-Castaway-
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#336 [◆vzApYZDoz6]
腕を組みながら煙草を吸っていた内藤が、目を細めながらグラシアを見た。煙草は既に半分程まで吸われている。
グラシア「強がりは止めたまえ」
内藤「どうかな?」
グラシア「もういい、やれクルサ」
グラシアがふっと小さな溜め息をつきながらクルサに指示する。それに呼応し、クルサの周囲を舞っていた紙吹雪が、クルサを中心にとぐろを巻くように龍の形を成していく。
クルサが左手を開き、前へ。紙龍がクルサの左腕に巻き付いた。開いた掌に重なるように、紙龍の口が内藤を向く。
クルサ「紙潜龍・紅紙炎射――カットアウト!」
内藤に向けて、紅い無数の紙吹雪が放出された。
:08/01/23 22:31 :P903i :I.ywfF/k
#337 [◆vzApYZDoz6]
まるで火炎放射のような紙吹雪が迫るのを前に、内藤が煙草を大きく一吸い。
内藤「仕方ないな…」
呟くのと同時に、紙吹雪が直撃する。
しかし、そこに内藤はいなかった。ただ1本の短くなった煙草を宙に残して。
京介「…あれ、内藤は…」
動けないため目だけで見ていた京介が呟きかけたその時、凄まじい衝撃音が辺りに響いた。
京介が轟音の方に目をやる。
王座にふんぞり返って座るグラシアのさらに向こう、京介がいる場所と対面の壁に、クルサの顔が叩き付けられている。
壁にめり込むクルサの顔を押さえ付けていたのは、内藤だった。
:08/01/23 22:42 :P903i :I.ywfF/k
#338 [◆vzApYZDoz6]
内藤「しばらく寝てろ」
内藤がクルサの顔から手を離すと、クルサがゆっくりとずり落ち、内藤の足下に力なく倒れ込んだ。
内藤が足を引き抜く。踏み込んだ足下はコンクリートの床が抉れ、捲り上がっている。
その様子を、背凭れから顔を覗かせてグラシアが見ていた。
グラシア「ほー…なかなかやるじゃないか」
内藤「どうでもいいけど、油断しすぎだ」
言い終えると同時に、グラシアの視界から内藤が消えた。
次の瞬間、グラシアの右から、バリアが何かを弾いた音が響く。
内藤「ちっ、藍にも触れないか!」
内藤は、一瞬で藍の椅子の横に移動していた。
:08/01/23 22:51 :P903i :I.ywfF/k
#339 [◆vzApYZDoz6]
内藤「ならこっちだ!」
内藤が今度は、藍が座る椅子の後ろにある、京介のスキルをコピーした風船に、回し蹴りを繰り出した。
だが、同じように足を弾かれる。
内藤「ふん、こっちもか。えらく臆病なもんだな」
グラシア「臆病?自分の力を発揮するための当然の策だ」
グラシアは特に慌てる様子もなく、椅子に座ったまま内藤を眺めた。
内藤「結局お前を倒すしかない、か」
グラシア「…俺を倒す?クルサを倒したぐらいでいい気になるなよ」
グラシアが呆れたような表情を浮かべ、含み笑いをする。その眼前に、右腕を振りかぶる内藤が現れた。
:08/01/23 22:58 :P903i :I.ywfF/k
#340 [◆vzApYZDoz6]
内藤「なら試してみるか」
内藤が、素早く重い一撃を振り降ろす。が、やはりその拳があと数mmまで迫ったところで、グラシアを覆うバリアに弾かれた。
構うものかと言わんばかりに、内藤が続けて殴り、蹴りかかる。
グラシアはバリアの内側で、馬鹿にするような目で内藤を見ていたが、やがて飽きたように目を閉じて溜め息をつき、呟いた。
グラシア「もういいよ、『動くな』」
声と同時に、殴りかかろうとしていた内藤の動きがピタリと停止する。内藤が目だけを動かし、グラシアを見上げた。
内藤「くそっ!」
グラシア「そうしているのがお似合いだ」
:08/01/23 23:05 :P903i :I.ywfF/k
#341 [◆vzApYZDoz6]
グラシア「目の前で仲間が殺られるのを見ているんだな」
グラシアが満足げに椅子から立ち上がり、対面で止まったままの京介らに近付こうと歩き出す。視線は完全に京介らを向いていた。
内藤がそれを確認し、唇の端を釣り上げる。
内藤「なんてなると思ったか間抜け」
グラシア「なっ!?」
驚愕するグラシアの振り返り様の顔面に、内藤の拳が勢いよくめり込んだ。
グラシア「ぶっ!」
声にならない声を上げて、グラシアが京介らの近くまで吹き飛び、地面を転がった。
殴られた左頬を抑えながらゆっくりと立ち上がる。バリアで守られていた筈のグラシアの顔は、赤く腫れ上がっていた。
:08/01/23 23:13 :P903i :I.ywfF/k
#342 [◆vzApYZDoz6]
グラシア「馬鹿な…なぜ動けた?いや、なぜバリアを破れたんだ?」
俯いたままぶつぶつと呟くグラシアの目は赤く血走り、狂気の色が灯っていた。内藤が近づいてくるのに動こうともせず、何かを言い続けている。
内藤は吹き飛んだグラシアの元まで歩いていき、防御の意思を見せないグラシアを遠慮することなく蹴り上げた。
グラシア「ごあっ!!」
内藤「さっきから馬鹿かお前は」
グラシアの体が今度は部屋の中央にもんどりうった。グラシアがゆっくりと立ち上がり、信じられないという目で内藤を見据えた。
グラシア「なぜ動けるんだ?なぜバリアを破られたんだ?」
:08/01/23 23:24 :P903i :I.ywfF/k
#343 [◆vzApYZDoz6]
内藤「そりゃ俺が凄くてお前が馬鹿だからだろ」
内藤が冷ややかな目でグラシアを見た。先程とは違い、内藤がグラシアを見下しているかのよう。
グラシア「馬鹿な!スキルは完璧にコピーした筈だ!川上京介から『スレイブオブキング』のスキルを!」
グラシアが発狂したように叫びながら京介を指差す。
内藤の強さを目の当たりにして間の抜けた顔をする京介とは対照的に、グラシアの顔は強張り、額には青筋を立て、目は赤く血走っている。
内藤「あのなぁ、だからお前は馬鹿だって言うんだよ」
:08/01/23 23:31 :P903i :I.ywfF/k
#344 [◆vzApYZDoz6]
内藤が呆れたように後頭部を掻いた。
京介のスキル『スレイブオブキング』は、自らを絶対的な『王』とし、他人の『行動選択権』を支配する、というもの。
そして内藤は、そのスキルの持ち主である京介の、学校の担任だ。
内藤「…例え京介が王であろうと、担任を支配出来る訳ないだろ?お前はそんな京介のスキルをコピーしたんだ、俺を支配できる訳ないだろ。馬鹿かお前は」
グラシア「なっ…!?」
京介「ってそんな理由!?」
京介とグラシアが唖然として口を開ける中、内藤は1人涼しい顔をしていた。
内藤「そういうわけで京介、お前がスキル使えたからって学校の成績は上がらないぞ」
:08/01/23 23:39 :P903i :I.ywfF/k
#345 [◆vzApYZDoz6]
京介「いや、それかなり無理矢理な感じがするけど…担任だから、って」
内藤「自分が慕う先生を支配しようとは思わんだろ?まぁ諦めろ」
京介「そんな殺生な!」
談笑する2人を目の前に、グラシアは深刻な顔をしていた。
グラシア(馬鹿な…!スキルは実際に内藤が支配から逃れているから話は本当だろうが…なぜバリアを破れたんだ!?ミサイルの直撃も防ぐバリアだぞ!?)
グラシアが思案を巡らせる。
内藤のスピードは跳ね上がっているが、今食らった攻撃はそんなに強い訳じゃない。内藤の攻撃でバリアが破れたとは考えにくかった。
物理的原因ではないとすれば――
グラシア「…発生装置か」
:08/01/23 23:58 :P903i :I.ywfF/k
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