-Castaway-
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#149 [◆vzApYZDoz6]
5mはあろうかという距離は一瞬で詰まった。右拳と刀の撃ち込む力は互角で、互いに弾かれあう。

シーナ「せいっ!」

休む間も無くシーナが追撃。素早く体勢を立て直し、弾かれあい開いた距離を一足で詰める。
右拳を弾かれ、右膝を地に付いていたハル・ラインに、凄まじいスピードで袈裟斬り下ろしを繰り出した。

ライン「ふっ!」

ハル・ラインは振り下ろされる剣に左手を添え合わせて斬撃を逸らした。
シーナの手元で絞られて水平に止まった刀に添えた左手を乗せて押し、反動で右膝を起こす。更にそのまま身を浮かせての回し蹴り。

⏰:08/01/01 02:17 📱:P903i 🆔:KRat.OYw


#150 [◆vzApYZDoz6]
回し蹴りをガードしようにも刀はハル・ラインに押さえ付けられ動かない。
袈裟懸けに全力で振り下ろし、手元で柄を絞ったために身を屈めるのも間に合わない。

シーナ(…やばっ!)

咄嗟に左腕で蹴りをブロックする。
しかし、ツインキャンサーにより身体能力が強化され、刀と互角の威力を誇るその蹴りは、シーナのか細い腕で止められるものではなかった。

シーナ「きゃっ!」

刀ごと横なりに吹っ飛び、右肩から地に激突する。
素早く身を起こすも、左腕が少し痺れているため刀を持つ手に感覚がない。

⏰:08/01/01 02:34 📱:P903i 🆔:KRat.OYw


#151 [◆vzApYZDoz6]
シーナ「くっ…!」
ライン「余所見はしないほうがいい。」

ハル・ラインが吹っ飛んだシーナとの一足で距離を詰め追撃する。
息をする暇も与えず次々と飛んでくる拳と蹴りを、シーナは捌き続けた。
素早く正確、且つ重い一撃が一分の隙もなく繰り出される。瞬きの間にもやられそうだ。
次第に柄を握る手が痺れてくる。

シーナ(左腕もまだ感覚が無いし…ちょっとキツいかなー)

何合撃ち合っただろうか。
飛んでくる四肢の嵐を捌ききれず、とうとうハル・ラインの拳がシーナの右頬を掠めた。

⏰:08/01/01 02:47 📱:P903i 🆔:KRat.OYw


#152 [◆vzApYZDoz6]
シーナ(やばっ…!)

堪らずバックステップで距離をとる。が、ハル・ラインは見透かしていたかのようにシーナと平行してくっつき、その距離は離れない。

ライン「逃がしはしない!」

くっついた状態で撃たれた腹を狙っての右フックを、刀の横腹で受け止める。
しかし、左を狙ったフックとは別に右脇腹に衝撃が走り、シーナの体がくの字に曲がって宙を舞った。

シーナ「きゃあっ!!」

数m吹っ飛んで背中から地にぶつかった。
仰向けの状態からゆっくりと上半身を起こすが、嘔吐感と下腹部の圧迫痛で身動きができない。

⏰:08/01/01 03:10 📱:P903i 🆔:KRat.OYw


#153 [◆vzApYZDoz6]
嘔吐が混じったような咳が出る。腹筋が圧迫された感じがして息がしづらい。

シーナ「ごほっ!…ふふ、今の…あなた元ボクサーか何か…?」
ライン「元ボクサーではないが言わんとする事は正解だ。……つまり、お嬢さんの肝臓をぶち抜いた」

右フックはフェイント。
本命のリバーブローを食らって動けなかったシーナだが、刀をついて漸く立ち上がった。

シーナ「リバーブローね…でも、今のうちに止めを刺しちゃえばよかったのに」

⏰:08/01/01 03:24 📱:P903i 🆔:KRat.OYw


#154 [◆vzApYZDoz6]
ハル・ラインが左腕を突きだし、再び構える。
表情は少し曇っていた。

ライン「女性をいたぶる趣味はないさ」
シーナ「あら、余裕ねー。じゃ…ちょっとご好意に甘えようかな」

シーナも刀を握り直し、武蔵野構え。
再び向き合い、2人の視線が重なる。

ライン「でもな、お嬢さん―――」

言いかけの言葉を残し、ハル・ラインの姿が忽然と掻き消えた。

⏰:08/01/01 03:38 📱:P903i 🆔:KRat.OYw


#155 [◆vzApYZDoz6]
シーナ「なっ…!?」

油断していた訳ではない。本当に一瞬で、その姿を見失った。
幻でも見たのか、という愚かな考えがシーナの頭を過った、その時。

ライン「―――少し、俺を嘗めすぎだ」

背後からの手刀が、シーナの胸を貫いた。

⏰:08/01/01 03:48 📱:P903i 🆔:KRat.OYw


#156 [◆vzApYZDoz6]
シーナ「あ…かっ…」

声が出ない。自分の胸に視線を向けると、ちょうど鳩尾のあたりから、自分のものではない手が突き出ていた。

シーナ「こんな……」
ライン「悪いな、お嬢さん」

ハル・ラインが手を引き抜き、シーナが力なく膝をつく。ゆっくりと倒れていく自分の体を、シーナはまるで他人の事のように感じていた。
自分が地に臥している事がはっきり分かったのはいつだろうか。気が付くとシーナの体は、血の海に俯せに横たわっていた。

ライン「心臓を貫いた。……ま、それなりに楽しめたよ、お嬢さん」

⏰:08/01/01 13:09 📱:P903i 🆔:KRat.OYw


#157 [◆vzApYZDoz6]
シーナ(やられちゃった…かな。…向こうの戦いの音はちょっと前に止んじゃったし…きっとお姉ちゃんが勝ったんだよね)

ハル・ラインは心臓を貫いた、と言っていたが、シーナの脳は冷静に働いた。
頭に浮かぶのは自分の体の事ではなく、姉の事。
姉は自分よりも数段は強かったんだから、負ける筈がない。敵も相当に強いから、姉もそれなりの怪我を負ってるだろう。
そんな考えが頭に浮かぶ。
シーナは敵に殆どダメージを与えられなかった自分に憤り、同時に、踵を返し相棒の元へ向かうハル・ラインを止めなければ、と考えた。

⏰:08/01/01 13:21 📱:P903i 🆔:KRat.OYw


#158 [◆vzApYZDoz6]
ハル・ラインは踵を返し相棒の元へ歩を進める。
1歩目を踏み出した時に、後ろで何かが動く気配。
まだ生きていたか。しかし何もできまい。
そう考えて2歩目を踏み出す。今度は刀が地をつき鳴いた音。
馬鹿な…まだ足掻く力が?いや、確実に心臓を貫いた筈だ。
余計な考えを振り払い、ゆっくりと前に出した3歩目。
突如として凄まじい気配が周囲をの空間包む。空気が痺れる程の殺気が、明らかに後ろから、自分に向けられている。
とうとう堪らなくなり振り返ると、シーナが立っていた。

シーナ「あなたを倒せば…お姉ちゃんは先に進む」

⏰:08/01/01 13:47 📱:P903i 🆔:KRat.OYw


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