-Castaway-
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#301 [◆vzApYZDoz6]
弟が指差した方を向く。
要塞の端に、確かに窓がある。窓があるのは2階あたりで、左右にある倉庫との連絡通路のそばにそれぞれ大きな窓が、ポツンとあった。
このまま行けば、ジャンプして後ろに乗る2人に窓を突き破らせる事は可能だろう。だが、ここは要塞だ。

兄「ああゆうのって、防弾ガラスになってるんじゃねぇのか!?」
ガリアス「大丈夫だ!」

後ろで状況を把握していたガリアスが、大声で口を挟んだ。

ガリアス「あそこは防弾にはなっていない筈だ!」
兄「よーし、それなら大丈夫だな!」

兄弟が目配せし、併走していた状態から左右に離れる。

⏰:08/01/19 18:54 📱:P903i 🆔:YFlO93FE


#302 [◆vzApYZDoz6]
更にスロットルを回して、窓を目指しスピードを上げた。

兄「2人とも、俺の合図で跳べよ!!」
ガリアス「よし!!」
リーザ「分かりましたわ!!」
兄「ミスんなよフラット!!」
弟「任せろ!!」

要塞との距離がどんどん縮まる。リーザは剣袋から刀を取り出した。
兄がブレーキに手をかけ、叫ぶ。

兄「行くぞ!1、2の―――3!!」

合図と同時に、兄弟が全力でブレーキを引いた。
跳び出したガリアスとリーザはその反動で宙を舞う。ガリアスは拳で、リーザは鞘に入ったままの刀で、窓に向かって一撃を叩き付けた。

⏰:08/01/19 19:10 📱:P903i 🆔:YFlO93FE


#303 [◆vzApYZDoz6]
防弾ではないとはいえ多少の厚みはあったが、ガリアスとリーザは窓を突き破り、そのまま中に転がり込んだ。
それを見て、兄弟が拳をぶつけ合った。

兄「よっしゃ!」
弟「上手くいったね」
兄「ああ。…俺達は待機だな」
弟「うーん、大丈夫かな…」

屋内では戦えない状態でいざというときに戦えるかどうか、不安がある。

弟「…信じるしかない、か」
兄「そうだな…よし」

兄が聳え立つ要塞を見上げ、両腕を上げて叫ぶ。

兄「頼むぜ、みんな!」

叫ぶ兄を見て弟が笑い、同じように要塞を見上げた。
要塞からは、衝撃音が漏れていた。

⏰:08/01/19 20:22 📱:P903i 🆔:YFlO93FE


#304 [◆vzApYZDoz6]
バイクの急ブレーキの反動で宙を舞う。
リーザは、刀を鞘に納めたまま逆手で柄を握り、窓に向かって全力で突き出した。
突いた部分から放射状に亀裂が走る。体を丸めてそこへ飛び込み、窓全体を突き破った。
そのまま中へ転がり込み、顔を上げる。

リーザ「とりあえず成功ですわね…でもここは何処かしら…?」

そこは狭い通路。すぐ右手に連絡通路への道が分かれているだけで、あとは階段も部屋も見当たらなかった。
リーザが立ち上がり、体のガラス片を払い落とす。
ゆっくりと通路を進んでいると、何処からか衝撃音が聞こえてきた。

⏰:08/01/20 00:50 📱:P903i 🆔:YgALv/g.


#305 [◆vzApYZDoz6]
更に通路を進むにつれて、衝撃音が大きくなっていく。
そこに、階段を見つけた。左折して下に下りる階段をのようで、衝撃音はそこから聞こえている。
リーザは階段を下りることにした。
直下階段を下りきると、そこは中庭のような拓けた空間になっていた。
そこの中央に向かって、無数の風船人形が蠢いている。次々と風船が吹っ飛んでいくあたり、恐らく誰かが風船に囲まれているのだろう。

リーザ「これは…助けるべきかしら」

リーザが鞘から刀を引き抜く。
風船を外側から蹴散らし、中央にいる人物に徐々に近付いていった。

⏰:08/01/20 11:21 📱:P903i 🆔:YgALv/g.


#306 [◆vzApYZDoz6]
レイン「おっと、誰かが加勢してくれてるみたいだぞ」
ライン「それは助かるな。減る気配がなくてしんどかったところだ」

風船人形に囲まれていたのは、ハル兄弟だった。
始めは外側の風船が吹き飛んでいたが、どんどんこちらに近付いてきている。
軈てあと2、3歩のところまで到達し、爆発のような衝撃でその辺の風船が一基に吹き飛んだ。

リーザ「あら…あなた方は」
レイン「お、あんただったのか」
ライン「出来ればこのまま加勢してほしいんだが」

3人は、迫る風船を吹き飛ばしながら会話した。

リーザ「勿論そのつもりです。ここまで来たら、私も動けませんから」

⏰:08/01/20 11:33 📱:P903i 🆔:YgALv/g.


#307 [◆vzApYZDoz6]
レイン「それは助かる。こいつら一向に減る気配がないからな」
リーザ「それでしたら私のスキルを使えば、多少は楽になるかと」

リーザが言いながら、一度刀を鞘に納めた。
直ぐに風船に抜き打ちを食らわせる。すると、斬った風船の切り口から爆発のような衝撃が生じ、周囲の風船と共に吹き飛んだ。

ライン「なんだそれは?」
リーザ「私のスキル『ストライクボム』です。鞘に納めた刀が、爆弾になります」
レイン「俺と闘った時はそれ使わなかったな」
リーザ「鞘に納める暇がありませんでしたから」

リーザが微笑み、再び鞘に刀を納める。
抜き打ちで、再び風船を吹き飛ばした。

⏰:08/01/20 11:43 📱:P903i 🆔:YgALv/g.


#308 [◆vzApYZDoz6]
リーザのスキル『ストライクボム』。
スキル発動中に刀を鞘に納めると、刀を抜いた最初の一閃だけ斬撃が爆撃と化す。
爆発の威力は、鞘に納めていた時間に比例して大きくなる。

リーザ「…まぁ相手が風船人形ぐらいでしたら、一瞬納めるだけでも十分」

リーザは抜き打ちで吹き飛ばして再び鞘に刀を納める事を繰り返し、どんどん風船を蹴散らした。

レイン「これはなかなかいいな」
ライン「兄貴、使われなくてよかったな」
レイン「それは俺の実力だ」
リーザ「さあさあ、残りを片付けましょう」

3人が笑い合う。依然大量に残る風船に向かい、散り散りに踏み込んだ。

⏰:08/01/20 11:53 📱:P903i 🆔:YgALv/g.


#309 [◆vzApYZDoz6]
-突入・ガリアスの場合-

急ブレーキの反動で跳び出し、窓に拳を突き立てる。
入った亀裂に体を丸めて飛び込み、窓を突き破って中に転がり込んだ。

ガリアス「成功、か。しかし…ここは何処だ?」

そこはガリアスも見た事がない場所だった。
リーザが突入した場所とは違い、こちら側は連絡通路に繋がっていない。
歩いてみると、壁に沿って通路が続いているが、勾配がついている。徐々に下っていく感じがした。
周囲に注意を払いながら暫く歩いていると、1つの扉に突き当たった。

⏰:08/01/20 13:23 📱:P903i 🆔:YgALv/g.


#310 [◆vzApYZDoz6]
ガリアス「…入ってみるか」

暫く考えたが、他に道はない。
意を決して扉を開けた。

扉の奥は、大きな部屋となっていた。
部屋の中央に何やらよく分からない機械が2つあり、4隅には柱のようなものがあった。柱からケーブルが床を伝って、中央にある右側の機械に繋がっているのが見てとれる。

ガリアス「これは…」

機械に近付いたガリアスは驚愕し、食い付くように左側の機械を覗き込む。
機械のコンソールパネルを操作すると、文の羅列が表示された。
柱は、この機械によって張られた結界に守られているようだ。

ガリアスは、無言でコンソールを操作し続けた。

⏰:08/01/20 14:10 📱:P903i 🆔:YgALv/g.


#311 [◆vzApYZDoz6]
-要塞内部・ハルキンとラスカの場合-

ラスカ「もー、何よこの要塞?ゲリラに襲撃される訳じゃあるまいし」

ハルキンらは、2階連絡通路から4階にある管制コントロール室への、複雑かつ長い道程を走っていた。

2階フロアを横切り階段を昇る。次に兵器開発室、資料室、に繋がる廊下を渡る。廊下の突き当たりにある、3階から4階まで吹き抜けになっている兵隊修練場から4階へ上がり、修練場を出て廊下を右へ曲がった突き当たり。
そこに、管制コントロール室はある。

ハルキン「まぁ複雑なのは別に構わんが…人や風船人形すら見当たらんのは気になるな」

⏰:08/01/21 18:03 📱:P903i 🆔:QgkZYMa6


#312 [◆vzApYZDoz6]
ハルキンが後ろを振り返りながら呟く。
長い道程の間には、敵兵はおろか風船人形ですら存在しなかった。

ラスカ「みんな要塞の外に出てたんじゃない?」
ハルキン「だといいがな」

ハルキンは少し不安に駆られながらも走り、管制コントロール室へ到着した。
ハルキンがゆっくりと扉を開ける。
中に入ってまず目につくのが、壁一面に映し出された巨大なスクリーン。
そのスクリーンの下では、コンピュータが無機質な音を立てて稼動している。

ハルキン「誰もいないな…」

部屋を見渡すが、人が隠れている様子もなかった。

⏰:08/01/21 18:13 📱:P903i 🆔:QgkZYMa6


#313 [◆vzApYZDoz6]
監視カメラのモニターを映すスクリーンがあるのだから、無人施設ではないはずだ。
ハルキンは明らかに不自然だと思ったが、とりあえず目的を果たすためコンソールパネルに手を掛ける。

ハルキン「カメラ映像表示は、と…これだな」

ハルキンが少しパネルを操作すると、各場所の映像が巨大スクリーンに分割表示されて映された。
ハルキンとラスカが順番に目で映像を追っていく。

ラスカ「あっ、見てこれ。リーザじゃない?」

ラスカが指差した画面には、大量の風船人形を次々と蹴散らしていくリーザとハル兄弟の姿が移し出されている。

ハルキン「なるほど、外に風船がいなかったのはこれか」

⏰:08/01/21 18:22 📱:P903i 🆔:QgkZYMa6


#314 [◆vzApYZDoz6]
ハルキン「ん?こっちは京介とラスダンか」

ハルキンが違う映像に目をやった。
京介らのいる場所はどうやら2階で、迷っているかのようにウロウロと動いていた。

ハルキン「そういやラスダンのスキル使えなかったんだっけな」

ハルキンがコンソールに手を伸ばし、暫く操作していると、電子音が鳴った。
スクリーンには『特殊結界解除完了』と表示されている。

ハルキン「これでよし、と」
ラスカ「会長!ちょっと見てよこれ、どういうことかしら?」

ハルキンが顔を上げ、ラスカが指差す方に顔を向ける。
3階の物資保管庫前に、アリサと肩を並べて歩く内藤が映っていた。

⏰:08/01/21 18:32 📱:P903i 🆔:QgkZYMa6


#315 [◆vzApYZDoz6]
ラスカ「何で内藤がアリサと…?」
ハルキン「簡単な事だろ」

ハルキンが内藤の映像から目を離し、違う映像を探し始めた。
軈てハルキンの視線が1つの映像で止まる。クックッと含み笑いをしながら、その映像を指差した。

ハルキン「つまり…こういうことだ」
ラスカ「え…誰?」

映っているのは、牢獄。
若くはないが、端麗な顔立ちの女性が、ベッドに座っていた。

ハルキン「あ…お前知らないんだっけ?って言っても俺もこの人は写真で見ただけだが」
ラスカ「…?よく分からないんだけど」

ラスカが難しそうに眉間に皺を寄せた。

⏰:08/01/21 18:40 📱:P903i 🆔:QgkZYMa6


#316 [◆vzApYZDoz6]
ハルキン「とりあえずこの人が先かな。…場所は地下1階か」

ハルキンが踵を返し、部屋の扉へ向かう。

ラスカ「えっ、藍ちゃんは?」
ハルキン「恐らく司令室だろう。京介のスキルは『写された』が、内藤なら大丈夫だろうしな」
ラスカ「司令室、ってここには無いね…」

ラスカがスクリーンを見上げた。
殆どの映像に人はいない。先程見つけた映像以外に、誰かが映っているカメラはないようだ。

ハルキン「まぁ司令室の場所は分かる。今はこっちが先だ」
ラスカ「…ま、いっか。了解」

ラスカが小走りで部屋を出る。それを確認し、ハルキンが歩き出した。

ハルキン「地下1階へ…イルリナの救出開始だ」

⏰:08/01/21 18:50 📱:P903i 🆔:QgkZYMa6


#317 [◆vzApYZDoz6]
-要塞内部・京介とラスダンの場合-
管制コントロール室のスクリーンには、依然2階を彷徨いている京介とラスダンの映像が映し出されていた。


京介「はーっ、ここはどこなんだよ…」
ラスダン「分からないけど進むしかないよ…」

京介達は今、要塞の2階の講堂にいた。
15分程前、大物資倉庫地下牢から中央要塞に入ってきた。入った場所は地下1階電力供給室。
要塞に入ってすぐラスダンのスキル『サイレントハッカー』を試してみたが、やはり使えない。
仕方無いので適当に歩いているとエレベーターを発見したので、2階へ上がってきた。
そして、何処へ行けばいいのかさっぱり分からず、迷っている。

⏰:08/01/21 22:58 📱:P903i 🆔:QgkZYMa6


#318 [◆vzApYZDoz6]
京介「大将なんてだいたい天辺にいると思うんだけど」
ラスダン「あのエレベーターは2階までしか無かったからね…」

悪態をつきながら講堂を出る。
その時、ラスダンが急に足を止めた。

京介「あれ、どうしたんだ?」
ラスダン「いや、今『思念』が飛んできたから…」
京介「なんて?」

ラスダンは答える代わりに、手を前に翳す。
使えなかった筈のサイレントハッカーの映像が映し出された、ノートパソコンが出現した。

京介「あれ?使えてるんじゃん」
ラスダン「どうやら会長が妨害結界を解除したみたいだよ」
京介「へー、やるじゃん!」

⏰:08/01/21 23:08 📱:P903i 🆔:QgkZYMa6


#319 [◆vzApYZDoz6]
ラスダン「とにかく内部構造はこれで分かる」

ラスダンがパソコンを消して、頭の中で要塞の映像を見る。

ラスダン「藍ちゃんは、5階の司令室だ」
京介「行道分かる?」
ラスダン「ちょっと複雑だけど、大丈夫だよ。行こう!」

声を合図に京介達が走り出した。
途中までは管制コントロール室への道程を辿る。4階へ上がったら左へ曲がり、更衣室前を通って突き当たりにあるエレベーターに乗る。
エレベーターの階数表示は4階と5階しかなかった。

京介「よし…!待ってろ藍!」

迷わず5のボタンを押す。
軈てエレベーターが5階に到着し、ドアが開く。
そこには、既に内藤とアリサがいた。

⏰:08/01/21 23:19 📱:P903i 🆔:QgkZYMa6


#320 [◆vzApYZDoz6]
-要塞内部・内藤とアリサの場合-

京介らが、道が分からず彷徨っていた頃。
内藤とアリサは、司令室へ繋がる唯一のエレベーターで、5階に到着した。
司令室の中はさっぱりとしていた。絨毯が真っ直ぐ奥まで続き、4・5段の階段を上った先にある、まさに王座といった感じの椅子に、グラシアが座っていた。
その隣には、機械類が繋がれ無駄にゴツくなっている椅子に藍が座わらされていた。眠らされているようで、意識はない。
グラシアは座ったまま、まるで毎朝の挨拶のように内藤に向かって手を上げた。

グラシア「やぁ、てっきり川上京介が先に来ると思っていたが」
内藤「貴様…」

⏰:08/01/21 23:40 📱:P903i 🆔:QgkZYMa6


#321 [◆vzApYZDoz6]
アリサ「今までのお給料はキッチリ払って貰うわよ、グラシアちゃん♪」

グラシアが内藤の隣のアリサに気付き、声を上げて笑い出した。

グラシア「ははは!どうしたんだアリサ?イルリナがどうなってもいいのか?」
アリサ「あら、京介ちゃんのスキルを支配したら、どうせ用済みになるんじゃなくって?♪」
グラシア「よく分かってるじゃないか…その通り、既に彼女は俺に必要の無い人間だ」

グラシアは一頻り笑い、まだ含み笑いをした。
その時、内藤らの背後のエレベーターの扉が開き、京介とラスダンが現れた。

⏰:08/01/21 23:50 📱:P903i 🆔:QgkZYMa6


#322 [◆vzApYZDoz6]
グラシア「や、川上京介。遅かったじゃないか」

グラシアはまたも余裕の顔で手を上げた。
京介は椅子に座らされて眠っている愛を見て、額に青筋を立て叫ぶ。

京介「藍を返せ!」
グラシア「この子のスキルはまだ支配できていないのでね…残念ながら返す訳にはいかない」

グラシアが藍の髪を撫で付ける。
京介は眉間に皺を寄せ、より一層顔が強張った。

京介「…その手で…藍に触んな!」
グラシア「ん?触られたくないなら止めたらどうだい?」
グラシアが余裕の態度なのに警戒心を抱くべきだったが、京介は怒りでグラシアを殴ることしか考えていなかった。

京介「上等だてめぇ!」

⏰:08/01/21 23:58 📱:P903i 🆔:QgkZYMa6


#323 [◆vzApYZDoz6]
内藤「待て川上!」

内藤が我を忘れて飛び出した京介を制止しようとしたが、間に合わない。
京介は一気に踏み込んで振りかぶり、不気味に笑うグラシアの顔面に渾身のストレートを撃ち出した。
しかし、その拳はグラシアまであと数mmのところで止まった。
京介の拳が帯電したように紫電が走り、微細な稲光が光る。いくら拳を押し付けようにも、グラシアには届かなかった。

グラシア「どうした?触られたくないんじゃないのか?」

グラシアが眼前で意地悪くにやついた。まだ右手で藍の髪を撫で付けているのを見て、京介の額に再び青筋が走る。

⏰:08/01/22 00:07 📱:P903i 🆔:PI.xtWT2


#324 [◆vzApYZDoz6]
京介「とりあえずその手を退けやがれ!」

今度は藍を撫でている右腕目掛けて、右足を蹴り上げた。
しかし結果は同じ。蹴り上げた京介の足は見えない何かにぶつかり、グラシアには届かない。何度も拳や蹴りを撃つが、その度に弾かれた。
ならば投げ飛ばそうと掴み掛かるが、やはり見えない何かに阻害され、グラシアに手が届く前に弾かれる。
何も知らない人がここだけ見れば、よくできたパントマイムだと感心するかもしれない。

京介「くそっ…!」
グラシア「止める気は無いのかな?ならば向こうへ帰ってもらおうか」

そう言うとグラシアは藍を撫でるのをやめて、右手を腰に構えた。

⏰:08/01/22 00:17 📱:P903i 🆔:PI.xtWT2


#325 [◆vzApYZDoz6]
京介は無駄な攻撃で体力を使い、息が上がっていた。そこへ、グラシアの素早い掌呈突きが繰り出される。
腹目掛けて放たれた掌呈をかわすことも出来ず、体をくの字に曲げて内藤らの元へ吹っ飛んだ。

ラスダン「大丈夫!?」
京介「くっそ…何で当たらないんだ?」
内藤「不用意に突っ込むんじゃない」

困惑する京介を尻目に、内藤がグラシアを見据えた。グラシアは再び椅子に座りながら、余裕の顔で内藤らを見る。

グラシア「…バニッシ、君は少し気に入らないんでね。遠慮なくやらせてもらうよ」
内藤「好きにしろ。それから、今は内藤だ」

⏰:08/01/22 00:31 📱:P903i 🆔:PI.xtWT2


#326 [◆vzApYZDoz6]
グラシア「おっとその前に」

グラシアが、わざとらしく大振りで手を突きだし、踏み込もうとする内藤を制止した。

内藤「何だ?」
グラシア「いや、邪魔が入っては困るのでね。川上京介、アリサ、ラスダン。君達は…『動くな』」
京介「…は?」

京介が何を言ってるんだこいつは、という風に目を細め、内藤のそばに行こうとする。
だが、京介の体は目と口以外全く動かなくなっていた。驚いて目で周囲を見回すと、ラスダンとアリサも動きが止まっているようだ。

京介「あれっ…何で動かないんだ?」
内藤「そうか…『写し』は終わってたんだっけか?」
グラシア「その通り」

⏰:08/01/22 00:49 📱:P903i 🆔:PI.xtWT2


#327 [◆vzApYZDoz6]
グラシアは言いながら立ち上がり、藍が座る椅子の後ろから、風船人形を引っ張り出した。

グラシア「この風船にはね、川上京介、君のスキルがコピーされている」

グラシアが京介の方を向いて、風船を揺らしながら説明しだした。

京介「俺の、スキル…?」

京介は、分からない事だらけで困惑していた。

グラシア「そう。説明しようか…私のスキルは『アナザーコンプリート』。人体支配とスキル支配、2つの支配を使う事ができる」

グラシアがゆっくりと椅子に腰掛けて、頬杖をつく。

グラシア「この風船は、リッキーが君のスキルをコピーして貼り付けたものだ」

⏰:08/01/22 01:14 📱:P903i 🆔:PI.xtWT2


#328 [◆vzApYZDoz6]
グラシア「私はこの風船に『スキル支配』をかけた。そうする事で、君のスキルを手に入れようと思ってね。ただ、リッキーがスキルをコピーするには、敵がスキルを使用した状態を視認する必要があるんだ」

グラシア「そこで、バウンサー本部にリッキーを送り込んだ。彼の体に、相手にスキルを強制使用させる特殊な周波を出す機械を埋め込んでね。…コピーは成功、私は君のスキルを手に入れた。ただ、リッキーに機械を埋め込みっぱなしにしたせいで、君は地下牢で再びスキルを発現したようだがな。まぁ、彼はもう用済みだったが」
京介「あいつは…使い捨てだった訳か」

⏰:08/01/22 01:23 📱:P903i 🆔:PI.xtWT2


#329 [◆vzApYZDoz6]
京介は動けぬ体で、歯をくいしばりグラシアを見据えていた。

グラシア「まあ、そう怒るなよ。…そうしてコピーし、今使用しているのが、君のスキル『スレイブオブキング』だ。自らを絶対的な『王』とし、他人の『行動選択権』を支配するスキル―――要するに、他人を思い通りに操れる、ということだ」

グラシアが京介を一瞥し、右手で藍の頭を撫でた。

グラシア「…君のスキルはそうして手に入れた訳だが、この子はなかなか目を醒ましてくれないのでね」
京介「てめぇ…!」

眠る藍を見て京介が歯をくいしばるが、体が動かない。
そんな京介の気持ちを察したのか、内藤が後ろ手で京介を制した。

⏰:08/01/22 01:39 📱:P903i 🆔:PI.xtWT2


#330 [我輩は匿名である]
内藤「川上、お前は動けないだろ。下がってろ」
グラシア「バニッシ、まさか君ごときが支配者クラスである私に勝てるとでも?」
内藤「やってみなければ分からんだろう」
京介「支配者クラス?」

次々と疑問が浮かぶ京介を、グラシアがめんどくさそうに一瞥した。

グラシア「なんだ、何も知らないのか?」
京介「そりゃちょっと前まで普通の高校生だったんだから」
内藤「それは俺が説明してやる」

内藤が、なぜか勝ち誇ったような顔をしている京介をちらっと見た。
グラシアは頬杖をついたまま、見下すように京介達を眺めている。

グラシア「それは助かる…説明してやれ」

⏰:08/01/23 00:16 📱:P903i 🆔:I.ywfF/k


#331 [◆vzApYZDoz6]
↑は俺です。なぜか酉が無くなってましたorz

⏰:08/01/23 00:18 📱:P903i 🆔:I.ywfF/k


#332 [◆vzApYZDoz6]
内藤「支配者クラスってのは、お前やグラシアの持ってるような、何かの『支配者』となるスキルの事を指す。
ちなみにそれ以外のスキルは、種類によって分類される。俺やアリサなら『操作』スキル、ラスダンなら『調査』スキルだな」
京介「へー…って、何でそれだけで内藤があいつに勝てないかもって事になるのさ?」
内藤「支配者クラスのスキルは…身体強化能力が最初から付加される。しかもかなり協力なヤツが、な。お前も覚えがあるだろう」
京介「……そういやリッキーと最初に闘った時は、あっという間に風船を蹴散らせたような…」
グラシア「もうその辺でいいだろう?」

⏰:08/01/23 00:30 📱:P903i 🆔:I.ywfF/k


#333 [◆vzApYZDoz6]
グラシアが不意に口を挟んだ。目を細め眉間に皺を寄せ、飽々したようにこちらを見ている。

内藤「…ふん、そういえば俺はお前を倒しに来たんだったな」

内藤が向き直り、重心をゆっくりと落とした。
部屋の奥にいるグラシアとの距離はおよそ7m。内藤なら一瞬で詰め寄れる距離だ。
見えない何かに守られているグラシアとどう闘うか、そんな思案を巡らせながら、地につけた足に力を入れ踏み込もうとしたその時。

グラシア「ああ…言っておくが、闘うのは私じゃない」

グラシアが座る王座の前の小階段に、黒い円柱が煙を巻いて出現した。

⏰:08/01/23 01:43 📱:P903i 🆔:I.ywfF/k


#334 [◆vzApYZDoz6]
現れたのはクルサだった。4年前と変わらずその顔は無表情で、その口は無言で閉ざされ、その視線は俯いたまま。
そんなクルサを前にして、内藤の視線がクルサを通り越してグラシアを一瞥する。静かに目を閉じながら、右ポケットから煙草を取り出した。

内藤「京介のスキル使ったりクルサを使ったりバリアを使ったり…」

呟きながら煙草をくわえ、先端に着火した。深く煙を吸入し、溜め息と共にゆっくりと吐き出していく。

内藤「お前は自分の力で闘おうともしないんだな」
グラシア「何とでも言いたまえ。むしろ今人の力を借りたいのは君なんじゃないか、バニッシ?」

⏰:08/01/23 21:43 📱:P903i 🆔:I.ywfF/k


#335 [◆vzApYZDoz6]
グラシアは椅子の背凭れに体を預け、見下ろすように内藤を眺めていた。その目は完璧に格下を見る目だ。

グラシア「私が自分の力を使わなくとも、今私が有利な状況は変わらないだろう?」

グラシアは言うと、視線をクルサに向けながら、顎で内藤を差した。
後ろに居て見えてもいないグラシアの動きにクルサが反応し、右手に巾着の青袋を具現化する。袋の口が独りでに開き、紙吹雪がクルサの周りを舞った。

グラシア「…だいたいクルサを支配しているのは私のスキルを使っているからだ。れっきとした私の力だろ、バニッシ?」
内藤「自分の力?お前の思考回路はとんだ間抜けだな」

⏰:08/01/23 21:52 📱:P903i 🆔:I.ywfF/k


#336 [◆vzApYZDoz6]
腕を組みながら煙草を吸っていた内藤が、目を細めながらグラシアを見た。煙草は既に半分程まで吸われている。

グラシア「強がりは止めたまえ」
内藤「どうかな?」
グラシア「もういい、やれクルサ」

グラシアがふっと小さな溜め息をつきながらクルサに指示する。それに呼応し、クルサの周囲を舞っていた紙吹雪が、クルサを中心にとぐろを巻くように龍の形を成していく。
クルサが左手を開き、前へ。紙龍がクルサの左腕に巻き付いた。開いた掌に重なるように、紙龍の口が内藤を向く。

クルサ「紙潜龍・紅紙炎射――カットアウト!」

内藤に向けて、紅い無数の紙吹雪が放出された。

⏰:08/01/23 22:31 📱:P903i 🆔:I.ywfF/k


#337 [◆vzApYZDoz6]
まるで火炎放射のような紙吹雪が迫るのを前に、内藤が煙草を大きく一吸い。

内藤「仕方ないな…」

呟くのと同時に、紙吹雪が直撃する。
しかし、そこに内藤はいなかった。ただ1本の短くなった煙草を宙に残して。

京介「…あれ、内藤は…」

動けないため目だけで見ていた京介が呟きかけたその時、凄まじい衝撃音が辺りに響いた。
京介が轟音の方に目をやる。
王座にふんぞり返って座るグラシアのさらに向こう、京介がいる場所と対面の壁に、クルサの顔が叩き付けられている。
壁にめり込むクルサの顔を押さえ付けていたのは、内藤だった。

⏰:08/01/23 22:42 📱:P903i 🆔:I.ywfF/k


#338 [◆vzApYZDoz6]
内藤「しばらく寝てろ」

内藤がクルサの顔から手を離すと、クルサがゆっくりとずり落ち、内藤の足下に力なく倒れ込んだ。
内藤が足を引き抜く。踏み込んだ足下はコンクリートの床が抉れ、捲り上がっている。
その様子を、背凭れから顔を覗かせてグラシアが見ていた。

グラシア「ほー…なかなかやるじゃないか」
内藤「どうでもいいけど、油断しすぎだ」

言い終えると同時に、グラシアの視界から内藤が消えた。
次の瞬間、グラシアの右から、バリアが何かを弾いた音が響く。

内藤「ちっ、藍にも触れないか!」

内藤は、一瞬で藍の椅子の横に移動していた。

⏰:08/01/23 22:51 📱:P903i 🆔:I.ywfF/k


#339 [◆vzApYZDoz6]
内藤「ならこっちだ!」

内藤が今度は、藍が座る椅子の後ろにある、京介のスキルをコピーした風船に、回し蹴りを繰り出した。
だが、同じように足を弾かれる。

内藤「ふん、こっちもか。えらく臆病なもんだな」
グラシア「臆病?自分の力を発揮するための当然の策だ」

グラシアは特に慌てる様子もなく、椅子に座ったまま内藤を眺めた。

内藤「結局お前を倒すしかない、か」
グラシア「…俺を倒す?クルサを倒したぐらいでいい気になるなよ」

グラシアが呆れたような表情を浮かべ、含み笑いをする。その眼前に、右腕を振りかぶる内藤が現れた。

⏰:08/01/23 22:58 📱:P903i 🆔:I.ywfF/k


#340 [◆vzApYZDoz6]
内藤「なら試してみるか」

内藤が、素早く重い一撃を振り降ろす。が、やはりその拳があと数mmまで迫ったところで、グラシアを覆うバリアに弾かれた。
構うものかと言わんばかりに、内藤が続けて殴り、蹴りかかる。
グラシアはバリアの内側で、馬鹿にするような目で内藤を見ていたが、やがて飽きたように目を閉じて溜め息をつき、呟いた。

グラシア「もういいよ、『動くな』」

声と同時に、殴りかかろうとしていた内藤の動きがピタリと停止する。内藤が目だけを動かし、グラシアを見上げた。

内藤「くそっ!」
グラシア「そうしているのがお似合いだ」

⏰:08/01/23 23:05 📱:P903i 🆔:I.ywfF/k


#341 [◆vzApYZDoz6]
グラシア「目の前で仲間が殺られるのを見ているんだな」

グラシアが満足げに椅子から立ち上がり、対面で止まったままの京介らに近付こうと歩き出す。視線は完全に京介らを向いていた。
内藤がそれを確認し、唇の端を釣り上げる。

内藤「なんてなると思ったか間抜け」
グラシア「なっ!?」

驚愕するグラシアの振り返り様の顔面に、内藤の拳が勢いよくめり込んだ。

グラシア「ぶっ!」

声にならない声を上げて、グラシアが京介らの近くまで吹き飛び、地面を転がった。
殴られた左頬を抑えながらゆっくりと立ち上がる。バリアで守られていた筈のグラシアの顔は、赤く腫れ上がっていた。

⏰:08/01/23 23:13 📱:P903i 🆔:I.ywfF/k


#342 [◆vzApYZDoz6]
グラシア「馬鹿な…なぜ動けた?いや、なぜバリアを破れたんだ?」

俯いたままぶつぶつと呟くグラシアの目は赤く血走り、狂気の色が灯っていた。内藤が近づいてくるのに動こうともせず、何かを言い続けている。
内藤は吹き飛んだグラシアの元まで歩いていき、防御の意思を見せないグラシアを遠慮することなく蹴り上げた。

グラシア「ごあっ!!」
内藤「さっきから馬鹿かお前は」

グラシアの体が今度は部屋の中央にもんどりうった。グラシアがゆっくりと立ち上がり、信じられないという目で内藤を見据えた。

グラシア「なぜ動けるんだ?なぜバリアを破られたんだ?」

⏰:08/01/23 23:24 📱:P903i 🆔:I.ywfF/k


#343 [◆vzApYZDoz6]
内藤「そりゃ俺が凄くてお前が馬鹿だからだろ」

内藤が冷ややかな目でグラシアを見た。先程とは違い、内藤がグラシアを見下しているかのよう。

グラシア「馬鹿な!スキルは完璧にコピーした筈だ!川上京介から『スレイブオブキング』のスキルを!」

グラシアが発狂したように叫びながら京介を指差す。
内藤の強さを目の当たりにして間の抜けた顔をする京介とは対照的に、グラシアの顔は強張り、額には青筋を立て、目は赤く血走っている。

内藤「あのなぁ、だからお前は馬鹿だって言うんだよ」

⏰:08/01/23 23:31 📱:P903i 🆔:I.ywfF/k


#344 [◆vzApYZDoz6]
内藤が呆れたように後頭部を掻いた。

京介のスキル『スレイブオブキング』は、自らを絶対的な『王』とし、他人の『行動選択権』を支配する、というもの。
そして内藤は、そのスキルの持ち主である京介の、学校の担任だ。

内藤「…例え京介が王であろうと、担任を支配出来る訳ないだろ?お前はそんな京介のスキルをコピーしたんだ、俺を支配できる訳ないだろ。馬鹿かお前は」
グラシア「なっ…!?」
京介「ってそんな理由!?」

京介とグラシアが唖然として口を開ける中、内藤は1人涼しい顔をしていた。

内藤「そういうわけで京介、お前がスキル使えたからって学校の成績は上がらないぞ」

⏰:08/01/23 23:39 📱:P903i 🆔:I.ywfF/k


#345 [◆vzApYZDoz6]
京介「いや、それかなり無理矢理な感じがするけど…担任だから、って」
内藤「自分が慕う先生を支配しようとは思わんだろ?まぁ諦めろ」
京介「そんな殺生な!」

談笑する2人を目の前に、グラシアは深刻な顔をしていた。

グラシア(馬鹿な…!スキルは実際に内藤が支配から逃れているから話は本当だろうが…なぜバリアを破れたんだ!?ミサイルの直撃も防ぐバリアだぞ!?)

グラシアが思案を巡らせる。
内藤のスピードは跳ね上がっているが、今食らった攻撃はそんなに強い訳じゃない。内藤の攻撃でバリアが破れたとは考えにくかった。
物理的原因ではないとすれば――

グラシア「…発生装置か」

⏰:08/01/23 23:58 📱:P903i 🆔:I.ywfF/k


#346 [◆vzApYZDoz6]
ガリアス「あー、めんどくせえな」

コンソールを操作し続けていたガリアスは、部屋の4隅の柱に掛けられた結界を解除していた。
バリア発生装置となっている4本の柱のうち3本が、逆さになって地面に突き刺さっている。逆さになっていない残る1本の柱に近付きながら、ぶつくさと文句を垂れた。

ガリアス「ったく、別に俺が闘う訳でもないのに、何で発生装置なんか壊してるんだ俺」

残る1本に手を翳す。ガリアスのスキル『ヴィエロシティー』により、柱が風切り音を出しながら部屋の中を光速で飛び回る。
ガリアスが翳した手を振り降ろすと、逆さになった柱が床に激突し突き刺さった。

⏰:08/01/24 00:06 📱:P903i 🆔:SoaPGRjY


#347 [◆vzApYZDoz6]
グラシア「…まったく」

グラシアが、怒りを吐き出すように息を吐いた。顔を上げ、細めた目で内藤を見据える。

グラシア「自分の思い通りにならないと、こうも苛々するのか」

グラシアはの怒りは既に最高潮まで近付いていた。肩は小刻みに震え、手は自然と拳が握られている。

グラシア「どいつもこいつも…バニッシごときに…」
内藤「やられているのは、お前に力が無いからだよ」

怒りに震えるグラシアに気付いた内藤が、強い口調で言い放った。

内藤「他人の力に頼ってばかりで努力しようともしない。そんなお前が、4年間死に物狂いで努力した俺に勝てると思うか?」

⏰:08/01/24 00:13 📱:P903i 🆔:SoaPGRjY


#348 [◆vzApYZDoz6]
内藤「そして他人の力を失ったお前は、今俺にボコボコにやられている」

内藤が再び煙草を取り出した。余裕をかましながら火をつける内藤をグラシアが賤しく眺める。

グラシア「うるせぇよ…お前はもう『喋るな』!」

怒りで我を忘れてか、効かないと分かっている京介のスキルを発動する。
内藤は煙草の煙を深く吸った。ゆっくりと吐き出しながら、哀れみを込めて言う。

内藤「バーカ、やなこった」グラシア「ああそうか…」

グラシアが何かを企んでいるかのように怪しい笑みを浮かべた。
次の瞬間、バックステップで一気に王座まで戻り、依然眠ったままの藍を素早く抱え上げた。

⏰:08/01/24 00:21 📱:P903i 🆔:SoaPGRjY


#349 [◆vzApYZDoz6]
グラシア「ならこの娘だ!」
内藤「しまった藍を!」

内藤が踏み込むより早く、グラシアが背後の窓ガラスを突き破る。直ぐ様燦に乗って内藤らを一瞥し、そのまま窓から飛び下りた。

内藤「くそっ!」

内藤が慌てて窓から身を乗り出す。降下するグラシアの足下には中庭のような空間が広がっていた。
司令室は5階で、下は恐らく1階。壁に取っ掛かりも無いのに飛び降りるのは危険かもしれない。
ふと、対面の中庭の端からグラシアの着地点に向かって走る人影が、3人見えた。
着地しようとするグラシアに思い切り攻撃する3人を見て、内藤が安堵と真剣さの混じった息を吐いた。

⏰:08/01/25 01:01 📱:P903i 🆔:piHG.QUc


#350 [◆vzApYZDoz6]
内藤「…とりあえずは大丈夫か」

内藤が振り返ると、まだ動けないでいる京介とアリサとラスダンが見えた。

内藤「っと、まだ動けないままか。仕方ないな」

内藤が、さっきまで藍が座っていた椅子に一足で近付き、風船人形に手を掛ける。さっきまで触れる事が出来なかった風船に触れられたのは、発生装置が機能を停止させている事を示唆していた。
内藤が風船の顔に拳を叩き付ける。風船は散々に割れて、それと同時に動けないでいた3人の体に突然自由が戻った。

アリサ「やっと体が戻った♪」
ラスダン「てゆうか僕ら絶対存在を忘れられてたような…」

⏰:08/01/26 18:05 📱:P903i 🆔:ug1pEsy.


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