・・・ゆめみる魚・・・
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#1 [向日葵]
:08/01/06 15:37
:SO903i
:☆☆☆
#2 [向日葵]
小さい頃、お母さんがよく話を聞かせてくれた絵本だったの。
私の唯一の宝物。
・・・ゆめみる魚・・・
:08/01/06 15:40
:SO903i
:☆☆☆
#3 [向日葵]
1P・ゆめの始め
あるところに1匹の魚がいました。
でも魚はいいます。
『うみはあお。さまざまな色の魚たち。ぼくは、とうぜんのようにあるまわりのものにあきてしまったよ。』
そんな魚に、ある魚がいいました。
『じゃあ目をとじて、ゆめをみてごらん?』
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「―――っ。か……ったら。みかげぇぇっ!!」
:08/01/06 15:46
:SO903i
:☆☆☆
#4 [向日葵]
「……っっ?!」
机に、若干よだれが垂れていた。
それをわからない様に、枕にしていたタオルで拭く。
「アンタ寝すぎっ。現国の先生が『葛ー!葛ー!』って叫んでたわよ!」
「寝る子は育つから……。」
私は、葛 みかげ(かずら みかげ)。17歳を迎えたばかり。
趣味・・・寝る事。
ぼーっとしながら友人である多香子の叫びを聞いてると、ブレザーの内ポケットにいれてる携帯のバイブが鳴った。
:08/01/06 15:53
:SO903i
:☆☆☆
#5 [向日葵]
メールを見て、小さくため息を漏らす。
携帯をまたポケットにしまう。
そして立ち上がった。
「あたし、屋上で寝るから。」
「は?まだ寝る気?」
「次の時間になったら帰るから。」
それを言うと、多香子は黙った。
多香子だけが、私の事情を知ってくれてる。
「じゃあね。」
それだけ言って、鞄を持って、私は教室を出て行った。
:08/01/06 15:56
:SO903i
:☆☆☆
#6 [向日葵]
私は、私の両親は、4歳の頃車事故で亡くなった。
それ以来、父方、母方の家族に引き取られ、と言っても2人には兄弟はいないからおばあちゃんとかおじいちゃんだったけど。
そんなこんなで、生活していた。
でも、誰にでも、死は訪れるもので……私の血縁は、誰もいなくなった。
それからは、どういう繋がりかもわからない親戚の家を転々としてる。
今日もそう。
親戚は私が邪魔らしい。
引っ越す家が決まったのだと言う。
:08/01/06 16:01
:SO903i
:☆☆☆
#7 [向日葵]
もう慣れた。
いづれはそうなってしまう決まった日常には、飽きてしまった。
刺激が欲しい……。
だから私は寝る。夢を見る。
趣味・・・寝る事。
……否、夢を見る事……。
屋上のドアを開ければ、春らしい爽やかな、だけど暖かい風が私の体を撫でた。
日当たりのいい場所に座って、コンクリートの壁にもたれ目を瞑る。
「どんな夢を……見るかなぁ……。」
:08/01/06 16:05
:SO903i
:☆☆☆
#8 [向日葵]
――――***――――
[おかーさぁん。ご本よんでちょーぉだぁいっ!]
いつもの本を持って、お母さんに駆け寄る。
お母さんは優しく微笑んで私を柔らかく抱き締める。
[みかげは、これが好きね。]
[うん。いちばん大好きぃっ。]
場面は変わって、私はお母さんの膝で寝ていた。
[寝ちゃった?]
そうお母さんに囁くように言ったのはお父さんだった。
:08/01/06 16:08
:SO903i
:☆☆☆
#9 [向日葵]
[うん。]
[風邪ひいちゃいけないから、これ、かけておくね……。]
フワリとした感触。
それは夢じゃなくて現実のような気がした私は、静かに目を開けた。
眩しい……。
夢から覚めてしまった。
「女子高生。こんな所でサボリか?」
本をペラ……とめくる音が聞こえた。
それを合図に視線を巡らせば、自分にスーツのブレザーがかけてあった。
:08/01/06 16:13
:SO903i
:☆☆☆
#10 [向日葵]
ちっ……。
教師に見つかったか。
「どうしようがあたしの人生だから。」
「別に説教する気はない。聞いてるだけだ。」
声の主は、もたれてるコンクリートを曲がったすぐそこ、丁度日陰になってる場所に座ってるらしい。
なんか聞いた事がある声だ……。
誰だっけ。
「眠いだけ。アンタこそ、何してんの?」
「職員室はタバコくさいから読書の妨げになる。」
:08/01/06 16:16
:SO903i
:☆☆☆
#11 [向日葵]
そしてまたペラリと聞こえた。
私は声の主を確認する。
そこには、24、5の、眼鏡をかけた男がいた。
知ってるコイツ……。
地理の仏頂面で有名な松川 真一(まつかわ しんいち)。
顔はカッコイイのに仏頂面のせいで皆から怖がられてる損してる気の毒な奴。
「タバコ……嫌いなの?」
「煙吸って何が楽しいんだかな。」
「フゥン。」と適当に答えて、「そういえば」と携帯を見る。
今から帰れば約束の時間には間に合うかな。
:08/01/06 16:24
:SO903i
:☆☆☆
#12 [向日葵]
「んじゃね。松川せんっせ。」
嫌味っぽく言った。
でも相手は別に気にした風もなく、本に目を向けたままだ。
「じゃあな。葛 みかげ。」
声を後ろで聞きながら、私は下駄箱へ向かって階段を下りて行った。
「……あれ。」
1階までもうちょっとの時、私は違和感を覚えた。
「アイツ……。」
何で私の名前知って……。
:08/01/06 16:27
:SO903i
:☆☆☆
#13 [向日葵]
いや、別に不思議でも何でもないか。
熱血教師なら全校生徒の名前くらい覚えてそうだし。
もっとも、アイツはそんなタイプには見えないけど。
「さぁ……って。行きますか。」
ありきたりの日常へ。
――――――……
引越してきた次の家は、こざっぱりしていた。
どうやら今度の相手は1人暮らししてるらしい。
その相手は今は仕事中だから、夜になったら顔合わせする。
:08/01/06 16:31
:SO903i
:☆☆☆
#14 [向日葵]
1人暮らしの割りに大きなマンション。
あと2人住んでも余裕ではないだろうか。
そんな事を思いながら、運ばれた荷物を片付けていく。
荷物は服と勉強道具……そして。
「ゆ、め、み、る……魚……。」
この絵本のみ。
他人の家と言えどもう私の家なので、私は遠慮なくリビングにあったやたらデカイソファに寝転ぶ。
本をめくる。
ポツンと1匹魚がいたのを見たところで私は眠気が唐突に私を襲った。
:08/01/06 16:40
:SO903i
:☆☆☆
#15 [向日葵]
―――――――……
パタンと音がしたので私は目を覚ました。
いつの間にやら部屋は暗くなっていた。
つまり夜だ。
「家主が帰ってきたのかな……?」
気づけば自分の体にちゃんと薄い布団がかぶせてあった。
今日はあの教師といい、親切にしてもらってばかりだなぁと思った。
挨拶した方が……。
と、パタンと音がして閉まっただろうドアを静かに開けば、後ろ姿が見えた。
:08/01/07 00:39
:SO903i
:☆☆☆
#16 [向日葵]
でも、仕事の最中なのか、パソコンの明かりのみだったから、どんな人物かはわからなかった。
邪魔しちゃいけないかと気をきかせ、また静かにドアを閉めた。
挨拶は、また明日でも大丈夫だろう。
・・・・・・・・・・・・・・・・
朝になった。
携帯のアラームで目が覚めた私。
どこの部屋を使えばいいか分からなかったので、ソファの上で寝たのが間違いだった。
体の節々が痛い……。
さっさとシャワーでも浴びて、学校へ行こう。
:08/01/07 00:44
:SO903i
:☆☆☆
#17 [向日葵]
と、後ろを振り向くと、テーブルの上にラップをかけたお皿がいくつかあった。
どうやら朝ごはんらしい。
今度の住居人は……放任主義の親切屋?
変な新しい家主に軽い感謝をこめて、食事をする。
すると隅っこに鍵と置き手紙を発見。
<君の鍵です。戸締まりして下さい。>
わしゃ付き合ってる女か。
とツッコミをいれながらふと字が気になった。
:08/01/07 00:52
:SO903i
:☆☆☆
#18 [向日葵]
多分家主は昨日の後ろ姿から見て男だとは分かった。
しかし、この字はどこかで見覚えが……。
でも私は然程気にせずに学校へ行く準備をして家を出て行った。
「あ。」
学校へ行く途中に気づく。
家の表札見れば良かった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「みかげっ。どうよ新居。」
多香子が興味深々に聞いてくる。
「まだ家主と顔合わせてない。でもどうやら男。」
:08/01/07 00:56
:SO903i
:☆☆☆
#19 [向日葵]
「若いっ?ってか1人暮らし?!」
「んー。そうみたい。」
「キャーッ!!」と何故か興奮する多香子をよそに、私はあともうちょっとで繋がりそうな記憶のパズルをはめ込もうとしていた。
何かひっかかる。
でもそれが何か分からない。
いや、半分は理解出来てる気がするんだけど……でもはっきりとはしない。
結局、パズル遊びは終りにした。
「げげぇ……、松川だぁ……。あたしアイツ苦手なんだよね。」
:08/01/07 01:05
:SO903i
:☆☆☆
#20 [向日葵]
私の後ろに身を隠す多香子の視線の先には、相変わらず何を考えてんだか分かんない松川は、いつも通り難しそうな顔して歩いてきた。
「昨日はどうも。」
あれ、何話しかけてんだ私。
私の声に、松川は「お前か。」みたいな視線を投げて横を通って行った。
「みかげ、どうしたの?いつもなら「教師ウザイ」とか言ってよりつかないアンタなのに。」
でも、松川はなんだか違う気がした。
不思議なその雰囲気が、妙に惹き付けられる。
これは別に、深い意味はない。
:08/01/07 01:09
:SO903i
:☆☆☆
#21 [向日葵]
そう思うと同時に、私の背中がぞくぞくとした。
もしかしたら、松川がなんらかの刺激を私にくれるんではないか。
まるで新しい玩具を買ってもらった子供のように私は密かにワクワクしだした。
「アイツ……いけるなぁ……。」
「は?!みかげ男の趣味悪すぎっ!」
「そんなんじゃないっつーの。多香子は妄想しすぎだ。」
松川ねぇ……。
覚えといてやろうじゃないか。
:08/01/07 01:13
:SO903i
:☆☆☆
#22 [向日葵]
「ねーねーみかげ。それより今日買い物いかない?」
「アンタ今月お金ヤバイって言ってたじゃない。」
「臨時収入ゲット!だから、ね?」
まぁ……街中は意外と刺激的で好きだけどね。
「あ゙!!次地理!松川!」
あーそういえばそうだった。
なんかアイツとは縁があるなぁ。無駄に。
ノロノロ教師に入ろうとすると、頭を後ろから小突かれた。
:08/01/07 01:18
:SO903i
:☆☆☆
#23 [向日葵]
「早く入れ。」
松川だった。
少し避けて、松川を先にいれる。
その時、フワッと松川から匂いが漂ってきた。
香水のような、洗剤のような。
無意識の内に、松川を掴む。
「……何か?」
「あ?いや……ゴメン。」
またパズルのピースが増えた。またはまりそうな溝を、頭の中で探す。
そう。
あの匂い、どこかで嗅いだ覚えがあったのだ。
:08/01/07 01:21
:SO903i
:☆☆☆
#24 [向日葵]
>>22訂正です
教師に入ろう×
教室に入ろう○
です

:08/01/07 01:32
:SO903i
:☆☆☆
#25 [向日葵]
松川の不審者を見るような目を避けながら、私は席についた。
何かが私の中から抜け落ちてる感覚がする……。
それがなんなのかが全く分からない。
結局私は、授業という授業は全て寝てしまう居眠り常習犯なのに、そればかりが気になって、松川の顔をずっと見ながら1時間を過ごしてしまった。
チャイムが鳴り、終わって出て行こうとした松川を私は止めた。
「ねぇ。話あんだけど。」
「話?居眠りばかりしてつ単位の事が心配になったか、」
:08/01/08 00:47
:SO903i
:☆☆☆
#26 [向日葵]
「単位なんかどーだっていいよ。それより、なんか重要な事がある気がする。」
「……何?」
とは言え、いざ伝えるとなると難しいもので、何を言えばいいかさっぱりわからなくなった。
思わず、しどろもどろする。
「いや……だから、その……。」
「用がないならいいか?俺は暇じゃないんだ。」
逃してなるものか。
松川のカッターシャツの袖をガッツリ掴む。
:08/01/08 00:50
:SO903i
:☆☆☆
#27 [向日葵]
「アンタ、何か私に用事ない?」
松川が眉をひそめる。
仏頂面に更に磨きがかかるが、私は知ったこっちゃない。
「昨日から何か違和感あんだよね。アンタ関連限定で。だから、その……何かないの?!」
自分でも意味がわからなくなりそうで逆ギレしそうになっているのを黙殺しながら松川の反応を待った。
「……葛……。」
お……っ?
何かくるか?
「先生に向かってアンタ呼ばわりするな。小娘。」
:08/01/08 00:56
:SO903i
:☆☆☆
#28 [向日葵]
これには開いた口が塞がらない。
質問とは的外れな答えをされた上“小娘”呼ばわりされた。
苛立ちと驚愕で茫然としてしまった。
「用はそれだけか。じゃあな。」
あっさりと松川は私の前からいなくなってしまった。
でも……。
「アンタ何松川に話かけてんのよっ。」
「くぅあ――……っ。」
:08/01/08 00:59
:SO903i
:☆☆☆
#29 [向日葵]
多香子の言葉を右から左へ受け流し(脳内ソングはもちろんムーディ)ながら、私は興奮に震えていた。
やっぱり松川は何かある……っ。
アイツは……絶対逃さない……っ。
とことん私を楽しませてくれるだろう。
「獲物ゲット……。」
私の目が、怪しく光る。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ん?」
多香子との買い物途中、スーパーの前を通り過ぎると、中にスーパーが死ぬほど似合わない奴がいた。
:08/01/08 01:05
:SO903i
:☆☆☆
#30 [向日葵]
顔が不自然にニヤける。
「多香子、先に行って。後で追いつくから。」
「んー。分かった。」
スーパーに入り、奴の背後に忍びよる。
「松川ーっ!」
軽く叫びながら呼んだのに、相手は全く動じなかった。
「脅かすつもりだったろうが、バレバレ。」
そう言って指差した方の食品売り場には、鏡がついてた。
「つまんねー。ってか買い物?アンタが買い物カゴぶらさけだてんの似合わないね。」
:08/01/08 01:10
:SO903i
:☆☆☆
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