・・・ゆめみる魚・・・
最新 最初 🆕
#301 [向日葵]
柔らかいような、透けてしまっているような。
温かいような、冷たいようなお母さんの手が私の頬に触れる。

少女のようなお母さんだけれど、やはり母親の目をして、凛として輝いていた。

『貴方は、他人ばかりを責めすぎてる。信じる事をしてみた?』

……して、ない……。

『じゃあ信じてよ。』

突然、お母さんが真に変わった。

なのに夢の中の私は何も驚かず、眼鏡の奥にある鋭い視線を受け止めていた。

⏰:08/02/16 00:51 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#302 [向日葵]
『言ったでしょ。俺がいるからって。俺はずっとお前の側にいるよ、みかげ。』

すると真は、またお母さんになった。

『恐れて当たり前。現実は矛盾だらけだもの。でもね、信じてみるからこそ、意味が生まれてくるの。夢にばかり頼っては駄目。』

お母さんは私の両手を握って、おでこをコツンと当ててきた。

お母さんから、いい匂いがした気がした。
でもそれは、真がいつもつけてる香水のような気もした。

⏰:08/02/16 00:55 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#303 [向日葵]
『大丈夫。みかげはお母さんの子だもの。きっと解決出来るわ。』

優しく微笑まれると、泣きたくなった。

お母さん。
お母さん。

もう会う事ができないんだね。
その笑顔に会う事は、不可能なんだね。

歯を食い縛って、涙を我慢すると、左手に何か柔らかく包むものを感じた。

お母さんはいつの間にか仄かに柔らかく光ながら、私と距離を取っていた。

『ね。大丈夫。』

⏰:08/02/16 01:00 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#304 [向日葵]
すると、お母さんはフワリと消えてしまった。

不思議とさっきのような悲しみはなかった。

『側にいるよ。』

私は左手を包むものを見た。
どうやらその主が喋ったらしい。

それはいなくなったと思った、真のものだった。

いつになく、私を優しく見つめる。
私は心臓が跳ねるのではなく、安心したかのように穏やかな気持ちになれた。

そっか……。
側に、いてくれるか……。

⏰:08/02/16 01:04 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#305 [向日葵]
じゃあ……大丈夫かな。

真が、現実に私を呼んでくれるんでしょう?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ゆっくり目を開けると、見慣れた天井があった。

帰ってきた私は、ソファーに寝転び昼寝。
久々に長く寝た。
夢も見た……気がする。

サァー……と爽やかな風を感じた。

あれ?窓なんか開けたっけか?

視線を動かせば、夕暮れ時の空が見えた。
ベランダに出る窓が開いている。

⏰:08/02/16 01:08 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#306 [向日葵]
それと同時に何かの香りを感じ、視界に入るこげ茶色の髪があった。

私が寝ているソファーを背もたれに、真がいた。

座ったまま寝ているらしい。

ギシッと音を立てながら体を起こすと、真も目を覚ました。

「……ん。起きたか。」

「うん。お帰り。今日は早いんだね。」

⏰:08/02/16 01:12 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#307 [向日葵]
「この頃採点とかであんまり寝てなかったからなー。お前こそ、珍しいな。気持ちよさそうに寝てたぞ。」

なんでそんなに優しく、温かく微笑むんだろう。

心が満たされていく。
もっと欲しいと叫んでしまう。
胸が、いっぱいになる。

真を見ると、切なくなる……。

と思うと、涙が流れた。

止まる事を知らないように、ポタ……ポタ……と。

「みかげ……?恐い夢見たのか?」

⏰:08/02/16 01:17 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#308 [向日葵]
首を振るので精一杯だった。

涙はまだ止まらない。

真が私に手を伸ばす。

目尻に指先を触れて、涙をすくう。

「な……っんか、分かんないけど……。」

分かる事は1つだけ。

「真が……好きだから、涙が出てくる。」

好きで好きで、どうしようもない。
真が言ってたのは、この事か……。

なんて、狂おしい刺激だろう。

⏰:08/02/16 01:21 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#309 [向日葵]
私の発言に、真は嘲笑しなかった。
ただただ私を愛おしむように見つめている。

「ウン。知ってる。」

意地悪な口調で言っても分かる。
その言葉の感情の裏に、どれだけの柔らかな気持ちがこもっているか。

両手で顔を包まれると、真は私の目に口づけた。
おでこ、頬と順番に……。

そして自然に唇へ……。

首に感じた感触よりも、手に感じた熱よりも強い刺激を感じる。

⏰:08/02/16 01:27 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#310 [向日葵]
ううん違う。

これはもう刺激じゃないんだ。

離れては触れて、離れては触れと、何度も重なる唇を感じながら、私は思った。

人はこれを刺激とは呼ばない。
そんな安っぽいものなんかじゃない。

これは……好きっていう恋する感情なんだ……。

心が……真を求めてやまない……。

⏰:08/02/16 01:31 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#311 [向日葵]
8P・通じたものは

魚はゆめがみれなくてもいいとかんじました。

なかまがいるから、まいにちがたのしいのです。

「ぼく、ゆめをみるよりきみたちといたほうがたのしいよ。」

と、そのとき、1ひきの魚がいいました。

「たいへんだ!あらしがくるぞ!!」

・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

その日は、また真と一緒に寝た。

⏰:08/02/16 01:36 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#312 [向日葵]
前のような、不安な気持ちは一切無かった。
いや、無くなっていた。

自分を包む腕を感じれば、もう何もかも大丈夫なんだと安心して寄りかかる事が出来た。

大切なものを失っても、夢に逃げたりすることはもう無いだろう。

優しく髪を撫でる真の指が、私をさらに安堵の世界に連れていく。

ああ……。
心が通じるって、こんなに心地良いものなんだ……。
私は何かから守られている気さえした。
まるで赤ん坊のよう。

⏰:08/02/16 01:41 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#313 [向日葵]
何かから守られる安らぎ感に、ゆっくりと、目を閉じる。

しかし、通じたものは、まるで張りつめた糸が段々と千切れていくように、儚い事も起こるのだ……。

―――――――……

<今日、学校の帰り会えないかな?>

つぐみさんからのメールだった。

「だぁれー?」

箸をくわえながら私の方に身を乗り出す多香子。

「別に。」

と言って、返信を後回しにする事にして携帯を閉じた。

⏰:08/02/18 01:34 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#314 [向日葵]
「あー!分かった!コレっしょ!?」

多香子が右手の小指を立てる。
が、私はそれを無視してお弁当の蓋を開けた。
途端に、私は顔に熱が宿る。

多香子に悟られないように、下のカバンから物を取り出すフリをして顔を隠した。

今日の朝は、いつもの朝より1味も2味も違った。

どこか甘ったるい雰囲気を醸し出していて、でも私はその雰囲気をもう知ってるかのように真と過ごした。

⏰:08/02/18 01:38 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#315 [向日葵]
真に侵食されてる自分が、急に恥ずかしくなった。

でもそれが嫌じゃないと思ってる自分はもっと恥ずかしかった。

「みかげー?何してんのー。」

「べ、別に。少し暑いと思ったから、下じき探してるだけ……。」

「あー。もう夏だもんねー。」

外を見れば、夏の訪れを知らすかのように入道雲が発生していた。

真に引き取られて早2ヶ月。
1人の家にこんなに長く滞在したのは真が初めてだ。

⏰:08/02/18 01:43 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#316 [向日葵]
「そういえば、文化祭、何するか決まったの知ってる?」

忘れてた。

「何すんの?」

「実は、な・ん・とー……。」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「仮装部屋ぁ?」

珍しく社会科準備室に用があった私は、たまたまそこにいた真とくっちゃべっていた。

私は真の呆れたような声にただコクンと頷いた。

「限られた予算で服作るんだって。」

⏰:08/02/18 01:49 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#317 [向日葵]
「予算っつっても限られてるだろ。」

「ここの卒業生の兄弟をもつ子がクラスに何人かいてその中の1人が私達と同じような事やったから何着か服持ってるって。」

他の人達はメイド喫茶をやったからメイド服があるだの、劇をした時に作った衣装がタンスに眠ってるだのと言ったもんだから、多数決を取るとそれに決まったらしい。

仮装部屋、なので仮装したい人達に服を貸すシステム。
それでいて写真撮影なんかもあったりしちゃって少し豪華なのだ。

そして店番兼スタッフは、仮装しなくちゃならないとか言う迷惑極まりない出し物なのだ。

⏰:08/02/18 01:56 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#318 [向日葵]
店番はクラスでローテーションしなきゃならない為、最悪な事に私も仮装しなくてはならないのだ。

「だから……真は絶対に来るな。」

「はぁ?そんな面白そうなの見にくんなってか。」

「私が店番の時間帯を教えるからそれ以外に来てくれ。」

「そうもいかない。俺達の見回りだってまばらだからなぁ。」

とか言いながら時間を教えれば、なんとか調整してくるのが真だ。

どうせなら時間を教えない方が得策かもしれない。

⏰:08/02/18 02:00 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#319 [向日葵]
「あ、そろそろ行かなきゃ。じゃあね真。」

「おぅ。……あ、みかげ。」

「は?」

振り向いた私の頬に、真の唇が押し付けられた。

「行ってらっしゃい。」

「や……っ、やめてよっっ!」

顔が赤くなったら多香子に怪しまれるんだから!!

私は足早に社会科準備室を後にした。

「お帰りみかげー。週末課題を運べーだなんて、松川も鬼だよねー。」

⏰:08/02/18 02:04 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#320 [向日葵]
ため息をつきつつ、「そうだね。」と答えようとすると、男子が外を見て騒ぎ始めた。

「ヤバイ!超ー美人なんですけどぉっ!?」

「色しっろー!!UVカットしてますみたいな!」

「誰の彼女だぁー!?手上げてみろ!?」

「俺でーす!」

「いやあり得んから。」

雛鳥が親鳥から餌をねだるが如くピーチクパーチクうるさい男子の間から、その噂の的を垣間見た。

「……あ!」

⏰:08/02/18 02:09 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#321 [向日葵]
スカートのポケットから携帯を見て、また入れる。

「多香子、帰りのホームルームサボる!」

「えぇ!?ちょ、みかげぇっ!!」

走って走って、靴の履き替えもそこそこに私は校門へ向かった。

「つぐみさん!」

彼女こそ、頭が騒ぐしかない小学生のままの男子の噂の的だ。

つぐみさんはにっこり笑って小さく私に手を振った。

「みかげちゃん。」

気品漂う夏の服装に、自分の制服がやけに子供じみてる気がした。

⏰:08/02/18 02:13 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#322 [向日葵]
「あ、あの、メール返さなくてすいません。」

「いいのいいの!こうして会えたから!さ、乗ってっ!」

有無を言わさず乗ってきた車の助手席を開けて私は押し込まれた。

「この頃暑いよねー。」なんて世間話をしつつ、車は発進した。

「あの……。私に用でも……?」

「久しぶりにみかげちゃんに会いたいなぁって。色々話もしたいし。」

つぐみさんは、私と真の関係を知っているのだろうか。
知らないなら、あまり言わない方がいいのかもしれない。

⏰:08/02/19 11:30 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#323 [向日葵]
またつぐみさんが壊れてしまったら……。

「さて、着いたよー。」

「へ?」

着いた所は海辺だった。

しかもこの海知ってる。

……真と来た所だ……。

「外出ない?」

「あ、はい。」

外に出ると、潮風が心地よく体に吹き付けてくる。

海の音も、気持ちを落ち着けてくれるみたい。

「この頃、松川君とはどう?」

「あー……別に普通に過ごしてます……って、え!?」

⏰:08/02/19 11:35 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#324 [向日葵]
綺麗な黒髪をなびかせながら、つぐみさんはにっこり笑った。

「貴方はどうか知らないけど、松川君は貴方が好きみたいね。……私といても、上の空だし。」

最後の一言はとても寂しそうだった。
だってつぐみさんは真が好きだもの。

真だって……ううん。私は真を信じる事にした。
こんな事、思っちゃいけない。

「ここね、松川君とよく来たとこなの。」

「あ……そうなんですか……。」

だから真は、私をここに連れて来たのか。

⏰:08/02/19 11:45 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#325 [向日葵]
思い出の場所をあの時連れて来たのは、私の為じゃなく自分の為だったのかもしれない。

つぐみさんと会って、心揺さぶられる自分を落ち着かせる為に……。

「松川君は、私が嫌いかな……?」

「そんな事……。」

「友達でいいって言ったの。でも……本当は昔みたいに戻りたかった。」

どう答えればいいか分からなくて、私はうつ向く。

複雑な心境。
真が好きなのは私で、私も真が好き。
でも2人は昔恋人同士で……。

⏰:08/02/19 11:50 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#326 [向日葵]
「松川君が……好き……。」

さっきよりより一層悲しそうな声に、私は顔を上げた。
すると、つぐみさんの大きな眼からは、大粒の涙が流れていた。

「好きなのに……っ友達でいるって決めちゃった……っ!本当は私を好きになって欲しいのに……!」

「つぐみさ……。」

私が真を好きになりかけていた頃なら、まだ間に合ったかもしれない。

真をなんとかしてでも、つぐみさんとくっつけようとしたかもしれない。

⏰:08/02/19 11:53 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#327 [向日葵]
でもごめんなさい。

つぐみさんごめんなさい。

私は、真が好き。
真が必要。

真だけなの。
今まで、引き取ってくれた中で、親族以外に愛情を注いでくれたのは。

現実から逃げた私を、再び呼び戻してくれたのは……。

温かい目で、微笑んでくれたのは……。

だから、真は、貴方に渡せない……。

そう思っていても、つぐみさんの華奢な体か震えるのを見れば、やっぱり私は口にすることは出来なかった。

⏰:08/02/19 11:57 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#328 [向日葵]
口にしない方が、より残酷なのかもしれない。

それでも、私は言う事が一向に出来ず、海に飲み込まれていく夕日をただただ静かに眺めていた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ごめんなさいね。」

つぐみさんが泣き止んだ頃には、もう日が沈んでいた。

「今から、松川君に電話したいの。みかげちゃん、側にいてくれない?」

なんですと?

「え……でも……。」

「お願い。友達宣言してから、連絡取るの今日が初めてなの。」

⏰:08/02/19 12:01 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#329 [向日葵]
フフと恥ずかしそうにつぐみさんは笑う。

「久しぶりとなると、緊張するのはどうしてかしらね。」

そう言って携帯を開く。

画面の光で、つぐみさんの顔が青白く照らされる。
その顔は、本当に緊張してるのか、堅かった。

リダイヤルボタンを押し、携帯を耳に当てる。

少しだけ、呼び出し音が聞こえてくる。

「……あれ?」

つぐみさんが首を傾げる。

「出ないみたい……。」

⏰:08/02/19 12:06 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#330 [向日葵]
「まだ仕事中かな。」と呟きながら、携帯を閉じた。

「仕方ない。付き合わせてごめんね。今日はありがとう。家まで送るわ。」

「あ、ハイ……。」

ライトを照らし、車は夜道を走って行く。

海辺なので、ほとんど周りは真っ暗。
近くにある家の明かりと街灯だけが光っていた。

「みかげちゃんは、昔松川君と会った事とかあるの?」

「いえ。松川とは、遠すぎる親戚みたいなもので、会った事は無いです。」

⏰:08/02/19 12:10 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#331 [向日葵]
「そう……。」

つぐみさんは呟く。

「私がみかげちゃんだったら良かったのに……。」

「……。」

何も、言えなかった。
「変わってあげましょうか?」だなんて、冗談でも言いたくなかった。

本当、私は子供すぎ……。

30分ほどして、私の家へ到着した。

「今度、プールにでも行かない?もうすぐ7月だし、松川君とみかげちゃんと、あとみかげちゃんのお友達でも連れて。」

⏰:08/02/21 01:05 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#332 [向日葵]
プール……。

私はいいけど、真はどういうだろう。

「また、何かあったら連絡します。」

つぐみさんはにこっと笑うと、「ありがとう」とお礼を言って私が車から降りた後、颯爽と行ってしまった。

エレベーターまで上がって、真が待つ部屋まで歩いていく。

ん?

ドア前に人影。

「……遅い…。」

⏰:08/02/21 01:09 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#333 [向日葵]
そこにいたのは、真だった。

「は?え?なんでアンタここにいんのよ!?」

「鍵忘れた。おまけに携帯も忘れたからお前に連絡出来なかった。」

だからつぐみさんが連絡しても出なかったんだ。

とりあえず、スカートのポケットから鍵を出して開ける。

「どこ行ってた?」

なんとなく、つぐみさんと出かけてたとは言いにくかった。
黙って入り、リビングの電気をつける。

⏰:08/02/21 01:13 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#334 [向日葵]
「みかげ、無視か。」

「頼むからさ、父親みたいな発言しないでくれる?正直ウザイ。私がどこ行こうが、勝手でしょ?」

手を洗いながら喋る。

振り返らなくても、真の威圧が背中にかかってきて、振り返るに振り返れない。

ちょっと言い方がキツかったか?

「心配しなくても何もない。ただテストも終わったし、息抜きしたかっただけ。」

と付け足してから振り返る。

⏰:08/02/21 01:18 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#335 [向日葵]
私の予想は外れたらしく、真は私の方を見ていなくて、ぼんやりとテーブルを見ていた。

視線の先には携帯が開かれている。
つぐみさんからの着信があった事に気づいたみたい。

「……つぐみさんに会ってたの。」

真はハッとしてゆっくり私を見た。

「今度皆でプール行こうだって。」

「……プール?」

私は頷く。

真は難しい顔をして私から目を反らした。

⏰:08/02/22 00:58 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#336 [向日葵]
「真が思ってるほど、つぐみさんは頼りなくないと思う。つぐみさんも、変わったんだよ。」

真はまだ黙ったまま。
何を考えてるか検討もつかない。

そうだ……私、心が通じても……気持ちが通じても、真が考えてる事が全く分からない。

だから不安になるんだ……。

「何……考えてるの……?」

静かに問えば、必ず真はこう答える。

「別に。気にするな。」

⏰:08/02/22 01:01 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#337 [向日葵]
「別に。」「気にするな。」

突き離されたような言い方。
「気にするな。」と言われて気にしない訳がない。

でも私は、更に問いかける事は無理な気がして、黙って部屋へ行った。

ねぇ真……。
真は私の事、本当に好き……?

******************

つぐみからのしつこいメールや電話は、友達だと言った時から途切れた。

しかしそれは逆に不安要素を多くした。

⏰:08/02/22 01:07 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#338 [向日葵]
みかげとの多くなる接触。
つぐみ自体の精神の問題。

みかげは1度、つぐみと会って俺との過去の話を聞いたせいで俺の気持ちを受け止めてくれるのに時間がかかった。

そういう遠回りな事態は出来れば遠ざけておきたい。

そして、つぐみ……。

いくら友達だと言ってもアイツの気持ちは痛いほど感じている。

それを丸々無視して否定してしまえば逆戻りしてしまうかもしれないと心配になる。

⏰:08/02/22 01:11 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#339 [向日葵]
命を絶つ。

おかしくなったアイツならやりかねない事。

そうなれば、一番傷つくのはみかげかもしれない。

あれでも仲良くやってるみたいだし、また身近な人がいなくなってしまえば自分の殻に閉じ籠ってしまいそうだ。

……ったく、俺いつからこんないい奴になっちまったんだか……。

最初、みかげを引き取ったのは単なる気まぐれだ。

引き取ったら取ったで、面白い反応してくれるからコイツで遊びたいなぁと思ったんだ。

⏰:08/02/22 01:15 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#340 [向日葵]
いつしか、家に帰れば当たり前のようにみかげがいて、辛い過去を背負う自分を立て直す一方、俺に気持ちを向けてくれる事が嬉しくなった。

からかえば顔を赤くしながら怒り、いい加減な事をすれば突っぱねる。

かと思えば楽しそうに笑ったり、毅然としているように見えて頼りなかったり……。

そんな所が、また愛おしくて、今じゃ手放したくない。

だから……つぐみとは友達としてしっかり距離を取っておかないといけない。

俺の気持ちは、いずれか言わなきゃならない。

その時も、慎重でなければならない……。

⏰:08/02/22 01:23 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#341 [向日葵]
「何……考えてるの……?」

お前の事考えてただなんて、俺がお前を好きすぎるみたいな発言をするのは悔しい。

「別に。気にするな。」

照れ隠しのつもりだった。

それなのにみかげは、どこか落胆したようにトボトボと部屋へ戻ってしまった。

何か悪い事言っただろうか……?

そういえば……プールがどうとか言ってたな……。

⏰:08/02/22 01:26 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#342 [向日葵]
遊びながらなら、言えるかもしれない。

つぐみに……本当の事を……。

俺は携帯のリダイヤルを押した。

***************

携帯がどこかで鳴ってる音がした。

どこに入れてたか忘れた私は部屋の中をキョロキョロ見回す。

「あ。」

確かスカートのポケットの中だ。

イスに粗末にかけてあるスカートのポケットに手を突っ込む。

⏰:08/02/22 01:35 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#343 [向日葵]
「……。……つぐみさん?」

自分はメールを送った覚えはないから、何か用事でもあるのだろうか。

メール文はこうだった。

<プールの事、松川君に話してくれてありがとう。松川君が今度の日曜にでも行こうって言ってくれたの。みかげちゃんも誰か誘っててね。詳しい事はまた連絡します。  つぐみ >

真……行くって言ったんだ……。

私に何にも言わなかったくせに……。

どうして私ばっかり、真の事で悩まなくちゃいけないんだろう……。

⏰:08/02/22 01:40 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#344 [向日葵]
――――――――……

「プール!?行く行く!」

文化祭で使う店の看板を作りながら多香子に話したところ、1発でOKが取れた。

なんて容易い子なんだ多香子……。

「じゃあみかげ、今日の帰り水着見に行こうよ!私みかげに似合う水着見つけてあげる!」

正直水着なんて着たくもない……。
何故自分の肌を他人に露出しなきゃならないんだか……。

第一私、似合う色無い気がする。

⏰:08/02/22 01:45 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#345 [向日葵]
「私青系がいいなっ。みかげは黒って感じ!あ、紺でもいいかな?……紫!?」

「……好きにしてくれ。」

水着を着た時の真の反応が目に浮かぶ……。

『お前さぁ、全てにおいて貧相すぎるだろ。』

余計なお世話じゃこの野郎。

自分の妄想に自分でムカつく。

多香子は相変わらず水着で頭一杯らしく、目を宙に向けたまま輝かしている。

「多香子。」

「んー?」

⏰:08/02/22 01:49 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#346 [向日葵]
「……やっぱいい。」

「ん?そう?」

聞けない。

好きな人についてなんてこの私が聞ける筈がない。

ましてや私は、多香子に前に真が好きか聞かれた時全否定してしまった。
なのに今更「好きだ。」とか「相手の気持ちが分からないんだけどどうすればいい?」等と言う乙女チックな会話なんて出来る訳が無かった。

そんな漫画じゃあるまい……。

しかも真を好きって言えば多香子は1から10まで聞き出すような気がするから後々面倒くさそうだし。

ここは黙るが1番。

⏰:08/02/22 01:54 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#347 [向日葵]
「ねぇみかげ。私聞きたい事があるんだけど。」

「何?」

「好きな人出来た?」

ゴトン!と大きな音を立てて、持っていたトンカチを看板の上に落としてしまった。

え……いきなり?
黙ると決断していきなりそんな事言う?

「ど、どこをどう見て?」

「最近のピンクなお花オーラを漂わせるみかげを見て。」

また始まった……。

⏰:08/02/22 01:58 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#348 [向日葵]
「だったら……何。」

「悩み事あれば話してほしいなーって思っただけ。ま、みかげの事だから私の気のせいかもしれないけど。」

私よりは恋愛経験豊富な多香子なら、悩み事を解決してくれるかもしれない。

でも私は、私を崩す事なんて出来なくて今は黙っておくことにした。

「気のせいだよ。んな訳ないでしょ。」

「そっかー。残念。せっかくコイバナ出来ると思ったのに。」

まだそんな乙女思考にはついていけない。

⏰:08/02/22 02:03 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#349 [向日葵]
実際、自分の真に対する気持ちに気づくだけでも精一杯だったし、恋人同士の雰囲気みたいなのだって、どうすればなれるかだなんて分からない。

結局今まで通りの反応とか、生活を送っている。

たまに訪れる甘い雰囲気にはただただ流される他ない。

そういえば私……キス……したよな……。
しかも何回も……。

「ん?みかげ顔赤いよ?暑い?」

「いや……。そうでも……。」

⏰:08/02/22 02:07 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#350 [向日葵]
馬鹿な回想なんてするもんじゃない。

身が悶えるほど恥ずかしいなんて気づいても遅いし、真にファーストキスを奪われてたんだなんてこれまた乙女チックな思考をしたって仕方のないことだ。

アホらしい……。

離れても真の事で頭一杯とか、どうかしてる。

こういうの毒されてるって言うんだっけか……。

しかもあの時って衝動のまま体が動いてしまった。
つまり本能のままにって事で……。

私って変態?

⏰:08/02/22 02:11 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#351 [向日葵]
それともスケベって移るのか?

「あ、松川。」

ギクッとする。

廊下で作業をしてた私達。
私はそろりと振り向く。

確かに遠くにいるのは真だ。
今は学校ど表の真だからムスッとしている。

なのに……。

「珍しいね。松川が女の子に囲まれてるだなんて。」

そうなのだ。
表の真は、顔はいいのに仏頂面を決めてるせいで怖いと恐れられる存在。

⏰:08/02/22 02:15 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#352 [向日葵]
それなのに見るからにモテモテと言うか……。

「最近松川人気上がってるんだって。」

一緒に作業しているクラスの女の子が言った。

「前みたいにツンツンした感じがなくなって、今は柔らかくなってるし、よく笑うようになったからから近づきやすいんだって。」

「へー。」

多香子が頷き、私は心の中で頷いた。

よく笑う……ねぇ。
笑うは笑うでも馬鹿にした笑いじゃなきゃいいけど。

⏰:08/02/22 02:19 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#353 [向日葵]
表の真はあくまで表だ。

皆には穏やかに笑っているように見えても、心の中では「……ハッ。」とかって鼻で笑っていそうなもんだけど。

……そう。
決して心の奥を見せない人。
だから余計に知りたくなる。

そこまで思って頭を振り、真を考えないように作業を続けた。

せめて学校にいる間は、学校の事で頭を埋めつくしておこう。

そこで夢を見ようと感じなくなった私も、真のおかげだとか思う自分を即座に追い払った。

⏰:08/02/22 02:24 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#354 [向日葵]
――――――……

「水着?」

私は渋々頷く。

職権濫用……。
真にはこの言葉がふさわしい。

校内放送でわざわざいつもの部屋に呼んでは立ち話。

もっとも、本人は「会いたいからに決まってるだろ。」とでも言うんだろうが、今複雑な気持ちである以上、呼んで欲しくはなかった。

せっかくなので、多香子と水着を買いに行く旨を伝えた。

⏰:08/02/24 01:25 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#355 [向日葵]
私は真と微妙な距離を保ちつつ、真の言葉を待った。

真は意味ありげに私を上から下まで何度も目線を往復させる。

そしてニヤリと笑った。

「お前……肉あんの?ガッサゴソじゃ色気もあったもんじゃねぇぞ。」

真が言う肉とは、お腹周り以外の事。

……つまりは胸と尻の事……。

「エロ親父……。」

ボソリと呟く。

幸い真には聞こえなかったみたいだ。

⏰:08/02/24 01:29 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#356 [向日葵]
「足も……なぁ。太すぎもいかんが細すぎもそそられねぇぞ。女は華奢な体もいいが、柔らかさも大切だからな。」

真の女談義を聞く為にここに来た訳じゃないんだけど……。
そんな熱く語られた所で私にどうしろと……。

仮に、Aカップの私の胸が一気にCカップに成長することはないだろう。

「残念だけど、真の理想とする体じゃないと思われ。嫌なら他の女の子を見る事ね。……で、話ってこんなくだらない事?」

呼び出したからにはそれなりの話があるのかと思ったのに、話がずれてる。

⏰:08/02/24 01:35 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#357 [向日葵]
真は「んー……。」と少し唸る。

夜の冷蔵庫か……。
思わず突っ込む。

「最近……さぁ、俺お前ら世代にモテるんだけど……どうする?」

意味が分からない。
文が全く繋がってないじゃないか。

……それに。

「何故聞く。真の問題でしょう?」

真は笑う。
意地悪な顔は、最早悪魔としか思えない。

……いや、死神?

……。
……言い過ぎか。

⏰:08/02/24 01:39 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#358 [向日葵]
あれ?死神と悪魔ってどっちが上?
私の中では悪魔が上って気が……。

「……――じゃねぇか。って、聞いてんのか!?」

「え?あ、ゴメン。全然聞いてなかった。」

足を組み換えて深くイスに腰かけた真は、「たく……。」と小さく悪態づきながら、私が聞いてなかった部分を話した。

「もし、俺がお前ら世代に誘惑されて、お前を捨てたらどうすんの?悲しいんじゃねぇか?っつってんの。」

「……何それ。」

⏰:08/02/24 01:43 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#359 [向日葵]
私達世代には興味ないとか言いながら私を好きとか言って。
好きって言う割には心の中覗かせてくれないし。
今だって、何でそんな嫌な気持ちにさせるかなぁ……。

「そんな気持ちがすぐすり変わる程度にしか私の事好きじゃないの?」

真は目を軽く見開いた。

足を組むのを辞めて、こちらに身を乗り出す。

私は少しずつ後退り、ドアに手をかけた。

「からかうなら……その気持ちが嘘なら……もういい。」

⏰:08/02/24 01:47 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#360 [向日葵]
素早く後ろ手に鍵を開けて、部屋を後にした。

追ってくる気配はない。

所詮この程度。
学校に入れば私達は教師と生徒。
意味信な行動はご法度。

それにしたって、何かそれなりの態度くらい取ってくれてもいいじゃないか。

帰って機嫌を取ればいいとでも思ってるの?
私はそんなにちょろいって馬鹿にしてる……っ!?

悔しくて、涙を我慢したら、鼻水が垂れてきそうになったので必死にすすった。

⏰:08/02/24 01:52 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#361 [向日葵]
馬鹿らしい。

私ばっかり。
1人よがりもいいところだ。

それが嫌い。

踊らされてるみたいで。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

帰り、多香子と一緒にデパートで、水着を見ていた。

ルンルンな多香子と違って、午後から急に曇りだした空のように私の心も暗雲が垂れこめてきだした。

「あ、これいぃー!試着してくるねー!」

⏰:08/02/24 01:57 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#362 [向日葵]
ため息をつきつつ、試着室へ向かった多香子の水着をチラリと見た。

真っ赤っか……。

赤って……赤って……。

私からすれば考えられない色だった。
それを着ると言う多香子。

アイツすげぇ……。

「どんなの探してるんですか?」

「は?」

右を向けば、自然な茶色い髪をしたお兄さんがいた。
推測で……20……1、2だろうか。

⏰:08/02/24 02:02 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#363 [向日葵]
ちょい待て私。

普通こんな女水着が売ってる所で男っていんのか?

不躾ながらも、そのお兄ちゃんをジロジロ見た。

お兄さんは気にした風もなく、ただにこにこして側にいた。

「あの……近い!」

「あ、ゴメンゴメン。」

と言いながら去ろうとはしない。
見た所、店員らしいが、この売り場の店員かどうかは定かじゃない。

完全に突っぱねる事も出来ず、私は無言で水着を探した。

⏰:08/02/24 02:07 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#364 [向日葵]
「色とか決まらないんですか?」

しつこい。

私は売り場で店員に言いよられるのが嫌いだ。
押し付けがましく商品を売ろうとしてる気がして、選べたもんじゃない。

「いえ。別に。」

と言って逃げようとした。

……が。

「みっかげー!どーぉ!?良いと思わない!?」

こんの馬鹿!!タイミングが悪すぎ!

⏰:08/02/24 02:10 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#365 [向日葵]
案の定、店員のお兄さんは水着姿の多香子に食い付いた。

「お客様、大変似合ってますよー。色味も合ってますしー。」

おだてられれば悪い気はしない。
多香子は恥ずかしがりながら店員さんと楽しそうに話す。

そこで多香子の馬鹿はいらん事を言ってくれた。

「あ、あの子の水着見てやってくれますか?多分黒系が似合うと思うんですけど!」

多ぁー香ぁー子ぉぉーっ!!

お兄さんは嫌な顔せず、まぁそれが当たり前だろうけど、私の水着を探した。

⏰:08/02/24 02:14 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#366 [向日葵]
「これは?」とか、「こんなデザインいかがですか?」とか、いちいちうるさい。

私は全部無視して、適当に自分が合いそうな色とデザインの水着を選んで試着室へと向かった。

「こんなもんか。」

全部着終わってから、全身鏡を見て呟く。

しかし……。

本当貧相な体だなオイ……。
ガサゴソまでいかないものの、確かに“肉”は少なかった。

「って、別に気になんかしないんだから!」

「みかげ?どう?」

⏰:08/02/24 02:20 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#367 [向日葵]
「まぁまぁ。」と言う私の返事を聞いて、カーテンの隙間から多香子の顔がにょきりと出てきた。

鏡に写った多香子の顔が、にまぁと笑う。

何事かと私は振り返った。

「あのお兄さん、感じいいよねー。好きになりそぉー!」

私の水着よりあの店員かよ。

思わずこけそうになった。
吉本新喜劇じゃあるまい。

「着替えるから出てけ。」

「はぁーい。」

⏰:08/02/24 02:26 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#368 [向日葵]
・・・・・・・・・・・・・・・・

会計を済ませて、売り場を後にしようとした時だった。

「あ、さっきのお兄さんだよ。」

耳打ちしてくる多香子の視線の先に、さっきの店員がいた。
お兄さんは私達に気づくと、やっぱりにこりと笑ってこちらを向いた。

その時、何故かそのお兄さんと、真がダブった。

特別どこかが似ているとかじゃない。
ただ雰囲気と言うか、イメージと言うか……。

⏰:08/02/24 02:30 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#369 [向日葵]
頭をよぎる、今日学校で見せた真の微笑み。

……そうか。
この人は

「表……。」

「気に入ったのが見つかりましたか?」

気がつけば、お兄さんは目の前にいた。
前にすればよく分かる。

コイツは真属性の奴だ。

よって危険。

「ありました。じゃ。多香子、行くよ。」

多香子は名残惜しそうにお兄さんを振り返りながらエスカレーターを降りた。

そして私も降りようとした時……

……腕を掴まれた。

⏰:08/02/24 02:35 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#370 [向日葵]
警戒しながら、ハッと振り返る。

「君、察しがいいみたいだね。もしかして本能?」

化けの皮が剥がれてる。

やっぱりコイツ……。

「裏の顔、客に見せていいの?」

何がおかしいのか、お兄さんはクスクス笑う。
名札を見れば「榊」と書いてあった。

「大概の女の子なら君の友達みたいにコロッと騙されるのにね……。でも、君は違うみたいだ。」

妖しげな、少し薄めの茶色のカラコンをはめた目が、私を射抜くように見つめる。

⏰:08/02/24 02:39 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#371 [向日葵]
私の中の、警鐘が鳴り響く。

コイツに、近付くなと……。

⏰:08/02/24 02:41 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#372 [向日葵]
9P・類

「あらしがくるぞー!」

そのさけびとともに、うみがおおきくゆれはじめました。

うみのなかは、しろくにごり、みんなのすかだがみえなくなってしまいました。

「みんな!どこにいるの!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

私と、「榊」という店員の睨み合いは続いていた。

「で……私に何の用?」

「面白いからさ、気に入ったんだ。付き合ってくれない?」

⏰:08/02/24 02:45 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#373 [向日葵]
私は目をすっと細めた。

「死ね。」

手を乱暴に振り払う。
再びエスカレーターに足を踏み入れようとすると、榊は前に立ちはだかった。

苛立ちを隠す事なく、眉間にしわを寄せて榊を睨んだ。

「軽い言葉と思うかもしれないけど、本気。君の事もっと知りたいなって思うんだ。」

意外や意外。
真と同じように見えて、同じじゃない。

この言葉は、本当のような気がした。

……いや、それも演技のうちか?

⏰:08/02/24 02:49 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#374 [向日葵]
私はどうも人間観察が苦手らしい。
相手の本心が見えないでいる。

この人も。
…………真も。

「何?見つめてくれちゃって。惚れた?」

考えていたら、どうやらお兄さんを見つめてしまったらしい。
親しげな距離で、笑いかけてきた。

「ばっかじゃない。もう来ないからアンタにも会わない。そうやって誰にでも口説いてればいい。」

お兄さんを押し退けて、私はエスカレーターを下った。

⏰:08/02/27 00:27 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#375 [向日葵]
「榊 歩っ!」

降りきった頃、急に後ろから声がするもんだから、思わず振り返った。

お兄さんは両手をポケットに突っ込んで、無邪気に笑っていた。
それはそれは、少年のように。

「榊 歩(さかき あゆむ)ってんだ。覚えといてよ。」

「……。もう忘れた。」

それだけ言って私は多香子の元へと行った。

「何ー。みかげ狙われてたの?」

知らないよ。
勝手にあっちが興味持っただけ。

⏰:08/02/27 00:32 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#376 [向日葵]
「帰ろう、多香子……。」

一気に疲れた。
意味の分からない疲れ。

特別体力を消耗した訳でも、頭を使った訳でもないのに、何故か疲れた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

家に帰っても、真はまだ帰ってきてなかった。

携帯を見て、わざわざセンター問い合わせまでしたのに、なんの連絡も入ってなかった。

顔を合わせるのは気まずかったからいいけど、せめて何かメールくらいは……詫びたメールくらいはあるかと思ったのに……。

⏰:08/02/27 00:36 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#377 [向日葵]
私は何を期待してたんだろう。

期待をすればするだけ、裏切られた時のダメージが大きいのを知ってるくせに……。

[お母さんとお父さんは?]

小さい頃の私だ。

[お空にね、出かけて行ったの。だから、いつかは帰ってくるよ。]

祖母が、小さな私に言った。

でも結果は、当たり前というか、帰ってなんて来なかった。

⏰:08/02/27 00:40 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#378 [向日葵]
信じる事を決めたのに、未だ渦巻く心の闇を、すぐに全て拭い去るのは難しいらしい。

でも、もう何もかもを投げ出して逃げる事は、したくなかった……。

――――――……

目を開けば暗闇だった。

カーテンを開けっぱなしにした窓からは月明かりが差し込んできている。

空は、星がポツポツ出ていた。

「……暑…。」

窓を開ける。
風が入ってくる事を望んだけど、入ってきたのは生温い湿気だけだった。

⏰:08/02/27 00:44 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#379 [向日葵]
すると突然ノックが聞こえた。

「みかげ?起きてんのか?」

真だ。

帰ってきてたんだ……。

いまいちぼんやりしてる頭なのに、情報を素早く処理して、私は今何をすればいいかを必死に考えた。

でもちんたら考えてる暇なんてなかった。

真がドアを開けてしまったからだ。

確かめるかのように、ゆっくりとドアが開き、真の姿が少ない明かりに照らされる。

⏰:08/02/27 00:49 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#380 [向日葵]
「……みかげ?」

「……。」

何を言えばいいとか、分からなかった。
出来れば真の横を通り過ぎて風呂にでも入って、この気まずい雰囲気を先送りにしたかった。

でも助かったのは、真が電気をつけようとしなかったことだ。

顔を見なければ、幾分かは耐えられる。

「怒ってんの?」

怒ってるんじゃない。
ただ不安なだけ。

真を好きでいていいのか、迷ってるだけ……。

⏰:08/02/27 00:53 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#381 [向日葵]
ギシ……と床を軋ませながら、真が近づく。

いつになく、真が慎重なのに私は驚いた。
いつもなら、こちらの事などおかまいなしなのに……。

月明かりで、真の顔が青白く見える。
幽霊のようなのに、何故か色っぽく見えて目が離せない。

妖艶とでも言うのだろうか……。

私がいるベッドに一緒に座った真は、ゆっくり手を出すと私の頬に指先を触れた。

びくりと体が少し反応する。
暗闇に近いせいか、五感が鋭くなってる。

⏰:08/02/27 00:59 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#382 [向日葵]
お互いの息遣いがよく聞こえる。
真の香水の匂いがいつもより漂ってくる。
触れる指先から僅かな体温が伝わってくる。

頬にあった真の指が、私の唇をさまよって止まる。

「何か、喋ってくんない?沈黙って結構キツイ……。」

声までが、いつもと違うように聞こえる。

あぁそうか。
だから大人の情事と言うものは、暗闇で行われるのか。

でも、今はお互いそんな気がないのは確かだ。

私はなんとかして言葉を搾り出さなければならない。

⏰:08/02/27 01:03 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#383 [向日葵]
「―――……水着、買ってきた……。」

「……うん。」

何を言うかと思えば水着か、と思ったかもしれない。

でも、例えば「私のどこを好きになったの?」とか「私の事本当に好き?」とか聞けるものでもなかった。

と言うか、そんなの聞いたら、すごく重い気がして言えなかった。

「どんなの買ったの?」

真が聞いた。

「普通。どこにでもあるようなやつ。それに、ガバガバだから、真はつまんないと思うよ。」

⏰:08/02/27 01:07 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#384 [向日葵]
すると真は、唇から指先を離して、その手で私の頭をワシャワシャ撫で回しながらクククと喉の奥で笑った。

とりあえず、気まずいわだかまりは無くなったらしい。

「そっか……。でも俺は、お前の水着姿見れるだけで嬉しいよ。」

暗くて良かった。
顔が赤くなってるに違いない。

「ナンパされた。」

唐突に口に出たのがそれだった。

自分でも突然に言葉が出てきた事にびっくりした。

⏰:08/02/27 01:12 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#385 [向日葵]
頭に置いてあった真の手がピクリと動いた。

直感的に「ヤバイ」と感じる。

「なんて?どこのどいつに?」

声の低さから言って完璧ご機嫌ななめ。

「あの、センター街の近くにあるデパートで……。」

名前……。

[……き あゆ……っ!]

チョコチョコしか思い出せない。
なんだったか本当に忘れてしまった。

「忘れた。でも、真によく似てた。」

「ふーん。顔の良さは五分五分か。」

自画自賛……。

⏰:08/02/27 01:38 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#386 [向日葵]
どこまで自分に自信があるんだか。

「でも相手にしなかった。チャラチャラしてたし。」

「チャラチャラしてなくても相手になんかすんな。お前は俺のだろ。」

そうやって荷物みたいに言わないでほしい……。

小さくため息を吐いていると、柔らかい物が頬に触れた。

真の唇だ。

何が起こったか分からなかった私は、しばらく呆けていた。

⏰:08/02/27 01:41 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#387 [向日葵]
「絶対、どこにも行くな。」

真剣で強い言葉。
耳から脳へ行って焼き付く。

「……はい。」

馬鹿みたいな声を出して、何故か敬語で返事をしてしまった私。

返事を聞いた真は、笑ったのか、微かに息を漏らした。

その時、携帯のバイブが鳴った。
キョロキョロ探せば、少し離れた場所で点灯している。

取りに行こうとした時、後ろからふわりと抱きしめられた。

⏰:08/02/27 01:46 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#388 [向日葵]
空気を抱くようなその行動が、私の胸を鼓動でいっぱいにする。

「出なくていい。」

耳元で喋らないで。

駄目だ。絶対この暗いのがいけない。

「多香子からだったら明日うるさいから離して。」

納得いかないように少し唸った真は、「風呂用意してくる。」と言って出て行った。

急いで携帯を手にした私は、胸の中が空になるほど息を吐いた。

明らかに、今はヤバイ雰囲気だった。
私があの時携帯に出なかった真は…………もしもの事をするかもしれない。

⏰:08/02/27 01:52 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#389 [向日葵]
冷静になる為、深呼吸してから携帯を開けば、メールだった。

<今、電話しても平気?>

つぐみさんからだった。

一旦ドアの方を見て、真が来ないか確認した後、部屋の明かりをつけた。

返信をしてしばらく、電話が鳴った。

{もしもし?みかげちゃん?つぐみです。}

「こんばんわ。」

真に聞かれてはいけない気がして、出来るだけ小声で話した。

{プールの事なんだけど、こっち1人増やしていいかな?私の友達なんだ。}

⏰:08/02/27 01:57 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#390 [向日葵]
女ばっかり増やして真は居づらくないだろうか……。……アイツなら喜ぶかな。
ハーレムとかつって。

「私は別にいいです。多分友達も、し……松川も。」

{そ、ありがとうっ。じゃあ私の友達に伝えとくわ。場所とか待ち合わせ時間とかは松川君に言っておくね。}

「あ、ハイ。」

「バイバイ!」と心底楽しみらしい声で別れを告げられると、通話が終了した。

つぐみさんの友達だから、多分大人っぽくて可愛い人なんだろうな……。

⏰:08/02/27 02:02 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#391 [向日葵]
そう思えば今日買った水着が少し地味だったかもと後悔した。

後悔しても仕方のないことなんだけれども……。

「誰?」

開けっぱなしにしてたドアから真が覗く。

「つぐみさん。友達を追加してもいいかって言われたからいいって答えた。」

「そ。」

真はリビングへ向かってしまった。

真はつぐみさんの友達とやらん知らないんだろうか?

⏰:08/02/29 01:25 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#392 [向日葵]
※訂正

友達とやらん ×
友達とやらを ○

⏰:08/02/29 01:26 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#393 [向日葵]
―――――――……

文化祭まで、あと1週間をきっていた。

今度の日曜にはプール、火曜日から2日間は文化祭なのだ。

いよいよ正念場で、どこのクラスもお祭りムードで一杯だった。

こういう雰囲気は嫌いじゃない。

「んーっ!なんか今からワクワクしてきたよねぇっ!」

コスプレ衣装を作りながら多香子が言った。

案外不器用な彼女の指には無数の刺し傷が。
先程もプスリと刺して息を吸い込むように痛がっていた。

⏰:08/02/29 01:33 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#394 [向日葵]
そんな彼女が作るのはメイド服。
なにもそんな難しい且つ面倒くさそうな衣装にしなくてもいいのに……。

私は当日まで秘密ってことで。
秘密にしとく程のもんでもないのだけど。

「私達のクラス、結構注目されてるみたいよー。楽しみだね!」

「ふーん。」

店番さえ無ければもう少しやる気は出ただろうに……。

制服もコスプレの内では……と発言したが、敢えなく却下されてしまった。

⏰:08/02/29 01:38 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#395 [向日葵]
いや、却下されたと言うか、めちゃくちゃ短いスカートでセーラー服着ろと言われたが、「お断りします。」とこっちが却下したのだ。

足を出して何が楽しい……。

「ねぇ葛さん、多香子ちゃん。店番の時間帯どこがいい?」

クラスの女子が聞きに来た。
私と多香子は一緒の時間の所にしてもらって、聞きに来た子は他の人のとこへと行った。

真には時間バレないようにしよう……。

⏰:08/02/29 01:42 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#396 [向日葵]
「ねぇねぇ葛さん。」

何人かの女子が、私に話しかけてきた。

やけに今日は声をかけられるなあ。

「松川先生と仲良いの?」

「は……。」

開いた口が塞がらない。

仲が良いと言うか、一応大切な人ではあるけれど、何故表の真と仲が良いと言われるのだろう。

「最近、よく話したりしてる所見かけるし。」

「放送でよく呼ばれてるしねー。」

⏰:08/02/29 01:46 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#397 [向日葵]
だから何だと言いたいのをぐっと我慢した。

そういえばこの前、徐々に(表)松川人気説が出てたっけ。

まさかそれで?

「別に。ちょっと進路の事で相談乗ってもらってるだけ。」

あれでも一応、真は進路担当だ。
これを言えば少しはかわせるだろう。
実際は進路なんて、てーんで何にも考えちゃいないけど。

嘘も方便。

「松川にさぁ、ここに来てって言ってもらえない?」

⏰:08/02/29 01:50 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#398 [向日葵]
「えぇ!?」

思わず過剰に反応してしまった。

「松川にいっぱい着て欲しいものがあるんだよねー。」

「浴衣とかー、お医者さんとか。」

「書生さんもいいよね。あとー、軍服とかぁ!」

色んな服装をした真が頭にポンポン浮かぶが、普段のあの仏頂面で着るならば、あまりどれも似合わない気がしてきたのは気のせいだろうか……。

しいていえば医者ぐらい……?
聴診器あてて元気ですかー?みたいな?

アレ。猪木入ったよな今……。

⏰:08/02/29 01:55 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#399 [向日葵]
パタパタ手を振って、「松川ファッションショー2008」を強制で止めさせた。

「とにかく、来てほしいなら自分で言ったほうがいいと思うよ。そんなしょっちゅう会ってる訳じゃないから。」

「毎日顔会わせてんじゃーん。」

小声で愉快そうに言う多香子にチョップをお見舞いしつつ、クラスの女子達にそう告げた。

「そっかー……。わかったっ!ありがとう。」

やっと解放されて、大きく深呼吸した。

⏰:08/02/29 01:59 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#400 [向日葵]
チョップをいれられた多香子は、頭をさすりながら恨めしそうに私を睨む。

「何よ何よー。ちょっとしたジョークじゃぁん。」

「そのジョークがとんでもない事になったらどうしてくれんの?」

多香子はどうやらこのスキャンダラスなシチュエーションに憧れているらしかった。

そしてそれを唯一知る自分がとても特別だとか思ってて尚且面白く楽しいらしい。

気持ちは分からんでもないけれど……。

⏰:08/02/29 02:02 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


★コメント★

←次 | 前→
↩ トピック
msgβ
💬
🔍 ↔ 📝
C-BoX E194.194