-Castaway-
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#232 [◆vzApYZDoz6]
クルサのライフアンドデスで所持しているスキルの1つだろうか。
軈て地面も同様に一部分が黒くなる。黒くなった部分は円を形成していき、地面の黒と繋がり円柱のような形になった。
クルサ「ドリフターポート、ターゲット、イルリナ―――」
クルサが呟くと、黒い円柱がその場で高速回転しだした。回転速度で土埃が舞い上がる。
クルサ「―――ポートアボート!」
瞬間、黒い円柱が煙を巻いて消え去る。
消え去った跡には、女性が立っていた。
:08/01/08 00:41 :P903i :DkUPgSHo
#233 [◆vzApYZDoz6]
祭りがあったからだろうか、少し豪華な格好をするその女性は、驚いた様子で辺りを見回す。
整った顔立ちに、長い黒髪を複雑に束ね、金の簪と金の櫛で止めている。茶色い胴着のような服に赤い単を纏うその姿は、とても綺麗だ。
(イルリナ。アリサの母親です)
グラシア「初めまして、イルリナさん」
イルリナ「ここは…修練場?なぜ急にこんなところに…それに貴方達は…」
イルリナは言いかけて、知ってる人物がそこに居ることに気が付いた。
:08/01/08 00:55 :P903i :DkUPgSHo
#234 [◆vzApYZDoz6]
イルリナ「あなたっ…何でクルサちゃんがここに居るの?つい1か月くらい前にスキル収得の旅に出たはずじゃない!」
イルリナが口調を強めてクルサに迫る。
クルサは俯いたまま表情を変えず、視線も合わせず、口も開かない。イルリナはそれを見て不信に思ったのか、後ろでほくそ笑むグラシアを睨んだ。
イルリナ「あなたが…何かしたのね?私をここに喚び出したのは何のためかしら」
イルリナが半歩下がり、構えようとする。
だが、それを遮ったのはクルサだった。
:08/01/08 01:07 :P903i :DkUPgSHo
#235 [◆vzApYZDoz6]
クルサは下がろうとするイルリナに素早く足を掛け、後ろに回り、握られる拳をイルリナの背中で抑えた。
その力は強く、イルリナが振りほどこうとするも、後ろのクルサは全く微動だにしない。
イルリナ「ちょっとっ…どうしたのよクルサちゃんっ…!」
グラシア「彼は俺が『支配』したのさ」
イルリナはゆっくりと近付いてくるグラシアを、敵意を込めて睨み付けた。
イルリナ「なんてことを…!」
グラシア「おっと、動くなよ。女性相手に悪いが、失礼する」
グラシアはそう言うと、イルリナの胸元に手を置いた。
:08/01/08 01:19 :P903i :DkUPgSHo
#236 [◆vzApYZDoz6]
グラシアの手が一瞬青く光った。
グラシア「失礼した。…もういいぞクルサ」
クルサが押さえ付けていた手を離す。急に離されたためイルリナが躓くようによろめいた。
イルリナが1歩下がり、自分の胸元に手を当てる。体は、特に何もおかしな所はない。意識もはっきりしているから、支配されたという訳でもなさそうだ。
イルリナ「…今私に何をしたの?」
グラシア「その質問は後で答えよう。とりあえず、俺達と一緒に帰ってもらおう」
クルサが今度は立ったまま手を重ね、イルリナに向ける。
グラシア「別に抵抗してもらっても構わない。どうせ無駄だがな」
:08/01/08 20:57 :P903i :DkUPgSHo
#237 [◆vzApYZDoz6]
イルリナ「…ふざけてるの?ここから逃げるぐらいなら……っ?」
イルリナが何かしようとして動きを止めた。
ライフアンドデスによって所持しているスキルが、使えない。使えば逃げる事ができるスキルが、発動しない。
それならば、と攻撃用のスキルを試みるが、やはり発動しない。
イルリナは驚愕と憔悴の入り交じった表情で、視線を落として困惑した。
イルリナ「スキルが…なんで…」
クルサ「ドリフターポート、パーティネガション」
気が付くと、イルリナ・グラシア・クルサが立つ地面と頭上に、黒い円ができている。
:08/01/09 01:17 :P903i :BlcCJlsg
#238 [◆vzApYZDoz6]
イルリナがバックステップで黒い円から逃れようとする。
が、今度は体が動かない。視線だけを上げると、グラシアが嘸可笑しいといったように顔を歪めて歯を見せていた。
グラシア「やはり無駄だったな」
イルリナは何かを喋ろうとしたが、もう声も出せなかった。
地面と頭上の黒円が繋がり、3人を黒い円柱が包む。
グラシア「なーに、殺しはしないさ。今はな…」
クルサ「―――ポートアボート!」
グラシアの笑いを残し、円柱が3人と共に煙を上げて消え失せた。
:08/01/09 01:26 :P903i :BlcCJlsg
#239 [◆vzApYZDoz6]
飽きることなく、楽しそうにホタルを眺めるアリサ。
そんなアリサを見て、バニッシはアリサを連れてきて良かったと思っていた。
パンデモを出る事は、今はいい。また今度にしよう。
そんな事を考えていた、その時。
バニッシ「―――!」
バニッシがまた、謎の気配を感じて立ち上がる。今度はさっきよりもはっきりとした気配が、さっきよりも遠い所にある。
その気配は自分らに気付いてる風ではない。だが、忘れかけていた不安感が再び、克明に蘇ってくる。
:08/01/09 01:41 :P903i :BlcCJlsg
#240 [◆vzApYZDoz6]
アリサが立ち上がってるバニッシに気付き、少し呆れたような顔をした。
アリサ「また?さっきからちょっと変…」
アリサの言葉を待たずに、バニッシが駆け出した。
アリサ「あっ、ちょっと!…もー!」
アリサが追い掛ける。
だがバニッシの駆ける速度は速く、どんどん差が離れる。
周囲の暗さも相まって、バニッシを見失ってしまった。
アリサ「…見失っちゃった」
アリサが項垂れながら辺りを見回す。
戻ろうにも、自分が今何処にいるか分からない。
仕方なく立ち止まり、その場でバニッシを待つことにした。
その後ろに、黒い円柱が現れた。
:08/01/09 22:38 :P903i :BlcCJlsg
#241 [◆vzApYZDoz6]
バニッシは雑木林を抜け、修練場に辿り着いた。中央に歩いていき、辺りを見回すが、例によって誰も居ない。
気配は確かに修練場から感じた筈だったが、また逃げたか若しくは隠れたか。
バニッシが眉間に皺を寄せ、深刻な表情で頭を掻く。
今日はもう帰った方がいいな、と思った時に、大事な事に気が付いた。
バニッシ「しまった…アリサ連れてくるの忘れてた!」
バニッシが慌てて崖に走っていき、一足で飛び越える。
飛び越えた崖の上には、雑木林から出てきたアリサが立っていた。
:08/01/10 23:26 :P903i :a4m5MZjc
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