-Castaway-
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#424 [◆vzApYZDoz6]
京介の顎の下に藍の顔がすっぽり収まる。
藍がさらわれたのはつい数時間前なのに、京介は起きている藍を何年か振りに見た気がした。
京介はスキルを発動したままで、体は紅く光っており髪は逆立っている。

京介「ああ…悪かっ」
藍「てゆうかその髪とか何!?」
京介「たぶっ!!」

腕を回そうとした京介の顎に、勢いよく顔を上げた藍の頭頂部が激突した。

藍「あっ…ごめん!」
京介「いや、大丈夫…」
内藤「お前ら、そうゆう事は後にしな」

内藤が横を見ながら2人を諌める。内藤の視線の先には、まだ鼻血を出したまま蹲っているグラシアがいた。

⏰:08/02/10 13:05 📱:P903i 🆔:F7TzN6YU


#425 [◆vzApYZDoz6]
京介「…なぁ、あいつに何があったんだ?」

京介が苦い表情を浮かべながら、グラシアを眺める。
草原で自分にすがるような態度を見せた事が少し気になっていた。

ハルキン「俺が話してやろう。いや、俺が話すべきだな」

京介の意思を理解しているかのように、ハルキンが唐突に、静かに口を開く。
それまで黙って俯いていたグラシアが、機嫌悪そうに上目でハルキンを睨んだ。

グラシア「話す必要は無い」
ハルキン「他の連中も知らん事だ。今が機だろう」

何か言いたげにしていたグラシアをハルキンが睨み付け黙らせる。皆を見回し、咳払いを切って話し出した。

ハルキン「…この話は10年前まで遡る」

⏰:08/02/11 16:36 📱:P903i 🆔:hd/VybYQ


#426 [◆vzApYZDoz6]
ハルキン「10年前…ディフェレスはローシャのある施設で、ある研究が行われていた」
京介「研究?」
ハルキン「強大な能力の付加研究…地球人のレンサーが持つ強力なスキル、それをディフェレスの人間にも発現させよう、って研究だ」

その研究は、地球人を調べる事から始まった。
地球のレンサーを何人か、神隠し等といった現象に見せ掛けて秘密裏にディフェレスに運び込み、体細胞の構造から食生活に至るまで細かく分析した。

ハルキン「結果、レンサースキルを司る遺伝子から、地球人だけが持つ特殊な細胞が発見された」

⏰:08/02/12 00:33 📱:P903i 🆔:T5HVcZKQ


#427 [◆vzApYZDoz6]
本来、スキルの遺伝子は誰にでもあるもの。それをたまたま発現できた者が、レンサーと呼ばれた。

ハルキン「その特殊な細胞自体はどの地球人も同じものを持っていて、持って生まれた資質や生活環境によって姿を変える事も分かった」

研究者は孤児院や兵隊学校等、様々な場所から資質と才能に溢れた子供を集め、その特殊な細胞をレンサースキルを司る遺伝子に組み込んだ。
また、スキルを確実に発現させる為に能力開発手術を施し、同時に手術と人工発現の痛みに耐えられるよう訓練させた。

ハルキン「手術は問題なく成功。子供達は様々な、かつ強力なスキルを発現させる事に成功した」

⏰:08/02/12 00:44 📱:P903i 🆔:T5HVcZKQ


#428 [◆vzApYZDoz6]
ハルキン「中には、スキルは発現しても強力じゃかった子供もいた。…その子供は失敗作として処分されたがな」

成功した子供達のスキルは、戦闘向きの強力な能力や超絶的な回復能力、人の心を読む能力など、ありとあらゆるもの。
子供達はその施設内で、スキルの性質に合った様々な訓練を受けて育った。

ハルキン「子供達はディフェレスの各地でそのスキルを生かす予定だった。だが、世の中そう上手くはいかない」

スキルを持った子供達の中でも、特に際立って強大な力を発揮する子供がいた。
その子供も小さな頃は従順だったが、歳を重ねるに連れて反抗的に、また性格も残虐になっていった。

⏰:08/02/12 01:02 📱:P903i 🆔:T5HVcZKQ


#429 [◆vzApYZDoz6]
その子供に不安を感じた研究者は、その子供を牢に閉じ込めた。
いくら能力が強力とはいえ、そんな危険な子供を世に送り出す訳にはいかない。研究者達の話し合いで、その子供の処分が決定された。
だが、処分の為に牢に行ってみるとその子供はいなかった。壁には丸く切り取られたかのような穴。
不安になった研究者が他の子供が寝泊まりする居住区へ向かうと、そこにあったのは壁や床中に滴り溜まる血と、子供達の死体。

ハルキン「処分を恐れたんだろう。自分の力を見せ付ければ処分を取り消してもらえる…そう考えての行動は、逆効果だった」

⏰:08/02/12 01:15 📱:P903i 🆔:T5HVcZKQ


#430 [◆vzApYZDoz6]
その場にいた研究者が、返り血を浴びて突っ立っているその子供に銃口を向けた。
その子供は、殺される前に研究者を殺した。殺した研究者の手に握られる拳銃をもぎ取り、天井に向けて発泡。
銃声を聞き付け集まった他の研究者へ、返り血を浴びたままで叫んだ。

ハルキン「俺の力を見ていろ、とな。そうしてその子供が施設を飛び出したのは、研究が始まってから6年後の話だ。もう分かるな?その子供が、そこの馬鹿だ」
グラシア「馬鹿な…なぜ貴様がそこまで知っている!?貴様は何者だ!?」
ハルキン「ただのレンサーさ。地球人の細胞を埋め込まれながら、強力な力を発現できず処分された…な」

⏰:08/02/12 01:29 📱:P903i 🆔:T5HVcZKQ


#431 [◆vzApYZDoz6]
京介「処分された子供、ってハルキンの事だったのか…」
ハルキン「ああ。俺の空間制御能力は、当時は今と比べ物にならない程弱かった。スキルとしても他の連中に目劣りしたからな」
グラシア「貴様が…あの研究の失敗作だと?お前は研究を知る者の1人だと…」
ハルキン「そう言っておけばお前は油断するだろう?それが馬鹿だと言うんだ、馬鹿」
グラシア「ぐっ…!」

グラシアの体が震える。
自分より劣る失敗作に見下ろされる屈辱感に、怒りで拳を握りしめた。

ハルキン「殺された研究者と子供達の代わりだ。お前は倒す」
グラシア「五月蝿い!俺は、俺の力をあのオヤジ共に…認めさせてやるんだ!!」

⏰:08/02/12 01:48 📱:P903i 🆔:T5HVcZKQ


#432 [◆vzApYZDoz6]
ハルキン「それは無理だ。強力なスキルを研究した目的は、人の役に立つ子供の育成の為。だがお前は…ただの殺人者だ」
グラシア「黙れ!!」

蹲っていたグラシアが屋上の床を殴って立ち上がり、ハルキンに掴みかかろうとする。
だがそれは敢えなくかわされ、逆にカウンターの蹴りが顔面に突き刺さった。
転がるように吹き飛び、屋上のフェンスにぶつかって停止する。

ハルキン「それに、研究者もその研究からは手を引いた。お前を認める者なんざ誰もいないさ」
グラシア「……」

蹴られた顔を押さえ、痛みに対し静かに悶絶するグラシア。その表情は段々と虚ろになっていく。

⏰:08/02/13 01:45 📱:P903i 🆔:Grvs9S/A


#433 [◆vzApYZDoz6]
ハルキン「もう、諦めろ。お前は…終わりだ」
グラシア「……フフフ、フヒャヒャヒャ!」

何がおかしいのか、グラシアは狂ったように笑いだした。
頬を大きく釣り上げて、歯茎が見える程の笑みを作る。

グラシア「こうなったら…貴様ら全員道連れだ!」

口を大きく開け、続いて思い切り噛み締める。歯が擦れる音と共に、グラシアの奥歯に仕込まれていた何かの機械が潰れた。
同時に、京介らが居る基地から遠く離れた所にある、ミサイル発射基地。
グラシアの奥歯に仕込まれていた機械から絶えず発せられていた周波が途絶えたのをうけて、1つのミサイルが京介らの基地に向けて発射された。

⏰:08/02/13 01:56 📱:P903i 🆔:Grvs9S/A


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