-Castaway-
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#161 [◆vzApYZDoz6]
ライン「次は再生の間も与えず殺す」

ハル・ラインが向き直り構え直す。
心臓を貫いたのだから、立ち上がれる筈がない。そう考えていたハル・ラインは内心驚いていた。
油断していた自分が悪い。せめてもの情けにと心臓を狙ったのがいけなかった。次は、確実に首をはねる。
右手に手刀を作り、一気に踏み込んだ。

ライン「その首、貰うぞ!」

迫り来るハル・ラインを前に、シーナは微動だにせず呟いた。

シーナ「…やめといた方がいい気がするけど」

⏰:08/01/01 15:19 📱:P903i 🆔:KRat.OYw


#162 [◆vzApYZDoz6]
言い終わる前にハル・ラインが踏み込み、渾身の一撃を繰り出す。
確実な殺意を込めて突き出されたその手刀は、先刻心臓を貫いた時よりもさらに早い。指先から衝撃波が発生し大気を切り裂くかと思うほどの手刀は、人間には到底避ける事はかなわないだろう。
しかしその手刀は、物理的に遮られる筈もない血の靄に阻まれた。
血の靄はそのままハル・ラインの腕に巻き付く。巻き付かれた腕と手から煙のような蒸気が吹き出し、皮膚が赤黒く爛れ落ちた。

ライン「ぐあっ!!」
シーナ「ほらね…こうなる気がしたの」

シーナはゆっくりと目を瞑り、身を屈める。刀は右肩に背負う担ぎ構え。
その構えはシーナの修めた柳生新陰流にはないものだ。

⏰:08/01/01 23:31 📱:P903i 🆔:KRat.OYw


#163 [◆vzApYZDoz6]
ライン「はあっ、はあっ………くそっ、嘗めるなぁ!!」

ハル・ラインは無事な左手で再び手刀を作り突き出す。

シーナ「血桜舞い散る闇夜の白鶴―――」

手刀が伸びきる前にシーナの体を纏う血の靄がドーム状に広がり、周囲の空間を全て包み込む。
血の霧の中で、シーナ以外の物の動きが全て止まった。

シーナ「―――誘い微睡み心奪うは陽に嘱された紅き三日月―――」

シーナが目を瞑ったまま左手を柄に添える。
同時に血の霧が刀に収束し、刀身が目も眩むほどの真紅に染まる。

⏰:08/01/01 23:48 📱:P903i 🆔:KRat.OYw


#164 [◆vzApYZDoz6]
シーナ「―――刹那に翳り、墜ちる三日月、堕ちる白鶴―――」

担がれた刀が迸る。
人の手刀などとは比べ物にならない速度で振り下ろされた一太刀が、周囲の物と同様で依然止まったままのハル・ラインを切り裂いた。

シーナ「―――砕け散る血桜に代わり舞うは、尽きた命の紅い血翅―――」

紅い刀を一払いし鞘に納める。鍔鳴りの音と共に周囲の物に時間が戻り、ハル・ラインの胸の裂目から鮮血が吹き出した。

⏰:08/01/02 00:03 📱:P903i 🆔:RqwpsYaM


#165 [◆vzApYZDoz6]
ライン「ごはっ…!!」
シーナ「―――静寂の闇夜で賤しく響くは妖魅の三日月の笑い声―――」

シーナは鮮血を身に浴びながらも、目を瞑ったまま微動だにせず俯いている。
やがて吹き出す血が尽き、倒れる体を征すものが無くなったハル・ラインが膝をつく。

ライン「…見事…だ……シーナ…」

シーナがゆっくりと瞼を上る
青い澄んだ瞳で、地に倒れ臥していくハル・ラインに囁いた。

シーナ「……再び見える時は地獄で、ね」

⏰:08/01/02 00:24 📱:P903i 🆔:RqwpsYaM


#166 [◆vzApYZDoz6]
シーナ「―――なんて、すぐに再戦できそうだけど」

シーナが刀を取り落とす。刀と一体化していた右腕の皮膚がはち切れ、あちこちから血が吹き出した。

シーナ(これで…お姉ちゃんは先に進める。…私もちょっと休んでからすぐに行くわ…)

血を吐き、力なく地に倒れ込む。軈てゆっくりと瞼を閉じた。

⏰:08/01/02 00:43 📱:P903i 🆔:RqwpsYaM


#167 [◆vzApYZDoz6]
リーザ「シーナ!!」
レイン「間に合わなかったか…!」

倒れている妹と弟の元に、姉と兄が駆け付ける。
後ろにはラスダンと、ガリアスの母親と共に囚われていた女性…ハル兄弟の母親がいた。

ラスダン「くそっ!…2人は?」
リーザ「シーナは…息があります…!でもラインさんが…」
レイン「相当やられているが、治せるさ」

ハル・レインがハル・ラインの裂目に手を当てる。
手が金色に光り輝き、裂目に被さるように光が覆った。

レイン「『ツインキャンサー』発動中の俺達は一心同体。俺の自己治癒力をすべてラインに注げば大丈夫だ」

⏰:08/01/02 00:53 📱:P903i 🆔:RqwpsYaM


#168 [◆vzApYZDoz6]
ラスダン「そんな事を…君もダメージはあるのに」

ラスダンがリーザとハル・レインに目をやる。2人ともダメージは大きいようだ。
ハル・レインの顔は頬が裂け、脇腹には血が滲んでいる。体の至るところに刺突と裂傷を受けていた。
それはリーザも同じ。服は所々破けており、頬には擦過傷、腕や足には沢山の打撲が見られる。
どうやらラスダンが到着し囚われていたハル兄弟の母親の事情を説明したのは、2人が戦いを始めて暫く経ってかららしい。

レイン「はははっ、これぐらいどうってことはない。あんたが母を助け出していなかったら、俺は今頃おっ死んでたさ」

⏰:08/01/02 01:05 📱:P903i 🆔:RqwpsYaM


#169 [◆vzApYZDoz6]
リーザ「いいえ、レインさん。貴方も素晴らしい腕前でした…もしかしたらやられていたのは、私の方かも」

微笑みあい談笑する2人からは、戦闘意欲は感じられない。
お互い志の高い武士同士、和解するのは早かったようだ。
ラスダンが安心したように笑みを溢したあと、表情を引き締める。

ラスダン「僕は一旦京介のところへ戻るよ。うまくやってるか気になるしね」
リーザ「分かりました。…私達も、少し休んですぐに向かいます」

⏰:08/01/02 01:16 📱:P903i 🆔:RqwpsYaM


#170 [◆vzApYZDoz6]
ラスダンが踵を返し、来た道を再び走る。
リーザはラスダンのを見送ったあと、自分の妹に目をやった。
見たところ右腕にしか傷はない。相当に疲労しているのか、深い眠りについていた。
ここに駆け付ける前に、紅い霧が見えた。まさか…
複雑な表情で妹の顔を眺めていると、隣のハル・ラインが身を起こした。

ライン「もう…大丈夫だ、兄貴。ありがとな」
レイン「まったく、こんなに完膚なきにやられやがってだらしない」
ライン「まったくだ。敵を嘗めていたのは俺の方だな」

⏰:08/01/02 02:13 📱:P903i 🆔:RqwpsYaM


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