-Castaway-
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#419 [◆vzApYZDoz6]
京介「お前、本当に馬鹿だな」
グラシア「なにぃ!?」
京介が、足下で蹲るグラシアを小馬鹿にしたように冷たく見下ろす。
京介「俺のスキルは『他者の行動選択支配』。俺のスキルは『支配者』で、自動的に身体強化の付加がつく。お前が言ってたんじゃなかったっけ?」
グラシア「ぐっ…くそぉ!!」
蹲っていたグラシアが急に体を上げて、京介の顔面目掛けて拳を撃つ。グラシアの拳は大気を切り裂き、その威力は決して小さくはない。
京介「動くな!」
だが、京介の一言でいとも容易く停止する。
次の瞬間に撃ち出された京介の拳は、グラシアに視認させる暇も与えず顔面をえぐり抜いた。
:08/02/09 19:55 :P903i :Fj4wlIII
#420 [◆vzApYZDoz6]
グラシアの表情が歪み、地を転がるように勢いよく体が吹き飛ぶ。何度も転がった後もんどりうって、うつ伏せに停止した。
グラシア「ぐふっ…」
ゆっくりと地から離した顔は鼻が潰れて鼻血が滴り、京介の拳が当たった部分が赤く変色して、まるで顔がへこんでいるように見えた。
顔をしかめて、止めどなく溢れる鼻血をなんとか止めようと鼻を押さえる。そのまま顔を上げたグラシアの視界に、ゆっくりとこちらに歩いてくる京介が写った。
グラシアは頭では逃げなければ、と考えていても、顔と脇腹の痛みと謂れのない恐怖で体がすくみ、卑しく睨み付ける事しかできなかった。
:08/02/09 20:08 :P903i :Fj4wlIII
#421 [◆vzApYZDoz6]
京介「お前はもう謝っても許さないぜ?」
京介は歩みを止めずに、唇の端を軽くつり上げながら言い放つ。
地に這いつくばって見ていたグラシアは、愕然と肩を落としわなわなと震わせた。
今まで自分が一番格上だったと思い込んでいた脳に、上には上がいるという事実を叩き付けられる。
京介の毅然とした態度の前に、怒りや屈辱はもとより絶対的な敗北感すら生まれてきていた。
だが、ここまで来て逃げる訳にもいかなかった。
グラシア「俺は…この世界を支配してやるんだ」
すくむ足を抑え立ち上がる。
京介は眉をハの字に曲げ、端から見れば滑稽に見えるグラシアを悲しそうに見詰めた。
:08/02/09 21:06 :P903i :Fj4wlIII
#422 [◆vzApYZDoz6]
京介「何でだ?何でそんなに…」
グラシア「五月蝿い…!お前に俺の気持ちが分かってたまるか!」
グラシアが京介に拳を突き立てる。
だがその拳には力が込もらず、京介の胸に弱々しく埋まる。そのまま崩れ落ち、京介の足下にもたれ掛かった。
グラシア「俺はまだ戦える…お前を倒して、世界を支配して…認めてもらうんだ…!」
すがるように何度も力の入らない拳を振る。
京介は眉をしかめて苦い表情を浮かべた。
京介「…もう無理だよ」
グラシア「五月蝿い…こんな無様を晒すわけにはいかないんだ!」
グラシアが更に拳を叩きつけようと振りかぶったその時。
2人の隣に、再び扉が出現した。
:08/02/09 22:07 :P903i :Fj4wlIII
#423 [◆vzApYZDoz6]
グラシア「これは…」
京介「うわっ!」
突き破られたように勢いよく扉が開き、京介とグラシアが吹き飛ぶように中へ吸い込まれた。
京介が思わず固く目を瞑る。一瞬浮遊感が生まれ、すぐに地を転がるように体が揺さぶられた。
草原に飛ばされた時と同じ感覚に、今度は素早く目を開ける。
内藤「よっしゃ成功」
藍「京ちゃん!」
最初に見えたのは藍の姿。その側に内藤が、さらに向こうでディフェレスに来て出会った面々がこちらを見ていた。
屋上に戻ってきたのか、とぼんやり考えていた京介に、藍が飛び付くように駆け寄る。
藍「よかった…私のせいでどこかに消えちゃったもんね」
:08/02/10 11:58 :P903i :F7TzN6YU
#424 [◆vzApYZDoz6]
京介の顎の下に藍の顔がすっぽり収まる。
藍がさらわれたのはつい数時間前なのに、京介は起きている藍を何年か振りに見た気がした。
京介はスキルを発動したままで、体は紅く光っており髪は逆立っている。
京介「ああ…悪かっ」
藍「てゆうかその髪とか何!?」
京介「たぶっ!!」
腕を回そうとした京介の顎に、勢いよく顔を上げた藍の頭頂部が激突した。
藍「あっ…ごめん!」
京介「いや、大丈夫…」
内藤「お前ら、そうゆう事は後にしな」
内藤が横を見ながら2人を諌める。内藤の視線の先には、まだ鼻血を出したまま蹲っているグラシアがいた。
:08/02/10 13:05 :P903i :F7TzN6YU
#425 [◆vzApYZDoz6]
京介「…なぁ、あいつに何があったんだ?」
京介が苦い表情を浮かべながら、グラシアを眺める。
草原で自分にすがるような態度を見せた事が少し気になっていた。
ハルキン「俺が話してやろう。いや、俺が話すべきだな」
京介の意思を理解しているかのように、ハルキンが唐突に、静かに口を開く。
それまで黙って俯いていたグラシアが、機嫌悪そうに上目でハルキンを睨んだ。
グラシア「話す必要は無い」
ハルキン「他の連中も知らん事だ。今が機だろう」
何か言いたげにしていたグラシアをハルキンが睨み付け黙らせる。皆を見回し、咳払いを切って話し出した。
ハルキン「…この話は10年前まで遡る」
:08/02/11 16:36 :P903i :hd/VybYQ
#426 [◆vzApYZDoz6]
ハルキン「10年前…ディフェレスはローシャのある施設で、ある研究が行われていた」
京介「研究?」
ハルキン「強大な能力の付加研究…地球人のレンサーが持つ強力なスキル、それをディフェレスの人間にも発現させよう、って研究だ」
その研究は、地球人を調べる事から始まった。
地球のレンサーを何人か、神隠し等といった現象に見せ掛けて秘密裏にディフェレスに運び込み、体細胞の構造から食生活に至るまで細かく分析した。
ハルキン「結果、レンサースキルを司る遺伝子から、地球人だけが持つ特殊な細胞が発見された」
:08/02/12 00:33 :P903i :T5HVcZKQ
#427 [◆vzApYZDoz6]
本来、スキルの遺伝子は誰にでもあるもの。それをたまたま発現できた者が、レンサーと呼ばれた。
ハルキン「その特殊な細胞自体はどの地球人も同じものを持っていて、持って生まれた資質や生活環境によって姿を変える事も分かった」
研究者は孤児院や兵隊学校等、様々な場所から資質と才能に溢れた子供を集め、その特殊な細胞をレンサースキルを司る遺伝子に組み込んだ。
また、スキルを確実に発現させる為に能力開発手術を施し、同時に手術と人工発現の痛みに耐えられるよう訓練させた。
ハルキン「手術は問題なく成功。子供達は様々な、かつ強力なスキルを発現させる事に成功した」
:08/02/12 00:44 :P903i :T5HVcZKQ
#428 [◆vzApYZDoz6]
ハルキン「中には、スキルは発現しても強力じゃかった子供もいた。…その子供は失敗作として処分されたがな」
成功した子供達のスキルは、戦闘向きの強力な能力や超絶的な回復能力、人の心を読む能力など、ありとあらゆるもの。
子供達はその施設内で、スキルの性質に合った様々な訓練を受けて育った。
ハルキン「子供達はディフェレスの各地でそのスキルを生かす予定だった。だが、世の中そう上手くはいかない」
スキルを持った子供達の中でも、特に際立って強大な力を発揮する子供がいた。
その子供も小さな頃は従順だったが、歳を重ねるに連れて反抗的に、また性格も残虐になっていった。
:08/02/12 01:02 :P903i :T5HVcZKQ
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