

⏰:08/01/02 00:53 📱:P903i 🆔:RqwpsYaM


#168 [◆vzApYZDoz6]
ラスダン「そんな事を…君もダメージはあるのに」

ラスダンがリーザとハル・レインに目をやる。2人ともダメージは大きいようだ。
ハル・レインの顔は頬が裂け、脇腹には血が滲んでいる。体の至るところに刺突と裂傷を受けていた。
それはリーザも同じ。服は所々破けており、頬には擦過傷、腕や足には沢山の打撲が見られる。
どうやらラスダンが到着し囚われていたハル兄弟の母親の事情を説明したのは、2人が戦いを始めて暫く経ってかららしい。

レイン「はははっ、これぐらいどうってことはない。あんたが母を助け出していなかったら、俺は今頃おっ死んでたさ」

⏰:08/01/02 01:05 📱:P903i 🆔:RqwpsYaM


#169 [◆vzApYZDoz6]
リーザ「いいえ、レインさん。貴方も素晴らしい腕前でした…もしかしたらやられていたのは、私の方かも」

微笑みあい談笑する2人からは、戦闘意欲は感じられない。
お互い志の高い武士同士、和解するのは早かったようだ。
ラスダンが安心したように笑みを溢したあと、表情を引き締める。

ラスダン「僕は一旦京介のところへ戻るよ。うまくやってるか気になるしね」
リーザ「分かりました。…私達も、少し休んですぐに向かいます」

⏰:08/01/02 01:16 📱:P903i 🆔:RqwpsYaM


#170 [◆vzApYZDoz6]
ラスダンが踵を返し、来た道を再び走る。
リーザはラスダンのを見送ったあと、自分の妹に目をやった。
見たところ右腕にしか傷はない。相当に疲労しているのか、深い眠りについていた。
ここに駆け付ける前に、紅い霧が見えた。まさか…
複雑な表情で妹の顔を眺めていると、隣のハル・ラインが身を起こした。

ライン「もう…大丈夫だ、兄貴。ありがとな」
レイン「まったく、こんなに完膚なきにやられやがってだらしない」
ライン「まったくだ。敵を嘗めていたのは俺の方だな」

⏰:08/01/02 02:13 📱:P903i 🆔:RqwpsYaM


#171 [◆vzApYZDoz6]
笑いあいながら、ハル・ラインが立ち上がり伸びをする。
ハル・レインは未だ目を覚まさないシーナと、その側で横座りしてシーナを優しく見つめているリーザに向き合った。

レイン「さて…頼みがある。俺達の母を安全な場所まで避難させてくれないか?」

リーザが一度ハル・レインに視線を向ける。
真剣な表情でこちらを見るハル・レインからは、1つの覚悟が感じられた。
リーザが再びシーナに視線を戻し、哀しそうな笑みと共に溜め息を溢す。

リーザ「それで構いません…もうシーナを戦わせるわけにはいきませんから。…私達は、ここでリタイアね」

⏰:08/01/02 13:34 📱:P903i 🆔:RqwpsYaM


#172 [◆vzApYZDoz6]
目を閉じて静かに喋るリーザの表情は愁いに満ちていた。
それを見たハル・レインは少し申し訳なさそうな顔をしたが、すぐに表情を引き締めた。

レイン「感謝する。後は俺達に任せてくれ」

一礼して踵を返す。後ろで腕を組んで立っていたハル・ラインの横を通りながら鼻で笑った。

レイン「まぁ、よくもここまで人をコケにしてくれるよなぁ?」

⏰:08/01/02 13:51 📱:P903i 🆔:RqwpsYaM


#173 [◆vzApYZDoz6]
ハル・ラインは後ろの要塞入口に向かう兄を尻目に、俯いてクックッと含み笑いをした。
すぐに踵を返し、意地悪な笑みを浮かべながら兄と肩を並べて要塞へ歩き出す。

ライン「ま、落とし前はきっちりつけてもらうさ」
レイン「そうだな。顔面フルボッコにしてやるか」

リーザが心配そうに見送る前方で、要塞への大扉に2人が手をかける。

レイン「行くぜ。元上司へのお礼参りだ」
ライン「ウォルサー総指令官グラシアを…ぶち殺す」

扉を開けた兄弟が、反旗を翻すために駆け抜けた。

⏰:08/01/02 15:17 📱:P903i 🆔:RqwpsYaM


#174 [◆vzApYZDoz6]
-母親らが囚われていた地下牢-

ラスダンが地下牢への階段を足早に降りていく。最後の3段を一足で飛び越え、尚走る。
暫く走っていると、鉄格子に凭れて座る京介の姿が見えた。奥には倒れ臥しているリッキーの姿。
肩で息をしながら、ラスダンが安堵の溜め息を洩らした。

ラスダン「倒していたんだね」
京介「全然楽勝だったよ」

膝に頬杖をつき、向かいの牢をぼんやりと眺めながら京介が呟く。
怒っているわけでも哀しんでいるわけでもないのに、その表情は少し沈んでいた。

⏰:08/01/02 17:36 📱:P903i 🆔:RqwpsYaM


#175 [◆vzApYZDoz6]
京介の体は既に正常に戻り、赤い光も発していない。だが、少し近寄りがたい雰囲気を醸し出していた。

京介「さ、早く行こうぜ」
ラスダン「…あ、あぁ」

ラスダンは少し不安になりながらも、牢の奥へ歩いていく京介についていく。
歩いてる最中でもそのよくわからない不安は消えず、ラスダンは急がねばならないのに走るのも忘れていた事に気が付いた。
一体何があったのかは分からない。だが今は藍を助け出すのが先決だ。

ラスダン「京介、走ろう。一刻も早く藍ちゃんを助けないと」

⏰:08/01/02 17:56 📱:P903i 🆔:RqwpsYaM


#176 [◆vzApYZDoz6]
京介「……そうだな」

京介は無言で止まり、目を瞑って俯き、両手で勢いよく頬を叩いた。

ラスダン「京介!どうしたのさ?」
京介「何でもない!行くぜ!」

京介が走り出した。
ラスダンには京介の胸中など知る由も無かったが、何かを吹っ切ったんだろうという事は伝わった。
ラスダンは満足げに笑い、京介の後を追って走る。

軈て、扉が見えてきた。

⏰:08/01/02 23:26 📱:P903i 🆔:RqwpsYaM


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