・・・ゆめみる魚・・・
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#101 [向日葵]
「馬鹿じゃねぇの!」と言外に聞こえた気がして、私はムッとした。

「うるさいなぁっ。興味ないんだから仕方ないでしょ!!」

叫んでから後味が何だか悪く感じた。
幸い映画館は雑音紛れで、私が叫んでも周りの人間はさほどきにしてはいなかった。

「別にびっくりしただけだよ。怒んなよ。」

「アンタの事だからどうせまた私を心の中で馬鹿にしてたんでしょ。」

「被害妄想甚だしいっつーの。」

⏰:08/01/17 12:16 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#102 [向日葵]
眉を寄せてうつ向いた私の頭を、慎は乱暴にかき回した。

「あのさ、何か勘違いしてるみたいだけど、俺そんなに薄情な人間じゃないから。」

どうだか。

「ただ勿体無い事してんなぁって思っただ・け。」

やっぱり馬鹿にしてんじゃないか。

「これは誰にでも思う事だろ?お前だって、無駄に起きてたら、『今寝れるのに勿体無い事してんなー』って思うだろ?」

まぁ……確かに……。

⏰:08/01/17 12:20 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#103 [向日葵]
「おんなじ。だからさ、もうちょっと心開いてくれてもいいんじゃないか?」

いつもとは違う、何故か柔らかい口調に、私はそっと顔を上げた。

すると、今は意地悪そうな悪魔の微笑みは消え、どこか慈悲に溢れている顔で私を見下ろしていた。

……コイツに慈悲の心があればの話だけれど。

「開きすぎて俺に惚れても責任は取らんがな。」

こういうのがあるから開くつもりが無いっつーのを分からんかお前は……。

すると。

「松川……君……?」

⏰:08/01/17 12:25 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#104 [向日葵]
声のする方を見れば、長い髪を嫌味なく巻いた綺麗なお姉さんがこちらを見ていた。
歳は慎と同じくらいだろうか。

「つぐみ……。」

ん?知り合い?

慎の顔を見れば、驚いたような、だけど会いたくなかった奴に会ってしまったような、複雑な顔をしていた。

つぐみと呼ばれたお姉さんは、遠慮がちに近寄ってきて、慎の前で止まった。

⏰:08/01/17 12:29 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#105 [向日葵]
「久しぶり……。7年ぶりくらいかなぁ?」

「まぁな……。」

お姉さんは私に気づいたらしく、柔らかな微笑みを私に向けた。

「可愛いらしいわね。彼女さん?」

「違います。」

間髪入れず答えたのは私だ。

私が見るからに、このお姉さんは、明らか慎が好きらしいからだ。

すると予想通りと言うか、何と言うか、お姉さんはホッとしたような表現を少し見せた。

⏰:08/01/17 12:32 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#106 [向日葵]
訂正

すいません
松川の名前が真一なのに慎一になってます

これから書く時は真一の方に戻します

ややこしくつすいません

⏰:08/01/17 18:29 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#107 [向日葵]
「元気そうで良かった。……今、何してるの?」

「高校の教師。」

「そっか……松川君教師になりたいって言ってたもんねー……。……あの、良かったらメアドとか教えてくれないかな?」

すぐに携帯を出すと思ったのに、真は何故か携帯を出す事を渋っていた。

じれったくなって、私が勝手に奪いとって、お姉さんに渡した。

「ハイこれ。なんなら電話番号とかもいれときなよ。」

「おいみかげ……っ。」

⏰:08/01/19 23:00 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#108 [向日葵]
「ありがとう」とお姉さんが嬉しそうに微笑むと、真はそれ以上何も口をはさまなかった。

お姉さんは「じゃあまた。」と言って、連れの友達と、ごちゃごちゃした人混みの中へ消えていった。

「なぁんだ……。ちゃんと可愛い人いんじゃない。私じゃなくあの人彼女にすればいいのに。」

言ってから、ヤバッ!と思った。
真があのお姉さんを選んでしまったら、せっかくの刺激物が無くなってしまうじゃないかと。

そろりと真を見上げると、お姉さんが消えた方をまだジッと見つめていた。

⏰:08/01/19 23:04 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#109 [向日葵]
その事に私は妙にイラッとして、きびすを返した。

「あ……っ。みかげ?どこ行くんだよ。」

聞こえないふりをして、エスカレーターをズンズン降りる。

「おいみかげ!」

映画館を出て、私は街へとくり出す。

「こらガキ!!」

ようやくおいついた真は、私の腕を引いた。

「アンタでも人を好きになる事あんだね。人としての一面を見れた気がして驚いたよ。」

⏰:08/01/19 23:08 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#110 [向日葵]
「アイツは……そうだけど……駄目なんだ……今でこそ、マシに……って何でお前にそんな話……っ!」

駄目?マシに?

何のことだかさっぱり。
自己完結するのはやめてもらいたいものだ。

「ってか何でお前怒ってんの?」

は?

「怒ってないし。」

「いや怒ってんじゃん。どう見ても。」

「無愛想で悪かったな。このハゲメガネ!!」

⏰:08/01/19 23:11 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#111 [向日葵]
それだけ言ってまた私は足を進めた。

「メ……メガネは認めるが、俺はハゲてねぇぞコラ!!」

――――――……

真は私をなんとか引っ張って、ゲーセンへと連れて来た。

やかましくて敵わん。

UFOキャッチャーやらプリクラやら……ごちゃごちゃしすぎ。

これなら

「寝てた方がマシとか思っただろ。」

⏰:08/01/19 23:15 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#112 [向日葵]
たった今、そう思おうとしてたトコだ。

「私、うるさいのあんまり好きじゃない。」

「そーか?ゲーセンにはお前の大好きな“刺激”が詰まってると思ったんだが。……例えば、これとかな。」

真が選んだのは、私が先ほどごちゃごちゃしてうっとうしいと見下したUFOキャッチャーだった。

中にはウサギやらクマやらのぬいぐるみが入ってる。

「大枚はたいてまでぬいぐるみなんかいらないんだけど。」

⏰:08/01/19 23:18 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#113 [向日葵]
真はにやりと笑うと、ポケットから1枚100円玉を抜き取った。

「大枚なんていらないね。俺はこれだけで取る。」

と言って100円玉を機械に挿入。

そんな硬貨1枚で取れる訳が無いと、私は周りを見渡した。

皆が皆、自分の世界に浸っている。
ならば私の世界は夢だ。
夢無しでは生きていけない。
現実に、希望なんて、抱いていける訳がない。
私の希望は、夢と、絵本だけだ。

⏰:08/01/19 23:23 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#114 [向日葵]
ひょこんと、白い物体が私の真ん前に現れた。

ぼんやりそれを眺めながら、それがウサギと分かった。
それもぬいぐるみの。

「見たか。取ったぞ。たった100円で。」

「で、どーすんのこのウサギ。」

真はにーっこり笑うと、ウサギを私に押し付けた。

「絵本を見る事で夢にのめり込むなら、ウサギ見る事で現実にのめり込んでみろよ。」

そいうえば、コイツは何故ここまで現実を見させようとするのだろうか。

⏰:08/01/19 23:27 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#115 [向日葵]
コイツの性格を考えれば、ただの同居人に、恋愛ごっこをしてまで世話する気なんかなさそうなのに。

それはコイツも過去に何かあったのか、はたまた、ただ単に現実主義を突き通してるだけなのか……。

「アンタは。」

「真。」

「……真は、夢が嫌い?」

間が開く。
ゲーセンのガチャガチャした音だけが私達をとりまく。

真は、まっすぐ私を見つめていた。
その目の奥に、なんとも言えない闇が潜んでいるように、私は思えた。

⏰:08/01/19 23:32 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#116 [向日葵]
ようやく、真は口を開いた。

「夢は……嫌いじゃない。俺は………………。世界征服と言う立派な夢があるし……。」

「どこかの敏腕スナイパーにやられてしまえ。私は帰る。」

少しでもコイツの中にナイーブな一面があると思った私が馬鹿だった。

「まーてまてまて!まだ現実体験学習は始まったばっかりなんだぞ!」

そんな名前あったんだ。
どうせ今思いついたんだろうけどさ。

「うるさいとこが嫌ってんなら静かなトコ連れてってやるよ。」

⏰:08/01/19 23:56 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#117 [向日葵]
「もうやだ。アンタはやっぱり私を遊び道具にしてるだけじゃん。こんなの私が求めてるものじゃない!」

「わーったから、まぁついて来いって!」

面倒くさそうに私をなだめながら、真は私を引っ張っていく。

「だから嫌だってばー!!」

――――――……

「うっわー……!」

さっきの態度とは180゚回転して私は目を輝かせた。

⏰:08/01/20 00:01 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#118 [向日葵]
海に連れてこられた。
一面真っ青で、太陽の光で反射して水面がキラキラ輝いていた。

直ぐ様かけより、靴を脱ぐ。

「あ、馬鹿!春先だっつーのに海に入んな!風邪引くぞ!」

これは私の身を心配してるように聞こえるが、松川語に直すと、

「あ、馬鹿!春先だっつーのに海に入んな!風邪ひかれて面倒なのは俺なんだぞ!」

だ。

と言う事で、そんな自分大好きな奴の発言は一切無視。

⏰:08/01/20 00:07 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#119 [向日葵]
指先を海水へつける。

冷たいけど、想像してたよりは然程冷たくはなかった。

パシャパシャ音を立てながら、足首らへんまで浸かる。

耳をすませば、波の音が心地よかった。

“ゆめみる魚”も、こんな海の中で、眠りながら泳いでいるんだろうか。

波はゆりかごに。
水音は子守唄に。

なんて……幸せそうなんだろうか……。

そう思いながら、持っていたウサギを見つめる。

⏰:08/01/20 00:11 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#120 [向日葵]
[現実にのめり込んでみろよ。]

現実……。

皆が、夢をおぼろげなものと考えるなら、私にとって現実の方がおぼろげだ。

どうして夢で生きてはいけないんだろう。

だって現実は、酷くて、大切なものを次々と奪っていってしまう。

大切なものが無くなってしまった私は、手持ちぶたさで、一気に何もかもが楽しく無くなった。

それはつまり、私はからっぽだと言ってるようなものだ……。

⏰:08/01/20 00:15 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#121 [向日葵]
真が……現れたせいだ……。

コイツが、何もかも見透かしたように言うから、こんな、物思いにふけらなきゃいけなくなったんだ。

滴が、頬をつたった。

からっぽな自分が、現実で生きていく意味が分からない。

どうしても、見つけなきゃいけないのだろうか。

「みかげ?」

砂利を踏む音が聞こえた。
急いで涙を拭くも、止まらない。

⏰:08/01/20 00:19 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#122 [向日葵]
「みかげ。どうかしたか?」

「来るな……。」

微かに声が震えてしまった。泣いてる事がバレてしまっただろうか。
きっと、馬鹿にされる。
指さしながら、腹抱えて笑うに決まってる。

そう分かってるのに、溢れる涙を止められない……。

「何でもないから。ただ、海が冷たいから……びっくりしてるだけ……。」

「……そうか。」

波が、私の足元を行ったり来たりする。

⏰:08/01/20 00:24 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#123 [向日葵]
すると。

後頭部を、真の掌が包んだ。

「若い奴は、いらん事で悩むよな。俺はお前みたいに不器用じゃなかったぞ。」

ホラ、やっぱり馬鹿にしてる。

「悩んでなんか……。」

「でも今は、沢山悩んで、ゆっくり道を見つければいいから。」

道……。
見つかるのだろうか……。
果てしない道のりを歩くのは、私は足取りが重かった。

⏰:08/01/20 00:30 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#124 [向日葵]
すると、後頭部にあった真の手が、私の頭を引き寄せ、頭ごと私を抱きかかえるようにした。

「俺も、いてやるからさ……。」

どんなつもりで言ってるんだろう。

ごっこの為の台本?
それとも本音?

そんな事を考えつつも、根拠のないその言葉や、何故か抱き締められているその体温は、私の心を幾分か安らげた。

そしてなんだか、胸の奥がざわざわした……。

これは、何……?

⏰:08/01/24 00:15 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#125 [向日葵]
―――――――……

次の日から、あのつぐみと言うお姉さんからのメールが真に送られてきた。

真はやっぱり昨日会った時のような複雑な顔をしていた。

「どうかしたの?眉間にシワ寄せすぎ。」

真はため息をつく。

変なの。
いつもなら「何?!俺の美しい顔が!」とか「シワを寄せても俺はカッコイイだろ?」とか馬鹿っぽい発言が出てきそうなのに。

「お前、昨日さ、夢嫌いか?って俺に聞いたよな。」

⏰:08/01/24 00:20 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#126 [向日葵]
「それが何?」

真は黙って、開いたままだった携帯をパキンと閉じた。

メガネを外して、目と目の間を指先で軽くつまむ。
目が疲れたらしい。

「……夢はな、どちらかと言えば嫌いだ。」

ようやく口を開いた時、その声は苦しそうだった。

「何故?」

「夢はある意味妄想のようなものだからだ。」

妄想?
真の言葉を、頭の中で繰り返す。

⏰:08/01/24 00:24 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#127 [向日葵]
「夢は人の潜在意識だ、とか言うけど、俺からしたら、叶う事のない儚いものだと思うね。手に入らない、叶う筈のないものを夢に見るくらいなら、真実が迫ってくる現実の方がまだマシって訳だ。……夢ばかりに理想抱いても、悲しいだけだからな……。」

いつになく、真剣な口調に、真をじっと見つめた。

やっぱり真が私をかまうのは、そういった現実主義な部分も入ってるんだろうか。

……いや、違う。

「夢が嫌いなのは、あのお姉さんと関係あるとか?」

⏰:08/01/24 00:28 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#128 [向日葵]
密かに、眉をひそめた真。

何かと葛藤するかのように苦しげな表情を見せながら目を瞑る。

「昔……色々と……。」

でも私は、その短い言葉で気づいてしまった。

真は、未だあのお姉さんが好きなのだと。

「……バッカみたい。」

私は呟いて、自分の部屋に閉じこもった。

なんなんだろう。
すっごくつまんない気がする。

⏰:08/01/26 01:35 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#129 [向日葵]
恋愛が刺激の醍醐味?

そんなのアイツが決めつけた事じゃない。

現に今の私に刺激なんて更々無かった。

ただひたすら、心と言うか胸の中と言うか、ザワザワうるさくて、どこかが痛くて……。
楽しい刺激が、今ひとつ味わえていない。

こんなの……真の設定ミスだ。

それにいくらごっことは言え、好きな人がいるのに恋人気分に浸れる訳がない。

それに真自体も浸ることはないように思われる。

⏰:08/01/26 01:39 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#130 [向日葵]
アイツは何がしたいんだ?

暇つぶし?
悩める若者の構成?
昔を忘れさせる為の道具?

分からない。
分からなさすぎる。

……いや、分からなくていいのか。
大した間柄でもない。

よくよく冷静に考えてみれば、アイツはここの家主兼私の学校の教師。
そして私は同居人兼アイツの生徒。

2人はごっこの相手同士。

別に相手の事なんて知らなくていいのだ。

⏰:08/01/26 01:43 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#131 [向日葵]
アイツがもし私を暇つぶし相手にしてるならば、私達はただの刺激を求めて合う同士でもある。

ならば上辺だけの付き合いでいいのだ。
中身なんていらない。

ただ、自分は奴に何もかもを見透かされている気がして、なんとなくそれが気にいらないだけだ。

アイツがもしあのお姉さんと付き合いたいと言うのならば、せっかくみつけたターゲットを見す見す逃がす事になるが、また夢の住人になれるのであればそれはされでまたいいじゃないか。

別に……お互いが必要てしている訳ではないのだから……。

⏰:08/01/26 01:47 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#132 [向日葵]
また、胸がザワつく。

気持ちが悪くて、胸をさすった。

まるで、“ゆめみる魚”の、嵐が来る時のシーン。

不安のような動悸が体に鳴り響く。

私はそれにばかり気を取られて気づいてなかった。

私の頭は、いつしか刺激を求める事よりも、真自体の事で一杯になっていた。

それに気づくのは、もう少し先の話だった……。

⏰:08/01/26 01:50 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#133 [向日葵]
4P・波にもまれて

しらないうみにやって来た魚は、あたりを見まわしていました。

『ここはどこ?』

そのうみは、おだやかで、ねむってしまいそうなくらいにここちよいものでした。

でも、魚はふあんでいっぱいでした。
なにせしらないばしょなのですから。

・・・・・・・・・・・・・・・

あぁ……。なんでだ。
いつもならこの時間は夢の世界へ飛び立っていると言うのに……。

⏰:08/01/26 01:54 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#134 [向日葵]
社会科準備室にいた私は、自分を呼び出した相手を睨みつけていた。

「俺の顔、そんなにみつめるほどカッコイイか?」

真はにやりと笑う。

コイツのナルシストぶりには頭が上がらない。
世の中の男集めても自分が秀でてるとでも思っているんだろうか。

「そんな事言いたいが為に私をここに呼び出したの?」

「うんっつったら?」

「蹴り飛ばす。」

そんな私を、真はクスクス笑う。

⏰:08/01/26 01:59 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#135 [向日葵]
それがまた私の神経を逆撫でする。

この前の苦しげな顔は芝居じゃないのかと思うくらい元気だ。

実際……芝居だったのかもしれないが……。

「まぁまぁ。ただ恋人が恋しくて会いたくなったってだけだよ。」

「真にそんな感情備わってるとは思えないんけど。」

「俺はいいぞー。彼女にはちゃーんと優しくしてやるし。」

出た。
自画辞賛。

⏰:08/01/26 02:03 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#136 [向日葵]
ごっこだけのくせに……。

……ん?
なんだ私。
まるで、ごっこじゃ嫌みたいな感じじゃないか?

……。いやいやいや。
まさかまさか。
この頃ロクに昼寝してないから頭がどうにかなったか?

「くだらない用なら帰っていい?」

イスから立つと同時に、真も立ち上がった。
すると距離を詰めて、右手をさりげなく優しく握った。

「抱き締めていい?」

⏰:08/01/27 17:13 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#137 [向日葵]
「は……はぁ?」

ふざけてなんかいないみたいだ。
あくまで真剣に尋ねているらしい。

「なんで?」

「ねぇ、いい?」

なんか……甘えたがってるようにも見える。

真は強引に抱き締めるわけでなく、黙って私の返事を待っている。

だから余計におかしい。

いつもの俺様な真は身をひそめている。

軽くため息を吐く。

⏰:08/01/27 17:17 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#138 [向日葵]
「ちょっとだけなら……。」

言った瞬間ぎゅっと抱き締める。
意外に力が強かったので、少し苦しかった。

「……。何かあった?」

聞いてみるけど、囁くように「別に。」と言ったまま、黙ってしまった。

あのお姉さんが現れてから、いつもの真じゃなくなった。

いや、真らしい態度をとってはいるけれど、どこか無理してるような……。

そんな真だからだろうか。
慰めてあげれるならば、私が癒してあげたいとか思ってしまった。

⏰:08/01/27 17:22 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#139 [向日葵]
どうしてしまったんだ私……。

*******************

「テスト前なので範囲のプリントを配る。各自するように。」

だるそうにプリントをするガキ共を見ながら、教卓まで空いてたイスを引きずって座った。

表向きの自分の演技をしつつ、俺はさっきみかげを抱き締めた感触を思い出していた。

華奢な体。
なのに柔らかくて、髪の毛からはシャンプーの香りが漂ってきた。

⏰:08/01/27 17:41 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#140 [向日葵]
すがりたかったんだ。
誰かに。

つぐみが現れてから、俺は苦い思い出に浸ることしかなかった。

だから安らぎの場所を求めたかったんだ。

みかげはさぞ驚いただろう。
恋愛経験がないアイツにとっては初めて抱きつかれただろうし。

そんな初めてな事を、ただすがりたい、救われたいと言う思いだけで抱き締めて良かったのだろうか。

なのにアイツは、そんな俺を心配してくれた……。

⏰:08/01/27 17:46 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#141 [向日葵]
[何かあった?]

はっきり言って彼女から見た俺は横暴で、あまりいい印象は与えていないかと思う。

自分が何か突拍子のない事を言えば必ず不機嫌になるし、自分はただみかげに現実の刺激を与える道具のようなもの。

そして今アイツが直面している現実を受け入れると言う事。
それを課したのは俺で、そのせいで苦しんでるって言うのに、そんな俺を、心配した。

体の感触を感じた手を、じっと見つめる。

⏰:08/01/27 20:59 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#142 [向日葵]
前にも抱き締めた事はある。
海でみかげが泣いていた時の事だ。

あれは抱き締めたと言うよりも、抱えたと言うか、何かから守った気分だった。

現実を見つめ直す気になったみかげはとても懸命で、自分に与えられた試練を必死になって越えようとする、健気で、どこか愛おしい気分にさせた。

だから、「大丈夫だ。」と言ってやりたかったんだ。

今度は違う。

どこか、お互いの気持ちが通じたような、そんな感覚を覚えた。

⏰:08/01/27 21:03 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#143 [向日葵]
「せーんせー。質問していー?」

「あぁ。なんだ。」

今では、現実に目を背け、失望してるみかげだが、本当は誰よりも現実を見たいと思ってるんじゃないんだろうか。

[夢が嫌い?]

そう問われた。あの時、夢を見てばかりの自分が恐くなったみかげの叫びかと俺は思ったんだ。

*****************

めずらしい……。
そしてやっぱりおかしい。

⏰:08/01/27 21:07 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#144 [向日葵]
授業中睡眠率100%のこの私が……しかも1番嫌いな生物で……

寝なかった!!

少し早い台風の訪れ?!
もしくはとうとう天変地異の前触れ?!

私は授業終了のチャイムを呆然と聞いていた。

「わ!みかげ!アンタなんで起きてんの!」

私の席に遊びに来た多香子が私同様驚いた。

起きてて普通なのに、私クラスになると寝てる方が当然になる。

「わかんない……っ。」

⏰:08/01/27 21:12 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#145 [向日葵]
……真だ……。

全部真のせいだ……!

様子はおかしいわ、この前のような抱き締め方じゃないわ、私を変な気分にさせるわ……っ。

これがアンタの言ってた刺激?!
訳が分からん!!

「あ、松川。」

「え?!」

頭を抱えながらうつ向いてた私は、顔を上げた。

思えば次は地理だ。
松川は私の教室へとやって来る。

⏰:08/01/28 22:10 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#146 [向日葵]
自分でも分からない気持ちにイライラさせられている筈なのに、真を見ると安らかになってる自分がいた。

良かった。
傷は少しは癒えたのだと、真を見つめる。

「みかげ……?」

「え……?あ、何?」

「何って、今アンタ……。まぁいいわ。」

多香子の歯切れ悪い返事を聞きながら、次寝たらまた真にどやされるなぁと、呑気に考えていた。

だから私は自分の変化に気づいていなかった。

⏰:08/01/28 22:13 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#147 [向日葵]
――――――……

「みかげー。帰ったぞー。」

「おっさんかアンタは。」

先に帰っていた私は、リビングから出て帰ってきた真を迎えた。

「テスト問題でも作ってたの?」

問い正すと、何故か真がぐっと答えあぐねた。

怪しいと思い、たたみかける。

「地理のテストって作るの面倒くさそうだよね。そりゃ遅くもなる…か。ま、アンタの事なんかどうでもいいけど……。」

⏰:08/01/28 22:16 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#148 [向日葵]
更に真は苦い顔をした。

「何?なんか責められてる気分なんだけど、俺。」

「責めてなんかないけど?教師って大変だなぁって言うただの感想。」

大体真がこの顔をするのは予想がつく。

大抵が、お姉さん絡みだ。

1回しかあった事がない、最早顔すらおぼろげになったあのお姉さんは、何故だか真を苦しめてる。

「……アイツが、会いたいって言うから、会ってたんだ。」

⏰:08/01/28 22:20 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#149 [向日葵]
「そっ。」

冷静に返事しながら、私はなんだか腹が立っていた。

癒されたと思った真の心の奥にある傷。
それを容易く切り開いてしまうお姉さん。

お姉さんとの思い出は真への呪縛のような気がした。

そして簡単に真を引きずりこもうとするのに、自分の無力さを感じた。

……。
え……?無力?

また真を救いたいとか思ってる自分に驚く。

⏰:08/01/28 22:24 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#150 [向日葵]
自分の部屋に戻ろうとすると、腕を掴まれた。

「ん?何?」

「……抱き締めたい。」

また?

「やだよ。私は抱き枕じゃないんだからさ。」

「1分。」

「やだっつってんでしょ。」

真を無視して、部屋に戻ろうとした私は、腕を掴まれたままだという事を忘れてた。

そのまま引っ張られて、強制的に抱き締められる。

⏰:08/01/29 23:36 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#151 [向日葵]
力強く抱き締められれば、最早抵抗するのを諦めた。

真は何がしたいんだろう。

私はどうしてされるがままになってんだろう。

主導権を握られて、言いなりになるのは好きじゃない。

どちらかと言えば、主導権を握って、自分が思うままに動かしたいのに、真は言う事を聞いてくれない。

そんな事をぼんやり思ってると、真が呟いた。

「あー……。キスしたくなってきた。」

は?

⏰:08/01/29 23:40 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#152 [向日葵]
腕を緩めた真は、私の顔を覗き込んだ。

「いい?」

いい訳……

「ないだろこのボケェ!!」

高らかに、平手の音が鳴り響いた。

――――――……

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

あ……夢見てる。

そうだ。
私最近おかしかった。

寝ても、前みたいに頻繁に夢を見る事が出来なくなったんだ……。

⏰:08/01/29 23:43 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#153 [向日葵]
私はピンクと青のマーブルの世界にいた。

周りは何もない。

奥行きがどれくらいあるのかもわからない。

でも感覚的に、だだっ広いって事は何故か分かった。

『みかげ。』

誰かに呼ばれた。

振り向けば、そこには微笑んだ真がいた。
この笑みは、悪魔な部分を隠してる方だ。

とか思っていたら、真はにんまり笑って、悪魔な部分を少し表に出す。

⏰:08/01/29 23:46 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#154 [向日葵]
なんでアンタ最近よく出てくるの?

『お前が俺の事ばっかり考えてるから。』

は?考えてないっつーの。

『またまた照れちゃってさ。素直になったらどうよ。』

真は1歩また1歩と私に近づく。
しかも1歩の幅がデカイのか、10歩で来そうな距離を3歩でやって来た。
夢独特の不思議な世界だ。

『お前はさ、まだ心が未発達だから分かってないんだよ。』

⏰:08/01/29 23:51 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#155 [向日葵]
何が?

『まだ分からない?じゃあ聞くよ。お前、何故俺を癒したいとか思ったの?』

意地悪そうな笑みが間近にある。

……知らない。ただの同情みたいなもんでしょ。

『いいや、違うね。お前は知ってるんだよ。でもそれを認めてしまうのが恐い。違うか?』

意味分かんない。
ヒントなんかいらないから早く言ってよ。

『焦るなって。もう1つ聞くよ。それに答えたら教えてやる。』

⏰:08/01/29 23:54 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#156 [向日葵]
私は深呼吸を静かにして、イライラするのを鎮めた。

で……?質問って何?

『お前が最近こちらに来ないのは……何故?』

ドクン……と心臓が跳ねる。

そういえばと、私は数日間の事を思い返す。

何故か、前のように数多く眠る事が出来なくなってしまっている。

しかも、夢を見る回数も減っている。

し……っ、知らない……っ!そんなの分かんない!
もうやめてよ!これ以上イライラさせないでっ!!

⏰:08/01/29 23:59 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#157 [向日葵]
耳を塞いで、何も聞こえないようにする。

でもここは所詮夢の中。

塞いでも、真の声は聞こえる。

『混乱しなくていい。簡単な事だ。』

そう言って、真は耳を塞いでいる私の手を優しく引き剥がした。

目の前にいる真は、柔らかく笑っていた。
悪魔な一面は、今は隠れたらしい。

『お前はさ……俺の事、好きになってんだよ。』

……え?

ふざけてる気配は全くない。だから余計に戸惑った。

⏰:08/01/30 23:05 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#158 [向日葵]
私が真を?
んな訳ないじゃない。

『じゃあなんで傷ついてる俺を救いたい?夢をこの頃見ない?』

それは……。

『答えを言ってやるよ。まず俺を救いたいと思ってるのわ支えたいとも思ってんだろ?そして2つめ。夢を見ないのは現実にいる俺の存在が大きくなっているからだ。』

……ずいぶん自惚れた考えじゃない。

『そうかな?少なくともお前より何年か年を重ねてる俺は、そう思うがね。』

⏰:08/01/30 23:11 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#159 [向日葵]
そうなの……?私……。

洗脳されるように、真の言う通りのような気がしてきた私は、自問自答した。

でも、分からない。
だって私は人を好きになった事なんてないし……。

それに……。

・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「みかげ。」

ハッとして目を覚ます。

そこには、現実の真がいた。

「風呂、出来たから入れ。んで上がったら勉強すっぞ。」

⏰:08/01/30 23:16 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#160 [向日葵]
ぼんやりする頭でも「勉強。」と言う言葉がちゃんと残っていた。

体を起こして、前に垂れていた髪の毛を軽くかき上げる。

「なんで勉強?」

「もうすぐテストだから。俺地理担当だし。1人でも多く良い点取ってもらわなきゃ教師として意味ないの。」

「知らないしやらない。」

ってかやりたくない。

「そんな訳にもいかないっつーの。単位やばくなっぞ?」

⏰:08/01/31 00:43 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#161 [向日葵]
別にそれでもいい。

「学校ってそんなに大事なの?私には分かんない。勉強しなくたって、なんとか生きていけるはずだもん。」

少しの計算と、少しの文字が読めればいいと思う。

学者を目指してる訳じゃないし。
なんで方程式やら書き手の気持ちやらを学ばなきゃならないんだか……。

「それはまだお前が夢と現実の狭間にいるからだよ。現実に戻って大人になれば、勉強する機会って無くなるんだよ。」

「いいご身分よね。」

⏰:08/01/31 00:47 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#162 [向日葵]
「でなくて。そうしたら勉強が恋しくなるんだよ。それに、学んで知識を得る事は悪い事じゃないぞ。」

それなら早く大人になりたい。
もう後は天命を待つだけになりたい。

楽に生きたい。

「教師の仕事は楽ちい?」

「あ、今噛んだろ。」

「揚げ足はいいから質問に答えてよ。」

真は「んー。」と唸った。
そもそも真は何故教師になろうと思ったんだろう。

⏰:08/01/31 00:52 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#163 [向日葵]
「地理は学生の頃から普通に好きだったからな。別に苦痛に感じた事はないよ。」

「ふーん……。」

「みかげは?好きな教科ないの?」

「昼休み。」

「教科じゃねえし!」

と真は大笑いした。
そんな真は初めてだったから、私はキョトンとしてしまった。

キョトンとしてしまうと同時に、真の顔を改めてマジマジと見る。

輪郭のラインが耳まで綺麗。
目は意外にも切長がで、二重だ。

⏰:08/01/31 00:57 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#164 [向日葵]
鼻筋は一般の人と同じくらい。
笑うといつもみたいな怪しげな雰囲気はなく、どちらかと言えば子供みたいに幼い。

真の子供の頃って、こんな感じだったのかな……。

するとひとしきり笑った真と目が合った。

私はぼんやり真をみつめる。
真は最初、余韻で口元にまだ笑みを残していたけど、段々と真顔になってきた。

その瞬間、奇妙な、不思議な現象が起こった。

体が、床に縫い止められたように動かなくなったのだ。

⏰:08/01/31 01:01 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#165 [向日葵]
時計のせわしない音。

道路を通りすぎる少しうるさいバイクの音。

他の家から聞こえる生活音。

静けさ独特の、耳鳴りのような音。

これだけ周りははっきりとしているのに、私達の間には、時間の流れが遅くなってしまった気がした。

目が合っている。

そう感じれば、真と私の目から、何か通じているような感覚に陥った。

電流のようなビリビリ感。
かと思えば、めまいのようにクラクラしたり。

⏰:08/01/31 01:06 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#166 [向日葵]
ふと、それでいて戸惑いがちに、真が私の頬に触れた。

「みかげ。」

囁くように甘く、何かを目覚めさせるように静かに、真は私の名前を呼んだ。

そこで私は体の感覚を取り戻す。

「風呂、入るわ……。」

服を持って、真の横を通り過ぎる。

脱衣所につけば、自分でも驚くほど真から慌てて離れていた事が分かった。

だって、あの時自分はおかしかった。

⏰:08/01/31 01:11 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#167 [向日葵]
名前を呼ばれた瞬間、足元から崩れそうで、しかもどうしてかその手の温かさに身をゆだねたいとすら思ってしまった。

そんな自分がなんだか危険な気がして、なんとか“自分”を取り戻した。

「私……。」

どうしてしまったのだろうか……。

唐突に、さっき見た夢を思い出した。

いつもなら夢なんて、起きた瞬間忘れてしまうものなのに、何故か鮮明に思い出す事が出来てしまった。

しかもそれは、私をさらに混乱させる。

⏰:08/01/31 01:15 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#168 [向日葵]
[お前は、俺の事好きになってんだよ。]

好き?

真が?

何故?

真は……確かに私が知っているような大人じゃなかった。

それに邪魔者扱いする事はなく、現実から離れていこうとする私を連れ戻そうとさえしてくれる。

根は悪魔で、自己中で、変態なのに、さりげなく、手を差しのべてくれる。

それがおせっかいから来る真本人の親切なのか、ペットを手なずげる手段なのかは分からない。

⏰:08/01/31 01:21 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#169 [向日葵]
「信じない……。」

夢はただの夢。

正夢とか、デジャブとかあるけど、そんな頻繁それらがあっていい訳がない。

夢は言わば、妄想の一種……。

へんな思いを振り払いながら、私は風呂に入る為服を脱ぎ始めた。

――――――……

上がったと真に声をかける為、リビングへと向かった。

「だから……無理だって……。」

⏰:08/02/01 21:36 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#170 [向日葵]
真の声だ。

と言うか、電話してる。

「そういう訳じゃないけど俺だって色々……。あぁ……わかったよ。じゃあまたな。」

と言って電話は終了。

「ん?おわっ!いたんなら声かけろやっ。」

「電話中だっつーのにどうやって声かけんのさ。それより風呂空いたよ。」

「あぁ……。」と、どこか上の空の真。
電話の相手はきっとあのお姉さんだ。

……そうだ。

⏰:08/02/01 21:40 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#171 [向日葵]
私は、たとえ真を好きになったって無駄なのだ。

だって真は、あのお姉さんが好きだから。
私はただの同居人兼玩具。

女として見られる事はまず無い上に、好きになっても片思いのままなのだ。

さっきまで混乱していた思考が、一気に冷めていく。

何真剣に考えちゃってんだか私……。

「アホらしい……。」

「ん?何か言ったか?」

「別に。じゃあおやすみ。」

⏰:08/02/01 21:44 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#172 [向日葵]
そう言って部屋に戻った。

真の頭はお姉さんで一杯らしい。

自分からしようと言ってた勉強の事を忘れている。

部屋のドアにもたれて、私は胸をおさえた。

胸やけ?
なんかすごく気分悪いんですけど……。

ハァー……とため息を吐くと、幾分かマシになった。

でもどこか、チクチクと痛む。

病気なのかも……ー

⏰:08/02/01 21:47 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#173 [向日葵]
そう思いながら、ベッドへ行き、横たわる。

と同時に、風呂の扉が閉まる音がした。
どうやら真が入ったみたいだ。

この頃……真の事ばかり考えてる気がする。

そんな事を思えば、また夢を思い出して混乱しそうだから、頭を振って、何も考えないようにする。

ふと目にとまる、「ゆめみる魚」の絵本。

パラパラとめくりながら、夢への刺激を蘇らそうとする。
このままじゃ、現実に呼び戻されそうで嫌だ。

⏰:08/02/01 21:52 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#174 [向日葵]
読みはじめてからしばらくして、携帯のバイブの音が聞こえた。

自分のかと、さほど執着を持ってない機械をカバンの中から取り出す。
が、何もなかった。

どうやらリビングに置いてある真のものらしい。

しばらく鳴り続けていたから、電話のようだ。
そして気づいた頃には止まっていた。

それからまた1回、また1回と、バイブは鳴り続ける。

いい加減イライラしてきた私は、リビングに行って携帯を盗み見てやった。

⏰:08/02/01 21:55 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#175 [向日葵]
着信3回。
メールが2回。

おーおーおモテになるもんで。
そりゃあのタラシだもんね。
全部女からだろうよ。

と、メールは見るのを自粛して、着信履歴を見た。

見てから私は、携帯を放り出したくなった。
怒りとかじゃない。
ちょっとした恐怖だ。

この頃の日付、全てがあのお姉さんからなのだ。しかも1日に何回も……。

なんのつもり……っ?
頭おかしい。

しかもさっきだって、真と話したばっかりじゃない。

⏰:08/02/01 21:59 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#176 [向日葵]
真は……お姉さんが好きだから苦しんでるだけじゃない。
縛られてるから苦しんでる。

あのお姉さんの、真への束縛は異常だ。

だから真は、真を縛ってない私に癒しを求めたんだ……。

……尚更好きになんか、なれっこない。

それに……。

それに特別を作るのは……怖い。

だって、お母さん達みたいに、突然いなくなってしまったら……。

⏰:08/02/01 22:19 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#177 [向日葵]
小さい頃ながら、覚えている記憶が、走馬灯のように浮かんでは消える。

突然、息が出来なくなると思った。

突然、いなくなってしまったら……。

今度は私、どうやって生きていけばいいんだろう……。

⏰:08/02/01 22:20 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#178 [向日葵]
5P・過去の箱

魚はまよったうみで、あたらしいなかまをみつけました。

ゆめよりも、あたらしいなかまとともにすごすことが、だんだんとたのしくなってきました。

あそんでいるそのとき、なにかはこをみつけたのです。

「あけてみようよ。」

「でも、あけてはいけないきがするよ……。」

・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

その晩、真は遅くに帰ってきた。

⏰:08/02/01 22:24 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#179 [向日葵]
と言っても、12時を過ぎる前。
今日は金曜日。明日は土曜日で休み。
成人男子が夜遊びして帰ってくるのにはどちらかといえば早い気がする。

玄関を開けた真と、リビングへ飲み物を取りに部屋から出た私とは、ほぼ同時だった。


「お帰り。もう寝る?」

とだけ私は言った。
真も遅くなった理由は話したくないのか、「あぁ。」と力無く行って私の前を通り過ぎる。

でも私は、遅くなった理由が分かった。

⏰:08/02/01 22:30 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#180 [向日葵]
真の首筋に、何個かの赤い跡。
人生経験且つ恋愛経験が少ない私でも、それが何を意味してるかぐらい分かった。

そう……。
お姉さんと……。

どうでもいい筈なのに、胸がまたモヤモヤ気持ち悪かった……。

――――――――……

「みかげったらぁっ!」

ぼんやりしていた私を、多香子は叱りつけた。

「あ……ゴメン……。」

「どうかした?最近ちょっと変よ?」

⏰:08/02/01 22:35 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#181 [向日葵]
「別に。テスト勉強してたらこの頃遅くまで起きちゃってて……。だから寝不足なだけ。」

普段寝すぎなだけにテストさえちゃんとしとけば何も言わないだろう。

ちゃんとしたギブアンドテイクだ。

「そ。ならいいんだけど。そういえば、学祭どうする?」

テストが終わればすぐに学祭が始まる。

去年は展示で、和紙で作った色付きの花を教室中に飾った。
係が済んだその後は、ずっと屋上で寝そべってたっけ……。

⏰:08/02/03 12:48 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#182 [向日葵]
「何でもいい。出来たら展示がいいけど。」

「劇とかしたくない?なんか楽しそうだしさぁ。」

「劇……?そんなの勝手にやっててくれ。私は不参加決定だね。」

大体、学祭なんて何故しなくちゃならないのか。
普通に授業しといてくれれば心置きなく寝ていられるのに。

「でもクラスの子に聞いてみたら皆結構劇やりたがってるみたいよ。」

マジでか。
チャレンジャーだな皆さん。

⏰:08/02/03 12:52 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#183 [向日葵]
「それに、学校行事は出来るだけ出た方が内申にいいよー。アンタそれでなくても生活面に関しては決して良いとは言えないんだから。卒業云々よりも進級が難しくなるわよ。」

図星をつかれて軽く頬を膨らます。

冗談じゃない。
こんなトコ、早く抜け出したいのに、卒業出来ない上に1個下のガキと1年共に過ごすなんて……耐えられるかっ!!

「出るしかないかぁ……。」

⏰:08/02/03 12:59 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#184 [向日葵]
学祭は参加すると帰りが遅くなるから真がまたうるさいかもしれない。

そう思ったら、また前の出来事で頭が一杯になった。

別に遅くなってもいいか。
どうせアイツだって、お姉さんといやらしい事してんだし……。

もう抱き締めていいか聞かれたって絶対に抱き締めさせてなんかやらん!

と決意を固め、私はその日1日を終える。

次の日、予想だにしない人が、私を訪ねてくるとも知らずに……。

⏰:08/02/04 00:00 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#185 [向日葵]
そして問題の次の日。

私は見た事ある人物を、帰りがけ校門に発見した。

向こうも私に気づいたらしく、柔らかく笑って会釈した。

「こんにちわ。」

綺麗なその声は、紛れもなくあのお姉さんのものだった。

「あ、真……じゃない、松川ならまだ学校で……。」

「違うの。今日は、貴方とお話がしたいと思って。」

私は瞬きを繰り返す。

「私に……?」

⏰:08/02/04 00:04 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#186 [向日葵]
乗ってきたクリーム色の車に私を乗せて、お姉さんは近くの洒落た喫茶店に入った。

メニューを見るなり目が飛びそうになった。

紅茶1杯800円?!
お姉さん入る見せ間違ってんじゃないの?!

そんな私の心配をよそに、お姉さんは手慣れた様子で店員さんに「ダージリンで。」と言った。

「貴方は、何か決まった?」

「え……っ。じゃ、じゃあセイロン?を……。」

注文を聞いた店員は、店の奥へと入っていく。

⏰:08/02/04 00:10 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#187 [向日葵]
「改めまして。私、東堂(とうどう)つぐみって言います。」

「あ、みかげです。ってか、なんですか?私に用?って……。」

「貴方、松川君とはどういう間柄なの?」

「生徒兼居候です。」

お姉さんは首を少し傾げて「居候?」と聞き返した。

事情をかい詰まんではなすと、お姉さん、もとい、つぐみさんは納得いったように頷いた。

「何か質問はありますか?」

⏰:08/02/04 00:15 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#188 [向日葵]
「そう……。松川君は、やっぱり優しいのね。」

うっすら微笑んで、つぐみさんは呟いた。

え?優しい?
あのタラシスケベが?

私はとりあえずその疑問を彼方に放り投げて、分かりきった事をつぐみさんに聞いた。

「つぐみさんは、松川が好きなの?」

つぐみさんは困ったように笑いながら顔を赤らめた。
やっぱりそうなのだ。

「……でも、好きなのはいいけど、何度も連絡するのはどうかと思うよ。」

⏰:08/02/04 00:19 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#189 [向日葵]
口をついて出た言葉は、最早後戻り出来ないものだった。

我に返った私は内申冷や汗だらけだった。

それでもつぐみさんは、一瞬キョトンとしたものの、すぐに苦笑いをした。

「ダメね、私……。どうしても、癖でね、やってしまうの。」

「癖?」

それはまた大層な……。

「少し、昔話をさせてくれる?」

私は頷いた。

⏰:08/02/04 00:23 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#190 [向日葵]
「私ね、貴方と一緒で、両親がもういないの。10歳の頃かしらね。駆け落ちだった私の両親は、身よりがなかったから、私は両親の友達夫婦にお世話になってたの。」

つぐみさんは、友達夫婦に預けられて楽しく過ごしていたらしい。

でもやはり、家族でない引け目があって、心から馴染む事は出来なかったのだと言う。
それでも友達夫婦を無くせば自分にはそれこそ何も残らなくなってしまうから、必死になって、すがりついていたと言った。

「松川君はね、幼なじみなの。」

唐突に言うものだから、返事が曖昧になってしまった。

⏰:08/02/04 00:29 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#191 [向日葵]
「は、はぁー……。」

「松川君はずっと側にいてくれて、お世話してくれる夫婦より、何より私の心の拠り所だったの。そんな彼に、どんどん惹かれていったわ。」

微笑んでいたつぐみさんの顔が、急に暗くなった。

「でもね……。」

********************

松川君と付き合える事になった私は、彼を物凄く束縛してしまったの。

「ねぇ松川君。さっき喋ってたのって、2組の林さんよね?」

「それが、何?」

私は彼を誰にも捕られたくなくて、特に女の子との接触を何より嫌ってたの。

⏰:08/02/04 00:35 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#192 [向日葵]
「彼女がいるんだから、あまり周りの子と喋らないでよ!そういうのヤダ!!」

「あー……分かった分かった。」

最初は、松川君も私の気持ちを尊重してくれたの。
でも私は頭に乗って、松川君を更に縛りつけた。

「また喋ってた!ヤダって言ったじゃない!」

「用事があるんだから仕方ないだろ!」

「伝言で誰かに言ってもらえば済むことじゃない。」

私は両親を亡くした事から、大切な人が自分から離れていく事を極端に恐れたの。

⏰:08/02/04 00:40 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#193 [向日葵]
あの時の私は、松川君を縛りつける事で、なんとか自分の方へ気持ちを向けさせてたけど……。

物には、限度ってものがあるから……。

「もういい。普通の友達に戻ろう。俺……疲れた。」

そう言われた瞬間、私の中で何かの歯車が狂って、気づけば、泣き叫んでいたわ。

ちょっとした精神病にかかっていた私は入院。
当然、彼とは、自然消滅して、それから会う事はもう無かったの。

*******************

「だから、また会えた時嬉しかったの。もう1度、前みたいに戻りたいって。そう思ったら、また暴走しかけてる自分がいるのよね……。」

⏰:08/02/04 00:45 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#194 [向日葵]
つぐみさんの話を聞いてる半分、私は違う事を考えていた。

私とつぐみさんは、あまりに似すぎている。

違う所と言えば、思想。

つぐみさんは何かを失った事により、真と言う限りある存在に執着した。

私は失った事によって全てが嫌になり、目を背けている。

真は何故私を引き取ったのだろう。
実は前から気になっていたのだ。

もしかして真は、自分のせいでつぐみさんを壊してしまい、修復出来なかった事を今でも後悔してるんじゃないのだろうか。

⏰:08/02/04 00:49 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#195 [向日葵]
そして、同じような境遇の私が出現した事によって、今度こそ助けたいと思ってるのではないだろうか。

私は……ただの代わりか。

ならもうごっこはいらない。
好きなようにつぐみさんと過ごせばいい。

そうすれば、私はまた夢の中へといけるのだから……。

話している最中に来た紅茶の代金を机に出して、私は席を立った。

「そんなに心を縛らなくても大丈夫。大事にしたいと思えば、おのずと結果は見えてくる筈だから。」

⏰:08/02/04 00:53 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#196 [向日葵]
軽く頭を下げて、私は喫茶店を後にした。

車が行き交うのを目の前で見ながら、私はぼんやりと考えていた。

ごっこも終わり……、若者改造計画も終わり……。

なら、真にとって私はお払い箱だ。

そうしたら、必然的に私はあの家を出なくちゃいけなくなる。

また……振りだし。

真はちゃんと次の場所を探してくれるだろうか。
それともアイツの事だから、自分で探せとか言うかな。

⏰:08/02/04 00:57 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#197 [向日葵]
結局私は、誰かの特別な存在となる事はあり得ないんだ。

流されて海を漂う流木を止めてくれるものは何も無い。

私も正にそのようなものだ。

早いとこ、荷造りしておこう……。

いつものマンションについて、私は私専用の鍵でドアを開けた。

入れば、靴があった。

真が帰っているらしい。

黙って部屋に行こうとすると

「ただいまくらい言えんのか馬鹿たれ。」

⏰:08/02/04 01:01 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#198 [向日葵]
振りむけば、リビングに続く出入口に、真が腕を組みながらよっかかっていた。

私は真を見た途端に、何だか疲れがどっと体を襲った。

「自分だって言わない時あるじゃん。私にばっかり咎めないでよ。」

えらくツッケンドンした言い方になった為か、真は片方の眉を上げた。

「どうかしたのか?何をイライラしてる。」

「どうもないっ。疲れてるだけっ。いちいち私に口出ししないで!」

「なんだよお前。月1のアレか?」

⏰:08/02/04 22:53 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#199 [向日葵]
おどけた口調の真になんだか腹が立って、持ってたカバンを投げつけた。

「もう嫌!なんで私がアンタの言う通りにならなきゃなんないの?!アンタが提案したゲームだって全然楽しくもない!」

「おいみかげ。落ち着けって。」

「夢を見るな現実を見ろ?一番現実見ずに代わり作ってるのはどこの誰だよ!」

「……何の話?」

真は怪訝そうに顔色を変えた。
心外とでも思ってるのだろうか。

いや、代わりになってた私の方が心外だ。

⏰:08/02/04 22:58 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#200 [向日葵]
「今日、つぐみさんと会った。アンタの過去の話も聞かせてもらったよ。」

「それで?何よ代わりってさ。」

「とぼけないで。自分が一番分かってるくせに!」

それでも、真は分からないと言った表情を浮かべている。

「真は……つぐみさんが好きなんでしょ。私の歳ぐらいだった時のつぐみさんを救えない代わりに、同じ境遇の私を救う事で満たされようとしてる。違う?」

真は黙ったまま私を見ていた。
その顔からは、動揺も、困惑も見当たらない。

⏰:08/02/04 23:03 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


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