・・・ゆめみる魚・・・
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#2 [向日葵]
小さい頃、お母さんがよく話を聞かせてくれた絵本だったの。

私の唯一の宝物。










・・・ゆめみる魚・・・

⏰:08/01/06 15:40 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#3 [向日葵]
1P・ゆめの始め

あるところに1匹の魚がいました。

でも魚はいいます。

『うみはあお。さまざまな色の魚たち。ぼくは、とうぜんのようにあるまわりのものにあきてしまったよ。』

そんな魚に、ある魚がいいました。

『じゃあ目をとじて、ゆめをみてごらん?』


・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「―――っ。か……ったら。みかげぇぇっ!!」

⏰:08/01/06 15:46 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#4 [向日葵]
「……っっ?!」

机に、若干よだれが垂れていた。
それをわからない様に、枕にしていたタオルで拭く。

「アンタ寝すぎっ。現国の先生が『葛ー!葛ー!』って叫んでたわよ!」

「寝る子は育つから……。」

私は、葛 みかげ(かずら みかげ)。17歳を迎えたばかり。

趣味・・・寝る事。

ぼーっとしながら友人である多香子の叫びを聞いてると、ブレザーの内ポケットにいれてる携帯のバイブが鳴った。

⏰:08/01/06 15:53 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#5 [向日葵]
メールを見て、小さくため息を漏らす。

携帯をまたポケットにしまう。
そして立ち上がった。

「あたし、屋上で寝るから。」

「は?まだ寝る気?」

「次の時間になったら帰るから。」

それを言うと、多香子は黙った。
多香子だけが、私の事情を知ってくれてる。

「じゃあね。」

それだけ言って、鞄を持って、私は教室を出て行った。

⏰:08/01/06 15:56 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#6 [向日葵]
私は、私の両親は、4歳の頃車事故で亡くなった。

それ以来、父方、母方の家族に引き取られ、と言っても2人には兄弟はいないからおばあちゃんとかおじいちゃんだったけど。

そんなこんなで、生活していた。

でも、誰にでも、死は訪れるもので……私の血縁は、誰もいなくなった。

それからは、どういう繋がりかもわからない親戚の家を転々としてる。

今日もそう。

親戚は私が邪魔らしい。
引っ越す家が決まったのだと言う。

⏰:08/01/06 16:01 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#7 [向日葵]
もう慣れた。

いづれはそうなってしまう決まった日常には、飽きてしまった。

刺激が欲しい……。

だから私は寝る。夢を見る。

趣味・・・寝る事。
……否、夢を見る事……。

屋上のドアを開ければ、春らしい爽やかな、だけど暖かい風が私の体を撫でた。

日当たりのいい場所に座って、コンクリートの壁にもたれ目を瞑る。

「どんな夢を……見るかなぁ……。」

⏰:08/01/06 16:05 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#8 [向日葵]
――――***――――

[おかーさぁん。ご本よんでちょーぉだぁいっ!]

いつもの本を持って、お母さんに駆け寄る。

お母さんは優しく微笑んで私を柔らかく抱き締める。

[みかげは、これが好きね。]

[うん。いちばん大好きぃっ。]

場面は変わって、私はお母さんの膝で寝ていた。

[寝ちゃった?]

そうお母さんに囁くように言ったのはお父さんだった。

⏰:08/01/06 16:08 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#9 [向日葵]
[うん。]

[風邪ひいちゃいけないから、これ、かけておくね……。]

フワリとした感触。

それは夢じゃなくて現実のような気がした私は、静かに目を開けた。

眩しい……。
夢から覚めてしまった。

「女子高生。こんな所でサボリか?」

本をペラ……とめくる音が聞こえた。
それを合図に視線を巡らせば、自分にスーツのブレザーがかけてあった。

⏰:08/01/06 16:13 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#10 [向日葵]
ちっ……。
教師に見つかったか。

「どうしようがあたしの人生だから。」

「別に説教する気はない。聞いてるだけだ。」

声の主は、もたれてるコンクリートを曲がったすぐそこ、丁度日陰になってる場所に座ってるらしい。

なんか聞いた事がある声だ……。
誰だっけ。

「眠いだけ。アンタこそ、何してんの?」

「職員室はタバコくさいから読書の妨げになる。」

⏰:08/01/06 16:16 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#11 [向日葵]
そしてまたペラリと聞こえた。
私は声の主を確認する。

そこには、24、5の、眼鏡をかけた男がいた。

知ってるコイツ……。

地理の仏頂面で有名な松川 真一(まつかわ しんいち)。

顔はカッコイイのに仏頂面のせいで皆から怖がられてる損してる気の毒な奴。

「タバコ……嫌いなの?」

「煙吸って何が楽しいんだかな。」

「フゥン。」と適当に答えて、「そういえば」と携帯を見る。
今から帰れば約束の時間には間に合うかな。

⏰:08/01/06 16:24 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#12 [向日葵]
「んじゃね。松川せんっせ。」

嫌味っぽく言った。
でも相手は別に気にした風もなく、本に目を向けたままだ。

「じゃあな。葛 みかげ。」

声を後ろで聞きながら、私は下駄箱へ向かって階段を下りて行った。

「……あれ。」

1階までもうちょっとの時、私は違和感を覚えた。

「アイツ……。」

何で私の名前知って……。

⏰:08/01/06 16:27 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#13 [向日葵]
いや、別に不思議でも何でもないか。

熱血教師なら全校生徒の名前くらい覚えてそうだし。
もっとも、アイツはそんなタイプには見えないけど。

「さぁ……って。行きますか。」

ありきたりの日常へ。

――――――……

引越してきた次の家は、こざっぱりしていた。
どうやら今度の相手は1人暮らししてるらしい。

その相手は今は仕事中だから、夜になったら顔合わせする。

⏰:08/01/06 16:31 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#14 [向日葵]
1人暮らしの割りに大きなマンション。
あと2人住んでも余裕ではないだろうか。

そんな事を思いながら、運ばれた荷物を片付けていく。

荷物は服と勉強道具……そして。

「ゆ、め、み、る……魚……。」

この絵本のみ。

他人の家と言えどもう私の家なので、私は遠慮なくリビングにあったやたらデカイソファに寝転ぶ。

本をめくる。

ポツンと1匹魚がいたのを見たところで私は眠気が唐突に私を襲った。

⏰:08/01/06 16:40 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#15 [向日葵]
―――――――……

パタンと音がしたので私は目を覚ました。

いつの間にやら部屋は暗くなっていた。
つまり夜だ。

「家主が帰ってきたのかな……?」

気づけば自分の体にちゃんと薄い布団がかぶせてあった。
今日はあの教師といい、親切にしてもらってばかりだなぁと思った。

挨拶した方が……。
と、パタンと音がして閉まっただろうドアを静かに開けば、後ろ姿が見えた。

⏰:08/01/07 00:39 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#16 [向日葵]
でも、仕事の最中なのか、パソコンの明かりのみだったから、どんな人物かはわからなかった。

邪魔しちゃいけないかと気をきかせ、また静かにドアを閉めた。
挨拶は、また明日でも大丈夫だろう。

・・・・・・・・・・・・・・・・

朝になった。

携帯のアラームで目が覚めた私。
どこの部屋を使えばいいか分からなかったので、ソファの上で寝たのが間違いだった。

体の節々が痛い……。

さっさとシャワーでも浴びて、学校へ行こう。

⏰:08/01/07 00:44 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#17 [向日葵]
と、後ろを振り向くと、テーブルの上にラップをかけたお皿がいくつかあった。

どうやら朝ごはんらしい。

今度の住居人は……放任主義の親切屋?

変な新しい家主に軽い感謝をこめて、食事をする。
すると隅っこに鍵と置き手紙を発見。

<君の鍵です。戸締まりして下さい。>

わしゃ付き合ってる女か。

とツッコミをいれながらふと字が気になった。

⏰:08/01/07 00:52 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#18 [向日葵]
多分家主は昨日の後ろ姿から見て男だとは分かった。
しかし、この字はどこかで見覚えが……。

でも私は然程気にせずに学校へ行く準備をして家を出て行った。

「あ。」

学校へ行く途中に気づく。
家の表札見れば良かった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・

「みかげっ。どうよ新居。」

多香子が興味深々に聞いてくる。

「まだ家主と顔合わせてない。でもどうやら男。」

⏰:08/01/07 00:56 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#19 [向日葵]
「若いっ?ってか1人暮らし?!」

「んー。そうみたい。」

「キャーッ!!」と何故か興奮する多香子をよそに、私はあともうちょっとで繋がりそうな記憶のパズルをはめ込もうとしていた。

何かひっかかる。

でもそれが何か分からない。
いや、半分は理解出来てる気がするんだけど……でもはっきりとはしない。

結局、パズル遊びは終りにした。

「げげぇ……、松川だぁ……。あたしアイツ苦手なんだよね。」

⏰:08/01/07 01:05 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#20 [向日葵]
私の後ろに身を隠す多香子の視線の先には、相変わらず何を考えてんだか分かんない松川は、いつも通り難しそうな顔して歩いてきた。

「昨日はどうも。」

あれ、何話しかけてんだ私。

私の声に、松川は「お前か。」みたいな視線を投げて横を通って行った。

「みかげ、どうしたの?いつもなら「教師ウザイ」とか言ってよりつかないアンタなのに。」

でも、松川はなんだか違う気がした。
不思議なその雰囲気が、妙に惹き付けられる。

これは別に、深い意味はない。

⏰:08/01/07 01:09 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#21 [向日葵]
そう思うと同時に、私の背中がぞくぞくとした。

もしかしたら、松川がなんらかの刺激を私にくれるんではないか。

まるで新しい玩具を買ってもらった子供のように私は密かにワクワクしだした。

「アイツ……いけるなぁ……。」

「は?!みかげ男の趣味悪すぎっ!」

「そんなんじゃないっつーの。多香子は妄想しすぎだ。」

松川ねぇ……。
覚えといてやろうじゃないか。

⏰:08/01/07 01:13 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#22 [向日葵]
「ねーねーみかげ。それより今日買い物いかない?」

「アンタ今月お金ヤバイって言ってたじゃない。」

「臨時収入ゲット!だから、ね?」

まぁ……街中は意外と刺激的で好きだけどね。

「あ゙!!次地理!松川!」

あーそういえばそうだった。
なんかアイツとは縁があるなぁ。無駄に。

ノロノロ教師に入ろうとすると、頭を後ろから小突かれた。

⏰:08/01/07 01:18 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#23 [向日葵]
「早く入れ。」

松川だった。

少し避けて、松川を先にいれる。

その時、フワッと松川から匂いが漂ってきた。

香水のような、洗剤のような。
無意識の内に、松川を掴む。

「……何か?」

「あ?いや……ゴメン。」

またパズルのピースが増えた。またはまりそうな溝を、頭の中で探す。

そう。
あの匂い、どこかで嗅いだ覚えがあったのだ。

⏰:08/01/07 01:21 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#24 [向日葵]
>>22訂正です

教師に入ろう×
教室に入ろう○

です

⏰:08/01/07 01:32 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#25 [向日葵]
松川の不審者を見るような目を避けながら、私は席についた。

何かが私の中から抜け落ちてる感覚がする……。
それがなんなのかが全く分からない。

結局私は、授業という授業は全て寝てしまう居眠り常習犯なのに、そればかりが気になって、松川の顔をずっと見ながら1時間を過ごしてしまった。

チャイムが鳴り、終わって出て行こうとした松川を私は止めた。

「ねぇ。話あんだけど。」

「話?居眠りばかりしてつ単位の事が心配になったか、」

⏰:08/01/08 00:47 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#26 [向日葵]
「単位なんかどーだっていいよ。それより、なんか重要な事がある気がする。」

「……何?」

とは言え、いざ伝えるとなると難しいもので、何を言えばいいかさっぱりわからなくなった。

思わず、しどろもどろする。

「いや……だから、その……。」

「用がないならいいか?俺は暇じゃないんだ。」

逃してなるものか。

松川のカッターシャツの袖をガッツリ掴む。

⏰:08/01/08 00:50 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#27 [向日葵]
「アンタ、何か私に用事ない?」

松川が眉をひそめる。
仏頂面に更に磨きがかかるが、私は知ったこっちゃない。

「昨日から何か違和感あんだよね。アンタ関連限定で。だから、その……何かないの?!」

自分でも意味がわからなくなりそうで逆ギレしそうになっているのを黙殺しながら松川の反応を待った。

「……葛……。」

お……っ?
何かくるか?

「先生に向かってアンタ呼ばわりするな。小娘。」

⏰:08/01/08 00:56 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#28 [向日葵]
これには開いた口が塞がらない。

質問とは的外れな答えをされた上“小娘”呼ばわりされた。

苛立ちと驚愕で茫然としてしまった。

「用はそれだけか。じゃあな。」

あっさりと松川は私の前からいなくなってしまった。

でも……。

「アンタ何松川に話かけてんのよっ。」

「くぅあ――……っ。」

⏰:08/01/08 00:59 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#29 [向日葵]
多香子の言葉を右から左へ受け流し(脳内ソングはもちろんムーディ)ながら、私は興奮に震えていた。

やっぱり松川は何かある……っ。
アイツは……絶対逃さない……っ。

とことん私を楽しませてくれるだろう。

「獲物ゲット……。」

私の目が、怪しく光る。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ん?」

多香子との買い物途中、スーパーの前を通り過ぎると、中にスーパーが死ぬほど似合わない奴がいた。

⏰:08/01/08 01:05 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#30 [向日葵]
顔が不自然にニヤける。

「多香子、先に行って。後で追いつくから。」

「んー。分かった。」

スーパーに入り、奴の背後に忍びよる。

「松川ーっ!」

軽く叫びながら呼んだのに、相手は全く動じなかった。

「脅かすつもりだったろうが、バレバレ。」

そう言って指差した方の食品売り場には、鏡がついてた。

「つまんねー。ってか買い物?アンタが買い物カゴぶらさけだてんの似合わないね。」

⏰:08/01/08 01:10 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#31 [向日葵]
「急に養わなきゃいけなくなったんだ。ホントはコンビニ弁当でいつも済ましてるけど、多分そうもいかないだろうからな。」

「は?!アンタ奥さんいた……や、いないね。」

左手の薬指を見たが、指輪らしきものはどこにもなかった。

「嫁さんじゃないけどそんなもんだ。」

「どういう事?」

「押し掛け女房みたいなの。」

「迷惑?」

「別に。ペットみたいな感じだから。」

⏰:08/01/08 01:14 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#32 [向日葵]
ペット……。

松川が子犬をムツゴロウ並に可愛いがってる姿を瞬間的に想像した。

スーパーに現在いる事より更に似合わない。

自分の想像ながら、私は吹き出した。

「やめて――っ!!アンタにペットとか永遠に似合わないからぁぁっ!」

お腹を抱えてケラケラ笑う私を、松川は不快そうにせずじっと見た。

私は涙を拭きながら松川に気づく。

「あん?何か?」

⏰:08/01/08 01:18 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#33 [向日葵]
「ちゃんと笑うんだな。」

「は……?」

「いや別に。ホラ、とっとと帰れ。」

そう言って、スタスタとレジへ進んで行ってしまった。

聞きたい事が頭からスコーンとどこかにいってしまった事を感じながら、私は松川の言葉を頭の中で反芻させていた。

「“ちゃんと笑う”……?」

どういう事?
私は今までちゃんと笑えてなかったって事?

⏰:08/01/08 01:23 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#34 [向日葵]
そんな事はない筈。

楽しければそれなりに笑ってた事だって……。

「それ…なり…。」

つまり、心の底から笑っているようにはアイツの目に映らなかったって訳か……。

相変わらず、何考えてるかわかんねー奴だな。

そう思いながら、刺激を得られるワクワク感とはまた違う気持ちがくすぶり始める。

それが何なのかは、全然分からないが……。

ぼんやりしながらスーパーを出ると、後ろから袋を持った松川が続けて出てきた。

⏰:08/01/10 12:04 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#35 [向日葵]
「どこか行くのか?」

「関係ないでしょ。」

「ま、迷惑かけない内に早く帰れよ。」

「は?迷惑って誰に……。」

質問の最中なのに、松川はきびすを返して雑踏の中へと消えてしまった。

「迷惑なんて……。」

かけてるつもりもなけりゃ、かけるつもりもない。

私は勝手にタライ回しにされて、勝手に住む様にされてるだけ。

「はぁ……まったく……。」

つまらんなぁ……。

⏰:08/01/10 12:08 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#36 [向日葵]
曇り気味の濁った空を見上げながら白いため息を吐いていると、携帯のバイブが震えた。

「何多香子。」

{何じゃないっ!1人で寂しいから早く来てよ!}

いつも私を振り回す多香子。不思議と多香子に飽きないのは、彼女の振り回し方が尋常じゃないからかもしれない。

―――――……

散々買い物に連れ回されて、新居に着いた頃には7時を回っていた。

今日は家主帰ってんのかな。

⏰:08/01/10 12:13 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#37 [向日葵]
エレベーターで上がりながら、6階まで上がっていくエレベーターの表示を眺める。

チンとなって、6階到着。

歩きながら渡された鍵をポケットから出し、軽く投げながら部屋の前まで辿り着いた。

「……ん?」

鍵を開けた筈が、ノブをひねると閉まっていた。

どうやら家主は帰っているらしい。

もう1度開け直そうとすると、向こう側から開けられて、ご丁寧な事にドアも開けてくれた。

⏰:08/01/10 12:17 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#38 [向日葵]
さて、今回の奴はどんなのかね。

と顔を上げた私は口を開けて絶句した。

「言った筈だぞ。迷惑かけるなと。」

そいつは不機嫌な顔をして、本人は睨むつもりが無いようだが、明らかに睨んで私を見ていた。

私は口を開けたまま表札を見る。

「うそ……でしょ。なんでアンタが……っ!ま、松川が……っ!!」

そこにいた奴は、紛れもなくさっきスーパーで出くわした奴。
そして、地理の教師。

⏰:08/01/10 12:20 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#39 [向日葵]
「ハァー……。何て言うか……つくづく馬鹿ッポイな。お前。」

ってかキャラ違くね?

こんなくそ生意気な喋り方してたっけ。

「ってか今まで気付かなかった方がびっくりするわ。すげぇ鈍いのなお前。」

「ちょ、ちょちょちょちょっと待て!」

ドアを後ろ手に閉め、松川を見る。

確かに退屈な日常に飽々していた私だが、物には全て限度と言うものがあり、それに慣れるには時間が必要だ。

⏰:08/01/10 12:24 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#40 [向日葵]
「何でアンタが私の同居人?!」

「前の面倒みてもらってた緑叔母が何も言わなかったのか?俺はあのババアの親戚だ。まぁ大分遠めのだけどな。」

「ってかアンタのキャラ!」

「人は処世術と言うものを持ち合わせなくてはならない非常に面倒な生き物でなぁ。しかしながら残念な事に俺はそう言ったものを振る舞える程性格がよろしくない。」

難しい言葉いくつも並べやがって……。
完全に馬鹿扱いか?

⏰:08/01/10 12:29 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#41 [向日葵]
「だが、俺って顔いいらしいから。この性格出したら多分お前らの年代何人も泣かすだろうし。」

それってつまりは、モテるって言いたいんだろ。

「二重人格って訳……。」

「失礼な。女の子を泣かさない為の俺からのちょっとした気遣いじゃないか。」

にっこりと笑うその顔は悪魔とでしか言い様がない。

タラシ。
頭に3文字の言葉が連想された。

⏰:08/01/10 12:40 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#42 [向日葵]
どちらにしろ、私はコイツに誰が泣かされようが知ったこっちゃないが。

それに、コイツは私が直感で選んだ獲物。

誰かに盗られるなんてまっぴらゴメンだ。

などと考えていると、顔の横らへんに片手をついて、松川が私の顔を覗き込んだ。

「お前ってさぁ……俺の事好きなの?」

「馬鹿じゃねーの。」

とんだ自惚れ大魔王だ。

「私は刺激が欲しいから丁度良さそうなアンタをターゲットにしただけ。他意はない。」

⏰:08/01/11 00:33 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#43 [向日葵]
松川は意外そうな目で私を見つめた。

何か言ったか?私。

「つまんなそーな顔してると思ったら……そんな事考えてたんだ。いやらしいな〜お前。」

……なんか勘違いしてないかコイツ。

「だが俺はガキには興味ない。誘惑すんなら出るとこもうちょっと出してから来てくんなきゃなぁ。」

「何妄想してるか知んないけど、私が言ってる刺激はそういう類じゃないから。」

「なーんだ。残念。」

⏰:08/01/11 00:37 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#44 [向日葵]
興味ないんじゃなかったのかよ。
ストライクゾーン広めか?

だけど、ワクワクしてきた。

求めた獲物はすぐ近く。

ようやく退屈してた日々からの解放の時がやってきたらしい。

それを噛み締めて、舌なめずりする私。

あぁ……やっぱりこうでなくちゃなぁ……っ。

⏰:08/01/11 00:39 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#45 [向日葵]
2P・夢には……

ゆめにむちゅうになった魚は、ずっとめをとじつづけていました。

するとゆめを見ることをおしえた魚がいいました。

「ゆめはたしかにおもしろい。でもね、たのしいばかりが、ゆめじゃないんだよ。」

・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

空を見つめてる私がいた。
空に立ち込める、灰色の煙。

私はその煙が何かを知らない。でも知ってる。

⏰:08/01/11 00:44 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#46 [向日葵]
涙を流す理由も、知ってる筈なのに流れない。

『さよなら……。』

誰かがそう呟いた。

――――***――――

「泣いてんのか?」

声が聞こえた。

泣いてる?
何で泣かなきゃならないの?
別に悲しい事が起こった訳じゃない。

でも、耳元に冷たく感じる滴は、涙だと分かった。

何かが、それを拭き取る。

⏰:08/01/11 00:48 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#47 [向日葵]
それが指だと分かりながら、私はまぶたを開いた。

「あ、起きた。」

そこには、ベッドに腰かけて私を覗くように見る松川がいた。

「……なんか様?」

起きたてのせいか、声がかすれる。

上体を起こすと、松川はまだ不思議そうに私を見ていた。

「夢、どんなだった?」

唐突に言うもんだから、「は?」と言った感じで私は眉根を寄せた。

⏰:08/01/11 00:53 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#48 [向日葵]
「覚えてる訳ないでしょ。夢はその場限り。見ている時だけがその世界に浸れる。夢に夢見れるの。」

現実に引き戻されれば、それは跡形も無く消えてしまい、一気に冷めた感情が私を包む。

「ふーん。そんなもんか。……俺なんか1億当てる夢見たけどな!」

「あー立派立派。良かったね。」

それが言いたかっただけかと思いながらカーテンを開ける。
朝日が眩しい。

「さてと。学校行くぞ。さっさと準備しろー。」

⏰:08/01/11 00:58 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#49 [向日葵]
「アンタと一緒にいくの?」

「心配してくれんの?罪だね俺も。」

朝からコイツの脳天気ぶりには後ろから蹴り飛ばしたくなる。

ため息をつき、着替える為の準備を始める。
その内出ていくかと思った松川は一向に出て行かない。

「……興味ないなら見る必要ないだろ。」

「たまにはフレッシュな体見て元気でも出そうかと思って。」

「死ね。」

⏰:08/01/11 01:02 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#50 [向日葵]
と言いながら部屋から追い出した。

ようやく心地よいと感じてきた朝日に背伸びして、ふと胸元に手を当てた。

もちろんまったく覚えてないんだけど、何となく、悲しい気分になっていた。

でも今はそれがなく、スッキリしている。

胸元に当てていた手を、次は目元に当てた。

まだ余韻が残ってるのか、濡れてる。

悲しい夢でも、見てたのかな?
悲しい……?今の私にとって、何が悲しいんだろう。

⏰:08/01/11 01:06 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#51 [向日葵]
[泣いてんのか?]

[夢、どんなだった?]

さっきの松川の言葉が脳裏によぎった。

もしかして、元気づけようとしてくれてたのか?

……つくづく変な奴。
面倒な事嫌いなくせに人の心配するなんて。

人はこれを俗に「世話焼き」と称する。
奴もそれ類のものだろう。

……いや。
いやいやいやいや。
アイツがそんな道徳心あるとは限らないだろう。

多分親切にした分いつかきっちり返せとでも言いそうだ。

⏰:08/01/11 01:10 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#52 [向日葵]
でもそんなミステリーを含んだ松川が面白い。
早速私はゾワゾワと背筋に興奮を感じた。

さて……今日はどんな1日になるのかねぇ……。

密かに、胸のつっかえを取り除いてくれた事に感謝しながら、制服に手をかけた。

―――――――……

「えぇぇぇぇっっ?!?!」

多香子の叫びが教室、いや廊下にまで響き渡る。

まぁ、驚くのは無理ないとは思ってたけど。

自分が叫び過ぎた事に気づき、手で口をチャックすると、小声で私に喋りかけてきた。

⏰:08/01/11 01:14 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#53 [向日葵]
「どうりで朝一緒に来てると思ったら……偶然じゃなくてそういう訳だったの?」

「うん。まぁ。」

はっきり言って、ここでは松川と私は教師と生徒。

事情を話せば分からなくもないだろうが、1歩間違えればPTAが黙っちゃいないだろう。

今朝、奴が「心配してくれるの?」と聞いたのはそういう意味だ。

だがそんな事でも私にとってはスリルな出来事の1つでしかない。

先生と生徒と言うのがまたベタで楽しいじゃないか。

⏰:08/01/11 15:36 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#54 [向日葵]
「ま、そんな訳だから。」

「アンタそんな簡単に……。」

呆れる多香子をよそに、授業が始まるので席に着いた。

着いたところで、私は睡眠学習だけどね。

―――***―――

手に、花を持っていた。

純粋である事を象徴するかのような、真っ白い花。
何重も重なっている花びらを、見つめていた。

ただよう煙。

⏰:08/01/11 15:40 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#55 [向日葵]
線香……。

ふとそう思った。

『さぁ、みかげちゃん。それいれてあげて?』

入れる?

どこにと思っていると、少し離れた場所に木で出来た長細い箱があった。

あれの事か?

近づいていって、箱の前に立つ。
どうやら小さい私は、箱の中身は見えなかった。

すると、誰かが持ち上げてくれた。
中は……。

⏰:08/01/11 15:44 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#56 [向日葵]
眠っているかのような、お母さんとお父さんだった。

『―――っ!いやぁっ!!』

―――***―――

「……げ。みかげったら!!」

ハッとして、私は目を開けた。
目がパシャパシャする。
また泣いてるらしい。

「どうかした?随分泣いてるけど。」

机を見れば、いつも垂れているヨダレの代わりに、涙が水たまりとなっていた。

⏰:08/01/11 15:47 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#57 [向日葵]
これだけ泣いているにも関わらず、やっぱり夢は思い出せそうにもない。

1つ言える事は、今朝同様悲しい夢だったに違いない。

「……夢でめちゃくちゃ目が乾いてた。」

「どんな夢よそれっ!」

多香子はひと笑いして、「あ。」と何かを思い出して、身を屈めるとまた小さな声で私に言った。

「松川がアンタ起きたら来るようにって。何されるか分かんないからさっさと行ってきな。」

絶対馬鹿にされる。

確証があった。

⏰:08/01/11 15:52 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#58 [向日葵]
時計を見ると、もうすぐ次の授業が始まる。

「後でいい。アイツが何かする訳ないと思うし。」

興味ないと言ってたんだからそういう面では安全。
ただ嘲るような言葉の数々を浴びせてくるだけ。

……それって軽いイジメじゃないか。

とか思いながら、次の授業で寝る準備をする。

幸い、今度は悲しい夢を見なかった。

―――――……

「失礼しまーす。」

⏰:08/01/11 15:55 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#59 [向日葵]
結局、職員室へ来たのは昼休み。

起きるのは授業直前ばかりなので、通常の10分休みに顔を出す事は不可能だった。

「松川……先生。なんか用?」

いつもの様に本を読みふけってる松川に、なんとか“先生”をつけて尋ねる。

「あ、来たか。まぁちょっと来い。」

と連れて来られた、社会科準備室。
中は先生用の机がちょこんと置いてあって意外に狭い。
そして周りは地図やらなんやらがゴチャゴチャと……。

⏰:08/01/11 16:00 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#60 [向日葵]
とか思ってると、頭を鷲掴みされて松川の方へ向けられた。

にーっこりと笑って悪人オーラを出している今は、裏松川のおでましだ。

「お・ま・えさぁ〜。よく俺の授業で寝るよな。この俺のっ!」

「はぁ?まさかそんな教師らしい説教する為に呼んだの?私、昼休みは屋上で寝なきゃならないのに。」

「よく寝れるなお前。違う意味で尊敬するわ。」

呆れたため息を吐きながら、松川は先生用の机にあるイスに座った。

⏰:08/01/11 16:04 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#61 [向日葵]
「大体、お前の居眠りはある意味異常。眠り姫じゃあるまい。いい加減活動的になったらどうよ。若いんだし。」

「若い=活動的にっていうのは偏見だよ。世の中には色んな人間がいるんだからさぁー。」

って言うか……。

「若いからなんだってーのって……感じだけどね。」

若くして死んだ両親。
若くして両親を亡くした私。

若いから、若いのに。

そんな言葉、イヤってほど聞いてきた。

⏰:08/01/11 16:08 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#62 [向日葵]
ありきたりな、大人達の言動。

「暇だよね。大人も。「夢を見なさい」とか言うくせに、いざ非現実な事言ってたら「現実見ろ」って言うし……。アンタもそんなタイプ?」

だったら私のミスチョイスだ。

しょうもない奴らは興味ない。
私が求めるは、楽しさ故の快楽のみだ。

[そんなもの、さっさと捨てなさい。]

唐突に、昔誰かに言われた言葉を思い出した。

⏰:08/01/11 16:12 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#63 [向日葵]
「ククククク……。」

自分の足を見つめていた私は、急に笑い出した松川を見つめた。

何がおかしいんだ?
頭狂った?

「だからお前馬鹿って言われんだよ。……いや、ガキ、かな?」

「はぁ?」

イラついて、松川を睨む。
松川は笑いながら立ち上がると、私に詰め寄った。

「怖がってるだけじゃねぇか。」

「怖がってる?」

⏰:08/01/11 16:15 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#64 [向日葵]
「現実に目向ける自信ねぇから背けて異世界に止まろうとしてるだけだろ。つまり寝るんだろ。」

顔が赤くなったのは、何でか分からない。

でも胸の中のどこかを思いっきり刺された気分になった。

「……そんな事、ない。」

「ない事ないだろ。刺激が欲しい?違うだろ。平凡に日常送ってて急に世界が一変すんのが怖ぇだけだろ。」

違う。
違う。

「それに耐えれるように常に刺激的な毎日を送りたい。そういう意味なんだろ?」

⏰:08/01/11 16:21 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#65 [向日葵]
ヤメテ……ソンナ言葉……キキタクナイ……。

「なぁ……葛、みかげ?」

耳元で囁かれ、一気に何かが覚醒した。

弾かれた様に顔を上げると、何かに勝ったような松川の顔がすぐそこにあった。

思いっきり奴を突き飛ばした私は、行方も知れず走り出す。

こんな……こんなつもり、なかったのに……っ!

アイツ……っ、どうして……っ!

⏰:08/01/14 00:00 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#66 [向日葵]
[目向ける自信ねぇから……。]

やだ……。
やだやだやだ……っ!!

そんな事言わないで!!

バンッ!と、屋上のドアを開けて、倒れるようにして床に伏せる。

走ったせいで、息が荒い。

……ずっと、気づかないフリを、私はしてたんだ。

1人ぼっちが、すごく怖くて……。私の身近な人はどうせいなくなる。

それはとても当たり前で……“当たり前”は、ひどく私の心にのしかかった。

⏰:08/01/14 00:04 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#67 [向日葵]
……小さい頃……まだ、私が“当たり前”を恐れていなかった時だった。

ただ1つの宝物である絵本。
私はそれに影響されていた。
しかも、夢は時々、死んでしまったお父さんやお母さん、そしておばあちゃんやおじいちゃんと会わせてくれた。

そんな私は、今と変わらずよく寝る子だった。

そんなある日、その時私を預かってた叔母さんがいった。

[そんな絵本捨ててしまいなさいっ!]

⏰:08/01/14 00:07 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#68 [向日葵]
[そんなもの、さっさと捨ててしまいなさい。]

寝てばかりの私にイラついたか、夢を見てまでお母さん達に会おうとする憐れみ故の恐れか、私には分からなかった。

でも私は強く絵本を抱き締めて、捨てようなんてしなかった。

その時思ったんだ。

いつも、飽きもせずお母さんが私に聞かせてくれた絵本を手放せば、きっと私は駄目になる。

お母さん達との“当たり前”を、手放す事が出来なかった。

⏰:08/01/14 00:12 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#69 [向日葵]
それと同時に、“当たり前”がいつかは失われると分かった。

途端に、恐怖が襲ってきて……日常を受け入れられなくなってしまった……。

あぁ……私の周りにあるもの、全てが消えて、何も無くなる。

なら、その突然の“当たり前”が無くっても平気なように、驚くような毎日を送ってやろう。

そう……アイツの、松川の言う通りなんだ……。

「そんな事……再認識したく無かったのに……。」

どうしてもう1度、頭に入れようとするの?

⏰:08/01/14 00:17 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#70 [向日葵]
髪の毛に、指を埋める。

息がまとめに出来ない。

嫌なんだ。
暗闇に1人、置いてけぼりくらってるみたいで。

現実なんて、クソくらえ。

そうだ、こんな事で、つまずいてる場合じゃない。

大丈夫、また、元に戻れる。

さぁ……目を瞑ろう……?

―――***―――

『ククク……また逃げてきたの?』

夢の中でも、松川が目の前にいた。

⏰:08/01/14 00:22 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#71 [向日葵]
あからさまに嫌な顔をしてるのが自分でも分かった。

『まぁそんな嫌な顔すんなって。』

するに決まってんだろ。

『お前、刺激が欲しいんだろ?』

そりゃ頗る。
目一杯欲しいね。
アンタは私のターゲットだ。それなりのものはくれるって期待してんだけど。

『でも俺が嫌いになったんじゃねーのかお前。』

刺激求める相手に感情のやりとりなんかいらないよ。

⏰:08/01/14 00:26 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#72 [向日葵]
『いやいや。まだつめが甘いな、みかげちゃんや。』

キモイ。
ちゃん付けすんな。

『刺激と言うのは何も1つに限られているもんじゃない。』

まぁね。
アンタ最初は下ネタの方に走ったし。

『そこで俺からの提案だ。』

ほぉほぉ。
やっぱり私が見つけただけあんね。
頭冴えてんじゃん。

で、何?

⏰:08/01/14 00:29 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#73 [向日葵]
『恋愛してみろよ。』

は?

思わぬ答えに目が点になる。

私が?恋愛?
笑わせないでくれる?
第一恋愛になんの刺激があるって言うんだよ。

『それが分かってないならガキの証拠だよみかげ。』

ガキガキうるさいなー……。

『恋愛こそ刺激の醍醐味みたいなもんだろう。恋人を守り守られ、すれ違ったりする度心を痛め、心が通じ合う度に喜びを感じる。』

⏰:08/01/14 00:33 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#74 [向日葵]
力説してくれるのはかまわんけど、私好きな人の作り方なんてまったく分からんぞ。

『その点は気にすんな。』

気にすんなって、アンタが提案したんだから知らないじゃ済まないぞ。

何か奥の手でもある訳?

『あるから気にすんなっつってんの。』

へー。用意周到じゃん。
で、誰?

『俺。』

いつもの自信満々の天使のような悪魔の笑顔で、奴は言った。

⏰:08/01/14 00:37 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#75 [向日葵]
………………そろそろ、耳鼻科に行った方がいいのかね。
今明らかに松川が自分を指したような気がするんだけど……。

松川はまだあの笑顔を浮かべたまま私に言った。

『信じる信じないはお前次第。そしてやるもやらないもお前次第だ。どーぞご自由に。』

―――***―――

パチッと目を覚ますと、青かった空が茜色になっていた。

春とは言え少し寒い……。

⏰:08/01/14 00:41 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#76 [向日葵]
しかし寒いながら、「もう少し……。」と寝転がろうとした。

「いつまで寝る気だ。」

ビクッとして振り向けば、そこには腕組みして私を見下ろしてる松川がいた。

「気の済むままに。アンタに迷惑はかけないから。」

「いーや。かかるね。お前と俺が一緒にいたのはほとんどの先生や生徒が見てるんだ。仮にお前がここで凍死したら俺が一番に疑われるんだぞ。」

「そんなのゴメンだ。」と言いながら松川は空を仰ぐ。

⏰:08/01/14 00:46 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#77 [向日葵]
結局自分の損得しか考えてないだけか。

でも疑問がある。

そんな奴が何故私を引き取ろうなんて思ったのか。

……そういえば、前にペット呼ばわりされた事あるっけか。
つまり、玩具が欲しかっただけか……。

自問自答をして立ち上がり、松川を見る。

「で、何か用でもあんの?」

「生物の赤井先生がお前がいないと職員室で言ってたもんでな。」

⏰:08/01/15 00:31 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#78 [向日葵]
「……だから探しに?」

「どこかでビービー泣いてんなら仕方なく俺の胸でも貸してやろうかなぁってな。」

貸していらんわ。そんなもの。
自分に酔い過ぎだコイツ。

「まぁそんな訳で。」

どんな訳だ。

「さっき言った事は本心だ。だからお前が泣こうがどうしようが知ったこっちゃない。俺はそんな生易しくないからな。」

「何が言いたいの?」

⏰:08/01/15 00:36 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#79 [向日葵]
段々イラついてきた。

やっぱりコイツはミスチョイスだ。
刺激と言ってもイライラして怒る刺激しかない。

私が求めるものとは大きくかけ離れてる。

「言っとくけど、アンタが言った事、全て図星だなんて思わないで。アンタが思ってるほど、私は甘くないから。」

「まぁ落ち着け。ケンカするつもりなんて今は更々無いんだからよ。それともイジメて欲しいとか?」

「だから!そういうのが!」

⏰:08/01/15 00:40 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#80 [向日葵]
「あースマンスマン。」と特に悪いと思ってなさそうな口調で松川は私をなだめた。

イライラしている私は腕組みして、足をタンタン鳴らす。

「生易しくない、と言って、放りなげる程悪魔でもない。」

どうだか。

「とりあえず、お前はもっと現実に足をつけてみろ。」

「いやだ。」

「そう言うとは思ってたけど……。だから現実が楽しいって事を教えてやるよ。」

⏰:08/01/15 00:44 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#81 [向日葵]
私は腕組みはしたまま、足をタンタン鳴らすのを辞めた。
真剣に、松川の話を聞く。

それに気づいた松川は、口元をクイッと上げて笑う。

「刺激が欲しいっつったな。刺激って言うのは色んな分野があるってもんだ。」

「まぁ最初、アンタは下ネタの方で解釈したくらいだしね。」

……ん?
このやり取り……なんか知ってる気がするんだが……。

⏰:08/01/15 00:48 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#82 [向日葵]
「そりゃ“刺激”っつわれたら男の8、いや9割はそっちを考えるだろうよ。ってそんな事はどうでもいいんだよ。」

このやり取りをどこでやったか思い出しつつ、松川の話に耳を傾ける。

「そこで俺は考えた。現実的でより刺激があるもの。」

ほぉほぉ。
頷いて先を促す。

「恋愛するんだ。」

「……。」

瞬きを何度もする。

自信満々で言って、「ナイスアイデアだろ?」みたいな顔されても、私には理解不能だった。

⏰:08/01/15 00:53 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#83 [向日葵]
「頭わいてんの?」

「俺はいつだって有能だ。」

恋愛?
私の辞書に無い言葉が出てきた。

少女漫画のような恋愛は見ててヘドが出る。
そんな上手く物事が運ぶ訳ないとか。

でもそんな半面、ドラマチックな展開に刺激がありそうで羨ましくもあった。

もちろん刺激と言う意味に関してはだが。

「あのな、恋愛こそ刺激の醍醐味だろうがよ。すれ違う心。心が通じあう喜び。そういうのって刺激的だとか思わない?」

⏰:08/01/15 00:57 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#84 [向日葵]
「生憎、彼氏なんぞ作ろうと思った事はないんでね。」

「あー駄目だわそりゃ。」

第一……。

「そんな私が、好きな人なんて出来る訳ないと思うんだけど。」

……待って。

私の予想なら……この先……。
いやいや!
んな事ぁないよ。

だってコイツだよ?

面倒くさがりで、損得しか考えてない悪魔みたいな自惚れ屋がだよ?

⏰:08/01/15 01:00 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#85 [向日葵]
心配するだけ無駄無駄無駄無駄。

「そういう事なら気にすんな。ちゃーんと考えがあるんだからよ。」

「へー。何よ考えって。」

すると急に、松川の目つきが変わった。

悪魔のような私をからかっている目ではなく、どことなく艶っぽい雰囲気を醸し出しているような……。

「お前と俺が恋愛すんだよ。」

「は……っ?!」

嘘だろ……これじゃまるっきり夢と……。

そうか!
この会話、夢で聞いてたんだ!
ってことは、これって正夢?!

⏰:08/01/15 01:05 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#86 [向日葵]
「何馬鹿な事言ってんの?大体アンタ、女子高生には興味ないって……。」

「俺も丁度退屈してたんだよなぁ。先生と生徒、しかも同居人。こんなベタだけど刺激たっぷりなシチュエーション無いと思わないか?」

そこで確かにと心の中で不覚にも納得してしまった自分が憎い。

「つまりは恋愛ごっこするって事?」

「まぁそんなもんか。いいんだぜ?好きになっても。」

あり得ん。

⏰:08/01/15 01:09 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#87 [向日葵]
「それは無い。アンタだって無いでしょ。私を好きになるなんか。」

「色仕掛けで迫られたら無理かもなぁ。」

コイツの頭そんな事で一杯か。

利害の一致とでも言うのだろうか。

そんな楽しそうな刺激、断る訳にはいかない。
このチャンスを逃す手はない。

好きになるならないは別として、今の私にはもって来いだ。

ニヤッと口元が上がるのが自分でも分かった。

⏰:08/01/15 01:14 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#88 [向日葵]
やっぱりミスチョイスなんかじゃなかった。
さすが私。
見る目あるわ。

「いいよ。恋愛ごっこ。してやろうじゃん。望むところだよ。」

「交渉成立ってな。さて……どうする?」

私を壁に追い詰めて、手を付き、体を寄せてくる。

「どうするって、何が?」

「噂されるような事しといた方がいいかなーって。」

ススーッと松川の手が太ももを撫でた。

グーで思いっきし横っ面を殴る。

⏰:08/01/15 01:18 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#89 [向日葵]
「言っとくけど、私とアンタは目的が一致したただの仲間なんだから。アンタの玩具になる気なんかこれっぽちもない!気安く触んなっ!」

「へーへー。」

パッと松川は私から離れる。そしてドアへ向かった。

「ん?オイ。」

「何よ。」

「帰んぞ。」

はい?
今朝一緒に来たっていうのに帰りも一緒しなきゃならないの?

⏰:08/01/17 01:04 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#90 [向日葵]
不満気と言うか嫌と言うか、よく分からない目で松川を見た。

するとわざとらしくため息をつかれる。

「あのさ、ごっことは言え俺達付き合ってる設定でこれから動くんだろ?なら一緒に帰る事くらい当たり前だろ?」

そこまで徹底するんだ。
と半ば拍子抜け。
納得出来るんだか出来ないんだかよく分からないまま私は松川の隣までやって来る。

「んー。そうだなー。」

「何が?」

⏰:08/01/17 01:08 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#91 [向日葵]
「みかげ。」

急に呼ばれてキョトンとする。
何せコイツに呼ばれるまで私を下の名前で呼ぶのは多香子くらいしかもういなかった。

「何よ、いきなり。」

「恋人同士なら名前呼ぶじゃねぇか。……そうだな。俺は“慎”でいいわ。慎一だから。」

「松川でいい。」

「これは命令。提案者は有利な立場にあるもの。つまり絶対服従だから、お前に拒否権は無しっ。アンダースタンド?」

⏰:08/01/17 01:12 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#92 [向日葵]
アッホらしい。

呆れつつ、ジワジワと滲み出てくる、焦燥感にもにた期待。

だからと言って、松川が提案した事が、私を現実に縛りつけれるかどうかは謎だ。

それは、今後の奴の行動に全てかかっているのだから。

⏰:08/01/17 01:15 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#93 [向日葵]
3P・荒波にのまれて


目をつぶり、夢ばかりみるようになってしまった魚に、たいへんなことがおこってしまいました。

なんと、なみが魚をつつみこみ、はるかかなたにながしてしまったのです。

おどろいた魚は目をあけ、どうすればいいかわからなくなりました。

『たすけて!ぼくどうなってしまうの!』

・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ザワザワとうるさい……。

⏰:08/01/17 01:18 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#94 [向日葵]
私は何故か街外れの映画館にいた。

「みかげ。何みたい?」

「何でもいい。……ってか、何で私がアンタと映画みなきゃならないのよっ!」

事を返せば、今から3時間ほど前の事だった。

――――
―――――――……

「み・か・げっ。」

名前を呼ばれたと同時に、体に重みを感じた。
しかし私は眠いので、その2つをことごとく無視する。

⏰:08/01/17 01:22 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#95 [向日葵]
すると……。

「早く起きねーとキスすっぞ。」

はぁっ?!

思わず目を開ける。

「あ、起きた。まだ寝てたらいいのによー。」

意地悪く笑う顔は私の顔の約10センチ離れたすぐそばに。
華奢ながら私より肩幅があり、それなりに筋肉のついた体は私の体に覆い被さっていた。

「色魔。朝っぱらから何してんだ。」

「一応恋人だし。恋人らしい事でもしてやろうかと。」

⏰:08/01/17 01:26 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#96 [向日葵]
と言いながら、私の断りも無しに顔が近づいてくる。

その顔を眼鏡ごと片手で鷲掴みしてやった。

「前言った事最早忘れたの?ごっこはしても気安く触るな。これ基本。分かったならさっさと退け。」

渋々といった感じで松川は、いや、慎は退いた。
私はゆっくりと上体を起こす。
安らかなる睡眠を邪魔されたせいもあって、早くもイライラしていた。

「で、何か用?」

⏰:08/01/17 01:30 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#97 [向日葵]
「ああ。みかげ、出かけっぞ!」

今日は土曜で、常時眠たくなる授業は無し。
朝から晩まで寝放題とウキウキしていたのに。

「やだよそんなダルッころいの。」

「意味分からん言葉使うな。みかげ、俺はただごっこしてるんじゃねぇんだぞ?」

分かってる。

私がちゃんと現実に目を向けるように、ヒントをくれているらしい事くらい。

「途中で眠くなるかもよ?私が。」

⏰:08/01/17 11:58 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#98 [向日葵]
「叩き起こすから問題ないだろう。」

いくらごっこだとは言え恋人叩き起こす奴がコイツ以外見た事も聞いた事もない。
コイツは絶対やると思うが……。

ため息をつきながら時計を見る。
まだ9時だ。

それでなくても、毎日10時就寝の私がコイツに付き合わされて法律上、私の歳では駄目な酒まで飲まされ、付き合ってたせいで昨日は12時寝だ。

まだ9時間しか寝ていない。

⏰:08/01/17 12:03 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#99 [向日葵]
勘弁してくれと心底思う。

恋人ごっこも楽じゃない。
いくら対等を求めても相手がアイツならば所詮、慎主権だ。

有無言わせる事なく私を玩具として扱う。

「……どうせ行きたくないっつっても引っ張って行くんでしょ?着替えるから外に出てて。」

「素直でよろしい。ちゃんとデートっぽい格好しろよー。」

デート……。
そうか。世間一般から見て、私達は今からデートするのか……。

⏰:08/01/17 12:06 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#100 [向日葵]
と変な納得をしながら、私は着替えにはいった。

――――
――――――……

と言うのが約3時間前の話。そしてこっからが今からの話。

「やっぱり休日って混んでるよなー。映画止めにするか?」

「まかせる。映画館なんと来たの初めてだから分かんないし。」

と言うと、慎は「えぇっ?!」と上映時刻の電光掲示板から私に目を向けた。

「17年生きてきて1度も?!」

⏰:08/01/17 12:11 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


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