-Castaway-
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#351 [◆vzApYZDoz6]
京介「それよかあいつを追い掛けないと!」

京介がすぐに振り返り、エレベーターのボタンを押す。4階と5階を往復するだけのエレベーターは、すぐに京介らの居る5階に到着した。
京介、ラスダン、アリサに続いて、内藤もエレベーターに乗り込む。京介が4階のボタンを押し、扉を閉めるボタンに手をかけようとしたところで、内藤が唐突に口を開いた。

内藤「川上…焦るなよ。自分の力を自覚するんだ」
京介「えっ?」

思わず振り返ると、内藤は少し俯いて腕を組んでいた。京介は言葉の意味が分からなかったが、内藤はそれ以上何も喋りそうにない。
エレベーターの扉は、そうこうするうちに閉まった。

⏰:08/01/26 23:32 📱:P903i 🆔:ug1pEsy.


#352 [◆vzApYZDoz6]
-中庭・京介らが5階に到着する15分前-

拳が空を切る音と風船が弾ける音が連続で響く。時折、小爆発の音と共に幾体かの風船人形が宙を舞う。
ハル兄弟とリーザが風船人形を潰し始めてから、既に20分近く経過している。初めは中庭を埋め尽くす程に無数の風船人形が蠢いていたが、今はもうハル兄弟とリーザの周囲に居る数十体を残して、それ以外の全ては残骸と化して中庭の地面を覆っていた。

リーザが『ストライクボム』を使うために刀を鞘に納めた回数は、最早数え切れない程。残りも少なくなった風船を前に、リーザが何回目かも分からない鞘納めをする。

⏰:08/01/26 23:51 📱:P903i 🆔:ug1pEsy.


#353 [◆vzApYZDoz6]
これまでは一瞬納めただけですぐに抜刀していたが、今度は刀を抜かない。その様子を尻目にした兄弟が、息を切らしながら背中を合わせて話し掛けた。

ライン「だいぶ数も減ってきたし…」
レイン「できるだけ1ヵ所に集めてみようか?」
リーザ「お願いしますわ」

よし、と小さく頷き、兄弟が左右に分かれて跳ぶ。周りを囲む風船の外側に着地した。
兄弟が風船の腕を掴み、次から次へと中庭の端へ投げ飛ばす。リーザは鞘を持つ左手以外の四肢を使い、風船の単純な攻撃を往なしている。
30秒程で中庭の端に全ての風船が積み上げられる。もがきバラけようとする風船よりも先にリーザが踏み込んだ。

⏰:08/01/27 00:03 📱:P903i 🆔:aI5Q63wk


#354 [◆vzApYZDoz6]
リーザが納められた刀の柄に手をかけ、鞘をしっかりと握り直す。
一瞬足が止まり、次の瞬間には一閃の光と鍔鳴りの音を残して、積み上げられた風船の後ろに居た。鞘には刀が納められたまま。
その刀は、一度抜かれていた。
突如として、積み上げられた風船の中腹から爆発が起こり、辺りに散々になった風船の残骸が飛び散る。
リーザがゆっくりと立ち上がり、振り返る。唇を持ち上げながらこちらに歩いてくる兄弟に微笑んだ。

ライン「やっと終わったな」
リーザ「ええ…疲れました」
レイン「それにしても全くふざけた数だな。なんでここにこんなに風船が居るんだ」

⏰:08/01/27 00:16 📱:P903i 🆔:aI5Q63wk


#355 [◆vzApYZDoz6]
3人が辺りを見回す。
本来なら芝生が生えている中庭の地面は、風船の残骸が覆い尽くして黒いビニールだらけになっている。

レイン「まぁ…今は考えても仕方がないな。とりあえずグラシアを…」

喋り声を遮るように、ガラスが割れる音が響いた。
音がした方を見ると、上からバラバラとガラス片が落ちてくる。続いて落下してきたのは、ハル兄弟にとっては憎役の人間。

レイン「お、今日はついてるな。向こうから降ってきやがった」
ライン「そりゃカウントダウンハイパーで2位だったからな」
リーザ「行きましょう!」

リーザの掛け声と同時に、3人が走り出した。

⏰:08/01/27 00:38 📱:P903i 🆔:aI5Q63wk


#356 [◆vzApYZDoz6]
グラシア「ぶはぁ!!」

内藤を見上げながら落下していたグラシアの腹に衝撃が走る。
飛び出したハル・レインの蹴りが鳩尾にめり込んでいた。

グラシア「貴様…!」
ライン「おっと、余所見はすんなよな」
グラシア「ぶふっ!」

今度は後頭部。ハル・ラインがダブルスレッジハンマーを食らわせた。
続いてリーザが飛び出し、抜刀して斬りかかる。が、斬撃は寸でのところでグラシアの左手に止められた。

グラシア「小癪な!」

グラシアが刀を振り回し、リーザ諸とも吹っ飛ばす。上手く着地したリーザの両隣にハル兄弟が跳んできた。着地するグラシアに立ち塞がるように周りを囲んだ。

⏰:08/01/27 00:48 📱:P903i 🆔:aI5Q63wk


#357 [◆vzApYZDoz6]
ライン「これはこれは、どーも社長」
レイン「ウチの母親がすっかりお世話になったみたいで」

グラシアを指差しながら、からかうように話す。リーザはグラシアの退路を絶つように後ろに回り込んだ。
グラシアがゆっくりと息を吐く。怒りは既に臨界点を通り越し、逆に冷静さを取り戻していた。

グラシア「…まったく次から次へと…」
レイン「まぁまぁ、そう怒らないで。お世話になった代金は労災保険で支払いますから」
ライン「心優しい社長なら、今まで働いた分の給料貰えますよね?」
グラシア「は…こんな気分は久しぶりだよ」

その時、グラシアの体に変化が起きた。

⏰:08/01/27 04:54 📱:P903i 🆔:aI5Q63wk


#358 [◆vzApYZDoz6]
グラシアの着ていたスーツが破ける。
額には角のような突起が現れ、手や胸板は甲殻類のように硬質化していく。
全身の筋肉が急速に膨張し厳のように赤くなる。人間の5倍はあろうかという圧倒的な体躯がスーツの破れカスを体に巻き付けて、尚膨れ上がっていく。

グラシア「一体なんだろうな…何もかもがどうでもよくなるようなこの気分は」
ライン「それは…オヤジのスキル!!」
レイン「貴様! まさかオヤジにまで手を掛けたのか!?」
グラシア「君達がこの要塞に住み込んだ後でね。家に1人残されては可哀想だろう?」
リーザ「なんて非道な…!」

⏰:08/01/27 10:26 📱:P903i 🆔:aI5Q63wk


#359 [◆vzApYZDoz6]
膨張した体躯から繰り出される圧倒的な腕力はダイヤモンドですら砕き、歩くだけでコンクリートを押し潰す圧倒的な脚力にはチーターですら敵わない。
それはイルリナのスキルを使い手に入れたハル兄弟の父親のスキル『レッドデーモン』。
あまりの膨張率に湾曲した背中の筋肉が、赤い鬼の顔に見える事からその名がつけられた。

グラシア「俺の『アナザーコンプリート』では、スキル所持者を殺してしまうとそのスキルが使えなくなるからね。その点では、『ライフアンドデス』は優秀だ」
リーザ「と言うことはまさか…」
グラシア「彼は逃げたからね…仕方がない」

⏰:08/01/27 10:38 📱:P903i 🆔:aI5Q63wk


#360 [◆vzApYZDoz6]
ライン「貴様…なぜだ!? 俺達は忠実に働いた筈だ!!」
グラシア「君達はテーブルの食べ残しをずっと置いておくのか?」
レイン「オヤジはお前の晩飯だった、とでも言うのか!」
グラシア「そうだな、なかなか魅力的な晩飯だったよ。まあ…カレーライスぐらいかな」
レイン「貴様…!!」
ライン「よくもオヤジを殺したな!」
グラシア「いや、死んだかどうかは見ていない。部隊が断崖にまで追い詰めて、崖から飛び下りたそうだ。眼下の海に死体は見付からなかったがね」
ライン「なんだ、驚かせやがって」

グラシアの言葉を聞き、ハル兄弟は顔を見合わせて笑いあった。

レイン「それぐらいであのオヤジが死ぬ訳がないだろう」

⏰:08/01/27 10:49 📱:P903i 🆔:aI5Q63wk


#361 [◆vzApYZDoz6]
リーザ「それぐらいでって、普通死にますわよそれ」

グラシアの後ろで、リーザが呆気に取られた顔をした。

ライン「オヤジは普通じゃないからな。だが、今までこき使われたんだ」
レイン「落とし前はキッチリ取って貰うぜ」

兄弟が腕を突きだし、いつかのバイク乗りと対峙した時のように構える。

ライン「俺達をしっかり覚えてな」
レイン「お前を殺すのは、俺達ハル兄弟だ!」

膨れ上がった体躯の一番上に付いている顔がハル兄弟を見下ろし、ふん、と鼻で笑った。

グラシア「こうなったらお前らで鬱憤を晴らしてやろうか…愛する父親のスキルで千切れ死ね!」

⏰:08/01/27 10:59 📱:P903i 🆔:aI5Q63wk


#362 [アリス]
あげます(^U^♪)

⏰:08/01/28 03:52 📱:P902iS 🆔:☆☆☆


#363 [◆vzApYZDoz6]
>>362
どうもです^^
最近忙しさがかなり加速してて、更新できない日もあるかもしれないです(´`)

今から少し更新します

⏰:08/01/28 16:17 📱:P903i 🆔:b5xYdHV2


#364 [◆vzApYZDoz6]
グラシアが膨れ上がった右腕を無造作にふりかぶる。
その時に胸部が初めて顕になり、左脇に抱えられた藍が見えた。

レイン「おっと、あれは確か助けなきゃいけない子だよな?」
ライン「参ったな。派手に戦えそうにもない…っと!!」

2人の会話を遮るように右腕が乱暴に、だがしかし凄まじいスピードで振り下ろされる。
ハル兄弟は迫る拳を飛び退くようにかわして二手にわかれた。そのまま強大な体躯のグラシアの脇腹に潜り込み、2人同時に拳を撃ち出す。
しかし、鉄を殴ったような反響音が響いて、兄弟の拳から血が滲み出るだけだった。

⏰:08/01/28 16:28 📱:P903i 🆔:b5xYdHV2


#365 [◆vzApYZDoz6]
ライン「むぅ…やはり痛い」
レイン「馬鹿野郎、これぐらい我慢しろ」
グラシア「チョロチョロと邪魔だ蟻共が!」

グラシアが右腕1本で両脇腹に潜り込んだハル兄弟を薙払う。兄弟は思わず血が出た拳を振りながら、薙払いをバックステップでかわした。
そこへ、藍をグラシアから奪い返そうと飛び掛かったリーザが放り投げられてきた。
リーザは上手く着地しながら、困ったような顔をして兄弟に呟いた。

リーザ「藍さんをグラシアから引き剥がさない事には、私のスキルも使えません…どうにかならないでしょうか?」
レイン「それならいい方法が…ちょっと」

⏰:08/01/28 16:36 📱:P903i 🆔:b5xYdHV2


#366 [◆vzApYZDoz6]
ハル・レインが横目でグラシアを警戒しながらリーザを手招きし、何やら耳打ちした。

レイン「……ってな具合だ。ちなみに、今はスキルは?」
リーザ「発動中ですわ」
レイン「よっしゃ。行くぞライン、対オヤジ戦法だ」
ライン「おっ、久しぶりにやるか兄貴」

3人が小声の会話を終えて、グラシアに向き合う。会話する3人に特に何もせず、むしろ余裕といった感じに立ち尽くしていた。

グラシア「作戦タイムは終わったかな?」
レイン「待ってくれるとはいい奴だな」
グラシア「何…君達が負けるという結果は変わらない」
レイン「ならやってやろうか。…2人ともタイミングを合わせろ、行くぞ!」

⏰:08/01/28 16:44 📱:P903i 🆔:b5xYdHV2


#367 [◆vzApYZDoz6]
3人が一斉に駆け出す。ハル兄弟が平行に並んで走り、その後ろをリーザが追う形。

今グラシアが使用しているスキル『レッドデーモン』は、ハル兄弟の父親のスキル。ハル兄弟はそれ故に、対処方を熟知していた。
発動中は外皮が鉄のような硬さを持ち、1対1では到底敵わず、また外部からいくら打撃を与えても大したダメージにはならない。
そんなスキル発動中の人間に攻撃を当てる方法は限られている。鋼鉄の皮膚をも裂く程の威力の攻撃を叩き込むか、若しくは皮膚の硬さなど関係ない肉体内部に直接ダメージを与えるか。
藍を抱えているグラシアには、後者の方法を使うしかない。

⏰:08/01/28 16:55 📱:P903i 🆔:b5xYdHV2


#368 [◆vzApYZDoz6]
グラシアが兄弟を迎え撃つために右腕を振り上げた。
その時、左を走ってきていたハル・レインが、一瞬視界から消え去る。次の瞬間には、グラシアの眼前にまで飛び上がっていた。

グラシア「小癪な!」

回し蹴りを繰り出すハル・レインに向かって、振り上げた拳を叩き付ける。が、またしても拳が当たる寸前に視界から消え失せた。
と同時にハル・ラインが踏み込み、一気に懐まで入り込んだ。グラシアが舌打ちをしながら、自分の顔の前にあった右拳を振り下ろすように叩き付ける。が、それも空振り。

グラシア「ちっ…小賢しい!」
ライン「後ろだよ赤鬼野郎!」

⏰:08/01/28 17:13 📱:P903i 🆔:b5xYdHV2


#369 [◆vzApYZDoz6]
声に反応し後ろを向いた瞬間。

レイン「ツインキャンサー大鵬打撃奥義!」

振り下ろして地面を砕き割り、地面にめり込むように止まっていた右拳の上に、ハル・レインが拳を腰に据えながら着地した。
後ろを向いた時に一瞬見えたハル・ラインに気を取られ、拳に着地したハル・レインへの反応が遅れる。
それを見計らったかのように兄弟が同時に胸部に飛び込み、拳を握り締めた。
狙うは――心臓。

レイン&ライン「――ハートブレイク・ショット!」

ハル・レインが前から、ハル・ラインが後ろから、裏当てを使って心臓を撃ち抜いた。

⏰:08/01/28 17:24 📱:P903i 🆔:b5xYdHV2


#370 [◆vzApYZDoz6]
力点と作用点を『ずらす』のが裏当て。
胸筋と背筋に撃ち込まれた拳の威力は皮膚を突き抜け、グラシアの心臓で互いにぶつかり合い炸裂した。
グラシアの心臓は体内で弾け散り、嘔吐感と共に大量の血液が食堂をさかのぼる。

グラシア「ぐっ…がはっ!!」

体内に致命傷を食らい、片膝をついて血を吐き出した。
降り注ぐ鮮血を避けるように、懐に入っていたハル・レインが後ろに飛び退いた。
ハル・レインが退がる隣を、リーザが鞘に納まれた刀の柄に手を掛けながら駆け抜ける。懐に入り込み、止まらぬ血を吐き出し続けるグラシアの無防備な大口に向かって、神速の刺突を繰り出した。

⏰:08/01/28 17:36 📱:P903i 🆔:b5xYdHV2


#371 [◆vzApYZDoz6]
突き出された刀の切っ先は、外皮の硬さが影響しない口の中を通って脳に到達する。

リーザは、5階から窓を破って降りてきたグラシアに攻撃した後に、刀を鞘に納めてスキルを発動した。以降この瞬間まで抜刀される事はなく、刀は納めっぱなしにされていた。
その時間、約4分30秒。戦闘前に兄弟とグラシアが言い争っていたのが、思わぬ功を奏した。

リーザが素早く剣を引き抜き、刀身を鞘に滑らせて刀を納めていく。

リーザ「その残忍な頭脳…一度シェイクして差し上げましょう」

チン、という小さな鍔鳴りの音と同時に、グラシアの脳に届いた裂傷が頭蓋の中で大爆発を起こした。

⏰:08/01/28 18:00 📱:P903i 🆔:b5xYdHV2


#372 [◆vzApYZDoz6]
グラシアが頭をガクガクと奮わせて白目を向いた。頭部のあちこちに亀裂が走り、どす黒い血液が筋となって噴き出していく。
噴き出した血はグラシアが吐き出した血と混ざりあい大きな血溜りとなり、そこへグラシアがゆっくりと俯せに沈んでいった。
グラシアの赤く硬い皮膚の内側で、心臓は完膚なきまでにその機能を停止させ、脳は原型が分からぬ程に磨り潰され、その体は最早生物的に死んでいた。
グラシアは、今自分が倒れた事すら分かっていないだろう。
3人は血の海に臥すグラシアを一瞥して、交互にハイタッチを交わした。

⏰:08/01/28 22:08 📱:P903i 🆔:b5xYdHV2


#373 [◆vzApYZDoz6]
リーザ「ふふっ、少し可哀想な事をしてしまいましたね」
ライン「いや、俺達をタダ働きさせた罰だぜ」
レイン「全くだ。これがオヤジなら今頃コブラツイスト掛けられてるな」

談笑しながらも、ハル兄弟の顔はどこか浮いていなかった。
ハル兄弟のハートブレイク・ショットは壮絶な親子喧嘩の末に編み出された技。だが相手が父親なら踏み込んだ時点でハル・レインは跳ぶ前に撃墜され、ハル・ラインは懐に入る前に蹴り飛ばされていただろう。
無論、ハル兄弟も父親も本気で戦った事など無い。
父親へだけの技だったハートブレイク・ショットを本気で使ったのが、少し悲しかった。

⏰:08/01/28 22:35 📱:P903i 🆔:b5xYdHV2


#374 [◆vzApYZDoz6]
レイン「さーて、とっとと帰るか」
ライン「先にお袋迎えに行かないとな」
リーザ「あっ、私も藍さんを助けないと」

リーザが慌ててグラシアの元へ駆けていく。それを見ながらハル・レインが伸びをして、階段の元へ踵を返した。
そこへちょうど、息を切らしながら京介達が降りてきた。
こいつらより先にグラシアを倒したのは不味かったかな、等と考えていたハル・レインの視界に写っていたのは、予想外に険しい顔をしている京介や内藤の姿。
どうしたのかと思い話し掛けようとすると、内藤が不意に叫んだ。

内藤「リーザ!!」

⏰:08/01/28 22:58 📱:P903i 🆔:b5xYdHV2


#375 [◆vzApYZDoz6]
内藤の叫び声とほぼ同時に、何かが潰れるような鈍い音が背後から響いた。
ハル・レインが驚いて振り返る。グラシアを倒したと思い、気を抜いて藍を引っ張り出そうとしていたリーザが、赤く膨れ上がった巨大な右手に捕まれていた。
脳を破壊され死んでいた目には光が戻り、心臓を破壊されしぼみかけていた体は再び膨らみ始めている。
リーザの腹部にはグラシアの太い爪が食い込んでいた。

リーザ「かっ…ぐぅ…!」
ライン「馬鹿な!?」
グラシア「くくく、その程度か?」

グラシアが膝をつきながらゆっくりと立ち上がる。藍を左脇に抱えたまま、リーザを掴む右腕を振り回した。

⏰:08/01/29 00:46 📱:P903i 🆔:mb3nTzbM


#376 [◆vzApYZDoz6]
グラシア「そらよ!」

振り回すスピードは凄まじく早い。近くにいたハル・ラインに逃げる暇を与えず回転に巻き込んで、既に意識の無いリーザごと後ろの壁に投げ飛ばした。

ライン「ぐあっ!!」
レイン「ライン!!」
グラシア「おっと、余所見していていいのか?あれだけ離れればツインキャンサーの効果は無いぞ」

グラシアが右腕を引いてハル・レインに向かい振り下ろす。
乱暴に、だが凄まじいスピードで振り下ろされた拳は、ツインキャンサーの効果が切れて身体能力が低下したハル・レインに避けられるものでは無かった。
あっという間に吹き飛ばされ、京介らが居る階段の側の壁に激突し気を失った。

⏰:08/01/29 00:57 📱:P903i 🆔:mb3nTzbM


#377 [◆vzApYZDoz6]
京介「みんな!」
内藤「遅かったか…!」

気絶したハル・ラインをつまらなさそうに一瞥するグラシアを、内藤が今にも飛び出しそうな京介を制しながら見据える。
3人が気を抜ききっていた事や、グラシアの足下にある大量の血溜りから見ても、グラシアが1度やられたのは間違いないだろう。
恐らく再生系の、かなり強力なスキルを使ったはず。同時使用ができるのはライフアンドデスの力か。
内藤はそんな思案を巡らせながら、グラシアの能力を確かめるために少しずつにじり寄る。
グラシアが、視線は逸らさず忍び足でこちらに来る内藤を見て、馬鹿にしたように鼻で笑った。

⏰:08/01/29 23:41 📱:P903i 🆔:mb3nTzbM


#378 [◆vzApYZDoz6]
グラシア「来るなら来い…と言いたいところだが、生憎私は君らと戦う暇など無いのでね。戦いたければ追いかけてくるんだな」

勝ち誇ったように言い放つと素早く後ろを振り返り、京介らの対面の中庭出入口に向かって駆け出した。
内藤がすかさず追い掛けようとするが、グラシアの走るスピードはとんでもなく早い。あっという間に姿を見失ってしまった。

内藤「くそっ!逃げ足だけは早いな」

内藤が一旦止まり、舌打ちをしながら振り返る。こちらに走ってくる京介越しに、ラスダンとアリサに叫んだ。

内藤「俺は奴を追う!!リーザ達を頼んだぞ!!」

⏰:08/01/29 23:57 📱:P903i 🆔:mb3nTzbM


#379 [◆vzApYZDoz6]
了解、という叫び声が返ってくる。
内藤は感謝の意を込めて片手を振り上げ、振り返って京介と肩を並べて走り出した。中庭を出て、再び要塞の中に入ると、グラシアに付いた血液が足跡となり点々と続いていた。

内藤「おっ、ご丁寧に足跡残してくれてるな」
京介「それにしてもあいつ…あんな急いで何処に行くつもりなんだ?」
内藤「さぁな。小便にでも行きたかったんじゃないか?」
京介「えー…」

馬鹿馬鹿しい程に胡散臭そうな顔を作って唸る京介にイラッと来て、内藤が平手を振り上げた瞬間。
遠くから、大きな衝撃音と共に床が小刻みに震え、続いて瓦礫が崩れ落ちるような音がした。

⏰:08/01/30 01:17 📱:P903i 🆔:tKsLXZlI


#380 [◆vzApYZDoz6]
突然の騒音に驚いて足を止める。それはどうやら上の階から発生したようだ。

京介「なんだ?」
内藤「ちっ、我慢できなくなってトイレを破壊しやがったか」
京介「いや絶対違うと思うそれ」

気にはなりつつも再び足跡を追って走り出す。コンクリートに付けられた血の足跡を追い掛けて角を曲がると、そこには階段があった。
余程急いでいたのか、足跡は2段飛ばしで付いている。

京介「あいつ上に昇ったんだ…てことはさっきの音はあいつか?」
内藤「ほら見ろ。グラシアは今、膀胱を抑えて走り回ってる筈だ」
京介「いや…うん。そのネタ引っ張りすぎ」

京介は、正直しんどいと思った。

⏰:08/01/30 02:08 📱:P903i 🆔:tKsLXZlI


#381 [◆vzApYZDoz6]
-バリア発生装置がある部屋-

部屋の4隅にある、発生装置である小さな柱は、全てが逆さになって地面に突き刺さっている。柱に繋がっていた制御ケーブルは引き千切れて、ケーブルが繋がっていた制御装置の画面は電力供給用コードが切断されており光が失われていた。
ガリアスはその制御装置にもたれ掛かかって座り込み、虚に宙を仰いで考えていた。
この発生装置はグラシアが使っていたため、要塞内でも普通の通路から隔離され独立していた。

ガリアス「…ここどうやって出ればいいんだろ」

⏰:08/01/30 22:12 📱:P903i 🆔:tKsLXZlI


#382 [◆vzApYZDoz6]
ガリアスが項垂れるように溜め息をつく。
バリア発生装置があった事すら知らなかったガリアスには、実は隠し扉が存在する事など知る由もなかった。
破ってきた窓まで戻るのは如何せん面倒。この隔離空間から出る方法はガリアスには1つしか思い浮かばなかった。

ガリアス「仕方ねぇな…壁ぶち壊すか」

ガリアスは立ち上がり、もたれ掛かっていた制御装置に手を当てる。
ヴィエロシティーの光速移動能力を制御装置に使って、部屋の壁に全力で叩き付けた。
大きな衝撃音が響き破片が飛ぶ。だが音はそこでは終わらず、瓦礫が崩れ落ちるような音が続いていた。

⏰:08/01/30 23:24 📱:P903i 🆔:tKsLXZlI


#383 [◆vzApYZDoz6]
反響音はどんどん小さくなるが、なかなか消えない。気になって、開けた穴から周囲を見回した。

ガリアス「あれ、ここって…非常階段じゃん」

吹き抜けの空間に、階段が大きな螺旋を描きながら上下に伸びている。複雑な要塞の中で唯一、地下2階から6階の上の屋上まで全エリアと繋がっている階段だが、要塞の端に位置するため普段は使われていない。
だが、その階段を掛け上っている人物が見えた。
その人物は開いた穴から出てきたガリアスを見下ろして一瞥し、何事も無かったかのように視線を戻す。
再び螺旋階段を掛け上がる人物に、ガリアスが叫んだ。

ガリアス「グラシア!!」

⏰:08/01/31 20:13 📱:P903i 🆔:.ut2PBe.


#384 [◆vzApYZDoz6]
体は赤く変色し膨れ上がっていたが、顔は変わっていない。巨大な体躯には狭すぎる階段を凄まじいスピードで上がっていくその人物は、紛れもなくグラシアだった。
ガリアスがすぐに穴を飛び出し螺旋階段を駆け上がる。大きな円周を描きながら勾配を付ける階段の壁には、グラシアがその体躯を擦った跡がついていた。
ガリアスのヴィエロシティーは、自分には能力を使えない。有り得ないスピードで駆け上がるグラシアには到底追い付けなかった。
グラシアがあっという間に屋上まで到達して、屋上の扉を開ける。
それを見たガリアスは、懐からジェイト兄弟に渡された無線機を取り出した。

⏰:08/01/31 20:22 📱:P903i 🆔:.ut2PBe.


#385 [◆vzApYZDoz6]
-要塞屋上-

低めのフェンスに囲まれた空間に、白いコンクリートが広がる。その端にある扉が勢いよく開け放たれ、グラシアが出てきた。
遠くの空を仰いで、唇の端を釣り上げて呟く。

グラシア「よし…いい頃合いだ」

グラシアの視線の先には、こちらに向かって飛んでくる1基のヘリコプターが写っていた。それはただのヘリコプターではなく、迷彩が施され、プロペラは3つ付けられた軍用ヘリコプター。
次第にバラバラと響くローターの回転音が大きくなり、続いてプロペラが生み出した直下風がグラシアの髪をなびかせる。

⏰:08/01/31 20:40 📱:P903i 🆔:.ut2PBe.


#386 [◆vzApYZDoz6]
グラシア「こんな所にもう用はない。逃げる事になるのは癪だがな」
ガリアス「逃げられねぇよ!」

開け放たれたままのドアから、ガリアスが息を切らして現れる。しかし、グラシアが不気味な薄ら笑いを浮かべて振り返ると、ガリアスの体が吹き飛んだ。

グラシア「お前にはどうにもできんよ」

そう言い放つグラシアの背後には、ヘリコプターがもう間近に迫っていた。徐々に減速するヘリコプターを見上げながら、着地点にゆっくりと歩いていくグラシアに、ガリアスが呟く。

ガリアス「言ったろ、逃げられねぇよ」

掻き消される呟きが聞こえていたかのように、鉄の巨人がフェンスの奥から飛び出した。

⏰:08/01/31 20:54 📱:P903i 🆔:.ut2PBe.


#387 [名無しの書き手さん◆vzApYZDoz6]
ブロック「また俺達の出番だぜ!」
フラット「屋上に出たのは間違いだったな!」

ジェイト兄弟の駆る鉄の巨人は、その両足に付いたローラー車輪でフェンスを駆け上る。
身体には飆を纏い、両手にはその体躯に見合う巨大な両刃剣を握り締めて、ヘリコプターに飛び掛かった。

グラシア「なにぃ!?」

両手を天に掲げてヘリコプターを見上げていたグラシアの悲鳴に近い叫び声と同時に、綺麗に両断されたヘリコプターがやりすぎ感のある爆発を起こした。
大きな爆音で揺れる屋上に、鉄の巨人が爆煙を巻いて滑るように着地する。
風が逆巻く両刃剣を構え直し、グラシアに向き合った。

⏰:08/02/01 17:35 📱:P903i 🆔:PBa5kcbA


#388 [◆vzApYZDoz6]
フラット「こっからは逃げられやしねぇぜ!」
ブロック「そんな可愛い子を汗臭い汚い脇に挟むなよ!」

鉄の巨人が、挑発するように刃先をグラシアに向ける。グラシアの体は常人では考えられない程膨張していたが、鉄の巨人はそれよりもさらに大きく、黒光りするその車体が圧倒的な威圧感を持っていた。
中庭から立て続けに造反を食らったグラシアの怒りは既に心頭状態だった。
唇をひくつかせながら何かを言おうとするグラシアの後頭部に、今度は鉄製の何かがぶち当たる。
当たったのドア板。後ろを見れば、ドアが引き千切られて無くなった螺旋階段への入口に、ガリアスが立っていた。

⏰:08/02/01 17:52 📱:P903i 🆔:PBa5kcbA


#389 [◆vzApYZDoz6]
ガリアス「お得意のバリアは使わないのかよ?」

グラシアにドアをぶつけたガリアスが、得意そうな笑みを浮かべる。
グラシアは自分の後頭部にめり込むドアをゆっくり剥がし、地面に立てて置いた。

グラシア「ああ、発生装置に何かしたのはやはりお前か。…ふざけやがって!」

置いたドアを、ガリアスに向かって思い切り蹴りつける。回転しながら凄まじいスピードで元へ飛んでくるドアを、ガリアスは寸での所で避けた。
避けたガリアスの元へ、血走った目と引きつった笑みを浮かべながらグラシアが歩いていく。

グラシア「この怒り、どうしてくれようか?」
フラット「俺達にぶつければ?」

⏰:08/02/02 12:26 📱:P903i 🆔:V0kcwsys


#390 [◆vzApYZDoz6]
両刃剣ジェイトソードの鋒が、グラシアの首筋に突き付けられる。言いながら巨人の左腕が両刃剣の柄に伸び、突き付けた刃と反対側、巨人の懐に伸びる刃とそれに付いた柄を割り折るように、離した。逆手に持つ左手の剣を手元で回し、順手に持ち変え岡っ引きのようにグラシアに突き付ける。
その様は、正に二刀流。
突き付けられた二枚の刀身越しに、グラシアが巨人を睨む。異様に細めたその目からは危険な香りが漂っていた。
それに臆することなく、弟が言い放つ。

フラット「さぁて、兄貴にばっかり見せ場はやれないぜ」

飆が逆巻く巨人が握る双剣に、一瞬紫電が走った。

⏰:08/02/03 22:26 📱:P903i 🆔:8OogwqYw


#391 [◆vzApYZDoz6]
紫電は直ぐ様大きくなり、バチバチと弾ける音を立てながら、刀身を蛇のように包み込む。
足元から全身を逆巻く飆。両手に携えられた武器に宿る稲光。
その様は、巨大な漆黒の体に風神と雷神を一挙に宿したよう。

フラット「『プラズマアウト』。能力は…見りゃ分かるだろ」

稲妻を纏う双剣を突き付けたまま、巨人の首元のコクピットからグラシアを見据える。
対するグラシアは、惚けたような顔で巨人を見上げていた。

グラシア「……うびょ…規…」
ブロック「は?」


蟻が呟いたような小さな声。
次の瞬間、グラシアと後ろで見ていたガリアスが同時に巨人の下へ駆け出した。

⏰:08/02/03 22:45 📱:P903i 🆔:8OogwqYw


#392 [◆vzApYZDoz6]
フラット「え、何?」

戸惑いながらも弟が両腕を操り、稲妻を纏う双剣を振り下ろそうとする。
だがその腕は全く動かない。その事態をいち早く察知した兄が、ならば退くぞと足を操作。
だがこれも動かない。コントローラとなっているハンドルやクラッチ、アクセルは動くのに、鉄の巨人がそれに対し全く反応を示さない。電子回路でも潰されたのか、というずれた考えが兄の頭を過った。
そんな兄弟など余所に、グラシアが拳を腰に構える。ジェイトソードの刀身分、およそ5mの距離をほぼ一足で懐まで詰め寄り、赤く変色し肥大した拳を撃ち据える。
それを阻害したのは、独りでに宙を舞った双剣だった。

⏰:08/02/03 22:59 📱:P903i 🆔:8OogwqYw


#393 [◆vzApYZDoz6]
動かない巨人の手から双剣が飛び出し、うち1本が巨人の懐に飛び込もうとするグラシアの進路を阻むように地に突き刺さる。
立て続けにもう1本がグラシアを狙う。目の前に突き刺さった大剣が邪魔でそれ以上前に踏み込めず、舌打ちをしながら懐から離脱した。

ガリアス「そのスキルは知ってる。あいつらが武器を出しててよかった」
グラシア「…ふん」

グラシアが、阻害したガリアスを賤しく睨み付ける。
突き刺さった双剣が抜かれ、紫電を纏ったままガリアスの頭上に滞空した。

ガリアス「はっきり聞くけど…何秒?」
グラシア「分からない方がスリリングじゃないか?」

⏰:08/02/03 23:11 📱:P903i 🆔:8OogwqYw


#394 [◆vzApYZDoz6]
ガリアス「同時に2つ操るとスピード落ちるんだけどなー」

グラシアとガリアスが踏み込んだ。
今度は剣を突き立てず、払うように斬りかかる。グラシアがそれを往なし殴りかかる所を、もう1本で防ぐ。殴れば剣の紫電にやられるために仕方なく退くグラシアに、払われた剣を突き立てる。
グラシアに圧倒的な体躯とスピードで後れを取る分、ガリアスは双剣とそれに纏う稲妻で補っていた。
素手のゴリラと、特殊警棒を持つ猿のような戦いを、巨人を止められ為す術のない兄弟が眺めていた。

フラット「あれ…出番は?」
ブロック「どうやら俺達は武器提供しただけみたいだ」

⏰:08/02/03 23:25 📱:P903i 🆔:8OogwqYw


#395 [◆vzApYZDoz6]
戦いを見詰める。時間は長いようで短い。鉄の巨人が動きを止めてから、まだ20秒ぐらいしか経っていないだろう。
とその時、戦う2人に異変が起きた。
グラシアが頬を歪ませながら兄弟を一瞥したかと思うと、ガリアスが見計らったように1本の双剣の柄にしがみつく。もう1本を、動けない巨人へ向けて飛ばし付けた。

フラット「ちょっ…!」

弟が、動かないと知りつつ反射的に腕を操作する。
だが、腕は動いた。巨人が紫電を纏う大剣を受け取ると同時に、グラシアがしがみついたままヴィエロシティーの力で離れようとするガリアスに叫ぶように言った。

グラシア「10秒規制!」

⏰:08/02/04 00:02 📱:P903i 🆔:a0Cu9JGg


#396 [◆vzApYZDoz6]
瞬間、剣にしがみついていたガリアスの動きがピタリと止まる。慣性など無視して、反動もなく完全に止まった。
グラシアがそれを尻目に、今度は巨人に向かって踏み込む。巨人の左腕が動き剣を受け止めたのを見ていた兄が、一瞬の判断で足を操作した。
足も動いた。大気を撃ち据えるグラシアの拳をなんとか避けながら、解除していたブラストハイドを再び発動。
凍り付いたように動かないガリアスがしがみついているもう1本の大剣の元へ、地を蹴って駆け出した。
拳が空を切ったグラシアは一旦滑るように止まって再び踏み込み、鉄の巨人へ迫る。グラシアに追い付かれる前に、巨人が大剣を手にした。

⏰:08/02/04 00:12 📱:P903i 🆔:a0Cu9JGg


#397 [◆vzApYZDoz6]
フラット「どらせいっ!」

右手をガリアスがしがみつく剣に伸ばしながら、左手の剣を後ろに振るう。
無造作に振るわれた一閃はかわされたが、右手は剣を逆手に捕まえていた。振り返り様に、腕を回すように剣を払う。

フラット「食らえプラズマ!」

剣に纏っていた紫電が、斬撃を肥大させるように放電した。
まさか剣から電撃が撃たれるとは思っていなかったグラシアに、その電撃が浴びせられる。

グラシア「ぎゃっ!」

いくら筋肉が膨らみ皮膚が硬くなろうとも、元は人間。
声にならない声を上げて、地面を転がるように鉄の巨人から離れた先には、屋上の入口。

内藤「おいおい、みっともねぇな」

⏰:08/02/04 00:24 📱:P903i 🆔:a0Cu9JGg


#398 [◆vzApYZDoz6]
グラシア「くそっ!」

グラシアが飛び退くように離れ、フェンスの側に駆け出す。グラシアが走る先には、ヘリコプターを爆破された時に一旦その手から離れた藍がいた。

内藤「おっと浅香はあんなところにいたのか」

思わず京介が飛び出さんとするところを内藤が制する。その時、入口から更にぞろぞろと声がした。

ライン「おい兄貴、俺達をみっくみくにした赤鬼さんは今、多勢に無勢だ」
レイン「それはいい情報だ。みっくみくにし返してやるか」
リーザ「あなた達、治りが早いですわね…私もシーナがいればこれぐらい…」
ラスダン「駄目だよ喋っちゃ!」
アリサ「内藤ちゃん大丈夫?♪助けに来たわ♪」

⏰:08/02/04 00:38 📱:P903i 🆔:a0Cu9JGg


#399 [◆vzApYZDoz6]
中庭で倒れた3人と介抱していた2人も追い掛けてきた。
ハル兄弟は自己治癒力を片方に順番に注ぎ込んだらしく、傷はすっかり治っている。リーザはラスダンに肩を借り、包帯代わりに腹の傷に巻いているラスダンの上着には血が滲んでいる。アリサは飄々と内藤に視線を送っていた。

内藤「…なんだこの大所帯」

入口の騒がしさを余所に、止まっていたガリアスに動きが戻る。
それを合図に戦える面子が、藍に腕を回し爪を突き立てるグラシアに向き合った。
多勢に無勢、最早追い詰められたグラシアは、とうとう最後の手段に打って出た。

グラシア「…動けば…こいつの命はないぞ」

⏰:08/02/04 00:53 📱:P903i 🆔:a0Cu9JGg


#400 [◆vzApYZDoz6]
京介「てめえ…」
内藤「駄目だな…見ろ、あいつの目。ありゃ犬の目だ」

京介や内藤達の戦える面子がにじりよる。が、グラシアはフェンスを背にしているため、なかなか背後を取れない。
その上、今のグラシアはレッドデーモンのスキルにより身体能力は大幅に上がっている。下手に動けば藍が殺される状況下、京介らは動くに動けなかった。

グラシア「犬の目、か。畜生とでも何でも言うがいい…だがな」

グラシアが爪を藍の首筋に突きつける。浅く刺さった爪の先から血が滲み出た。

グラシア「そうなれば最早関係無いぜ?」

⏰:08/02/05 01:28 📱:P903i 🆔:D0w4yy/Y


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