・・・ゆめみる魚・・・
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#1 [向日葵]
こんにちわ向日葵です(。・ω・。)
良ければ読んで下さい

感想板もありますんで良ければ立ち寄って下さいね
中傷・批判はお控え下さい

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⏰:08/01/06 15:37 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#2 [向日葵]
小さい頃、お母さんがよく話を聞かせてくれた絵本だったの。

私の唯一の宝物。










・・・ゆめみる魚・・・

⏰:08/01/06 15:40 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#3 [向日葵]
1P・ゆめの始め

あるところに1匹の魚がいました。

でも魚はいいます。

『うみはあお。さまざまな色の魚たち。ぼくは、とうぜんのようにあるまわりのものにあきてしまったよ。』

そんな魚に、ある魚がいいました。

『じゃあ目をとじて、ゆめをみてごらん?』


・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「―――っ。か……ったら。みかげぇぇっ!!」

⏰:08/01/06 15:46 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#4 [向日葵]
「……っっ?!」

机に、若干よだれが垂れていた。
それをわからない様に、枕にしていたタオルで拭く。

「アンタ寝すぎっ。現国の先生が『葛ー!葛ー!』って叫んでたわよ!」

「寝る子は育つから……。」

私は、葛 みかげ(かずら みかげ)。17歳を迎えたばかり。

趣味・・・寝る事。

ぼーっとしながら友人である多香子の叫びを聞いてると、ブレザーの内ポケットにいれてる携帯のバイブが鳴った。

⏰:08/01/06 15:53 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#5 [向日葵]
メールを見て、小さくため息を漏らす。

携帯をまたポケットにしまう。
そして立ち上がった。

「あたし、屋上で寝るから。」

「は?まだ寝る気?」

「次の時間になったら帰るから。」

それを言うと、多香子は黙った。
多香子だけが、私の事情を知ってくれてる。

「じゃあね。」

それだけ言って、鞄を持って、私は教室を出て行った。

⏰:08/01/06 15:56 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#6 [向日葵]
私は、私の両親は、4歳の頃車事故で亡くなった。

それ以来、父方、母方の家族に引き取られ、と言っても2人には兄弟はいないからおばあちゃんとかおじいちゃんだったけど。

そんなこんなで、生活していた。

でも、誰にでも、死は訪れるもので……私の血縁は、誰もいなくなった。

それからは、どういう繋がりかもわからない親戚の家を転々としてる。

今日もそう。

親戚は私が邪魔らしい。
引っ越す家が決まったのだと言う。

⏰:08/01/06 16:01 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#7 [向日葵]
もう慣れた。

いづれはそうなってしまう決まった日常には、飽きてしまった。

刺激が欲しい……。

だから私は寝る。夢を見る。

趣味・・・寝る事。
……否、夢を見る事……。

屋上のドアを開ければ、春らしい爽やかな、だけど暖かい風が私の体を撫でた。

日当たりのいい場所に座って、コンクリートの壁にもたれ目を瞑る。

「どんな夢を……見るかなぁ……。」

⏰:08/01/06 16:05 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#8 [向日葵]
――――***――――

[おかーさぁん。ご本よんでちょーぉだぁいっ!]

いつもの本を持って、お母さんに駆け寄る。

お母さんは優しく微笑んで私を柔らかく抱き締める。

[みかげは、これが好きね。]

[うん。いちばん大好きぃっ。]

場面は変わって、私はお母さんの膝で寝ていた。

[寝ちゃった?]

そうお母さんに囁くように言ったのはお父さんだった。

⏰:08/01/06 16:08 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#9 [向日葵]
[うん。]

[風邪ひいちゃいけないから、これ、かけておくね……。]

フワリとした感触。

それは夢じゃなくて現実のような気がした私は、静かに目を開けた。

眩しい……。
夢から覚めてしまった。

「女子高生。こんな所でサボリか?」

本をペラ……とめくる音が聞こえた。
それを合図に視線を巡らせば、自分にスーツのブレザーがかけてあった。

⏰:08/01/06 16:13 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#10 [向日葵]
ちっ……。
教師に見つかったか。

「どうしようがあたしの人生だから。」

「別に説教する気はない。聞いてるだけだ。」

声の主は、もたれてるコンクリートを曲がったすぐそこ、丁度日陰になってる場所に座ってるらしい。

なんか聞いた事がある声だ……。
誰だっけ。

「眠いだけ。アンタこそ、何してんの?」

「職員室はタバコくさいから読書の妨げになる。」

⏰:08/01/06 16:16 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#11 [向日葵]
そしてまたペラリと聞こえた。
私は声の主を確認する。

そこには、24、5の、眼鏡をかけた男がいた。

知ってるコイツ……。

地理の仏頂面で有名な松川 真一(まつかわ しんいち)。

顔はカッコイイのに仏頂面のせいで皆から怖がられてる損してる気の毒な奴。

「タバコ……嫌いなの?」

「煙吸って何が楽しいんだかな。」

「フゥン。」と適当に答えて、「そういえば」と携帯を見る。
今から帰れば約束の時間には間に合うかな。

⏰:08/01/06 16:24 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#12 [向日葵]
「んじゃね。松川せんっせ。」

嫌味っぽく言った。
でも相手は別に気にした風もなく、本に目を向けたままだ。

「じゃあな。葛 みかげ。」

声を後ろで聞きながら、私は下駄箱へ向かって階段を下りて行った。

「……あれ。」

1階までもうちょっとの時、私は違和感を覚えた。

「アイツ……。」

何で私の名前知って……。

⏰:08/01/06 16:27 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#13 [向日葵]
いや、別に不思議でも何でもないか。

熱血教師なら全校生徒の名前くらい覚えてそうだし。
もっとも、アイツはそんなタイプには見えないけど。

「さぁ……って。行きますか。」

ありきたりの日常へ。

――――――……

引越してきた次の家は、こざっぱりしていた。
どうやら今度の相手は1人暮らししてるらしい。

その相手は今は仕事中だから、夜になったら顔合わせする。

⏰:08/01/06 16:31 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#14 [向日葵]
1人暮らしの割りに大きなマンション。
あと2人住んでも余裕ではないだろうか。

そんな事を思いながら、運ばれた荷物を片付けていく。

荷物は服と勉強道具……そして。

「ゆ、め、み、る……魚……。」

この絵本のみ。

他人の家と言えどもう私の家なので、私は遠慮なくリビングにあったやたらデカイソファに寝転ぶ。

本をめくる。

ポツンと1匹魚がいたのを見たところで私は眠気が唐突に私を襲った。

⏰:08/01/06 16:40 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#15 [向日葵]
―――――――……

パタンと音がしたので私は目を覚ました。

いつの間にやら部屋は暗くなっていた。
つまり夜だ。

「家主が帰ってきたのかな……?」

気づけば自分の体にちゃんと薄い布団がかぶせてあった。
今日はあの教師といい、親切にしてもらってばかりだなぁと思った。

挨拶した方が……。
と、パタンと音がして閉まっただろうドアを静かに開けば、後ろ姿が見えた。

⏰:08/01/07 00:39 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#16 [向日葵]
でも、仕事の最中なのか、パソコンの明かりのみだったから、どんな人物かはわからなかった。

邪魔しちゃいけないかと気をきかせ、また静かにドアを閉めた。
挨拶は、また明日でも大丈夫だろう。

・・・・・・・・・・・・・・・・

朝になった。

携帯のアラームで目が覚めた私。
どこの部屋を使えばいいか分からなかったので、ソファの上で寝たのが間違いだった。

体の節々が痛い……。

さっさとシャワーでも浴びて、学校へ行こう。

⏰:08/01/07 00:44 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#17 [向日葵]
と、後ろを振り向くと、テーブルの上にラップをかけたお皿がいくつかあった。

どうやら朝ごはんらしい。

今度の住居人は……放任主義の親切屋?

変な新しい家主に軽い感謝をこめて、食事をする。
すると隅っこに鍵と置き手紙を発見。

<君の鍵です。戸締まりして下さい。>

わしゃ付き合ってる女か。

とツッコミをいれながらふと字が気になった。

⏰:08/01/07 00:52 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#18 [向日葵]
多分家主は昨日の後ろ姿から見て男だとは分かった。
しかし、この字はどこかで見覚えが……。

でも私は然程気にせずに学校へ行く準備をして家を出て行った。

「あ。」

学校へ行く途中に気づく。
家の表札見れば良かった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・

「みかげっ。どうよ新居。」

多香子が興味深々に聞いてくる。

「まだ家主と顔合わせてない。でもどうやら男。」

⏰:08/01/07 00:56 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#19 [向日葵]
「若いっ?ってか1人暮らし?!」

「んー。そうみたい。」

「キャーッ!!」と何故か興奮する多香子をよそに、私はあともうちょっとで繋がりそうな記憶のパズルをはめ込もうとしていた。

何かひっかかる。

でもそれが何か分からない。
いや、半分は理解出来てる気がするんだけど……でもはっきりとはしない。

結局、パズル遊びは終りにした。

「げげぇ……、松川だぁ……。あたしアイツ苦手なんだよね。」

⏰:08/01/07 01:05 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#20 [向日葵]
私の後ろに身を隠す多香子の視線の先には、相変わらず何を考えてんだか分かんない松川は、いつも通り難しそうな顔して歩いてきた。

「昨日はどうも。」

あれ、何話しかけてんだ私。

私の声に、松川は「お前か。」みたいな視線を投げて横を通って行った。

「みかげ、どうしたの?いつもなら「教師ウザイ」とか言ってよりつかないアンタなのに。」

でも、松川はなんだか違う気がした。
不思議なその雰囲気が、妙に惹き付けられる。

これは別に、深い意味はない。

⏰:08/01/07 01:09 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#21 [向日葵]
そう思うと同時に、私の背中がぞくぞくとした。

もしかしたら、松川がなんらかの刺激を私にくれるんではないか。

まるで新しい玩具を買ってもらった子供のように私は密かにワクワクしだした。

「アイツ……いけるなぁ……。」

「は?!みかげ男の趣味悪すぎっ!」

「そんなんじゃないっつーの。多香子は妄想しすぎだ。」

松川ねぇ……。
覚えといてやろうじゃないか。

⏰:08/01/07 01:13 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#22 [向日葵]
「ねーねーみかげ。それより今日買い物いかない?」

「アンタ今月お金ヤバイって言ってたじゃない。」

「臨時収入ゲット!だから、ね?」

まぁ……街中は意外と刺激的で好きだけどね。

「あ゙!!次地理!松川!」

あーそういえばそうだった。
なんかアイツとは縁があるなぁ。無駄に。

ノロノロ教師に入ろうとすると、頭を後ろから小突かれた。

⏰:08/01/07 01:18 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#23 [向日葵]
「早く入れ。」

松川だった。

少し避けて、松川を先にいれる。

その時、フワッと松川から匂いが漂ってきた。

香水のような、洗剤のような。
無意識の内に、松川を掴む。

「……何か?」

「あ?いや……ゴメン。」

またパズルのピースが増えた。またはまりそうな溝を、頭の中で探す。

そう。
あの匂い、どこかで嗅いだ覚えがあったのだ。

⏰:08/01/07 01:21 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#24 [向日葵]
>>22訂正です

教師に入ろう×
教室に入ろう○

です

⏰:08/01/07 01:32 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#25 [向日葵]
松川の不審者を見るような目を避けながら、私は席についた。

何かが私の中から抜け落ちてる感覚がする……。
それがなんなのかが全く分からない。

結局私は、授業という授業は全て寝てしまう居眠り常習犯なのに、そればかりが気になって、松川の顔をずっと見ながら1時間を過ごしてしまった。

チャイムが鳴り、終わって出て行こうとした松川を私は止めた。

「ねぇ。話あんだけど。」

「話?居眠りばかりしてつ単位の事が心配になったか、」

⏰:08/01/08 00:47 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#26 [向日葵]
「単位なんかどーだっていいよ。それより、なんか重要な事がある気がする。」

「……何?」

とは言え、いざ伝えるとなると難しいもので、何を言えばいいかさっぱりわからなくなった。

思わず、しどろもどろする。

「いや……だから、その……。」

「用がないならいいか?俺は暇じゃないんだ。」

逃してなるものか。

松川のカッターシャツの袖をガッツリ掴む。

⏰:08/01/08 00:50 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#27 [向日葵]
「アンタ、何か私に用事ない?」

松川が眉をひそめる。
仏頂面に更に磨きがかかるが、私は知ったこっちゃない。

「昨日から何か違和感あんだよね。アンタ関連限定で。だから、その……何かないの?!」

自分でも意味がわからなくなりそうで逆ギレしそうになっているのを黙殺しながら松川の反応を待った。

「……葛……。」

お……っ?
何かくるか?

「先生に向かってアンタ呼ばわりするな。小娘。」

⏰:08/01/08 00:56 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#28 [向日葵]
これには開いた口が塞がらない。

質問とは的外れな答えをされた上“小娘”呼ばわりされた。

苛立ちと驚愕で茫然としてしまった。

「用はそれだけか。じゃあな。」

あっさりと松川は私の前からいなくなってしまった。

でも……。

「アンタ何松川に話かけてんのよっ。」

「くぅあ――……っ。」

⏰:08/01/08 00:59 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#29 [向日葵]
多香子の言葉を右から左へ受け流し(脳内ソングはもちろんムーディ)ながら、私は興奮に震えていた。

やっぱり松川は何かある……っ。
アイツは……絶対逃さない……っ。

とことん私を楽しませてくれるだろう。

「獲物ゲット……。」

私の目が、怪しく光る。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ん?」

多香子との買い物途中、スーパーの前を通り過ぎると、中にスーパーが死ぬほど似合わない奴がいた。

⏰:08/01/08 01:05 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#30 [向日葵]
顔が不自然にニヤける。

「多香子、先に行って。後で追いつくから。」

「んー。分かった。」

スーパーに入り、奴の背後に忍びよる。

「松川ーっ!」

軽く叫びながら呼んだのに、相手は全く動じなかった。

「脅かすつもりだったろうが、バレバレ。」

そう言って指差した方の食品売り場には、鏡がついてた。

「つまんねー。ってか買い物?アンタが買い物カゴぶらさけだてんの似合わないね。」

⏰:08/01/08 01:10 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#31 [向日葵]
「急に養わなきゃいけなくなったんだ。ホントはコンビニ弁当でいつも済ましてるけど、多分そうもいかないだろうからな。」

「は?!アンタ奥さんいた……や、いないね。」

左手の薬指を見たが、指輪らしきものはどこにもなかった。

「嫁さんじゃないけどそんなもんだ。」

「どういう事?」

「押し掛け女房みたいなの。」

「迷惑?」

「別に。ペットみたいな感じだから。」

⏰:08/01/08 01:14 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#32 [向日葵]
ペット……。

松川が子犬をムツゴロウ並に可愛いがってる姿を瞬間的に想像した。

スーパーに現在いる事より更に似合わない。

自分の想像ながら、私は吹き出した。

「やめて――っ!!アンタにペットとか永遠に似合わないからぁぁっ!」

お腹を抱えてケラケラ笑う私を、松川は不快そうにせずじっと見た。

私は涙を拭きながら松川に気づく。

「あん?何か?」

⏰:08/01/08 01:18 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#33 [向日葵]
「ちゃんと笑うんだな。」

「は……?」

「いや別に。ホラ、とっとと帰れ。」

そう言って、スタスタとレジへ進んで行ってしまった。

聞きたい事が頭からスコーンとどこかにいってしまった事を感じながら、私は松川の言葉を頭の中で反芻させていた。

「“ちゃんと笑う”……?」

どういう事?
私は今までちゃんと笑えてなかったって事?

⏰:08/01/08 01:23 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#34 [向日葵]
そんな事はない筈。

楽しければそれなりに笑ってた事だって……。

「それ…なり…。」

つまり、心の底から笑っているようにはアイツの目に映らなかったって訳か……。

相変わらず、何考えてるかわかんねー奴だな。

そう思いながら、刺激を得られるワクワク感とはまた違う気持ちがくすぶり始める。

それが何なのかは、全然分からないが……。

ぼんやりしながらスーパーを出ると、後ろから袋を持った松川が続けて出てきた。

⏰:08/01/10 12:04 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#35 [向日葵]
「どこか行くのか?」

「関係ないでしょ。」

「ま、迷惑かけない内に早く帰れよ。」

「は?迷惑って誰に……。」

質問の最中なのに、松川はきびすを返して雑踏の中へと消えてしまった。

「迷惑なんて……。」

かけてるつもりもなけりゃ、かけるつもりもない。

私は勝手にタライ回しにされて、勝手に住む様にされてるだけ。

「はぁ……まったく……。」

つまらんなぁ……。

⏰:08/01/10 12:08 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#36 [向日葵]
曇り気味の濁った空を見上げながら白いため息を吐いていると、携帯のバイブが震えた。

「何多香子。」

{何じゃないっ!1人で寂しいから早く来てよ!}

いつも私を振り回す多香子。不思議と多香子に飽きないのは、彼女の振り回し方が尋常じゃないからかもしれない。

―――――……

散々買い物に連れ回されて、新居に着いた頃には7時を回っていた。

今日は家主帰ってんのかな。

⏰:08/01/10 12:13 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#37 [向日葵]
エレベーターで上がりながら、6階まで上がっていくエレベーターの表示を眺める。

チンとなって、6階到着。

歩きながら渡された鍵をポケットから出し、軽く投げながら部屋の前まで辿り着いた。

「……ん?」

鍵を開けた筈が、ノブをひねると閉まっていた。

どうやら家主は帰っているらしい。

もう1度開け直そうとすると、向こう側から開けられて、ご丁寧な事にドアも開けてくれた。

⏰:08/01/10 12:17 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#38 [向日葵]
さて、今回の奴はどんなのかね。

と顔を上げた私は口を開けて絶句した。

「言った筈だぞ。迷惑かけるなと。」

そいつは不機嫌な顔をして、本人は睨むつもりが無いようだが、明らかに睨んで私を見ていた。

私は口を開けたまま表札を見る。

「うそ……でしょ。なんでアンタが……っ!ま、松川が……っ!!」

そこにいた奴は、紛れもなくさっきスーパーで出くわした奴。
そして、地理の教師。

⏰:08/01/10 12:20 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#39 [向日葵]
「ハァー……。何て言うか……つくづく馬鹿ッポイな。お前。」

ってかキャラ違くね?

こんなくそ生意気な喋り方してたっけ。

「ってか今まで気付かなかった方がびっくりするわ。すげぇ鈍いのなお前。」

「ちょ、ちょちょちょちょっと待て!」

ドアを後ろ手に閉め、松川を見る。

確かに退屈な日常に飽々していた私だが、物には全て限度と言うものがあり、それに慣れるには時間が必要だ。

⏰:08/01/10 12:24 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#40 [向日葵]
「何でアンタが私の同居人?!」

「前の面倒みてもらってた緑叔母が何も言わなかったのか?俺はあのババアの親戚だ。まぁ大分遠めのだけどな。」

「ってかアンタのキャラ!」

「人は処世術と言うものを持ち合わせなくてはならない非常に面倒な生き物でなぁ。しかしながら残念な事に俺はそう言ったものを振る舞える程性格がよろしくない。」

難しい言葉いくつも並べやがって……。
完全に馬鹿扱いか?

⏰:08/01/10 12:29 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#41 [向日葵]
「だが、俺って顔いいらしいから。この性格出したら多分お前らの年代何人も泣かすだろうし。」

それってつまりは、モテるって言いたいんだろ。

「二重人格って訳……。」

「失礼な。女の子を泣かさない為の俺からのちょっとした気遣いじゃないか。」

にっこりと笑うその顔は悪魔とでしか言い様がない。

タラシ。
頭に3文字の言葉が連想された。

⏰:08/01/10 12:40 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#42 [向日葵]
どちらにしろ、私はコイツに誰が泣かされようが知ったこっちゃないが。

それに、コイツは私が直感で選んだ獲物。

誰かに盗られるなんてまっぴらゴメンだ。

などと考えていると、顔の横らへんに片手をついて、松川が私の顔を覗き込んだ。

「お前ってさぁ……俺の事好きなの?」

「馬鹿じゃねーの。」

とんだ自惚れ大魔王だ。

「私は刺激が欲しいから丁度良さそうなアンタをターゲットにしただけ。他意はない。」

⏰:08/01/11 00:33 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#43 [向日葵]
松川は意外そうな目で私を見つめた。

何か言ったか?私。

「つまんなそーな顔してると思ったら……そんな事考えてたんだ。いやらしいな〜お前。」

……なんか勘違いしてないかコイツ。

「だが俺はガキには興味ない。誘惑すんなら出るとこもうちょっと出してから来てくんなきゃなぁ。」

「何妄想してるか知んないけど、私が言ってる刺激はそういう類じゃないから。」

「なーんだ。残念。」

⏰:08/01/11 00:37 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#44 [向日葵]
興味ないんじゃなかったのかよ。
ストライクゾーン広めか?

だけど、ワクワクしてきた。

求めた獲物はすぐ近く。

ようやく退屈してた日々からの解放の時がやってきたらしい。

それを噛み締めて、舌なめずりする私。

あぁ……やっぱりこうでなくちゃなぁ……っ。

⏰:08/01/11 00:39 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#45 [向日葵]
2P・夢には……

ゆめにむちゅうになった魚は、ずっとめをとじつづけていました。

するとゆめを見ることをおしえた魚がいいました。

「ゆめはたしかにおもしろい。でもね、たのしいばかりが、ゆめじゃないんだよ。」

・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

空を見つめてる私がいた。
空に立ち込める、灰色の煙。

私はその煙が何かを知らない。でも知ってる。

⏰:08/01/11 00:44 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#46 [向日葵]
涙を流す理由も、知ってる筈なのに流れない。

『さよなら……。』

誰かがそう呟いた。

――――***――――

「泣いてんのか?」

声が聞こえた。

泣いてる?
何で泣かなきゃならないの?
別に悲しい事が起こった訳じゃない。

でも、耳元に冷たく感じる滴は、涙だと分かった。

何かが、それを拭き取る。

⏰:08/01/11 00:48 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#47 [向日葵]
それが指だと分かりながら、私はまぶたを開いた。

「あ、起きた。」

そこには、ベッドに腰かけて私を覗くように見る松川がいた。

「……なんか様?」

起きたてのせいか、声がかすれる。

上体を起こすと、松川はまだ不思議そうに私を見ていた。

「夢、どんなだった?」

唐突に言うもんだから、「は?」と言った感じで私は眉根を寄せた。

⏰:08/01/11 00:53 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#48 [向日葵]
「覚えてる訳ないでしょ。夢はその場限り。見ている時だけがその世界に浸れる。夢に夢見れるの。」

現実に引き戻されれば、それは跡形も無く消えてしまい、一気に冷めた感情が私を包む。

「ふーん。そんなもんか。……俺なんか1億当てる夢見たけどな!」

「あー立派立派。良かったね。」

それが言いたかっただけかと思いながらカーテンを開ける。
朝日が眩しい。

「さてと。学校行くぞ。さっさと準備しろー。」

⏰:08/01/11 00:58 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#49 [向日葵]
「アンタと一緒にいくの?」

「心配してくれんの?罪だね俺も。」

朝からコイツの脳天気ぶりには後ろから蹴り飛ばしたくなる。

ため息をつき、着替える為の準備を始める。
その内出ていくかと思った松川は一向に出て行かない。

「……興味ないなら見る必要ないだろ。」

「たまにはフレッシュな体見て元気でも出そうかと思って。」

「死ね。」

⏰:08/01/11 01:02 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#50 [向日葵]
と言いながら部屋から追い出した。

ようやく心地よいと感じてきた朝日に背伸びして、ふと胸元に手を当てた。

もちろんまったく覚えてないんだけど、何となく、悲しい気分になっていた。

でも今はそれがなく、スッキリしている。

胸元に当てていた手を、次は目元に当てた。

まだ余韻が残ってるのか、濡れてる。

悲しい夢でも、見てたのかな?
悲しい……?今の私にとって、何が悲しいんだろう。

⏰:08/01/11 01:06 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#51 [向日葵]
[泣いてんのか?]

[夢、どんなだった?]

さっきの松川の言葉が脳裏によぎった。

もしかして、元気づけようとしてくれてたのか?

……つくづく変な奴。
面倒な事嫌いなくせに人の心配するなんて。

人はこれを俗に「世話焼き」と称する。
奴もそれ類のものだろう。

……いや。
いやいやいやいや。
アイツがそんな道徳心あるとは限らないだろう。

多分親切にした分いつかきっちり返せとでも言いそうだ。

⏰:08/01/11 01:10 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#52 [向日葵]
でもそんなミステリーを含んだ松川が面白い。
早速私はゾワゾワと背筋に興奮を感じた。

さて……今日はどんな1日になるのかねぇ……。

密かに、胸のつっかえを取り除いてくれた事に感謝しながら、制服に手をかけた。

―――――――……

「えぇぇぇぇっっ?!?!」

多香子の叫びが教室、いや廊下にまで響き渡る。

まぁ、驚くのは無理ないとは思ってたけど。

自分が叫び過ぎた事に気づき、手で口をチャックすると、小声で私に喋りかけてきた。

⏰:08/01/11 01:14 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#53 [向日葵]
「どうりで朝一緒に来てると思ったら……偶然じゃなくてそういう訳だったの?」

「うん。まぁ。」

はっきり言って、ここでは松川と私は教師と生徒。

事情を話せば分からなくもないだろうが、1歩間違えればPTAが黙っちゃいないだろう。

今朝、奴が「心配してくれるの?」と聞いたのはそういう意味だ。

だがそんな事でも私にとってはスリルな出来事の1つでしかない。

先生と生徒と言うのがまたベタで楽しいじゃないか。

⏰:08/01/11 15:36 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#54 [向日葵]
「ま、そんな訳だから。」

「アンタそんな簡単に……。」

呆れる多香子をよそに、授業が始まるので席に着いた。

着いたところで、私は睡眠学習だけどね。

―――***―――

手に、花を持っていた。

純粋である事を象徴するかのような、真っ白い花。
何重も重なっている花びらを、見つめていた。

ただよう煙。

⏰:08/01/11 15:40 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#55 [向日葵]
線香……。

ふとそう思った。

『さぁ、みかげちゃん。それいれてあげて?』

入れる?

どこにと思っていると、少し離れた場所に木で出来た長細い箱があった。

あれの事か?

近づいていって、箱の前に立つ。
どうやら小さい私は、箱の中身は見えなかった。

すると、誰かが持ち上げてくれた。
中は……。

⏰:08/01/11 15:44 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#56 [向日葵]
眠っているかのような、お母さんとお父さんだった。

『―――っ!いやぁっ!!』

―――***―――

「……げ。みかげったら!!」

ハッとして、私は目を開けた。
目がパシャパシャする。
また泣いてるらしい。

「どうかした?随分泣いてるけど。」

机を見れば、いつも垂れているヨダレの代わりに、涙が水たまりとなっていた。

⏰:08/01/11 15:47 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#57 [向日葵]
これだけ泣いているにも関わらず、やっぱり夢は思い出せそうにもない。

1つ言える事は、今朝同様悲しい夢だったに違いない。

「……夢でめちゃくちゃ目が乾いてた。」

「どんな夢よそれっ!」

多香子はひと笑いして、「あ。」と何かを思い出して、身を屈めるとまた小さな声で私に言った。

「松川がアンタ起きたら来るようにって。何されるか分かんないからさっさと行ってきな。」

絶対馬鹿にされる。

確証があった。

⏰:08/01/11 15:52 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#58 [向日葵]
時計を見ると、もうすぐ次の授業が始まる。

「後でいい。アイツが何かする訳ないと思うし。」

興味ないと言ってたんだからそういう面では安全。
ただ嘲るような言葉の数々を浴びせてくるだけ。

……それって軽いイジメじゃないか。

とか思いながら、次の授業で寝る準備をする。

幸い、今度は悲しい夢を見なかった。

―――――……

「失礼しまーす。」

⏰:08/01/11 15:55 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#59 [向日葵]
結局、職員室へ来たのは昼休み。

起きるのは授業直前ばかりなので、通常の10分休みに顔を出す事は不可能だった。

「松川……先生。なんか用?」

いつもの様に本を読みふけってる松川に、なんとか“先生”をつけて尋ねる。

「あ、来たか。まぁちょっと来い。」

と連れて来られた、社会科準備室。
中は先生用の机がちょこんと置いてあって意外に狭い。
そして周りは地図やらなんやらがゴチャゴチャと……。

⏰:08/01/11 16:00 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#60 [向日葵]
とか思ってると、頭を鷲掴みされて松川の方へ向けられた。

にーっこりと笑って悪人オーラを出している今は、裏松川のおでましだ。

「お・ま・えさぁ〜。よく俺の授業で寝るよな。この俺のっ!」

「はぁ?まさかそんな教師らしい説教する為に呼んだの?私、昼休みは屋上で寝なきゃならないのに。」

「よく寝れるなお前。違う意味で尊敬するわ。」

呆れたため息を吐きながら、松川は先生用の机にあるイスに座った。

⏰:08/01/11 16:04 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#61 [向日葵]
「大体、お前の居眠りはある意味異常。眠り姫じゃあるまい。いい加減活動的になったらどうよ。若いんだし。」

「若い=活動的にっていうのは偏見だよ。世の中には色んな人間がいるんだからさぁー。」

って言うか……。

「若いからなんだってーのって……感じだけどね。」

若くして死んだ両親。
若くして両親を亡くした私。

若いから、若いのに。

そんな言葉、イヤってほど聞いてきた。

⏰:08/01/11 16:08 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#62 [向日葵]
ありきたりな、大人達の言動。

「暇だよね。大人も。「夢を見なさい」とか言うくせに、いざ非現実な事言ってたら「現実見ろ」って言うし……。アンタもそんなタイプ?」

だったら私のミスチョイスだ。

しょうもない奴らは興味ない。
私が求めるは、楽しさ故の快楽のみだ。

[そんなもの、さっさと捨てなさい。]

唐突に、昔誰かに言われた言葉を思い出した。

⏰:08/01/11 16:12 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#63 [向日葵]
「ククククク……。」

自分の足を見つめていた私は、急に笑い出した松川を見つめた。

何がおかしいんだ?
頭狂った?

「だからお前馬鹿って言われんだよ。……いや、ガキ、かな?」

「はぁ?」

イラついて、松川を睨む。
松川は笑いながら立ち上がると、私に詰め寄った。

「怖がってるだけじゃねぇか。」

「怖がってる?」

⏰:08/01/11 16:15 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#64 [向日葵]
「現実に目向ける自信ねぇから背けて異世界に止まろうとしてるだけだろ。つまり寝るんだろ。」

顔が赤くなったのは、何でか分からない。

でも胸の中のどこかを思いっきり刺された気分になった。

「……そんな事、ない。」

「ない事ないだろ。刺激が欲しい?違うだろ。平凡に日常送ってて急に世界が一変すんのが怖ぇだけだろ。」

違う。
違う。

「それに耐えれるように常に刺激的な毎日を送りたい。そういう意味なんだろ?」

⏰:08/01/11 16:21 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#65 [向日葵]
ヤメテ……ソンナ言葉……キキタクナイ……。

「なぁ……葛、みかげ?」

耳元で囁かれ、一気に何かが覚醒した。

弾かれた様に顔を上げると、何かに勝ったような松川の顔がすぐそこにあった。

思いっきり奴を突き飛ばした私は、行方も知れず走り出す。

こんな……こんなつもり、なかったのに……っ!

アイツ……っ、どうして……っ!

⏰:08/01/14 00:00 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#66 [向日葵]
[目向ける自信ねぇから……。]

やだ……。
やだやだやだ……っ!!

そんな事言わないで!!

バンッ!と、屋上のドアを開けて、倒れるようにして床に伏せる。

走ったせいで、息が荒い。

……ずっと、気づかないフリを、私はしてたんだ。

1人ぼっちが、すごく怖くて……。私の身近な人はどうせいなくなる。

それはとても当たり前で……“当たり前”は、ひどく私の心にのしかかった。

⏰:08/01/14 00:04 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#67 [向日葵]
……小さい頃……まだ、私が“当たり前”を恐れていなかった時だった。

ただ1つの宝物である絵本。
私はそれに影響されていた。
しかも、夢は時々、死んでしまったお父さんやお母さん、そしておばあちゃんやおじいちゃんと会わせてくれた。

そんな私は、今と変わらずよく寝る子だった。

そんなある日、その時私を預かってた叔母さんがいった。

[そんな絵本捨ててしまいなさいっ!]

⏰:08/01/14 00:07 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#68 [向日葵]
[そんなもの、さっさと捨ててしまいなさい。]

寝てばかりの私にイラついたか、夢を見てまでお母さん達に会おうとする憐れみ故の恐れか、私には分からなかった。

でも私は強く絵本を抱き締めて、捨てようなんてしなかった。

その時思ったんだ。

いつも、飽きもせずお母さんが私に聞かせてくれた絵本を手放せば、きっと私は駄目になる。

お母さん達との“当たり前”を、手放す事が出来なかった。

⏰:08/01/14 00:12 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#69 [向日葵]
それと同時に、“当たり前”がいつかは失われると分かった。

途端に、恐怖が襲ってきて……日常を受け入れられなくなってしまった……。

あぁ……私の周りにあるもの、全てが消えて、何も無くなる。

なら、その突然の“当たり前”が無くっても平気なように、驚くような毎日を送ってやろう。

そう……アイツの、松川の言う通りなんだ……。

「そんな事……再認識したく無かったのに……。」

どうしてもう1度、頭に入れようとするの?

⏰:08/01/14 00:17 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#70 [向日葵]
髪の毛に、指を埋める。

息がまとめに出来ない。

嫌なんだ。
暗闇に1人、置いてけぼりくらってるみたいで。

現実なんて、クソくらえ。

そうだ、こんな事で、つまずいてる場合じゃない。

大丈夫、また、元に戻れる。

さぁ……目を瞑ろう……?

―――***―――

『ククク……また逃げてきたの?』

夢の中でも、松川が目の前にいた。

⏰:08/01/14 00:22 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#71 [向日葵]
あからさまに嫌な顔をしてるのが自分でも分かった。

『まぁそんな嫌な顔すんなって。』

するに決まってんだろ。

『お前、刺激が欲しいんだろ?』

そりゃ頗る。
目一杯欲しいね。
アンタは私のターゲットだ。それなりのものはくれるって期待してんだけど。

『でも俺が嫌いになったんじゃねーのかお前。』

刺激求める相手に感情のやりとりなんかいらないよ。

⏰:08/01/14 00:26 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#72 [向日葵]
『いやいや。まだつめが甘いな、みかげちゃんや。』

キモイ。
ちゃん付けすんな。

『刺激と言うのは何も1つに限られているもんじゃない。』

まぁね。
アンタ最初は下ネタの方に走ったし。

『そこで俺からの提案だ。』

ほぉほぉ。
やっぱり私が見つけただけあんね。
頭冴えてんじゃん。

で、何?

⏰:08/01/14 00:29 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#73 [向日葵]
『恋愛してみろよ。』

は?

思わぬ答えに目が点になる。

私が?恋愛?
笑わせないでくれる?
第一恋愛になんの刺激があるって言うんだよ。

『それが分かってないならガキの証拠だよみかげ。』

ガキガキうるさいなー……。

『恋愛こそ刺激の醍醐味みたいなもんだろう。恋人を守り守られ、すれ違ったりする度心を痛め、心が通じ合う度に喜びを感じる。』

⏰:08/01/14 00:33 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#74 [向日葵]
力説してくれるのはかまわんけど、私好きな人の作り方なんてまったく分からんぞ。

『その点は気にすんな。』

気にすんなって、アンタが提案したんだから知らないじゃ済まないぞ。

何か奥の手でもある訳?

『あるから気にすんなっつってんの。』

へー。用意周到じゃん。
で、誰?

『俺。』

いつもの自信満々の天使のような悪魔の笑顔で、奴は言った。

⏰:08/01/14 00:37 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#75 [向日葵]
………………そろそろ、耳鼻科に行った方がいいのかね。
今明らかに松川が自分を指したような気がするんだけど……。

松川はまだあの笑顔を浮かべたまま私に言った。

『信じる信じないはお前次第。そしてやるもやらないもお前次第だ。どーぞご自由に。』

―――***―――

パチッと目を覚ますと、青かった空が茜色になっていた。

春とは言え少し寒い……。

⏰:08/01/14 00:41 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#76 [向日葵]
しかし寒いながら、「もう少し……。」と寝転がろうとした。

「いつまで寝る気だ。」

ビクッとして振り向けば、そこには腕組みして私を見下ろしてる松川がいた。

「気の済むままに。アンタに迷惑はかけないから。」

「いーや。かかるね。お前と俺が一緒にいたのはほとんどの先生や生徒が見てるんだ。仮にお前がここで凍死したら俺が一番に疑われるんだぞ。」

「そんなのゴメンだ。」と言いながら松川は空を仰ぐ。

⏰:08/01/14 00:46 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#77 [向日葵]
結局自分の損得しか考えてないだけか。

でも疑問がある。

そんな奴が何故私を引き取ろうなんて思ったのか。

……そういえば、前にペット呼ばわりされた事あるっけか。
つまり、玩具が欲しかっただけか……。

自問自答をして立ち上がり、松川を見る。

「で、何か用でもあんの?」

「生物の赤井先生がお前がいないと職員室で言ってたもんでな。」

⏰:08/01/15 00:31 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#78 [向日葵]
「……だから探しに?」

「どこかでビービー泣いてんなら仕方なく俺の胸でも貸してやろうかなぁってな。」

貸していらんわ。そんなもの。
自分に酔い過ぎだコイツ。

「まぁそんな訳で。」

どんな訳だ。

「さっき言った事は本心だ。だからお前が泣こうがどうしようが知ったこっちゃない。俺はそんな生易しくないからな。」

「何が言いたいの?」

⏰:08/01/15 00:36 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#79 [向日葵]
段々イラついてきた。

やっぱりコイツはミスチョイスだ。
刺激と言ってもイライラして怒る刺激しかない。

私が求めるものとは大きくかけ離れてる。

「言っとくけど、アンタが言った事、全て図星だなんて思わないで。アンタが思ってるほど、私は甘くないから。」

「まぁ落ち着け。ケンカするつもりなんて今は更々無いんだからよ。それともイジメて欲しいとか?」

「だから!そういうのが!」

⏰:08/01/15 00:40 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#80 [向日葵]
「あースマンスマン。」と特に悪いと思ってなさそうな口調で松川は私をなだめた。

イライラしている私は腕組みして、足をタンタン鳴らす。

「生易しくない、と言って、放りなげる程悪魔でもない。」

どうだか。

「とりあえず、お前はもっと現実に足をつけてみろ。」

「いやだ。」

「そう言うとは思ってたけど……。だから現実が楽しいって事を教えてやるよ。」

⏰:08/01/15 00:44 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#81 [向日葵]
私は腕組みはしたまま、足をタンタン鳴らすのを辞めた。
真剣に、松川の話を聞く。

それに気づいた松川は、口元をクイッと上げて笑う。

「刺激が欲しいっつったな。刺激って言うのは色んな分野があるってもんだ。」

「まぁ最初、アンタは下ネタの方で解釈したくらいだしね。」

……ん?
このやり取り……なんか知ってる気がするんだが……。

⏰:08/01/15 00:48 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#82 [向日葵]
「そりゃ“刺激”っつわれたら男の8、いや9割はそっちを考えるだろうよ。ってそんな事はどうでもいいんだよ。」

このやり取りをどこでやったか思い出しつつ、松川の話に耳を傾ける。

「そこで俺は考えた。現実的でより刺激があるもの。」

ほぉほぉ。
頷いて先を促す。

「恋愛するんだ。」

「……。」

瞬きを何度もする。

自信満々で言って、「ナイスアイデアだろ?」みたいな顔されても、私には理解不能だった。

⏰:08/01/15 00:53 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#83 [向日葵]
「頭わいてんの?」

「俺はいつだって有能だ。」

恋愛?
私の辞書に無い言葉が出てきた。

少女漫画のような恋愛は見ててヘドが出る。
そんな上手く物事が運ぶ訳ないとか。

でもそんな半面、ドラマチックな展開に刺激がありそうで羨ましくもあった。

もちろん刺激と言う意味に関してはだが。

「あのな、恋愛こそ刺激の醍醐味だろうがよ。すれ違う心。心が通じあう喜び。そういうのって刺激的だとか思わない?」

⏰:08/01/15 00:57 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#84 [向日葵]
「生憎、彼氏なんぞ作ろうと思った事はないんでね。」

「あー駄目だわそりゃ。」

第一……。

「そんな私が、好きな人なんて出来る訳ないと思うんだけど。」

……待って。

私の予想なら……この先……。
いやいや!
んな事ぁないよ。

だってコイツだよ?

面倒くさがりで、損得しか考えてない悪魔みたいな自惚れ屋がだよ?

⏰:08/01/15 01:00 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#85 [向日葵]
心配するだけ無駄無駄無駄無駄。

「そういう事なら気にすんな。ちゃーんと考えがあるんだからよ。」

「へー。何よ考えって。」

すると急に、松川の目つきが変わった。

悪魔のような私をからかっている目ではなく、どことなく艶っぽい雰囲気を醸し出しているような……。

「お前と俺が恋愛すんだよ。」

「は……っ?!」

嘘だろ……これじゃまるっきり夢と……。

そうか!
この会話、夢で聞いてたんだ!
ってことは、これって正夢?!

⏰:08/01/15 01:05 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#86 [向日葵]
「何馬鹿な事言ってんの?大体アンタ、女子高生には興味ないって……。」

「俺も丁度退屈してたんだよなぁ。先生と生徒、しかも同居人。こんなベタだけど刺激たっぷりなシチュエーション無いと思わないか?」

そこで確かにと心の中で不覚にも納得してしまった自分が憎い。

「つまりは恋愛ごっこするって事?」

「まぁそんなもんか。いいんだぜ?好きになっても。」

あり得ん。

⏰:08/01/15 01:09 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#87 [向日葵]
「それは無い。アンタだって無いでしょ。私を好きになるなんか。」

「色仕掛けで迫られたら無理かもなぁ。」

コイツの頭そんな事で一杯か。

利害の一致とでも言うのだろうか。

そんな楽しそうな刺激、断る訳にはいかない。
このチャンスを逃す手はない。

好きになるならないは別として、今の私にはもって来いだ。

ニヤッと口元が上がるのが自分でも分かった。

⏰:08/01/15 01:14 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#88 [向日葵]
やっぱりミスチョイスなんかじゃなかった。
さすが私。
見る目あるわ。

「いいよ。恋愛ごっこ。してやろうじゃん。望むところだよ。」

「交渉成立ってな。さて……どうする?」

私を壁に追い詰めて、手を付き、体を寄せてくる。

「どうするって、何が?」

「噂されるような事しといた方がいいかなーって。」

ススーッと松川の手が太ももを撫でた。

グーで思いっきし横っ面を殴る。

⏰:08/01/15 01:18 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#89 [向日葵]
「言っとくけど、私とアンタは目的が一致したただの仲間なんだから。アンタの玩具になる気なんかこれっぽちもない!気安く触んなっ!」

「へーへー。」

パッと松川は私から離れる。そしてドアへ向かった。

「ん?オイ。」

「何よ。」

「帰んぞ。」

はい?
今朝一緒に来たっていうのに帰りも一緒しなきゃならないの?

⏰:08/01/17 01:04 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#90 [向日葵]
不満気と言うか嫌と言うか、よく分からない目で松川を見た。

するとわざとらしくため息をつかれる。

「あのさ、ごっことは言え俺達付き合ってる設定でこれから動くんだろ?なら一緒に帰る事くらい当たり前だろ?」

そこまで徹底するんだ。
と半ば拍子抜け。
納得出来るんだか出来ないんだかよく分からないまま私は松川の隣までやって来る。

「んー。そうだなー。」

「何が?」

⏰:08/01/17 01:08 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#91 [向日葵]
「みかげ。」

急に呼ばれてキョトンとする。
何せコイツに呼ばれるまで私を下の名前で呼ぶのは多香子くらいしかもういなかった。

「何よ、いきなり。」

「恋人同士なら名前呼ぶじゃねぇか。……そうだな。俺は“慎”でいいわ。慎一だから。」

「松川でいい。」

「これは命令。提案者は有利な立場にあるもの。つまり絶対服従だから、お前に拒否権は無しっ。アンダースタンド?」

⏰:08/01/17 01:12 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#92 [向日葵]
アッホらしい。

呆れつつ、ジワジワと滲み出てくる、焦燥感にもにた期待。

だからと言って、松川が提案した事が、私を現実に縛りつけれるかどうかは謎だ。

それは、今後の奴の行動に全てかかっているのだから。

⏰:08/01/17 01:15 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#93 [向日葵]
3P・荒波にのまれて


目をつぶり、夢ばかりみるようになってしまった魚に、たいへんなことがおこってしまいました。

なんと、なみが魚をつつみこみ、はるかかなたにながしてしまったのです。

おどろいた魚は目をあけ、どうすればいいかわからなくなりました。

『たすけて!ぼくどうなってしまうの!』

・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ザワザワとうるさい……。

⏰:08/01/17 01:18 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#94 [向日葵]
私は何故か街外れの映画館にいた。

「みかげ。何みたい?」

「何でもいい。……ってか、何で私がアンタと映画みなきゃならないのよっ!」

事を返せば、今から3時間ほど前の事だった。

――――
―――――――……

「み・か・げっ。」

名前を呼ばれたと同時に、体に重みを感じた。
しかし私は眠いので、その2つをことごとく無視する。

⏰:08/01/17 01:22 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#95 [向日葵]
すると……。

「早く起きねーとキスすっぞ。」

はぁっ?!

思わず目を開ける。

「あ、起きた。まだ寝てたらいいのによー。」

意地悪く笑う顔は私の顔の約10センチ離れたすぐそばに。
華奢ながら私より肩幅があり、それなりに筋肉のついた体は私の体に覆い被さっていた。

「色魔。朝っぱらから何してんだ。」

「一応恋人だし。恋人らしい事でもしてやろうかと。」

⏰:08/01/17 01:26 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#96 [向日葵]
と言いながら、私の断りも無しに顔が近づいてくる。

その顔を眼鏡ごと片手で鷲掴みしてやった。

「前言った事最早忘れたの?ごっこはしても気安く触るな。これ基本。分かったならさっさと退け。」

渋々といった感じで松川は、いや、慎は退いた。
私はゆっくりと上体を起こす。
安らかなる睡眠を邪魔されたせいもあって、早くもイライラしていた。

「で、何か用?」

⏰:08/01/17 01:30 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#97 [向日葵]
「ああ。みかげ、出かけっぞ!」

今日は土曜で、常時眠たくなる授業は無し。
朝から晩まで寝放題とウキウキしていたのに。

「やだよそんなダルッころいの。」

「意味分からん言葉使うな。みかげ、俺はただごっこしてるんじゃねぇんだぞ?」

分かってる。

私がちゃんと現実に目を向けるように、ヒントをくれているらしい事くらい。

「途中で眠くなるかもよ?私が。」

⏰:08/01/17 11:58 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#98 [向日葵]
「叩き起こすから問題ないだろう。」

いくらごっこだとは言え恋人叩き起こす奴がコイツ以外見た事も聞いた事もない。
コイツは絶対やると思うが……。

ため息をつきながら時計を見る。
まだ9時だ。

それでなくても、毎日10時就寝の私がコイツに付き合わされて法律上、私の歳では駄目な酒まで飲まされ、付き合ってたせいで昨日は12時寝だ。

まだ9時間しか寝ていない。

⏰:08/01/17 12:03 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#99 [向日葵]
勘弁してくれと心底思う。

恋人ごっこも楽じゃない。
いくら対等を求めても相手がアイツならば所詮、慎主権だ。

有無言わせる事なく私を玩具として扱う。

「……どうせ行きたくないっつっても引っ張って行くんでしょ?着替えるから外に出てて。」

「素直でよろしい。ちゃんとデートっぽい格好しろよー。」

デート……。
そうか。世間一般から見て、私達は今からデートするのか……。

⏰:08/01/17 12:06 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#100 [向日葵]
と変な納得をしながら、私は着替えにはいった。

――――
――――――……

と言うのが約3時間前の話。そしてこっからが今からの話。

「やっぱり休日って混んでるよなー。映画止めにするか?」

「まかせる。映画館なんと来たの初めてだから分かんないし。」

と言うと、慎は「えぇっ?!」と上映時刻の電光掲示板から私に目を向けた。

「17年生きてきて1度も?!」

⏰:08/01/17 12:11 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#101 [向日葵]
「馬鹿じゃねぇの!」と言外に聞こえた気がして、私はムッとした。

「うるさいなぁっ。興味ないんだから仕方ないでしょ!!」

叫んでから後味が何だか悪く感じた。
幸い映画館は雑音紛れで、私が叫んでも周りの人間はさほどきにしてはいなかった。

「別にびっくりしただけだよ。怒んなよ。」

「アンタの事だからどうせまた私を心の中で馬鹿にしてたんでしょ。」

「被害妄想甚だしいっつーの。」

⏰:08/01/17 12:16 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#102 [向日葵]
眉を寄せてうつ向いた私の頭を、慎は乱暴にかき回した。

「あのさ、何か勘違いしてるみたいだけど、俺そんなに薄情な人間じゃないから。」

どうだか。

「ただ勿体無い事してんなぁって思っただ・け。」

やっぱり馬鹿にしてんじゃないか。

「これは誰にでも思う事だろ?お前だって、無駄に起きてたら、『今寝れるのに勿体無い事してんなー』って思うだろ?」

まぁ……確かに……。

⏰:08/01/17 12:20 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#103 [向日葵]
「おんなじ。だからさ、もうちょっと心開いてくれてもいいんじゃないか?」

いつもとは違う、何故か柔らかい口調に、私はそっと顔を上げた。

すると、今は意地悪そうな悪魔の微笑みは消え、どこか慈悲に溢れている顔で私を見下ろしていた。

……コイツに慈悲の心があればの話だけれど。

「開きすぎて俺に惚れても責任は取らんがな。」

こういうのがあるから開くつもりが無いっつーのを分からんかお前は……。

すると。

「松川……君……?」

⏰:08/01/17 12:25 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#104 [向日葵]
声のする方を見れば、長い髪を嫌味なく巻いた綺麗なお姉さんがこちらを見ていた。
歳は慎と同じくらいだろうか。

「つぐみ……。」

ん?知り合い?

慎の顔を見れば、驚いたような、だけど会いたくなかった奴に会ってしまったような、複雑な顔をしていた。

つぐみと呼ばれたお姉さんは、遠慮がちに近寄ってきて、慎の前で止まった。

⏰:08/01/17 12:29 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#105 [向日葵]
「久しぶり……。7年ぶりくらいかなぁ?」

「まぁな……。」

お姉さんは私に気づいたらしく、柔らかな微笑みを私に向けた。

「可愛いらしいわね。彼女さん?」

「違います。」

間髪入れず答えたのは私だ。

私が見るからに、このお姉さんは、明らか慎が好きらしいからだ。

すると予想通りと言うか、何と言うか、お姉さんはホッとしたような表現を少し見せた。

⏰:08/01/17 12:32 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#106 [向日葵]
訂正

すいません
松川の名前が真一なのに慎一になってます

これから書く時は真一の方に戻します

ややこしくつすいません

⏰:08/01/17 18:29 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#107 [向日葵]
「元気そうで良かった。……今、何してるの?」

「高校の教師。」

「そっか……松川君教師になりたいって言ってたもんねー……。……あの、良かったらメアドとか教えてくれないかな?」

すぐに携帯を出すと思ったのに、真は何故か携帯を出す事を渋っていた。

じれったくなって、私が勝手に奪いとって、お姉さんに渡した。

「ハイこれ。なんなら電話番号とかもいれときなよ。」

「おいみかげ……っ。」

⏰:08/01/19 23:00 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#108 [向日葵]
「ありがとう」とお姉さんが嬉しそうに微笑むと、真はそれ以上何も口をはさまなかった。

お姉さんは「じゃあまた。」と言って、連れの友達と、ごちゃごちゃした人混みの中へ消えていった。

「なぁんだ……。ちゃんと可愛い人いんじゃない。私じゃなくあの人彼女にすればいいのに。」

言ってから、ヤバッ!と思った。
真があのお姉さんを選んでしまったら、せっかくの刺激物が無くなってしまうじゃないかと。

そろりと真を見上げると、お姉さんが消えた方をまだジッと見つめていた。

⏰:08/01/19 23:04 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#109 [向日葵]
その事に私は妙にイラッとして、きびすを返した。

「あ……っ。みかげ?どこ行くんだよ。」

聞こえないふりをして、エスカレーターをズンズン降りる。

「おいみかげ!」

映画館を出て、私は街へとくり出す。

「こらガキ!!」

ようやくおいついた真は、私の腕を引いた。

「アンタでも人を好きになる事あんだね。人としての一面を見れた気がして驚いたよ。」

⏰:08/01/19 23:08 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#110 [向日葵]
「アイツは……そうだけど……駄目なんだ……今でこそ、マシに……って何でお前にそんな話……っ!」

駄目?マシに?

何のことだかさっぱり。
自己完結するのはやめてもらいたいものだ。

「ってか何でお前怒ってんの?」

は?

「怒ってないし。」

「いや怒ってんじゃん。どう見ても。」

「無愛想で悪かったな。このハゲメガネ!!」

⏰:08/01/19 23:11 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#111 [向日葵]
それだけ言ってまた私は足を進めた。

「メ……メガネは認めるが、俺はハゲてねぇぞコラ!!」

――――――……

真は私をなんとか引っ張って、ゲーセンへと連れて来た。

やかましくて敵わん。

UFOキャッチャーやらプリクラやら……ごちゃごちゃしすぎ。

これなら

「寝てた方がマシとか思っただろ。」

⏰:08/01/19 23:15 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#112 [向日葵]
たった今、そう思おうとしてたトコだ。

「私、うるさいのあんまり好きじゃない。」

「そーか?ゲーセンにはお前の大好きな“刺激”が詰まってると思ったんだが。……例えば、これとかな。」

真が選んだのは、私が先ほどごちゃごちゃしてうっとうしいと見下したUFOキャッチャーだった。

中にはウサギやらクマやらのぬいぐるみが入ってる。

「大枚はたいてまでぬいぐるみなんかいらないんだけど。」

⏰:08/01/19 23:18 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#113 [向日葵]
真はにやりと笑うと、ポケットから1枚100円玉を抜き取った。

「大枚なんていらないね。俺はこれだけで取る。」

と言って100円玉を機械に挿入。

そんな硬貨1枚で取れる訳が無いと、私は周りを見渡した。

皆が皆、自分の世界に浸っている。
ならば私の世界は夢だ。
夢無しでは生きていけない。
現実に、希望なんて、抱いていける訳がない。
私の希望は、夢と、絵本だけだ。

⏰:08/01/19 23:23 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#114 [向日葵]
ひょこんと、白い物体が私の真ん前に現れた。

ぼんやりそれを眺めながら、それがウサギと分かった。
それもぬいぐるみの。

「見たか。取ったぞ。たった100円で。」

「で、どーすんのこのウサギ。」

真はにーっこり笑うと、ウサギを私に押し付けた。

「絵本を見る事で夢にのめり込むなら、ウサギ見る事で現実にのめり込んでみろよ。」

そいうえば、コイツは何故ここまで現実を見させようとするのだろうか。

⏰:08/01/19 23:27 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#115 [向日葵]
コイツの性格を考えれば、ただの同居人に、恋愛ごっこをしてまで世話する気なんかなさそうなのに。

それはコイツも過去に何かあったのか、はたまた、ただ単に現実主義を突き通してるだけなのか……。

「アンタは。」

「真。」

「……真は、夢が嫌い?」

間が開く。
ゲーセンのガチャガチャした音だけが私達をとりまく。

真は、まっすぐ私を見つめていた。
その目の奥に、なんとも言えない闇が潜んでいるように、私は思えた。

⏰:08/01/19 23:32 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#116 [向日葵]
ようやく、真は口を開いた。

「夢は……嫌いじゃない。俺は………………。世界征服と言う立派な夢があるし……。」

「どこかの敏腕スナイパーにやられてしまえ。私は帰る。」

少しでもコイツの中にナイーブな一面があると思った私が馬鹿だった。

「まーてまてまて!まだ現実体験学習は始まったばっかりなんだぞ!」

そんな名前あったんだ。
どうせ今思いついたんだろうけどさ。

「うるさいとこが嫌ってんなら静かなトコ連れてってやるよ。」

⏰:08/01/19 23:56 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#117 [向日葵]
「もうやだ。アンタはやっぱり私を遊び道具にしてるだけじゃん。こんなの私が求めてるものじゃない!」

「わーったから、まぁついて来いって!」

面倒くさそうに私をなだめながら、真は私を引っ張っていく。

「だから嫌だってばー!!」

――――――……

「うっわー……!」

さっきの態度とは180゚回転して私は目を輝かせた。

⏰:08/01/20 00:01 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#118 [向日葵]
海に連れてこられた。
一面真っ青で、太陽の光で反射して水面がキラキラ輝いていた。

直ぐ様かけより、靴を脱ぐ。

「あ、馬鹿!春先だっつーのに海に入んな!風邪引くぞ!」

これは私の身を心配してるように聞こえるが、松川語に直すと、

「あ、馬鹿!春先だっつーのに海に入んな!風邪ひかれて面倒なのは俺なんだぞ!」

だ。

と言う事で、そんな自分大好きな奴の発言は一切無視。

⏰:08/01/20 00:07 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#119 [向日葵]
指先を海水へつける。

冷たいけど、想像してたよりは然程冷たくはなかった。

パシャパシャ音を立てながら、足首らへんまで浸かる。

耳をすませば、波の音が心地よかった。

“ゆめみる魚”も、こんな海の中で、眠りながら泳いでいるんだろうか。

波はゆりかごに。
水音は子守唄に。

なんて……幸せそうなんだろうか……。

そう思いながら、持っていたウサギを見つめる。

⏰:08/01/20 00:11 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#120 [向日葵]
[現実にのめり込んでみろよ。]

現実……。

皆が、夢をおぼろげなものと考えるなら、私にとって現実の方がおぼろげだ。

どうして夢で生きてはいけないんだろう。

だって現実は、酷くて、大切なものを次々と奪っていってしまう。

大切なものが無くなってしまった私は、手持ちぶたさで、一気に何もかもが楽しく無くなった。

それはつまり、私はからっぽだと言ってるようなものだ……。

⏰:08/01/20 00:15 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#121 [向日葵]
真が……現れたせいだ……。

コイツが、何もかも見透かしたように言うから、こんな、物思いにふけらなきゃいけなくなったんだ。

滴が、頬をつたった。

からっぽな自分が、現実で生きていく意味が分からない。

どうしても、見つけなきゃいけないのだろうか。

「みかげ?」

砂利を踏む音が聞こえた。
急いで涙を拭くも、止まらない。

⏰:08/01/20 00:19 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#122 [向日葵]
「みかげ。どうかしたか?」

「来るな……。」

微かに声が震えてしまった。泣いてる事がバレてしまっただろうか。
きっと、馬鹿にされる。
指さしながら、腹抱えて笑うに決まってる。

そう分かってるのに、溢れる涙を止められない……。

「何でもないから。ただ、海が冷たいから……びっくりしてるだけ……。」

「……そうか。」

波が、私の足元を行ったり来たりする。

⏰:08/01/20 00:24 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#123 [向日葵]
すると。

後頭部を、真の掌が包んだ。

「若い奴は、いらん事で悩むよな。俺はお前みたいに不器用じゃなかったぞ。」

ホラ、やっぱり馬鹿にしてる。

「悩んでなんか……。」

「でも今は、沢山悩んで、ゆっくり道を見つければいいから。」

道……。
見つかるのだろうか……。
果てしない道のりを歩くのは、私は足取りが重かった。

⏰:08/01/20 00:30 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#124 [向日葵]
すると、後頭部にあった真の手が、私の頭を引き寄せ、頭ごと私を抱きかかえるようにした。

「俺も、いてやるからさ……。」

どんなつもりで言ってるんだろう。

ごっこの為の台本?
それとも本音?

そんな事を考えつつも、根拠のないその言葉や、何故か抱き締められているその体温は、私の心を幾分か安らげた。

そしてなんだか、胸の奥がざわざわした……。

これは、何……?

⏰:08/01/24 00:15 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#125 [向日葵]
―――――――……

次の日から、あのつぐみと言うお姉さんからのメールが真に送られてきた。

真はやっぱり昨日会った時のような複雑な顔をしていた。

「どうかしたの?眉間にシワ寄せすぎ。」

真はため息をつく。

変なの。
いつもなら「何?!俺の美しい顔が!」とか「シワを寄せても俺はカッコイイだろ?」とか馬鹿っぽい発言が出てきそうなのに。

「お前、昨日さ、夢嫌いか?って俺に聞いたよな。」

⏰:08/01/24 00:20 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#126 [向日葵]
「それが何?」

真は黙って、開いたままだった携帯をパキンと閉じた。

メガネを外して、目と目の間を指先で軽くつまむ。
目が疲れたらしい。

「……夢はな、どちらかと言えば嫌いだ。」

ようやく口を開いた時、その声は苦しそうだった。

「何故?」

「夢はある意味妄想のようなものだからだ。」

妄想?
真の言葉を、頭の中で繰り返す。

⏰:08/01/24 00:24 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#127 [向日葵]
「夢は人の潜在意識だ、とか言うけど、俺からしたら、叶う事のない儚いものだと思うね。手に入らない、叶う筈のないものを夢に見るくらいなら、真実が迫ってくる現実の方がまだマシって訳だ。……夢ばかりに理想抱いても、悲しいだけだからな……。」

いつになく、真剣な口調に、真をじっと見つめた。

やっぱり真が私をかまうのは、そういった現実主義な部分も入ってるんだろうか。

……いや、違う。

「夢が嫌いなのは、あのお姉さんと関係あるとか?」

⏰:08/01/24 00:28 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#128 [向日葵]
密かに、眉をひそめた真。

何かと葛藤するかのように苦しげな表情を見せながら目を瞑る。

「昔……色々と……。」

でも私は、その短い言葉で気づいてしまった。

真は、未だあのお姉さんが好きなのだと。

「……バッカみたい。」

私は呟いて、自分の部屋に閉じこもった。

なんなんだろう。
すっごくつまんない気がする。

⏰:08/01/26 01:35 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#129 [向日葵]
恋愛が刺激の醍醐味?

そんなのアイツが決めつけた事じゃない。

現に今の私に刺激なんて更々無かった。

ただひたすら、心と言うか胸の中と言うか、ザワザワうるさくて、どこかが痛くて……。
楽しい刺激が、今ひとつ味わえていない。

こんなの……真の設定ミスだ。

それにいくらごっことは言え、好きな人がいるのに恋人気分に浸れる訳がない。

それに真自体も浸ることはないように思われる。

⏰:08/01/26 01:39 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#130 [向日葵]
アイツは何がしたいんだ?

暇つぶし?
悩める若者の構成?
昔を忘れさせる為の道具?

分からない。
分からなさすぎる。

……いや、分からなくていいのか。
大した間柄でもない。

よくよく冷静に考えてみれば、アイツはここの家主兼私の学校の教師。
そして私は同居人兼アイツの生徒。

2人はごっこの相手同士。

別に相手の事なんて知らなくていいのだ。

⏰:08/01/26 01:43 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#131 [向日葵]
アイツがもし私を暇つぶし相手にしてるならば、私達はただの刺激を求めて合う同士でもある。

ならば上辺だけの付き合いでいいのだ。
中身なんていらない。

ただ、自分は奴に何もかもを見透かされている気がして、なんとなくそれが気にいらないだけだ。

アイツがもしあのお姉さんと付き合いたいと言うのならば、せっかくみつけたターゲットを見す見す逃がす事になるが、また夢の住人になれるのであればそれはされでまたいいじゃないか。

別に……お互いが必要てしている訳ではないのだから……。

⏰:08/01/26 01:47 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#132 [向日葵]
また、胸がザワつく。

気持ちが悪くて、胸をさすった。

まるで、“ゆめみる魚”の、嵐が来る時のシーン。

不安のような動悸が体に鳴り響く。

私はそれにばかり気を取られて気づいてなかった。

私の頭は、いつしか刺激を求める事よりも、真自体の事で一杯になっていた。

それに気づくのは、もう少し先の話だった……。

⏰:08/01/26 01:50 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#133 [向日葵]
4P・波にもまれて

しらないうみにやって来た魚は、あたりを見まわしていました。

『ここはどこ?』

そのうみは、おだやかで、ねむってしまいそうなくらいにここちよいものでした。

でも、魚はふあんでいっぱいでした。
なにせしらないばしょなのですから。

・・・・・・・・・・・・・・・

あぁ……。なんでだ。
いつもならこの時間は夢の世界へ飛び立っていると言うのに……。

⏰:08/01/26 01:54 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#134 [向日葵]
社会科準備室にいた私は、自分を呼び出した相手を睨みつけていた。

「俺の顔、そんなにみつめるほどカッコイイか?」

真はにやりと笑う。

コイツのナルシストぶりには頭が上がらない。
世の中の男集めても自分が秀でてるとでも思っているんだろうか。

「そんな事言いたいが為に私をここに呼び出したの?」

「うんっつったら?」

「蹴り飛ばす。」

そんな私を、真はクスクス笑う。

⏰:08/01/26 01:59 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#135 [向日葵]
それがまた私の神経を逆撫でする。

この前の苦しげな顔は芝居じゃないのかと思うくらい元気だ。

実際……芝居だったのかもしれないが……。

「まぁまぁ。ただ恋人が恋しくて会いたくなったってだけだよ。」

「真にそんな感情備わってるとは思えないんけど。」

「俺はいいぞー。彼女にはちゃーんと優しくしてやるし。」

出た。
自画辞賛。

⏰:08/01/26 02:03 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#136 [向日葵]
ごっこだけのくせに……。

……ん?
なんだ私。
まるで、ごっこじゃ嫌みたいな感じじゃないか?

……。いやいやいや。
まさかまさか。
この頃ロクに昼寝してないから頭がどうにかなったか?

「くだらない用なら帰っていい?」

イスから立つと同時に、真も立ち上がった。
すると距離を詰めて、右手をさりげなく優しく握った。

「抱き締めていい?」

⏰:08/01/27 17:13 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#137 [向日葵]
「は……はぁ?」

ふざけてなんかいないみたいだ。
あくまで真剣に尋ねているらしい。

「なんで?」

「ねぇ、いい?」

なんか……甘えたがってるようにも見える。

真は強引に抱き締めるわけでなく、黙って私の返事を待っている。

だから余計におかしい。

いつもの俺様な真は身をひそめている。

軽くため息を吐く。

⏰:08/01/27 17:17 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#138 [向日葵]
「ちょっとだけなら……。」

言った瞬間ぎゅっと抱き締める。
意外に力が強かったので、少し苦しかった。

「……。何かあった?」

聞いてみるけど、囁くように「別に。」と言ったまま、黙ってしまった。

あのお姉さんが現れてから、いつもの真じゃなくなった。

いや、真らしい態度をとってはいるけれど、どこか無理してるような……。

そんな真だからだろうか。
慰めてあげれるならば、私が癒してあげたいとか思ってしまった。

⏰:08/01/27 17:22 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#139 [向日葵]
どうしてしまったんだ私……。

*******************

「テスト前なので範囲のプリントを配る。各自するように。」

だるそうにプリントをするガキ共を見ながら、教卓まで空いてたイスを引きずって座った。

表向きの自分の演技をしつつ、俺はさっきみかげを抱き締めた感触を思い出していた。

華奢な体。
なのに柔らかくて、髪の毛からはシャンプーの香りが漂ってきた。

⏰:08/01/27 17:41 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#140 [向日葵]
すがりたかったんだ。
誰かに。

つぐみが現れてから、俺は苦い思い出に浸ることしかなかった。

だから安らぎの場所を求めたかったんだ。

みかげはさぞ驚いただろう。
恋愛経験がないアイツにとっては初めて抱きつかれただろうし。

そんな初めてな事を、ただすがりたい、救われたいと言う思いだけで抱き締めて良かったのだろうか。

なのにアイツは、そんな俺を心配してくれた……。

⏰:08/01/27 17:46 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#141 [向日葵]
[何かあった?]

はっきり言って彼女から見た俺は横暴で、あまりいい印象は与えていないかと思う。

自分が何か突拍子のない事を言えば必ず不機嫌になるし、自分はただみかげに現実の刺激を与える道具のようなもの。

そして今アイツが直面している現実を受け入れると言う事。
それを課したのは俺で、そのせいで苦しんでるって言うのに、そんな俺を、心配した。

体の感触を感じた手を、じっと見つめる。

⏰:08/01/27 20:59 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#142 [向日葵]
前にも抱き締めた事はある。
海でみかげが泣いていた時の事だ。

あれは抱き締めたと言うよりも、抱えたと言うか、何かから守った気分だった。

現実を見つめ直す気になったみかげはとても懸命で、自分に与えられた試練を必死になって越えようとする、健気で、どこか愛おしい気分にさせた。

だから、「大丈夫だ。」と言ってやりたかったんだ。

今度は違う。

どこか、お互いの気持ちが通じたような、そんな感覚を覚えた。

⏰:08/01/27 21:03 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#143 [向日葵]
「せーんせー。質問していー?」

「あぁ。なんだ。」

今では、現実に目を背け、失望してるみかげだが、本当は誰よりも現実を見たいと思ってるんじゃないんだろうか。

[夢が嫌い?]

そう問われた。あの時、夢を見てばかりの自分が恐くなったみかげの叫びかと俺は思ったんだ。

*****************

めずらしい……。
そしてやっぱりおかしい。

⏰:08/01/27 21:07 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#144 [向日葵]
授業中睡眠率100%のこの私が……しかも1番嫌いな生物で……

寝なかった!!

少し早い台風の訪れ?!
もしくはとうとう天変地異の前触れ?!

私は授業終了のチャイムを呆然と聞いていた。

「わ!みかげ!アンタなんで起きてんの!」

私の席に遊びに来た多香子が私同様驚いた。

起きてて普通なのに、私クラスになると寝てる方が当然になる。

「わかんない……っ。」

⏰:08/01/27 21:12 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#145 [向日葵]
……真だ……。

全部真のせいだ……!

様子はおかしいわ、この前のような抱き締め方じゃないわ、私を変な気分にさせるわ……っ。

これがアンタの言ってた刺激?!
訳が分からん!!

「あ、松川。」

「え?!」

頭を抱えながらうつ向いてた私は、顔を上げた。

思えば次は地理だ。
松川は私の教室へとやって来る。

⏰:08/01/28 22:10 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#146 [向日葵]
自分でも分からない気持ちにイライラさせられている筈なのに、真を見ると安らかになってる自分がいた。

良かった。
傷は少しは癒えたのだと、真を見つめる。

「みかげ……?」

「え……?あ、何?」

「何って、今アンタ……。まぁいいわ。」

多香子の歯切れ悪い返事を聞きながら、次寝たらまた真にどやされるなぁと、呑気に考えていた。

だから私は自分の変化に気づいていなかった。

⏰:08/01/28 22:13 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#147 [向日葵]
――――――……

「みかげー。帰ったぞー。」

「おっさんかアンタは。」

先に帰っていた私は、リビングから出て帰ってきた真を迎えた。

「テスト問題でも作ってたの?」

問い正すと、何故か真がぐっと答えあぐねた。

怪しいと思い、たたみかける。

「地理のテストって作るの面倒くさそうだよね。そりゃ遅くもなる…か。ま、アンタの事なんかどうでもいいけど……。」

⏰:08/01/28 22:16 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#148 [向日葵]
更に真は苦い顔をした。

「何?なんか責められてる気分なんだけど、俺。」

「責めてなんかないけど?教師って大変だなぁって言うただの感想。」

大体真がこの顔をするのは予想がつく。

大抵が、お姉さん絡みだ。

1回しかあった事がない、最早顔すらおぼろげになったあのお姉さんは、何故だか真を苦しめてる。

「……アイツが、会いたいって言うから、会ってたんだ。」

⏰:08/01/28 22:20 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#149 [向日葵]
「そっ。」

冷静に返事しながら、私はなんだか腹が立っていた。

癒されたと思った真の心の奥にある傷。
それを容易く切り開いてしまうお姉さん。

お姉さんとの思い出は真への呪縛のような気がした。

そして簡単に真を引きずりこもうとするのに、自分の無力さを感じた。

……。
え……?無力?

また真を救いたいとか思ってる自分に驚く。

⏰:08/01/28 22:24 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#150 [向日葵]
自分の部屋に戻ろうとすると、腕を掴まれた。

「ん?何?」

「……抱き締めたい。」

また?

「やだよ。私は抱き枕じゃないんだからさ。」

「1分。」

「やだっつってんでしょ。」

真を無視して、部屋に戻ろうとした私は、腕を掴まれたままだという事を忘れてた。

そのまま引っ張られて、強制的に抱き締められる。

⏰:08/01/29 23:36 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#151 [向日葵]
力強く抱き締められれば、最早抵抗するのを諦めた。

真は何がしたいんだろう。

私はどうしてされるがままになってんだろう。

主導権を握られて、言いなりになるのは好きじゃない。

どちらかと言えば、主導権を握って、自分が思うままに動かしたいのに、真は言う事を聞いてくれない。

そんな事をぼんやり思ってると、真が呟いた。

「あー……。キスしたくなってきた。」

は?

⏰:08/01/29 23:40 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#152 [向日葵]
腕を緩めた真は、私の顔を覗き込んだ。

「いい?」

いい訳……

「ないだろこのボケェ!!」

高らかに、平手の音が鳴り響いた。

――――――……

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

あ……夢見てる。

そうだ。
私最近おかしかった。

寝ても、前みたいに頻繁に夢を見る事が出来なくなったんだ……。

⏰:08/01/29 23:43 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#153 [向日葵]
私はピンクと青のマーブルの世界にいた。

周りは何もない。

奥行きがどれくらいあるのかもわからない。

でも感覚的に、だだっ広いって事は何故か分かった。

『みかげ。』

誰かに呼ばれた。

振り向けば、そこには微笑んだ真がいた。
この笑みは、悪魔な部分を隠してる方だ。

とか思っていたら、真はにんまり笑って、悪魔な部分を少し表に出す。

⏰:08/01/29 23:46 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#154 [向日葵]
なんでアンタ最近よく出てくるの?

『お前が俺の事ばっかり考えてるから。』

は?考えてないっつーの。

『またまた照れちゃってさ。素直になったらどうよ。』

真は1歩また1歩と私に近づく。
しかも1歩の幅がデカイのか、10歩で来そうな距離を3歩でやって来た。
夢独特の不思議な世界だ。

『お前はさ、まだ心が未発達だから分かってないんだよ。』

⏰:08/01/29 23:51 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#155 [向日葵]
何が?

『まだ分からない?じゃあ聞くよ。お前、何故俺を癒したいとか思ったの?』

意地悪そうな笑みが間近にある。

……知らない。ただの同情みたいなもんでしょ。

『いいや、違うね。お前は知ってるんだよ。でもそれを認めてしまうのが恐い。違うか?』

意味分かんない。
ヒントなんかいらないから早く言ってよ。

『焦るなって。もう1つ聞くよ。それに答えたら教えてやる。』

⏰:08/01/29 23:54 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#156 [向日葵]
私は深呼吸を静かにして、イライラするのを鎮めた。

で……?質問って何?

『お前が最近こちらに来ないのは……何故?』

ドクン……と心臓が跳ねる。

そういえばと、私は数日間の事を思い返す。

何故か、前のように数多く眠る事が出来なくなってしまっている。

しかも、夢を見る回数も減っている。

し……っ、知らない……っ!そんなの分かんない!
もうやめてよ!これ以上イライラさせないでっ!!

⏰:08/01/29 23:59 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#157 [向日葵]
耳を塞いで、何も聞こえないようにする。

でもここは所詮夢の中。

塞いでも、真の声は聞こえる。

『混乱しなくていい。簡単な事だ。』

そう言って、真は耳を塞いでいる私の手を優しく引き剥がした。

目の前にいる真は、柔らかく笑っていた。
悪魔な一面は、今は隠れたらしい。

『お前はさ……俺の事、好きになってんだよ。』

……え?

ふざけてる気配は全くない。だから余計に戸惑った。

⏰:08/01/30 23:05 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#158 [向日葵]
私が真を?
んな訳ないじゃない。

『じゃあなんで傷ついてる俺を救いたい?夢をこの頃見ない?』

それは……。

『答えを言ってやるよ。まず俺を救いたいと思ってるのわ支えたいとも思ってんだろ?そして2つめ。夢を見ないのは現実にいる俺の存在が大きくなっているからだ。』

……ずいぶん自惚れた考えじゃない。

『そうかな?少なくともお前より何年か年を重ねてる俺は、そう思うがね。』

⏰:08/01/30 23:11 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#159 [向日葵]
そうなの……?私……。

洗脳されるように、真の言う通りのような気がしてきた私は、自問自答した。

でも、分からない。
だって私は人を好きになった事なんてないし……。

それに……。

・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「みかげ。」

ハッとして目を覚ます。

そこには、現実の真がいた。

「風呂、出来たから入れ。んで上がったら勉強すっぞ。」

⏰:08/01/30 23:16 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#160 [向日葵]
ぼんやりする頭でも「勉強。」と言う言葉がちゃんと残っていた。

体を起こして、前に垂れていた髪の毛を軽くかき上げる。

「なんで勉強?」

「もうすぐテストだから。俺地理担当だし。1人でも多く良い点取ってもらわなきゃ教師として意味ないの。」

「知らないしやらない。」

ってかやりたくない。

「そんな訳にもいかないっつーの。単位やばくなっぞ?」

⏰:08/01/31 00:43 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#161 [向日葵]
別にそれでもいい。

「学校ってそんなに大事なの?私には分かんない。勉強しなくたって、なんとか生きていけるはずだもん。」

少しの計算と、少しの文字が読めればいいと思う。

学者を目指してる訳じゃないし。
なんで方程式やら書き手の気持ちやらを学ばなきゃならないんだか……。

「それはまだお前が夢と現実の狭間にいるからだよ。現実に戻って大人になれば、勉強する機会って無くなるんだよ。」

「いいご身分よね。」

⏰:08/01/31 00:47 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#162 [向日葵]
「でなくて。そうしたら勉強が恋しくなるんだよ。それに、学んで知識を得る事は悪い事じゃないぞ。」

それなら早く大人になりたい。
もう後は天命を待つだけになりたい。

楽に生きたい。

「教師の仕事は楽ちい?」

「あ、今噛んだろ。」

「揚げ足はいいから質問に答えてよ。」

真は「んー。」と唸った。
そもそも真は何故教師になろうと思ったんだろう。

⏰:08/01/31 00:52 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#163 [向日葵]
「地理は学生の頃から普通に好きだったからな。別に苦痛に感じた事はないよ。」

「ふーん……。」

「みかげは?好きな教科ないの?」

「昼休み。」

「教科じゃねえし!」

と真は大笑いした。
そんな真は初めてだったから、私はキョトンとしてしまった。

キョトンとしてしまうと同時に、真の顔を改めてマジマジと見る。

輪郭のラインが耳まで綺麗。
目は意外にも切長がで、二重だ。

⏰:08/01/31 00:57 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#164 [向日葵]
鼻筋は一般の人と同じくらい。
笑うといつもみたいな怪しげな雰囲気はなく、どちらかと言えば子供みたいに幼い。

真の子供の頃って、こんな感じだったのかな……。

するとひとしきり笑った真と目が合った。

私はぼんやり真をみつめる。
真は最初、余韻で口元にまだ笑みを残していたけど、段々と真顔になってきた。

その瞬間、奇妙な、不思議な現象が起こった。

体が、床に縫い止められたように動かなくなったのだ。

⏰:08/01/31 01:01 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#165 [向日葵]
時計のせわしない音。

道路を通りすぎる少しうるさいバイクの音。

他の家から聞こえる生活音。

静けさ独特の、耳鳴りのような音。

これだけ周りははっきりとしているのに、私達の間には、時間の流れが遅くなってしまった気がした。

目が合っている。

そう感じれば、真と私の目から、何か通じているような感覚に陥った。

電流のようなビリビリ感。
かと思えば、めまいのようにクラクラしたり。

⏰:08/01/31 01:06 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#166 [向日葵]
ふと、それでいて戸惑いがちに、真が私の頬に触れた。

「みかげ。」

囁くように甘く、何かを目覚めさせるように静かに、真は私の名前を呼んだ。

そこで私は体の感覚を取り戻す。

「風呂、入るわ……。」

服を持って、真の横を通り過ぎる。

脱衣所につけば、自分でも驚くほど真から慌てて離れていた事が分かった。

だって、あの時自分はおかしかった。

⏰:08/01/31 01:11 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#167 [向日葵]
名前を呼ばれた瞬間、足元から崩れそうで、しかもどうしてかその手の温かさに身をゆだねたいとすら思ってしまった。

そんな自分がなんだか危険な気がして、なんとか“自分”を取り戻した。

「私……。」

どうしてしまったのだろうか……。

唐突に、さっき見た夢を思い出した。

いつもなら夢なんて、起きた瞬間忘れてしまうものなのに、何故か鮮明に思い出す事が出来てしまった。

しかもそれは、私をさらに混乱させる。

⏰:08/01/31 01:15 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#168 [向日葵]
[お前は、俺の事好きになってんだよ。]

好き?

真が?

何故?

真は……確かに私が知っているような大人じゃなかった。

それに邪魔者扱いする事はなく、現実から離れていこうとする私を連れ戻そうとさえしてくれる。

根は悪魔で、自己中で、変態なのに、さりげなく、手を差しのべてくれる。

それがおせっかいから来る真本人の親切なのか、ペットを手なずげる手段なのかは分からない。

⏰:08/01/31 01:21 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#169 [向日葵]
「信じない……。」

夢はただの夢。

正夢とか、デジャブとかあるけど、そんな頻繁それらがあっていい訳がない。

夢は言わば、妄想の一種……。

へんな思いを振り払いながら、私は風呂に入る為服を脱ぎ始めた。

――――――……

上がったと真に声をかける為、リビングへと向かった。

「だから……無理だって……。」

⏰:08/02/01 21:36 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#170 [向日葵]
真の声だ。

と言うか、電話してる。

「そういう訳じゃないけど俺だって色々……。あぁ……わかったよ。じゃあまたな。」

と言って電話は終了。

「ん?おわっ!いたんなら声かけろやっ。」

「電話中だっつーのにどうやって声かけんのさ。それより風呂空いたよ。」

「あぁ……。」と、どこか上の空の真。
電話の相手はきっとあのお姉さんだ。

……そうだ。

⏰:08/02/01 21:40 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#171 [向日葵]
私は、たとえ真を好きになったって無駄なのだ。

だって真は、あのお姉さんが好きだから。
私はただの同居人兼玩具。

女として見られる事はまず無い上に、好きになっても片思いのままなのだ。

さっきまで混乱していた思考が、一気に冷めていく。

何真剣に考えちゃってんだか私……。

「アホらしい……。」

「ん?何か言ったか?」

「別に。じゃあおやすみ。」

⏰:08/02/01 21:44 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#172 [向日葵]
そう言って部屋に戻った。

真の頭はお姉さんで一杯らしい。

自分からしようと言ってた勉強の事を忘れている。

部屋のドアにもたれて、私は胸をおさえた。

胸やけ?
なんかすごく気分悪いんですけど……。

ハァー……とため息を吐くと、幾分かマシになった。

でもどこか、チクチクと痛む。

病気なのかも……ー

⏰:08/02/01 21:47 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#173 [向日葵]
そう思いながら、ベッドへ行き、横たわる。

と同時に、風呂の扉が閉まる音がした。
どうやら真が入ったみたいだ。

この頃……真の事ばかり考えてる気がする。

そんな事を思えば、また夢を思い出して混乱しそうだから、頭を振って、何も考えないようにする。

ふと目にとまる、「ゆめみる魚」の絵本。

パラパラとめくりながら、夢への刺激を蘇らそうとする。
このままじゃ、現実に呼び戻されそうで嫌だ。

⏰:08/02/01 21:52 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#174 [向日葵]
読みはじめてからしばらくして、携帯のバイブの音が聞こえた。

自分のかと、さほど執着を持ってない機械をカバンの中から取り出す。
が、何もなかった。

どうやらリビングに置いてある真のものらしい。

しばらく鳴り続けていたから、電話のようだ。
そして気づいた頃には止まっていた。

それからまた1回、また1回と、バイブは鳴り続ける。

いい加減イライラしてきた私は、リビングに行って携帯を盗み見てやった。

⏰:08/02/01 21:55 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#175 [向日葵]
着信3回。
メールが2回。

おーおーおモテになるもんで。
そりゃあのタラシだもんね。
全部女からだろうよ。

と、メールは見るのを自粛して、着信履歴を見た。

見てから私は、携帯を放り出したくなった。
怒りとかじゃない。
ちょっとした恐怖だ。

この頃の日付、全てがあのお姉さんからなのだ。しかも1日に何回も……。

なんのつもり……っ?
頭おかしい。

しかもさっきだって、真と話したばっかりじゃない。

⏰:08/02/01 21:59 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#176 [向日葵]
真は……お姉さんが好きだから苦しんでるだけじゃない。
縛られてるから苦しんでる。

あのお姉さんの、真への束縛は異常だ。

だから真は、真を縛ってない私に癒しを求めたんだ……。

……尚更好きになんか、なれっこない。

それに……。

それに特別を作るのは……怖い。

だって、お母さん達みたいに、突然いなくなってしまったら……。

⏰:08/02/01 22:19 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#177 [向日葵]
小さい頃ながら、覚えている記憶が、走馬灯のように浮かんでは消える。

突然、息が出来なくなると思った。

突然、いなくなってしまったら……。

今度は私、どうやって生きていけばいいんだろう……。

⏰:08/02/01 22:20 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#178 [向日葵]
5P・過去の箱

魚はまよったうみで、あたらしいなかまをみつけました。

ゆめよりも、あたらしいなかまとともにすごすことが、だんだんとたのしくなってきました。

あそんでいるそのとき、なにかはこをみつけたのです。

「あけてみようよ。」

「でも、あけてはいけないきがするよ……。」

・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

その晩、真は遅くに帰ってきた。

⏰:08/02/01 22:24 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#179 [向日葵]
と言っても、12時を過ぎる前。
今日は金曜日。明日は土曜日で休み。
成人男子が夜遊びして帰ってくるのにはどちらかといえば早い気がする。

玄関を開けた真と、リビングへ飲み物を取りに部屋から出た私とは、ほぼ同時だった。


「お帰り。もう寝る?」

とだけ私は言った。
真も遅くなった理由は話したくないのか、「あぁ。」と力無く行って私の前を通り過ぎる。

でも私は、遅くなった理由が分かった。

⏰:08/02/01 22:30 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#180 [向日葵]
真の首筋に、何個かの赤い跡。
人生経験且つ恋愛経験が少ない私でも、それが何を意味してるかぐらい分かった。

そう……。
お姉さんと……。

どうでもいい筈なのに、胸がまたモヤモヤ気持ち悪かった……。

――――――――……

「みかげったらぁっ!」

ぼんやりしていた私を、多香子は叱りつけた。

「あ……ゴメン……。」

「どうかした?最近ちょっと変よ?」

⏰:08/02/01 22:35 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#181 [向日葵]
「別に。テスト勉強してたらこの頃遅くまで起きちゃってて……。だから寝不足なだけ。」

普段寝すぎなだけにテストさえちゃんとしとけば何も言わないだろう。

ちゃんとしたギブアンドテイクだ。

「そ。ならいいんだけど。そういえば、学祭どうする?」

テストが終わればすぐに学祭が始まる。

去年は展示で、和紙で作った色付きの花を教室中に飾った。
係が済んだその後は、ずっと屋上で寝そべってたっけ……。

⏰:08/02/03 12:48 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#182 [向日葵]
「何でもいい。出来たら展示がいいけど。」

「劇とかしたくない?なんか楽しそうだしさぁ。」

「劇……?そんなの勝手にやっててくれ。私は不参加決定だね。」

大体、学祭なんて何故しなくちゃならないのか。
普通に授業しといてくれれば心置きなく寝ていられるのに。

「でもクラスの子に聞いてみたら皆結構劇やりたがってるみたいよ。」

マジでか。
チャレンジャーだな皆さん。

⏰:08/02/03 12:52 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#183 [向日葵]
「それに、学校行事は出来るだけ出た方が内申にいいよー。アンタそれでなくても生活面に関しては決して良いとは言えないんだから。卒業云々よりも進級が難しくなるわよ。」

図星をつかれて軽く頬を膨らます。

冗談じゃない。
こんなトコ、早く抜け出したいのに、卒業出来ない上に1個下のガキと1年共に過ごすなんて……耐えられるかっ!!

「出るしかないかぁ……。」

⏰:08/02/03 12:59 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#184 [向日葵]
学祭は参加すると帰りが遅くなるから真がまたうるさいかもしれない。

そう思ったら、また前の出来事で頭が一杯になった。

別に遅くなってもいいか。
どうせアイツだって、お姉さんといやらしい事してんだし……。

もう抱き締めていいか聞かれたって絶対に抱き締めさせてなんかやらん!

と決意を固め、私はその日1日を終える。

次の日、予想だにしない人が、私を訪ねてくるとも知らずに……。

⏰:08/02/04 00:00 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#185 [向日葵]
そして問題の次の日。

私は見た事ある人物を、帰りがけ校門に発見した。

向こうも私に気づいたらしく、柔らかく笑って会釈した。

「こんにちわ。」

綺麗なその声は、紛れもなくあのお姉さんのものだった。

「あ、真……じゃない、松川ならまだ学校で……。」

「違うの。今日は、貴方とお話がしたいと思って。」

私は瞬きを繰り返す。

「私に……?」

⏰:08/02/04 00:04 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#186 [向日葵]
乗ってきたクリーム色の車に私を乗せて、お姉さんは近くの洒落た喫茶店に入った。

メニューを見るなり目が飛びそうになった。

紅茶1杯800円?!
お姉さん入る見せ間違ってんじゃないの?!

そんな私の心配をよそに、お姉さんは手慣れた様子で店員さんに「ダージリンで。」と言った。

「貴方は、何か決まった?」

「え……っ。じゃ、じゃあセイロン?を……。」

注文を聞いた店員は、店の奥へと入っていく。

⏰:08/02/04 00:10 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#187 [向日葵]
「改めまして。私、東堂(とうどう)つぐみって言います。」

「あ、みかげです。ってか、なんですか?私に用?って……。」

「貴方、松川君とはどういう間柄なの?」

「生徒兼居候です。」

お姉さんは首を少し傾げて「居候?」と聞き返した。

事情をかい詰まんではなすと、お姉さん、もとい、つぐみさんは納得いったように頷いた。

「何か質問はありますか?」

⏰:08/02/04 00:15 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#188 [向日葵]
「そう……。松川君は、やっぱり優しいのね。」

うっすら微笑んで、つぐみさんは呟いた。

え?優しい?
あのタラシスケベが?

私はとりあえずその疑問を彼方に放り投げて、分かりきった事をつぐみさんに聞いた。

「つぐみさんは、松川が好きなの?」

つぐみさんは困ったように笑いながら顔を赤らめた。
やっぱりそうなのだ。

「……でも、好きなのはいいけど、何度も連絡するのはどうかと思うよ。」

⏰:08/02/04 00:19 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#189 [向日葵]
口をついて出た言葉は、最早後戻り出来ないものだった。

我に返った私は内申冷や汗だらけだった。

それでもつぐみさんは、一瞬キョトンとしたものの、すぐに苦笑いをした。

「ダメね、私……。どうしても、癖でね、やってしまうの。」

「癖?」

それはまた大層な……。

「少し、昔話をさせてくれる?」

私は頷いた。

⏰:08/02/04 00:23 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#190 [向日葵]
「私ね、貴方と一緒で、両親がもういないの。10歳の頃かしらね。駆け落ちだった私の両親は、身よりがなかったから、私は両親の友達夫婦にお世話になってたの。」

つぐみさんは、友達夫婦に預けられて楽しく過ごしていたらしい。

でもやはり、家族でない引け目があって、心から馴染む事は出来なかったのだと言う。
それでも友達夫婦を無くせば自分にはそれこそ何も残らなくなってしまうから、必死になって、すがりついていたと言った。

「松川君はね、幼なじみなの。」

唐突に言うものだから、返事が曖昧になってしまった。

⏰:08/02/04 00:29 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#191 [向日葵]
「は、はぁー……。」

「松川君はずっと側にいてくれて、お世話してくれる夫婦より、何より私の心の拠り所だったの。そんな彼に、どんどん惹かれていったわ。」

微笑んでいたつぐみさんの顔が、急に暗くなった。

「でもね……。」

********************

松川君と付き合える事になった私は、彼を物凄く束縛してしまったの。

「ねぇ松川君。さっき喋ってたのって、2組の林さんよね?」

「それが、何?」

私は彼を誰にも捕られたくなくて、特に女の子との接触を何より嫌ってたの。

⏰:08/02/04 00:35 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#192 [向日葵]
「彼女がいるんだから、あまり周りの子と喋らないでよ!そういうのヤダ!!」

「あー……分かった分かった。」

最初は、松川君も私の気持ちを尊重してくれたの。
でも私は頭に乗って、松川君を更に縛りつけた。

「また喋ってた!ヤダって言ったじゃない!」

「用事があるんだから仕方ないだろ!」

「伝言で誰かに言ってもらえば済むことじゃない。」

私は両親を亡くした事から、大切な人が自分から離れていく事を極端に恐れたの。

⏰:08/02/04 00:40 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#193 [向日葵]
あの時の私は、松川君を縛りつける事で、なんとか自分の方へ気持ちを向けさせてたけど……。

物には、限度ってものがあるから……。

「もういい。普通の友達に戻ろう。俺……疲れた。」

そう言われた瞬間、私の中で何かの歯車が狂って、気づけば、泣き叫んでいたわ。

ちょっとした精神病にかかっていた私は入院。
当然、彼とは、自然消滅して、それから会う事はもう無かったの。

*******************

「だから、また会えた時嬉しかったの。もう1度、前みたいに戻りたいって。そう思ったら、また暴走しかけてる自分がいるのよね……。」

⏰:08/02/04 00:45 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#194 [向日葵]
つぐみさんの話を聞いてる半分、私は違う事を考えていた。

私とつぐみさんは、あまりに似すぎている。

違う所と言えば、思想。

つぐみさんは何かを失った事により、真と言う限りある存在に執着した。

私は失った事によって全てが嫌になり、目を背けている。

真は何故私を引き取ったのだろう。
実は前から気になっていたのだ。

もしかして真は、自分のせいでつぐみさんを壊してしまい、修復出来なかった事を今でも後悔してるんじゃないのだろうか。

⏰:08/02/04 00:49 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#195 [向日葵]
そして、同じような境遇の私が出現した事によって、今度こそ助けたいと思ってるのではないだろうか。

私は……ただの代わりか。

ならもうごっこはいらない。
好きなようにつぐみさんと過ごせばいい。

そうすれば、私はまた夢の中へといけるのだから……。

話している最中に来た紅茶の代金を机に出して、私は席を立った。

「そんなに心を縛らなくても大丈夫。大事にしたいと思えば、おのずと結果は見えてくる筈だから。」

⏰:08/02/04 00:53 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#196 [向日葵]
軽く頭を下げて、私は喫茶店を後にした。

車が行き交うのを目の前で見ながら、私はぼんやりと考えていた。

ごっこも終わり……、若者改造計画も終わり……。

なら、真にとって私はお払い箱だ。

そうしたら、必然的に私はあの家を出なくちゃいけなくなる。

また……振りだし。

真はちゃんと次の場所を探してくれるだろうか。
それともアイツの事だから、自分で探せとか言うかな。

⏰:08/02/04 00:57 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#197 [向日葵]
結局私は、誰かの特別な存在となる事はあり得ないんだ。

流されて海を漂う流木を止めてくれるものは何も無い。

私も正にそのようなものだ。

早いとこ、荷造りしておこう……。

いつものマンションについて、私は私専用の鍵でドアを開けた。

入れば、靴があった。

真が帰っているらしい。

黙って部屋に行こうとすると

「ただいまくらい言えんのか馬鹿たれ。」

⏰:08/02/04 01:01 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#198 [向日葵]
振りむけば、リビングに続く出入口に、真が腕を組みながらよっかかっていた。

私は真を見た途端に、何だか疲れがどっと体を襲った。

「自分だって言わない時あるじゃん。私にばっかり咎めないでよ。」

えらくツッケンドンした言い方になった為か、真は片方の眉を上げた。

「どうかしたのか?何をイライラしてる。」

「どうもないっ。疲れてるだけっ。いちいち私に口出ししないで!」

「なんだよお前。月1のアレか?」

⏰:08/02/04 22:53 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#199 [向日葵]
おどけた口調の真になんだか腹が立って、持ってたカバンを投げつけた。

「もう嫌!なんで私がアンタの言う通りにならなきゃなんないの?!アンタが提案したゲームだって全然楽しくもない!」

「おいみかげ。落ち着けって。」

「夢を見るな現実を見ろ?一番現実見ずに代わり作ってるのはどこの誰だよ!」

「……何の話?」

真は怪訝そうに顔色を変えた。
心外とでも思ってるのだろうか。

いや、代わりになってた私の方が心外だ。

⏰:08/02/04 22:58 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#200 [向日葵]
「今日、つぐみさんと会った。アンタの過去の話も聞かせてもらったよ。」

「それで?何よ代わりってさ。」

「とぼけないで。自分が一番分かってるくせに!」

それでも、真は分からないと言った表情を浮かべている。

「真は……つぐみさんが好きなんでしょ。私の歳ぐらいだった時のつぐみさんを救えない代わりに、同じ境遇の私を救う事で満たされようとしてる。違う?」

真は黙ったまま私を見ていた。
その顔からは、動揺も、困惑も見当たらない。

⏰:08/02/04 23:03 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#201 [向日葵]
やっと口を開いた時、真は驚くほど冷静だった。
顔に出ないだけで、もしかしたら図星をつかれて不機嫌になったのかもしれない。

「仮に……だ。俺がお前をつぐみの代わりとしてても、別にいいんじゃないのか?お前は刺激を、俺はつぐみを。計算は間違っちゃいないだろ。」

そう言われればそうなのだ。

じゃあ何故私はこんなにも怒って、やるせない気分になってるんだろう。

「ううん……。間違ってるよ。」

⏰:08/02/04 23:07 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#202 [向日葵]
私は世の中のありきたりさに飽きた。
いや、ありきたりを送っていると、いざ何かが起こった時に対処出来ないから刺激を求めた。

コイツは暇つぶしの為に私を玩具とする為と、私に現実を見せる為に恋人扱いをしている。

最初の約束はこうだった。

私の約束事は変わってない。

……なのに。

「私は何かの代わりとなる為にアンタの案にのったんじゃない。」

⏰:08/02/06 01:46 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#203 [向日葵]
それだけ言って、私は部屋に閉じこもった。

これだけ言ったのだからもうごっこは終わりだろう。

……なのになんで、こんなにスッキリしないんだろう。

刺激が無くなってしまうから?

また見つければいいだけの話じゃないか。

別に、真に、いや松川にこだわる必要なんか、これっぽっちもないのだから……。

モヤモヤと考えを巡らせていると、携帯のバイブが鳴った。

⏰:08/02/06 01:49 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#204 [向日葵]
「もしもし。」

{あ、みかげ?今いい?}

電話は多香子だった。

「何?」

{明日ね、数学教えて欲しいの。ホラ、みかげ数学得意じゃん?だからテストん時に出す課題一緒にやりながら教えてーっ。}

まぁいいだろう。
ここに帰って来ても、もう何も無いのだから。
暇で仕方ない。

「うんいいよ。分かった。」

――――――――……

⏰:08/02/06 01:53 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#205 [向日葵]
「で、ここにXと2を入れて……。」

次の日の放課後。
私は多香子と約束通り勉強中。
図書室にこもって静かに課題を終らせていった。

「みかげ……。アンタいっつも寝てるくせに……。」

なんでそんなに分かるのかと言いたいらしい。

私は頭を指でチョンチョンと叩いた。

「ここが違うから。」

「何私を馬鹿っていいたいの?」

⏰:08/02/06 01:56 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#206 [向日葵]
そんな他愛もない話をしていると、多香子が急に言った。

「松川とはどうなの?」

心臓が何故か跳ねる。

「な、何が?」

「あんなのと一緒だと、しんどくない?」

「別に。っていうか、あんまり喋んないから。」

喋ってもケンカする事が多いし。

「……。あのさ、変な事言っていい?」

「何?」

⏰:08/02/06 01:59 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#207 [向日葵]
「みかげって……松川が好きとか?」

「はぁ?!」

思わず大きな声を出してしまった。
それでなくても静かな図書室が、更に静かになった上、図書室を担当してる先生に睨まれた。

夢の中の松川といい、多香子といい、なんでそんな事を言うのか。

「近頃のみかげってさ、なんか人間味が戻ってきたって感じするんだよね。」

「だからってなんで……。」

「つまり変わったって事。」

⏰:08/02/06 21:48 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#208 [向日葵]
「変わったからってなんだって言うのよ。」

「変わりだしたの松川が現れてからだからさ。もしかしたらー……って思っただ・け。」

と言って、多香子はまた問題を解き始めた。

思っただけなら何も言わないで欲しいものだ。

こっちは恥をかき損じゃないか……。

しばらくして、担当の先生が下校時間だから帰るようにと言ってきた。

まだ分からない所があるからと、私を引き止めた多香子は、近くのファミレスに私を連れて行った。

⏰:08/02/06 21:53 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#209 [向日葵]
「あ、みかげ。時間大丈夫なの?あんまり遅くなると松川うるさいんじゃ……。」

「別にいいよ。うるさくもないし。」

半分嘘だけど。

でも昨日の事もあって、私の心の中は反抗心でいっぱいだった。

「まぁ、ほどほどに……。」

7時頃になっても、私は帰る気がしなかった。
ファミレスを出て、近くの公園でなんだかんだ喋ってから帰る頃には、9時を回っていた。

⏰:08/02/06 21:58 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#210 [向日葵]
部屋に帰りながら松川の嫌味攻撃をどう対処するか頭でシミュレーションした。

最終的には部屋に逃げよう。

逃げるが価値ってなもんだ。

と決心を固めて、いざ部屋へ。

しかし。

「……あ、れ……。」

部屋はまっ暗。
松川の靴すらなかった。

テスト準備って、そんなに時間がかかるものなんだろうか……?

⏰:08/02/06 22:02 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#211 [向日葵]
拍子抜けした。

玄関の電気をパチンとつければ、オレンジ色の温かい光が辺りを照らす。

フゥとため息をついて、風呂の用意へ向かう。

風呂が出来るまでと、リビングでテレビを見る。
対していい番組なんてなかったけど、とりあえずつけとく事にした。

その時、ニュース速報の音が流れた。

反射的にその文字の所を読む。

内容は車の大規模な事故があったとの事だった。
しかも事故が起こった場所は、この近くの道路だった。

⏰:08/02/06 23:54 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#212 [向日葵]
私は吐き気に襲われた。

車事故で亡くなった両親……。

もしかして……松川も……巻き込まれたとかじゃ……。

アイツは車通勤だ。
その可能性は大いにある。

な……なんで私、こんなに動揺してるんだろう……。

私はソファーに座ったまま、動けないでいた。

大丈夫。なにかあれば、電話くらいかかってくるだろうし。第一事故に遭ったと決まった訳じゃないし……。

⏰:08/02/06 23:58 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#213 [向日葵]
心配するだけ……無駄なんだってば……。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

ガチャガチャと言う、せわしない音が玄関から聞こえたのは、それから2時間してからだった。

あれからソファーに座りっぱなしだった私は、弾かれたように立ち上がり、玄関の方へリビングの出入口から顔を出した。

そこには、靴を脱いでる途中の松川がいた。

無意識にホッとする自分をよそに、松川に何も言葉をかけず、部屋へ行こうとした。

⏰:08/02/07 00:02 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#214 [向日葵]
「……おかえりとか、言ってくれないの?」

茶化した、だけど疲れているような松川の声に、私は足を止めて振り向いた。

「なんか、別にいっかなって。疲れてんなら風呂入りなよ。」

「ってかなんでお前まだ制服?」

「……さっきまで、多香子と勉強してたから。外で。」

本当は2時間前だけど。

松川はゆっくりと私の前にやって来た。

「遊びほうけてんじゃねぇぞみかげ。」

⏰:08/02/07 00:05 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#215 [向日葵]
その言葉にカチンと来た。

確かに半分遊んでたけど、勉強してたのは確かだ。

どんな理由か知らないけど、遅くに帰ってきた松川に、そんな口きいて欲しくない。

そんな思いを募らせていると、フワリと何かが匂ってきた。

「……香水……。」

私は呟いた。

確かに、おばさんがつけてるようなのではなく、優しい草花のような匂いが私の鼻まで届いた。

⏰:08/02/07 00:09 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#216 [向日葵]
松川は私の呟きは聞こえていない。

そして何故か、さっきより距離を詰めていた。
思わず、少し後ずさる。

「何……。」

「抱き締めさせて。」

と、有無を言わせず私の手を引いた。

もう少しで抱き締められるという瞬間、私は見てしまった。

首筋に、前よりついてる赤い痕。
カッターの襟に、少しだけついてる口紅。
さっきより増して香る、香水の匂い。

⏰:08/02/07 00:13 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#217 [向日葵]
気づいた時には、私は松川を力一杯両手で押し退けていた。

松川は、少しだけしか下がらなかったけど。

「……?どうした。」

「やめて……。いい加減にして……。」

「みかげ……?」

馬鹿みたい。
何が事故かも、よ。

やっぱり無駄だった。
さっさと風呂に入って寝てれば良かった。

事故かもと思ったら、連絡があるかもしれないと、私はリビングから動けずにいた。

⏰:08/02/07 00:17 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#218 [向日葵]
そんな忠実な犬みたいに、待っていただなんて。

自分に笑ってしまう。

「アンタ、何がしたいの?私で遊ぶの、もうやめてくんないかな……。私そんな、暇じゃないんだよ。」

「遊び?別にそんなつもりは」

「じゃあ何?つぐみさんが遊び?だから痕が残るような行為出来るの?」

松川は「痕?」と呟いた。

「この前も、首に赤いの、残ってたよ。知らなかったの?」

⏰:08/02/07 00:20 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#219 [向日葵]
そこまで言うと、松川はようやく気づいたのか、ハッとして首を右手で押さえた。

「結局好きなんでしょ?だから私に抱きつかないで。私もアンタに刺激を求めない。だから好きなように動きなよ。もう……ごっこは終わりだ。」

そこまで言ってから、私は胸が苦しくなった。

何でこんな気分にならなくちゃいけないんだ。
夢を見てれば、全て楽に毎日が過ごせたのに……。

眠れないのも、夢を見ないのも、頭がぐちゃぐちゃになるのも……全部松川のせいだ。

「それで早く……私を別の所に連れていけばいいよ。」

⏰:08/02/07 00:25 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#220 [向日葵]
「みかげ。……そんなつもりな」

「早く追い出せっつってんでしょ!!」

松川の言葉を遮って、私は叫んだ。

もうとっくに気づいていた事だ……。

「荷物なら、それなりにまとめとくから……。」

「みかげ……!」

松川の声を、部屋のドアを閉める音でかき消す。

それから私はベッドに倒れるようにして寝転んだ。

涙が流れた。

⏰:08/02/07 00:29 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#221 [向日葵]
とっくに気づいていた事だ……。

でも認めたくなかった。

私は……松川が……真が、好きなんだ……。

夢で真が言った通り、私は真がいるから眠る事が少なくなったんだ。

ただ、夢から覚めた時通り、好きになっても片思いなのだと言う事も、紛れもない事実だったんだ……。

⏰:08/02/07 00:31 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#222 [向日葵]
6P・網

はこをみつけた魚は、はこをあけてからまったくねむれなくなってしまいました。

「なんでだろう。」

魚がいいました。

「きっとまほうがかけられていたのさ。」

なかまの魚がいいました。

・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・

「みかげ。少し話をしないか?」

真が言った。

⏰:08/02/07 00:35 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#223 [向日葵]
「いやだ。」

私は答えた。

「何か、誤解してないか?別にお前を追い出すつもりなんて俺には更々ない。」

「私もずっとここにいようなんて気、更々ない。」

真はつぐみさんが好きで、つぐみさんも真が好き。

真はまた縛られるかもしれないと言う恐怖感と、傷つけたつぐみさんを助けてやれなかった失望感にさいなまれている。

好きな癖に、あと1歩が踏み出せない。
だから同じ境遇の私で満たされようとしている。

⏰:08/02/07 00:39 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#224 [向日葵]
でも明らかにその考えは間違いだ。

私でいくら満たされようが、事は前に進まない。

私が真を好きと気づこうがそんなの知ったこっちゃない。

全てを綺麗にまとめるには、私がどこかへ行った方がいいのだ。

いくら刺激と言えど、トラブルの刺激なんかご免被りたい。

「みかげ。あの痕の訳はな」

「訳なんてあるの?合意の元でしょ。そんなつぐみさんが悪いみたいな言い方やめなさいよ。第一、私にそんな事の説明なんていらないから。」

⏰:08/02/07 00:44 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#225 [向日葵]
「じゃあ何で人の話を聞こうとしないっ!」

そう言って、私の両肩を壁に押し付けた。

真の顔は、不機嫌そのものだ。

「そう言って嫌な事全部に目ぇ背ける気か?逃げるのか?それはさぞかし楽だろうなぁ!」

「逃げてんのはどっちよ!好きなくせに……つぐみさんを抱くくせにはっきりしないアンタは逃げてないって言うの?!」

「俺はつぐみが好きなんて一言も言ってない。」

「じゃあ好きでもないのにそんな事したの?それこそ最低だ!」

⏰:08/02/07 00:49 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#226 [向日葵]
パシッと小気味よい音が鳴った。
私は真に、平手をお見舞いしていた。

「女が……全部アンタの玩具になると思うな。私に説教する前に、自分が何か代わりなさいよ。」

平手をくらった頬を擦りながら、何故か真は笑っていた。

「まさか殴られるとはなぁ……。」

「はぁ……?」

「俺が代わって、お前を追い出せば満足なのかよ。」

形勢逆転で、今度は真が私を責めたて始めた。

⏰:08/02/07 00:56 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#227 [向日葵]
「違うだろ?それはお前が楽になるんだろ?はっきり言ってやるよ。お前、俺に惚れてんだろ?」

否定してやりたかったのに、突然真実を言われた私は、つっかえて拒絶の言葉を何個も言い逃してしまった。

「依存すんのを恐れてのめり込んでしまう前に忘れてしまおう。忘れてまた楽になる為に夢を見よう……。そんなとこか?」

「ちが……っ。」

「みかげが俺を……ねぇ。案外ごっこも役に立ったもんだ。こんな面白い展開になるとはな。」

⏰:08/02/07 01:01 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#228 [向日葵]
まるでゲームを楽しんでるような口ぶり。

私の気持ちを軽く見られてる気がして頭にきた。

「面白いって何……?アンタ私をどうしたいの?」

「恋愛したいならするけど?」

「ふざけんな!アンタなんか好きじゃない!」

言っても真はニヤニヤするばかり。
「そんな事言っても、本当は好きなんだろ?」とでも思ってそうな顔。
それが更に私を逆上させる。
でも怒れば怒るほど、コイツを面白くさせてる気がして、反応するのをやめた。

⏰:08/02/07 01:06 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#229 [向日葵]
「もういい……。疲れた。部屋に行く。」

「一緒に寝てやろうか?」

キッと睨んで、私は部屋のドアを力任せに閉めた。

*********************

イチかバチかだった。

話をさせてくれないみかげの有利な位置に立つには、みかげの興味をこちらに向けなければいけない事が最優先だった。

だから言ってみた。

「俺に惚れてるんだろう。」と。

⏰:08/02/07 01:10 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#230 [向日葵]
言葉を失ったみかげを見て、「マジで……?」と呆気にとられた分嬉しかった。

この間、痕の件でもめた時のみかげの発言は、どちらかと言えば嫉妬の部類だった。

そんなみかげを見れば、たまらなく愛おしさが溢れてきた。

なのに彼女は自分を追い出せと言ったのだ。

みかげは今は自分の心の支えだ。
つぐみとの間で揺れているのも正直な意見だけど、みかげがいれば、つぐみの件で自分を責めないでいられる。

⏰:08/02/07 01:15 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#231 [向日葵]
つぐみの事は、早く終わらせなきゃならない。

今度こそ、傷つけずにすむように……。

******************

今日はテストの日。

寝不足と言う言葉とは無縁な私は、多香子の目の下のクマを見て笑った。

「笑うことないでしょー。仕方ないじゃない。暗記する事がいっぱいだったんだから。」

「それにしたってひっどー。普段からやっておけばそんな残念な事にならなかっただろうに。」

⏰:08/02/09 00:29 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#232 [向日葵]
怒る多香子を尻目に、私は外を眺める。

真の事。

自分で自分の気持ち気づいたとたんに気づかれるだなんて……なんたる失態。

アイツは多分これからその事を良いことに絡んでくるに違いない。

時々、真を好きなのは錯覚じゃなかろうかと思う。

アイツといたら、言動にムカつき、余裕の笑みに暴力反対派の私がグーで殴りたい衝動にかられる。

私は一体、真のどこに惹かれたのだろうか。

⏰:08/02/09 00:33 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#233 [向日葵]
「席につけ。」

チャイムと共に入って来たのは、真だった。

相変わらず裏表は使い分けてて、未だ裏の真を知るものはいない。

多香子にも、裏の性格は言ってない為、家でもあんな堅物面してると思ってるらしい。

そんな事をぼんやり思っていると、ふと真と目があった。

意味もなく、どきりとさせられる。

そんな私に、真が意地悪な笑みを浮かべたように見えた。
いや、誰にも分からないように、ほくそ笑んだんだ。

⏰:08/02/09 00:39 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#234 [向日葵]
内心で「くそっ。」と悪態つく。

本当に私おかしいんじゃないか?!
なんであんな悪魔の化身みたいな奴をっ!!

頭をひそかに抱えている内に、答案用紙が配られ、教室内は一気に緊張した。

――――――――……

「葛。ちょっと来い。」

今日は1科目だけしかテストじゃない為もう下校。

そんな私を、真は呼び出した。

向かった先は、いつも2人の溜り場になってる社会科準備室。

⏰:08/02/09 00:43 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#235 [向日葵]
真は先に私を入れて、ドアを閉めて、念のために鍵をかけた。
別に何の意味もない事は知ってるけど、ガチャンと音がすると、心臓がドキンと跳ねた。

「何のよう?」

「会いたかっただけ。彼女に甘えても罰は当たらないだろ?」

「ふざけんな。彼女だなんて、思った事もないくせ……っ。」

急に後ろから抱き締められて、硬直する。

この前、抱き締められたらすぐに突き放すと誓いをたてたのに、そんな誓いすらどこかへ消え去ってしまった。

⏰:08/02/09 00:48 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#236 [向日葵]
耳元で、くすりと笑う音が聞こえた。

「何?緊張してんの?うぶだねー。」

「は……?べ、別に?びっくりしただけ!離しなさいよ!」

「説明させてくんない?」

「何を。」と聞く前に、真は答えた。

「首の痕の事。」

こんな状態でそんな事言われては、居心地が悪い。

私は身をよじって離れようと試みたけど、意外にも、真ががっちりと抱き締めていた為、無理だった。

⏰:08/02/09 00:51 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#237 [向日葵]
「聞くって言わないと、お前にも痕、つけるよ?」

怪しげな囁きに、される事を想像して、一気に頭に血が上った。

「聞く聞く!聞くから離せぇぇっ!!」

ともがくと、あっさりと腕から解放された。

私は出来る限り狭い部屋で真から距離をおく。

「何もないよ。」

「は?」

何が……?

「だーかーら。何もない。つぐみとは、別にいやらしい事なぁーんにもしてない。」

⏰:08/02/09 00:55 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#238 [向日葵]
近眼の人かと言うくらいの目つきの悪さで私は真を見た。

何にもない?
んな訳ないじゃないか。
なんてったってコイツは女タラシのスケベ野郎なのに。

「そんな嘘に、私が騙されるとでも思ってんの?」

「あのね、キスマークぐらい簡単につけれるの。なんだったら試してみっか?」

「は、話をそらさないで!」

そこで真はスッと真剣な表情になる。

「本当だよ。つぐみとは、何もない。この前うろたえたのは、キスマーク見つかった事に対する驚きだけ。」

⏰:08/02/09 01:31 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#239 [向日葵]
「……信じてほしいかもしれないけど、私はそこまで良心的じゃないから。」

この居心地が悪い空間から早く抜け出したくなって、私は真の隣をすり抜けようとした。
でも、腕を掴まれて、私の動きは止まった。

「何で信じてくれないの?」

真の顔は、珍しく悲しそうだった。
その顔に、少し心が痛む。

「本当だ。つぐみがただつけたいって言ったから好きなようにやらせただけだ。お前も過去の話を聞いたのなら、アイツの精神力がどれだけ脆いか知ってるだろ?」

⏰:08/02/09 01:36 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#240 [向日葵]
知ってるけど、事実が分からない以上、手放しで信じる事はまず難しい。

そんな私の心を読んだのか、真は黙ってしまった。

沈黙が流れたと思うと、ため息が聞こえた。

「証明してやるよ。いかに簡単な事か。」

何の事だか、始めはよくわからなくて、あれこれ考えている内に掴まれていた腕を引っ張られた。

すると、首筋に温かさを感じた。

それは紛れもなく、真の唇だった。

⏰:08/02/09 01:40 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#241 [向日葵]
「ちょ……っ!」

「やめろ!」と大声を出す前に、真は私を離した。

「今日も遅くなるから晩飯よろしくな。」

色んな言いたい事があったのに、それ以上に頭がごちゃごちゃになってしまったせいで、ドアを力任せに思いっきり閉めてやる事しか出来なかった。

やっぱりアイツはあーゆー事かんったんに出来る奴なんだ……っ!

悲しい顔に油断した私が馬鹿だった!!

もう2度と労ってやるものかっ!!

⏰:08/02/09 01:44 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#242 [向日葵]
触れられた所を、指先でそっと撫でた。

途端に思い出す。

熱く感じた唇の温度。
想像していたより柔らかかった唇の感触。
いつも身にまとっている香水か洗剤かわからない香り。

それだけなのに、思い出してしまう自分がひどくいやらしく思った。

頭を振り、思いを飛ばすようにしながら私は教室に戻った。

「あ、みかげぇ!」

入るなり、待っていたらしい多香子が抱きついてきた。

⏰:08/02/10 11:53 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#243 [向日葵]
「よぉかったぁー!松川に連れてかれてからなっかなか帰ってこないから心配したよーぅ。」

「大袈裟。別に心配するような事ないよ。」

「だぁって……。ん?みかげ。なんか首赤いよ?」

抱きつかれた多香子の腕をやんわりと外していた私は、動きを止めた。

「赤……い?」

「うん。ほら。」

と 出された多香子のコンパクトミラーを見ると、虫さされのような痕があった。

それは間違いなく、さっき真の唇を感じた所だった。

⏰:08/02/10 11:58 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#244 [向日葵]
[証明してやるよ。いかに簡単な事か。]

――――――っ!!
アイツ…………っ!!

「た、多分、虫、……っが!」

「あーもうすぐ夏だしねー。早い蚊が少しは飛んでるかもね。」

……多香子の頭が弱くて本当に良かったと改めて思う。

それにしても……本当に簡単な事なんだな……。

少しは信じてやっても……いい訳ないっ!!
こんな事しやかって!!

⏰:08/02/10 12:04 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#245 [向日葵]
※訂正

×しやかって

○しやがって

です

⏰:08/02/10 12:05 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#246 [向日葵]
「多香子!帰るよ!」

「あ、うん。」

やっぱりタラシだった!
やっぱりスケベだった!

最低!アイツは最低!

「―――ちゃん……。」

晩飯なんか作ってやるか!
遅くに帰ってきてコンビニに向かうがいいさぁ!!
ハハハハハハ!!

「みかげちゃん!」

「へ?」

校門を丁度出た時だった。
呼ばれたから振り返ると……

「あ、つぐみさん。」

⏰:08/02/10 12:09 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#247 [向日葵]
「こんにちわ。」

「あ、ども。」

粗末なあいさつをしても、気にしないと言う風ににっこり笑っている。

「みかげ、私じゃあ先に帰るよ。」

多香子はそう言って、つぐみさんにペコッと頭を下げると乗ってきている自転車で帰った。

「ってか、よく私がこの時間帰る事分かりましたね。」

「松川君に聞いたの。久しぶりにみかげちゃんとお話したくて。」

「私と……?」

⏰:08/02/10 12:17 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#248 [向日葵]
つぐみさんは一層笑って私の手を握った。
そして詰め寄る。

「みかげちゃんならね、私の相談に的確に答えてくれそうな気がするの。だからね、お友達になってくれない?」

「お、おと、お友達……?」

友達を申請してくるなんて、つぐみさんが初めてだ。

つぐみさんは目をキラキラさせて私を見つめる。
きっとここで私が断ると、捨てられた子犬みたいな顔をするだろう。

……いつからこんなにお人好しになったんだか……。

⏰:08/02/10 12:25 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#249 [向日葵]
「あ、あぁ……まぁ……。」

「本当?ありがとうー!!」

と言って抱きついてきた。

その時、フワリとつぐみさんから良い香りが漂ってきた。

それは、真と同じ香りだった。

普通香水って女の人用とかある筈なのに、つぐみさんはわざわざ真と同じものを買ったんだ。

どうしてか、切なくなって、泣きたくなった。

⏰:08/02/10 12:29 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#250 [向日葵]
*******************

「松川君。」

いつもの飲み屋で、つぐみは待っていた。

「毎日呼ぶのやめてくれないか?俺だって忙しいんだ。」

つぐみの隣に座る。
ビールとつまみを頼んだ後、出されたおしぼりで手を拭いた。

「ゴメンネ。あ、今日みかげちゃんと会ったんだ。」

俺は固まる。
みかげは過去の俺達の話を聞いてから態度が更に堅くなになってしまった。

⏰:08/02/10 12:36 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#251 [向日葵]
「あの子良い子だね。お友達になれて嬉しいっ。」

あぁ……友達になっただけか……。

「……松川君。私と、やり直してくれないかな……。私あの頃とは少しは変わった……」

「それは出来ないっていっただろ。」

出てきたビールの気泡を眺めながら言った。
隣から、つぐみの悲しそうな視線が突き刺さる。

「友達……でも、ダメ……?」

「……。」

「ダメなの……っ?」

⏰:08/02/10 12:43 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#252 [向日葵]
深くため息をついて、出てきたつまみを一口食べた。

「あんまり……連絡すんなよ。」

隣をちらりと見れば、つぐみは嬉しそうに頷いていた。

「よし!今夜はいーっぱい飲もうね!」

とつぐみはビールを頼み始めた。

友達関係なら、昔のようになれるだろう。

俺だって、つぐみが嫌いな訳じゃない。
出来れば、わだかまりを無くしたいと思ってたから。

⏰:08/02/10 12:50 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#253 [向日葵]
また楽しく、つぐみと過ごせる事は嬉しく思う。

*******************

あぁ……なんてお人好しなんだ私。

テーブルの上に並べた料理の数々を見ながら私は思った。

毒されてるなぁ……真に。

まぁ、なんだかんだで私を養う為に働いてるんだし。
恩を返せと言われる前に少しでも返してやろうじゃないか。

「さて……風呂入って勉強すっか……。」

⏰:08/02/10 12:57 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#254 [向日葵]
・・・・・・・・・・・・・・・・

コチコチと秒針が鳴り響く。

時間は午後9時。

真が遅くなると言っても、週末ではないから、もうそろそろ帰ってくる筈なのに、「帰って来ないなぁー。」とか思いながら私は教科書とにらめっこしていた。

……って、心配なんかしなくてもいいか。

前みたいに、心配して自分が馬鹿な思いをするのはもう嫌だ。

……でも。

⏰:08/02/10 13:04 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#255 [向日葵]
私は、帰って来ると信じて、帰って来なかった絶望を……知っている。

教科書から目を話して、近くに置いていた、「ゆめみる魚」を手に取る。

表紙を見た後、ギュッと抱き締める。

「お母さん……。」

私、どうしたらいいかな……。
分からない。
自分の事なのに……。

……何1つ。
……どれ1つ。

⏰:08/02/10 13:14 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#256 [向日葵]
ガチャガチャと、鍵を開ける音が聞こえたような気がした。

うっすらと目を開ける。

……え。

「朝ぁっ?!」

周りはシーンと静まりかえり、部屋には朝日の暖かな陽射しが差し込んでいた。

「あ……つつつつ……。」

机に伏せたまま寝てしまったので、体のいたる所が痛い。

⏰:08/02/10 17:18 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#257 [向日葵]
と言うか、いつの間に寝たのやら私。

手には絵本が抱き締められたままだった。

あ、そういえば。

部屋を出て、玄関の方を見る。
何も人の気配が感じられなかった。

ぼんやりしながら、リビングへ向かうと、昨日用意した料理がラップをかけられたままだった。

真帰って来なかったんだ……。
やっぱり仕事だったのか?

ソファーに目を向けると、脱ぎ捨てられたブレザーとカッターがあった。

⏰:08/02/10 17:27 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#258 [向日葵]
やっぱり帰ってきたんだ。で、着替えてまた行った……と。

ったく。
ハンガーにかけるなり、洗濯かごに入れるなりしてくれないかね……。

親切な私はブレザーにハンガーをかけて、カッターはかごに入れた。

投げるようにカッターを入れた時、何か香りがした。

それはいつもの真の香水じゃなく、どこか優しい女性らしい匂いだった。

……まさか。

……まさか……ね。

⏰:08/02/10 17:32 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#259 [向日葵]
そんな訳ないと思いたいのに、胸が痛かった……。

私も学ばないな。
だから心配なんてするだけ無駄だと……。

情けなくて、涙が出た。

もう知らない。

赤い痕を簡単につけるアイツなんか……嘘つきなアイツなんか……もう、知らない。

知らないと思うのに、出ていこうとしない自分にはもっと腹が立った。

嫌い……。

やっぱり現実なんて、大っ嫌いだ……っ!

⏰:08/02/10 17:37 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#260 [向日葵]
―――――……

「ひどい顔!」

言ったのは多香子だ。

「昨日私の事あれだけ馬鹿にしたくせに、アンタの方が今よっぽどひどいよ。」

「ほっとけ。」

無理矢理涙を引っ込めた目は真っ赤。
再び現実に失望した顔は暗かった。

テストなんてどうでもよくなった。
追試でも何でもすればいいや。

「席につけ。」

監督で来た教師は、皮肉にもまた真だった。

⏰:08/02/10 17:45 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#261 [向日葵]
反応したけれど、私は決して顔をあげなかった。

声を聞くだけでも、ひどく落ち込んだ気分になったからだ。

私はこれから、どれだけ騙されてしまうんだろうか……。

「チャイムが鳴ったら、名前を記入して各自始めるように。」

事務的な態度……。

私の世話も、事務だから?
だから平気で嘘つけるの?

チャイムが鳴り、皆一斉に始める時、私は1人席を立った。

⏰:08/02/10 17:49 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#262 [向日葵]
何も言わず、黙って教室を出る。

「葛。」

真の声が後ろからした。
でも私は無視する。

「おい葛!」

真は腕を掴んで私を止めた。

「どこ行くんだ馬鹿。そんなにテストが嫌なのかよ。」

小声で裏真が登場。
しかし私にはそんなことどうでも良かった。

「テストじゃない。……アンタが嫌なのよ。」

⏰:08/02/10 17:53 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#263 [向日葵]
睨みながら、乱暴に腕を振り払う。
真が追いかけてくる気配はもうなかった。

屋上に行けばすぐ見つかってしまうと思ったので、使われていない教室に入った。

シーンとしていて、カーテンをしているせいで暗かった。
でも暗くていい。
眠りやすいから。

机もないその教室には、ありがたいことに絨毯が敷いてあったので、大胆にも床に転がる。

転んだ瞬間、せき止めていた涙がまた溢れた。

⏰:08/02/10 17:57 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#264 [向日葵]
もう目覚めなくてもいい。

一生夢の中で生きてやる。

なんならこのまま死にたい。
そうすればお母さん達がいる所にいける。

もうつまらない事も、悲しい思いも、しなくていい。

ただ、楽になりたい。

そう願う。

どうして……現実はこんなに寂しいんだろう……。

どうして誰も、側にいてくれないの……?

⏰:08/02/10 17:59 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#265 [向日葵]
――――――……

「みかげ。」

優しく、自分を呼ぶ声が聞こえる。
頬に添えられる手は大きく温かい。

でもこれは、目が覚める1歩手前。

嫌だ。
私はもう目を開けたくない。
もう目を開けないって決めたんだ。

「……みかげぇっ!!」

「ぅえっ!」

突然のデカイ声に驚き、私は目を開かずをえなかった。

⏰:08/02/10 18:03 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#266 [向日葵]
そこにいたのは、やはりと言うかなんと言うか、真だった。

「ったく。探したぞ。何してやがる。」

「寝てる。」

「そうじゃない。俺が嫌ってどういう事だ。説明してみろよ。」

なんでそんなに偉そうに。全部アンタが悪い癖に。
玩具だろうが何だろうが、私はちゃんと心を持ってるのに……こんな粗雑な扱い、なんで受けなくちゃならないの?

「真なんて、嫌い……。」

また涙が溢れる。

⏰:08/02/10 18:07 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#267 [向日葵]
「嘘ばっかりつくし……挙げ句の果てに逆ギレだし……。アンタが言ったんでしょ?現実見ろって。なのに、現実なんて、全然楽しくない。楽しく、思わせてくれない……っ。」

床の絨毯に、涙が染み込んでいく。
久しぶりに、こんなに泣いてる。

「つぐみさんがいいなら、あっちにいけば、いい。アンタが言った通り、楽になりたい。辛いのは……もう嫌。しんどい。お願いだから……夢の世界に帰して……。」

子供みたいに、しゃっくりが出る。

⏰:08/02/10 18:11 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#268 [向日葵]
またこんな風に泣けば笑われて、馬鹿にされて惨めになるだけ。
分かっているけど涙は止まらなかった。

次々に、絨毯に染みが出来ていく。

早く出て行ってくれればいいのに、真は動かない。

もういい。
ほっといてくれればいいから。

願ってる反面、行かないでと言ってる自分もいる。

私はまるで魚。
真という網に、捕われてしまっている。

だから自分から動かず、相手が手放してくれる事を待ってる。

⏰:08/02/10 18:15 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#269 [向日葵]
そんな私を、何かが包んだ。

真の腕だ。

少し惚けた私は、ハッと我に返り、真の腕の中でもがいた。

「やめ……ってよ……。話て……っ。離してってば!!」

「ごめん……。」

静かに真はそう言いながら、私の頭を撫でた。
私は動きを止める。

「辛い思いばっかさせて……ごめん。何も知らなくて、ごめん……。」

ずるい。真はずるい。

⏰:08/02/10 18:19 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#270 [向日葵]
簡単に謝って、何もかも無かった事にするんだ。

だけど、本当に優しく抱き締められてる腕の強さとか、慈しむように頭を撫でる手が、不覚にも、許していってしまうように誘う。

また私は涙が溢れる。

その目に、真は口づけた。

その時の触れ合いに、私は確かに愛とか言うむずがゆいものを感じてしまったんだ……。

⏰:08/02/10 18:23 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#271 [向日葵]
7P・心が……

「まほう?じゃあぼくはもうゆめをみれないの?」

かなしそうに魚がいいました。

「ううん。そうじゃないよ。きみはいつもゆめをみすぎだから、すこしだけゆめをみにくくなっただけさ。」

なかまの魚がいいました。

・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

スズメだかなんだかのさえずりが聞こえた。

私はうっすらと目を開ける。

⏰:08/02/11 01:13 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#272 [向日葵]
もう夏間近だと言うのに、温かさを感じて、私は安心するかのようにまた目を瞑った。

「みかげ。いい加減起きろ。」

「え?」

目を再び開ければ、眼鏡をかけていない真のドアップがそこにはあった。

「え!あ、もう朝……?」

「んー……。そうみたいよ。」

背伸びしながら真は言った。
と言うか私……腕枕してもらってる!

⏰:08/02/11 01:19 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#273 [向日葵]
そんな驚いてる私をよそに、真は優しく私を抱き締める。

シャツについた香水の匂いが、鼻をくすぐる。

「よく寝れた?」

「ま、……まぁ。」

「お早うのキスはしたほうがいい?」

キス……?

「し、しなくていい!そんな関係じゃないし!」

「え?違うの?」

違うの?って……。
だって真が好きなのは私じゃなくて……でもなんか昨日、真も私が好きなのかまとか思ったりしちゃって……。

⏰:08/02/11 01:22 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#274 [向日葵]
「と、とにかく……しないで。昨日、首にキスマークつけた事許した訳じゃないんだから!」

「あ、気づいた?なんならもう一丁つけとく?そしたら噂流れるかもよ。俺とお前が……みたいな。」

じょうっっだんじゃない!
痕だけで何にもされてない純潔な私が、そんないやらしい行為しただなんて恥さらしもいいとこだ!

ここで、何故私達が同じ寝床で寝ていたか。

もちろん皆の妄想……いや想像していた事は一切していない。

⏰:08/02/11 01:27 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#275 [向日葵]
勉強をしている私のもとに、真がやって来て、なんだかんだと勉強を教えてもらっていたのだ。

そしたら……。

――――――――……

―昨日・11時半頃―

[まだ寝ないのか?]

[え、いや、寝るけど。なんで?]

[そうかー。]

と、真は私のベッドに移動中。
Tシャツにスウェットのズボンというラフな格好をしている真は、ベッドに寝転んだ。

⏰:08/02/11 01:37 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#276 [向日葵]
布団を適度にかぶると、両手を私の方へ広げた。

[おいで。]

[えぇっ?!]

何故こうなるかが分からなかった。

[たまには一緒に寝てやろうと思って。ホラ。]

……まぁ真にとっちゃあ、犬と寝るのも同然か。

深く考えるのはよそう……。

諦めて、真が入った事により狭くなったベッドに私も入る。

[おやすみ。]

優しい声で囁かれる。

⏰:08/02/11 01:40 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#277 [向日葵]
何故玩具的存在の私にこんなに優しく恋人のような扱いをするのだろう。

ごっこならもう嫌だといって終りになった筈だし……。

ねぇ真……。

私は貴方にとってどんな存在?

知りたいの。
ここにいる理由が欲しい……。
現実に住み続けれる理由が真なら嬉しい……。

「おいで。」と言ってくれるならば、私を捕まえたままでいて……?

私は真が待つベッドへと体を沈めた。

⏰:08/02/13 01:36 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#278 [向日葵]
―――――――……

―変わってこちら現在―

「あの……ちょっと……真……。」

「んー?」

「いや、んー?じゃなくってさ……離れてくんない、」

いつもより早く起きたので、台所で少し豪華な朝食作りの最中。……が。
真が私の背後から抱きついたまま離れようとしてくれない。

「だーってー。くっつきたいもーん。」

ガキかアンタは。

⏰:08/02/13 01:43 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#279 [向日葵]
いや、コイツは大人に見えたガキだ。
しかも年下である私よりも遥かに……。

「朝飯が作れないだろーがぁ!」

「なんかこーゆーシチュエーションたまんないね。」

「はぁ?」

「朝に彼女が料理してくれてるーだなんて。」

その前に彼女じゃねぇし。

そんな事言って……。

「晩飯、この前食べなかったのはどこのどいつだよ。」

⏰:08/02/13 01:46 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#280 [向日葵]
「あれ帰ってきてからの楽しみにしてたんだよ。」

「ふーん。」

ジューッと言いながら卵が焼ける。
只今スクランブルエッグ制作中。

「あ、俺半熟がいい。」

自分で作れこの野郎。

他もちゃっちゃと作って、結局真をおぶったまま朝食の完成。

机に全部運び終えると、真は私を引っ張って間近くで見つめた。

さっきといい、今といい……朝からベタベタすんのはどうかと思うんだけど……。

⏰:08/02/13 01:51 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#281 [向日葵]
「な……、何……。」

「なぁみかげ。お前は勘違いしてるから言うけど、俺が好きなのはお前だから。」

あまりにあっさり言うので、告白された事に私は気付かなかった。

「何がきっかけとか言われても困るけど、俺はお前に側にいて欲しいんだ。」

「は……はぁ……。」

いま1つ、状況が飲み込めていない私に、真は不服そうに眉を寄せた。

「あのさ、分かってる?俺お前が好きっつってんだけど。」

「だって……あんまりにあっさりすぎて、その、いまいち……。」

⏰:08/02/13 01:55 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#282 [向日葵]
「じゃあ甘く囁いて欲しい?」

「やめてくれ。」

そうじゃなくて。
告白の言葉って、もっと心にずっしりとくるものだと思っていた。

でも今の真の告白は、あまりにも呆気なくて、氷の上をツルッと滑ったようにさらりとしていた。

本当の気持ちなのか……?

「じゃあほっぺにチューするくらいは許してくれる?」

どうしてもキスしたいのか……?

⏰:08/02/13 01:59 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#283 [向日葵]
「……手なら、いい。」

「えー。手ぇ?」

あんまり、ベタベタされるのは慣れない。
そんな急に、好きだとか言われて両想いになれても、すぐに恋人らしい事は出来ない。

徐々に慣れる。
それが大事。

不満そうな真はニヤリと笑った。

「ま、別にいいけど。」

と言って、右手を取った真は、掌に口づけた。

「―――――っ!」

⏰:08/02/13 02:06 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#284 [向日葵]
手なら平気。

その考えが甘かった。

平気な訳ない。

目の前で繰り広げられている真のキスは、なんて色っぽいんだろう。

これなら、まだ目を瞑って、自分がどんな風になっているかみない方がマシだったかもしれない。

真の唇が、掌から滑って指先へやってきた。
指先から、唇の柔らかさを感じる。

恥ずかしくて、目を離したいのに、食い入るように真を見つめた。

多分顔は林檎のように赤いだろう。

⏰:08/02/13 02:10 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#285 [向日葵]
そんな事を考えてると、何か硬い者が指先に触れた。

真の前歯だった。

指先を、軽く食べられる。

「な!ちょ……っ!」

「おまじない。ちゃんとテストが出来ますように。」

「こんな事されて出来るかぁっ!!」

――――――……

「背後に花……っ!?」

またまたお馴染み多香子だ。

⏰:08/02/13 02:13 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#286 [向日葵]
「花……?」

教科書から目を離して多香子を見る。

多香子は驚いた顔をしてコクコクと頷いた。

「今まで見た事なかった。みかげが花背負うなんて……。しかもピンク!」

完全な妄想+幻覚だ。

花を、しかもピンク色のなんて背負う訳がない。

でも、明らかに昨日よりは浮足だっているのは自分でも分かる。

どこか違った気分になっている事だって承知してる。

⏰:08/02/13 02:19 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#287 [向日葵]
少しの変化でこんなにも雰囲気が変わる自分がどこか情けない。

だから真にガキ呼ばわりされてしまうんだ。

「とにかく、花なんかしょってないから。」

「そりゃ本人は分からないでしょーねー。」

「っるさい!明日のテストのヤマはってあげないよ!」

それを言った途端、多香子は平謝りした。

ほんっと……しょうがない……。
多香子も……私も……。

⏰:08/02/14 01:21 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#288 [向日葵]
―――――……

テストが終わると、アナウンスが流れた。

<葛みかげ。葛みかげ。至急、社会科準備室まで来なさい。>

社会科準備室って……。
しかも今の声……。

「また松川?アンタ目つけられてんねぇ。」

呑気に帰り支度をしながら多香子が言った。

目って言うか、なんて言うか……。

「多香子。先帰ってていいよ。」

それだけ告げて、私は社会科準備室に向かった。

⏰:08/02/14 01:25 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#289 [向日葵]
まったく……学校での接触は避けるべきだと思うのは私だけか?

そりゃ私とはただの同居人って言えば済むかもしれないけど、それに挙げ足とるようにしてやっかんでくる奴だっているだろうに。

アイツはそこまで考えてちゃんと行動してんのか?

…………ってだから!

何で私ばっかりがこんなにアレコレ心配しなくちゃなんないのよ!

もういい!アイツが気にしてないなら気にしない!!

社会科準備室に辿りついて、さっきのイラつきをドアにぶつけるように乱暴にノックした。

⏰:08/02/14 01:29 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#290 [向日葵]
「失礼しますこの野郎。」

「誰がこの野郎だ。葛よ。」

いつも通り、イスに偉そうに足を組んで座ってる真。
コイツには危機感と言う機能は備わっないのだろうか……。

ため息をつきながらドアを閉めて、そこにもたれる。

「で?何か用?」

「冷たっ!それが彼氏にとる態度かよ。」

じゃあニコッて笑って「会いたかった」とでも言えと?

無理。想像しただけで寒っ!!

⏰:08/02/14 01:33 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#291 [向日葵]
鳥肌をおさめる為に腕を擦った。

「本当に何?」

「つぐみと友達になったそうだな。」

まぁ……半ば強制っぽかったけどね。

「それが何か?」

「つぐみがお前の連絡先を教えて欲しいと言ってる。教えていいか?」

「……まさかそれだけで私を呼んだの?」

「あぁ。」

冗談じゃない。
と言うか、ここに呼び出す理由があまりにもふざけすぎだ。

⏰:08/02/15 00:51 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#292 [向日葵]
「アンタねぇ!アナウンスで名前呼ばれるのがどれだけ恥ずかしいか知ってる!?いっちいち家で言えるような事呼び出してまで言わないでよ!」

くるりと回れ右をして出て行こうとドアを開けたら、後ろに引っ張られてドアを閉められた。

顔だけ動かせば、すぐそこに真の顔があって、私は少し体を引いた。

「信じてくれないだろうけど、学校でもみかげと接してたいんだ。」

息が詰まる……。

「立場上、少し難しいからこうした場所に来てる。廊下じゃ変な噂がたつだろ。」

え……。

私は真を見つめた。

真は、少し変わった気がする。

⏰:08/02/15 00:58 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#293 [向日葵]
相変わらずのスケベで自己中な所はあるけれど、前までは面白がって噂がたってもいいと思っていた筈なのに…………。

……つぐみさんが、真を変えた?

[お前が好きだ。]

それとも私?

……そんな訳ないか。

あの告白だって、結局本気かどうか確信は持てないのだから。

期待するだけ……無駄。

そうだ。
私は期待して、いつも手前で裏切られる。

⏰:08/02/15 01:01 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#294 [向日葵]
「みかげ?どうした?」

真の声に空想から戻る。

ほんっと……この頃こちら(現実)に馴染みすぎてるなぁ……。

「何もない。……じゃ。」

と言っても前に進めない。
真が腕を掴んでるせいだ。

ほどこうと腕をブンブン振るも、全然指が離れない。

そんな私を、真は意地悪そうに笑ってみている。

「離してほしい?」

「当たり前だろ!!」

⏰:08/02/15 01:06 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#295 [向日葵]
「じゃあ、今日帰ったら、お帰りなさい真!……って言うって約束してくれる?」

「メイド喫茶にでも言ってろド阿呆。」

真はクスクス笑って「ハイハイ。」と言いながら手を離した。

「じゃ、連絡先は教えとくな。」

「あー。ハイハイ。」

「本当だからね?」

ドアノブに手をかけながら答える。

「何が。」

⏰:08/02/15 01:11 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#296 [向日葵]
「お前が好きって言うのが。」

意地悪な笑顔なのに、どこか柔らかなその表情に顔が暑くなる。

「し、知らない!」

私は駆け足でその場を去った。

本気にしちゃいけないのに、本気にしてしまいそうになる。

だってあんな顔は反則だ。
明らかに私に恋してるような目つきで私を見るから勘違いをおこしてしまいそうになる。

まだ……全てを信じる訳にはいかないんだから……。

⏰:08/02/15 01:15 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#297 [向日葵]
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

『ねぇ、みかげ……。』

あ、お母さん。

自分の目線から言って、私はどうやら子供に戻ってるらしい。

なぁに?お母さん。

『後悔だけは、しちゃ駄目よ。』

後悔?
何言ってるのお母さん。
そんな事言っても、私はまだ多分3歳くらいよ?

『ううん。貴方は17歳よ。ちゃんと可愛い女の子になってくれて、母さん嬉しいわ。』

⏰:08/02/15 01:18 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#298 [向日葵]
え……。

自分の手を見れば、大きくなっていて、足元を見れば、さっきより高くなっていた。

いきなり大きくなった……。ミステリー……だ。
さすが夢。

『だからねみかげ。貴方には何事も充実してて欲しいの。』

にっこり笑ったお母さんは、まだ少女のような幼さを残していた。
なんだったら、お母さんの方が私より子供のようだ。
今、私が何かを我慢してると思ってるの?

⏰:08/02/15 01:21 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#299 [向日葵]
『我慢と言うより、充実する事を恐れてる。それが、貴方が嫌いな現実の世界だから、尚更……。』

……。

お母さん。私、夢が好きよ。
だってお母さん達に会えるもの。
私はお母さんやお父さん、育ててくれたおじいちゃん達、それに……。

いつの間にか抱き締めていたあの絵本、「ゆめみる魚」に私は目線を落とした。

これだけが大事なの。
宝物なの。
他なんて……いらないわ……。

⏰:08/02/15 01:25 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#300 [向日葵]
『そんな事ないわ。真一君がいるでしょう?』

……分からない。

『何が?』

アイツの気持ちなんてこれっぽっちも分からない……っ。
私を好きだなんて、あんな心がこもってない言い方出来るのは、私が好きじゃないからでしょう?

『みかげ。』

アイツはつぐみさんが好きなの!私じゃない!
もう、私を好きと、愛してくれるのは、お母さん達だけで誰1人していなくなったの!

『みかげっ!』

⏰:08/02/15 01:28 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#301 [向日葵]
柔らかいような、透けてしまっているような。
温かいような、冷たいようなお母さんの手が私の頬に触れる。

少女のようなお母さんだけれど、やはり母親の目をして、凛として輝いていた。

『貴方は、他人ばかりを責めすぎてる。信じる事をしてみた?』

……して、ない……。

『じゃあ信じてよ。』

突然、お母さんが真に変わった。

なのに夢の中の私は何も驚かず、眼鏡の奥にある鋭い視線を受け止めていた。

⏰:08/02/16 00:51 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#302 [向日葵]
『言ったでしょ。俺がいるからって。俺はずっとお前の側にいるよ、みかげ。』

すると真は、またお母さんになった。

『恐れて当たり前。現実は矛盾だらけだもの。でもね、信じてみるからこそ、意味が生まれてくるの。夢にばかり頼っては駄目。』

お母さんは私の両手を握って、おでこをコツンと当ててきた。

お母さんから、いい匂いがした気がした。
でもそれは、真がいつもつけてる香水のような気もした。

⏰:08/02/16 00:55 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#303 [向日葵]
『大丈夫。みかげはお母さんの子だもの。きっと解決出来るわ。』

優しく微笑まれると、泣きたくなった。

お母さん。
お母さん。

もう会う事ができないんだね。
その笑顔に会う事は、不可能なんだね。

歯を食い縛って、涙を我慢すると、左手に何か柔らかく包むものを感じた。

お母さんはいつの間にか仄かに柔らかく光ながら、私と距離を取っていた。

『ね。大丈夫。』

⏰:08/02/16 01:00 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#304 [向日葵]
すると、お母さんはフワリと消えてしまった。

不思議とさっきのような悲しみはなかった。

『側にいるよ。』

私は左手を包むものを見た。
どうやらその主が喋ったらしい。

それはいなくなったと思った、真のものだった。

いつになく、私を優しく見つめる。
私は心臓が跳ねるのではなく、安心したかのように穏やかな気持ちになれた。

そっか……。
側に、いてくれるか……。

⏰:08/02/16 01:04 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#305 [向日葵]
じゃあ……大丈夫かな。

真が、現実に私を呼んでくれるんでしょう?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ゆっくり目を開けると、見慣れた天井があった。

帰ってきた私は、ソファーに寝転び昼寝。
久々に長く寝た。
夢も見た……気がする。

サァー……と爽やかな風を感じた。

あれ?窓なんか開けたっけか?

視線を動かせば、夕暮れ時の空が見えた。
ベランダに出る窓が開いている。

⏰:08/02/16 01:08 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#306 [向日葵]
それと同時に何かの香りを感じ、視界に入るこげ茶色の髪があった。

私が寝ているソファーを背もたれに、真がいた。

座ったまま寝ているらしい。

ギシッと音を立てながら体を起こすと、真も目を覚ました。

「……ん。起きたか。」

「うん。お帰り。今日は早いんだね。」

⏰:08/02/16 01:12 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#307 [向日葵]
「この頃採点とかであんまり寝てなかったからなー。お前こそ、珍しいな。気持ちよさそうに寝てたぞ。」

なんでそんなに優しく、温かく微笑むんだろう。

心が満たされていく。
もっと欲しいと叫んでしまう。
胸が、いっぱいになる。

真を見ると、切なくなる……。

と思うと、涙が流れた。

止まる事を知らないように、ポタ……ポタ……と。

「みかげ……?恐い夢見たのか?」

⏰:08/02/16 01:17 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#308 [向日葵]
首を振るので精一杯だった。

涙はまだ止まらない。

真が私に手を伸ばす。

目尻に指先を触れて、涙をすくう。

「な……っんか、分かんないけど……。」

分かる事は1つだけ。

「真が……好きだから、涙が出てくる。」

好きで好きで、どうしようもない。
真が言ってたのは、この事か……。

なんて、狂おしい刺激だろう。

⏰:08/02/16 01:21 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#309 [向日葵]
私の発言に、真は嘲笑しなかった。
ただただ私を愛おしむように見つめている。

「ウン。知ってる。」

意地悪な口調で言っても分かる。
その言葉の感情の裏に、どれだけの柔らかな気持ちがこもっているか。

両手で顔を包まれると、真は私の目に口づけた。
おでこ、頬と順番に……。

そして自然に唇へ……。

首に感じた感触よりも、手に感じた熱よりも強い刺激を感じる。

⏰:08/02/16 01:27 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#310 [向日葵]
ううん違う。

これはもう刺激じゃないんだ。

離れては触れて、離れては触れと、何度も重なる唇を感じながら、私は思った。

人はこれを刺激とは呼ばない。
そんな安っぽいものなんかじゃない。

これは……好きっていう恋する感情なんだ……。

心が……真を求めてやまない……。

⏰:08/02/16 01:31 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#311 [向日葵]
8P・通じたものは

魚はゆめがみれなくてもいいとかんじました。

なかまがいるから、まいにちがたのしいのです。

「ぼく、ゆめをみるよりきみたちといたほうがたのしいよ。」

と、そのとき、1ひきの魚がいいました。

「たいへんだ!あらしがくるぞ!!」

・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

その日は、また真と一緒に寝た。

⏰:08/02/16 01:36 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#312 [向日葵]
前のような、不安な気持ちは一切無かった。
いや、無くなっていた。

自分を包む腕を感じれば、もう何もかも大丈夫なんだと安心して寄りかかる事が出来た。

大切なものを失っても、夢に逃げたりすることはもう無いだろう。

優しく髪を撫でる真の指が、私をさらに安堵の世界に連れていく。

ああ……。
心が通じるって、こんなに心地良いものなんだ……。
私は何かから守られている気さえした。
まるで赤ん坊のよう。

⏰:08/02/16 01:41 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#313 [向日葵]
何かから守られる安らぎ感に、ゆっくりと、目を閉じる。

しかし、通じたものは、まるで張りつめた糸が段々と千切れていくように、儚い事も起こるのだ……。

―――――――……

<今日、学校の帰り会えないかな?>

つぐみさんからのメールだった。

「だぁれー?」

箸をくわえながら私の方に身を乗り出す多香子。

「別に。」

と言って、返信を後回しにする事にして携帯を閉じた。

⏰:08/02/18 01:34 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#314 [向日葵]
「あー!分かった!コレっしょ!?」

多香子が右手の小指を立てる。
が、私はそれを無視してお弁当の蓋を開けた。
途端に、私は顔に熱が宿る。

多香子に悟られないように、下のカバンから物を取り出すフリをして顔を隠した。

今日の朝は、いつもの朝より1味も2味も違った。

どこか甘ったるい雰囲気を醸し出していて、でも私はその雰囲気をもう知ってるかのように真と過ごした。

⏰:08/02/18 01:38 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#315 [向日葵]
真に侵食されてる自分が、急に恥ずかしくなった。

でもそれが嫌じゃないと思ってる自分はもっと恥ずかしかった。

「みかげー?何してんのー。」

「べ、別に。少し暑いと思ったから、下じき探してるだけ……。」

「あー。もう夏だもんねー。」

外を見れば、夏の訪れを知らすかのように入道雲が発生していた。

真に引き取られて早2ヶ月。
1人の家にこんなに長く滞在したのは真が初めてだ。

⏰:08/02/18 01:43 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#316 [向日葵]
「そういえば、文化祭、何するか決まったの知ってる?」

忘れてた。

「何すんの?」

「実は、な・ん・とー……。」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「仮装部屋ぁ?」

珍しく社会科準備室に用があった私は、たまたまそこにいた真とくっちゃべっていた。

私は真の呆れたような声にただコクンと頷いた。

「限られた予算で服作るんだって。」

⏰:08/02/18 01:49 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#317 [向日葵]
「予算っつっても限られてるだろ。」

「ここの卒業生の兄弟をもつ子がクラスに何人かいてその中の1人が私達と同じような事やったから何着か服持ってるって。」

他の人達はメイド喫茶をやったからメイド服があるだの、劇をした時に作った衣装がタンスに眠ってるだのと言ったもんだから、多数決を取るとそれに決まったらしい。

仮装部屋、なので仮装したい人達に服を貸すシステム。
それでいて写真撮影なんかもあったりしちゃって少し豪華なのだ。

そして店番兼スタッフは、仮装しなくちゃならないとか言う迷惑極まりない出し物なのだ。

⏰:08/02/18 01:56 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#318 [向日葵]
店番はクラスでローテーションしなきゃならない為、最悪な事に私も仮装しなくてはならないのだ。

「だから……真は絶対に来るな。」

「はぁ?そんな面白そうなの見にくんなってか。」

「私が店番の時間帯を教えるからそれ以外に来てくれ。」

「そうもいかない。俺達の見回りだってまばらだからなぁ。」

とか言いながら時間を教えれば、なんとか調整してくるのが真だ。

どうせなら時間を教えない方が得策かもしれない。

⏰:08/02/18 02:00 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#319 [向日葵]
「あ、そろそろ行かなきゃ。じゃあね真。」

「おぅ。……あ、みかげ。」

「は?」

振り向いた私の頬に、真の唇が押し付けられた。

「行ってらっしゃい。」

「や……っ、やめてよっっ!」

顔が赤くなったら多香子に怪しまれるんだから!!

私は足早に社会科準備室を後にした。

「お帰りみかげー。週末課題を運べーだなんて、松川も鬼だよねー。」

⏰:08/02/18 02:04 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#320 [向日葵]
ため息をつきつつ、「そうだね。」と答えようとすると、男子が外を見て騒ぎ始めた。

「ヤバイ!超ー美人なんですけどぉっ!?」

「色しっろー!!UVカットしてますみたいな!」

「誰の彼女だぁー!?手上げてみろ!?」

「俺でーす!」

「いやあり得んから。」

雛鳥が親鳥から餌をねだるが如くピーチクパーチクうるさい男子の間から、その噂の的を垣間見た。

「……あ!」

⏰:08/02/18 02:09 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#321 [向日葵]
スカートのポケットから携帯を見て、また入れる。

「多香子、帰りのホームルームサボる!」

「えぇ!?ちょ、みかげぇっ!!」

走って走って、靴の履き替えもそこそこに私は校門へ向かった。

「つぐみさん!」

彼女こそ、頭が騒ぐしかない小学生のままの男子の噂の的だ。

つぐみさんはにっこり笑って小さく私に手を振った。

「みかげちゃん。」

気品漂う夏の服装に、自分の制服がやけに子供じみてる気がした。

⏰:08/02/18 02:13 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#322 [向日葵]
「あ、あの、メール返さなくてすいません。」

「いいのいいの!こうして会えたから!さ、乗ってっ!」

有無を言わさず乗ってきた車の助手席を開けて私は押し込まれた。

「この頃暑いよねー。」なんて世間話をしつつ、車は発進した。

「あの……。私に用でも……?」

「久しぶりにみかげちゃんに会いたいなぁって。色々話もしたいし。」

つぐみさんは、私と真の関係を知っているのだろうか。
知らないなら、あまり言わない方がいいのかもしれない。

⏰:08/02/19 11:30 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#323 [向日葵]
またつぐみさんが壊れてしまったら……。

「さて、着いたよー。」

「へ?」

着いた所は海辺だった。

しかもこの海知ってる。

……真と来た所だ……。

「外出ない?」

「あ、はい。」

外に出ると、潮風が心地よく体に吹き付けてくる。

海の音も、気持ちを落ち着けてくれるみたい。

「この頃、松川君とはどう?」

「あー……別に普通に過ごしてます……って、え!?」

⏰:08/02/19 11:35 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#324 [向日葵]
綺麗な黒髪をなびかせながら、つぐみさんはにっこり笑った。

「貴方はどうか知らないけど、松川君は貴方が好きみたいね。……私といても、上の空だし。」

最後の一言はとても寂しそうだった。
だってつぐみさんは真が好きだもの。

真だって……ううん。私は真を信じる事にした。
こんな事、思っちゃいけない。

「ここね、松川君とよく来たとこなの。」

「あ……そうなんですか……。」

だから真は、私をここに連れて来たのか。

⏰:08/02/19 11:45 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#325 [向日葵]
思い出の場所をあの時連れて来たのは、私の為じゃなく自分の為だったのかもしれない。

つぐみさんと会って、心揺さぶられる自分を落ち着かせる為に……。

「松川君は、私が嫌いかな……?」

「そんな事……。」

「友達でいいって言ったの。でも……本当は昔みたいに戻りたかった。」

どう答えればいいか分からなくて、私はうつ向く。

複雑な心境。
真が好きなのは私で、私も真が好き。
でも2人は昔恋人同士で……。

⏰:08/02/19 11:50 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#326 [向日葵]
「松川君が……好き……。」

さっきよりより一層悲しそうな声に、私は顔を上げた。
すると、つぐみさんの大きな眼からは、大粒の涙が流れていた。

「好きなのに……っ友達でいるって決めちゃった……っ!本当は私を好きになって欲しいのに……!」

「つぐみさ……。」

私が真を好きになりかけていた頃なら、まだ間に合ったかもしれない。

真をなんとかしてでも、つぐみさんとくっつけようとしたかもしれない。

⏰:08/02/19 11:53 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#327 [向日葵]
でもごめんなさい。

つぐみさんごめんなさい。

私は、真が好き。
真が必要。

真だけなの。
今まで、引き取ってくれた中で、親族以外に愛情を注いでくれたのは。

現実から逃げた私を、再び呼び戻してくれたのは……。

温かい目で、微笑んでくれたのは……。

だから、真は、貴方に渡せない……。

そう思っていても、つぐみさんの華奢な体か震えるのを見れば、やっぱり私は口にすることは出来なかった。

⏰:08/02/19 11:57 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#328 [向日葵]
口にしない方が、より残酷なのかもしれない。

それでも、私は言う事が一向に出来ず、海に飲み込まれていく夕日をただただ静かに眺めていた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ごめんなさいね。」

つぐみさんが泣き止んだ頃には、もう日が沈んでいた。

「今から、松川君に電話したいの。みかげちゃん、側にいてくれない?」

なんですと?

「え……でも……。」

「お願い。友達宣言してから、連絡取るの今日が初めてなの。」

⏰:08/02/19 12:01 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#329 [向日葵]
フフと恥ずかしそうにつぐみさんは笑う。

「久しぶりとなると、緊張するのはどうしてかしらね。」

そう言って携帯を開く。

画面の光で、つぐみさんの顔が青白く照らされる。
その顔は、本当に緊張してるのか、堅かった。

リダイヤルボタンを押し、携帯を耳に当てる。

少しだけ、呼び出し音が聞こえてくる。

「……あれ?」

つぐみさんが首を傾げる。

「出ないみたい……。」

⏰:08/02/19 12:06 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#330 [向日葵]
「まだ仕事中かな。」と呟きながら、携帯を閉じた。

「仕方ない。付き合わせてごめんね。今日はありがとう。家まで送るわ。」

「あ、ハイ……。」

ライトを照らし、車は夜道を走って行く。

海辺なので、ほとんど周りは真っ暗。
近くにある家の明かりと街灯だけが光っていた。

「みかげちゃんは、昔松川君と会った事とかあるの?」

「いえ。松川とは、遠すぎる親戚みたいなもので、会った事は無いです。」

⏰:08/02/19 12:10 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#331 [向日葵]
「そう……。」

つぐみさんは呟く。

「私がみかげちゃんだったら良かったのに……。」

「……。」

何も、言えなかった。
「変わってあげましょうか?」だなんて、冗談でも言いたくなかった。

本当、私は子供すぎ……。

30分ほどして、私の家へ到着した。

「今度、プールにでも行かない?もうすぐ7月だし、松川君とみかげちゃんと、あとみかげちゃんのお友達でも連れて。」

⏰:08/02/21 01:05 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#332 [向日葵]
プール……。

私はいいけど、真はどういうだろう。

「また、何かあったら連絡します。」

つぐみさんはにこっと笑うと、「ありがとう」とお礼を言って私が車から降りた後、颯爽と行ってしまった。

エレベーターまで上がって、真が待つ部屋まで歩いていく。

ん?

ドア前に人影。

「……遅い…。」

⏰:08/02/21 01:09 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#333 [向日葵]
そこにいたのは、真だった。

「は?え?なんでアンタここにいんのよ!?」

「鍵忘れた。おまけに携帯も忘れたからお前に連絡出来なかった。」

だからつぐみさんが連絡しても出なかったんだ。

とりあえず、スカートのポケットから鍵を出して開ける。

「どこ行ってた?」

なんとなく、つぐみさんと出かけてたとは言いにくかった。
黙って入り、リビングの電気をつける。

⏰:08/02/21 01:13 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#334 [向日葵]
「みかげ、無視か。」

「頼むからさ、父親みたいな発言しないでくれる?正直ウザイ。私がどこ行こうが、勝手でしょ?」

手を洗いながら喋る。

振り返らなくても、真の威圧が背中にかかってきて、振り返るに振り返れない。

ちょっと言い方がキツかったか?

「心配しなくても何もない。ただテストも終わったし、息抜きしたかっただけ。」

と付け足してから振り返る。

⏰:08/02/21 01:18 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#335 [向日葵]
私の予想は外れたらしく、真は私の方を見ていなくて、ぼんやりとテーブルを見ていた。

視線の先には携帯が開かれている。
つぐみさんからの着信があった事に気づいたみたい。

「……つぐみさんに会ってたの。」

真はハッとしてゆっくり私を見た。

「今度皆でプール行こうだって。」

「……プール?」

私は頷く。

真は難しい顔をして私から目を反らした。

⏰:08/02/22 00:58 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#336 [向日葵]
「真が思ってるほど、つぐみさんは頼りなくないと思う。つぐみさんも、変わったんだよ。」

真はまだ黙ったまま。
何を考えてるか検討もつかない。

そうだ……私、心が通じても……気持ちが通じても、真が考えてる事が全く分からない。

だから不安になるんだ……。

「何……考えてるの……?」

静かに問えば、必ず真はこう答える。

「別に。気にするな。」

⏰:08/02/22 01:01 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#337 [向日葵]
「別に。」「気にするな。」

突き離されたような言い方。
「気にするな。」と言われて気にしない訳がない。

でも私は、更に問いかける事は無理な気がして、黙って部屋へ行った。

ねぇ真……。
真は私の事、本当に好き……?

******************

つぐみからのしつこいメールや電話は、友達だと言った時から途切れた。

しかしそれは逆に不安要素を多くした。

⏰:08/02/22 01:07 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#338 [向日葵]
みかげとの多くなる接触。
つぐみ自体の精神の問題。

みかげは1度、つぐみと会って俺との過去の話を聞いたせいで俺の気持ちを受け止めてくれるのに時間がかかった。

そういう遠回りな事態は出来れば遠ざけておきたい。

そして、つぐみ……。

いくら友達だと言ってもアイツの気持ちは痛いほど感じている。

それを丸々無視して否定してしまえば逆戻りしてしまうかもしれないと心配になる。

⏰:08/02/22 01:11 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#339 [向日葵]
命を絶つ。

おかしくなったアイツならやりかねない事。

そうなれば、一番傷つくのはみかげかもしれない。

あれでも仲良くやってるみたいだし、また身近な人がいなくなってしまえば自分の殻に閉じ籠ってしまいそうだ。

……ったく、俺いつからこんないい奴になっちまったんだか……。

最初、みかげを引き取ったのは単なる気まぐれだ。

引き取ったら取ったで、面白い反応してくれるからコイツで遊びたいなぁと思ったんだ。

⏰:08/02/22 01:15 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#340 [向日葵]
いつしか、家に帰れば当たり前のようにみかげがいて、辛い過去を背負う自分を立て直す一方、俺に気持ちを向けてくれる事が嬉しくなった。

からかえば顔を赤くしながら怒り、いい加減な事をすれば突っぱねる。

かと思えば楽しそうに笑ったり、毅然としているように見えて頼りなかったり……。

そんな所が、また愛おしくて、今じゃ手放したくない。

だから……つぐみとは友達としてしっかり距離を取っておかないといけない。

俺の気持ちは、いずれか言わなきゃならない。

その時も、慎重でなければならない……。

⏰:08/02/22 01:23 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#341 [向日葵]
「何……考えてるの……?」

お前の事考えてただなんて、俺がお前を好きすぎるみたいな発言をするのは悔しい。

「別に。気にするな。」

照れ隠しのつもりだった。

それなのにみかげは、どこか落胆したようにトボトボと部屋へ戻ってしまった。

何か悪い事言っただろうか……?

そういえば……プールがどうとか言ってたな……。

⏰:08/02/22 01:26 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#342 [向日葵]
遊びながらなら、言えるかもしれない。

つぐみに……本当の事を……。

俺は携帯のリダイヤルを押した。

***************

携帯がどこかで鳴ってる音がした。

どこに入れてたか忘れた私は部屋の中をキョロキョロ見回す。

「あ。」

確かスカートのポケットの中だ。

イスに粗末にかけてあるスカートのポケットに手を突っ込む。

⏰:08/02/22 01:35 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#343 [向日葵]
「……。……つぐみさん?」

自分はメールを送った覚えはないから、何か用事でもあるのだろうか。

メール文はこうだった。

<プールの事、松川君に話してくれてありがとう。松川君が今度の日曜にでも行こうって言ってくれたの。みかげちゃんも誰か誘っててね。詳しい事はまた連絡します。  つぐみ >

真……行くって言ったんだ……。

私に何にも言わなかったくせに……。

どうして私ばっかり、真の事で悩まなくちゃいけないんだろう……。

⏰:08/02/22 01:40 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#344 [向日葵]
――――――――……

「プール!?行く行く!」

文化祭で使う店の看板を作りながら多香子に話したところ、1発でOKが取れた。

なんて容易い子なんだ多香子……。

「じゃあみかげ、今日の帰り水着見に行こうよ!私みかげに似合う水着見つけてあげる!」

正直水着なんて着たくもない……。
何故自分の肌を他人に露出しなきゃならないんだか……。

第一私、似合う色無い気がする。

⏰:08/02/22 01:45 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#345 [向日葵]
「私青系がいいなっ。みかげは黒って感じ!あ、紺でもいいかな?……紫!?」

「……好きにしてくれ。」

水着を着た時の真の反応が目に浮かぶ……。

『お前さぁ、全てにおいて貧相すぎるだろ。』

余計なお世話じゃこの野郎。

自分の妄想に自分でムカつく。

多香子は相変わらず水着で頭一杯らしく、目を宙に向けたまま輝かしている。

「多香子。」

「んー?」

⏰:08/02/22 01:49 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#346 [向日葵]
「……やっぱいい。」

「ん?そう?」

聞けない。

好きな人についてなんてこの私が聞ける筈がない。

ましてや私は、多香子に前に真が好きか聞かれた時全否定してしまった。
なのに今更「好きだ。」とか「相手の気持ちが分からないんだけどどうすればいい?」等と言う乙女チックな会話なんて出来る訳が無かった。

そんな漫画じゃあるまい……。

しかも真を好きって言えば多香子は1から10まで聞き出すような気がするから後々面倒くさそうだし。

ここは黙るが1番。

⏰:08/02/22 01:54 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#347 [向日葵]
「ねぇみかげ。私聞きたい事があるんだけど。」

「何?」

「好きな人出来た?」

ゴトン!と大きな音を立てて、持っていたトンカチを看板の上に落としてしまった。

え……いきなり?
黙ると決断していきなりそんな事言う?

「ど、どこをどう見て?」

「最近のピンクなお花オーラを漂わせるみかげを見て。」

また始まった……。

⏰:08/02/22 01:58 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#348 [向日葵]
「だったら……何。」

「悩み事あれば話してほしいなーって思っただけ。ま、みかげの事だから私の気のせいかもしれないけど。」

私よりは恋愛経験豊富な多香子なら、悩み事を解決してくれるかもしれない。

でも私は、私を崩す事なんて出来なくて今は黙っておくことにした。

「気のせいだよ。んな訳ないでしょ。」

「そっかー。残念。せっかくコイバナ出来ると思ったのに。」

まだそんな乙女思考にはついていけない。

⏰:08/02/22 02:03 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#349 [向日葵]
実際、自分の真に対する気持ちに気づくだけでも精一杯だったし、恋人同士の雰囲気みたいなのだって、どうすればなれるかだなんて分からない。

結局今まで通りの反応とか、生活を送っている。

たまに訪れる甘い雰囲気にはただただ流される他ない。

そういえば私……キス……したよな……。
しかも何回も……。

「ん?みかげ顔赤いよ?暑い?」

「いや……。そうでも……。」

⏰:08/02/22 02:07 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#350 [向日葵]
馬鹿な回想なんてするもんじゃない。

身が悶えるほど恥ずかしいなんて気づいても遅いし、真にファーストキスを奪われてたんだなんてこれまた乙女チックな思考をしたって仕方のないことだ。

アホらしい……。

離れても真の事で頭一杯とか、どうかしてる。

こういうの毒されてるって言うんだっけか……。

しかもあの時って衝動のまま体が動いてしまった。
つまり本能のままにって事で……。

私って変態?

⏰:08/02/22 02:11 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#351 [向日葵]
それともスケベって移るのか?

「あ、松川。」

ギクッとする。

廊下で作業をしてた私達。
私はそろりと振り向く。

確かに遠くにいるのは真だ。
今は学校ど表の真だからムスッとしている。

なのに……。

「珍しいね。松川が女の子に囲まれてるだなんて。」

そうなのだ。
表の真は、顔はいいのに仏頂面を決めてるせいで怖いと恐れられる存在。

⏰:08/02/22 02:15 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#352 [向日葵]
それなのに見るからにモテモテと言うか……。

「最近松川人気上がってるんだって。」

一緒に作業しているクラスの女の子が言った。

「前みたいにツンツンした感じがなくなって、今は柔らかくなってるし、よく笑うようになったからから近づきやすいんだって。」

「へー。」

多香子が頷き、私は心の中で頷いた。

よく笑う……ねぇ。
笑うは笑うでも馬鹿にした笑いじゃなきゃいいけど。

⏰:08/02/22 02:19 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#353 [向日葵]
表の真はあくまで表だ。

皆には穏やかに笑っているように見えても、心の中では「……ハッ。」とかって鼻で笑っていそうなもんだけど。

……そう。
決して心の奥を見せない人。
だから余計に知りたくなる。

そこまで思って頭を振り、真を考えないように作業を続けた。

せめて学校にいる間は、学校の事で頭を埋めつくしておこう。

そこで夢を見ようと感じなくなった私も、真のおかげだとか思う自分を即座に追い払った。

⏰:08/02/22 02:24 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#354 [向日葵]
――――――……

「水着?」

私は渋々頷く。

職権濫用……。
真にはこの言葉がふさわしい。

校内放送でわざわざいつもの部屋に呼んでは立ち話。

もっとも、本人は「会いたいからに決まってるだろ。」とでも言うんだろうが、今複雑な気持ちである以上、呼んで欲しくはなかった。

せっかくなので、多香子と水着を買いに行く旨を伝えた。

⏰:08/02/24 01:25 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#355 [向日葵]
私は真と微妙な距離を保ちつつ、真の言葉を待った。

真は意味ありげに私を上から下まで何度も目線を往復させる。

そしてニヤリと笑った。

「お前……肉あんの?ガッサゴソじゃ色気もあったもんじゃねぇぞ。」

真が言う肉とは、お腹周り以外の事。

……つまりは胸と尻の事……。

「エロ親父……。」

ボソリと呟く。

幸い真には聞こえなかったみたいだ。

⏰:08/02/24 01:29 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#356 [向日葵]
「足も……なぁ。太すぎもいかんが細すぎもそそられねぇぞ。女は華奢な体もいいが、柔らかさも大切だからな。」

真の女談義を聞く為にここに来た訳じゃないんだけど……。
そんな熱く語られた所で私にどうしろと……。

仮に、Aカップの私の胸が一気にCカップに成長することはないだろう。

「残念だけど、真の理想とする体じゃないと思われ。嫌なら他の女の子を見る事ね。……で、話ってこんなくだらない事?」

呼び出したからにはそれなりの話があるのかと思ったのに、話がずれてる。

⏰:08/02/24 01:35 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#357 [向日葵]
真は「んー……。」と少し唸る。

夜の冷蔵庫か……。
思わず突っ込む。

「最近……さぁ、俺お前ら世代にモテるんだけど……どうする?」

意味が分からない。
文が全く繋がってないじゃないか。

……それに。

「何故聞く。真の問題でしょう?」

真は笑う。
意地悪な顔は、最早悪魔としか思えない。

……いや、死神?

……。
……言い過ぎか。

⏰:08/02/24 01:39 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#358 [向日葵]
あれ?死神と悪魔ってどっちが上?
私の中では悪魔が上って気が……。

「……――じゃねぇか。って、聞いてんのか!?」

「え?あ、ゴメン。全然聞いてなかった。」

足を組み換えて深くイスに腰かけた真は、「たく……。」と小さく悪態づきながら、私が聞いてなかった部分を話した。

「もし、俺がお前ら世代に誘惑されて、お前を捨てたらどうすんの?悲しいんじゃねぇか?っつってんの。」

「……何それ。」

⏰:08/02/24 01:43 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#359 [向日葵]
私達世代には興味ないとか言いながら私を好きとか言って。
好きって言う割には心の中覗かせてくれないし。
今だって、何でそんな嫌な気持ちにさせるかなぁ……。

「そんな気持ちがすぐすり変わる程度にしか私の事好きじゃないの?」

真は目を軽く見開いた。

足を組むのを辞めて、こちらに身を乗り出す。

私は少しずつ後退り、ドアに手をかけた。

「からかうなら……その気持ちが嘘なら……もういい。」

⏰:08/02/24 01:47 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#360 [向日葵]
素早く後ろ手に鍵を開けて、部屋を後にした。

追ってくる気配はない。

所詮この程度。
学校に入れば私達は教師と生徒。
意味信な行動はご法度。

それにしたって、何かそれなりの態度くらい取ってくれてもいいじゃないか。

帰って機嫌を取ればいいとでも思ってるの?
私はそんなにちょろいって馬鹿にしてる……っ!?

悔しくて、涙を我慢したら、鼻水が垂れてきそうになったので必死にすすった。

⏰:08/02/24 01:52 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#361 [向日葵]
馬鹿らしい。

私ばっかり。
1人よがりもいいところだ。

それが嫌い。

踊らされてるみたいで。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

帰り、多香子と一緒にデパートで、水着を見ていた。

ルンルンな多香子と違って、午後から急に曇りだした空のように私の心も暗雲が垂れこめてきだした。

「あ、これいぃー!試着してくるねー!」

⏰:08/02/24 01:57 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#362 [向日葵]
ため息をつきつつ、試着室へ向かった多香子の水着をチラリと見た。

真っ赤っか……。

赤って……赤って……。

私からすれば考えられない色だった。
それを着ると言う多香子。

アイツすげぇ……。

「どんなの探してるんですか?」

「は?」

右を向けば、自然な茶色い髪をしたお兄さんがいた。
推測で……20……1、2だろうか。

⏰:08/02/24 02:02 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#363 [向日葵]
ちょい待て私。

普通こんな女水着が売ってる所で男っていんのか?

不躾ながらも、そのお兄ちゃんをジロジロ見た。

お兄さんは気にした風もなく、ただにこにこして側にいた。

「あの……近い!」

「あ、ゴメンゴメン。」

と言いながら去ろうとはしない。
見た所、店員らしいが、この売り場の店員かどうかは定かじゃない。

完全に突っぱねる事も出来ず、私は無言で水着を探した。

⏰:08/02/24 02:07 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#364 [向日葵]
「色とか決まらないんですか?」

しつこい。

私は売り場で店員に言いよられるのが嫌いだ。
押し付けがましく商品を売ろうとしてる気がして、選べたもんじゃない。

「いえ。別に。」

と言って逃げようとした。

……が。

「みっかげー!どーぉ!?良いと思わない!?」

こんの馬鹿!!タイミングが悪すぎ!

⏰:08/02/24 02:10 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#365 [向日葵]
案の定、店員のお兄さんは水着姿の多香子に食い付いた。

「お客様、大変似合ってますよー。色味も合ってますしー。」

おだてられれば悪い気はしない。
多香子は恥ずかしがりながら店員さんと楽しそうに話す。

そこで多香子の馬鹿はいらん事を言ってくれた。

「あ、あの子の水着見てやってくれますか?多分黒系が似合うと思うんですけど!」

多ぁー香ぁー子ぉぉーっ!!

お兄さんは嫌な顔せず、まぁそれが当たり前だろうけど、私の水着を探した。

⏰:08/02/24 02:14 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#366 [向日葵]
「これは?」とか、「こんなデザインいかがですか?」とか、いちいちうるさい。

私は全部無視して、適当に自分が合いそうな色とデザインの水着を選んで試着室へと向かった。

「こんなもんか。」

全部着終わってから、全身鏡を見て呟く。

しかし……。

本当貧相な体だなオイ……。
ガサゴソまでいかないものの、確かに“肉”は少なかった。

「って、別に気になんかしないんだから!」

「みかげ?どう?」

⏰:08/02/24 02:20 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#367 [向日葵]
「まぁまぁ。」と言う私の返事を聞いて、カーテンの隙間から多香子の顔がにょきりと出てきた。

鏡に写った多香子の顔が、にまぁと笑う。

何事かと私は振り返った。

「あのお兄さん、感じいいよねー。好きになりそぉー!」

私の水着よりあの店員かよ。

思わずこけそうになった。
吉本新喜劇じゃあるまい。

「着替えるから出てけ。」

「はぁーい。」

⏰:08/02/24 02:26 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#368 [向日葵]
・・・・・・・・・・・・・・・・

会計を済ませて、売り場を後にしようとした時だった。

「あ、さっきのお兄さんだよ。」

耳打ちしてくる多香子の視線の先に、さっきの店員がいた。
お兄さんは私達に気づくと、やっぱりにこりと笑ってこちらを向いた。

その時、何故かそのお兄さんと、真がダブった。

特別どこかが似ているとかじゃない。
ただ雰囲気と言うか、イメージと言うか……。

⏰:08/02/24 02:30 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#369 [向日葵]
頭をよぎる、今日学校で見せた真の微笑み。

……そうか。
この人は

「表……。」

「気に入ったのが見つかりましたか?」

気がつけば、お兄さんは目の前にいた。
前にすればよく分かる。

コイツは真属性の奴だ。

よって危険。

「ありました。じゃ。多香子、行くよ。」

多香子は名残惜しそうにお兄さんを振り返りながらエスカレーターを降りた。

そして私も降りようとした時……

……腕を掴まれた。

⏰:08/02/24 02:35 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#370 [向日葵]
警戒しながら、ハッと振り返る。

「君、察しがいいみたいだね。もしかして本能?」

化けの皮が剥がれてる。

やっぱりコイツ……。

「裏の顔、客に見せていいの?」

何がおかしいのか、お兄さんはクスクス笑う。
名札を見れば「榊」と書いてあった。

「大概の女の子なら君の友達みたいにコロッと騙されるのにね……。でも、君は違うみたいだ。」

妖しげな、少し薄めの茶色のカラコンをはめた目が、私を射抜くように見つめる。

⏰:08/02/24 02:39 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#371 [向日葵]
私の中の、警鐘が鳴り響く。

コイツに、近付くなと……。

⏰:08/02/24 02:41 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#372 [向日葵]
9P・類

「あらしがくるぞー!」

そのさけびとともに、うみがおおきくゆれはじめました。

うみのなかは、しろくにごり、みんなのすかだがみえなくなってしまいました。

「みんな!どこにいるの!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

私と、「榊」という店員の睨み合いは続いていた。

「で……私に何の用?」

「面白いからさ、気に入ったんだ。付き合ってくれない?」

⏰:08/02/24 02:45 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#373 [向日葵]
私は目をすっと細めた。

「死ね。」

手を乱暴に振り払う。
再びエスカレーターに足を踏み入れようとすると、榊は前に立ちはだかった。

苛立ちを隠す事なく、眉間にしわを寄せて榊を睨んだ。

「軽い言葉と思うかもしれないけど、本気。君の事もっと知りたいなって思うんだ。」

意外や意外。
真と同じように見えて、同じじゃない。

この言葉は、本当のような気がした。

……いや、それも演技のうちか?

⏰:08/02/24 02:49 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#374 [向日葵]
私はどうも人間観察が苦手らしい。
相手の本心が見えないでいる。

この人も。
…………真も。

「何?見つめてくれちゃって。惚れた?」

考えていたら、どうやらお兄さんを見つめてしまったらしい。
親しげな距離で、笑いかけてきた。

「ばっかじゃない。もう来ないからアンタにも会わない。そうやって誰にでも口説いてればいい。」

お兄さんを押し退けて、私はエスカレーターを下った。

⏰:08/02/27 00:27 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#375 [向日葵]
「榊 歩っ!」

降りきった頃、急に後ろから声がするもんだから、思わず振り返った。

お兄さんは両手をポケットに突っ込んで、無邪気に笑っていた。
それはそれは、少年のように。

「榊 歩(さかき あゆむ)ってんだ。覚えといてよ。」

「……。もう忘れた。」

それだけ言って私は多香子の元へと行った。

「何ー。みかげ狙われてたの?」

知らないよ。
勝手にあっちが興味持っただけ。

⏰:08/02/27 00:32 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#376 [向日葵]
「帰ろう、多香子……。」

一気に疲れた。
意味の分からない疲れ。

特別体力を消耗した訳でも、頭を使った訳でもないのに、何故か疲れた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

家に帰っても、真はまだ帰ってきてなかった。

携帯を見て、わざわざセンター問い合わせまでしたのに、なんの連絡も入ってなかった。

顔を合わせるのは気まずかったからいいけど、せめて何かメールくらいは……詫びたメールくらいはあるかと思ったのに……。

⏰:08/02/27 00:36 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#377 [向日葵]
私は何を期待してたんだろう。

期待をすればするだけ、裏切られた時のダメージが大きいのを知ってるくせに……。

[お母さんとお父さんは?]

小さい頃の私だ。

[お空にね、出かけて行ったの。だから、いつかは帰ってくるよ。]

祖母が、小さな私に言った。

でも結果は、当たり前というか、帰ってなんて来なかった。

⏰:08/02/27 00:40 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#378 [向日葵]
信じる事を決めたのに、未だ渦巻く心の闇を、すぐに全て拭い去るのは難しいらしい。

でも、もう何もかもを投げ出して逃げる事は、したくなかった……。

――――――……

目を開けば暗闇だった。

カーテンを開けっぱなしにした窓からは月明かりが差し込んできている。

空は、星がポツポツ出ていた。

「……暑…。」

窓を開ける。
風が入ってくる事を望んだけど、入ってきたのは生温い湿気だけだった。

⏰:08/02/27 00:44 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#379 [向日葵]
すると突然ノックが聞こえた。

「みかげ?起きてんのか?」

真だ。

帰ってきてたんだ……。

いまいちぼんやりしてる頭なのに、情報を素早く処理して、私は今何をすればいいかを必死に考えた。

でもちんたら考えてる暇なんてなかった。

真がドアを開けてしまったからだ。

確かめるかのように、ゆっくりとドアが開き、真の姿が少ない明かりに照らされる。

⏰:08/02/27 00:49 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#380 [向日葵]
「……みかげ?」

「……。」

何を言えばいいとか、分からなかった。
出来れば真の横を通り過ぎて風呂にでも入って、この気まずい雰囲気を先送りにしたかった。

でも助かったのは、真が電気をつけようとしなかったことだ。

顔を見なければ、幾分かは耐えられる。

「怒ってんの?」

怒ってるんじゃない。
ただ不安なだけ。

真を好きでいていいのか、迷ってるだけ……。

⏰:08/02/27 00:53 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#381 [向日葵]
ギシ……と床を軋ませながら、真が近づく。

いつになく、真が慎重なのに私は驚いた。
いつもなら、こちらの事などおかまいなしなのに……。

月明かりで、真の顔が青白く見える。
幽霊のようなのに、何故か色っぽく見えて目が離せない。

妖艶とでも言うのだろうか……。

私がいるベッドに一緒に座った真は、ゆっくり手を出すと私の頬に指先を触れた。

びくりと体が少し反応する。
暗闇に近いせいか、五感が鋭くなってる。

⏰:08/02/27 00:59 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#382 [向日葵]
お互いの息遣いがよく聞こえる。
真の香水の匂いがいつもより漂ってくる。
触れる指先から僅かな体温が伝わってくる。

頬にあった真の指が、私の唇をさまよって止まる。

「何か、喋ってくんない?沈黙って結構キツイ……。」

声までが、いつもと違うように聞こえる。

あぁそうか。
だから大人の情事と言うものは、暗闇で行われるのか。

でも、今はお互いそんな気がないのは確かだ。

私はなんとかして言葉を搾り出さなければならない。

⏰:08/02/27 01:03 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#383 [向日葵]
「―――……水着、買ってきた……。」

「……うん。」

何を言うかと思えば水着か、と思ったかもしれない。

でも、例えば「私のどこを好きになったの?」とか「私の事本当に好き?」とか聞けるものでもなかった。

と言うか、そんなの聞いたら、すごく重い気がして言えなかった。

「どんなの買ったの?」

真が聞いた。

「普通。どこにでもあるようなやつ。それに、ガバガバだから、真はつまんないと思うよ。」

⏰:08/02/27 01:07 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#384 [向日葵]
すると真は、唇から指先を離して、その手で私の頭をワシャワシャ撫で回しながらクククと喉の奥で笑った。

とりあえず、気まずいわだかまりは無くなったらしい。

「そっか……。でも俺は、お前の水着姿見れるだけで嬉しいよ。」

暗くて良かった。
顔が赤くなってるに違いない。

「ナンパされた。」

唐突に口に出たのがそれだった。

自分でも突然に言葉が出てきた事にびっくりした。

⏰:08/02/27 01:12 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#385 [向日葵]
頭に置いてあった真の手がピクリと動いた。

直感的に「ヤバイ」と感じる。

「なんて?どこのどいつに?」

声の低さから言って完璧ご機嫌ななめ。

「あの、センター街の近くにあるデパートで……。」

名前……。

[……き あゆ……っ!]

チョコチョコしか思い出せない。
なんだったか本当に忘れてしまった。

「忘れた。でも、真によく似てた。」

「ふーん。顔の良さは五分五分か。」

自画自賛……。

⏰:08/02/27 01:38 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#386 [向日葵]
どこまで自分に自信があるんだか。

「でも相手にしなかった。チャラチャラしてたし。」

「チャラチャラしてなくても相手になんかすんな。お前は俺のだろ。」

そうやって荷物みたいに言わないでほしい……。

小さくため息を吐いていると、柔らかい物が頬に触れた。

真の唇だ。

何が起こったか分からなかった私は、しばらく呆けていた。

⏰:08/02/27 01:41 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#387 [向日葵]
「絶対、どこにも行くな。」

真剣で強い言葉。
耳から脳へ行って焼き付く。

「……はい。」

馬鹿みたいな声を出して、何故か敬語で返事をしてしまった私。

返事を聞いた真は、笑ったのか、微かに息を漏らした。

その時、携帯のバイブが鳴った。
キョロキョロ探せば、少し離れた場所で点灯している。

取りに行こうとした時、後ろからふわりと抱きしめられた。

⏰:08/02/27 01:46 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#388 [向日葵]
空気を抱くようなその行動が、私の胸を鼓動でいっぱいにする。

「出なくていい。」

耳元で喋らないで。

駄目だ。絶対この暗いのがいけない。

「多香子からだったら明日うるさいから離して。」

納得いかないように少し唸った真は、「風呂用意してくる。」と言って出て行った。

急いで携帯を手にした私は、胸の中が空になるほど息を吐いた。

明らかに、今はヤバイ雰囲気だった。
私があの時携帯に出なかった真は…………もしもの事をするかもしれない。

⏰:08/02/27 01:52 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#389 [向日葵]
冷静になる為、深呼吸してから携帯を開けば、メールだった。

<今、電話しても平気?>

つぐみさんからだった。

一旦ドアの方を見て、真が来ないか確認した後、部屋の明かりをつけた。

返信をしてしばらく、電話が鳴った。

{もしもし?みかげちゃん?つぐみです。}

「こんばんわ。」

真に聞かれてはいけない気がして、出来るだけ小声で話した。

{プールの事なんだけど、こっち1人増やしていいかな?私の友達なんだ。}

⏰:08/02/27 01:57 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#390 [向日葵]
女ばっかり増やして真は居づらくないだろうか……。……アイツなら喜ぶかな。
ハーレムとかつって。

「私は別にいいです。多分友達も、し……松川も。」

{そ、ありがとうっ。じゃあ私の友達に伝えとくわ。場所とか待ち合わせ時間とかは松川君に言っておくね。}

「あ、ハイ。」

「バイバイ!」と心底楽しみらしい声で別れを告げられると、通話が終了した。

つぐみさんの友達だから、多分大人っぽくて可愛い人なんだろうな……。

⏰:08/02/27 02:02 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#391 [向日葵]
そう思えば今日買った水着が少し地味だったかもと後悔した。

後悔しても仕方のないことなんだけれども……。

「誰?」

開けっぱなしにしてたドアから真が覗く。

「つぐみさん。友達を追加してもいいかって言われたからいいって答えた。」

「そ。」

真はリビングへ向かってしまった。

真はつぐみさんの友達とやらん知らないんだろうか?

⏰:08/02/29 01:25 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#392 [向日葵]
※訂正

友達とやらん ×
友達とやらを ○

⏰:08/02/29 01:26 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#393 [向日葵]
―――――――……

文化祭まで、あと1週間をきっていた。

今度の日曜にはプール、火曜日から2日間は文化祭なのだ。

いよいよ正念場で、どこのクラスもお祭りムードで一杯だった。

こういう雰囲気は嫌いじゃない。

「んーっ!なんか今からワクワクしてきたよねぇっ!」

コスプレ衣装を作りながら多香子が言った。

案外不器用な彼女の指には無数の刺し傷が。
先程もプスリと刺して息を吸い込むように痛がっていた。

⏰:08/02/29 01:33 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#394 [向日葵]
そんな彼女が作るのはメイド服。
なにもそんな難しい且つ面倒くさそうな衣装にしなくてもいいのに……。

私は当日まで秘密ってことで。
秘密にしとく程のもんでもないのだけど。

「私達のクラス、結構注目されてるみたいよー。楽しみだね!」

「ふーん。」

店番さえ無ければもう少しやる気は出ただろうに……。

制服もコスプレの内では……と発言したが、敢えなく却下されてしまった。

⏰:08/02/29 01:38 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#395 [向日葵]
いや、却下されたと言うか、めちゃくちゃ短いスカートでセーラー服着ろと言われたが、「お断りします。」とこっちが却下したのだ。

足を出して何が楽しい……。

「ねぇ葛さん、多香子ちゃん。店番の時間帯どこがいい?」

クラスの女子が聞きに来た。
私と多香子は一緒の時間の所にしてもらって、聞きに来た子は他の人のとこへと行った。

真には時間バレないようにしよう……。

⏰:08/02/29 01:42 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#396 [向日葵]
「ねぇねぇ葛さん。」

何人かの女子が、私に話しかけてきた。

やけに今日は声をかけられるなあ。

「松川先生と仲良いの?」

「は……。」

開いた口が塞がらない。

仲が良いと言うか、一応大切な人ではあるけれど、何故表の真と仲が良いと言われるのだろう。

「最近、よく話したりしてる所見かけるし。」

「放送でよく呼ばれてるしねー。」

⏰:08/02/29 01:46 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#397 [向日葵]
だから何だと言いたいのをぐっと我慢した。

そういえばこの前、徐々に(表)松川人気説が出てたっけ。

まさかそれで?

「別に。ちょっと進路の事で相談乗ってもらってるだけ。」

あれでも一応、真は進路担当だ。
これを言えば少しはかわせるだろう。
実際は進路なんて、てーんで何にも考えちゃいないけど。

嘘も方便。

「松川にさぁ、ここに来てって言ってもらえない?」

⏰:08/02/29 01:50 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#398 [向日葵]
「えぇ!?」

思わず過剰に反応してしまった。

「松川にいっぱい着て欲しいものがあるんだよねー。」

「浴衣とかー、お医者さんとか。」

「書生さんもいいよね。あとー、軍服とかぁ!」

色んな服装をした真が頭にポンポン浮かぶが、普段のあの仏頂面で着るならば、あまりどれも似合わない気がしてきたのは気のせいだろうか……。

しいていえば医者ぐらい……?
聴診器あてて元気ですかー?みたいな?

アレ。猪木入ったよな今……。

⏰:08/02/29 01:55 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#399 [向日葵]
パタパタ手を振って、「松川ファッションショー2008」を強制で止めさせた。

「とにかく、来てほしいなら自分で言ったほうがいいと思うよ。そんなしょっちゅう会ってる訳じゃないから。」

「毎日顔会わせてんじゃーん。」

小声で愉快そうに言う多香子にチョップをお見舞いしつつ、クラスの女子達にそう告げた。

「そっかー……。わかったっ!ありがとう。」

やっと解放されて、大きく深呼吸した。

⏰:08/02/29 01:59 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#400 [向日葵]
チョップをいれられた多香子は、頭をさすりながら恨めしそうに私を睨む。

「何よ何よー。ちょっとしたジョークじゃぁん。」

「そのジョークがとんでもない事になったらどうしてくれんの?」

多香子はどうやらこのスキャンダラスなシチュエーションに憧れているらしかった。

そしてそれを唯一知る自分がとても特別だとか思ってて尚且面白く楽しいらしい。

気持ちは分からんでもないけれど……。

⏰:08/02/29 02:02 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#401 [向日葵]
「松川ってさー、家ではどんななの?みかげあんまり話さないけど。」

「例えば?」

「実はスケベだとか。エロ本集めてます!みたいな。」

エロ本云々はともかく、多香子大正解。

そうなんだよ。
アイツ誠実ぶってドがつくほど実はスケベなんだよ。

この前だって……。

[出なくていい。]

あの声の色っぽく聞こえる事と言ったら……。

⏰:08/02/29 02:07 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#402 [向日葵]
もう少しで動きを止めてしまおうとする自分にも驚いたけど……。

アイツはあんな声やら行動やらを巧みに使って今まで何人もな女の子を……。…………。

そこまで考えを膨らませたくせに、自分の考えに自分で傷付いた。

「で、どうなの?」

多香子の声に我に返った。

「ほんっっとうの事聞きたい?」

少し身を乗り出した多香子は、目をキラキラさせて聞く体勢に入る。

⏰:08/02/29 02:11 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#403 [向日葵]
「失神しても知らないんだから。」

それから私は多香子に1から10まで真について話をした。

実は超俺様野郎だとかナルシストだとか。
私達2人の関係は、とりあえず控えておくことにして、あとは全て話した。

多香子は声も出さずに驚いていて、目が飛び出るという言葉が分かった気がした。

「あの……松川が……?」

やっと出た多香子の声は、少し上ずっていた。

⏰:08/03/01 01:09 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#404 [向日葵]
私はコクリと頷く。

多香子は色んな表情に変化させながら理解に苦しむ。

それもそうだろう。
あのムッスリした顔が家に買えれば一変するだなんて誰が想像するだろうか。

「なにアイツ……。二重人格ってやつ?」

「本人曰く、世の中の女の子の為に表と裏使い分けてるらしいよ。」

多香子は「うっわー……。」と呟く。

「アンタ……イジメられてない……?」

⏰:08/03/01 01:13 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#405 [向日葵]
そりゃ最初はイジメられたさ。
それが今じゃ…………。ね……。

「あ――――っっ!!」

いきなり多香子はデカイ声を出した。

クラスと目の前にいる私は体をビクリと震わせる。

「な、何……。」

「プールの日、みかげ誕生日じゃん!」

あぁそうだっけ。
誕生日なんて何年も祝ってもらうことは無かったから、自分がいつこの世に生を受けたかなんて、とっくの昔に忘れてしまってた。

⏰:08/03/01 01:18 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#406 [向日葵]
真は知ってるのだろうか。
私が誕生日だって事。

知ってなくても、別にいいかもしれない。

今年はいつもとは違う。
なんてったって真がいる。
今のところ、それでいいかもしれない。

「ま、別にいいや……。」

「じゃあ、今日パフェ奢ってあげる!」

「いや別にいいって。」

「水着買ったデパートで、美味しいパフェのとこあんだって!」

それって……あの男がいるとこじゃん!

⏰:08/03/01 01:22 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#407 [向日葵]
榊 歩!

……。
アレ。今思い出せた。前まで忘れてたのに。
恐るべし人間の記憶。

「あそこやだ。」

「えーいーじゃぁん!」

「やだったらやだ!」

頑なに拒否した。
どうもアイツは調子が狂う。
まるで真の分身みたい。

頭が回らなくなる。

結局、その日はどこにも行かず、真っ直ぐ帰ることになった。

⏰:08/03/01 01:28 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#408 [向日葵]
・・・・・・・・・・・・・・・・

帰る道の途中、ブルブル携帯が鳴った。

真からだ。

<つぐみ来る。飯いる。>

「は?」

歯抜けた文を見て少しムッとした。
だって意味が分からない。

まずつぐみさんはどこに来るのか。
そして飯いるって、それはつぐみさんとご飯を食べに行くけどいるのかとか全くわからなかった。

<意味分からん。>

送信。

⏰:08/03/01 01:32 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#409 [向日葵]
でも1つ言えることはどちらにしても夕飯は私が作らなくてはいけないらしい。

材料何かあったっけなぁ……。
無かったらまた出て買いに行くか。

エレベーターで上がりながら考えた。
チンと目的の階に着いたので、鍵を指で振り回しながら部屋まで行く。

「――……ゃん……。」

「ん?」

声が聞こえた。

足元を見ていた顔を、正面へ戻す。

⏰:08/03/01 01:38 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#410 [向日葵]
「みかげちゃん。」

「つぐみさん……っ!」

―つぐみ来る―

1つの謎解決。
つぐみさんは私達の家に来るんだったんだ。

つぐみさんはスーパーの袋を2つほど持っていた。
綺麗な白い指に、重みで袋の持つ部分が食い込んで痛々しい。

素早く袋を持ってあげた。

「どうしたんですか急にっ。」

「プールの事で話したくて。給料前でお互いお金持ってないから、外じゃなく家で食べようって松川君が誘ってくれたの。」

⏰:08/03/01 01:44 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#411 [向日葵]
この頃、つぐみさんに対する真の警戒が少し薄れた気がする。

つぐみさんもそれを望んでいるだろうし、もしかして真は、つぐみさんが気になるんじゃなくて、元の幼なじみの関係に戻りたいのだろうか?

「で、この大荷物は……。」

「ビールとおつまみ。あと、夕飯作ろうかなって。みかげちゃんと。」

ビールかぁ……。
なんだか大人……。

1度、ビールを舐めた事があったが、背筋を抜ける苦さにもう2度と口に入れるものかと誓った。

⏰:08/03/01 01:52 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#412 [向日葵]
※お詫び※

大変勝手な事ながら、先程出ていたみかげの誕生日説は無かった事にしてください

冒頭では17歳になったばっかりにしてありますので話が繋がらないです

こちら側のミスですので大変読みにくいかとは思いますが、よろしくお願いします。


向日葵

⏰:08/03/01 09:49 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#413 [向日葵]
「とりあえず中へ。」

鍵を急いで開けて、荷物を台所まで運んだ。

「グラタン作ろうと思うんだ。」

牛乳を持ちながらにっこり笑うつぐみさんは、好きな人に料理を作れる事が嬉しそうだった。

その好きな人と私が付き合ってるだなんて、つゆ知らずに……。

さすがと言うかなんと言うか、つぐみさんはテキパキと作っていった。

グラタンでもちゃんとルーから作って、焼いてる間に他の1品作ったりと手際はピカいちだった。

⏰:08/03/03 00:00 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#414 [向日葵]
そんなつぐみさんだから、私は胸が痛んだ。

私が真とくっつかなければ、つぐみさんは真と付き合ってたかもしれないのに……。
そんな事思っても、手放せない私はズルイのだろうか。

リビングに美味しそうな匂いがたち込む。
ヨダレが出そうな思いで真を待った。

「松川君とはいつもご飯一緒に食べてるの?」

「あ、いえ。私が大抵先に食べちゃいます。」

2人でイスに座りながら話した。

⏰:08/03/03 00:04 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#415 [向日葵]
「でもいいな。毎日顔合わしてるんだもんね。……羨ましい……。」

最後にそう呟いたつぐみさんに、なんて声をかければいいか分からない私は、気まずくなりながらうつ向いてしまった。

沈黙が続いて、そろそろ限界が近付いた時、世話しなく鍵を開ける音が聞こえた。

満面の笑みで立ち上がったつぐみさんは、玄関まで小走りしていった。

まるで旦那の帰りを待っていたかのように。

その姿をぼんやりと眺める事しか出来なかった。

⏰:08/03/03 00:07 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#416 [向日葵]
*****************

「お帰りなさい。」

迎えたのはつぐみだった。

てっきりみかげが来るもんだとか思ってた俺は、内心肩を落とす。

つぐみにバレないように、つぐみの後ろをチラリと見たが、みかげが来る気配は無かった。

「あぁ。」

なんだか新婚みたい……と思ったのは俺だけではないだろう。
少し頬を赤くさせてるつぐみも多分同じ事を考えたに違いない。

⏰:08/03/03 00:14 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#417 [向日葵]
期待させちゃいけない。

前にみかげは、「つぐみは前よりは弱くない。」と言っていたが、それを丸々信用するのは難しい。

友達としての距離をしっかり保っておかないと、後々面倒になる事もある。

一瞬の内に、色んな事を考えてると、リビングから何か割れた音が聞こえた。

「みかげちゃん……?」

「何か落としたか?」

とおどけた風に言ったが、体はみかげの元へと早く動いた。

********************

「あー……。」

⏰:08/03/03 00:19 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#418 [向日葵]
何もする事が無くなった私は、気をきかせようと2人がビールを入れる為のグラスを用意している所だった。

が、手元が狂って手からグラス落下。
パリーンと意外にうるさい音を立てながらグラスは割れてしまった。
しゃがんで破片を拾う。

「――いっ…!」

指先から、ゆっくりと赤い血が溢れ出す。

あぁ……踏んだり蹴ったり……。

「みかげ。」

後ろから声。
真だ。

⏰:08/03/03 00:23 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#419 [向日葵]
怪我をしてるのを何だか知られたくなくて、親指と傷をしてる人差し指とを擦り合わせて血を拭き取る。

「ゴメン真。手元狂った。」

「掃除機持ってこい。」

ため息をつきながら言われた。

呆れてるってこと?

「みかげちゃん。怪我なかった?」

あったけど。

「大丈夫です。」

そう言って、掃除機がある部屋へ行った。
そこには救急箱もあった筈だから、絆創膏を貼っておこう……。

⏰:08/03/03 00:27 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#420 [向日葵]
・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「って事で、2人共もいっかな?」

夕飯も食べ終わり、食べながら話していたプール計画の事も話し終えた。

「ちょっと待てつぐみ。」

真が問う。

「お前の友達って誰?」

真からそう言われると、つぐみさんは苦笑いした。

「スルーしてくれると思ってたんだけどなあ。言っても行かないとか言わない?」

⏰:08/03/03 00:31 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#421 [向日葵]
「つまり俺と仲が悪い奴って訳だ。そんで、そいつと俺は一応、顔見知り。そんなとこか?」

“一応”の部分が、やけに強調して聞こえた気がするんだけれど……?

つぐみさんは言いにくそうにしながら、ついにその人物を口にした。

「そう。松川君がちょっと苦手な、あの榊君よ。」

あ、なんだ。女じゃないんだー。

……え?
ちょっと待て。榊?

「つぐみさん。もしかして、榊 歩?」

⏰:08/03/03 00:36 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#422 [向日葵]
私のこの発言に、つぐみさんも真も目をパチクリさせていた。

「あれ?みかげちゃん知り合い?」

「知り合いも何もっ、この前デパ……。ちょ、ちょっと、色々とありまして……。」

デパート云々を言ってしまったら、後で真がうるさい気がして言葉を濁した。

しかし……。

「つぐみさん。榊って人、松川に似てません?」

「あー。本質的には似てるのかもね。」

⏰:08/03/03 00:41 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#423 [向日葵]
私達の発言に、真は大否定した。

「失礼な!俺はアイツ程やかましくもないし、品もちゃんとある!」

それもどうだかね。

久しぶりの2人以上の食事は思っていたよりも楽しくて、何だか私は子供のような懐かしい気持ちになっていた。

部屋を温かく包む空気が、また私を心地よくさせた。

⏰:08/03/03 00:45 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#424 [向日葵]
10P・迷い

魚はまたひとりぼっちになってしまいました。

あたりをみわたしても、さっきまでいっしょにいた魚たちはもういません。

するとまた、なみが大きくゆれました。

・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

子供から、いい大人までが大きな声ではしゃぐなか、私はぼんやりとしていた。

うるさい……。

「みかげ!どーう!?」

⏰:08/03/03 00:51 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#425 [向日葵]
買いに行った時見せてもらったでしょーがよ。

「あー可愛い可愛い。」

適当にあしらっても、多香子は別に気にした風もなく、水に濡れて意味がないのに髪型を可愛いアレンジしようとしていた。

「多香子ちゃんの水着すごいねー。でも彼女の印象とあってるー。」

そう言ったつぐみさんの水着は、体のラインを際立たせるかのようなビキニで、色は髪の毛と同じ黒だった。

胸元の小さく光るライトストーンがまた大人っぽさを感じた。

⏰:08/03/03 00:56 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#426 [向日葵]
「みかげちゃんも可愛いね。」

にっこりとつぐみさんは言うが、適当で選んだ適当な色の適当な水着のどこが可愛いか疑問に感じる。

「つぐみさんは色っぽいですね。」

「そんな事ないよ。もっとダイエットすればよかったかなー。」

それ以上痩せたら死にますって。

「じゃそろそろ行こっか。」

つぐみさんの言葉を合図に、多香子を呼んで、真達と落ち合う約束をしていた場所に向かった。

⏰:08/03/03 00:59 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#427 [向日葵]
最近のプールは凄い。

波が出たり、ウォータースライダーみたいなのがあったり。
水の遊園地そのものだ。

「何で……上着着てんの?」

先程合流した真が私に聞いてきた。

水着姿、と言っても、私は上に長袖のパーカーを羽尾っていた。

理由はこうだ。

「無駄に露出したくないの。」

学校のプールだって嫌なのに……。
学校以上の人の目に自分の肌がさらされるなんて我慢も限界だ。

⏰:08/03/04 00:04 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#428 [向日葵]
「それにしても……。」

ツツーと首筋から鎖骨辺りを真の指先が撫でた。

鳥肌と体温上昇が一気に起こる。

「白くて綺麗な肌だな、みかげは……。」

不敵な笑みを浮かべる真は、今日はメガネをしていない。

そのせいか、色気のようなものがいつもより倍にも3倍にもなってビシビシ私の体に張り付く。

でもつぐみさんがいる前でそんな事しないで欲しい。

⏰:08/03/04 00:11 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#429 [向日葵]
苦し紛れに、力一杯真のオデコにデコピンをお見舞いする。

「よし!じゃあどこから行こう?」

張り切ってしきるは多香子だ。
手をかざして辺りをキョロキョロ観察する。

「ふーん。君、みかげちゃんって言うんだ。」

さりげなく隣に来て、榊 歩が私に囁いた。
そしてにっこり笑う。

笑った時に少し見える八重歯が、少年ぽさを感じさせ、愛嬌があると思った。

まぁ本質的なものは真の分身なんだけれど……。

⏰:08/03/04 00:16 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#430 [向日葵]
「俺の名前覚えてる?」

「つい最近思い出した。」

「でも知ってるは知ってるんだ。ならいいや。あ、歩って呼び捨てで構わないから。」

次々に出てくる言葉にため息。
話すテンポが早いからそれがまた疲れる。

早足で多香子の隣に行こうとするも、なんなくついてくるのど追い払う事が出来ない。

「ちょっと……何……?」

「みかげってさ……松川と付き合ってるの?」

⏰:08/03/04 00:21 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#431 [向日葵]
他の人達に聞こえるかどうか際どい音量。
でもなんとなく皆が聞耳を立ててる気がしたから

「んな訳ない。」

と答えてしまった。

「榊君。あんまりみかげちゃんばっかりひっついてると、松川君が怒るわよ?」

クスクス笑いながら、つぐみさんが言った。
現に後ろにいる真が、さっきから怒っているのはオーラで分かる。

「って言うかお兄さん。みかげは私のですから!」

と多香子が私の腕に抱きついてきた。

⏰:08/03/04 00:26 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#432 [向日葵]
自分で言うのもなんだが……何だこの“私争奪戦”……。

「……で?どうするんだ?」

苛立ちながら真が言った。

皆で悩んだ結果、とりあえず普通にプールに入ろうと言う事に決まった。

皆が派手にプールへ飛び込む中、私は足をつけてパシャパシャ遊んでいた。

「みかげ?」

それに気付いた真が、私に近づく。

「いや、ちょっと水慣らし……。」

と言うのは嘘。

⏰:08/03/04 00:29 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#433 [向日葵]
上着を脱げばある意味ブラそのもの。
一応女子な私は、少し脱ぐ事を躊躇っていたのだ。

「……真。あっち行ってて。」

「は?何で。……まさかお前、恥ずかしいの?水着。」

真は変な所鋭いから嫌だ。
恥じらってるって知られてしまった方がより一層恥ずかしい。

「いいからあっち!」

彼方に指を指して、真をどこかへとやる。

その間に、上着をそこら辺に置いて体を水につけた。

⏰:08/03/04 00:33 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#434 [向日葵]
つめ……ったい……っ!

いくら夏間近とは言え、冷たかった。

しばらくその冷たさに耐えようと、体を震わせながら慣れるのを待つ。

「みかげー!潜水してどっちが息続くか競争しよー!」

多香子が声をかける頃には、ようやく慣れた。

多香子の声に反応した真は、少し離れた所で濡れた髪をかき上げてニヤリと笑っていた。

それを見て見ぬフリをする。
直視してしまえば、肌を露出して、水に濡れてるのも手伝って綺麗に見える真に見とれてしまいそうだった。

⏰:08/03/04 00:38 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#435 [向日葵]
「みかげちゃん。指どうしたの?」

「へ?」

見てみれば、スッと赤い筋がある。
これはこの前グラスを落とした時に出来た傷だ。

大分治ってきたから、外してもいいだろうと思ってこの頃は絆創膏貼らなくなった。

「紙でいつの間にか切ってたみたいです。痛くないですよ。」

傷した時は痛かったけどー。

「前の金曜日も針でぶっすり刺してたもんねー。」

⏰:08/03/04 01:21 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#436 [向日葵]
3分に1回は刺してるかもしれない多香子に言われたくないんだけど……。

すると、歩が私の手首を持って指先を見つめる。

「あー痛そー。消毒しようか?」

「傷口塞がってるから大丈夫。」

「ばい菌舐めちゃ駄目だよー?だからさ、消毒したげる。……俺の口で。」

は?

と思えば、私の指先を歩の口に入れようとした。

これにはびっくりして、手を振り払おうとするが、ビクともしない。

⏰:08/03/04 01:25 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#437 [向日葵]
「やめろ。」

顔をわし掴みして、真が私と歩の間に割り込む。

「何、松川。みかげに惚れてんの?いつもの余裕っぷりがないじゃん。」

楽しそうに笑う歩。

余裕っぷり?
私にはあるに見えるんだけど。
むしろいつもの真なんだけど。

「嫌がってるのも分からないんじゃ、お前も落ちたな。」

火花がピシピシ見える。

ここ火気厳禁だよね。

⏰:08/03/04 01:30 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#438 [向日葵]
「2人も!いきなりケンカしないでよ!仲良くっ!」

そう告げるつぐみさんに従う真と歩。

見つめれば、高校時代の少し幼い3人が重なった。

その頃は私は側にはいなくて、どこかの家にいながら夢を見続けていたんだろう。

私が知らない、真とつぐみさんの過去。


つぐみさんが前話した2人の過去は、それは辛いこっだっただろうけど、確かに小さな幸せはあっただろう。

⏰:08/03/06 00:45 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#439 [向日葵]
胸の奥で、微かな疎外感を感じる。

……いけないなぁ、この頃ネガティブすぎる。

ネガティブすぎるのは……大切なものを得てしまったからだろうか……。

「――げ。…みかげったら!」

多香子の声にハッとする。

真達年上組は、少し先へ行って、多香子は数歩歩いた所で私がついて来ないことを察知したのか、立ち止まって私の方を向いていた。

「どうかした?他のアトラクション行くよ。」

多香子を通り過ぎて、見つめる先に真がいた。

⏰:08/03/06 00:49 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#440 [向日葵]
少し不安そうにしている。

そうか。
真は今、2つの事を気にしなくてはならない。

1つは私、1つはつぐみさん。

ならば私は、一応彼女として、心配かけてはならないだろう。
少しでも、真が重くなってしまうような事はしたくない。

きっと真は、私よりもつぐみさんの方が心配だろうし……。
……あぁ、またネガティブな発想。

「なんでもない。ごめん。」

⏰:08/03/06 00:52 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#441 [向日葵]
軽く微笑めば、真もホッとした様子だった。

皆でプール。
でも私は、真には近付いてはいけない気がした……。

――――――…………

派手に水のしぶきが舞う。
ドボンと何かが落ちたような音がすれば、笑いながら多香子が浮かび上がってきた。

「いやー!あれ超楽しい!!ね、ね、みかげ!もう1回行こう!」

「ま……また?」

水の滑り台みたいなのに乗って早5回。

⏰:08/03/06 00:57 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#442 [向日葵]
多香子はそのアトラクションをとても気に入ったらしく、滑っては登りを繰り返す。

無論、私を引っ張って……。

体力的にも疲れてきたけど、ネガティブな思考をどうにか追い払いたくて、半ばヤケになりながら多香子について行っていた。

「せめて別の行かない……?そろそろ飽きてきた……。」

「おーいみかげ。そろそろ止めておけー。お前ぶっ倒れるんじゃねぇかー?」

少し離れたとこに真とつぐみさんがいる。
歩は私達と一緒に遊んでいた。

なので真の呼びかけに答えたのは、すぐ後ろにいた歩だった。

⏰:08/03/06 01:02 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#443 [向日葵]
「悔しかったらお前もこっちで遊んでみやがれー!」

真はムッとしたに違いない。
それを分かっていて、歩は私と多香子の肩に手を置くと、更に奥のアトラクションへと向かう。

が、その前につぐみさんが私達に話かけてきた。

「待ってー!そろそろ何か食べないー?」

時計を見れば、12時半をとうに越えていた。

しかもプールの不思議。
泳げばお腹が空きやすくなる。

⏰:08/03/06 01:06 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#444 [向日葵]
お昼宣言をされれば、自分がお腹が空いていた事に気付かされた。

と言う訳で、ランチタイムだ。

プール内にあるファーストフード店で、頼んで食べる事にした。
と言っても、皆ハンバーガーセットで、バーガーの種類が違うだけだった。

席に行けば、丁度5人イスがあるものの、どう座ればいいかに困ったのが、私と真とつぐみさんだ。

多香子と歩は好きなように座って、2人の間にスペースが空いている。

「あ……じゃあ私そこに」

「あ、私座ります!」

⏰:08/03/06 01:11 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#445 [向日葵]
つぐみさんを遮って、2人の間に座る。

結果、私の右から回っていくと、多香子、つぐみさん、真、歩の順に並んだ。

微妙な空気が流れたけれど、能天気な多香子の「いただきまーす。」と言う言葉に皆手を進めた。

「ってか松川さ、眼鏡かけなくて平気なの?」

素朴な質問を多香子からぶつけれた真は、「とりあえず」と適当な答えを返した。

「そういえば、みかげちゃんはどうして松川と知り合い?」

⏰:08/03/06 01:16 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#446 [向日葵]
「親戚で、今住み込んでるから。」

歩は「え!?」と驚くと、私と真を交互に見て、ニヤリと笑った。

「松川やらしー奴だなー。こんな若い子に手出すとか。」

「出されてないから。馬鹿な事言わないで。」

現在系で出されてるんだけどね。

「……。あ。」

「ん?何みかげ。」

「いやちょっとメールしなきゃいけない事が……。ちょっとロッカー行ってくる。」

⏰:08/03/06 01:19 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#447 [向日葵]
上着を羽尾って、ロッカーに続く道へと駆け出す。

本当は、ロッカーには何も用事は無かった。
ただあまりにも息が詰まりそうだったから、少し1人になりたくなった。

携帯を取ってくると言ったにも関わらず、携帯を持っていないのは不思議がられると思い、仕方なく携帯を取ってから皆の元へと戻って行った。

「何ギクシャクしてんの?」

「ひっ!」

曲がり角を曲がると、壁にもたれて腕組みをした真がいた。

⏰:08/03/06 01:23 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#448 [向日葵]
気付かなかった自分が少し情けない。

真は軽くため息をついた。

「まぁ……すんなって方が無理なんだけどな……。」

「ゴ、ゴメン……こういうの苦手で……。」

「だろうな。……俺だって、好きじゃない。しかも榊が邪魔だしな。」

2人の間に沈黙がしばし流れる。
先に破ったのは私だ。

「さ、先に、行くね。怪しまれるから。」

⏰:08/03/06 01:26 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#449 [向日葵]
足を数歩進めたところで、真が言った。

「今日、言うから。つぐみに。」

「……何を?」

「俺達の事。」

私は不安になった。
そしと罪悪感を覚えた。

ずっと、自分はつぐみさんを騙してきたのだ。

なのに今日、真から全て聞かされる事によって、つぐみさんは真に対する淡い希望は打ち砕かれ、私に対する裏切りの思いがつのるだろう。

そう思えば、今日言うべきなのだろうかと言う考えが頭をよぎる。

⏰:08/03/06 01:31 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#450 [向日葵]
「……大丈夫なの?つぐみさん……。正直、今日は言わない方が……。」

「じゃあこのままずっとギクシャクしとく気か?それでいいんだな?」

強い口調で言われれば、どうすればいいべきか分からなくなってきた。

「お前はこのままがいいんだな?」

念押しのように、また真が言う。

「だ……だって、このままは嫌だけど……私つぐみさんも大事だもの……。もしつぐみさんが……前みたいに壊れたら……。」

⏰:08/03/06 01:34 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#451 [向日葵]
「俺だって、つぐみは友達として大事だ……。だから、言い方には気をつける……。」

私はやっぱり不安だった。
つぐみさんの苦痛を考えると胸が痛くなって顔を歪めた。

そんな私を気遣って、真はそっと頬に手を触れる。

「心配すんな。お前が言ったんだぞ?つぐみは大丈夫って。」

「うん……。」

それでも……やっぱり……。

そう言おうと口を開こうとすると、真の口が私の口を塞いだ。

⏰:08/03/06 01:38 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#452 [向日葵]
びっくりして、目を開けたまま真の唇を受け止める事になった。

間近に真の顔が迫る。

唇が離れると、真は私を引き寄せた。
引き寄せられれば、衣服をまとってない真の肌に、私の顔が触れる。

水に触れていた筈の真の体は、暖かさを取り戻していて、少し私の中の不安を拭い去る。

「大丈夫だから。お前は気にしなくていい。なんとかなる……。」

それは私を励ましているよりも、真自身に言い聞かせているように聞こえた。

⏰:08/03/06 01:42 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#453 [向日葵]
私はそれ以上、何も言わず、ただ真を信じる事にした。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

波が出るプールではしゃいでるフリ(自分ではそのつもり)をしながら、やっぱり少し距離を取った場所にいる真とつげみさんが気になった。

いつ言うんだろうとか、無意識にドキドキしていれば、はしゃごうだなんて演技は出来なくなってしまった。

不器用だな私……。

「へーみかげちゃんは松川が好きなんだ。」

⏰:08/03/07 00:59 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#454 [向日葵]
すぐそこで声がしたので、防衛本能と言うかなんと言うか……体が勝手に動いて、歩から距離を取る。

「アイツは性格わっるいよー?君の目の前にさ、こぉーんなにかっちょいい人がいるんだから、こっちにしなって。」

「ナルシストは大っ嫌い。」

「じゃあ君の友達に手出していいの?」

「ご好いに。」

その答えには、歩は驚いたらしい。

「友達なのに怪しい俺を差し出すの?」

⏰:08/03/07 01:04 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#455 [向日葵]
自分で怪しい自覚あるのかよ。

「別に私から見て怪しくても、多香子からしたら怪しくないかもしれないでしょ。」

多香子は無邪気に波が出ている場所まで行ってはしゃいでいる。

「……ふーん。やっぱ君いいね。」

「え?」

眉間にしわを寄せて睨んだ途端、腕を掴まれて顔を近付けてきた。

「のめりこみそう。松川が気にかける訳だよ。」

⏰:08/03/07 01:07 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#456 [向日葵]
イラついて、乱暴に腕を払う。

「気安く触んないで!」

その時だった。

「つぐみ!」

真の叫び声が聞こえたかと思えば、つぐみさんが走ってきて、波が出ている所まで直行して行った。

あぁ……話してしまったんだ……。

真は追いかける気力も削がれているのか、少し肩を落としてゆっくりとこちらへ来る。

私も歩から離れて、多香子の所へ行こうとした。

⏰:08/03/07 01:11 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#457 [向日葵]
しかしその必要はなかった。

何故なら多香子がこちらへ来たからだ。

「ねぇ、つぐみさんどうしたの?なんか悲しそうな顔してたけど。」

「さ……さぁ。」

曖昧な返事を返した時、どこからか誰かが叫んだ。

「おーい!!誰か溺れてるぞ!!」

その声に私達は弾かれたように振り向いた。

溺れていたのは、紛れもなくつぐみさんだったのだ。

⏰:08/03/07 01:14 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#458 [向日葵]
そして監視員より誰よりも早く助けに向かったのは…………





……………真だった。

泳いで、つぐみさんが溺れている所まで辿り着くと、必死に抱き締めてこちらまでまた戻ってきた。

お姫様だっこをされているつぐみさんはぐったりしていたけど、体には何も影響ないみたいだ。

「医務室に運ぶ。みかげ手伝え。」

「あ、私も行くよみかげ。」

⏰:08/03/07 01:17 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#459 [向日葵]
多香子と私は真について行き、歩は監視員の人に事情を説明する為残った。

私は医務室とプレートが飾ってあるドアを開けてあげた。

中には誰もいなかった。

「みかげ。つぐみの荷物持って来てやってくれ。今日はもう帰ろう。」

「うん……分かった。」

多香子と一緒にロッカーへ。
まず私達が着替えてから、つぐみさんの荷物をまとめ始めた。

まとめながら私はぼんやりと考えていた。

⏰:08/03/07 01:21 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#460 [向日葵]
つぐみさん……まさか自殺とか考えたんじゃないよね?
私の……せいなのかな……。

どうしよう……真は大丈夫って言ったし、私だって大丈夫と思ったけど……でも……。

*******************

つぐみに全て話した。

みかげとの事、つぐみには入る隙間は無いと……。

つぐみは「そっか。」と笑って「じゃあしょうがないね。」と逃げるようにプールへと向かった。

悲しそうなあの顔で、プールに入っていいものか迷ったが、つぐみに対して過保護すぎな気がして、前にみかげが言った事を信じようと思った。

⏰:08/03/07 01:26 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#461 [向日葵]
先を見れば、視力が悪い俺だが、ぼんやりと榊がみかげに言い寄ってるのが見えた。

それにムカつきながら、少し滅入った気持ちでプールへ向かった。

色々考えながら、足を進めていたその時だった。
「誰かが溺れている」と叫んでいるのが聞こえた。

直感でつぐみだと判断して走る。

走って辿り着けばやっぱりつぐみだった。

とりあえず息をしてるみたいなので、急いで岸まで帰った。

⏰:08/03/07 01:30 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#462 [向日葵]
そして今の医務室だ。

つぐみは白い顔してベッドに横たわっている。

「……ん。」

ゆっくりと、つぐみが目を覚ます。
宙をさまよい、やっと俺に辿り着く。

「……松川君?……私、どうして……。」

「溺れてた。」

「あ……そっか……。足、つっちゃうんだもん。」

「準備運動しないで入ったからかな」と言って、つぐみは力なく笑った。
と思えば、その目は涙で濡れていった。

⏰:08/03/07 01:33 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#463 [向日葵]
「ご……めん……泣くつめりなかった……。知ってたもん……松川、君、みかげちゃん好きって……。」

腕で目元を隠しながら、つぐみは泣いた。
グスグスと鼻をすすり、鳴咽が漏れないように頑張っている。

「迷惑かけて、ごめん……。私、大丈夫だから……。昔の、私じゃ、ないから……。」

本当にそう思う。

つぐみは昔自分がした事に謝りなんかしなかった。

みかげが言った通り、つぐみは変わっていたのだ……。

⏰:08/03/07 01:37 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#464 [向日葵]
「最後に、お願い聞いてくれない?」

「ん?何?」

まだ鼻声のつぐみは、腕で目元を覆ったまま話した。

「ずっと友達でいてね。それとね……。このままでいるから、今だけ、出来るだけ感情込めて、私を好きって告白して……。」

それでつぐみが気が済むのであれば……これからまた、友達として仲良くしてくれるなら、いくらでもやってのけてやろうと思った。

まだ恋人同士だった頃の気持ちに戻って、俺はつぐみに告げた。

⏰:08/03/07 01:41 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#465 [向日葵]
「つぐみ……。好きだ。大好きだ。誰よりも……好きだ……。」

そう言えば、つぐみはまた静かに涙を流した。

しばらくは、このままで、泣きたいだけ泣かせてやろうと、心穏やかにそう思った。

お互い、過去の柵が今解けて、新たな1歩が進める。そんな気持ちでいた俺は、知らなかったんだ。

最後の言葉を告げた時、みかげが外にいただなんて……。

*****************

私は思わず鞄を落としてしまった。

⏰:08/03/07 01:45 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#466 [向日葵]
隣にいる多香子は、違う意味で驚いていた。

「うそ……松川、つぐみさんが好きだったの?」

告白現場を目の前にした多香子はテンションが上がっていた。

私は「真……。」と呟く。

私は、やっぱり玩具だったの?
でもいつから?
ううんいつからも何もそんなものはない。

ずっと、そうだったのだ。

じゃあ何で抱き締めたの?
何でキスするの?

⏰:08/03/07 01:48 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#467 [向日葵]
優しい言葉で、私を惑わして面白がっていたの?

私の頭はパニックを起こしていた。

芦が1人でにガタガタ小刻みに震える。
近くの物が遠くに見える。

真……私……。

どうしたらいいの……?

⏰:08/03/07 01:50 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#468 [向日葵]
11P・もどかしさ

なみにのまれて、きがつくと魚はくらいくらいうみのそこにいました。

「ここはどこ?何もみえないよ。」

魚はふあんでいっぱいでした。
どこにいけば、またみんなにあえるかまったくわかりませんでした。

・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「疲れたか?」

真が私に尋ねた。
もう5回目だ。

疲れてなんかない。
ただ、分からないだけ。

でも1つだけ分かること。

真を困らせてはいけない。

⏰:08/03/09 01:29 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#469 [向日葵]
今はプールの帰り。

真の車で帰っている私達。
後ろの席では、多香子や歩、それに……つぐみさんが、疲れたのか熟睡していた。

助手席に乗っている私は、あまり言葉を発する事もなく、ぼんやりしながら窓の外を見つめていた。

「そんなに……。ただ、少し眠いだけ。」

本当は、今すぐにでも眠りの国へ旅立って、また前みたいに夢の住人になってしまいたかった。

この頃、夢を見る事をおろそかにしてたせいで、今日みたいな予想外な出来事に対処出来ないようになってる。

⏰:08/03/09 01:35 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#470 [向日葵]
今日みたいな……。

「……少し寝る。」

私はそっぽを向いて、窓に寄りかかるようにして目を閉じた。

でも、私がまた前のような状態に戻ってしまえば、真はまたつぐみさんの時のように傷ついてしまう。
自分を責めてしまう。

それだけはしてはいけない。

真は私に大切な事を色々教えてくれた。

その真の、重荷にはなりたくない。

そんな私に残された道は、真と前のように普通に過ごす事しかないのだ……。

⏰:08/03/09 01:40 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#471 [向日葵]
・・・・・・・・・・・・・・・・・

1人1人と、車から人が降りて行く。

「じゃあねみかげ!また明日!文化祭頑張ろうね!」

多香子はそう言って降りて行った。

残るは、つぐみさんただ1人。

「……真。」

「ん?」

「私を、家の前で下ろして……。」

「え?なんで。」

⏰:08/03/09 01:44 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#472 [向日葵]
私はそっと深呼吸する。
震えてしまいそうな声を必死に堪えた。

「明日、早いし……早く寝たいから。先、帰る。」

そう言えば、真は納得してくれた。
私の様子なんて一切気にせず。

いや違う。
気にしなくて当然なのだ。
私がそうなるよう仕掛けたのだから。

車が家についた。

「つぐみさん。今日はありがとうございました。」

「ううんこちらこそ。また遊んでね。」

つぐみさんは至って普通だった。むしろ元気すぎるほどで……。

⏰:08/03/09 01:48 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#473 [向日葵]
真の車が暗闇に向かって行く。

私はそれをずっと見ていた。

初めてだった。
真があんなに誰かに対して焦っているのを見たのは。
取り乱しているのを見たのは。

いつも、鼻で笑ったような顔をしたり、かと思えば愛しそうな目をして微笑んだり。

私はそんな真しか知らない。

もう車が行ってしまった方を見ながら、私は涙を流した。

⏰:08/03/09 01:51 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#474 [向日葵]
しんどい想いを、誰も分かってはくれない。
この辛い気持ちを、誰も受け止めてくれない。

結局私は、1人ぼっちになってしまったんだ。

もう塞がった筈の人差し指の傷が、一瞬ズキッと痛んだ気がした……。

――――――――……

「えーそれでは、生徒が羽目を外しすぎていないよう、先生方は見回りをお願いします。」

かったるいハゲ……じゃない教頭の話を聞いて、俺達教師は見回りを開始した。

⏰:08/03/09 01:55 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#475 [向日葵]
今日は文化祭。
羽目を外さない馬鹿がどこにいるんだか。

いや、みかげなら外さないか。
どう見たって文化祭とか率先してやるタイプじゃないし。

少し笑いながらみかげを思えば、アイツの様子が気になった。

普通なんだ。
態度が普通すぎて、不自然に感じる。溝を感じる。

昨日からおかしいと、薄々感じてはいた。

疲れた、と言うより、何か失望してしまった。
そんな感じがした。

⏰:08/03/09 01:59 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#476 [向日葵]
帰ってきたら、既に寝ていて起こしてまでどうしたか問う必要もない。
明日また聞けばいいかと、朝起きてきたら、もう既に行ってしまってた。

避けられている。
そんな気さえした。

廊下を歩けば、皆盛り上がって客を呼び込んだり、走り回ったりしていた。

「あ、まっつかわー!!」

呼び捨てにする無礼者は、メイド服の恰好をしたみかげの友人、増田多香子だった。

看板を抱えてこちらへやって来る。

⏰:08/03/09 02:03 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#477 [向日葵]
「“仮装部屋”でーす!どう!?似合うっしょ〜!?」

くるりと回る時に危うく看板が当たりそうになった。
さっと避けたのでなんとかセーフだった。

「メイドねー……。王道すぎて萌えすらしないな。」

「失礼な!あ、でもね、みかげみたらおっどろくよー!?めちゃくちゃ可愛いからっ。でももう見ちゃったか。」

見ちゃった?
見た覚えなんてないが……。
そんなに可愛いならば……俄然見たいっ。

⏰:08/03/09 02:08 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#478 [向日葵]
「どこにいんだよ。」

「は?いるじゃない。あそこ。」

回りを見渡すが、皆が皆、お化け屋敷だのメイドカフェだのやってるせいで分かる筈もない。

「分からん。」

「ったくしょうがないなぁー。みかげー!!」

反応したのは、大きめのリボンで髪の毛を結んだハイカラな恰好をした髪の長い女の子だった。

振り向けば、目を奪う程綺麗なその子は、明らかにみかげ本人だった。

⏰:08/03/09 02:12 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#479 [向日葵]
*****************

多香子に連れられて、嫌々ながら私は客寄せをしていた。

この恰好で歩けば、皆赤い顔をして私をジロジロ見たり、しまいには一緒に写真を撮ってくれとか言われて……。
はっきり言って外には出たくなかった。

それでもそれなりに頑張ってチラシを配っていると、多香子が私を呼んだ。

振り向けば、そこには真がいて、目が飛び出そうなほど驚いた。

「ホラ。あれ。」

多香子は指差しながら真に私を教える。

⏰:08/03/09 02:15 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#480 [向日葵]
「あれ。」……じゃねぇよ多香子。
アンタなんてことしてくれたよオイ。

真は驚いてるのか、目を少し見開いて私に寄って来る。

私はチラシを抱き締めながら、微妙に後退りしていった。

「な……何……。」

「これ……。あぁカツラ。」

「ウィッグと言えウィッグと。」

そう言って、人工的に長くした私の髪を手でもて遊ぶ。

⏰:08/03/09 02:19 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#481 [向日葵]
真も同じように私の髪に触れる。

意地悪に笑うと、少し屈んで耳打ちした。

「可愛い。」

顔が赤くなりながら、私はどこか冷静だった。

……どこまで私をおちょくりたいんだろう……。

「……仕事あるから。じゃあ。」

「あ、みか…葛。」

去って行きたいのに、私は足を止めてしまった。
回りこんだ真は、声を落として私に言った。

⏰:08/03/09 02:23 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#482 [向日葵]
「見回り終わったら準備室いるから来いよ。」

「……行かない。私はやる事があるの。真に構ってる場合じゃないから。」

真の顔を見れずに言った。
見てしまえばきっと取り乱す。
そんなの、真に気付かれてしまう。

しかし真は、最早そんな私をおかしく感じたのか、覗き込んで眉根を寄せた。

「なぁ。どうかした?何か変な気がする。」

そんなの自分の手を胸に当てて聞けば分かるだろうに……。今更。

⏰:08/03/09 02:27 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#483 [向日葵]
「し……松川は人間観察力低すぎ。変?どこがよ。これが私の普通よ!」

私は真の横を通り過ぎて去って行った。

こんな風に怒鳴ってしまえば、余計怪しまれるに決まってるのに……。

何も出来ない私……。

悔しいぐらい、もどかしいくらい中途半端すぎる……。

「みかげ。どうかした?」

看板を持った多香子が追いかけてきた。

多香子も多香子だ。
事情はどうであれ、真の告白現場見て勘違いしたせいで相談する事も出来やしない。

⏰:08/03/09 02:32 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#484 [向日葵]
朝来るなり無神経に「松川とつぐみさんどうだった?」とか聞いてくるし。
今だって無断で私を真に教えるし。

もういい加減にして欲しい。

「何もない。」

「でもなんか元気ないよ?」

「関係ないでしょ。」

冷たく言ってしまえば、多香子はシュンとしてしまった。

分かってる。
こんなの八つ当たりだ。

もう……自暴自棄だ……。

⏰:08/03/09 02:35 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#485 [向日葵]
「ごめん……。」

呟いて、足早に教室へと向かった。

――――――…………

店番が終わったのは昼を過ぎてからだった。

あのハイカラコスプレをやめる前に何人ものクラスメイトや近くにいた人に「写真を!」と求められた。

一体なんなんだ……。

屋上についた私は蝉の声を聞いた。

もうすぐ夏休みか……。

夏休みになれば、真との交流が増えてしまう。

⏰:08/03/10 00:54 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#486 [向日葵]
希望補習でも受けたり、多香子ん家に泊まりに行ったり。
出来るだけ家にはいないようにしよう。

真だって、夏休みと言えど、なんらかの仕事があるだろうし。
……つぐみさんと出かけたりするだろうし。

日陰になってる場所を見つけて、そこで朝作った弁当を開ける。

1口、口に入れた。

「……。まず……っ。」

真と会いたくないからと、急いで作ったせいか、味は最悪だった。

⏰:08/03/10 00:59 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#487 [向日葵]
校舎の中や、中庭はすごく騒がしい。
6月末、夏間近の暑さにも負けず劣らず生徒の熱気は凄かった。

それだけに、屋上と言う少し離れた場所にいる私の周りは静かに感じ、盛り上がるなんて気が更々無かった私をより冷静にさせた。

[準備室に……。]

真は準備室にいるんだろうか。

行ったら何を話すんだろうか。
行かなかったら帰った時怒られるんだろうか。

どちらにしろ、結果は最悪な気がした。

⏰:08/03/10 01:04 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#488 [向日葵]
気だるさと静けさが、眠気を誘う。

久しぶりに夢を見る頃の私に戻ってもいいだろう。
今ここに、真はいない。

そうか……真がいない所では、前みたいに戻ってもいいのかもしれない。

食事もそこそこに、私は目を瞑りかけた。

その時、アナウンスが微かに聞こえた。

<……ら、……か……。じゅ…し……い。>

「?」

気になってしまえば、目が覚める。

⏰:08/03/10 01:08 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#489 [向日葵]
瞑りかけた目を、またゆっくりと開ける。
そしてアナウンスに耳を傾けた。

<葛みかげ、葛みかげ。準備室まで来なさい。繰り返す……。>

明らかに、その声は真のものだった。

真のアナウンスはいつもタイミングが悪い。

前だってそうだ。

真の事を考えたくなかった時、真はやっぱり私をアナウンスで今みたいに呼び出したのだ。

でもここは屋上。
アナウンスは聞こえにくい場所。

⏰:08/03/10 01:12 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#490 [向日葵]
ここにいたと分かれば、真は私を責めやしないだろう。

むしろ責められる意味も分からない。

何で私がいつも真の都合通りに動かなくちゃならないのか。

そう思えば、だんだんと腹が立って、反抗心はより燃え上がった。

強制的に、目を瞑り、全ての事を視界と共に遮断した。
そのくせ前みたいにすぐに寝れなくなってしまったから、苛立ちは更に募った。

仕方ないのでお祭り騒ぎしてる中庭の音に耳を傾けた。

⏰:08/03/10 01:16 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#491 [向日葵]
涼しい風が、髪の間をすり抜ける。
そよそよと風に吹かれていれば、気分も穏やかになっていった。

********************

アナウンスなら来るかとかけてみたが、みかげは一向に来なかった。

やっぱりおかしい。

いつもなら嫌々ながらでもとりあえずは来た筈なのに……。

足音すら聞こえない。
ドアをノックする気配もない。

さっきもおかしいとは思っていた。

⏰:08/03/10 01:21 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#492 [向日葵]
[やる事があるの。真にばっかり構ってられない。]

「お前そんなタイプかよ。」と、笑い飛ばせるものならば飛ばしたかった。

でもそんな雰囲気すら漂わせていなかった。

本気の拒絶。

そんな風にすら感じられた。

俺は一体何をしたんだ?
そしてアイツは今何を思っているんだ?

それを話したいのにコレだ……。
もうお手上げだ。この俺が。

⏰:08/03/10 01:24 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#493 [向日葵]
フゥ……と自分らしくもない憂鬱なため息を吐くと、乱暴にドアをノックする馬鹿もんがいた。

「あぁ?誰だ。」

憂鬱な気分のせいで普段学校で被っている面の皮は剥いでいた。

これまた大雑把にドアを開けたのは、残念ながら増田多香子だった。

「ぃよ!ってなんだー。みかげも一緒かと思ったのにー。」

「は?何しに来た。ってかドア閉めやがれ。」

素直に言った事を実行した増田は、近くにあったイスを引っ張ってくると座って俺をじーっと観察しだした。

⏰:08/03/10 01:31 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#494 [向日葵]
「何だ。」

「はぁー……こっちが表かぁ……。未だに納得出来ないやー。」

みかげから俺の事聞いたのか……?

「で、みかげが教えてくれないからさ、気になって気になって。ちょっと聞いてもいい?」

「何を?」

「つぐみさんの事、いつから好きだったの?」

…………は?

希望に溢れる増田の目に対し、俺は疑問の目を向けた。

好き?つぐみを?
何でそうなる?

⏰:08/03/10 01:35 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#495 [向日葵]
「ちょっと待て……何でそんな話をせにゃならん。」

「んもー照れちゃって!知ってんだからねー。アンタがつぐみさんに告白したのー。」

告白?いつの話だ。
昔なのか?
昔だよな?じゃなきゃ告白なんて……。

[告白して……。]

プールの時のつぐみがよぎる。

……まさか。

「増田……告白ってプールの時か?」

⏰:08/03/10 01:38 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#496 [向日葵]
「もっちろーん!」

「前後の会話は?」

「前後の会話ぁ?さぁ。告白部分しか聞いてなかった。」

最悪だ。
いやしかし、本当に最悪な出来事はまだはっきりしていない。

もしこれでYesならば、それが本当の本当に最悪な事だ。

「……その時……みかげは?」

「もちろん、一緒にいたよ。だって鞄届けに来たんだから。」

⏰:08/03/10 01:41 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#497 [向日葵]
一気に血の気が無くなる。俺は机を叩くようにして立ち上がった。

だからか……っ!
アイツの様子がおかしいのは!
大きな勘違いだ!
勘違いにも程がある!

俺がつぐみを好きな訳ないじゃないか……っ!

「増田!みかげは!」

増田はびくりとして「えーと」と焦りながら考え出した。

「どこか行くって……あ、電話してみる。」

教師の前で校則違反の携帯を余裕で出す辺り俺だからと油断しているのだろう。

⏰:08/03/10 01:45 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#498 [向日葵]
でも今はそんな場合じゃない。
一刻も早く誤解を解かなければ、アイツはまた元に戻ってしまう。

「あ、もしもしみかげ?今どこ?……うんうん。……や、あのね、松川がみかげを探してる」

「あ!馬鹿っ!!」

増田は瞬きを何回かすると、携帯を耳から外した。

「切れた……けど……。え、何これ。みかげと松川ケンカでもしたの?」

ドアを開けて走り出す前に、一言増田にぶつける。

「俺の心はつぐみのもんじゃない。アイツのもんだ!」

⏰:08/03/10 01:50 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#499 [向日葵]
「あ、みかげ屋上って!」

増田の叫びを背後で聞きながら、俺はみかげの元へと走って行った。

*******************

思わず……切ってしまった。

私の場所を、真に知られた。なら真はここに来るだろう。

思うより先に、体が動いていた。

逃げなければ……と。

逃げても仕方ないって分かってる。
間接的な失恋はいつか直接的なものへとなるだろう。
それも分かってる。

⏰:08/03/10 01:54 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#500 [向日葵]
でも今は聞きたくない。

普通にしてれば今まで通りになるでしょ?
ならそれでいいから今は聞きたくない。

その内私は違う生き方を見つけるだろう。

でもその内っていつ……?

結局前と同じ、逃げてるだけの自分。

私は真に見つからないよう出来るだけ分かりにくい所を探して走った。

真はきっと私の事なんてこれっぽちも分かってない。

⏰:08/03/10 01:57 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#501 [向日葵]
でもつぐみさんは違った。

眼鏡をかけてなくてもどこにいるか分かった。
私みたいに、あんなにあっさりした告白じゃなく、温かさある言葉の告白だった。

一目瞭然。

今私が逃げて、見つからなかったら、真は諦めて、「あぁ家に帰れば会えるか」そう思うに違いない。

私なんてその程度。

階段を下に降りて行く。

ねぇ真知らないでしょう。
私がどれだけ、真を必要としてるか。

⏰:08/03/10 02:01 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#502 [向日葵]
ダァン!と大きな音が聞こえたかと思うと、目の前に息を切らした真がいた。

「ハァ……み、見つけたぞ……みかげ……。」

「な……んで。屋上に向かう筈」

「だったさ。そ、その途中……、違う校舎からお前を見つけて、ハァ……イチかバチか先回りしたんだよ……。」

ゆっくりおぼつかない足取りで、後ろ向きに階段を上る。

そして全力疾走。

「あ!待てボケ!!鬼ごっこしたいんじゃねぇんだぞ!!」

⏰:08/03/10 02:06 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#503 [向日葵]
当たり前だろ!

ツッコミ入れたり走る元気はあれど、真と面と向かって話す元気はどこにも無かった。

真も後ろから追いかけてくる。
鬼の形相とは正しく今の真の事。

最悪な事に私は分かりにくい場所を探す為に人がいない校舎にいた。なので逃げ回っている校舎には人1人いない。

木を隠すなら森の中。
人を隠すなら人混みの中……なのだが残念ながら無理なんだよね。今現在。

つまり標的丸見え。

⏰:08/03/10 02:12 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#504 [向日葵]
「待ちやがれぇぇ!!24歳舐めんじゃねぇぞコラ!!」

「誰も何も言ってないわよこのストーカー!!」

と言いながらも体力の限界は近い。
もともと私は音痴ではないけど体力ないんたから。

そこで目に止まった女子トイレ。

逃げ込んで個室に入り、鍵を閉める。

「き……ハァ……きったねーぞ!反則!卑怯!」

「勝手に言っとけ!!ハァ……用も無いのに、アンタが、お……追いかけて来るからじゃん!!」

⏰:08/03/10 02:18 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#505 [向日葵]
「あのなぁ……っ俺は」

「お願いだから構わないで!今ちょっと……い、イライラしてんだよね。大丈夫!1人で頭冷やせば治るから!」

心を、気持ちを、かき乱されるのが嫌だった。

どうして私が。
どうして私に。

どうして。どうして。
どうして。どうして。

しーんとした。
足音も気配も感じなくなった。

真は行ってしまったのだろうか。

⏰:08/03/11 19:13 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#506 [向日葵]
ゆっくりと、ドアを開ける。

開ければ、入口にいただろう真は、やっぱりいなくなっていた。

自分から1人にしろと言ったくせに、鋭い痛みが胸を貫いた。

仕方なく、トイレから出る。

「かかったな。」

「――っっ!!」

入口から見えない位置に、真は潜んでいた。

私が逃げないように腕を大きな掌で掴む。

⏰:08/03/11 19:16 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#507 [向日葵]
「や……いやぁ!!」

「みかげ、頼むから話聞け!」

「1人にしてって言ってんじゃない!」

「今1人にして壊れそうな顔してたのはお前だろ!!」

叫ばれて、私は暴れるのを止めた。
図星をつかれたからだ。

普通にしなくちゃいけないのに、いざ本人を前にしてうろたえてる自分は何なのだろう。

そんな事も出来ない自分。
つぐみさんはやってのけたのに。

⏰:08/03/11 19:20 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#508 [向日葵]
こちらは子供。
あちらは大人。

だから?だからなの?
だから安々と騙す事が出来るの?
騙す事が悪い事だとも思わないの?

あぁこんな事思ってる時点で私は夢を見すぎているお子さまなんだ。

だから夢を見ていたのに。
大人にしてくれようとしたのは真なのに。

でもその真は私を……。

……考えるの止めよう。
どうどう巡りするだけだ。

⏰:08/03/11 19:24 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#509 [向日葵]
「真……もういいから……。」

「何が?そうやってまた逃げるのか?」

「……そうじゃない。」

「じゃあ何?」

逃げたいのに……真と言う足枷があるの。
中途半端すぎる今の自分は、どんなに強がっても頑張っても、見直すどころか、話にもならない。

「私……知ってるよ。真がつぐみさん好きって。」

「みかげ、それは」

「本当は真を信じてなかった。」

⏰:08/03/12 01:31 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#510 [向日葵]
ポロリと出てきた言葉に、真が驚く。

廊下の向こうで、誰かが来そうな気配がした。

「ずっと、不安だった。大切なものが出来る度、いつなくなるかって。でも信じてみようって思ってた。」

けど、信じても、信じようとしても、全ては拭いきれなかった。

それはやっぱり、真の心のどこかでつぐみさんがチラついていたからかもしれない。

いつ……真は私を見なくなるだろう……って。

⏰:08/03/12 01:35 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#511 [向日葵]
「……大丈夫。真の重荷にはならないよう気をつける。そういうの、慣れてるから平気だし。……今日は、多香子の家に泊ま」

「っざけんな!」

パァン!!と乾いた音が響く。
真は壁に思いっきり手をついて、私をその場に押し留める。

「不安?平気?重荷?……勝手に話進めてんじゃねぇよ。俺がいつお前をいらねぇっつって捨てたよ!!」

真がここまで怒ったのを初めて見た。
私は驚いて、怒りの炎が宿る真の目を見つめた。

⏰:08/03/12 01:40 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#512 [向日葵]
口を開いて、何か言わないとって思うのに、頭が一気に真っ白になってしまったせいで何も出てこず、ただ餌をねだる鯉みたいにパクパクするだけになってしまう。

「俺はいつだって言ってた。お前が欲しいとねだった!すがった!信じようとしないのは、お前がはなっから諦めてたからじゃないのか!?」

はなっから……諦めてた?

そんな事ない。
信じたくて、でも信じれなくしたのはいつだって…………真の方だった。

⏰:08/03/12 01:45 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#513 [向日葵]
人の気も知らないでと、真に負けないくらいの怒りを示す。

「じゃあ真は知ってる?まだごっこの頃の話だよ。私がどんな気持ちで、つぐみさんと会ってた真を待ってたか。」

事故に逢ってないか馬鹿みたいに心配して。
失ってから気づく大きな存在を、私は知ってる。

だから恐かった。

……なのに。

「「つぐみは精神力が弱いからそっとしなくちゃいけない。」みたいな事を言ったんだ。首に赤い痕つけて……。」

⏰:08/03/12 01:49 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#514 [向日葵]
赤い痕をつけるのが簡単なのは身をもって分かった。

でもそれを断って傷つく程つぐみさんは本当に弱かったのだろうか。

つまりそれは、真がまだ揺れていた証拠なんだ。

ごっこと。
私に現実を見つめさせるからに自分は側にいると言った。

なのに当の自分は、私をそっちのけでつぐみさんに付きっきり。

そんな中でのあっさりした告白。

どうやって丸々信じると言えるだろうか。

⏰:08/03/12 01:52 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#515 [向日葵]
真を睨みつけながら、興奮してか何か分からない涙を流した。

真は、壁に突っ張っていた手をゆるゆると下ろした。

「ねぇ真。私は分からない。恋愛のかけひきを知らない。でも分かる。私達、無理なんだよ。」

そこまで話して、生徒の笑い声が近づいてきている事に気づく。

「気にしないで。普通通りに過ごせばいいだけ……。」

真は目を見開いて私を見つめたままだった。

⏰:08/03/12 01:57 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#516 [向日葵]
「じゃ……私行くから。」

足早に、そして駆け足で、その場を去る。

最後に小さな声で、私の名前を呟いた気がした。

しばらく行った所で、私は停止して、その場にズルズルとしゃがみこんだ。

スカートに滲んでいく、無数の滴達。

私の恋は、終わってしまったようだった……。

⏰:08/03/12 02:00 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#517 [向日葵]
12P・行き詰まり

くろいやみのなかで、なにかうごいたきがしました。

『だ、だれかいるの?』

魚がたずねました。

『おやおや、こんなところでなにをしてるんだい?』

くらやみのなかの魚がききました。

・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ほんの少し。
掌で充分足りるくらいの気持ち。

⏰:08/03/12 02:03 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#518 [向日葵]
少なくとも、それくらいの気持ちはあったと思う。

完璧に私を玩具としたことは、以前に比べて少なかっただろう。

それでも駄目だった。

私の気持ちだけが、1人歩きしていた。

真は、こちらなんか見ていなかったのに……。

「ねぇみかげ。本当に学校に泊まる気?」

明日の文化祭は一般公開がある為、今日より更なる準備が必要だった。

その為、皆遅くまで居残りしていたが、だんだんと数は減っていってた。

⏰:08/03/12 02:07 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#519 [向日葵]
多香子の家に泊まると真に言った。いや、言いかけたけど、多分忘れてるだろうからもういいやと思った。

多香子が言った通り、私は今日、学校に泊まる事にした。

「家に今から帰ってもなんだかんだで寝るの遅いだろうからもういいし。」

文化祭、と言う事で、私達は特別な規則を今の期間だけ儲けている。

なので学校に寝泊まりするのは私だけではないだろう。
実際、明日劇をするクラスはラストスパートで泊まる人が多いらしい。

⏰:08/03/12 02:12 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#520 [向日葵]
「そう?じゃ、気を付けてね?」

そう言って、多香子は帰って行った。
もちろんクラスには、私と同じように泊まる人がいた為1人ではない。

それでも私は、1人になりたかった。

全ての作業が終わって、皆が教室で寝静まる頃、私は屋上へと向かった。

夜中の校舎もなんのその。
「怖いよー。」などと脅える事はない。

ガチャリとドアを開ければ、そこは満天の星空だった。

⏰:08/03/12 02:16 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#521 [向日葵]
生温い風と、なんとも言えない夏の匂いが私を迎える。

私はそれらに身を任せて、冷たいコンクリートに体を沈めた。

時間が止まったように感じた。
このままずっと夜な気さえした。

でもそうならばいい。

このままなら、私は真に会う事もないだろうから。

[みかげ。]

最後に名前を呟いた真の声が、耳の中で反響する。

明日から、“真”とは呼ばないでおこう。
また前みたいに“松川”と呼ぶ。

⏰:08/03/12 02:20 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#522 [向日葵]
全て、何もかも、この気持ちも……投げ出そう。
切り替えるのがへたくそな私だけど、それは努力しよう。

行き詰まった今、そうするしかない。

導くものは……閉ざされた……。

眠くもないのに、自然と目を閉じていった。

まるでこのまま死ぬんじゃないかと思うくらい自然と……。

でも、それでもいいかもしれないと思った。

あぁでも、今死んでしまったら、“重荷”確実になってしまうかなぁ……。

⏰:08/03/12 02:24 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#523 [向日葵]
*****************

[私達、無理なんだよ。]

みかげから今日言われた言葉。

今日彼女は帰ってこない。
友人である増田の家に泊まるとか言ってた気がする。

昨日のように、家は奇妙なほど静まりかえっている。

いつもさり気なく「おかえり。」を言う人がいないと言うのは、こんなにも寂しいものなのかと気づく。

「無理……ねぇ。」

⏰:08/03/13 00:30 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#524 [向日葵]
ソファーに深く身を沈めながら、呟く。

これまで、みかげにはちゃんと好意を示してきたつもりだったし、大事にしてきたつもりだった。

・・・
……いや、つもりだから駄目だったんだ。

みかげはそれでは駄目なんだ。
直球で、ちゃんと示さなければ分からないんだ。

かけひきなんて通用しない。

「そうか……。」と、唐突に思い出した。

彼女は、もう自分に近しい者はいないのだと。

⏰:08/03/13 00:37 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#525 [向日葵]
※上の・・・は気にしないでください

⏰:08/03/13 00:38 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#526 [向日葵]
1人だから、孤独になるのを恐れていたのに。
折角自分を包んでくれる存在が出来たと思っていたのに……。

俺は、いい加減すぎたんだな……。

優しくしていた……これもつもりだ……。
だから「無理」と言われるんだ。

でもみかげ……。

俺はお前を手放すつもりなんて更々ない。

明日からだ。
明日から、みかげに俺の本気を見せなければ、いつかアイツは、俺の前から消えてしまう事だろう。

⏰:08/03/13 00:41 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#527 [向日葵]
「そんな事させねえ……。」

みかげ……俺はお前が思ってる以上に、お前が必要なんだ……。

―――――――…………


今日も満員御礼。

昨日に増して「仮装部屋」は大流行していた。

今日も店番有りなので、ハイカラな恰好をしながら接客中。
そしてやっぱり「写真を!」と引っ張りダコ……。

……何故?

冷静な自分がいる半分、もう半分では体のダルさを訴えていた。

⏰:08/03/13 00:45 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#528 [向日葵]
目覚めれば、朝日が登っていた。
と言うか、屋上で一晩を過ごしてしまった。

コンクリートのせいで体痛いわ頭痛いわで散々な上、寒気、ダルさが付いてきた。

くそ……ついてない……。

今日はつぐみさんが来るって言うのに。

朝一でメールが入り、今日来るとの事。

昨日の今日で、上手く立ち回り出来るか分からないのに体がこの状態だ。

いっそ身を潜めてしまいたい……。

⏰:08/03/13 00:48 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#529 [向日葵]
「みかげ?顔色悪いけど平気?」

多香子が私の顔を覗き込んで様子を伺う。

「……うん、まぁ……。」

「あんまりよくなかったら保健室行きなね。」

あぁ保健室かぁ……。
……ん?保健室?

私は勢いよく多香子の肩を掴んだ。

「多香子、ナイスアイディア。」

保健室に逃げ込めば問題ないかもしれない!

⏰:08/03/13 00:53 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#530 [向日葵]
ってそんな簡単に行く訳がなかった。

「着物のお姉さぁーん!写真撮りませんかー?」

「キャー!めちゃくちゃ綺麗!写メ撮らせて下さい!!」

……わしゃアキバのコスプレしてる人か。


「え、嘘、みかげちゃん?」

声がする方に首を向ければ、少し離れた所につぐみさんと歩がいた。

店番だから仕方ないとは言え、この姿を見られたのはものっすごく不本意だ。

⏰:08/03/14 00:24 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#531 [向日葵]
「すごく可愛い!あとで写真撮ろうね!ね、榊君。」

「あぁ、そうだな。」

あれ。
いつもの歩のテンションじゃない……。

不思議に思った私は、歩をじっと見た。

歩は、何に仮装しようか迷いながらもはしゃいでいるつぐみさんを優しく見守っているように見えた。

まさか……。

「歩。」

「ん?おぉう!誰かと思えばみかげちゃんじゃん!」

⏰:08/03/14 00:28 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#532 [向日葵]
ホラ。明らかに違う。

「ふざけた態度とってないで、つぐみさんに告白すればいいのに。」

「……やっぱり、みかげちゃんは面白いね。気づいたの君くらいだよ。良かったら少し話しない?」

多香子に断って、私は歩と一緒に教室を出た。

着物のせいで目立つかと思ったけど、目立ったのはむしろ歩の方で、皆(特に女子が)次々に振り向いていく。

きっと真がこれだけ柔らかいオーラ出してたら同じ事になるんだろうな……。

……昨日以来、真を目にしてない。

⏰:08/03/14 00:32 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#533 [向日葵]
目にしてない方が楽だけど、胸が痛くならないけど……。
見なきゃ、少し寂しい……。

馬鹿みたい。
欲張り。浅はか。ガキ……。

「どうかした?」

階段くらいまで来て立ち止まった歩が聞いた。

「……で、なんで私にちょっかいかけたりしたの?つぐみさんを一途に思ってれば良かったのに。」

考えてた事を話すのがなんとなく嫌で、話をそらした。

⏰:08/03/14 00:38 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#534 [向日葵]
歩は苦笑いしながら、少しずつ話出した。

「一途に想ってたよ。でも、君も気づいてるだろうけど、つぐみは松川が好きだからねぇ。」

そう。
そしてつぐみさんの願いは叶って、現在2人は付き合ってる。

歩は、それを知ってるのかな?

「俺ね、松川と君が買い物してるの、1回見た事あるんだよ。」

「え。」

「だから君と前あった時、この子いじれば松川がなんか反応するかなって。だから君にちょっかいかけたの。」

⏰:08/03/14 00:42 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#535 [向日葵]
「だけど。」と、歩は話を続ける。

「あの松川があまりにも面白い反応してくれたから、貴重だったよ。よっぽど、みかげちゃんが大切なんだね。」

私は歩をぼんやりと見つめた後、少し視線をずらして下を向いた。

「……大人ってズルイよね。」

「え?」

「大切な人扱うフリしてからかうもの。歩だって、回りくどい事なんてしてないで直球で当たればいいのに。」

⏰:08/03/14 00:46 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#536 [向日葵]
自分のムシャクシャした考えを、何も関係ない歩にぶつける。

案の定、歩は困った顔をしてしまった。

ため息をつくと、防火扉にゆっくりと背を預けてまた話出した。

「みかげちゃん。君も経験した事ない?子供の頃、出来てた事が、大人に近づくにつれて出来なくなった事、ない?」

それは例えば、人前でギャーギャー泣き叫ぶ事は子供の時出来ても、今じゃ恰好悪くて出来ないと言う事だろう。

私はゆっくり頷いた。

⏰:08/03/14 00:50 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#537 [向日葵]
「ある。」

「それと一緒。大人はね、段々と駆け引きを覚えて行ってしまうんだよ。だから言いたい事もやりたい事も上手く出来ない。分かってくれるね?」

歩はまるで先生よりも先生らしく説明してくれた。

その様はとても誠実で、本来ある筈の彼のチャラチャラした部分を消してくれたのだった。

じゃあ、歩と性質的に類似している真は……?

誠実な想いを、私に注いでくれてたのだろうか。

そろそろ考えすぎで、頭がゴチャゴチャになってきた。

⏰:08/03/14 00:54 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#538 [向日葵]
「もう嫌!気持ちがまとまってくれない!だって真は、つぐみさんが好きって言ったんだもん!」

言ってしまってから、私はハッとして口を塞いだ。

「え……。何て……?」

ヤバイ……!

気づいた時には遅かった。

歩は私の肩を力強く掴んでガクガク揺らした。
振動で、軽く歯がカチカチなる。

「それ本当?じゃあアイツら両思いかよ!?」

「いや、それはあの」

「結局俺は無理じゃねぇかよ!」

⏰:08/03/14 00:58 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#539 [向日葵]
そんなの、私だってそうだ。辛いのは、歩だけじゃない。

「私を責めても仕方ないでしょ!離して……っ!」

力一杯歩を押すと、歩は肩から手を離してくれた。

それまでは良かった。

勢い余った私の体は、引力に従うかのように後ろへといき、階段へとまっさかさま。

「……!みかげちゃん!」

ズドン!!と大きい音と共に、私は下の踊り場へ転落。

頭に鈍い痛みが広がる。

⏰:08/03/14 01:02 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#540 [向日葵]
すると体のダルさまでが私を襲い、起きたくても起きれないくらい体の自由がきかなくなった。

それから、人のざわめきが少し聞こえて、私は意識を手放した。

・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

『みかげ。貴方はどうして無理をしてしまうの?』

あ、お母さん……。

お母さんは困ったような怒ったような顔で私を見る。

無理なんてしてないよ。
ただ幸せならば幸せになって欲しいだけ。
でもね、あまりにヒドイ扱いを受けたから、腹が立ってるだけだよ。

⏰:08/03/14 01:06 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#541 [向日葵]
お母さんはため息をつく。

色白のお母さんはいつ見ても綺麗だなぁとか、怒らているにも関わらず、呑気にそんな事を考えていた。

『前、母さんが言った事覚えてる?』

ううん。
夢は起きた瞬間すぐ忘れちゃうから。

『ならね、もう一度言うわ。後悔だけは、しちゃ駄目よ。』

後……悔……?

『貴方今凄く後悔してる。彼に無理だって言ったんでしょ?』

⏰:08/03/14 01:10 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#542 [向日葵]
言った……。だって無理だもん……。
アイツ、つぐみさんが好きって……。私には、あんな真剣にも、あんな焦った姿も……見せてくれた事なんかない……っ。

ボロボロ涙が溢れる。
今にも泣き叫んでしまいそうな衝動にかられる。

『本人の口から、つぐみさんが好きって聞いた?』

聞いてないけど……でも……っ!

『それに、彼が貴方に接する時、本当に真剣じゃなかったり、焦ったりした事は無かったかしら?』

それは……。

⏰:08/03/14 01:14 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#543 [向日葵]
私の手を、柔らかく、風が包んでくれるようにお母さんが握る。

温かくて、更に涙が流れた。

『ねぇみかげ。彼からの話をもう1度、よぉく聞いてごらん?泣くのはそれからよ。』

でも……。

『それからね、これも前に言った事よ。もっと、彼を信じてあげなさい。前よりもずっとずーっと……。』

信じれるかな……私。
だってまた騙されたりするの、怖い……。

⏰:08/03/14 01:17 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#544 [向日葵]
『じゃあね、母さんの言う事なら、信じられるでしょ?』

夢と言う信憑性のない中での会話なのに、何よりお母さんの言葉は素直に受け入れる事が出来た。

なので私はコックリと頷いた。

『あの人ね、すっごく不器用。だからね、人を騙すなんて絶対出来ない。』

現に真はつぐみさんに私を好きとバレていたよね。

『だから、今から聞く彼の言葉を目で、耳で、心でよく聞いてごらんなさい。』

⏰:08/03/14 01:21 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#545 [向日葵]
『それなら、きっと彼を信じる事が出来るわ。』と言って笑うと、お母さんの姿は薄くなってしまった。

そして、私の世界は暗闇へと戻る。

・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

意識が現実に戻ったのが分かった。
今は瞼を閉じてるせいで視界はゼロ。

でも左手に温かさ感じて、私は少し目を開けた。

「……ん……?」

少しずつ状況を把握すれば、今念願の保健室にいて、私はベッドの上にいる。

⏰:08/03/14 01:26 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#546 [向日葵]
じゃあ左手の温かさは何?

頭を動かす前に、知りたかったものが視界の隅で動き、私を覗き込む。

「気が……ついたか……?」

そこには、優しく微笑む真がいた。

頭をゆっくり丁寧に撫でてくれる。

「真……。」

「階段から落ちたの覚えてるか?頭痛くないか?」

言われれば、少し重たさを感じる痛みを覚えた。

⏰:08/03/14 01:29 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#547 [向日葵]
真は握ってた手を、自分の頬に持っていく。

「無事で……良かった……。」

本当に安心して言うから、私の胸は元気に跳ねる。

『目で、耳で、心で……。』

「……。何で、真がここに?」

「運んだんだ。それで……いや、それだけが理由じゃない。」

真は真っ直ぐに私を見つめる。
そのせいで強打したせいではなく、別の意味で頭がクラクラした。

⏰:08/03/14 01:32 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#548 [向日葵]
真は何から話すか迷っているのか、息を吸っては吐きを繰り返し、眉を寄せて考えている素振りをした。

私は寝転んだまま聞くのもどうかと思い、ゆっくりと起き上がる。

すると寝ている時よりも頭に痛みが走った。

「痛……っ。」

呟くように言ったのに、真は聞こえたらしく、体を起こす私に手を貸してくれた。

「大丈夫か?」

「うん……。」

真と間近で見つめあう形になる。

⏰:08/03/14 23:51 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#549 [向日葵]
真の目の中に私が写ってるのが見えた。
私は真が何を言いたいのかを探るように見つめる。

しかし真は、目線をそらした。

「あんまり見つめんな……。考えてた事が飛びそうになる。」

気が散ると言う事だろうか。

「……なぁみかげ。俺はお前から見ればいい加減な奴かもしれない。」

突然、真が喋りだす。

「でも俺は、こう見えても欲しいもんは力づくだろうがなんだろうが得たいタイプだ。」

⏰:08/03/14 23:55 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#550 [向日葵]
真は淡々と話す。
それでも言葉の端々には力が入っているように感じた。
私は黙って、真が何を意図しているか聞き入る。

「最初に言える事。つぐみの事だ。」

心臓がドクンと跳ねる。
それでも平常を保とうと心がける。

「お前が何を聞いたかは、増田から聞かせてもらった。でもお前は勘違いしてる。最後に心を込めて好きだと言ってくれと頼まれた。」

「え……。」

声がかすれた。

⏰:08/03/15 00:00 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#551 [向日葵]
真はまた真っ直ぐに私を見つめた。
今度ばかりは、ドキリとしない訳にはいかなくなった。

「心を込めて……なんて、言える筈ない。だって俺はつぐみが好きじゃない。なんとか心を込めて言えたのは、つぐみをお前だと思ったからだ。」

「そんなの……。」

「簡単な言い訳と思うだろうな。でもこの他に言う事なんかない。」

真はあくまで真剣だった。

嘘をついたり、欺いたりする人が、ここまで強い眼差しを向けるだろうか。

⏰:08/03/15 00:04 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#552 [向日葵]
「お前は分からないだろうが、お前の予想してる範疇を遥かに超えるほど俺はお前が欲しい。」

息が、詰まりそうになった。
「嘘だ。」と切り返したかった。
でも出来なかった。

強いその言葉は、私の考えてる事全てを奪い去ってしまったからだ。

「みかげ、信じて。俺はお前に側にいて欲しい。……これも信じられないのか?」

頭のどこかで、お母さんの声が聞こえた。

『彼、嘘つけないから……。』

⏰:08/03/15 00:08 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#553 [向日葵]
私は被っていた布団に顔を埋めた。

声を殺して泣く。

どれほど、願っただろう。

肉親、それ以上に、自分を求めてくれる存在を。
自分を見つめてくれる存在を。

寂しくて、くじけそうな自分を支えて欲しくて、現実から目を背けている自分を戻して欲しくて……。

初めてだった。

誰かに奪われるのが嫌だと思ったのは。

奪われたら、何かを取って行かれたみたいに心細くて、もう何もかもおしまいだと思った。

⏰:08/03/15 00:13 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#554 [向日葵]
もう進めない。
暗闇に閉ざされた世界に、一筋の光が差し込んでくる。

「みかげ……。やっぱり俺を信用出来ない?」

真の残念そうな声が頭上から聞こえる。

布団で顔を隠したまま、なんとか頭を上げる。

「ち……がう……。私も側にいたい……。真に側にいて欲し……。」

息が上手く出来なくて声が出せない。
それでも自分の想いを、真に、真の為に聞いて欲しくて一生懸命言葉を吐き出す。

⏰:08/03/15 00:17 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#555 [向日葵]
「不安だったのは……また大事な人が離れて行くと思って、それがすごい嫌で……でも真が幸せになるなら仕方ないって……。」

そう思った。
でも……。

「それでも……真が大好きで、諦めれなくて、こんな自分凄い嫌で……っ、真が私に呆れちゃうって……」

「分かった……っ!」

真は力強く、でも優しく私を抱き締めた。
すると詰まってた気持ちが一気に溢れて、情けないぐらい涙が流れた。

「……っ真……!」

⏰:08/03/15 00:22 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#556 [向日葵]
「分かったから……。」

「側に……側にいていい……?」

「いたい……。俺も側にいたい……。」

前よりも、もっともっと強い気持ち、真が私を求めているのがよく分かる。

力をぐっと入れられて抱き締められたかと思うと、真の両手が私の顔を包んだ。

「泣くな。」

涙で滲んで見えないけど、真が笑ってるのが声音で分かる。

真の唇が、おでこに触れる。

⏰:08/03/15 00:27 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#557 [向日葵]
と思えば、唇に触れた……。

「……、ちょ……っ、真……。」

思った以上に触れている時間が長くて、真を引き離す。

「何?」

「何じゃ、なくて……。」

泣いてるせいか、真のキスのせいか、顔が赤くなるのを感じる。

「触れたくて仕方なかった俺の気持ち、分かる?まだ足りないくらいなんだけど。」

真剣に言うもんだから、驚いてる隙にまた唇を重ねられる。

⏰:08/03/15 00:30 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#558 [向日葵]
頭が混乱して、ショートする前に、顔が離れた。

「や……やりす、ぎ……。」

また目に涙がたまる。
恥ずかしいやら、苦しいやら……。

「ハハ……可愛い。」

おでこをコツンと合わせて、微笑む真はとても幸せそうだった。

私の事で幸せになってくれるなら、私も嬉しい……。

そう思って、私も微笑んだ。
そうやって、私達は幸せを噛み締めながら、しばらく笑い合っていた。

⏰:08/03/15 00:35 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#559 [向日葵]
13P・ゆめみる未来

魚がおびえているのにきづいたくらやみの魚は、やさしく魚にいいました。

『こわがらなくていいんだよ。こまっているのだろう?』

魚はおもいきって、くらやみの魚にきいてみました。

『ともだちとはぐれてさみしいんだ。それにここはくらくてこわい。どうやったらみんなにあえるか、きみはわかるかい?』

するとくらやみの魚はいいました。

『あぁ。わかるとも。このやみにこわがらず、みんなに会いたいとねがって、泳いでいってごらん。』

⏰:08/03/15 01:05 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#560 [向日葵]
『うん。ありがとう!』

魚はそういって、およぎだしました。

みんなにあいたい。
そうつよく思って……。

・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

たかが17歳。
されど17歳。

まだ高校2年生。
もう高校2年生。

考え方はそれぞれだけど、いざ現実をつきつけられると悩まずにはいられなかった。

「進路希望調査の紙、明後日にはしっかり出すようになー。以上。かいさーん。」

⏰:08/03/15 01:08 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#561 [向日葵]
担任が出ると同時に、クラスからは苦悩に満ちた声が次々と上がる。

「もうそんな時期ー?早くなぁい!?」

多香子が騒ぎながら私の元へ来る。

全くだ。

進路なんか頭の中からスコーンと抜けていた。

高校にだって、行く気は無かったのに無理矢理入らされたようなもねで。
その上の将来を左右する大学やらなんやらを決めろだなんて……。

「無理すぎ……。」

「だぁよねぇ――っ!?」

⏰:08/03/15 01:12 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#562 [向日葵]
夏休み前に、とんでもない悩みが出来たものだ。

――――――……

「ん?進路希望?」

テーブルに投げ出した紙に、帰ってきた真が気づいた。

「考えてもなかった。だって何になりたい?みたいな夢なんて小さい頃からなかったもん。」

ソファーに勢いよく寝転がりながら私は言った。
真は「懐かしいなぁ。」と言いながらネクタイを緩める。

「ねぇ、真はいつ先生になろうと思った?」

⏰:08/03/15 01:16 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#563 [向日葵]
ひょこんとソファーから顔を出して真に聞いた。
真は「そうだな……。」と考えこむ。

「中……3くらいかな。教師になってみよっかな、なりたいなって思ったの。」

早……っ。
なんの参考にもならなかった。

「いっそニートの道を歩むかなぁ……。」

そんな呟きを漏らせば、真は眉を寄せて私をジメッと睨みつけた。

「今ならまだしも、何もしない奴養う気なんてないぞ。」

「何もーなんてとんでもない。家事くらいはちゃんとしますー。」

⏰:08/03/15 01:20 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#564 [向日葵]
軽くため息をついた真は、ピンと何か閃いたのか、口元を笑みの形にして私がいるソファーに近づいてきた。

「どうせならさ……結婚する?」

「は……?」

「何もせずに家事するなら別に結婚しててもしなくても同じだろ?」

ナイスアイデアとでも思ってる真に、私はまたよくある冗談だと思って、高鳴る胸を無視して軽くあしらった。

「そうねー。いいかもねー。さ、冗談はさておき、風呂用意してくるわ。」

⏰:08/03/15 01:25 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#565 [向日葵]
私は風呂場へ向かう為、リビングをあとにした。

真が頭をポリポリかきながら呟く。

「……冗談じゃ……なかったんだけどなー……」

残念ながら、その呟きは私の耳には届かなかった。

――――――…………

「絶っっ対無理―――っ!!」

進路指導室へ向かう途中、進路希望調査の事で苛立った多香子が叫ぶ。

周りの人間は何事かと私達を見た。

⏰:08/03/16 01:38 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#566 [向日葵]
「なんで将来の事を明日までにとか限定するの!?将来なんだからもっとじっくり選ばせてよ!!」

確かに……。
でもそうやって先延ばしにすればするほど、将来がおぼろ気になってしまうから、今の内に漠然とでもいいから考えろと言う事だろう。

ただその将来をすぐに漠然とであろうがなんだろうが決めろと言うのは、いささか強引な気もする。

だから私達は進路指導室へ足をはこんでいる。

何かヒントを得る為に。

ドアを開ければ背筋を伸ばす気持ちになった。

⏰:08/03/16 01:42 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#567 [向日葵]
進路についての部屋なだけあって、中はピリピリしていた。

それでなくても、受験やらが間近の3年生がいるせいで、部屋は重苦しい空気を漂わせている。

「みかげはさ、何に興味持ってる?」

多香子が声をひそめながら私に聞いた。

「さぁ……。寝る事ぐらい」

「駄目じゃん。私はねー……アパレル関係か美容系かなって。」

「じゃあ専門か、短大?」

「そーだね。学校はまだ決められないけど」

なんだかんだ言いながら、多香子は自分の事をよく考えているらしい。

⏰:08/03/16 01:47 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#568 [向日葵]
さて……私はどうしようか……。

空いてる席を見つけて、私と多香子は「将来を見つける本」と題名がついてる本を持って座った。

パラパラめくるが、これと言って興味をそそられるような職業はなかった。

「色々あるんだねー」

「こん中から見つけろってイジメ同然な気がする……」

そういえば……。

[結婚する?]

昨日の真の言葉を思い出す。

⏰:08/03/16 01:52 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#569 [向日葵]
「ねぇ多香子」

「ん?」

「好きな人に、卒業したら結婚しようって言われたらどうする?」

「えぇっっ!?」

多香子が叫んだせいで、部屋にいた人達の怒りの視線が私達に集まった。

これはここでこんな話を持ち出した私が悪いだろう。

「まさか……松川に……?」

名前の所だけ、更に声が小さくなる。

⏰:08/03/16 01:55 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#570 [向日葵]
多香子は私と真がどのような関係かと言うのをもう理解している。

それは何故かと聞いたのは、文化祭が終わった次の日だった。

多香子がえらく私にもじもじしながら熱い視線をおくってくるものだから「何」と聞いたら……。

[んもう、みかげは本当水くさいんだからぁっ!どうして早く言ってくれなかったのよ!]

多香子は私達のたまり場であった準備室で真と喋ったらしい。
その時に真が言ったんだそうだ。

⏰:08/03/16 02:01 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#571 [向日葵]
[俺はみかげを愛してる!って、松川がねー、言ったんだよ!だから私はピンと来たね!]

多香子の妄想が入り混じっているせいで真の言葉が脚色されているなんて知らない私は、机に突っ伏して顔から湯気が出た。

何言ってんだアイツ……っ!

この場合、恥ずかしさから来る怒りをぶつけるのは明らかに多香子なのだが、多香子からのものが全て真実と思ってる私は怒りの矛先を真へ向ける。

そして決定打は私が階段から落ちた時らしい。

⏰:08/03/16 02:05 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#572 [向日葵]
私達のクラスに真が来て数秒後、私が落ちたと知らせに来た歩に詰め寄り、私の所まで全力疾走したらしい。

後夜祭が行われている時は、保健室で2人でいたから私と真の姿がなくて多香子は1人ニマニマしていたと興奮しながら言われた。

と、こんな感じだ。

「真は関係ない。ただ、どうするかなって」

本を意味もなくめくりながら、私は多香子に聞き続ける。

多香子は空(クウ)を見つめて考えている。

⏰:08/03/16 02:21 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#573 [向日葵]
「進路が決まらないって理由で結婚するのだけは避けたいかな。やっぱりするなら、この人の支えになりたいと思いながらしたいし」

支え……ねぇ……。

[お前を求めてる……]

真は私を必要としてくれてる。

必要としてくれてるなら、側にいてあげたいし、いたいとも思う。
支えて、幸せに笑ってくれるならそれだけで嬉しい。

ならば私は、真と結婚してもいいのかもしれない。

⏰:08/03/16 02:26 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#574 [向日葵]
……と言うか。

私、何で真の冗談の言葉をここまで本気にしているのだろうか。

あの時、唐突だろうが思いつきだろうが、言ってくれた事は単純に嬉しかった。
冗談でなければもっと嬉しかったんだけど……。

真は、私と結婚してもいいんだろうか。

しかし……進路希望調査に第1希望「結婚」と書くのは、いかがなものだろう……。

*******************

もちろん、俺は結婚してもいいと考えてる。

⏰:08/03/16 02:31 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#575 [向日葵]
急ぎはしないけど結婚したい。
幸せにだって絶対するし、大切に大切に温かい家庭をみかげと気づきたい。

だけどこれは24歳と言う成人男性の考え。

まだ17歳と言う若さのみかげには遠すぎて検討もつかない次元だろう。
だから無理強いしてでも「結婚しろ」などと言いはしない。

それこそ軽い気持ちに取られてしまう。

もちろん、昨日の言葉だって軽くはない。

ほんの照れ隠しをした為に軽くなってしまっただけだ。

⏰:08/03/16 02:36 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#576 [向日葵]
しかし冗談と片付けられたのは少々ヘコむ。

さぁ……どうしようか。

どうしようもこうしようも、俺は今直ぐにでも結婚していい、いや寧ろしたい。が問題はみかげだ。

ここはひとまず……同じ女の意見を聞こうではないか。

と俺は携帯を出した。

「もしもし?」

******************

先程真から連絡があった。

<つぐみと飲むから帰りは遅い。>

⏰:08/03/16 02:40 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#577 [向日葵]
つぐみさんと真は、友達に戻ったらしい。

文化祭2日目の日の夜、つぐみさんから電話が入った。

[今まで私のせいで、みかげちゃんや松川君に苦しい思いさせてごめんなさい。でも、もうふっきれたから、安心して?幸せに……なってね。]

つぐみさんの声は、とても穏やかで、私はただ「はい」とか「いえ」と、つぐみさんの言葉の間間に返事をするくらいしか出来ないくらい切なくなった。

つぐみさんこそ幸せになって下さいと思ったけど言えなかった。

⏰:08/03/16 02:45 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#578 [向日葵]
自分はそんな事言える立場の人間じゃないからだ。

つぐみさん……どうか幸せに。
悲しいくらい一途に真を想った、優しい優しい人……。

私は家に帰って、ソファーに身を沈める。

初めてこの家に来た時も、こんな風にしたなとか、思い出に浸りながら……。

あの時の私は、自分がこんな風になるとは思わなかった。

夢無しでなんて生きていけない。
現実なんか嫌い。

現実から真っ向に向き合うのを嫌っていた自分が、今はこうして現実を受け止めてながら毎日を過ごしてる。

⏰:08/03/16 02:50 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#579 [向日葵]
なんだか不思議……。

仄かに笑いながら、私は目を瞑った。

・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

―――……ーン、ゴーン……。

ん?
何か音がする。
あ、チャイムかな。

だけど学校で流れるような機械的な音ではなかった。

もっとこう……壮大と言うか盛大と言うか……。

目を瞑っていたらしい私は、ゆっくり目を開ける。

最初に目に入ったのは、白い手袋をした自分の手。

⏰:08/03/16 02:54 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#580 [向日葵]
よく見ればひじ辺りまで長さがあって、レースも蓄えられている。

そしてその手の先には、白い布。

『え?え?』

パニックを起こしている私の後ろから、声が聞こえた。

『みかげ……とっても綺麗よ』

『嬉しいなぁ……みかげがこんなに綺麗に育っただなんて』

その声の主は、もういない筈のお母さんとお父さんだった。
お母さんは私の肩に手を置いて、方向転換させる。

⏰:08/03/16 02:58 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#581 [向日葵]
そこには鏡に映った自分が。
しかも身につけている服は、明らかにウェディングドレスだった。

おいおいなんてベタな夢見てんだよ私!

と夢に突っ込む私。

しかしそんな突っ込みとは裏腹に、夢の中の私はびっくりする事を言った。

『お父さん、お母さん、今までありがとう……』

涙ながらに切々と伝える。

いやいやいや!アンタ何言っちゃってんのさ!

⏰:08/03/16 03:02 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#582 [向日葵]
ドレス姿の私と違って、そのドレス姿を傍観している私のビジョン。
だから私の思ってる事を無視して、ドレス姿の私は勝手に行動してくれてるのだ。

夢とはやっぱり説明しにくい。

場面は一変して、ドレス姿の私はもう教会へ。
神父が何か喋っていたかと思うと、誰かが私のベールを取る。

ステンドガラスから差し込む光に照らされながら微笑むのは、やっぱりと言うか真だった。

眼鏡を取った真の目力は普段の3倍。
夢の中の癖に私はクラクラしていた。

⏰:08/03/16 03:09 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#583 [向日葵]
『誓いの口づけを……』

神父がまた言う。

私はまたドレス姿の私を見る事となる。
私と真は見つめあって笑っている。

まるでドラマの1場面を見ているみたいだ。
どんどん近づいて、唇が重なる。

重なると同時に、鐘が鳴り響いた。

あぁそうか。
最初に聞こえたのは、この鐘か。

と、ドレス姿の自分のビジョンに戻った私は、真の唇を感じながら思っている。

⏰:08/03/16 03:12 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#584 [向日葵]
真の唇の感触が消えた。
なので私は目を開ける。

すると風景はまた一変して、いつもの家の中だった。

ツンツンと何かが下から服を引っ張るので下に目を動かせば、そこには子供がいた。女の子だ。

子供に目線を合わせる為にしゃがんだ私は、その子の頭を優しく撫でてやった。

撫でられた子供は嬉しそうに笑うと、驚く事を口にした。

『ママ』

ハイ?

『ママ、ご本読んで』

ママ……ママ……。…………――――っ私ぃ!?

『あ、パパー!』

⏰:08/03/17 00:46 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#585 [向日葵]
パパと呼ばれる人物を見れば、そこにいたのはやっぱり真だった。

真も笑いながら、駆け寄って来た私達の子供(らしい)を抱き上げる。

その光景に驚きながらも、私は微笑ましく眺めていた。

・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「―――げ。オイみかげ」

ゆっくり目を開けると、そこには真がいた。

「アレ……子供は?」

「子供?何寝ぼけてんだ」

⏰:08/03/17 00:50 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#586 [向日葵]
あ、何だ。これ現実か。
……ん?珍しいな。
いつも目が覚めれば夢は忘れてる筈なのに、今回はちゃんと覚えてるや。

しかも何だろう……夢から覚めたのにがっかりしてる自分がいる。

「真いつ帰って来たの?」

「今。そしたらお前が寝てたの」

「そっか。……ん?」

机の上を見れば、ブランド物のつづりが入った小さな袋を見つけた。

「真どうしたのそれ。」

⏰:08/03/17 00:54 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#587 [向日葵]
袋を指差すと、真は何とも言えない表情をした。

つぐみさんからの貰い物だろうか。

貰ったはいいものの、自分はいらないから捨てる訳にもいかず、困っているのかもしれない。

物によっちゃあ私が貰おうかな。

「ねぇ、中見せてよ」

「え!いや、あの、これは……」

珍しく真の返事が歯切れが悪い。
眉を寄せて、真を見つめる。

⏰:08/03/17 00:59 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#588 [向日葵]
真は諦めたのか、長いため息をつきながら頭をポリポリかくと、袋を私に渡した。

渡した時に中身が揺れたのか、小さくコトッと音が聞こえた。

そして中身を取る。

「おー……」

袋から、ビロードのような手触りの更に小さな箱が。
何だろう……。
よくあるのはこんな箱を開けながら「これ……給料3ヶ月分の……」みたいなドラマな場面あるけど。

自分の馬鹿な想像に心の中で笑いつつ、私は真に聞く。

⏰:08/03/17 01:07 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#589 [向日葵]
「私が開けてもいいの?」

「ん?ああ……いいんじゃね?」

なんか投げやりな真にムッとしつつ、私は箱を開けた。

するとそこには……光で反射した、綺麗な銀色の指輪が2つ並んでいた。

思わず言葉を失う。
そしてさっき心の中で笑った自分を恥じた。

「え……真。あの……」

指輪を見ながら私は真に言った。

真はまたため息を吐くと、ソファーに座ってる私の前に回り込んで、あぐらをかいた。

⏰:08/03/17 01:11 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#590 [向日葵]
「いや……あの、一応ペアリングでもって思っただけだ。別に深い意味は……」

「あ、そう……だよね」

早とちり。
馬鹿だ私。

「深い意味は……ない……つもりだけど、あるんだよな……。」

「え?」

私は真を見つめた。

真は私を見ずに、下を向いて口元を片手で隠している。

深い意味?
真、どういう事?
私と思ってる事は同じ?

⏰:08/03/17 01:15 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#591 [向日葵]
「昨日、結婚とか話しただろ?お前はどうであれ俺は本気だったんだ」

「え……」

「でも、まだ実感すら沸かないお前に、大人目線からの意見を無理矢理通すのは……って思って……」

つまりそれは……。

「でも結婚って言っちまったら、みかげとの結婚生活の事ばっかり想像しちまって……。だからその指輪が、いつか婚約、それで結婚指輪になる事を意識してくれたらって、思ったんだ」

珍しく、真の顔が少し赤くなっていた。

⏰:08/03/17 01:19 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#592 [向日葵]
そんな真に油断した私は、本音をポロリと出してしまう。

「私もしたい。真と、結婚したい……」

真はバッと顔を上げて、驚いてるのか目を見開いて私を見る。

「あのね……さっき夢みたの。真と、結婚する夢」

ベタで馬鹿馬鹿しいって思った。
あり得ない。自分はなんて夢を見てるんだって。

……でも。

夢から覚めた時のあのがっかりした感じは、きっと夢から覚めてしまったからだ。

⏰:08/03/17 01:23 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#593 [向日葵]
「子供もいたの。私達の子供。真は嬉しそうにその子を抱っこしてた。私、そんな温かい空気が嬉しかった。……ねえ真。大人目線なんて関係ない。」

だって好きな人と幸せの時間を共有出来る……これ以上の幸せはないでしょう?

「真が私を望んでくれるなら、私は喜んで真についていくよ」

「みかげ……」

私は自分から真の首に腕を巻き付ける。

こんなに誰かを愛しいと思った事があるだろうか……。
ううんこの感情は真だけしか味わった事がない。

⏰:08/03/17 01:30 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#594 [向日葵]
真は私を優しくきつく抱き締めてくれる。
それが2人の結婚の決意を固めてくれた。

少ししてから離れて、真は2つの指輪の小さい方を手に取った。

「みかげ、一生かけて幸せにする。結婚してくれますか?」

改めてプロポーズされれば、こそばゆいような、胸がキューっとなるようなそんな感覚がした。

「仕方ないから……してあげるよ。」

何故素直に「ハイ」と言えない私よ……。

⏰:08/03/17 01:34 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#595 [向日葵]
そんな私を理解してくれてる真は、ハハッと笑って左薬指にその細い輪をはめる。

はめた瞬間、胸が高鳴った。
本物の結婚指輪でもないのに、もう結婚した気分になった。

「みかげ、ホラ、お前も俺にはめてよ。」

真は私より大きい指輪を私の掌に置くと、自らの左手を私に差し出した。

指先で、小刻に震えながらその輪を掴む。

「緊張……する……」

素直に感想を述べれば、真はまた笑った。

「変なの」

⏰:08/03/17 01:40 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#596 [向日葵]
ゆっくりと、でも確かに真の指に輪をはめる。

「……」

2人して、沈黙。

真は黙ったまま私の隣に座ると、肩を優しく抱いてくれた。

「夫婦?」

「んー、まだだな。だってこれペアリングだし」

それでも嬉しい。
2人で歩む未来が待っていると思ったら、早く卒業したくてたまらなかった。

私一体どうしちゃったんだろう……。

⏰:08/03/17 01:51 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#597 [向日葵]
「なぁみかげ」

「ん?」

「子供って女?男?」

なんかもう私のお腹にいるみたいな会話だ。
生まれてくるのが楽しみで仕方ないような……そんな感じ。

「夢では女だったよ」

「じゃあ嫁には行かせないね」

「いつの時代の言葉よ」

父親になった気分の真に笑ってしまう。

「あー!早く欲しい!」

⏰:08/03/17 01:54 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#598 [向日葵]
「大丈夫よ」

未来は……すぐ側まで近づいてるから……。

・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

魚はいっしょうけんめいおよぎました。

みんなにあいたい。
はやくあいたい。

どこにいるの?
ぼくはここだよ。

ぼくわかった。

ゆめみるばかりがすべてじゃない。
げんじつのせかいで、たいせつななにかをみつけるのがだいじだって。

⏰:08/03/17 01:57 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#599 [向日葵]
どれくらいおよいだかわからないくらい、魚はずっとおよぎつづけました。

するとどうでしょう。

だんだんとやみがきえ、いつものあおいうみへともどってきたではありませんか。

『みんなー!』

魚はさけびました。

へんじがかえってこなくても、なんどもなんどもさけびつづけました。

・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

あれから、ずっと変わらない日々を送っている。

⏰:08/03/17 02:00 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#600 [向日葵]
毎日毎日、買い物、料理、掃除……。

時間がすぎるのが早いくらい、あっという間に毎日が過ぎていく。

でも決して、刺激を求めて夢へ逃げたりしない。

ううん違う。

もう刺激なんかいらないの。
だってね……。

「ママー」

足元で声がしたので、私は下を向く。
そこには小さな宝物がいた。

「なに?ゆめ」

⏰:08/03/17 02:03 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#601 [向日葵]
「あのねーご本よんでほしいのー」

可愛らしいえくぼを作りながら微笑む我が子に、満面の笑みを向けながら私は言った。

「うんいいよ。何がいい?」

「えとね、これ!」

小さな手に抱かれたそれは……。

「ゆめ、これが好きね。」

「うん!だってママがくれたもん!」

「そっか。じゃあ読もうかな。」

⏰:08/03/17 02:06 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#602 [向日葵]
私は絵本の1ページ目を開く。

「“ゆめみる魚”……」

―――――…………

「ただいまー。」

夕飯の用意をしていると、真一が帰ってきた。

玄関まで迎えに行って、カバンを持ってあげる。

「おかえり。今日職員会議じゃなかったの?」

「早目に終わったから全速力で帰ってきた。」

その理由はもちろんゆめがいるからだ。
真一がここまで親ばかになるだなんて思っても見なかった。

⏰:08/03/17 02:09 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#603 [向日葵]
「絵本読んだら寝ちゃったから起こさないでよ」

「なんだ寝てんのか。んじゃ奥さんで我慢するわ」

「ちょっと、我慢っとどういう意味よ」

反論していると、後ろから抱き締められた。
前よりも長くなった私の髪に、真一の吐息がかかる。

「じょーだん。我慢だなんてとんでもない」

「当たり前。誰だったかしらね。卒業の日に婚姻届出しに行こうって勝手に盛り上がってた人は……。」

その時のビデオでもあったら見て欲しいくらいだ。

⏰:08/03/17 02:15 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#604 [向日葵]
私が呆れるほど目を輝かせてはしゃいでるもんだから、落ち着けと頭をどついてやらないと真一は冷静にならなかった。

「それぐらいみかげが好きって事さ。そろそろゆめに兄弟作ってあげてもいいんじゃない?」

ギクッと固まる。

さすがはもとタラシ。
そういう際どい事を安々と言ってのけるあたりまだまだ現役バリバリのタラシだと思う。

「みかげ……返事は?」

「み、耳元で喋んないで……っ!」

⏰:08/03/17 02:19 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#605 [向日葵]
真一が編み出した技。

こうすれば私が断らない事を知っているのだ。

「し……真い」

「あ、パーパー!」

起きてきたゆめが、私達の元に走ってくる。

「おかえりなさぁぁい!」

嬉しそうに抱きつくゆめを、真一は愛しいそうに抱き上げる。

「ただいま。いい子にしてたか?」

「ウン!」

⏰:08/03/17 02:21 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#606 [向日葵]
私はそれを微笑ましく見つめる。

それはいつしか夢で見た光景……。

そんな風に、幸せはいつまでも続いていくのだろう。
そうなる事を、私は夢見てる……。

・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

『みんなー!』

これでなんどめだろう。

魚はさけびつづけていました。

でもみんなはみつかりません。

⏰:08/03/17 02:24 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#607 [向日葵]
魚はさらにつよくおもっておよぎました。

ぜったいあきらめない。
みんなにあいたい。

『みんなー!』

また魚はさけびます。

そのときでした。

とおくからなにかきこえてきました。

『オーイ!こっちだよー!』

魚はふりむいて、そのほうこうをみました。

するとどうでしょう。

はなればなれになってたなかまがいるではありませんか。

⏰:08/03/17 02:27 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#608 [向日葵]
『やっとあえた……!』

魚はよろこびいっぱいにおよぎ、みんなのもとへと向かいました。

・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

たくさんのありがとうを、今貴方に。

真一、会えて良かった……。






・・・ゆめみる魚・・・
*END*

⏰:08/03/17 02:29 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#609 [向日葵]
*あとがき*

如何でしたか「ゆめみる魚」
今まで沢山の応援、励まし、アドバイス。
本当にありがとうございました
私はいつも自分の中で「温かな幸せ」をテーマとしているのですが、少しでもそれが皆様に伝わっていたら嬉しいです
また読んで頂けると幸いです

本当に本当にありがとうございました


向日葵

⏰:08/03/17 02:33 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#610 [向日葵]
感想また頂けると嬉しいです

あとアンカーしてますんで良ければどうぞ

>>2-100
>>101-200
>>201-300
>>301-400
>>401-500
>>501-610

⏰:08/03/17 02:36 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#611 [ぱちりす]
お疲れさまですヾ(^▽^)ノ
めっちゃ良かったです

楽しかったぁ

あったか〜ぃ気持ちになれました
ありがとうございます

⏰:08/03/17 18:43 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#612 [向日葵]
ぱちりすさん

読んで下さってありがとうございます

あったかーい気持ちになって頂いて良かったです

良かったら感想板の方も来て下さいね

⏰:08/03/17 18:57 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#613 [向日葵]
・・・ゆめみる魚・・・

―番外編―

⏰:08/04/09 00:15 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#614 [向日葵]
もうすぐ冬が来る。

しかしその前に、私達3年生は受験と言う1つの山を越えなければならなかった。

今まさに受験シーズン。

終わった人もいるけれど、大抵の人がこれからなので、教室は殺伐とした空気が漂っている。

参考書や単語帳とずっとにらめっこしている人や、ひたすら書いて覚えたり問題集をやってる人もいる。

そんなピリピリした雰囲気の中、なんの心配もせず呑気に人間観察なんてしちゃってる私こと葛(カズラ)みかげは、受験には縁が無かった。

⏰:08/04/09 00:20 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#615 [向日葵]
「ちょっとみかげ……」

さっきから目の前で問題を解いている友人の増田 多香子(マスダ タカコ)が、私をじとっと睨みつける。

目で「なんだ」と応じれば、多香子は眉にしわを寄せた。

「ずるい……ずるいよみかげはぁぁぁ……。1人だけそんなホワホワした雰囲気漂わしてぇぇっ」

受験が1週間後に迫っている多香子は情緒不安定になっていた。

しかし多香子は推薦で受けるので、「そんなに頑張らなくても」て言うと、「その油断がダメなのよ!」と怒られた。

⏰:08/04/09 00:25 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#616 [向日葵]
私が受験と縁遠いのは理由があった。

休み時間のガヤガヤした音に、アナウンスの音が混じる。

<葛みかげ、葛みかげ。至急社会科準備室まで来なさい>

「あ、呼ばれてる」

「裏切り者ぉぉぉ!!」

ついに泣き叫ぶ多香子を放置して、私は社会科準備室へと急いだ。

前より少し伸びた髪の毛が、歩く風によって揺れる。
社会科準備室のドア前に来て、ノックをすれば、中から返事が返ってきた。

⏰:08/04/09 00:30 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#617 [向日葵]
「失礼します」

「おう入れ」

1歩入り、ドアを閉めて、いつも通り鍵も閉めておく。

そして、意地悪そうな笑い声を出した後、低く甘い声が聞こえる。

「どうした?早くこっち来いよ」

ドがつく程Sっぽいこの人は、松川 真一。
ここの教師。私の同居人。

……私の恋人……。

「真に呼びだされたせいで多香子に泣かれた」

⏰:08/04/09 00:35 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#618 [向日葵]
声をあげて笑う真を私は睨む。

コイツはただ会いたいからと言う理由だけで私を呼び出す。
これはお決まりパターンなのだ。
正に職権濫用。

なかなか真に近づかない私に痺れをきらしたのか、真自ら私の元へやって来て、手を引っ張り、握ったまま自分はイスに座った。

「嫌だった?俺に会うの」

にこりと笑って首を傾げるものだから、嫌じゃないけど嫌とは言えなくなった。
だからと言って「会いたかった」なんて乙女チックな事、私が言える訳が無い。

⏰:08/04/09 00:40 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#619 [向日葵]
でも真のその仕草に私の中の少ない乙女チック思考の心にグッときて、顔が赤くなるのを自覚しながら口を閉ざした。

そんな私を面白がるように、少し私の手を引っ張って、頬に唇を寄せた。

「ちょっ……!」

急いで身を引いても、手を握られたままだから逃げるに逃げられない。

そんな慌てた私に満足した真のニヤッとした意地悪な笑みに、更に顔の体温は上がる。

「聞いてるのに何も言わない子にはちゃんと教えてあげるのが教師だろ?」

⏰:08/04/09 00:47 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#620 [向日葵]
なんかそれ違う……。

本当はこんな関係いけない。
同居人だとは言え、私は生徒、真は教師。
それでも想いは止められず、私達はついに……

「卒業するまでにはもうちょい素直になって欲しいな。なんてったって俺達夫婦になるんだから」

そう。
私が受験と縁遠い理由。
それが今、真が言った事なのだ。

知ってるのは多香子だけ。
進路調査では、名前こそ出さなかったけれど(てか出したらえらい事になるけど)結婚するとしてある。

⏰:08/04/09 00:55 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#621 [向日葵]
……と言うか……、3年に上がって担任が真になったので、助かったのだ。

これが他の教師であれば結婚となれば相手を聞かれそうだ。
ちなみにそんな場合は「親戚の家の仕事を手伝う」とか言う予定だった。

実際、真繋がりの親戚で、旅館を経営してる人がいるらしく、嘘を言ってる訳ではないからなんとでも通るのだ。

真曰く

「あすこのおっさんとおばさんは俺が可愛いから何でも言う事聞いてくれるだろうからなー」

⏰:08/04/09 01:00 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#622 [向日葵]
と言った。

心の中で「どうなってんだよアンタの親戚」と突っ込んだのは言うまでもない。

「素直……って、私はこれで普通なんだから素直も何もないでしよ」

「もっと自分から抱きつくとか好きって囁くとかさー」

「酔っ払ってんの?」

こんなやりとりしょっちゅうだ。
真はどうにかして私を乙女チックに仕上げたいらしい。

その分真は抱きつくわ好きと囁くわ、あげくの果てにはキスだ。

⏰:08/04/09 01:05 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#623 [向日葵]
「真も知ってる通り、私は遂この間まで恋愛の“れ”の字も知らなかった小娘なの」

「“小娘”って分かるようになった辺り成長したな」

「……その“小娘”に手ぇ出したのは誰……」

真はにーっこり笑うとひらひら手を振る。

そうだ。真は私達世代には興味ないとか言ってたくせにちゃっかり私に手を出したんだった。

結局理想なんて意味も無いものなんだと真を見て感じる。

⏰:08/04/12 01:37 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#624 [向日葵]
話を元に戻そう。

真の過剰なスキンシップや愛情表現が嫌な訳ではないし、真が嫌いだから何も言わない訳じゃない。

それなりのムードがあれば、私だって後で思い出せば恥ずかしい言葉だって言ってる時はある。

ただ、私は怖い。

自分が自分でなくなってしまいそうなのがなんだか怖いのだ。

さらけ出して、真が私を嫌いになってしまうかもと考えれば、越えてしまいそうなあと1歩が踏み出せない。

⏰:08/04/12 01:42 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#625 [向日葵]
もちろん、こんな恥ずかしい事は言えないし言いたくもない。

真は机に肘をついてフゥ……とため息をつく。

「せめてさー……保健室の時みたいな可愛い事言えない?」

保健室の時とは、文化祭で私が階段から落ちて気を失ってしまった時だ。

あれこそ本気で恥ずかしい。
泣きじゃくりながら必死に「側にいたい」と言った自分がひどく滑稽に見えたからだ。

どんなドラマ展開だ。

⏰:08/04/13 12:26 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#626 [向日葵]
一度真に聞いた事がある。

いつもと変わらず、抱きついたり、甘い言葉を吐いている時だった。

何故そんな事が出来るのかと。

返ってきた言葉はこうだった。

「好きな奴には全力で自分の気持ちを知ってほしいから」

あっそう……としか言えなかった。

そんなそれが当然かのように言われてしまったら私はどうすればいいんだ。

⏰:08/04/13 12:29 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#627 [向日葵]
呆れていながら社会科準備室の時計を見れば、あと5分で休み時間が終わろうとしていたので、頭の中から少女漫画回路を追い払ってここに呼び出した訳を真に聞いた。

「用がなきゃ呼んじゃダメかよ」

「愚痴なら帰ってから聞くからさっさと何の用か言って頂戴」

渋々といった感じで真はブレザーの上着から何かを取り出した。

薄い封筒のようだ。

それをヒラヒラさすながら真は言った。

⏰:08/04/13 12:33 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#628 [向日葵]
「生物の高木先生から懸賞かなんかで1泊2日の温泉旅行が当たったらしい」

生物の高木……?
あぁ、あののほほんとした空気をまとった40代後半のおばさん先生か。

……え。
温泉旅行?

「自分は行く予定が無いから俺にどうだと聞いてきた。で……、行くか?」

つまりそれは温泉旅行のチケット。
そしてその温泉旅行に行かないかと誘われている……。

ってか、

「2人で?」

⏰:08/04/13 12:37 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#629 [向日葵]
「大人数でいけるか馬鹿」

温泉と聞いて嬉しくない訳がなかった。
この寒くなる1歩手前の温泉……露天風呂が楽しめそうじゃないか……っ!

「行く!行きたい!」

「よし決まりだな」

真も嬉しいのか、笑って私の頭をクシャッと撫でた。
私はされるがままになる。

もうすぐチャイムが鳴りそうなので、真から離れ、私は社会科準備室を後にした。

⏰:08/04/13 12:41 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#630 [向日葵]
*******************

予想外のみかげのはしゃぎっぷりに俺は嬉しさを隠せなかった。
が、その反面少し虚しくもあった。

彼女は不器用で、滅多にベタベタしてくれない。
いや別にいいんだ。
そんなところも大いに可愛いと思う。

だが、こちらとしては少し物足りないと感じる事もあるのだ。

そこでやってきた温泉旅行を譲る誘い。

この旅行を機にみかげが少し甘い雰囲気に慣れて少しでも甘えたりしてくれれば嬉しい……。
なのに……。

⏰:08/04/13 12:46 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#631 [向日葵]
どうやら彼女には温泉を楽しむ頭しかないようだ。

普通あの年代なら、旅行に行くのを緊張しながらも楽しみにしたり勝手な妄想膨らましたりすると思ったんだが……。
ずっと2人で暮らしている為みかげにはその意識が低いらしい。

……我慢出来るかねー……俺。

最近のみかげは髪が伸びたせいか一段と可愛い。
でもこちらとしては常に理性との戦いなので歯を食い縛って1日1日をしのいでる。

でも……みかげの気持ち最優先だから、嫌がる事は絶対にしない。

⏰:08/04/13 12:50 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#632 [向日葵]
それだけは肝に銘じておく。

……ま、理性が切れるまではの話だけどな。

*******************

<何の話だったの?>

授業中、多香子からメールが来た。
視線を少し横にずらせば、携帯を机の下に隠して、こちらを向いてニヒッと笑っていた。

アンタ真面目に勉強するんじゃなかったの……?

<旅行の話>

そう送った。

「り……っ!」

⏰:08/04/14 00:27 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#633 [向日葵]
多香子の呟きが大きくここまで聞こえた。

メールは驚くほど早く返ってきた。

<り、旅行!?松川と!?マジで!遂にみかげが大人の階段上るの!?シンデレラになっちゃうの!?>

なんのこっちゃ。

大人の階段?
なんでそんな展開を予想しているかが分からない。

呆れながら私はまた多香子にメールを返した。

<何言ってんの?ただ旅行にいくだけ>

多香子のくだらない妄想は際限ない。

⏰:08/04/14 00:31 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#634 [向日葵]
その豊かな想像力を勉強に回せばいいのに。

左手に持つ携帯が震えたので、私は携帯を見る。

<何言ってんのはこっちの台詞だよ!みかげなんで意識しないの!?泊まり=それっきゃないじゃん!>

やっぱり私には乙女思考は働かない。
と言うか乙女チックな考え方は私には無理みたいだ。

どうしてそうなるのかが分からない。
てかなる訳がない。
一緒に住んでるんだからそんな展開期待する方が間違いだ。

⏰:08/04/14 00:36 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#635 [向日葵]
また何かメールが来たけど、めんどくさくなって私は寝たフリをして無視をした。

……でも不思議だな。
前まではこうやって顔を伏せるだけですぐ夢の中へ旅立ってたのに、今は真がいるおかげで全然眠れない。

それほど真の存在が、私の中で大きく光輝いてるって事なのかもなぁ……。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ちょっと来てっ」

我慢出来ないと言った風に、私の元へ多香子がやって来た。

⏰:08/04/14 00:44 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#636 [向日葵]
腕を引っ張り、私と廊下に出た。

そのまま興奮したように私の肩を掴んで多香子は間近で力説しだした。

「いいみかげ。旅行って言うのはね、色んな雰囲気をまとってしまうの。そのいつもと違う空気に2人の気持ちは高まってー……って事になっちゃうかもなのゃ!」

「“かも”でしょ?私達にはそんなのないから」

「あぁーまいっ!!」

ってか何で多香子がテンション上がってるかが私には不思議で仕方ない……。

⏰:08/04/14 00:48 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#637 [向日葵]
なんか1人で身振り手振り話している多香子を心の中で鼻で笑う。

これだからいつも考えすぎの多香子は困る。

そんな訳ないって言うのに……。

――――――……

学校から帰ってきて、手を洗う時に自分の左薬指に光る銀の輪が目に入った。

台所から入る窓の光により、微かに輝いている。

私はそれを眩しそうに目を細めて見つめた。

あれからもう1年以上過ぎたと思えば、時の早さを思い知った。

⏰:08/04/15 20:15 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#638 [向日葵]
この1年、些細なケンカも確かにあったけれど、毎日が本当に温かく幸せな日々を送っていた。
この左手を見る度そう思う。

[シンデレラになっちゃうの!?]

多香子のメールを思い出す。

真はあの性格だから、確かにそれらしき雰囲気を漂わしたりした事もあったけど、私が私だからいつも“おあずけ”状態にした。

「……ハ、ハハ……まさかね」

それ目的で真が温泉に誘っただなんてまずありえない。

⏰:08/04/15 20:20 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#639 [向日葵]
だって真は真なりに考えてくれてるし、ムードに流されて無理矢理なんて事はないと思うし。

そう……。

「だから多香子の考えすぎなんだって!」

「増田がどうかしたのか?」

「ひぃっ!いたの!?」

後ろにいた真を振り返りながら自分の今の考えを振り払う。

私ばっかりこんな事考えてたら私が望んでるみたいになっちゃうじゃない……っ!!

⏰:08/04/15 20:23 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#640 [向日葵]
振り返ったはいいものの、私は何を言えばいいか分からず、下を向いてしまう。

真はと言うと、クスリと笑う声が聞こえたかと思えば、私がもたれていたシンクに手をついて私を閉じ込めるようにした。

体がさっきより近づいて、真愛用の香水の香りが漂ってくる。

これは、思いきり攻めの体勢だ。

「ちょ……何……」

うつ向いたままなんとか聞こえる音量で抗議してみる。

⏰:08/04/15 20:27 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#641 [向日葵]
「何って……楽しんでる」

本当に楽しそうな口調で言うもんだから、眉を寄せて赤くなるしかなかった。

じわじわと顔が近づいて、真の片手が私の頬に触れる。上を向くよう促されてる感じはするものの、私は頑なに上げようとはしなかった。

頭がパニックを起こす。
体はガッチリ固まってしまった。

「みかげ」

優しく呼ばれて、そろりと顔を上げれば、柔らかく微笑む真がいる。

⏰:08/04/18 00:18 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#642 [向日葵]
緊張していた体は力が抜け、真の片手が導くままに顔をしっかり上げた。
と同時に真の顔が近づく。
長いまつ毛が間近に迫れば、見つめるのが恥ずかしくなってそのまま真の唇が触れるのを目を瞑って待った。

[二人の気持ちは高まって……って事になる]

多香子の言葉がエコーがかって頭に響けば、私は叫びながら力一杯真を押し返していた。

「う……っわぁぁぁぁ!!」

「おわぁっ!!」

⏰:08/04/18 00:23 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#643 [向日葵]
突然の攻撃に容易く真は飛ばされてしまい、フローリングに尻餅をついた。
私はシンクに頼りなくもたれながら胸を押さえて心臓の音を聞く。

何急に意識しだしてんだ私……っ!さっきまでどうもなかったのにおかしい!

そこまで考えて私はハッとした。
真をほったらかしにしたまんまだった。

「ご、ごめん真っ!あの……」

「はぁ……いいよ。早く晩飯作ってくれ」

そう言うと、真はテレビをつけてソファーに身を投げ出した。

⏰:08/04/18 00:27 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#644 [向日葵]
あぁ……。真を傷つけてしまった……。
だから私は子供なんだよ。

……もういい。
全部多香子のせいにしてやる……。

頭のごちゃごちゃも、真となイザコザも、全て多香子に押し付けて私は晩御飯の準備にとりかかった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「真ー。ご飯だよ」

台所からソファーの真に呼びかけても返事は無かった。
まだふてくされてるのかと、真に近づく。

⏰:08/04/18 00:30 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#645 [向日葵]
真を上から覗いて見れば、静かに寝息を立てて眠っていた。

いつも頑張っているし、(勝手にやってるんだとしても)学校の時と人格違うようにしてるから疲れてるのかもしれないなぁ……。

それを癒してあげるのが私の役目だと思う……のに。
突き飛ばしちゃった……。

その場で脱力するようにうなだれる。

座って、ちらりと真を見る。
相変わらず整った顔は寝ていても崩れない。

⏰:08/04/18 00:34 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#646 [向日葵]
「ごめん……なさい……」

寝返りをうった時に眼鏡を傷つけてはいけないと、眼鏡に手を触れた瞬間……。
素早く手首を掴まれた。

「ひぃっ!」

「んな化けもんに会ったみたいに驚かんでも……」

私は眼鏡に手をかけたまま固まった。

「外したいなら外せば?」

え、起きる気ないの?

特に理由もなく、せっかく外しかけたのだからと意味の分からない事を思いながら私は真の眼鏡を机に置いた。

⏰:08/04/18 00:40 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#647 [向日葵]
依然、私の手首はまだ解放されず、その掴まれてる手をぼんやりと見つめた。

「旅行行くの、やめる?」

そんな事言うもんだから、私は「え!?」と言いながら真をバッと勢いよく見た。

忘れていたけど、眼鏡を外した真の眼光は眼鏡をかけている時の2倍。
見えてるのかいないのか分からないながら見つめてくるけど、私はその視線にいつもクラクラする。

そんな事はとりあえず置いておいて、私は真に問うた。

⏰:08/04/18 00:45 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#648 [向日葵]
「な、なんで。あ、予定合わなくなった?それなら別の日……」

「じゃなくて」

私の言葉を遮って真が言った。
手を伸ばして、微笑みながら耳元を髪と一緒に撫でる。

「誰かさんが何かいやらしー事意識してるみたいだから」

理解しかねた私は首を傾げて真の言葉を口の中で繰り返した。
そして意味が分かった時、恥ずかしいようなムカつくような気分になった。
思わずそっぽを向く。

⏰:08/04/18 00:49 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#649 [向日葵]
「し……してない」

「顔真っ赤にしたくせに」

「真が迫る時はいつもでしょう」

「じゃあいつもいやらしい事考えてんだ」

「違うってば!」

ムキになればなるほど真は笑った。

笑い事じゃない……。

軽く口を尖らせていると、掴まれていた手首をぐいっと引っ張られた。

「わぁっ!」

⏰:08/04/18 00:53 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#650 [向日葵]
何をされるのかと目をギュッと瞑った。
暖かさを感じて目を上げれば、ソファーに寝転がっている真の上に、上半身だけ私の体が覆い被さっていた。

こ、この格好はマズイだろ……っ!

うろたえてる私をよそに、真は真剣なトーンで話始めた。

「何もしないよ。お前が嫌がる事は」

「べ、別に嫌がってる訳じゃ……」

ようやく手首を解放されると、今度は頭と腕を掴まれてる更に引き寄せられた。

⏰:08/04/18 00:58 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#651 [向日葵]
アンカーです(。・ω・。)
良かったらお使い下さい

>>2-100
>>101-200
>>201-300
>>301-400
>>401-500
>>501-600
>>600-650

⏰:08/04/20 00:22 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#652 [向日葵]
※訂正

>>650

×腕を掴まれてる
○腕を掴まれて

⏰:08/04/21 00:27 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#653 [向日葵]
必然的に、私の顔は真の肩辺りに埋まる。
すぐ近くに真の綺麗な首があって、胸は高鳴り、息を詰めた。

「ほら……こうするだけでお前緊張してる。家ならまだしマシだけど、旅行先でもしこんな事が起こったら、お前パニックに起こすだろ」

空いている手で、真は優しく髪を撫でる。
その感触が心地良くて、緊張が少しずつ引いていく。

ホラ……真はちゃんと私の事考えてくれてる。
だから大丈夫……。

「それはそれ、これはこれでしょ。私はただ単純に真と旅行したいだけ。……怖くなんか、ないから……」

⏰:08/04/21 00:31 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#654 [向日葵]
真は体を動かすと、反転させて私の体をソファーに寝かせた。
さっきとは逆の体勢。

真の片手が、私の頬に触れる。

「本当に?行っても大丈夫?」

「うん。大丈夫」

真は頬をゆるめる。
そして顔を近づけ、オデコをコツリと当てた。

「今度は突き飛ばすなよ」

そう言って、唇を優しく押し付けてきた。

⏰:08/04/21 00:38 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#655 [向日葵]
――――――……

「旅行と言えば…………やっぱ下着っしょぉぉ!」

金曜日の放課後。
明日に旅行を控えた私を引っ張り、デパートにやって来た多香子と私は、下着売り場にいた。

相変わらずそっち方面の意識しかないドスケベな多香子はハイテンションだ。

「さぁ何色にする!?やっぱ情熱な赤!?」

惜しみなくレースを付けた真っ赤なブラを見せながら多香子は言った。

「テメェで着てろバカ」

私は他の色を探す。

⏰:08/04/21 00:42 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#656 [向日葵]
「じゃあ大人の黒はっ!?」

「あーのーね多香子」

遂に私は痺を切らして多香子に向き直った。
多香子は今度は白のレースがついた黒い下着のセットを持ちながら私をキョトンと見る。

「前、真と話したけど、真はそんなつもりないの。私の事を一番に考えてくれてるから、楽しく旅行しましょってだけ!」

「男は狼なのーよー。気をつけなさーいー」

聞く耳を持たない多香子は歌いだす。

⏰:08/04/21 00:46 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#657 [向日葵]
イラッとしたので多香子が持ってた下着のセットをぶん取って元の位置に戻した。

とりあえず紺色とかでいい。

「じゃあさみかげ、そんなに言うならさ、万が一と考えて1着は可愛いらしいの買っておこうよ」

他人事のように言ってくれる……。
いや他人事なんだけど……。

「下着なんてあればいいんだから、買っておいて損はないでしょ?」

ま、そりゃそうだ……。

⏰:08/04/21 00:49 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#658 [向日葵]
私が納得したのが分かった多香子はにまぁーっと笑った。

「赤もダメ、黒もダメ……。残るはピンクってとこ?」

「もうちょっとマシなのにしてくれ……」

結局ミントグリーンの上下1着、紺色を1着買った。

下着買うのがこんなにも体力奪われるものだったかと疑問に思いながら私は家へ帰った。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

時刻は6時半を過ぎた。
真は今日早いと言ってたから帰ってるだろう。

「ん?」

マンション近くの自販機で、オロオロしている50過ぎくらいの女性がいた。

⏰:08/04/21 00:54 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#659 [向日葵]
「どうかしました?」

暗いけれど、自販機の灯りと外灯の灯りで見えた女性の顔は、意外にも綺麗だった。

「いえねー、寒いからあったかいココアでも買って帰ろうかしらーと思ってお金入れても全然反応しないからー……」

「あー。これコツがいるんですよ」

私は女性に離れるよう指示してから自販機に向き直る。
精神統一するよう深呼吸してから足にグッと力を入れる。

「だぁ!」

⏰:08/04/21 00:58 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#660 [向日葵]
派手な音を立てながら思いきり自販機の側面を蹴る。
そうすればちゃんと自販機は反応して、ボタンが押せるようランプがついた。

「ハイ、いいですよー」

女性を見れば口を開けてポカンとしていた。
そして息を吹き出すと、声を上げて笑った。

「アハハハハ!本当、あの子が言った通りおもしろい子っ!」

「あの子?」

おばさんは笑いながらココアのボタンを押すと、私に押しつける。

「お礼。良いもの見させてもらったから体暖まった!」

⏰:08/04/21 01:02 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#661 [向日葵]
「え、でも……」

「じゃあね」

女性は私にココアを押し付けて颯爽と歩いて行ってしまった。

私は手の中にある暖かいココアを持ちながら女性を呆然と見送る。

なんか……エネルギー溢れる人だなぁ……。

そう思いながら、私は真が待つであろう部屋へと帰った。

「ただいまー真いるのー?」

「おー……」

⏰:08/04/24 00:23 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#662 [向日葵]
いつもの真らしい声じゃなかったので、首を傾げて疑問に思った。

リビングに入れば、テーブルに突っ伏した真がいた。
疲労と言う岩が真にのしかかってるように見える。

「ど、どうしたの?」

「いやー……久々だからなぁ……」

よく分からない事を呟く真。
私はますますハテナが頭上に舞った。

ダルそうに体を起こした真は、私をじっと見つめる。

⏰:08/04/24 00:27 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#663 [向日葵]
「何」

「多分お前可愛いがられるだろうなー……」

「さっきからなにブツブツ言ってんの。早く旅行の用意するよ」

真は「ヘイヘイ」と言ってリビングを出ると、別の部屋へと行った。
どうやら旅行カバンを探しに行ってるらしい。

そこで私はチラリと今日買ってきた下着を入れてるビニール袋を見た。

1泊2日だから下着は2着いらない……。
じゃあどちらを持っていけばいいの……。

⏰:08/04/24 00:31 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#664 [向日葵]
すると耳元に小さい多香子が出てきた(気がした)。

<何躊躇ってんのよ。イチかバチか持って行ってみればいいじゃない!>

いやウンそうだよ。
別にそんな気合い入れてるる訳でもないし。
たかがミントグリーンだよ?
そんな気合い入れた下着には見えないだろうし……。

すると反対の耳元には小さい私が出てきた(気がした)。

<真は私に合わしてくれるから持って行くだけ無駄よ。紺色のんにしときなさい>

⏰:08/04/24 00:35 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#665 [向日葵]
そうだよねー。真言ったもんねー。
じゃあ入れなくていいかなー。

<せっかくのシンデレラチャンスよ!>

<アンタ自分の事じゃないからって面白がりすぎなのよ!少しはこっちの身にもなって考えなさいよ!>

耳元でギャーギャーギャーギャー……。

「うるっさぁぁぁい!!」

「お前がな」

旅行カバンを2つ持った真が戸口になって私の叫びにツッコミを入れた。

⏰:08/04/24 00:38 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#666 [向日葵]
※訂正

>>664

×気合いいれてるる
○気合いいれてる

>>665

×戸口になって
○戸口に立って

⏰:08/04/26 23:02 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#667 [向日葵]
私は買ってきた下着の袋をとっさに後ろに隠した。
幸い真は私のその動作には気づかず、私の前に「ホラ」とカバンを置いた。

「忘れもん無いようにな。財布の中身は少量でいいから」

「安月給のくせに無理しなくていいって」

「その安月給の俺に養ってもらってんのはどこのどいつだかな」

デコピンをくらい、おでこをさすりながらも舌を突き出して抗議する。

部屋で用意しようと、隠した袋をさりげなーく持って行こうとした。
が、真は目ざとくも今度ばかりは気づいた。

⏰:08/04/26 23:08 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#668 [向日葵]
「ん?何それ」

ギクッとして体が固まった。
ギシギシ言わせながら、なんとか真の方へ振り向く。

「い、いや……ちょっと……旅行用の服を……」

「へー。じゃあ着て見せてよ」

無理。
ってか着たらモロバレじゃないか。

「明日のお楽しみって事で……」

「いーまー!ホラ見せて」

と袋を掴むので、一気に冷や汗が吹き出す。
紙袋の中に下着が入っていて、その上からさらにビニール袋に入れてるからパッと見では下着とバレないものの、探られてしまえばゲームオーバーだ。

⏰:08/04/26 23:14 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#669 [向日葵]
「ちょ……っ、やめんかこのボケェェ!!」

焦りに焦って、足が出てしまった。
足はクリーンヒットし、真の脇腹を強打。
突然の事に身構える事が出来なかった真は床にうずくまってしまった。

前回に引き続き、私もうちょっとマシな反応が出来ないものかと自分ながら思う。

「ちょ、おま……冗談キツすぎ……」

「し、真が悪いんじゃない……っ!」

私は逃げるように自分の部屋へと駆け込んだ。

⏰:08/04/26 23:18 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#670 [向日葵]
――――――……

快晴。雲1つなく文句ない天気。
……しかし、約1名の機嫌が頗る悪かった。
まぁ言うまでもないと思うけど……。

「あの……真……」

「あーぁ……なぁんでこんな脇痛ぇーんだろーなぁー」

わざとらしく脇をさすりながら着々と用意をする。
車に荷物を入れながら、大袈裟な真にムカッとしながらも、自分が悪いので怒るに怒れないでいた。

「ごめんなさいって!ちょっとこの頃あの自販機で鍛えちゃったもんだから……」

⏰:08/04/26 23:23 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#671 [向日葵]
意外に蹴るのが楽しかったり……って何言ってんだ私。

「だからごめんなさい!機嫌直して。ね?」

「小首傾げるのは反則だろお前……」

別に狙ってやった訳じゃないけど効果はあったみたいだから良しとしよう。

真はため息をついて、苦笑いすると、私のおでこにキスした。
本来なら「おわぁっ!」とかって飛び退きそうなのを、ぐっと我慢して耐える。

嫌な訳じゃないけど目をギュッと瞑らなければ急なこういう動作には恥ずかしさを隠せない。

⏰:08/04/26 23:29 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#672 [向日葵]
そんな私を気にした風もなく、真はクスリと笑って車のドアを開けてくれた。
ドアを閉め、真も乗り込むと、約2時間ほどの場所までの旅が始まった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「つーいたぁー」

車を降りて、大きく背伸びをする。
着いた旅館は意外と大きく、周りは山や田んぼがあった。

田舎だけど、お土産屋さんのお店も多数あるので、お客さんはそれなりにいた。

真が荷物を持って、空いた手で私の手を握る。

⏰:08/04/27 00:21 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#673 [向日葵]
そんな当然のようにやってのけるのが、なんだか心温まって頬を緩めた。

「チェックインしたら、そこらを散策するか」

真も楽しそうに言うから、笑顔のまま私は頷いた。

……それにしても、先ほどから真に視線が集まっているのが分かる。
しかも主に女性から。
その視線が、後に私にくる。

そうなのだ。
私の隣にいる人は、学校では仮面を被り、顔は良いものの人気がない。
でも今は仮面を被る必要はないから素なのだ。
つまり……モテてしまうバージョン。

⏰:08/04/27 00:27 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#674 [向日葵]
「あの子彼女?」

「可愛いけどまだ子供っぽくない?」

「なんであのカッコイイ人にあんな子が?」

うるっさいなー。
そんなんだからアンタ達に男が寄ってこないんだよ。

と悪態づきながらもショックは隠せないでいる。
私は真の手をギュッと握った。

「ん?どうした?」

「……なんでも」

真は「ふーん」と言うと、急に手を引っ張って耳に息を吹きかけた。

⏰:08/04/27 00:30 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#675 [向日葵]
「やぁぁ!何すんのっ!」

握られていない方の手で吹きかけられた耳を塞ぐ。
鳥肌がたつも、顔は真っ赤になった。

「何か騒いでもらいたかったから」

どういう事だそれは……っ!

*******************

みかげは旅行の緊張感も忘れて楽しそうにしている。

けれど問題発生だ。

みかげに男の視線が集まっている。
そしてそれは後に俺へとやって来る。

⏰:08/04/27 00:34 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#676 [向日葵]
「あの子ヤバイなぁー……」

「ってか隣彼氏?違うよな。多分兄弟だよな?」

「兄弟で手繋ぐ訳ないだろ。でもなんであんな奴?俺の方が良くね?」

出来る事ならばみかげを見ている奴を目潰しして、ふざけた事言ってる奴の口をひん曲げてやりたい所だが……。
もっと効果的な事をしてやろう……。

と頭の中で黒い事を考えていれば、急にみかげが手をギュッと握ってきた。

「ん?どうした?」

⏰:08/04/27 00:38 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#677 [向日葵]
聞けばみかげは困ったような、恥ずかしいような表情を浮かべて前を向いたまま呟いた。

「……なんでも」

あぁ……なんだこの可愛い生き物は……。
いっそのこと、ガラスケースに入れておきたいくらいだな……。

頭の中がやましい気持ちで一杯になったところで、俺はニヤリと笑ってみかげの手を引っ張り、近づいた耳に息を吹きかけた。

本当はさっきの男共に見せつけてやるつもりでキスしようかなとか考えたけど、せっかく楽しんでるみかげに警戒されては困るのでからかう程度で済ます。

⏰:08/04/27 00:42 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#678 [向日葵]
しかし、それでもみかげには刺激が強かったのか、顔を真っ赤にして手で繋いでいても離れれるところまで離れた。

「やぁぁ!何すんの!」

そこまで叫ばなくても……。

心の中で苦笑しながらも、周りにいた男共には効果はあったみたいなので良しとする。

「何か騒いでもらいたかったから」

その後、太股にみかげ曰く「自販機で鍛えられた蹴り」をお見舞いされた事は言うまでも無い。

⏰:08/04/27 00:48 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#679 [向日葵]
*****************

一連の事があり、チェックインを済ませた私達は予定通り散策を始めた。

よく見れば雪が所どころ残っていて、冬だなぁ……と改めて実感する。

「みかげ、寒くないか?」
「大丈夫。むしろ寒いの好きだし」

すると真は私の頬を指先で触った。

「でも冷たいな……。暖かい飲み物でも買うか」

「ここの自販機は蹴らなくても大丈夫だといいんだけど」

⏰:08/04/27 00:52 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#680 [向日葵]
真はクスクス笑って私の手を引いた。
抵抗する事なく、それについて行く。

少し歩いた所に、自販機はあった。
先客がいるので、少し離れたところで待っていようとしたけれど、明らかに様子がおかしかった。

先に来ていた女性1人が、せわしなくポケットをあさったり叩いたりしだしたのだ。

真と何事だろうと顔を見合わした時、2人の会話がこちらに聞こえてきた。

「マジありえない!何で無いのー!?」

「あたしの財布は旅館に置いてきたから無いし……もう諦めようよ」

⏰:08/04/29 18:46 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#681 [向日葵]
「やだ!今飲みたいんだもん!」

どうやらポケットをあさっている方の人の財布が無いらしい。
真と私はまた顔を見合わせた。
すると真が私の手を離して財布を取り出した。
小銭入れから200円出すと、その女性の元まで歩いて行った。

「お嬢さん方、お金無いならどうぞ」

2人はびっくりしながらも、真にみとれていたのを見逃さなかった。
……特にダダこねてた方……。

嫌な予感が一気にしだす。

⏰:08/04/29 18:52 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#682 [向日葵]
ダダをこねてた方が真から貰ったお金を大事そうに両手で持って、白々しいくらいの笑顔で真に向き直った。

「ありがとうございます!あたし小恵子(サエコ)って言います!」

聞いてないから。

「良かったら一緒に散歩しませんかっ!」

「お誘い嬉しいけど、連れがいるから」

と真は親指を私の方へ向ける。
小恵子とか言う子は真の向こうから私を見ると、密かに鼻で笑ったような表情を(私にだけ)見せて直ぐに真にまた愛想のいい笑顔を向ける。

⏰:08/04/29 18:57 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#683 [向日葵]
「妹さん?なら一緒でも構いませんよ」

殴られたいのかコラ。

「違う。婚約者」

その言葉に、2人は愚か、私までもが驚いた。

こ……。

「婚約者ぁぁ!?」

小恵子が叫ぶ。

叫びたいのはこっちだ。
と言うより、婚約者だったんだと改めて実感した。
結婚の約束はしたものの、婚約者と言う言葉は思いついていなかった。

「行くぞ」

⏰:08/04/29 19:01 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#684 [向日葵]
私の元に帰って来た真は私の肩を抱いて歩き出す。
私はさっきまで小恵子に向けてた敵対心の炎を一気に消し、代わりに温かい感情がこみ上げてきて微笑んだ。

妹とか子供とか言われても関係ない。
真はありのままの私を求めてくれてる。
だったらいいじゃないか。

私は自分にそう言い聞かせた。

「妬いた?」

流れている川の上に橋が架けてある。
私達はそこで立ち止まり、景色を楽しんでいる。

「……何を」

⏰:08/04/29 19:06 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#685 [向日葵]
「妬きもち」

「……妬かない」

嘘だけど。

でも真はお見通しなのか、喉の奥でクククと笑う。
見抜かれた恥ずかしさに、私は口を尖らせて川をじっと見る。

そんな私を覗き込む。
今は見られたくないのにそんな事するもんだから、私の顔は不本意にも赤くなる。
それを見て、真は楽しそうにニヤリと笑った。

「悪趣味……」

「別に結構」

⏰:08/04/30 00:17 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#686 [向日葵]
ひょうひょうと言う真に悔しさを感じる。

「真はどうせ自分に自信あるから妬きもちを妬いたことすらないでしょうね」

「そんな事ないっつーの。じゃなきゃプール行った時不機嫌になるかよ」

きっと歩の事だと思った。
私はまだあの時、真の私に対する気持ちを疑ってたから、妬きもちと判断するのは難しかった。

それでも、妬いてくれてたんだと思えば嬉しかった。

「どうして……。……」

言いかけて私は黙った。

⏰:08/04/30 00:22 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#687 [向日葵]
「ん?何?」

聞けない……。
「どうして私が好きになったか」なんてそんな乙女チックモード全開のセリフ、私にはレベルが高すぎて無理だ……っ!

黙り込んでしまった私に更に近づいて、真は聞く。

「何?言ってみろよ」

無理です。

「絶対に笑う……」

「大丈夫だって」

「いやだー……」

真は「んー」と唸ってから私の肩を抱き寄せた。

⏰:08/04/30 00:26 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#688 [向日葵]
「言わないとキスする」

「は!?」

驚いてる私を無視して、真の顔が徐々に近づく。
近づいてくるごとに私は焦った。
誰に見られてるか分からない外でキスされるより、笑われた方が絶対マシだと思った私は、だけど近づいてくる真に恥ずかしさを隠せず、目をギュッと瞑って言葉を搾り出した。

「わ、“私のどこが好き”って聞きたかっただけ……っ!」

近づく気配が止まるのを空気で感じた。
そろりと片方の目を開ける。

⏰:08/04/30 00:31 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#689 [向日葵]
真はうつ向いていた。
どうかしたのかと心配になったけれど、何故そうしているか分かったので、半目にした。

「笑わないんじゃなかったっけ!?」

「だ……だってよ……そんな事聞いてくるとか、みかげからは想像つかなかったし……ククク……」

だから嫌だったんだ。

軽く頬を膨らませて、ふいっとそっぽを向く。

笑うだけ笑ってればいいさ……。

「そういうトコかな」

⏰:08/04/30 00:35 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#690 [向日葵]
「何の話?」

そっぽを向いたまま喋る。

「みかげのどこが好きかって話。いちいち反応が可愛いくて、実は物凄く寂しがりなところ。あとは……理由なんかなく、ただ好きと思っただけ」

素直に言われると逆に恥ずかしい。
これだからタラシは……。

と思っている半面、少し嬉しかったりもしている。

真は指先で私をこちらに向かせると怪しい笑みを浮かべた。

⏰:08/04/30 00:40 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#691 [向日葵]
「満足?お姫様」

「ひ……っ姫なんかじゃないんだからっ!」

「あーでも、みかげがそう思ってくれてるほど愛されてるんだなー俺」

愛されてるって……。

「べ、べべ別に深い意味なんて無いんだから!」

「心配しなくても俺も充分みかげを愛……」

「わー!頼むから愛してる”とかそういう寒い事言うなー!!」

言い合いはしばらく続いたのだった……。

――――――……

⏰:08/04/30 00:44 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#692 [向日葵]
旅館に戻った私達は、そろそろお風呂でも入ろうという事になり、それぞれ用意をしていた。

天然温泉、しかも露天と言う事もあり、私の心はウキウキしていたらこの男は……。

「混浴無いんだってー。残念だなーみかげ」

「……例えあっても入らないから」

「将来の為に慣れといたら?」

「殴られたいの?」

そんな脅しに動じず笑う。
私は脱力した。

⏰:08/04/30 00:48 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#693 [向日葵]
何で真はいつも余裕なんだろう……。
たまには焦って青くなったりするところを見てみたいものだ。

用意が出来たので、私達は温泉に行く。

女湯と男湯の暖簾があり、私達はそこで別れる。

「じゃ、また後で」

「きっちり洗ってこいよー」

ニヤリと笑ってから真は男湯へ。

さてここで問題。
私はどちらの下着を持って来たでしょーか。

⏰:08/05/03 02:17 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#694 [向日葵]
正解は…………ミントグリーンの方。

ごくりと生唾を飲んで「いざ!」とお風呂場へ。

露天なので外の景色が見える。
山のふもとにある家の明かりがなんだか温かく感じ、自然の匂いがして、冷たい空気がより私をワクワクさせた。

熱くもなく、ぬるくもない温度はとても気持ち良い。首まで使って、体の中の空気を全て吐き出すくらい深呼吸する。

このまま寝てしまいたい……。

お湯に身を任せながら目を瞑った。

⏰:08/05/03 02:22 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#695 [向日葵]
[きっちり洗ってこいよー]

真の言葉を思い出す。
目を開けて、ちらりと旅行用の小さなシャンプーやらボディーソープやらを見る。

ま……まさかぁ……!ね……。

頭が妄想でいっぱいになる。

するとまた小さい多香子が耳元に現れた(気がした)。

<ホラみなさいよー。やっぱり松川そういうつもりじゃなーい。泊まりで何もない事はないんだからね!>

⏰:08/05/03 11:34 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#696 [向日葵]
で、でも……。真はそんなつめりで言ったんじゃなさそうだし。
私のただの思い違いであって……。

<あーまいっ!みかげはいつも考えがあまい!>

ぎゃんぎゃんミニ多香子に叱られていると、今度はまた小さい私が現れた(気がした)。

<アンタ真がそんな節操なしと思ってんの?いらん事は考えず、旅行を楽しめばいいじゃない>

そ、そうだよ。
いくら真がスケベで女タラシでも、人気持ちぐらい考えてくれるしっ!

⏰:08/05/03 11:39 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#697 [向日葵]
<何よ!その考えがダメなんだって!>

<アンタは考えすぎなのよ!>

あーもう……分かったから……。
とにかく……。

「洗っておけばいいんでしょぉー!!」

そこらにいた人の不審な目もなんのそので私は洗い場へ行った。
そこでふと顔を見る。
ため息をつきたくなる。

鏡を見た自分は、まだ恋愛すら知らなさそうな幼い顔だった。

こんなだから、妹って見られちゃうのかな……。

⏰:08/05/03 11:43 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#698 [向日葵]
左手の銀の輪がはめてある指を見て、ギュッと握る。

そろそろ化粧とかした方がいいのかな……。
そうすれば、もっと大人に近づいて、真の隣にいてもお似合いに見えるのかな……。

――――――……

旅館で用意された浴衣に着替えて外に出れば、真が既にいた。
しかしそれよりも私は胸に衝撃が走った。

「お、来た来た。女ってやっぱ風呂長いんだな」

笑いながら言う真の言葉なんて耳に入らなかった。

⏰:08/05/03 11:47 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#699 [向日葵]
適当に拭かれた濡れている髪は軽くかき上げられ、軽く滴る水滴は首筋を通り流れていっている。
面倒くさくなったのか眼鏡を外し、最近買ったと言っているコンタクトをつけてるらしい。
そしてなんと言ってもその浴衣を着こなしている姿の色っぽさ……。

湯上がりで良かった。
きっと私の顔は、暑さとは違う熱で赤くなっている。

「みかげ?どうしたぼんやりして」

真が近づいて来たので、勢いよく壁に張り付く。

「な、なんでもない!お腹が減っただけ!」

⏰:08/05/03 11:52 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#700 [向日葵]
「そうだな。部屋戻って食べるとするか」

部屋に戻れば、中居さんが食事を用意してくれてる所だった。
そして何気なく辺りを見渡して、更に私は動揺する。

寝室に敷かれた布団の位置が近いのだ。

無い!これは無い!

「ではごゆっくり……」

中居さんの言葉と共で私はハッとした。

「よし!食うか!」

真は既に座って、用意されたビールを開けようとしていた。

⏰:08/05/03 11:56 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#701 [向日葵]
※訂正

>>696

×そんなつめり
○そんなつもり

⏰:08/05/03 11:58 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#702 [向日葵]
私も気を取り直して、机をはさんで真の正面に座り、「いただきます」と言ってから豪華な食事を食べ始めた。

その美味しい食事に、変な意識は取れ、普通に食事を楽しんでいた。

なんてったってこのカニ!!
美味しすぎる……っ!

感動して食べていると、真がクスクス笑った。

「美味そうに食うな。そんなに良い?」

「だってカニなんて滅多に食べないもん」

「安月給だしな」

⏰:08/05/03 12:02 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#703 [向日葵]
「自分で言っちゃうんだ」

2人で笑う。
このままの時間がすぎればいいと思った。

しかし……。

「あ、みかげ、ちょっと醤油とって」

「あ、ハイ」

と真に渡す時、手が触れてしまった。
手を繋いだりするくせに、この雰囲気に敏感になってるせいか、パッと醤油差しを落としてしまう。

「わー何やってんだ!」

「ご、ごめん!」

⏰:08/05/03 12:06 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#704 [向日葵]
電話でもすればいいのに、動揺した私は「フロントに行ってくる!」と行って部屋を出る。
するとそんな私を止める真も部屋を出る。

出た所で、私は真に腕を引かれた。

「みかげ、どうした。部屋にあるティッシュでも使えばいいだろ」

「や……あの……」

「……なんか緊張してる?」

言い当てられて黙る。

「わ、私が意識しすぎなだけ。真はそんな事しないって分かってる……」

⏰:08/05/03 12:10 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#705 [向日葵]
ふいに、真が私を抱き締めた。
薄い浴衣は容易く体温が伝わってしまうと同時に、自分の鼓動も伝わってしまう気がした。

そんな私を、真は優しく背中を撫でて落ち着かせる。

「大丈夫だから……本当に何もしない。こんなみかげに無理強いしようとは思わないから」

そう言ってくれてる真なのに、私はずっと1人で舞い上がっている。
そう思えばなんだか惨めな気がした。

私何やってんだろう……。

⏰:08/05/03 12:14 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#706 [向日葵]
アンカーしておきます(。・ω・。)

良かったらお使い下さい


>>2-100
>>101-200
>>201-300
>>301-400
>>401-500
>>501-600
>>601-700

⏰:08/05/03 12:16 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#707 [向日葵]
真の腕に抱かれて安心する筈が、私はドンドン落ち込んだ。

1人で舞い上がったり焦ったりして真を困らせている自分が情けないとすら思った。
しかし、落ち込んでるくせに何故か沸々と怒りに満ちてくるのが私であって、そもそも真がベタベタしたりするくせにこんな時だけ理性保ったりするからこちらが我慢してるんじゃないかとか、実はそう言いながら……と身構えなくちゃならないんだ。

そしてこんなに色々考えてるのに本人は涼しい顔でいるってどういう事だよっ!

⏰:08/05/05 01:32 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#708 [向日葵]
私は逆ギレした怒りをそのままにして真と距離を取った。
いきなり私が突き放したので真はどうしたのかと困った顔をしていた。
が、今の私にはそんなもの目に入らなかった。

「アイス食べたい」

「はぁ?この寒いのに?」

「食べたいったら食べたいの今すぐ!」

まるでダダッコ。
最悪だ。

真は呆れたようにため息をつく。
そのため息が、私の胸をグサリと刺す。

⏰:08/05/05 01:35 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#709 [向日葵]
きっと楽しくなるだろうと思っていた旅行が、私のせいで楽しくないものに変わっていってる気がする。

どうして私はこうなんだ……。

そして更に追い討ちをかけるように、売店に嫌な人物がいた。

「あ、昼間のお兄さん!」

アイツだ。
小恵子だ。

馴れ馴れしく寄って来て、私なんかいないみたいに真に媚びた視線を送るものだから、私のイライラは段々と頂点へ向かって行った。

⏰:08/05/05 01:39 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#710 [向日葵]
「何してるんですか?買い物で?」

「コイツが、アイス食べたいと言うもんでね」

小恵子は興味無さそうに私を見てからまた白々しいほどの笑顔で真に向き直る。

「もしかしてまだ未成年?」

「えぇ。でも可愛いものでね」

小恵子は最後の言葉だけ聞き流したようだった。

「成人でしたらお兄さんのお酒の相手も出来たでしょうに……。どうです?婚約者さんさえ許して頂けるなら、私の部屋きません?」

成人……大人……。
幼い事がそんなにダメな訳……?
仕方ないじゃない。
どうあがいても、私は真と同い年になれる訳がないのだから。

⏰:08/05/05 01:45 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#711 [向日葵]
小恵子は用事が済んだのか、真に部屋番を教えるとさっさと帰っていった。

取り残されたのは、真と私のみ。

アイスを入れてる冷凍庫の音がやけに耳に入ってきて耳障りだった。

アイスを買った私はアイスを入れた袋を持ってさっさと部屋へ戻った。
乱暴に机に袋を置いて、勢いよく寝室へ繋がるふすまを開けた。

「みかげ。アイス食べないのか?」

聞いてくる真の手を引っ張り、寝室へ誘(イザナ)う。

⏰:08/05/05 01:48 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#712 [向日葵]
無理矢理座らせた後、私も座り、浴衣の上に羽尾っていたものを脱ぎ捨てた。
帯に手をかけた瞬間、真にその手を掴まれた。

険しい表情をしていた私と同じくらい真の顔も険しかった。

「何してんの?自分がしようとしてる事分かってる?」

「分かってなかったらしてない。真だって分かってるなら何で止めるの?」

「……何をムキになってる」

一段階真の声が低くなる。
それに少しうろたえながらも、私も負けず劣らず言い返す。

⏰:08/05/05 01:53 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#713 [向日葵]
「真だって、どうせ飽々してんでしょ?私があまりに幼稚だから手が出せないとか思ってんでしょ?」

「落ち着けみかげ。そんな事思っちゃいない」

「いいね冷静になれるだなんて。ここに来て何回私が子供扱いされてたか真知ってる!?その度に自分が惨めになっていくのを味わってるの知ってる!?」

私は真の手を払い、帯を取り始めた。
緩めば浴衣がはだけ、買ったばかりのミントグリーンの下着がちらりと見えた。

いずれこうなるならいつしても同じだ。

⏰:08/05/05 01:57 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#714 [向日葵]
「早くしてっ」

「みかげ。ちゃんと着ろ」

「相手にしないんだね。やっぱり私の事なんかいいんじゃない!」

「じゃあこうして欲しいのかよ!」

天井が見えた。
真が私の上に覆い被さる。
片手で両手を塞がれ、身動きがとれなくなった。
と同時に、真が私の口を塞いだ。

いつものような優しさの欠片もないキスは、次第に私を冷静にさせ、恐怖を覚えさせる。

⏰:08/05/05 02:00 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#715 [向日葵]
「いや……っ!」

真の唇が首筋をなぞる。
鳥肌がたった。

「真やめて……っ」

「お前が望んだんだろ?」

「やだ……っ、嫌だぁ……!!」

ついに泣いてしまった。
すると真は私を解放してくれた。
そして両方の頬をパシリと叩く。

「そんなやっつけでやって、俺が本当に喜ぶと思ったか」

それだけ言うと私から離れ、寝室を出ようとした。
私は急いで起きて、必死に真を止める。

「し……真待って……!待ってったらぁ……っ!!」

⏰:08/05/05 02:05 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#716 [向日葵]
とっさに真の浴衣の裾を引っ張る。
真は突然の私の攻撃に足を取られてモロに顔からこけた。

「――っ!!いってーな!鼻血出たらどうしてくれるつもりだ!」

「ご、め、んなさ……い。怒らないで……行か、ないで……」

掴んだまま片手で目を擦る。

馬鹿な事をしたと反省する。こんな事しても真が喜ばない事分かってたのに私は試した。
真は本当に私の事を思って行動してくれるのかと。

⏰:08/05/05 02:09 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#717 [向日葵]
結局真は大丈夫だと信じていながら信じきれなかったのは自分だ。
自分に負けて、私は真を傷つけた。

きっと真は行ってしまう。
こんな最低な奴と旅行に来るんじゃなかったって思ってる。

そう思いながら泣く。
こんなのズルイ。
でも真に呆れて欲しくないと願えば、涙は後から後から流れてきた。

ふと、肩に暖かさが宿る。
視線を動かせば、浴衣の上に羽尾っていたものが肩からかけられていた。

⏰:08/05/05 02:13 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#718 [向日葵]
そして、真はそこにいた。目の前にいた。
その顔は、まだ怒っているけれど、激しい怒りではないみたいだった。

「俺はいつお前に無理しろと望んだ」

「望んで……ない……」

真は私の両頬をつねって上を向かせる。

「だったら2度とこんなふざけたマネはよすんだ。分かったか?」

「分かった」と弱々しく呟くと、ようやく真は険しい表情を崩し、柔らかく微笑んだ。

「馬鹿だねーお前は。飽きる訳ないのに」

⏰:08/05/05 02:17 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#719 [向日葵]
軽く私の服装を正してから、真は私を優しく抱き締めた。
だから私は余計に切なくなって、真の胸に顔を埋めてまた泣いた。
そんな私を、真は優しく諭し、なぐさめる。

「誰がなんと言おうと、俺が良ければいいの。俺から言わせれば、子供だなんだって上っ面しかみない奴の方がよっぽと幼稚だと思うぞ」

それでも、私が真に近づきたかったのだ。
皆が納得してくれるような2人になろうと、慣れない事に背伸びしようとしてたのだ。

でも、そんな私の気持ちを、真はよく分かってくれていた。

⏰:08/05/05 02:22 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#720 [向日葵]
「俺は純粋なみかげが好きだから、無理しなくていいんだ。ちゃんと全部受け止めるから、1人で頑張ろなきゃいけないなんて傷つかなくていいんだ」

そんな事言われてしまえば、胸の中に溜っていた窮屈な思いが徐々に消えていき、私は更に泣いた。

何度も「ごめんなさい」と言った。
その度に真は「もういいよ」と言いながら頭を優しく撫でてくれた。

「怖い思いさせて悪かったな」

「それは、私が悪いんだもん……」

「それでもごめん……」

⏰:08/05/05 02:27 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#721 [向日葵]
今度は優しいキスをする。
優しいのに、体の芯が溶けてしまいそうになる。

そして実感する。

真は私の全てを愛してくれてるんだと。
焦った自分は本当に馬鹿だったのだ。

私は安堵のため息を深くした。

*******************

少し溶けてしまったアイスをみかげと2人で食べた後、みかげは泣き疲れて寝てしまった。

「一緒に寝て欲しい」と珍しくみかげが甘えてきたので、腕枕をしながら寝かしつけた。

⏰:08/05/05 02:33 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#722 [向日葵]
※訂正

>>720

×頑張ろなきゃ
○頑張らなきゃ

⏰:08/05/05 03:10 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#723 [向日葵]
*アンカー*

>>706にあります(。・ω・。)

⏰:08/05/05 12:35 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#724 [向日葵]
まだ少し濡れたままの髪の毛を撫でてからこめかみにキスを落とす。
それからそっとみかげの頭から腕を抜いて、俺は1人部屋を出た。

出て向かった先は205号室。
あの小恵子とか言う女の部屋。
ノックをすれば、すぐに小恵子が出てきた。
嬉しいと言う感情を隠す事なく喜んでいる姿に心の中で腹抱えて笑った。

「いらっしゃいませ!どうぞ中に!」

「お友達も一緒でしょ?それは悪いよ。それに……」

小恵子の耳に息が吹きかかるようにしながら甘く囁く。

⏰:08/05/07 23:43 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#725 [向日葵]
「君と2人っきりで話がしたいな……」

間近で優しく微笑めば作戦終了。
案の定罠にかかった小恵子は俺が導くままに人気の無い所へついてくる。

立ち止まって、今度は少し色っぽい雰囲気を醸し出しながら微笑む。
そうすればこれから何が起こるのかの妄想が膨らんで何の疑問ももたなくなるだろう。

すると小恵子は顔を桃色に変え、恥じらうように俺を見つめた。

トントンと事が進んでくれるので心の中での俺の腹筋はピークを迎えそうだ。

⏰:08/05/07 23:48 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#726 [向日葵]
俺は笑顔のままゆっくりと彼女を壁際まで追い詰める。
片手をゆっくり壁につければ、お互いの距離は短くなった。

小恵子は恥ずかしそうに、でも嬉しそうに口を開いた。

「だ、駄目ですよお兄さん……。貴方には婚約者がいらっしゃるでしょ」

「えぇ。でも、君には言っておきたい事があったもんでね……」

表情崩さず、俺は小恵子の髪の毛をぐっと後ろに引っ張り、首がのけぞるような形にさせた。
小恵子の顔は一変し、驚いたように俺を見た。

⏰:08/05/07 23:53 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#727 [向日葵]
俺は笑顔を消し去り、冷たく彼女を見つめ、いつもの2倍は低い声で言葉を発した。

「いいか。今度みかげ泣かしたりしたら今みたいにこんな生ぬるいのんじゃすまねぇ。次はその顔変形させてやるからな……」

パッと手を離せば、小恵子は腰が抜けたのかズルズルと座り込んだ。
そんな彼女に冷笑を浮かべながら俺は告げる。

「ワガママだけで思い通りになると思ったら大間違いだ。世間知らずも大概にするんだな」

「な……っ、アンタ……二重……」

“二重人格”とでも言いたいのだろうか。
俺の豹変ぶりの恐怖と驚きで上手く喋れないみたいだ。

⏰:08/05/08 00:00 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#728 [向日葵]
まぁ……コイツにどう思われようと俺にメリットはないからどうでもいい。

「好きなように妄想すればいいさ。明日以降は2度と会わないだろうから最後に言っておいてやるよ。俺が優男面してんのはアイツの前だけだよ」

それだけ言って、小恵子を置いたままその場を立ち去った。

部屋に戻ってくると、窓辺にみかげが立っていた。
月明かりで青白くなっている為少しビビった自分が情けない……。

俺の気配に気づいたみかげは振り向くとすぐに俺の元へやって来て抱きついた。

⏰:08/05/08 00:05 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#729 [向日葵]
寝ていたせいか、みかげの体温が温かく、外へ出て少し冷えた俺の体が心地良さを感じていた。

「どこ行ってたの……?」

「少し散歩」

「側にいて……1人にしないで……」

「しないよ……」

頬に手を添えて、唇を寄せようとすると急にみかげの体が傾いたので慌てて受け止めた。

見れば規則正しく寝息をたてて寝ていた。
どうやら寝ぼけていたらしい。

⏰:08/05/08 00:10 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#730 [向日葵]
呆然としながらも、おかしくなって喉の奥で笑ってからみかげを布団まで運んだ。
そして今度は朝まで離れないようにみかげをしっかり抱いて、俺も目を瞑った。


*****************

―――――――……

真が小恵子を脅したのも、昨日寝ぼけていただなんて知らない私は穏やかな朝を迎えた。

目をショボショボさせながら開けば、真がそこにいてホッとした。

「真。起きて……」

⏰:08/05/08 00:15 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#731 [向日葵]
真は少し唸ってから私をキツク抱き寄せる。

ちょ……っ!
浴衣!薄い!そんなに密着しないで……っ!

「真……っ!朝だっつーのっ」

「まだチェックアウトまで時間あんだろうよぉ……もう少し寝たい……」

「じゃあ離して」

「なんで?」

なんでってアンタ……。


朝風呂入ってみたいなーなんて思ったりしてる訳で。
だって露天風呂だよ!?
朝も楽しまなきゃ駄目っしょお!!

⏰:08/05/08 00:19 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#732 [向日葵]
「やりたい事あんの!」

「俺もやりたい事ある」

と真は私の上に覆い被さってきた。

「朝のキスしたい」

「はぁ!?」

「いいでしょ」

「や、ちょっと待ってぇぇぇ!!」

――――――
――――――――……

「お、終わり!?」

次の日、多香子にまたもや廊下へ呼び出された私は、「旅行中どんなラブラブな事があったか」を聞かれて、1つ1つ淡々と答えた。

⏰:08/05/08 00:23 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#733 [向日葵]
そうこれだけ。
多香子が想像している事なんてこれっぽちも無かったのだ。

「だ、だって下着は!?しかもなんの為の1泊2日!?意味がないじゃない……っ!」

そんな事言われてもタイムマシーンがある訳でなし。

それに、改めて真が私を大切にしてくれている事が分かった。
布団じゃなく、人肌の温かさは私の心さえ温かくしてくれた。

「皆が皆、そうなればいいってもんじゃないの。私達は私達の付き合いがあるんだから」

⏰:08/05/15 22:08 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#734 [向日葵]
そう言って、密かに薬指にはまっている銀の輪を撫でた。
するとアナウンスが流れてきた。

<葛みかげ、葛みかげ。至急職員室まで来なさい>

「あれ?今の松川だよね?珍しい。準備室じゃないんだ」

私も「あれ?」と首を傾げた。
珍しくも学校の用事で私を呼び出したのだろうか。

多香子と別れて、私は職員室へと向かった。

前まで来ると、既に真は廊下へ出ていた。

⏰:08/05/15 22:12 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#735 [向日葵]
外面装備なので、学校的な用事らしい。
近くまで行くと、平たくて黒い物体で頭を軽く叩かれた。

「日直。仕事忘れんじゃない」

あぁ。なるほどね。

「すーいませーん」

頭に置かれている日直日誌を受け取り、回れ右をして帰ろうとする。
と、腕を引かれた。

「ちょっとこっち来て」

小声で言われ、導かれるがままに階段がある場所まで連れて行かれた。

⏰:08/05/15 22:16 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#736 [向日葵]
真は外面を少し崩して普段私に見せる顔を覗かせたと思うと、額の髪の毛に指を埋め、大きなため息をついた。

眉を寄せて、何事かと見つめる私に気づいた真は苦い顔をしながら私に言った。

「今日、早く家に帰ってくれないか。それと、なるべく可愛い格好をしてくれ」

「はぁ……早く帰る事は出来るけど……。なんで可愛い格好?」

再びため息をつく。

「両親が、今日来るんだと」

⏰:08/05/15 22:21 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#737 [向日葵]
頭が一瞬にして真っ白になった。
そして時間も止まった気がした。

え、今なんて?
リョウシン?
両親……両親……つまり、真のお父さんと、お母……さん……。

え。

「え――――っ!!」

響く構造になってる階段付近に、私の声があちこちにエコーしてはねかえる。

真は私の予想外の大声に耳を塞ぎ、予想通りの反応に申し訳なさそうな顔をした。

⏰:08/05/15 22:24 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#738 [向日葵]
「な、なななんで!?今日平日だよ!?しかもなんで向こうから!?普通こっちからだし……っ!」

「とりあえず無理だと思うが落ち着いてくれ……」

「いや無理だって!」

「うん分かってるから、ちょっと落ち着く努力して……」

何度も深呼吸を繰り返すも、どうにもこうにも落ち着かない。
頭をぐしゃぐしゃにして、もう1度来そうなパニックの波をなんとか抑えようとする。

そもそも真に世話になってる立場で、しかも結婚申し込まれた奴が1度も挨拶しないって物凄く無礼に当たるんではないのだろうか……っ!

⏰:08/05/15 22:30 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#739 [向日葵]
ほんっっとに丁寧に礼儀正しくしなければ、荷物勝手にまとめられてポイッと放り出されたり……。

嫌な予感が私の頭の中を駆け巡る。
あわあわとなっている私を、真は応接室に引っ張って行った。
階段ではやはり分が悪いと思ったらしい。

ピシャリとドアを閉めて私の両肩に手を置く。

「ゴメン。思い立ったら吉日で動いてる奴らだからさ……その……うん」

真も急な訪問に同様しているらしく、いつもの饒舌具合はどこへやら。

⏰:08/05/15 22:35 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#740 [向日葵]
「何か好きな食べ物とか用意した方がいい!?」

「いやそれより……お前に聞いておきたい事がある」

何だと首を傾げると、真は切なげに私を見つめた。
少し胸の奥が高鳴る。

「親父達に、結婚の話をしようと思う。だから聞きたい。お前は、俺と結婚してくれるんだな?」

「は……?何言ってんの。当たり前でしょ。今更?もしかして真はしたくないの?」

「違う。もしまだ気持ちが定まってないなら、他の日にするってだけ」

結局する事には変わりないのだからいつ言ってもいいのでは?と思った自分が恥ずかしくなった。

⏰:08/05/15 22:41 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#741 [向日葵]
結婚するという決意が揺るがない自分が、いかに真の側にいたいかを示している。

そう思えば顔が赤くなってしまう。

急に私の顔が赤くなったので、真は不思議そうに私の顔を覗き込む。

「何。どうかした?」

「な、なんでもないっ!」

すると、真の両手が私の顔を包んだ。

「俺と出会ってくれて、ありがとう……」

愛しそうに見つめながら言うものだから、切ない気持ちが胸に広がっていった。

⏰:08/05/15 22:44 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#742 [向日葵]
唇を重ねて、お互いの気持ちが真実である事を確かめる。

「……。あ、あのっ!」

真を突き離す。
真は不服そうな顔をしながら少し距離を取っただけでまだそこにいた。

「何?」

「何じゃないっ!キスが長い!ここは学校なんだから……」

「スリルがあっていいじゃん。それに、まだ足りない……」

再び唇を押しつけられて、離れる時は酸欠で上手く立ってられなかった。

⏰:08/05/15 22:49 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#743 [向日葵]
真剣な事を言ったと思ったらこれなんだから……。

酸欠で立てない私を支えながら真は笑う。
ボディーブローぐらいを決めたい気持ちにかられるのに、今は力が入らないから手をつねるので精一杯だ。

「じゃ、今日よろしくな」

満足そうに言う。

「やっぱり結婚取り消そうかしら……」

「それは困る。」

笑いながら真は言った。

「パニックがおさまったみたいで良かったよ」

⏰:08/05/15 22:52 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#744 [向日葵]
感想板が新しくなりました
良ければ覗いてください

bbs1.ryne.jp/r.php/novel/3624/

⏰:08/05/16 19:46 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#745 [向日葵]
パニックおさめる方法なら他にもあるだろうとツッコミたいけど、今は力が入らない。

とりあえず、真が部屋から出る前に後ろから蹴り飛ばしてやった。

真と別れて、教室に戻る。
渡された日誌に日にち、担当者を書き終えると帰って来た私に気づいた多香子がやって来た。

「おかえり。あぁ今日みかげ日直だっけか。だから普通に呼び出したのね」

まぁ他にも用事はあったんだけどね……。

これを言えばまた多香子がなんやかんやで今日は夜盛り上がるかもよ!とか言って下着第2弾を買わされそうなので黙っておく。

⏰:08/05/17 21:47 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#746 [向日葵]
「多香子。今日ちょっと掃除サボらせて。早く帰らなきゃならないの」

「え、なになに」

黙って帰らせてくれないのが多香子だ……。

ため息をつく。

「豚肉が安い日だから真が早く行けってうるさいの」

もちろんこれは嘘。
しかし多香子は目をキラキラさせる。

「若奥さんは大変だねー」

もうコイツの色ボケ思考をどうにかしてくれ……。

⏰:08/05/17 21:51 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#747 [向日葵]
しかしそれだけ言えば多香子はサボりを承諾してくれた。
あとは、家に帰るまでに私の心の準備をしなければならない。

18歳で結婚の挨拶かぁ……。
もし母さん達が生きていたならどういうだろう。
心から祝福してくれるかな?

窓から外を眺める。
いつもの青空が、いつもより鮮やかに見えた気がした。

母さん……私、とても幸せだよ……。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

制服以外では滅多にはかないスカートを着て、落ち着こうと思いながらリビングを行ったり来たりしていた。

⏰:08/05/17 21:58 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#748 [向日葵]
時刻は6時。
真はまだ帰っていない。

早く帰って来いと念を送る。
すると念の効果か、鍵を開ける音が聞こえた。

ホッとして、玄関に駆けて行った。

「おかえ……!り……」

語尾が小さくなったのは真の後ろに続いて入って来る人がいたからだ。

「ただいま。外であったから連れて来た」

私は真のお母さんにまず目がいった。

「あぁ!」

「こんばんわ。この前は助けてくれてありがとう」

⏰:08/05/17 22:03 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#749 [向日葵]
「コ、ココアの人……!」

まるでハムの人みたいに無礼にも指をさして驚く。
そんな私を気にもせず、真のお母さんはにっこり笑った。

そうなのだ。
その人は旅行に行く前日、自販機からココアが出なくて困っていた人だった。

「何度見ても可愛いわね。ね、あなた」

そこで初めて真のお父さんを見た。
見てから私は息をひくつかせる。

見るからにすごく厳しそうな人だったからだ。

⏰:08/05/17 22:48 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#750 [向日葵]
「こ、こんに……いや、こんばんわ!」

深々とお辞儀をする。
心臓は既に限界だ。

すると急に両肩を掴まれて体を起こされた。
お父さんと間近で向き合う形になる。

ひーっ!

目が泳ぎそうになるのを必死に堪えてお父さんと目を合わせる。

と、お父さんの顔が少し厳しさを増す。
顔は真と同じくらいカッコイイのだからもう少し柔らかな表情を浮かべて欲しいものだ。

⏰:08/05/17 22:54 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#751 [向日葵]
「真一……何故早くこの子を連れて来なかった」

「あ、あの、スイマセ……」

「こんな可愛い子お父さんに教えないなんてどういう事だ!」

え。

目が点になった。

真剣な顔で、その厳しそうな顔で、今、なんて言った……?

「みかげさんとか言ったかな?初めまして、真一の父、倫太郎です。」

手を取って、淑女のようにキスされる。

⏰:08/05/17 23:01 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#752 [向日葵]
私は唖然としながらその動作を見ている。

「お前が誰かれ構わずそうやって口説くから行くの躊躇ってたんだよ!」

お父さんから私を離しながら真は抗議した。

「倫太郎さん昔からそうよねー」

コロコロ笑いながら言うお母さんに、「そんな軽い……」と既にこの空気について行けずにいた。

「女性は皆素晴らしいからね。口説かずにはいられないのさ」

真のタラシ具合いはお父さん譲りらしい……。

⏰:08/05/17 23:13 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#753 [向日葵]
>>744
に感想板がありますんで、良ければ感想お願いします

⏰:08/05/17 23:15 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#754 [向日葵]
「そんな事より、言っておきたい事があるんだ」

「あぁ。結婚でもするのか?」

「どうして先に言っちゃうんだよ!」

「そんなもんさっさとすればいいのよ」

アップテンポの会話に私はついていけなかった。
さすが真のご両親……。ただものじゃない……。

「みかげさん」

「あ、ハイ!」

突然呼びかけられたので、背筋をシャッキリ伸ばしながら返事をした。

⏰:08/05/23 19:07 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#755 [向日葵]
お母さんは私の両手を握って優しく微笑んだ。

「貴方の事は真一から聞いてるわ。早くにご両親を亡くして辛かったわね。でもこれからは真一だけじゃなくって、私達にも甘えていいんだからね」

真のお母さんに、私のお母さんの影を重ねる。
きっとお母さんも微笑んでくれてる気がした。
そう思った瞬間、胸が一杯になった。

涙が勝手に溢れ出る。

「ありが……ございます……」

一生懸命繋いだ言葉は、たどたどしくも心はこもっていた。

⏰:08/05/23 19:12 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#756 [向日葵]
真のお母さんもそれを分かってくれたのだろう。
優しく抱き締めて、私の頭をまるであやすみたいに撫でてくれた。

「さて、将来の娘との挨拶もすんだし、呑むぞ」

お父さんはビニール袋一杯のお酒を掲げた。

「俺仕事あんだけど……」

「父さんだってあるさ。でもな真一、適度な酒は長生きの元なんだぞ?」

「てめぇは呑みすぎなんだよ!」

余裕たっぷりの真がうろたえてる姿は本当に珍しくて、私は沢山笑った。

これからこんな日が続くのかと思えば、夢のように思えたのだった。

⏰:08/05/23 19:18 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#757 [向日葵]
ねぇ真……。
私は貴方に沢山の幸せをもらってる。

だから私は一生をかけて、貴方を幸せにするね……。

⏰:08/05/23 19:19 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#758 [向日葵]
月日は流れ流れて、私は卒業を迎えた。

「み、か、げ……っ。また遊ぼうねぇぇぇ……っ!」

子供みたいに泣きじゃくる多香子をなだめるように頭を撫でる。

「ってか卒業旅行行くんだから、またも何もないでしょう」

「卒業旅行が終わったら音信不通になりそうなのがみかげだもぉーん!」

失礼な。
そんな薄弱じゃありませんったら。

じゃあねと言って、泣く多香子と校門で別れて校舎を振り返った。

⏰:08/05/23 19:22 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#759 [向日葵]
色々あったな……。
3年なんて、本当あっという間なんだなぁ……。

「感傷に浸ってんの?」

少し離れた所に見慣れた車がある。
そこに寄りかかって立っているのは、この学校で出会い、恋に落ちてしまった人。
いや、落とされた人?

「私ってそんな薄弱に見えるの?」

幸いまだ生徒は校舎で別れを惜しんでいる為いない。

「感情があんま表に出ないからな。……それよりだ。みかげ」

ぐいっと手を引かれて、間近で眩しい微笑みを浮かべる。

⏰:08/05/23 19:27 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#760 [向日葵]
「やっと結婚出来るんだ、俺達!」

そうなのだ。
私達はいよいよゴールイン。……な訳だけど……。

「ねぇ、まさかとは思うけど、今日届け出すとか言わないでね」

「え?なんで?」

キョトンとして言うからびっくりする。
卒業するわ婚姻届け出すわってなんだかしんどいと思うのは私だけなんだろうか……。

「私は逃げたりしないから、また明日にしない?」

「やだ」

そんなドきっぱり……。

⏰:08/05/23 19:31 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#761 [向日葵]
>>744に感想板がありますのでよければお願いします

アンカー
>>2-100
>>101-200
>>201-300
>>301-400
>>401-500
>>501-600
>>601-700
>>701-760

⏰:08/05/23 19:33 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#762 [向日葵]
※訂正

>>758
>>759

×薄弱
○薄情

です

⏰:08/05/23 23:16 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#763 [向日葵]
「早くみかげが俺のものって証が欲しいんだよ」

「ば、馬鹿!何言って……」

「早くー!早く早くー!」

だだをこね始める真。

本当にコイツは大人なんだか子供なんだか……。

と、校舎から生徒が出てきてこちらへ歩いて来る。
いくら卒業したからと言ってこんな所、しかも裏の真が顔を出しているのを見られては困るのではないか?

真は相変わらず、ブーイングしながらだだをこねている。

⏰:08/06/01 02:13 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#764 [向日葵]
「ちょ、……とりあえず、お、おーちつけぇーっ!!」

脳天チョップを1発。
「いってー!」と声をあげて静かになった真を無理矢理車へ押し込む。
その後私も助手席に乗り込んだ。

「て、てめぇ…みかげ……」

頭をさすりながら真が抗議してくるが、無視して指示する。

「さっさと車出す」

「はぁ?なんで……」

「いーから出す!」

⏰:08/06/01 02:17 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#765 [向日葵]
私の勢いに負けた真はアホっぽい声で小さく「はい」と言ってエンジンをかけた。

どこに行くかも決めてないのに車は発進して、学校を惜しむ事なく去って行った。

しばらく走っていると、真が口を開いた。

「なぁみかげ。お前の両親のお墓ってどこにある?」

「え。えーっと、岩浪町って田舎の所。昔住んでて、そこにある。ここからだと2時間はかかるかな。そるが、何?」

赤信号で車は止まる。
穏やかな笑みをこちらに向けた真は言った。

⏰:08/06/01 02:22 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#766 [向日葵]
「挨拶に行こう。思えば、俺もお前みたいに両親に挨拶に行ってない無礼な奴になってしまうからな。まぁお前の場合は俺が1人で止めてたんだけど……」

挨拶……。
再び車が発進した時、口の中でそのくすぐったくも感じる言葉を繰り返した。

「ありがとう……」

うつ向いて言えば、静かにクスリと笑った真が頭を優しく撫でた。

私の育った町に、思いがけず旅する事になってしまった。
本当に小さい頃だから、記憶にはあまり無いけれど、田んぼがそこかしこにあって、のんびりとした雰囲気だったような気がする。

⏰:08/06/01 02:27 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#767 [向日葵]
母さんや父さんは、私達の事をどう思うのだろう。

でも何故か、反対はしてない気がしたのだった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

約2時間後。
小さな駐車場に車を止めて、お墓の場所まで行った。

久々の町は、やはりのんびりとした雰囲気をまとっていた。

正直、お墓参りは久々で、親戚にお墓の世話を任せてばかりでいた。
お母さん達が怒っていない事を願いながら桶に水をためる。

⏰:08/06/01 02:31 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#768 [向日葵]
お墓の前まで来ると、ちゃんと世話をしてくれているのだろう。
仏花が綺麗に飾られ、墓石もきらりと光っている。

なんだかホッとして、水をかけ、真と2人で並んでお墓を見つめる。

何から報告をと思っていると、真の手が優しく私の手を包んだ。
ハッとして真を見れば、真剣な顔をしていた。

「ご挨拶と報告が遅れて、申し訳ありません。俺……じゃない、僕は、松川真一と申します」

まるで本当に2人が目の前にいるかのように、形式ばって、それでいて緊張しているように真は言った。

⏰:08/06/01 02:36 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#769 [向日葵]
「みかげさんとは、丁度1年くらい前に知り合ってから、交際させて頂いてます。そして今日、みかげさんの卒業と共に籍を入れたいと思い、こちらに足を運ばさせて頂きました」

真がそんな風に話すものだから、なんだか私も緊張して真の手を握り返す力が強くなってしまった。

真は頭をお墓に向かって下げる。

「ありきたりな言葉しか言えない事を許して下さい。けれどみかげは一生かけて幸せにします。悲しい顔はさせません、笑顔と幸せに満ちた毎日を過ごせるよう努力します」

⏰:08/06/01 02:42 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#770 [向日葵]
真を見てから、私はお墓をまた見つめる。

母さん……父さん……。
この人が……私の大切な人なの。
真がいなかったら、私はずっと夢の世界で1人ぼっちでいた。

誰かをいとおしいとか、守りたいとか、そんな柔らかな感情知らなかったままだと思う。

だから……。

「幸せになります……」

私も頭を軽く下げる。

少し早い春の匂いを含んだ暖かい風が私達を包む。

それは、母さん達の返事のような気がした。

⏰:08/06/01 02:46 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#771 [向日葵]
―おめでとう―
…………と。

「みかげ……。何泣いてんの」

気がつけば頬が濡れていた。
「あれ?」と繋いでない方の手で滴を拭う。
そんな私を優しい目で見つめて真は抱き締めた。

「みかげ、改めて言うよ。俺のそばに、ずっとずっといて下さい」

その言葉に、涙がまた溢れた。
真の背中に手をまわし、上着をギュッと掴む。

「はい……。真が望むなら、ずっとそばにいます……っ」

⏰:08/06/01 02:50 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#772 [向日葵]
私達はしばらく抱き合っていた。
そんな私達を、先ほどの風が祝福するように包み込んでいた……。

―――――
――――――――……

「――かげ。みーかーげ!」

ハッと目を覚ます。
目の前にいるは相変わらずの真一。そして愛娘のゆめがいた。

あれから4年後。
現在私は22歳。ゆめを産んで3年が経とうとしていた。

ソファーで寝ていたらしい私は体を起こす。

⏰:08/06/01 02:55 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#773 [向日葵]
「ままー……こわいゆめみたのー?」

「え……?」

ゆめは起きた私の膝に乗り、キュッと抱きついた。
困惑した顔で真一を見れば、真一の指先が私の目を拭う。

「泣いてるからさっきからゆめが心配してたぞ。それに最近疲れてんじゃないか?」

優しく髪を撫でる真一に笑う。

「大丈夫よ。この頃はつわりも大分マシになったし」

実は、新しい命が、私のお腹に宿っているのだ。

⏰:08/06/01 03:00 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#774 [向日葵]
真一はゆめを抱き上げて私の隣に座る。
そしてお腹をいとおしそうに撫でた。
そんな真一を見て、ゆめも真似して小さな手で一生懸命撫でる。

私はそんな2人を見て顔をほころばせた。

「まま、あかちゃんいつゆめとあえるのー」

「さぁー。いつだろうね」

「早く会いたいな、ゆめ」

「うん!」

にばっと笑うゆめに、真一は優しいキスを額に落とす。

⏰:08/06/01 03:04 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#775 [向日葵]
母さん、父さん、私は毎日が幸せです。

運命の糸が、真一に繋がっていた事を、心から感謝します。

楽しい毎日は、まだ始まったばかりだ……。
そう思えば、これから何が起こるかワクワクしてしまう。

こんな私にしてくれたのは、真一……貴方のおかげだね。

だから私は、真一のそばにずっといることを誓います……。



*END*

⏰:08/06/01 03:09 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#776 [向日葵]
*あとがき*

・・・ゆめみる魚・・・如何でしたか?
番外編も終わり、以上で・・・ゆめみる魚・・・の話全てを終えます
ここまで読んで頂いた方、応援して下さった方、アドバイスを下さった方、ありがとうございました
もう1つの小説、*柴日記*も亀ですが更新さていますので良ければまた見て下さい

本当にありがとうございました

*向日葵*

⏰:08/06/01 03:12 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#777 [向日葵]
>>744に感想板がありますんで、良ければ感想などお願いします


*アンカー*
>>2-100
>>101-200
>>201-300
>>301-400
>>401-500
>>501-600
>>601-700
>>701-800

⏰:08/06/01 03:15 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#778 [我輩は匿名である]
あげ

⏰:11/03/01 22:54 📱:SH904i 🆔:☆☆☆


#779 [我輩は匿名である]
保守!!

⏰:12/05/25 22:42 📱:Android 🆔:☆☆☆


#780 [わをん◇◇]
(´∀`∩)↑age↑

⏰:22/11/27 19:11 📱:Android 🆔:☆☆☆


#781 [わをん◇◇]
>>1-30

⏰:22/11/27 19:12 📱:Android 🆔:☆☆☆


#782 [approach]
(´∀`∩)↑age↑(∩゚∀゚)∩age

⏰:25/11/13 00:00 📱:Android 🆔:☆☆☆


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