-Castaway-
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#1 [主◆vzApYZDoz6]
幼い頃、男の子が一度は読んだ漫画や、女の子が母親に読み聞かせてもらったおとぎ話――

ある男女の高校生がくぐった扉は、そんな世界へ通じていました。




※小説初チャレンジなので、表現等至らぬ所もあると思いますが、寛大に見てもらえると嬉しいです
※かなりヲタク爆走な内容になるかもしれないです。てか多分そうなりますw
※無いとは思いますが、感想が増えたら感想スレ建てようかなと思います。



では

⏰:07/12/15 16:27 📱:P903i 🆔:cNAOSz2Y


#2 [主◆vzApYZDoz6]
秋もおわり、そろそろ木枯しが吹き始める季節。

マンションの一室のドアの前に、女の子が立っていた。

(浅香 藍、17歳。このお話のヒロインです。)

藍は手袋を着けていても冷える手を吐息で暖めながら、幼馴染みである川上 京介がドアを開けるのを静かに待っていた。

(川上 京介、17歳。このお話のヒーローです。)

藍がそろそろ待ちくたびれて階段に座ろうとした時、ドアのノブが回った。

藍「遅い!!」
京介「だから先行っていいっていつも言ってんじゃん」

京介は言いながらドアの鍵をかけ、寒さで肩を少し持ち上げた。
会話をしながらも、階段を少し小走りで降りる。

藍「でもいつも一緒に行ってるんだし…私が待ってなかったら京ちゃんいつも遅刻するし」
京介「京ちゃんって呼ぶのもやめろよ」
藍「何で?今までも京ちゃんて呼んでたんだしいいじゃない。てゆうか最近京ちゃん冷たいよ」
京介「あーもーうるせぇよ!学校間に合わねぇだろ!」

急ぐぞ、と早足で駅へ向かう京介を、藍は少しふてくされながら小走りで追い掛けた。


とまぁ、2人は友達以上恋人未満といった感じの、よくある関係だ。
京介はまだ思春期から抜けきっていないようで、藍に対して、心では嫌っていないが少しひねくれた態度を取っていた。
藍がもっと関係を深めたいと思うも、そんな京介のせいでいまいち進展はなかった。

⏰:07/12/15 16:58 📱:P903i 🆔:cNAOSz2Y


#3 [主◆vzApYZDoz6]
「また夫婦で登校ですかー?w」
「仲いいなー、羨ましいw」

教室に入ると、いつも通り2人へ冷やかしの言葉が飛ばされる。
春になれば3年目に入る学校で、京介と藍の2人は公認のカップルになっていた。

京介「こいつが勝手に待ってたんだよ!」
藍「いつも一緒に行ってるんだし待ってたっていいじゃない!」
京介「うるせぇよ!」

「もうこいつらいじるのも飽きてきたなーw」
「毎回言うこと同じだもんなw」
「京介もいい加減素直になれよw」
京介「うるせぇよ!散れ」


2人を冷やかしていた数人が笑いながらそれぞれ席に戻る。
京介も決してその気が無いわけではないが、朝のこういった冷やかしも京介が素直になれない一因だろう。
それは授業中も同じで――

藍「今日も教科書持ってきてないんでしょ?見せてあげる」
京介「いいって!机ひっつけんなよ」
「また夫婦喧嘩ですかー?w」

すかさず野次が飛ぶ。
席替えしても毎回京介と藍は隣同士だ。

⏰:07/12/15 17:13 📱:P903i 🆔:cNAOSz2Y


#4 [主◆vzApYZDoz6]
-放課後-

藍「さっ、帰ろ京ちゃん」
京介「いいって一緒じゃなくても」
藍「でも家まで道一緒だし…」
「そうそう、一緒なんだし一緒帰れw」
京介「うるせぇ!もういいよ、帰るぞ」

藍は頷きながら、やはり早足で行く京介に付いていく。

藍の家は京介と同じマンションの、同じ階の、京介の向かいの部屋だ。
電車どころか家のドアを開ける時も同じなので、京介もふてくされながらも毎回一緒に学校に行き、一緒に家に帰っていた。

その2人の住み慣れたマンションの1階ので、京介が自宅の郵便受けを開けている時。

藍「ねぇ…あんなとこにドアなんかあったっけ?」

藍が階段の隣を指差して京介に言った。
京介が藍の指の先を見る。
このマンションはエレベーターが無く、階段が2部屋毎に部屋に挟まれてあるだけだ。
階段は集合住宅によくあるような、階毎に踊り場を挟んで折り返し昇るタイプ。京介のマンションは、1階の階段の始まりの横-地下があるならば、さらに降りる階段がある場所です。-が壁になっていて何もない。

藍はそこを指差していた。

⏰:07/12/15 17:36 📱:P903i 🆔:cNAOSz2Y


#5 [主◆vzApYZDoz6]

京介「あれ?あんなとこにドアなんかあったっけ?」
藍「それ今言ったから!…でもあんなとこにドアなんか無かったよね?」

京介「たぶん…無かったと思うけど」


2人ともドアを見つめながら、不思議そうに会話していた。

ドアは全体的に茶色で、ドアノブと思われる水平棒がついている。ノブを回すのではなく、下げて押し開けるタイプのドアだろう。
そのドアがある場所は、今日の朝までは間違いなく壁だった。

少しの間2人とも沈黙していたが、藍が唐突に口を開いた


藍「ねぇ、中に何があるか気にならない?」

⏰:07/12/15 18:11 📱:P903i 🆔:cNAOSz2Y


#6 [主◆vzApYZDoz6]
京介「まぁ気にはなるけど…明らかに怪しいだろアレ」

京介の言うことは最もだ。
ドアがある場所は階段裏のデッドスペースで、せいぜい物置程度の空間しか無いだろう。ましてや人が住んでいるなどあるはずもない。さらに、このドアは恐らく京介達が学校にいる間に突然現れたのだ。
怪しい事この上ない。


藍「分かってるよそんなの。だから中が気になるんじゃない!」
京介「いやまぁ…言いたいことは分かるけど」
藍「ほら京ちゃん、中見てみよ!ちょっと除くだけじゃん!」
京介「万が一人がいたらどーすんだ」


京介の心配もよそに、藍は京介の腕を引いてドアへ向かっていた。
京介も何だかんだで気になるので、そのまま引かれてドアへ向かう。
藍がドアノブに手をかけた。


藍「あっ、一応おじゃましますって言った方がいいかな?」
京介「心配せんでも人はいねぇだろうけど…まぁ、好きにすればいいんじゃね?」
藍「よーし、じゃあ…おじゃましまーす!!」


藍が勢いよくドアを開け中に入る。
京介も中に入った。


京介達が予想外の中の光景に驚きはしゃいでいる後ろで、ドアの蝶番がゆっくりと戻っていく。


やがてドアが完全に閉まり、ドアノブが水平の位置へ戻る。



カチッ、という音と共にドアノブが水平に戻った瞬間、ドアが光に包まれ、忽然と消え去った。

⏰:07/12/15 18:27 📱:P903i 🆔:cNAOSz2Y


#7 [主◆vzApYZDoz6]

藍「すごーい…」
京介「何だここ?」


2人が出た場所は階段裏のデッドスペースなどではなかった。
回りはどこを見渡しても草原が広がるばかりで生き物も見当たらず、建物はおろか、木の1本すら生えていない。水平線の彼方に山が広がっているだけで、まるでモンゴルの大草原を彷彿とさせた。


京介「ドアの向こうは不思議の草原でした。」
藍「あははっ、それ『千と千尋の神隠し』じゃん!…でも何だろうねここ」
京介「てゆうかあのドアってマンション裏にあったはずじゃ…―――げっ!」


京介はドアを見ようと振り返り驚愕した。


京介「ドアが…ドアが無くなってる!」


京介は、今しがた自分が出てきた場所をまさぐったが、空を切るばかりだ。

⏰:07/12/15 18:47 📱:P903i 🆔:cNAOSz2Y


#8 [主◆vzApYZDoz6]

京介「どうやって帰るんだよ…なぁ藍、これからどう―――あれ?」

さっきまで隣にいた藍がいない。
京介は焦って辺りを見回すと、藍が50m程先で佇んでいた。
京介はほっとして胸を撫で下ろし、駆け足で近付いた。

京介「どうしたんだ?」

藍「あ、京ちゃん、あれさっきのドアじゃない?」

京介「えっ?…あっ、ホントだ」

藍が指差してた先を見ると、10mぐらい先だろうか、確かにここに来たときにくぐったのと同じようなドアが見える。

⏰:07/12/15 18:56 📱:P903i 🆔:cNAOSz2Y


#9 [主◆vzApYZDoz6]
京介「よし、ならさっさと帰るぞ」

藍「えっ、どうせならもっと探検してみようよ!」

京介「探検してみようよって、回り何もねぇじゃん…」

藍「だからあっちの山まで…」

京介「遠いわ!これ以上わけわからん事になる前に帰るぞ」

ほら、と藍の腕を引っ張る。
藍は少しふてくされながら渋々ついていった。

⏰:07/12/15 19:01 📱:P903i 🆔:cNAOSz2Y


#10 [主◆vzApYZDoz6]
さっきと同じドアを、今度は京介が開く。

京介「あれ…また変なとこに出たぞ?」


そこはマンションの階段だった。が、明らかに外の風景が自宅のマンションとは違う。
辺りは夜のようで、マンションを出るとレンガの道が左右に伸びており、脇には該当の光が点々と続いている。向かいや隣にもレンガ造りのマンションや家が並んでいる。その町並みはロンドンの市街のようだが、人は全く見当たらず、あまりに閑散としている。

藍「なんか怖いね…」

京介「まぁ…とりあえずまたドアが無いか探してみようぜ。離れんなよ」

やはりドアが消え失せて壁になっている場所を一瞥しながら、藍の手を引いて外に出る。

京介達がレンガ道の真ん中に出ると後ろで、瓦を割ったような大きな音が響いた。

京介「なんだ!?」


見ると、男が立っていた。

⏰:07/12/15 19:38 📱:P903i 🆔:cNAOSz2Y


#11 [主◆vzApYZDoz6]
男はスキンヘッドで、黒いジャケットに黒いカッターを着ていた。肌も褐色で、周囲の薄暗さも相まって景色に溶け込んでいた。
男の足元を見ると、まるで上空からボーリングの球を落としたかのように、レンガが抉れ捲り上がっていた。

京介「何だよお前…?」

後ろの藍を右腕で制しながら言う。

?「やはり来たか…悪いが、死んでもらおう」

京介「はっ?」

男は既に右腕をふりかぶっていた。

⏰:07/12/15 19:58 📱:P903i 🆔:cNAOSz2Y


#12 [主◆vzApYZDoz6]
京介「危ない!!」

京介は藍を抱え右に飛ぶ。

間一髪。
男の右腕は、つい半瞬前まで京介達がいた場所の地面にめり込んでいた。

男が腕を引き抜き、京介達の方へ向き直る。
男の右腕は、左腕の3倍はあろうかというぐらいに膨れ上がっていた。
京介はすぐに立ち上がり、藍を抱え起こす。

藍「ありがとう…でも何あの人!?」

京介「分からねぇけど、とにかく逃げるぞ!!」

京介は藍の腕を引っ張り走り出した。
男もそれを確認し、体をかがめた。

?「逃げるのはいい事だが…遅いな」

一気に飛び出す。
一瞬で京介達を飛び越えた。

京介「げっ」

?「無駄な足掻きはするんじゃない」

男は再度右腕を打ち出す。
京介は走っていて急に止まったため体勢が不安定だった。

京介「やべ…!」

その時、京介の前に見慣れた人物が現れた。

⏰:07/12/15 21:19 📱:P903i 🆔:cNAOSz2Y


#13 [主◆vzApYZDoz6]
藍「…内藤先生?」

京介「えっ?」

内藤「ふぅ…間一髪か」

内藤が男の拳を払いながら溜め息をついた。

(内藤 篤史、35歳。京介と藍のクラスの担任です。)
京介「内藤!!何でここに!?」

内藤「川上、先生を呼び捨てで呼ぶもんじゃないぞ」
?「誰だ、貴様は」


男が左手を前に突きだし構えをとった。
内藤もそれに倣い、体勢を立て直す。

内藤「俺も地球から来た人間だ。…こいつらと同じ、な」

内藤が後ろの京介達を顎で指す。

?「地球人か…ならば貴様も死んでもらうが」

⏰:07/12/15 22:16 📱:P903i 🆔:cNAOSz2Y


#14 [主◆vzApYZDoz6]
京介と藍は困惑していた。
京介は頭の中で数々の疑問が浮かぶ。
地球から来た…って、じゃあここは何処なんだ?
地球人か…って、あいつは地球人じゃないのか?
藍はわけもわからず黙って立っていた。
京介はとりあえず内藤に訊いた。

京介「なぁ、内藤、何か知ってるみたいだけど、一体なんなんだ?」

内藤「ん?それはあとで説明する。てゆうか先生を呼び捨てに―――」

会話を遮るように男が踏み込んだ。
初撃、2撃目よりも遥かに早く右ストレートが打ち出される。

内藤「……全く気が早いな。親から教わらなかったか?」

内藤の左手が男の右拳に添えられた。
男の右拳を、スピードを殺さず手前に引く。

内藤「人が喋っている時は―――」

間髪入れず右手で男の右肩を掴み、さらに引く。
左手は男の拳から離れ、そのまま弧を描きながら男の踏み込み足を掴む。
内藤が左右の腕を勢いよく交差させると、男の体が宙に舞った。
内藤はそのまま右拳を腰に構え―――

内藤「―――邪魔をするんじゃない!」

―――渾身の掌呈突きを繰り出した。

?「ごはっ!!」

男は血を吐き、体は数m吹っ飛んだ。

京介「内藤ってあんな強かったっけ…?」

内藤「だから先生を呼び捨てにするんじゃない」

⏰:07/12/15 23:01 📱:P903i 🆔:cNAOSz2Y


#15 [主◆vzApYZDoz6]
内藤はポケットから煙草を取り出し、火をつける。銘柄はマルボロメンソールだ。深く煙を吸い、ゆっくり吐き出した。
京介はその様子を見ながら、内藤が何故か持っていたロープで謎の男を縛り上げていた。
藍はすぐそばにあったベンチに腰掛け、2人を静かに眺めていた。
京介が男を縛り終えた頃合いを見計らって、話を始める。

内藤「さてと…何から話すべきか」

京介「とりあえず、此処は何処なんだ?」

内藤「この世界は『ディフェレス』と言ってな…まぁ簡単に言えば異世界だな」
藍「あの人は一体何なんですか?」

内藤「あいつは『ウォルサー』っつー組織の組員…つうか戦闘員だ。…なんて言っても分からんだろう」

京介「全然分からん」

内藤「ごもっとも。一から説明しよう。黙って聞け」

⏰:07/12/15 23:15 📱:P903i 🆔:cNAOSz2Y


#16 [主◆vzApYZDoz6]
内藤は短くなった煙草を携帯灰皿に押し付けた。

内藤「『ディフェレス』には、普通の人間の他に『レンサー』と呼ばれる特殊な力を持った人間が存在する。その特殊な力は『レンサースキル』と言って…まぁ色々ある」

京介「色々ある、ってハショんなよ。つうか何の漫画だそりゃ…」

内藤「五月蝿い。黙って聞け。…んでな、ウォルサーはそのレンサーの力で、世界征服というありきたりな事を企んでるんだ。
そして、その企みを阻止せんとする『バウンサー』という組織も存在する。俺もそこの所属だ」

藍「え?じゃあ担任をしてるのはなぜなんですか?」

内藤「うん。お前は言葉遣いが正しくて宜しい。…まぁこれにも理由があってな、ウォルサーが世界征服を目論むにあたって地球人を狙いだしたんだ。
つうのも、地球人の中にも極少数のレンサーがいる。しかも、そのスキルは他と比べ物にならないぐらい強力なものが多いんだ。ウォルサーはそこに目をつけ、スキルを持った地球人を誘拐・洗脳して利用しよう、っつーとんでもない計画を企てたんだ。」

⏰:07/12/15 23:55 📱:P903i 🆔:cNAOSz2Y


#17 [主◆vzApYZDoz6]
京介「話が突飛すぎてついていけないんだが…スキルとか洗脳とか」

内藤「その洗脳がやっかいでな…そこに縛られてるあいつも洗脳で操られている。簡単なスキルなら人に覚えさせる機械があってな、レンサーではない普通の人間でもスキルを持たせれば戦える。奴等はそうやって駒を増やしているんだ」

京介「なんか映画でなかったかこんなの?」

内藤「話を戻すぞ。地球人の誘拐を防ぐために、俺が地球に派遣された。スキルを持つ地球人の発見と保護が目的だ。
そして発見したスキルを持つ地球人が…お前だ、川上」

京介「俺!?いやいやはっきり言ってそんなわけわからん能力とか持ってないから!!」

内藤「いや、お前はスキルを持っている。『扉』が開いたのが何よりの証拠だ」

⏰:07/12/16 00:07 📱:P903i 🆔:jBKYDY9A


#18 [主◆vzApYZDoz6]
京介「扉…ってまさか」

京介は藍と顔を見合わせる。

藍「あのドア?」

内藤「そうだ。あれはレンサーしか開けれない扉でな…ウォルサーに移動型の強力なスキルを持った奴がいてな、そいつの仕業だ。
その扉はレンサーの側に出現する仕組みになっているから、お前を担任に成り済まして見張っていたんだ…だがたまたま臨時の職員会議があってな…」

京介「頼りにならねぇな…

⏰:07/12/16 09:18 📱:P903i 🆔:jBKYDY9A


#19 [主◆vzApYZDoz6]

京介「あれ?でもあいつらは地球人…って言うか、まぁ要するに俺を、利用しようとしてんだろ?何で殺すんだ?ってかさっきも言ったが、俺そんなわけわからん能力とか持ってないから」

内藤「あいつらの言う『地球人』は、スキルを持たない地球人の事だ。…まぁつまり、浅香、お前の事だ」

藍「私を殺そうと…?」

京介「いや、何で殺す必要があるんだよ?」

内藤「どうゆう訳かレンサーではない地球人には洗脳が効かない。つまり、ディフェレスの実情を知ればバウンサー側の人間になられる。まぁ、敵になる前に殺そうって事だ。…しかし何で浅香は扉を通れたんだ?」

⏰:07/12/16 11:06 📱:P903i 🆔:jBKYDY9A


#20 [主◆vzApYZDoz6]
京介「そういや最初にあのドア開けたのお前だな」

内藤「開けた!?本当か!?」

内藤が身を乗り出す。

藍「え?…あ、はい、一応…」

内藤「まさか…いやでも開けられるのはレンサーだけ…だが反応は…」

京介「何ブツブツ言ってんだ?」

内藤「だいたいあの扉がなぜここに…クルサがモルディアに繋がるように組み換えたはず…」

⏰:07/12/16 11:16 📱:P903i 🆔:jBKYDY9A


#21 [主◆vzApYZDoz6]
内藤のよく分からない独り言を聞いて、京介が藍に呟いた。

京介「…そういや最初は草原に出たよな?」

藍「そうだね…結局あそこは何処だったんだろ」

内藤「草原!?」

内藤がいっそう2人に近付いた。

内藤「そこへの扉を開けたのが浅香…じゃあここへ来る扉を見付けたのは?」

藍「私ですけど…」

京介「草原からここへ来たときもお前が先にドア見付けてたよな」

内藤「やはりか…」

その時、背後から甲高い声が響いた

?「いいこと聞いちゃったー♪」

⏰:07/12/16 11:26 📱:P903i 🆔:jBKYDY9A


#22 [主◆vzApYZDoz6]
声の正体は女だった。
後ろのマンションの屋上から飛び下りたその女は、カッターシャツにカーディガン、下はプリーツのスカートという、まるで高校生のような風貌。

内藤「アリサ…!」

アリサ「もう、その女を殺さない訳にはいかないよ♪」

アリサは手を上にかかげ、指をパチンと鳴らした。
と、先刻京介達を襲い、今は縛られてる男が、一斉に現れた。手には拳銃らしいものを持っている。

京介「なんかいっぱい出てきたけど」

内藤「仕方ない…川上!」

京介が振り返ると、突然内藤の人差し指が耳に突っ込まれた。

京介「いってぇ!?」

内藤が指を引き抜きながら、前を見据える。

内藤「これでお前は戦える。お前はあのハゲ男達から藍を守れ」

そう言うと、内藤はアリサの懐へ踏み込んだ。

⏰:07/12/16 11:45 📱:P903i 🆔:jBKYDY9A


#23 [主◆vzApYZDoz6]
京介「おい待てよ内藤!」

京介が内藤を追い掛けんとするところを、男達が阻む。

男「その女を渡せ」

京介「誰が渡すか!」

京介は藍をベンチの後ろに隠させ、男達に向き直った。

京介「戦えるって…戦い方分からねーっつーの」

男「ならばお前に先に死んでもらおう」

男達が、一斉に拳銃を構えた。

⏰:07/12/16 11:51 📱:P903i 🆔:jBKYDY9A


#24 [主◆vzApYZDoz6]
京介の視界に、自分に向かって飛んでくる無数の銃弾が映った。
なぜか、銃弾はゆっくりと自分に向かってきている。

京介「あれ…これ避けれるんじゃね?」

1番最初に自分に当たりそうな弾は左前から来ている。
京介は右に首を倒す。顔面目掛けて飛んでくる銃弾は京介の耳の横を通過した。
その銃弾を尻目に前を確認、今度は前方と右前の弾が当たりそうだ。
今度は右後ろに1歩下がった。
銃弾が眼前をゆっくり通過していく。
その銃弾の向かう先を目で追う。
藍には当たらなさそうだ。
京介はまた前を見る
男達は、自分が今立っている場所から1歩左前、つまり避ける前に立っていた場所を見ている。

京介(あれ…あいつらボーッとして何やってんだ?)

⏰:07/12/16 12:06 📱:P903i 🆔:jBKYDY9A


#25 [主◆vzApYZDoz6]
京介は、自分の前に扇形に並ぶ男達の、右端の男の方に踏み込む。
京介が男達の後ろに回り込んだ頃に、ようやく男達の視線が動き出した。

男「奴がいない!?」

京介「何処見てんだよさっきから」

男「はっ!?」

男が声の方を振り返ると、味方の男が1人、宙に吹っ飛んでいた。

⏰:07/12/16 12:17 📱:P903i 🆔:jBKYDY9A


#26 [主◆vzApYZDoz6]
京介「おぉ!?」

吹っ飛んだ男は、地面に頭から着地、もとい激突した。

京介「あれ?俺ってこんなパンチ力あったっけ?」
男「貴様!!」

男の声に反応し、視線を上げる。
目の前にいた男が拳銃を捨てて殴りかかってきた。
その後ろの何人かも拳銃を捨て、横に飛び出してくる。
京介には、やはりスローモーションに見えていた。

京介「今度は右腕膨らまさねーのか?」

眼前の男の右腕は細いまま、顔を狙って拳が飛んできた。

⏰:07/12/16 12:30 📱:P903i 🆔:jBKYDY9A


#27 [主◆vzApYZDoz6]
京介は右足を持ち上げ、前に蹴り上げた。
男はそのまま吹っ飛ぶ。
今度は左右から別の男が殴りかかってくる。
左の男の伸びてくる腕を右手で捕まえ、そのまま左肩に担ぎ、腰に体重をかける。

京介「おらっ!」

勢いよく右の男に投げ飛ばした。

京介「おー、何かよく分かんねーけどいけそうだな!」

京介は前に残る男達を倒すべく踏み込んだ。

⏰:07/12/16 12:42 📱:P903i 🆔:jBKYDY9A


#28 [主◆vzApYZDoz6]
アリサ「ふふっ、私を相手にする気?♪」

京介が男達の銃弾を避けている頃、内藤はアリサと対峙していた。

アリサ「あっちも銃撃始めたみたいだし、そんなに頑張ったって、どうせあの女は殺しちゃうよ?♪」
内藤「浅香なら川上が守っているはずだ。今の川上ならあいつらぐらいどうって事ないだろう」
アリサ「やっぱりスキルを渡してきたのね♪」
内藤「…」

内藤は無言で構えた。
内心で銃撃音が気になっていたが、京介に渡したのは情報処理能力強化スキル『ブロード』。しかも、強制使用するようにしておいた。
心配はいらない、と内藤は自分に言い聞かせる。
しかし―――

アリサ「知ってるわよ♪貴方は地球での活動の妨げになるから、スキルの殆どをバウンサーの本部に置いてきてるんでしょ?♪」

内藤は最低限戦うために持っていたスキルを京介に渡してきたため、スキルを…戦うための能力を、持っていなかった。

⏰:07/12/16 13:19 📱:P903i 🆔:jBKYDY9A


#29 [(・∀・)]
こういう系の話
大好きです!!
頑張って下さい
応援してますッ★

⏰:07/12/16 13:54 📱:SH903i 🆔:Rq4r5kG.


#30 [主◆vzApYZDoz6]
内藤「大事な教え子を殺させる訳にはいかんからな」
アリサ「あら、その大事な教え子を戦わせているのはあなたじゃない♪」
内藤「川上なら大丈夫だ。…あいつがハゲ共を倒すまで、俺が時間を稼ぐ」

内藤が一気に踏み込んだ。

アリサ「ふふっ、できるものならやってごらんなさい♪」

内藤がストレートを打ち出す。
アリサは素早く後ろに下がった。内藤の拳が空を切る。

アリサ「どこまで持つかしら♪」

アリサは左手を前に突き出した。
手には、携帯電話が握られている。

⏰:07/12/16 14:06 📱:P903i 🆔:jBKYDY9A


#31 [主◆vzApYZDoz6]
>>29
ありがとうございます。
頑張らせてもらいます

⏰:07/12/16 14:08 📱:P903i 🆔:jBKYDY9A


#32 [主◆vzApYZDoz6]
開いた携帯電話を、岡っ引きの形で持つ。
その携帯電話に添うように右手を被せる。

アリサ「せいぜい頑張って頂戴ね♪」

右手が輝きだす。
左手を引き抜くようにスライドさせると、携帯電話から光の筋が浮かび上がった。
まるでライトセイバーのようなその光の剣を、八艘構えで持ち向き合う。

内藤「『ハンドルソード』か。そんな何処にでもあるようなスキル…俺も舐められたもんだ」
アリサ「今のあなたならこれで十分よ♪」

アリサが袈裟斬りを繰り出す。

内藤「しかし…ヤバいのは事実かな」

内藤は全力で右前に飛び込んだ。
足元の地面が砕けるのを尻目に、そのままアリサの後ろに回り込み、バックステップで距離を取った。

⏰:07/12/16 14:34 📱:P903i 🆔:jBKYDY9A


#33 [主◆vzApYZDoz6]
アリサ「逃げるのだけは上手いのね♪」
アリサが後ろの内藤と向き合う。

内藤「褒められたもんじゃないけどな」
アリサ「分かってるなら大人しくしていなさい♪」

アリサが踏み込んだ。
先刻よりも早く剣が振り下ろされる。

内藤「それは死んでも嫌だね」

今度は後ろへ跳んだ。
初太刀の袈裟斬りを寸前でかわす。
すかさず左から水平斬りが迫ってくる。

内藤「ノーマルだからって―――」

左手を腰へ。
同時に、跳んだ反動を殺さず体を後ろに反らした。

内藤「―――舐めるなよ!」
左手を上へ打ち出す。
内藤の掌が刀身の横腹を捉え、斬撃を逸らした。
そのまま両手を逆手で地面に突き、体を丸める
反動で前に起き上がった時には、右手がすでに腰に構えられて。

アリサ「なっ…♪」
内藤「悪いが、俺は男女平等主義者でね」

掌呈突きを繰り出した。

⏰:07/12/16 15:02 📱:P903i 🆔:jBKYDY9A


#34 [主◆vzApYZDoz6]
次々とスキンヘッドの男が転がっていくのを、藍がベンチの裏から心配そうに見ていた。
理由は分からないが、自分の幼馴染みが戦っている。
その向こうでは、自分のクラスの担任が戦っている。
藍はその光景をいまだに理解できていなかった。

京介が最後の1人を勢いよく吹っ飛ばしたのを確認して、ベンチから身を出し駆け寄った。

藍「京ちゃん、大丈夫?」
京介「全然余裕だけど」

京介が服の埃を払いながら答える。

京介「まぁ、内藤が何かしたおかげだけどな…つうかその内藤は?」
藍「あっちでさっきの女の人と戦ってるみたいだけど…」

京介が藍の視線の先を辿ると、確かに内藤がいる。
ちょうど、袈裟斬りをかわして女の後ろに回り込んでいた。

京介「あれ…危ねーんじゃねぇの?」

女の袈裟斬りを避けてはいたが、処理能力が強化されている京介の頭脳は、明らかに内藤が不利だと言っていた。
女が2撃目をふりかぶる。
京介は駆け出した。

⏰:07/12/16 15:17 📱:P903i 🆔:jBKYDY9A


#35 [主◆vzApYZDoz6]
内藤はすぐに距離を取った。
今はアリサの油断があったからこそ反撃できたが、次はそうはいかない。

内藤「川上はまだ戦っているのか…」

内藤が横目で背後を確認する。
京介が自分の元へ走ってきていた。

京介「あれ?普通に大丈夫じゃん…」

京介は、確かに脳の処理能力が強化されている状態だ。
それはつまり、普段より反応は早いが、筋力が上がったという訳ではない。
危機が迫る内藤の元へ一瞬で近付く事などできるはずもなかった。

内藤「遅いぞ、川上」
京介「いやだって走る速さ変わってないし…大の男をあんだけ吹っ飛ばせたのに」
内藤「そりゃそうだ。あいつらは風船だからな」
京介「風船?」
内藤「喋ってる暇は無い、とりあえず藍を連れて逃げるぞ」

内藤は、既に立ち上がって埃を払っているアリサを横目で見た。

京介「げっ、あいつピンピンしてんじゃん」
内藤「とりあえずスキルを返せ」

内藤は再び人差し指を突っ込み、引き抜いた。

京介「いってぇ!ったく、それやらないと返せな―――うわっ!!」

内藤は、京介を藍のいるベンチ目掛けて投げ飛ばした。

⏰:07/12/16 15:34 📱:P903i 🆔:jBKYDY9A


#36 [主◆vzApYZDoz6]
京介「いってぇ…」
藍「ちょっと京ちゃんどうしたの?行ったと思ったらすぐ帰ってきて」
京介「いや、逃げるぞって言われて…」

言いかけたところで、地面の異変に気がついた。
自分と藍がいる場所を囲むように、ピンク色の光の筋が、円を描いている。
光の筋が京介達の周囲を360度回りきると、円の中の地面もピンク色に光りだし、京介達が全身光に包まれる。
光が消えると、京介達の姿は無くなった。

⏰:07/12/16 15:44 📱:P903i 🆔:jBKYDY9A


#37 [主◆vzApYZDoz6]
内藤「よし成功」
アリサ「『ゲートキャバ』ねぇ…♪スキルを持ってないフリをするなんてセコいわね♪」
内藤「お前が持ってないと思い込んでいただけだろう」

内藤は京介達が消えたのを横目で確認し、向き合う。中指はピンク色の光を発している。

アリサ「結局計画は失敗ね…でもまぁ逃げた先はあなたの親元でしょう?♪」
内藤「さあな。…さてと、俺ものんびりしてられないから帰らせてもらうわ」

内藤は後ろへ跳んだ。
着地点は、京介達が消えた場所。
内藤が着地と同時に中指を地面に擦ると、地面が再び輝きだした。
同じように内藤を光が包む。

内藤「まぁ、次があればお互い本気でやろうじゃないか」

言い終わるか分からないうちに、内藤も消え去った。

⏰:07/12/16 16:06 📱:P903i 🆔:jBKYDY9A


#38 [主◆vzApYZDoz6]
アリサ「ふふっ、行っちゃった♪」

アリサは手に持った携帯電話に右手をかざす。
右手をスライドさせると、光の剣が消えていった。

アリサが携帯電話をしまっていると、どこからともなく男が現れた。

アリサ「あら、今頃どうしたのよガリアス♪」

ガリアス、と呼ばれたその男が後頭部を掻いた。
外観は若い。下はジャージをはいて、上は丈の長いTシャツという、良く言えばラフな、悪く言えばやる気のない格好だ。

ガリアス「いや、モルディブで張ってたんだけどよ…まさかこんなところに現れるとは思わねぇしさ」
アリサ「そうねぇ♪…アサカ・アイだっけ?♪」
ガリアス「うーん、先に手をうつべきかな」
アリサ「あら、今日は随分やる気じゃない♪」
ガリアス「色々あったんだよ。俺はアサカの方をやるけど、お前はどうする?」
アリサ「騒動は多い方がいいんじゃない?♪」
ガリアス「お前は何だかんだでえげつねぇな…まぁ俺はもう行くわ。早いに越した事はないし、奴等の行き先なら見当がつく」

ガリアスは踵を返し、そのままレンガ道の先の闇へ消えていった。

アリサ「自分でやる気かしら?♪まぁいっか…帰りましょ♪」

アリサが再び携帯電話を取り出しボタンを操作すると、忽然と消え去った。

⏰:07/12/17 01:12 📱:P903i 🆔:m2d30OU2


#39 [主◆vzApYZDoz6]
京介「今度はどこだよ…」

京介と藍は、またしても見知らぬ場所に出てウンザリしていた。
そこは荒野のようで、京介達はそこを縦断する道路の真ん中に立っていた。
例によってまわりに人影はない。が、道路の端に一台の車が停まっていた

藍「あそこに車があるけど」京介「いやっ、怪しさ満点だぜ」

と、急に京介のそばの地面が光りだす。
現れたのは内藤だった。

内藤「2人とも無事だな。今から俺んち行くぞ」
京介「内藤んちとか別に興味ねぇんだけど」
内藤「いいからついてこい」

内藤は車のドアを開け、エンジンキーを回す。
京介と藍が後部座席に乗り込んだのを確認し、発進させた。

⏰:07/12/17 01:23 📱:P903i 🆔:m2d30OU2


#40 [主◆vzApYZDoz6]
道はずっと直線で、たまに勾配がついていた。
1時間ほど車を走らせていると、1軒の建造物が見えてきた。
内藤が家の前で車を止めて降りる。京介と藍もそれに倣った。

京介「なんつうか、ちっこい家だな」

京介が呟く。
確かに、家と言うには小さく、大きめの納屋、と言った方が近いかもしれない。

内藤「ま、別荘みたいなもんだな」

内藤が言いながらドアを開けた。

内藤「なっ…シーナ!リーザ!大丈夫か!」

内藤が慌て中に入ったのを見て、京介も中を覗いた。
中は1つの部屋になっていた。さっぱりして、特に物も無い。
が、中央に人が2人、横たわっていた。

⏰:07/12/17 01:37 📱:P903i 🆔:m2d30OU2


#41 [主◆vzApYZDoz6]
藍「どうしたの?」
京介「あれ!人が倒れてる!」

京介と藍も駆け寄る。
倒れている2人は双子のようで、どちらも長い金髪の髪を束ねている。
意識はあるようだ。

内藤「大丈夫か!?誰にやられた?」
リーザ「う…ん、内藤…?」
シーナ「あなたが来たってことは、まさか…」
京介「なぁ、どうしたんだ?」

京介が内藤の前に身を乗り出したのを見て、2人が声を荒げる。

リーザ「こっちへ来ちゃ駄目!」
藍「きゃっ!!」

京介が驚いて後ろを振り返ると、ジャージをはいた男が藍を肩に抱き抱えていた。

ガリアス「まったく無用心だな、誘拐のし甲斐が無い」
京介「待ちやがれてめぇ!!」

ガリアスが素早く家から出ていった後を、京介が追う。
しかし、京介が家の外に出ても回りに誰もいなかった。

京介「あれ!?どこ行った?」ガリアス「ここだよー、カワカミ君」

辺りを見回していた京介の頭上から声がした。
京介が見上げると、そこにいたのはドラゴンに乗るガリアスだった。
ドラゴンの背中にはもう1人男が乗っている。

⏰:07/12/17 01:59 📱:P903i 🆔:m2d30OU2


#42 [主◆vzApYZDoz6]
京介「おい!藍をどうする気だ!降りてこい!」
ガリアス「別にどうもしないよ、彼女が抵抗しなければね」

ガリアスの肩に抱かれている藍は暴れたりする様子もない。気絶させられたようだ。

ガリアス「まぁ、取り返したければ取り返しに来なよ」

そう言ってもう1人の男に目配せする。
男は頷き、京介を一瞥してから前を向く。
ドラゴンはそのまま空の彼方へ飛び去った。
京介が肩を落として振り返ると、ちょうど内藤がリーザとシーナに肩を貸しながら、家から出てきた。

内藤「おい、大丈夫だったか!?浅香は!?」
京介「連れていかれたよ…」
内藤「そうか…。だがそれなら行き先は見当がつく」
京介「本当か!?」
内藤「あぁ。藍が抵抗しなければ殺されたりはしないだろう。今はとりあえずこの2人を…」

突然、会話を遮るように、大きな電子音が乗ってきた車から鳴り響く。
内藤が車に近付いてドアを開け、無線機のような物を取り出しボタンを押した。

内藤「どうした?」
『今すぐホームへ戻ってきて!凄い数の襲撃が…!』内藤「何!?分かった、すぐに行く!!」

内藤は無線機を車に放り投げ、京介らの元へ駆け寄った。

京介「どうしたんだよ?」
内藤「説明してる暇はない、とにかく行くぞ!」

内藤が中指で地面を擦る。
京介・内藤・リーザ・シーナの4人がピンクの光に包まれた。

⏰:07/12/17 02:20 📱:P903i 🆔:m2d30OU2


#43 [主◆vzApYZDoz6]
-バウンサー本部-
円筒状に縦に長い建物に、スキンヘッドの男達が無数の銃弾を浴びせている。
男達の後ろにはアリサが立っていた。

アリサ「んもぅ、鬱陶しい結界ねぇ♪みんな、どんどん撃っちゃってー♪」

アリサの声をバックに、スキンヘッドの男達が銃撃が更に激しさを増す。

「うーん、これじゃスティーブの散歩にも行けやしないな」
「何言ってんですか会長!この結界もあれだけの攻撃が続くと持ちませんし、早く手を打たないとヤバいですよ!」

その様子を中から見ている2人の男が、険しい顔で話をしていた。

(ハルキン、31歳。バウンサーのトップで、通称『会長』と呼ばれています)
(ラスダン、26歳。バウンサーの一員です)

⏰:07/12/17 16:21 📱:P903i 🆔:m2d30OU2


#44 [主◆vzApYZDoz6]

ハルキン「いやまぁ分かってるんだけどねそれは」
ラスダン「ならばこちらも反撃するなりしないと…!ジェイト兄弟なら出撃準備が出来てますけど、出しますか?」
ハルキン「まぁ待て、ラスカが連絡してたから、そろそろ内藤が戻ってくるはずだ。敵はアリサの他にも何人かいるようだし、こちらの出撃も数が揃ってからだ」
ラスカ「あんたそれまで結界はってろって言うの?冗談じゃないわ、こっちだって辛いんだから!」

部屋の中央から1人の女が喋りかける。
(ラスカ、?歳。バウンサーの一員で、様々な結界を作るスキル『タレント』を持つレンサーです。)

ハルキン「ん?まぁ頑張れ」
ラスカ「まぁ、人の苦労も知らないで…!」

⏰:07/12/17 16:26 📱:P903i 🆔:m2d30OU2


#45 [主◆vzApYZDoz6]
内藤「ハルキン、大丈夫か?」
ハルキン「おぉバニッシ、着いたか」

ピンクの円が光り、内藤達が現れた。

内藤「今は内藤だ。…しかし、まさかこのタイミングで仕掛けてくるとは…」
ハルキン「うーん、リーザとシーナをお前んとこで養生させたのは間違いだったか」
内藤「まぁ間に合ったし、今話していても仕方がない。敵の数は?」
ハルキン「既に『調査』はすんでいる。…ラスダン!」

OK、とラスダンが親指を立てる。

ラスダン「目ぼしい敵は、アリサ、ウィニー、ハル・レインとハル・ライン。ガリアスはいないみたいだよ。風船人形がやけに多いのが気になるけど…まぁ大丈夫じゃないかな」

内藤「4人か…風船人形がいる外じゃあやりづらいな」
ハルキン「そこはジェイトらに任せよう。出撃準備は出来てるんだろう?…そうだな、1階を使わせてやるか。ラスダン、伝えておいてくれ」
ラスダン「了解」

ラスダンが足早に部屋を出ていく。
ドアのそばにいた京介がどうしていいかあたふたしているのを見て、内藤が近付いた。

内藤「よし、身体強化スキルを渡しておくから、お前も1階へ行くんだ」
京介「あ、あぁ、分かった」
京介がラスダンの後を追って部屋を出ていった。

ハルキン「ラスカ、結界を頼むぞ。やることは分かってるな?」
ラスカ「はいはい…人使い荒いんだから」
内藤「よし、行くぞ」


ラスカが見守る中、内藤とハルキンが窓から飛び出した。

⏰:07/12/17 17:02 📱:P903i 🆔:m2d30OU2


#46 [主◆vzApYZDoz6]
京介はエレベーターを降り、1階のフロアに出た。
1階は非常に広く、学校の講堂ぐらいの広さがある。
京介は、前方からバイクに乗った2人がやって来ているのに気付いた。
1つのバイクは車輪が車体に比べとても大きく、直径2mはあるかというぐらいだ。
もう1つのバイクは胴体部が大きく、屋根つきのバイクをさらに増築したような感じになっている。

(ジェイト兄弟。大きなタイヤの『ジェイトレッグ』を狩る兄と、大きな胴体の『ジェイトドット』を狩る弟の兄弟です。会話では『兄』と『弟』です)

兄「おーっす!あんたがキョウスケか。話は聞いてるな?俺達があのハゲ風船共を捕まえてくるから、あんたは中で奴らをバチボコにしてやれ」
弟「兄ちゃん、シャッター開けるぜ」

ジェイト弟がシャッターを開けた先に、銃撃を続ける無数の風船人形がいた。
ジェイト兄がエンジンを吹かす。

兄「ほんじゃ、頼むぜ!」

2人のバイク乗りが敵陣に駆けていった。

⏰:07/12/17 17:29 📱:P903i 🆔:m2d30OU2


#47 [主◆vzApYZDoz6]
感想板立てました

bbs1.ryne.jp/r.php/novel/3130/

⏰:07/12/17 17:33 📱:P903i 🆔:m2d30OU2


#48 [主◆vzApYZDoz6]
外へ向かう狭い通路を走る2台のバイク。
うち、大胴体のジェイトドットは徐々に減速し、大車輪を持つ機体ジェイトレッグは加速していた。

兄「いくぜ!ジェイトレッグ!バウンサー特製―――」

ジェイト兄が左ハンドルのボタンに手をかける。
シャッターを飛び出し、銃撃を続ける風船の頭上へ大ジャンプした。

兄「捕獲用地引き網!」

ジェイト兄がボタンを押し込む。
機体の横の一部が口を開け、大きな網が左右へ飛び出した。

風船人形「これは!」
兄「よし!いけるか弟よ!」
弟「任せろ兄ちゃん!」

風船達に被さる網の右端を、ジェイト弟が掴む。
ジェイト兄は着地して左へ走り、旋回走行で網の左端を掴みすぐさま加速した。
それを確認したジェイト弟も一気に発進させる。
狭い通路の先に左右からバイクが現れ、通路を隼の如く駆け抜けた。

風船人形の塊が、引っ張られた勢いで飛ぶように中へ突っ込んでいった。

⏰:07/12/18 02:25 📱:P903i 🆔:TmlkQt.c


#49 [主◆vzApYZDoz6]
内藤「はい着地ー、っと」

窓から飛び出した内藤とハルキンは、1階シャッターの前に着地した。
後ろを振り返ると、ジェイト兄弟が風船人形を引き摺って走っていく姿が見える。

ハルキン「よし、隔離は成功だな。さぁ、結界を解きっぱなしにするわけにはいかん、行くぞ。ラスカに合図を出してくれ」

了解、と内藤が胸に着けたピンマイクに話しかける。

内藤「3つ数えたら再度結界を張ってくれ」
ラスカ『了解。無理しちゃ駄目よ』
内藤「ああ。カウントを始める―――3」

ハルキンが敵の配置を確認する。
右前方にアリサがいつでも来い、といった感じに立っている。
左前方には、羽を休めるドラゴンに凭れている男がこちらを見ていた。

⏰:07/12/18 14:08 📱:P903i 🆔:TmlkQt.c


#50 [主◆vzApYZDoz6]
ハルキン「化け物退治は俺が専門だし、ウィニーは俺がやる。お前はあの女を相手しろ」

内藤が無言で頷いた。

内藤「―――2」

ハルキンは竜騎士を、内藤はアリサを見据る。

内藤「―――1」
ハルキン「…さて、久々に暴れてくるかな」

2人が、一瞬姿勢を低くし、地を蹴る足に力を入れ、


内藤「―――0!」


倒すべき敵の元へ、一気に踏み込む。


駆ける2人の背後で、本部が再び結果に包まれた。

⏰:07/12/18 14:22 📱:P903i 🆔:TmlkQt.c


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