-Castaway-
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#247 [◆vzApYZDoz6]
アリサ「じゃ、ありがとね」
バニッシ「ん。…お前の母さんは…」
アリサ「だから大丈夫だって!探したりしちゃ駄目よ?」
バニッシ「……あの小川でお前を置いてきた時に、何かあったか?」

バニッシが溜め息をするように呟いた。アリサは俯き、バニッシと視線を合わせない。

アリサ「……ねぇ、あたしが明日パンデモを出る事になったらどうする?」

アリサが唐突に言った。バニッシは驚いたように顔を上げる。

バニッシ「え?」
アリサ「…なんてね、冗談。じゃあね!」
バニッシ「っておい…」

バニッシが何か言う前に、アリサは家に入っていった。

⏰:08/01/12 22:10 📱:P903i 🆔:QPQfzk3U


#248 [◆vzApYZDoz6]
バニッシは考えながら自分の家に向かった。
修練場で感じた気配、イルリナの足取り、アリサの異変。バニッシはこれらが全て関係がある気がしてならなかった。
考えてるうちに、家についた。バニッシは上着を着て、行灯のようなものを持ち、再び外に出る。

バニッシ(…とにかく、イルリナさんを探さないと)

バニッシはそのままイルリナを探しに行った。
もう月も高く昇っていた。辺りは暗く、明かりが無ければ歩けなかっただろう。
集落の中はバンや他の人が探しただろうと考え、集落の外、雑木林や近くにある深い渓谷など、一晩で出来る限りの範囲を探した。

イルリナは見付からなかった。

⏰:08/01/12 22:21 📱:P903i 🆔:QPQfzk3U


#249 [◆vzApYZDoz6]
次の日からも、バンやバニッシ、その他の人もイルリナを探すが、依然見付からないままだった。

アリサは毎日少し変わった行動をとっていた。
朝に家を出て、夜に帰ってくる。何をしているのかは分からないが、バニッシとは一度も会おうとしなかった。


そして、イルリナが行方不明になってから1か月が経ったある日。
修練場に、腕を組んで立つバニッシの姿があった。
バニッシは、アリサに修練場に呼び出されていた。

⏰:08/01/12 22:28 📱:P903i 🆔:QPQfzk3U


#250 [◆vzApYZDoz6]
軈て、アリサが歩いてきた。
アリサとは、イルリナが行方不明になった日から一度も会っていない。バニッシは少し懐かしい感じがした。

バニッシ「どうしたんだ?」
アリサ「ごめんね、呼び出したりしちゃって♪」

バニッシはアリサの話し方に驚いた。以前のような幼さの残る話し方ではない。声は前より甲高く、イントネーションは上がり気味。
バニッシは眉間に皺を寄せた。

バニッシ「…その話し方は何だ?ふざけているのか?」
アリサ「楽しいからかな♪この1か月でいっぱいスキルも手に入ったし♪」
バニッシ「スキル…?」

⏰:08/01/12 22:39 📱:P903i 🆔:QPQfzk3U


#251 [◆vzApYZDoz6]
アリサは手を後ろに組み、愉快そうに話している。

アリサ「1か月間、パンデモの人からスキルをいっぱい集めてたの♪バニッシちゃんにはスキル貰わなかったけど♪」
バニッシ「…何をするつもりなんだ?」

バニッシは、以前とは全く違うアリサを少し警戒していた。まるでアリサを知らないかのように話していた。

アリサ「これから戦う事もあるかも知れないんだし、スキルは多い方がいいでしょ?♪」
バニッシ「戦う?」
アリサ「だって、世界征服しようなんて考えてる人に付いていくんだから♪」

その時、アリサの後ろに2つの黒い円柱が現れた。

⏰:08/01/12 22:52 📱:P903i 🆔:QPQfzk3U


#252 [◆vzApYZDoz6]
円柱が割れて、中から人が出てきた。バニッシは片方の人間の気配を知っていた。
以前、アリサと修練場の奥へ行ったときに感じた気配の主。オールバックがかなり威圧感を出していた。
バニッシは完全に警戒心を顕にし、1歩下がる。もう1人に視線を向け、驚いたように声を上げた。

バニッシ「クルサ!?お前は確か、収得に出ていたんじゃ?」

クルサとは1年前にパンデモを出るまで、アリサと3人でよくつるんでいた。
仲が良かった2人が、今は恐らくは敵であろう側にいる。

アリサ「彼もあたしと同じよ♪」
バニッシ「何故だ?何故、世界征服を企んでるような奴と一緒に居るんだ?」

⏰:08/01/12 23:04 📱:P903i 🆔:QPQfzk3U


#253 [◆vzApYZDoz6]
グラシア「おい、話は手短にしろ。本来なら直ぐに発っていたんだぞ」

オールバックの男、グラシアが会話に割って入った。

アリサ「あら、ごめんなさい♪」

グラシアとクルサの方へ歩いていくアリサが、途中で振り返った。

アリサ「…そうそう、今日バニッシちゃんを呼び出したのは、お別れを言うためなの♪」
バニッシ「…パンデモを、出るのか」
アリサ「色々楽しかったわ♪今までありがとね♪」
バニッシ「目を覚ませ…行かせないぞ」

バニッシがアリサに近付く。
それを止めたのはクルサだった。

⏰:08/01/12 23:18 📱:P903i 🆔:QPQfzk3U


#254 [◆vzApYZDoz6]
アリサとの間に割って入ったクルサを、バニッシが睨んだ。

バニッシ「クルサ、お前も…」
グラシア「やって構わんぞ」

グラシアがバニッシの言葉を遮る。それとほぼ同時に、クルサが拳を撃ち出した。
バニッシは顔を後ろに反らせ、そのまま1歩下がる。拳はバニッシの頬を掠めた。

バニッシ「昔馴染みとはやり合いたくはないが…」

バニッシが頬を擦りながら呟く。既にグラシアの横に立っているアリサに一瞬目をやった。
俯いて黙っているアリサを見て、拳を握り構えて腰を落とす。

バニッシ「…仕方無いな」

ガールフレンドと親友の目を覚ますため、バニッシが踏み込んだ。

⏰:08/01/12 23:39 📱:P903i 🆔:QPQfzk3U


#255 [◆vzApYZDoz6]
バニッシはクルサに勝てる自信があった。昔は何度も手合わせし、毎回勝っていたからだ。
クルサを全力で叩き伏せ、グラシアからアリサを奪い返す。そのあとクルサに謝れば、それで終わりだ。

バニッシ「悪いけど…我慢しろ!」

バニッシは全力で拳を撃ち出した。
しかし、その拳はクルサの掌にいとも容易く止められた。

バニッシ「なっ…」
クルサ「ドリームカットアウト、発動」

クルサが拳を払いのけ、手を前に出す。すると、青い袋が出現した。

⏰:08/01/13 00:03 📱:P903i 🆔:Tp9acfJI


#256 [◆vzApYZDoz6]
青い袋の封が独りでに開き、口を下に向け、袋の中のものが地面に落ちる。袋から出てきたのは、無数の紙吹雪。
バニッシは山のように積まれた紙吹雪を警戒し、バックステップで距離を取る。

クルサ「カットアウト、群れる隼―――」

クルサが呟くと、紙吹雪がもそもそと動き出す。地面を伝うように動き、何かの形を成していく。
軈て地面に、紙で描かれた無数の鳥が出来上がった。

クルサ「―――ドリームアウト!」

無数の鳥が地面から剥がれるように飛び出す。先ほどまで2次元だったそれは立体の紙鳥となり、全てがバニッシに襲い掛かった。

⏰:08/01/13 00:51 📱:P903i 🆔:Tp9acfJI


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