-Castaway-
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#421 [◆vzApYZDoz6]
京介「お前はもう謝っても許さないぜ?」

京介は歩みを止めずに、唇の端を軽くつり上げながら言い放つ。
地に這いつくばって見ていたグラシアは、愕然と肩を落としわなわなと震わせた。
今まで自分が一番格上だったと思い込んでいた脳に、上には上がいるという事実を叩き付けられる。
京介の毅然とした態度の前に、怒りや屈辱はもとより絶対的な敗北感すら生まれてきていた。
だが、ここまで来て逃げる訳にもいかなかった。

グラシア「俺は…この世界を支配してやるんだ」

すくむ足を抑え立ち上がる。
京介は眉をハの字に曲げ、端から見れば滑稽に見えるグラシアを悲しそうに見詰めた。

⏰:08/02/09 21:06 📱:P903i 🆔:Fj4wlIII


#422 [◆vzApYZDoz6]
京介「何でだ?何でそんなに…」
グラシア「五月蝿い…!お前に俺の気持ちが分かってたまるか!」

グラシアが京介に拳を突き立てる。
だがその拳には力が込もらず、京介の胸に弱々しく埋まる。そのまま崩れ落ち、京介の足下にもたれ掛かった。

グラシア「俺はまだ戦える…お前を倒して、世界を支配して…認めてもらうんだ…!」

すがるように何度も力の入らない拳を振る。
京介は眉をしかめて苦い表情を浮かべた。

京介「…もう無理だよ」
グラシア「五月蝿い…こんな無様を晒すわけにはいかないんだ!」

グラシアが更に拳を叩きつけようと振りかぶったその時。
2人の隣に、再び扉が出現した。

⏰:08/02/09 22:07 📱:P903i 🆔:Fj4wlIII


#423 [◆vzApYZDoz6]
グラシア「これは…」
京介「うわっ!」

突き破られたように勢いよく扉が開き、京介とグラシアが吹き飛ぶように中へ吸い込まれた。
京介が思わず固く目を瞑る。一瞬浮遊感が生まれ、すぐに地を転がるように体が揺さぶられた。
草原に飛ばされた時と同じ感覚に、今度は素早く目を開ける。

内藤「よっしゃ成功」
藍「京ちゃん!」

最初に見えたのは藍の姿。その側に内藤が、さらに向こうでディフェレスに来て出会った面々がこちらを見ていた。
屋上に戻ってきたのか、とぼんやり考えていた京介に、藍が飛び付くように駆け寄る。

藍「よかった…私のせいでどこかに消えちゃったもんね」

⏰:08/02/10 11:58 📱:P903i 🆔:F7TzN6YU


#424 [◆vzApYZDoz6]
京介の顎の下に藍の顔がすっぽり収まる。
藍がさらわれたのはつい数時間前なのに、京介は起きている藍を何年か振りに見た気がした。
京介はスキルを発動したままで、体は紅く光っており髪は逆立っている。

京介「ああ…悪かっ」
藍「てゆうかその髪とか何!?」
京介「たぶっ!!」

腕を回そうとした京介の顎に、勢いよく顔を上げた藍の頭頂部が激突した。

藍「あっ…ごめん!」
京介「いや、大丈夫…」
内藤「お前ら、そうゆう事は後にしな」

内藤が横を見ながら2人を諌める。内藤の視線の先には、まだ鼻血を出したまま蹲っているグラシアがいた。

⏰:08/02/10 13:05 📱:P903i 🆔:F7TzN6YU


#425 [◆vzApYZDoz6]
京介「…なぁ、あいつに何があったんだ?」

京介が苦い表情を浮かべながら、グラシアを眺める。
草原で自分にすがるような態度を見せた事が少し気になっていた。

ハルキン「俺が話してやろう。いや、俺が話すべきだな」

京介の意思を理解しているかのように、ハルキンが唐突に、静かに口を開く。
それまで黙って俯いていたグラシアが、機嫌悪そうに上目でハルキンを睨んだ。

グラシア「話す必要は無い」
ハルキン「他の連中も知らん事だ。今が機だろう」

何か言いたげにしていたグラシアをハルキンが睨み付け黙らせる。皆を見回し、咳払いを切って話し出した。

ハルキン「…この話は10年前まで遡る」

⏰:08/02/11 16:36 📱:P903i 🆔:hd/VybYQ


#426 [◆vzApYZDoz6]
ハルキン「10年前…ディフェレスはローシャのある施設で、ある研究が行われていた」
京介「研究?」
ハルキン「強大な能力の付加研究…地球人のレンサーが持つ強力なスキル、それをディフェレスの人間にも発現させよう、って研究だ」

その研究は、地球人を調べる事から始まった。
地球のレンサーを何人か、神隠し等といった現象に見せ掛けて秘密裏にディフェレスに運び込み、体細胞の構造から食生活に至るまで細かく分析した。

ハルキン「結果、レンサースキルを司る遺伝子から、地球人だけが持つ特殊な細胞が発見された」

⏰:08/02/12 00:33 📱:P903i 🆔:T5HVcZKQ


#427 [◆vzApYZDoz6]
本来、スキルの遺伝子は誰にでもあるもの。それをたまたま発現できた者が、レンサーと呼ばれた。

ハルキン「その特殊な細胞自体はどの地球人も同じものを持っていて、持って生まれた資質や生活環境によって姿を変える事も分かった」

研究者は孤児院や兵隊学校等、様々な場所から資質と才能に溢れた子供を集め、その特殊な細胞をレンサースキルを司る遺伝子に組み込んだ。
また、スキルを確実に発現させる為に能力開発手術を施し、同時に手術と人工発現の痛みに耐えられるよう訓練させた。

ハルキン「手術は問題なく成功。子供達は様々な、かつ強力なスキルを発現させる事に成功した」

⏰:08/02/12 00:44 📱:P903i 🆔:T5HVcZKQ


#428 [◆vzApYZDoz6]
ハルキン「中には、スキルは発現しても強力じゃかった子供もいた。…その子供は失敗作として処分されたがな」

成功した子供達のスキルは、戦闘向きの強力な能力や超絶的な回復能力、人の心を読む能力など、ありとあらゆるもの。
子供達はその施設内で、スキルの性質に合った様々な訓練を受けて育った。

ハルキン「子供達はディフェレスの各地でそのスキルを生かす予定だった。だが、世の中そう上手くはいかない」

スキルを持った子供達の中でも、特に際立って強大な力を発揮する子供がいた。
その子供も小さな頃は従順だったが、歳を重ねるに連れて反抗的に、また性格も残虐になっていった。

⏰:08/02/12 01:02 📱:P903i 🆔:T5HVcZKQ


#429 [◆vzApYZDoz6]
その子供に不安を感じた研究者は、その子供を牢に閉じ込めた。
いくら能力が強力とはいえ、そんな危険な子供を世に送り出す訳にはいかない。研究者達の話し合いで、その子供の処分が決定された。
だが、処分の為に牢に行ってみるとその子供はいなかった。壁には丸く切り取られたかのような穴。
不安になった研究者が他の子供が寝泊まりする居住区へ向かうと、そこにあったのは壁や床中に滴り溜まる血と、子供達の死体。

ハルキン「処分を恐れたんだろう。自分の力を見せ付ければ処分を取り消してもらえる…そう考えての行動は、逆効果だった」

⏰:08/02/12 01:15 📱:P903i 🆔:T5HVcZKQ


#430 [◆vzApYZDoz6]
その場にいた研究者が、返り血を浴びて突っ立っているその子供に銃口を向けた。
その子供は、殺される前に研究者を殺した。殺した研究者の手に握られる拳銃をもぎ取り、天井に向けて発泡。
銃声を聞き付け集まった他の研究者へ、返り血を浴びたままで叫んだ。

ハルキン「俺の力を見ていろ、とな。そうしてその子供が施設を飛び出したのは、研究が始まってから6年後の話だ。もう分かるな?その子供が、そこの馬鹿だ」
グラシア「馬鹿な…なぜ貴様がそこまで知っている!?貴様は何者だ!?」
ハルキン「ただのレンサーさ。地球人の細胞を埋め込まれながら、強力な力を発現できず処分された…な」

⏰:08/02/12 01:29 📱:P903i 🆔:T5HVcZKQ


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