-Castaway-
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#390 [◆vzApYZDoz6]
両刃剣ジェイトソードの鋒が、グラシアの首筋に突き付けられる。言いながら巨人の左腕が両刃剣の柄に伸び、突き付けた刃と反対側、巨人の懐に伸びる刃とそれに付いた柄を割り折るように、離した。逆手に持つ左手の剣を手元で回し、順手に持ち変え岡っ引きのようにグラシアに突き付ける。
その様は、正に二刀流。
突き付けられた二枚の刀身越しに、グラシアが巨人を睨む。異様に細めたその目からは危険な香りが漂っていた。
それに臆することなく、弟が言い放つ。
フラット「さぁて、兄貴にばっかり見せ場はやれないぜ」
飆が逆巻く巨人が握る双剣に、一瞬紫電が走った。
:08/02/03 22:26 :P903i :8OogwqYw
#391 [◆vzApYZDoz6]
紫電は直ぐ様大きくなり、バチバチと弾ける音を立てながら、刀身を蛇のように包み込む。
足元から全身を逆巻く飆。両手に携えられた武器に宿る稲光。
その様は、巨大な漆黒の体に風神と雷神を一挙に宿したよう。
フラット「『プラズマアウト』。能力は…見りゃ分かるだろ」
稲妻を纏う双剣を突き付けたまま、巨人の首元のコクピットからグラシアを見据える。
対するグラシアは、惚けたような顔で巨人を見上げていた。
グラシア「……うびょ…規…」
ブロック「は?」
蟻が呟いたような小さな声。
次の瞬間、グラシアと後ろで見ていたガリアスが同時に巨人の下へ駆け出した。
:08/02/03 22:45 :P903i :8OogwqYw
#392 [◆vzApYZDoz6]
フラット「え、何?」
戸惑いながらも弟が両腕を操り、稲妻を纏う双剣を振り下ろそうとする。
だがその腕は全く動かない。その事態をいち早く察知した兄が、ならば退くぞと足を操作。
だがこれも動かない。コントローラとなっているハンドルやクラッチ、アクセルは動くのに、鉄の巨人がそれに対し全く反応を示さない。電子回路でも潰されたのか、というずれた考えが兄の頭を過った。
そんな兄弟など余所に、グラシアが拳を腰に構える。ジェイトソードの刀身分、およそ5mの距離をほぼ一足で懐まで詰め寄り、赤く変色し肥大した拳を撃ち据える。
それを阻害したのは、独りでに宙を舞った双剣だった。
:08/02/03 22:59 :P903i :8OogwqYw
#393 [◆vzApYZDoz6]
動かない巨人の手から双剣が飛び出し、うち1本が巨人の懐に飛び込もうとするグラシアの進路を阻むように地に突き刺さる。
立て続けにもう1本がグラシアを狙う。目の前に突き刺さった大剣が邪魔でそれ以上前に踏み込めず、舌打ちをしながら懐から離脱した。
ガリアス「そのスキルは知ってる。あいつらが武器を出しててよかった」
グラシア「…ふん」
グラシアが、阻害したガリアスを賤しく睨み付ける。
突き刺さった双剣が抜かれ、紫電を纏ったままガリアスの頭上に滞空した。
ガリアス「はっきり聞くけど…何秒?」
グラシア「分からない方がスリリングじゃないか?」
:08/02/03 23:11 :P903i :8OogwqYw
#394 [◆vzApYZDoz6]
ガリアス「同時に2つ操るとスピード落ちるんだけどなー」
グラシアとガリアスが踏み込んだ。
今度は剣を突き立てず、払うように斬りかかる。グラシアがそれを往なし殴りかかる所を、もう1本で防ぐ。殴れば剣の紫電にやられるために仕方なく退くグラシアに、払われた剣を突き立てる。
グラシアに圧倒的な体躯とスピードで後れを取る分、ガリアスは双剣とそれに纏う稲妻で補っていた。
素手のゴリラと、特殊警棒を持つ猿のような戦いを、巨人を止められ為す術のない兄弟が眺めていた。
フラット「あれ…出番は?」
ブロック「どうやら俺達は武器提供しただけみたいだ」
:08/02/03 23:25 :P903i :8OogwqYw
#395 [◆vzApYZDoz6]
戦いを見詰める。時間は長いようで短い。鉄の巨人が動きを止めてから、まだ20秒ぐらいしか経っていないだろう。
とその時、戦う2人に異変が起きた。
グラシアが頬を歪ませながら兄弟を一瞥したかと思うと、ガリアスが見計らったように1本の双剣の柄にしがみつく。もう1本を、動けない巨人へ向けて飛ばし付けた。
フラット「ちょっ…!」
弟が、動かないと知りつつ反射的に腕を操作する。
だが、腕は動いた。巨人が紫電を纏う大剣を受け取ると同時に、グラシアがしがみついたままヴィエロシティーの力で離れようとするガリアスに叫ぶように言った。
グラシア「10秒規制!」
:08/02/04 00:02 :P903i :a0Cu9JGg
#396 [◆vzApYZDoz6]
瞬間、剣にしがみついていたガリアスの動きがピタリと止まる。慣性など無視して、反動もなく完全に止まった。
グラシアがそれを尻目に、今度は巨人に向かって踏み込む。巨人の左腕が動き剣を受け止めたのを見ていた兄が、一瞬の判断で足を操作した。
足も動いた。大気を撃ち据えるグラシアの拳をなんとか避けながら、解除していたブラストハイドを再び発動。
凍り付いたように動かないガリアスがしがみついているもう1本の大剣の元へ、地を蹴って駆け出した。
拳が空を切ったグラシアは一旦滑るように止まって再び踏み込み、鉄の巨人へ迫る。グラシアに追い付かれる前に、巨人が大剣を手にした。
:08/02/04 00:12 :P903i :a0Cu9JGg
#397 [◆vzApYZDoz6]
フラット「どらせいっ!」
右手をガリアスがしがみつく剣に伸ばしながら、左手の剣を後ろに振るう。
無造作に振るわれた一閃はかわされたが、右手は剣を逆手に捕まえていた。振り返り様に、腕を回すように剣を払う。
フラット「食らえプラズマ!」
剣に纏っていた紫電が、斬撃を肥大させるように放電した。
まさか剣から電撃が撃たれるとは思っていなかったグラシアに、その電撃が浴びせられる。
グラシア「ぎゃっ!」
いくら筋肉が膨らみ皮膚が硬くなろうとも、元は人間。
声にならない声を上げて、地面を転がるように鉄の巨人から離れた先には、屋上の入口。
内藤「おいおい、みっともねぇな」
:08/02/04 00:24 :P903i :a0Cu9JGg
#398 [◆vzApYZDoz6]
グラシア「くそっ!」
グラシアが飛び退くように離れ、フェンスの側に駆け出す。グラシアが走る先には、ヘリコプターを爆破された時に一旦その手から離れた藍がいた。
内藤「おっと浅香はあんなところにいたのか」
思わず京介が飛び出さんとするところを内藤が制する。その時、入口から更にぞろぞろと声がした。
ライン「おい兄貴、俺達をみっくみくにした赤鬼さんは今、多勢に無勢だ」
レイン「それはいい情報だ。みっくみくにし返してやるか」
リーザ「あなた達、治りが早いですわね…私もシーナがいればこれぐらい…」
ラスダン「駄目だよ喋っちゃ!」
アリサ「内藤ちゃん大丈夫?♪助けに来たわ♪」
:08/02/04 00:38 :P903i :a0Cu9JGg
#399 [◆vzApYZDoz6]
中庭で倒れた3人と介抱していた2人も追い掛けてきた。
ハル兄弟は自己治癒力を片方に順番に注ぎ込んだらしく、傷はすっかり治っている。リーザはラスダンに肩を借り、包帯代わりに腹の傷に巻いているラスダンの上着には血が滲んでいる。アリサは飄々と内藤に視線を送っていた。
内藤「…なんだこの大所帯」
入口の騒がしさを余所に、止まっていたガリアスに動きが戻る。
それを合図に戦える面子が、藍に腕を回し爪を突き立てるグラシアに向き合った。
多勢に無勢、最早追い詰められたグラシアは、とうとう最後の手段に打って出た。
グラシア「…動けば…こいつの命はないぞ」
:08/02/04 00:53 :P903i :a0Cu9JGg
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