・・・ゆめみる魚・・・
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#614 [向日葵]
もうすぐ冬が来る。
しかしその前に、私達3年生は受験と言う1つの山を越えなければならなかった。
今まさに受験シーズン。
終わった人もいるけれど、大抵の人がこれからなので、教室は殺伐とした空気が漂っている。
参考書や単語帳とずっとにらめっこしている人や、ひたすら書いて覚えたり問題集をやってる人もいる。
そんなピリピリした雰囲気の中、なんの心配もせず呑気に人間観察なんてしちゃってる私こと葛(カズラ)みかげは、受験には縁が無かった。
:08/04/09 00:20
:SO903i
:☆☆☆
#615 [向日葵]
「ちょっとみかげ……」
さっきから目の前で問題を解いている友人の増田 多香子(マスダ タカコ)が、私をじとっと睨みつける。
目で「なんだ」と応じれば、多香子は眉にしわを寄せた。
「ずるい……ずるいよみかげはぁぁぁ……。1人だけそんなホワホワした雰囲気漂わしてぇぇっ」
受験が1週間後に迫っている多香子は情緒不安定になっていた。
しかし多香子は推薦で受けるので、「そんなに頑張らなくても」て言うと、「その油断がダメなのよ!」と怒られた。
:08/04/09 00:25
:SO903i
:☆☆☆
#616 [向日葵]
私が受験と縁遠いのは理由があった。
休み時間のガヤガヤした音に、アナウンスの音が混じる。
<葛みかげ、葛みかげ。至急社会科準備室まで来なさい>
「あ、呼ばれてる」
「裏切り者ぉぉぉ!!」
ついに泣き叫ぶ多香子を放置して、私は社会科準備室へと急いだ。
前より少し伸びた髪の毛が、歩く風によって揺れる。
社会科準備室のドア前に来て、ノックをすれば、中から返事が返ってきた。
:08/04/09 00:30
:SO903i
:☆☆☆
#617 [向日葵]
「失礼します」
「おう入れ」
1歩入り、ドアを閉めて、いつも通り鍵も閉めておく。
そして、意地悪そうな笑い声を出した後、低く甘い声が聞こえる。
「どうした?早くこっち来いよ」
ドがつく程Sっぽいこの人は、松川 真一。
ここの教師。私の同居人。
……私の恋人……。
「真に呼びだされたせいで多香子に泣かれた」
:08/04/09 00:35
:SO903i
:☆☆☆
#618 [向日葵]
声をあげて笑う真を私は睨む。
コイツはただ会いたいからと言う理由だけで私を呼び出す。
これはお決まりパターンなのだ。
正に職権濫用。
なかなか真に近づかない私に痺れをきらしたのか、真自ら私の元へやって来て、手を引っ張り、握ったまま自分はイスに座った。
「嫌だった?俺に会うの」
にこりと笑って首を傾げるものだから、嫌じゃないけど嫌とは言えなくなった。
だからと言って「会いたかった」なんて乙女チックな事、私が言える訳が無い。
:08/04/09 00:40
:SO903i
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#619 [向日葵]
でも真のその仕草に私の中の少ない乙女チック思考の心にグッときて、顔が赤くなるのを自覚しながら口を閉ざした。
そんな私を面白がるように、少し私の手を引っ張って、頬に唇を寄せた。
「ちょっ……!」
急いで身を引いても、手を握られたままだから逃げるに逃げられない。
そんな慌てた私に満足した真のニヤッとした意地悪な笑みに、更に顔の体温は上がる。
「聞いてるのに何も言わない子にはちゃんと教えてあげるのが教師だろ?」
:08/04/09 00:47
:SO903i
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#620 [向日葵]
なんかそれ違う……。
本当はこんな関係いけない。
同居人だとは言え、私は生徒、真は教師。
それでも想いは止められず、私達はついに……
「卒業するまでにはもうちょい素直になって欲しいな。なんてったって俺達夫婦になるんだから」
そう。
私が受験と縁遠い理由。
それが今、真が言った事なのだ。
知ってるのは多香子だけ。
進路調査では、名前こそ出さなかったけれど(てか出したらえらい事になるけど)結婚するとしてある。
:08/04/09 00:55
:SO903i
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#621 [向日葵]
……と言うか……、3年に上がって担任が真になったので、助かったのだ。
これが他の教師であれば結婚となれば相手を聞かれそうだ。
ちなみにそんな場合は「親戚の家の仕事を手伝う」とか言う予定だった。
実際、真繋がりの親戚で、旅館を経営してる人がいるらしく、嘘を言ってる訳ではないからなんとでも通るのだ。
真曰く
「あすこのおっさんとおばさんは俺が可愛いから何でも言う事聞いてくれるだろうからなー」
:08/04/09 01:00
:SO903i
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#622 [向日葵]
と言った。
心の中で「どうなってんだよアンタの親戚」と突っ込んだのは言うまでもない。
「素直……って、私はこれで普通なんだから素直も何もないでしよ」
「もっと自分から抱きつくとか好きって囁くとかさー」
「酔っ払ってんの?」
こんなやりとりしょっちゅうだ。
真はどうにかして私を乙女チックに仕上げたいらしい。
その分真は抱きつくわ好きと囁くわ、あげくの果てにはキスだ。
:08/04/09 01:05
:SO903i
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#623 [向日葵]
「真も知ってる通り、私は遂この間まで恋愛の“れ”の字も知らなかった小娘なの」
「“小娘”って分かるようになった辺り成長したな」
「……その“小娘”に手ぇ出したのは誰……」
真はにーっこり笑うとひらひら手を振る。
そうだ。真は私達世代には興味ないとか言ってたくせにちゃっかり私に手を出したんだった。
結局理想なんて意味も無いものなんだと真を見て感じる。
:08/04/12 01:37
:SO903i
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