-Castaway-
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#430 [◆vzApYZDoz6]
その場にいた研究者が、返り血を浴びて突っ立っているその子供に銃口を向けた。
その子供は、殺される前に研究者を殺した。殺した研究者の手に握られる拳銃をもぎ取り、天井に向けて発泡。
銃声を聞き付け集まった他の研究者へ、返り血を浴びたままで叫んだ。

ハルキン「俺の力を見ていろ、とな。そうしてその子供が施設を飛び出したのは、研究が始まってから6年後の話だ。もう分かるな?その子供が、そこの馬鹿だ」
グラシア「馬鹿な…なぜ貴様がそこまで知っている!?貴様は何者だ!?」
ハルキン「ただのレンサーさ。地球人の細胞を埋め込まれながら、強力な力を発現できず処分された…な」

⏰:08/02/12 01:29 📱:P903i 🆔:T5HVcZKQ


#431 [◆vzApYZDoz6]
京介「処分された子供、ってハルキンの事だったのか…」
ハルキン「ああ。俺の空間制御能力は、当時は今と比べ物にならない程弱かった。スキルとしても他の連中に目劣りしたからな」
グラシア「貴様が…あの研究の失敗作だと?お前は研究を知る者の1人だと…」
ハルキン「そう言っておけばお前は油断するだろう?それが馬鹿だと言うんだ、馬鹿」
グラシア「ぐっ…!」

グラシアの体が震える。
自分より劣る失敗作に見下ろされる屈辱感に、怒りで拳を握りしめた。

ハルキン「殺された研究者と子供達の代わりだ。お前は倒す」
グラシア「五月蝿い!俺は、俺の力をあのオヤジ共に…認めさせてやるんだ!!」

⏰:08/02/12 01:48 📱:P903i 🆔:T5HVcZKQ


#432 [◆vzApYZDoz6]
ハルキン「それは無理だ。強力なスキルを研究した目的は、人の役に立つ子供の育成の為。だがお前は…ただの殺人者だ」
グラシア「黙れ!!」

蹲っていたグラシアが屋上の床を殴って立ち上がり、ハルキンに掴みかかろうとする。
だがそれは敢えなくかわされ、逆にカウンターの蹴りが顔面に突き刺さった。
転がるように吹き飛び、屋上のフェンスにぶつかって停止する。

ハルキン「それに、研究者もその研究からは手を引いた。お前を認める者なんざ誰もいないさ」
グラシア「……」

蹴られた顔を押さえ、痛みに対し静かに悶絶するグラシア。その表情は段々と虚ろになっていく。

⏰:08/02/13 01:45 📱:P903i 🆔:Grvs9S/A


#433 [◆vzApYZDoz6]
ハルキン「もう、諦めろ。お前は…終わりだ」
グラシア「……フフフ、フヒャヒャヒャ!」

何がおかしいのか、グラシアは狂ったように笑いだした。
頬を大きく釣り上げて、歯茎が見える程の笑みを作る。

グラシア「こうなったら…貴様ら全員道連れだ!」

口を大きく開け、続いて思い切り噛み締める。歯が擦れる音と共に、グラシアの奥歯に仕込まれていた何かの機械が潰れた。
同時に、京介らが居る基地から遠く離れた所にある、ミサイル発射基地。
グラシアの奥歯に仕込まれていた機械から絶えず発せられていた周波が途絶えたのをうけて、1つのミサイルが京介らの基地に向けて発射された。

⏰:08/02/13 01:56 📱:P903i 🆔:Grvs9S/A


#434 [◆vzApYZDoz6]
京介「…?」
内藤「何も起こらないが」
グラシア「直ぐに分かるさ。直ぐになぁ!」

グラシアが懐に手を突っ込み、素早く拳銃を取り出す。黒光りする銃口が、直ぐ様藍に向けられた。

グラシア「フハハハ、死ねぇ!」
内藤「ちっ!」

すかさず内藤とハルキンが駆け出し、ジェイト兄弟の駆る巨人が剣を振り下ろす。
だが剣は避けられ、既に指が引き金に掛けられている状態では内藤とハルキンは間に合わない。
それを見てリーザとハル兄弟が藍の方へ走り出すが、盾になるには藍との距離が離れすぎていた。
しかし、皆がそれらの動作を起こす前に、京介が走り出していた。

⏰:08/02/13 02:06 📱:P903i 🆔:Grvs9S/A


#435 [◆vzApYZDoz6]
京介「うおおおお!!」

柄にもない叫びを上げて、京介は人生で一番速く走っていた。
グラシアが引き金を引く寸前で飛び出し、体ごとグラシアにぶつかる。

京介「おらぁ!!」
グラシア「ぐっ…俺は…!」

発射された銃弾は体当たりによって軌道が反れ、あらぬ方向へ飛んでいった。
体当たりされたグラシアの体はフェンスを勢いよく突き破り、屋上から投げ出され宙を舞った。

グラシア「俺は…認めて…褒めて…」

何かに憑かれたような目をして落下していくグラシアを、京介は見向きはしなかった。

⏰:08/02/13 02:16 📱:P903i 🆔:Grvs9S/A


#436 [◆vzApYZDoz6]
グラシア「なんだ…ここはどこだ?」

屋上から落下したグラシアは、なぜかどこかの部屋にいた。
驚き辺りを見回すと、埃を被ったベットや、カバーを掛けられた少し古くさい感じのする機械群。
そこはレンサースキル研究が行われた場所。グラシアとハルキンに縁のある場所。
無意識にテレポートスキルでも使ったのか、と一瞬思ったが、イルリナとの距離を離された為に貯めていたスキルは使えなかったはず。だが、理由が何にしろ、自分は今ここにいる。
その時、部屋の外から足音が響いた。
やがてゆっくりと部屋の扉が開き、人が入ってくる。

「やはり来たか…いずれ来ると思っていた」

⏰:08/02/13 02:29 📱:P903i 🆔:Grvs9S/A


#437 [◆vzApYZDoz6]
グラシア「チーフ…いや…父さん?」
父「待っていたよ、グラシア」

そこに居たのは、研究の第一人者だった人間。
グラシアを閉じ込め、処分という決断を下した人間。
責任と息子への情けから、せめて自分が処分しようと、1人で幼きグラシアの牢にへ赴いた人間。
居なくなっていたグラシアを探しに居住区へ行き、グラシアを撃ち殺そうとした人間。
銃口を向けられ、反射的にグラシアに殺された人間。
グラシアが只1人殺した研究者。
そして、グラシアの父親だった人間。
殺したと思っていた父親が、目の前にいた。

グラシア「ああ…父さん…?…なんで…死んだんじゃ…」

⏰:08/02/13 02:39 📱:P903i 🆔:Grvs9S/A


#438 [◆vzApYZDoz6]
父「今までよく頑張ったな。苦労したろう?」
グラシア「父さん…!」
父「お前を研究体にした父さんを許してくれとは言わない。だがお前は私の研究の成果であり、誇りだ」

グラシアが目に涙を浮かべて、殺した筈の父親にすがり付く。

父「お前のした事は許される事じゃない。でも父さんだけは許してあげよう」

父親はグラシアを優しく片手で抱き寄せた。

父「だからもう…おやすみ」

残る手に握られた拳銃をグラシアのこめかみに当てた。乾いた銃声が響くのと同時に、グラシアの意識が完全に途絶える。

基地の地面に激突したグラシアの顔は、憑き物が落ちたような穏やかな目をしていた。

⏰:08/02/13 02:52 📱:P903i 🆔:Grvs9S/A


#439 [◆vzApYZDoz6]
京介「スキルなんてものがあるから…レンサーなんてものが居るから、こんな事になったのか?」
内藤「かもしれんな。人の業、というやつだ」
京介「…」

京介は、落ちていったグラシアを追わなかった。
死んでしまったのかは知らない。少し気になったが、グラシアは京介をディフェレスに巻き込んで藍を拐った張本人だ。
京介はハルキンの話を聞いた時、不憫に思いこそはしたが同情はしなかった。

藍「…京ちゃん」

フェンスを背にして渋い表情を浮かべていた京介に、藍が寄り添うように近付いた。両手で京介の片手を握り、恥じらうように視線を落とすその姿は、なんともいじらしい。

⏰:08/02/13 04:40 📱:P903i 🆔:Grvs9S/A


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