-Castaway-
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#276 [◆vzApYZDoz6]
バニッシは修練場を出ていったハルキンを見て、ふっと溜め息をついた。
バニッシ「1年後、か…」
バニッシに、ある1つの考えが過る。
そこへバンが走って近付いてきた。
バン「兄ちゃん!」
バニッシ「バン、母さんと父さんに、1年後に帰ってくるって伝えといてくれ」
バン「えっ?」
バニッシはバンの肩を叩き、修練場を出ていく。
早足で歩くバニッシを、バンが小走りになりながら追い掛けた。
バン「兄ちゃん、どこ行くんだよ?」
バニッシ「パンデモを出る。修行だ、修行」
あっけらかんと言うバニッシに、バンが目を丸くした。
:08/01/16 18:53 :P903i :QnaipzGw
#277 [◆vzApYZDoz6]
バン「待ってよ!俺はどうするんだよ!てゆうか別に今すぐ出なくても…準備とかは?」
バニッシ「時間が惜しいからな。準備なしで出るのも修行だ」
バンは、バニッシがおかしくなったのかと思った。
ずかずかと歩いていくバニッシは、とうとうパンデモの集落の入口へついた。
振り返り、小走りで自分を追ってきたせいか、少し肩で息をしているバンに向き直った。
バニッシ「お前はまだ小さいから危険だ。お前は、ここで強くなれ」
バンが膝に手をつきながらバニッシを見上げる。
バニッシの目に、覚悟の焔が宿っていた。
:08/01/16 19:00 :P903i :QnaipzGw
#278 [◆vzApYZDoz6]
バン「…分かったよ。父ちゃん達には伝えとく」
バニッシ「悪いな」
バン「その代わり、約束」
バンが小さな手に拳を握り、前に突き出した。
バン「絶対強くなってくる事」
バニッシ「…お前に言われなくても、なってやるよ。約束だ」
バニッシが笑いながら、自分の拳をバンの拳に軽くぶつけた。
そのまま踵を返す。
バン「気を付けなよ、兄ちゃん!」
バニッシ「ああ。じゃあな」
バニッシが、生まれ故郷を後にする。
親友を助けるために。
愛友との約束を守るために。
バンは、集落を出て山を下るバニッシを、いつまでも見送った。
:08/01/16 19:07 :P903i :QnaipzGw
#279 [◆vzApYZDoz6]
1年後。
バンは、集落の入口の門の前に立っていた。
今日がバニッシが出てからちょうど1年経った日であり、ハルキンが出てから1年経った日でもあった。
暫く立っていると人影が見えてきた。バンが駆け寄っていく。
バン「あっ、ハルキンさんと…誰?」
ハルキン「お前は…あの時のちびっこか。ちょっと背が伸びたんじゃないか?」
バンの視線は、ハルキンの両脇にいるバイクに乗った人物に向けられていた。
ハルキンがバンに気付き、頭を撫でながら言った。
ハルキン「…ああ、こいつらは俺が見付けてきた連中だ」
:08/01/16 19:19 :P903i :QnaipzGw
#280 [◆vzApYZDoz6]
「俺が兄のジェイト・ブロックだ」
「俺は弟のジェイト・フラット。よろしくな」
ジェイト兄弟が挨拶代わりといったようにスロットルを回し、エンジン音を響かせた。
バン「何これ?」
バンが興味深そうにバイクを眺める。
パンデモに文明機器は存在しないので、バンは当然バイクなど見たこともなかった。
ブロック「これはバイクだ。凄い速く走れるぜ」
ハルキン「なんでもいいがエンジンは切っといてやれ」
ジェイト兄弟を諌めるハルキンを見て、バンがある事に気付いた。
バン「あれっ、スティーブは?」
ハルキン「勿論いるぞ。呼んでやろうか」
:08/01/16 19:48 :P903i :QnaipzGw
#281 [◆vzApYZDoz6]
ハルキンが親指と人差し指で輪を作って口にくわえ、音を鳴らした。
すると、ハルキンの背後の山道の草陰から、大きな動物が飛び出してきた。
スティーブは1年前に比べ、とても大きくなっていた。サイズは、ジェイト兄弟の乗るバイクと同じぐらい。
威嚇している訳でもないのに、紫の体毛が逆立ち、針鼠のようになっている。
そのままハルキンに飛び付いて擦り寄った。
バン「何て言うか…デカくなってない?」
ハルキン「そうか?」
ブロック「いや普通にデカくなってるし」
フラット「てゆうかスティーブって絶対犬じゃない気がするんだけど」
:08/01/16 19:55 :P903i :QnaipzGw
#282 [◆vzApYZDoz6]
バン「何でもいいけど大きくなったなー」
バンがスティーブに近付いて、しゃがみこんでスティーブの頭をわしゃわしゃと撫でた。
バンは、喜ぶスティーブ越しに見える山道に、人影がいる事に気が付いた。
バン「あっ…兄ちゃん!」
バニッシ「よぉ、バン。ちょっと背伸びたんじゃないか?」
バニッシがゆっくりと歩いてくる。
見た目は変わらないが、威圧感のようなものが感じられた。
ハルキンが俯いて、満足そうに笑みを溢した。
ハルキン「まぁマシにはなったみたいだな」
バニッシ「…じゃあ、もう1度言わせてもらう」
:08/01/16 20:08 :P903i :QnaipzGw
#283 [◆vzApYZDoz6]
バニッシがハルキンに向き直る。
バニッシ「俺を…連れていってくれ」
ジェイト兄弟がにんまりと顔を見合わせる。
ハルキンが唇の端を持ち上げ、目を細めた。
ハルキン「乗った船からは降りられないぞ」
バニッシ「上等だ」
ハルキン「その意気、忘れるな。…お前は今日から俺達の仲間だ」
ハルキンが手を差し出す。
バニッシはほくそ笑んで、がっちりと握手を交わした。
その様子を見ていたバンは嬉しそうに笑い、咳払いをする。
バン「俺はここに残るよ」
バニッシが、バンに近付いた。
:08/01/16 23:18 :P903i :QnaipzGw
#284 [◆vzApYZDoz6]
バニッシ「…そうだな、お前はやっぱりまだ小さい。父さん達にはよろしく言っておいてくれ」
バン「分かった。それから…」
バンが、1年前と同じように拳を突き出す。
バン「絶対にアリサ姉ちゃんを助けること!」
バニッシが拳を見つめて、小さく溜め息をついた。
バニッシ「お前に言われなくてもな…そのために出るんだよ。…約束だ」
バニッシが1年前と同じように拳をぶつけ、踵を返した。ハルキンが満足そうに笑う。
ハルキン「それじゃあ、行くとするか」
バニッシ「ああ…行こう」
見送るバンを尻目にバニッシが仲間と共に山を下りていく。
アリサとの誓いを胸に立てて―――
:08/01/16 23:31 :P903i :QnaipzGw
#285 [◆vzApYZDoz6]
――――……
ウォルサー本拠、兵隊居住区3階の最奥の部屋。
内藤はゆっくりと煙草を吹かしながら、目を瞑って物思いに耽っていた。
アリサは暫く黙って見ていたが、少し遠慮がちに話を再開した。
アリサ「…母さんは、もうすぐ用済って事で殺されるわ♪多分、クルサちゃんも…♪」
内藤「……グラシアが、京介のスキルを支配したら…か」
内藤が、既に許容範囲を超えて吸殻が詰め込まれている携帯灰皿に、今しがた吸い終えた4本目の煙草を押し付ける。
携帯灰皿をしまい、座ったまま軽く前屈みになって、アリサを見上げるように視線を上げた。
:08/01/16 23:47 :P903i :QnaipzGw
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