-Castaway-
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#383 [◆vzApYZDoz6]
反響音はどんどん小さくなるが、なかなか消えない。気になって、開けた穴から周囲を見回した。

ガリアス「あれ、ここって…非常階段じゃん」

吹き抜けの空間に、階段が大きな螺旋を描きながら上下に伸びている。複雑な要塞の中で唯一、地下2階から6階の上の屋上まで全エリアと繋がっている階段だが、要塞の端に位置するため普段は使われていない。
だが、その階段を掛け上っている人物が見えた。
その人物は開いた穴から出てきたガリアスを見下ろして一瞥し、何事も無かったかのように視線を戻す。
再び螺旋階段を掛け上がる人物に、ガリアスが叫んだ。

ガリアス「グラシア!!」

⏰:08/01/31 20:13 📱:P903i 🆔:.ut2PBe.


#384 [◆vzApYZDoz6]
体は赤く変色し膨れ上がっていたが、顔は変わっていない。巨大な体躯には狭すぎる階段を凄まじいスピードで上がっていくその人物は、紛れもなくグラシアだった。
ガリアスがすぐに穴を飛び出し螺旋階段を駆け上がる。大きな円周を描きながら勾配を付ける階段の壁には、グラシアがその体躯を擦った跡がついていた。
ガリアスのヴィエロシティーは、自分には能力を使えない。有り得ないスピードで駆け上がるグラシアには到底追い付けなかった。
グラシアがあっという間に屋上まで到達して、屋上の扉を開ける。
それを見たガリアスは、懐からジェイト兄弟に渡された無線機を取り出した。

⏰:08/01/31 20:22 📱:P903i 🆔:.ut2PBe.


#385 [◆vzApYZDoz6]
-要塞屋上-

低めのフェンスに囲まれた空間に、白いコンクリートが広がる。その端にある扉が勢いよく開け放たれ、グラシアが出てきた。
遠くの空を仰いで、唇の端を釣り上げて呟く。

グラシア「よし…いい頃合いだ」

グラシアの視線の先には、こちらに向かって飛んでくる1基のヘリコプターが写っていた。それはただのヘリコプターではなく、迷彩が施され、プロペラは3つ付けられた軍用ヘリコプター。
次第にバラバラと響くローターの回転音が大きくなり、続いてプロペラが生み出した直下風がグラシアの髪をなびかせる。

⏰:08/01/31 20:40 📱:P903i 🆔:.ut2PBe.


#386 [◆vzApYZDoz6]
グラシア「こんな所にもう用はない。逃げる事になるのは癪だがな」
ガリアス「逃げられねぇよ!」

開け放たれたままのドアから、ガリアスが息を切らして現れる。しかし、グラシアが不気味な薄ら笑いを浮かべて振り返ると、ガリアスの体が吹き飛んだ。

グラシア「お前にはどうにもできんよ」

そう言い放つグラシアの背後には、ヘリコプターがもう間近に迫っていた。徐々に減速するヘリコプターを見上げながら、着地点にゆっくりと歩いていくグラシアに、ガリアスが呟く。

ガリアス「言ったろ、逃げられねぇよ」

掻き消される呟きが聞こえていたかのように、鉄の巨人がフェンスの奥から飛び出した。

⏰:08/01/31 20:54 📱:P903i 🆔:.ut2PBe.


#387 [名無しの書き手さん◆vzApYZDoz6]
ブロック「また俺達の出番だぜ!」
フラット「屋上に出たのは間違いだったな!」

ジェイト兄弟の駆る鉄の巨人は、その両足に付いたローラー車輪でフェンスを駆け上る。
身体には飆を纏い、両手にはその体躯に見合う巨大な両刃剣を握り締めて、ヘリコプターに飛び掛かった。

グラシア「なにぃ!?」

両手を天に掲げてヘリコプターを見上げていたグラシアの悲鳴に近い叫び声と同時に、綺麗に両断されたヘリコプターがやりすぎ感のある爆発を起こした。
大きな爆音で揺れる屋上に、鉄の巨人が爆煙を巻いて滑るように着地する。
風が逆巻く両刃剣を構え直し、グラシアに向き合った。

⏰:08/02/01 17:35 📱:P903i 🆔:PBa5kcbA


#388 [◆vzApYZDoz6]
フラット「こっからは逃げられやしねぇぜ!」
ブロック「そんな可愛い子を汗臭い汚い脇に挟むなよ!」

鉄の巨人が、挑発するように刃先をグラシアに向ける。グラシアの体は常人では考えられない程膨張していたが、鉄の巨人はそれよりもさらに大きく、黒光りするその車体が圧倒的な威圧感を持っていた。
中庭から立て続けに造反を食らったグラシアの怒りは既に心頭状態だった。
唇をひくつかせながら何かを言おうとするグラシアの後頭部に、今度は鉄製の何かがぶち当たる。
当たったのドア板。後ろを見れば、ドアが引き千切られて無くなった螺旋階段への入口に、ガリアスが立っていた。

⏰:08/02/01 17:52 📱:P903i 🆔:PBa5kcbA


#389 [◆vzApYZDoz6]
ガリアス「お得意のバリアは使わないのかよ?」

グラシアにドアをぶつけたガリアスが、得意そうな笑みを浮かべる。
グラシアは自分の後頭部にめり込むドアをゆっくり剥がし、地面に立てて置いた。

グラシア「ああ、発生装置に何かしたのはやはりお前か。…ふざけやがって!」

置いたドアを、ガリアスに向かって思い切り蹴りつける。回転しながら凄まじいスピードで元へ飛んでくるドアを、ガリアスは寸での所で避けた。
避けたガリアスの元へ、血走った目と引きつった笑みを浮かべながらグラシアが歩いていく。

グラシア「この怒り、どうしてくれようか?」
フラット「俺達にぶつければ?」

⏰:08/02/02 12:26 📱:P903i 🆔:V0kcwsys


#390 [◆vzApYZDoz6]
両刃剣ジェイトソードの鋒が、グラシアの首筋に突き付けられる。言いながら巨人の左腕が両刃剣の柄に伸び、突き付けた刃と反対側、巨人の懐に伸びる刃とそれに付いた柄を割り折るように、離した。逆手に持つ左手の剣を手元で回し、順手に持ち変え岡っ引きのようにグラシアに突き付ける。
その様は、正に二刀流。
突き付けられた二枚の刀身越しに、グラシアが巨人を睨む。異様に細めたその目からは危険な香りが漂っていた。
それに臆することなく、弟が言い放つ。

フラット「さぁて、兄貴にばっかり見せ場はやれないぜ」

飆が逆巻く巨人が握る双剣に、一瞬紫電が走った。

⏰:08/02/03 22:26 📱:P903i 🆔:8OogwqYw


#391 [◆vzApYZDoz6]
紫電は直ぐ様大きくなり、バチバチと弾ける音を立てながら、刀身を蛇のように包み込む。
足元から全身を逆巻く飆。両手に携えられた武器に宿る稲光。
その様は、巨大な漆黒の体に風神と雷神を一挙に宿したよう。

フラット「『プラズマアウト』。能力は…見りゃ分かるだろ」

稲妻を纏う双剣を突き付けたまま、巨人の首元のコクピットからグラシアを見据える。
対するグラシアは、惚けたような顔で巨人を見上げていた。

グラシア「……うびょ…規…」
ブロック「は?」


蟻が呟いたような小さな声。
次の瞬間、グラシアと後ろで見ていたガリアスが同時に巨人の下へ駆け出した。

⏰:08/02/03 22:45 📱:P903i 🆔:8OogwqYw


#392 [◆vzApYZDoz6]
フラット「え、何?」

戸惑いながらも弟が両腕を操り、稲妻を纏う双剣を振り下ろそうとする。
だがその腕は全く動かない。その事態をいち早く察知した兄が、ならば退くぞと足を操作。
だがこれも動かない。コントローラとなっているハンドルやクラッチ、アクセルは動くのに、鉄の巨人がそれに対し全く反応を示さない。電子回路でも潰されたのか、というずれた考えが兄の頭を過った。
そんな兄弟など余所に、グラシアが拳を腰に構える。ジェイトソードの刀身分、およそ5mの距離をほぼ一足で懐まで詰め寄り、赤く変色し肥大した拳を撃ち据える。
それを阻害したのは、独りでに宙を舞った双剣だった。

⏰:08/02/03 22:59 📱:P903i 🆔:8OogwqYw


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