・・・ゆめみる魚・・・
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#600 [向日葵]
毎日毎日、買い物、料理、掃除……。

時間がすぎるのが早いくらい、あっという間に毎日が過ぎていく。

でも決して、刺激を求めて夢へ逃げたりしない。

ううん違う。

もう刺激なんかいらないの。
だってね……。

「ママー」

足元で声がしたので、私は下を向く。
そこには小さな宝物がいた。

「なに?ゆめ」

⏰:08/03/17 02:03 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#601 [向日葵]
「あのねーご本よんでほしいのー」

可愛らしいえくぼを作りながら微笑む我が子に、満面の笑みを向けながら私は言った。

「うんいいよ。何がいい?」

「えとね、これ!」

小さな手に抱かれたそれは……。

「ゆめ、これが好きね。」

「うん!だってママがくれたもん!」

「そっか。じゃあ読もうかな。」

⏰:08/03/17 02:06 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#602 [向日葵]
私は絵本の1ページ目を開く。

「“ゆめみる魚”……」

―――――…………

「ただいまー。」

夕飯の用意をしていると、真一が帰ってきた。

玄関まで迎えに行って、カバンを持ってあげる。

「おかえり。今日職員会議じゃなかったの?」

「早目に終わったから全速力で帰ってきた。」

その理由はもちろんゆめがいるからだ。
真一がここまで親ばかになるだなんて思っても見なかった。

⏰:08/03/17 02:09 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#603 [向日葵]
「絵本読んだら寝ちゃったから起こさないでよ」

「なんだ寝てんのか。んじゃ奥さんで我慢するわ」

「ちょっと、我慢っとどういう意味よ」

反論していると、後ろから抱き締められた。
前よりも長くなった私の髪に、真一の吐息がかかる。

「じょーだん。我慢だなんてとんでもない」

「当たり前。誰だったかしらね。卒業の日に婚姻届出しに行こうって勝手に盛り上がってた人は……。」

その時のビデオでもあったら見て欲しいくらいだ。

⏰:08/03/17 02:15 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#604 [向日葵]
私が呆れるほど目を輝かせてはしゃいでるもんだから、落ち着けと頭をどついてやらないと真一は冷静にならなかった。

「それぐらいみかげが好きって事さ。そろそろゆめに兄弟作ってあげてもいいんじゃない?」

ギクッと固まる。

さすがはもとタラシ。
そういう際どい事を安々と言ってのけるあたりまだまだ現役バリバリのタラシだと思う。

「みかげ……返事は?」

「み、耳元で喋んないで……っ!」

⏰:08/03/17 02:19 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#605 [向日葵]
真一が編み出した技。

こうすれば私が断らない事を知っているのだ。

「し……真い」

「あ、パーパー!」

起きてきたゆめが、私達の元に走ってくる。

「おかえりなさぁぁい!」

嬉しそうに抱きつくゆめを、真一は愛しいそうに抱き上げる。

「ただいま。いい子にしてたか?」

「ウン!」

⏰:08/03/17 02:21 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#606 [向日葵]
私はそれを微笑ましく見つめる。

それはいつしか夢で見た光景……。

そんな風に、幸せはいつまでも続いていくのだろう。
そうなる事を、私は夢見てる……。

・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

『みんなー!』

これでなんどめだろう。

魚はさけびつづけていました。

でもみんなはみつかりません。

⏰:08/03/17 02:24 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#607 [向日葵]
魚はさらにつよくおもっておよぎました。

ぜったいあきらめない。
みんなにあいたい。

『みんなー!』

また魚はさけびます。

そのときでした。

とおくからなにかきこえてきました。

『オーイ!こっちだよー!』

魚はふりむいて、そのほうこうをみました。

するとどうでしょう。

はなればなれになってたなかまがいるではありませんか。

⏰:08/03/17 02:27 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#608 [向日葵]
『やっとあえた……!』

魚はよろこびいっぱいにおよぎ、みんなのもとへと向かいました。

・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

たくさんのありがとうを、今貴方に。

真一、会えて良かった……。






・・・ゆめみる魚・・・
*END*

⏰:08/03/17 02:29 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#609 [向日葵]
*あとがき*

如何でしたか「ゆめみる魚」
今まで沢山の応援、励まし、アドバイス。
本当にありがとうございました
私はいつも自分の中で「温かな幸せ」をテーマとしているのですが、少しでもそれが皆様に伝わっていたら嬉しいです
また読んで頂けると幸いです

本当に本当にありがとうございました


向日葵

⏰:08/03/17 02:33 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#610 [向日葵]
感想また頂けると嬉しいです

あとアンカーしてますんで良ければどうぞ

>>2-100
>>101-200
>>201-300
>>301-400
>>401-500
>>501-610

⏰:08/03/17 02:36 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#611 [ぱちりす]
お疲れさまですヾ(^▽^)ノ
めっちゃ良かったです

楽しかったぁ

あったか〜ぃ気持ちになれました
ありがとうございます

⏰:08/03/17 18:43 📱:D905i 🆔:☆☆☆


#612 [向日葵]
ぱちりすさん

読んで下さってありがとうございます

あったかーい気持ちになって頂いて良かったです

良かったら感想板の方も来て下さいね

⏰:08/03/17 18:57 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#613 [向日葵]
・・・ゆめみる魚・・・

―番外編―

⏰:08/04/09 00:15 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#614 [向日葵]
もうすぐ冬が来る。

しかしその前に、私達3年生は受験と言う1つの山を越えなければならなかった。

今まさに受験シーズン。

終わった人もいるけれど、大抵の人がこれからなので、教室は殺伐とした空気が漂っている。

参考書や単語帳とずっとにらめっこしている人や、ひたすら書いて覚えたり問題集をやってる人もいる。

そんなピリピリした雰囲気の中、なんの心配もせず呑気に人間観察なんてしちゃってる私こと葛(カズラ)みかげは、受験には縁が無かった。

⏰:08/04/09 00:20 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#615 [向日葵]
「ちょっとみかげ……」

さっきから目の前で問題を解いている友人の増田 多香子(マスダ タカコ)が、私をじとっと睨みつける。

目で「なんだ」と応じれば、多香子は眉にしわを寄せた。

「ずるい……ずるいよみかげはぁぁぁ……。1人だけそんなホワホワした雰囲気漂わしてぇぇっ」

受験が1週間後に迫っている多香子は情緒不安定になっていた。

しかし多香子は推薦で受けるので、「そんなに頑張らなくても」て言うと、「その油断がダメなのよ!」と怒られた。

⏰:08/04/09 00:25 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#616 [向日葵]
私が受験と縁遠いのは理由があった。

休み時間のガヤガヤした音に、アナウンスの音が混じる。

<葛みかげ、葛みかげ。至急社会科準備室まで来なさい>

「あ、呼ばれてる」

「裏切り者ぉぉぉ!!」

ついに泣き叫ぶ多香子を放置して、私は社会科準備室へと急いだ。

前より少し伸びた髪の毛が、歩く風によって揺れる。
社会科準備室のドア前に来て、ノックをすれば、中から返事が返ってきた。

⏰:08/04/09 00:30 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#617 [向日葵]
「失礼します」

「おう入れ」

1歩入り、ドアを閉めて、いつも通り鍵も閉めておく。

そして、意地悪そうな笑い声を出した後、低く甘い声が聞こえる。

「どうした?早くこっち来いよ」

ドがつく程Sっぽいこの人は、松川 真一。
ここの教師。私の同居人。

……私の恋人……。

「真に呼びだされたせいで多香子に泣かれた」

⏰:08/04/09 00:35 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#618 [向日葵]
声をあげて笑う真を私は睨む。

コイツはただ会いたいからと言う理由だけで私を呼び出す。
これはお決まりパターンなのだ。
正に職権濫用。

なかなか真に近づかない私に痺れをきらしたのか、真自ら私の元へやって来て、手を引っ張り、握ったまま自分はイスに座った。

「嫌だった?俺に会うの」

にこりと笑って首を傾げるものだから、嫌じゃないけど嫌とは言えなくなった。
だからと言って「会いたかった」なんて乙女チックな事、私が言える訳が無い。

⏰:08/04/09 00:40 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#619 [向日葵]
でも真のその仕草に私の中の少ない乙女チック思考の心にグッときて、顔が赤くなるのを自覚しながら口を閉ざした。

そんな私を面白がるように、少し私の手を引っ張って、頬に唇を寄せた。

「ちょっ……!」

急いで身を引いても、手を握られたままだから逃げるに逃げられない。

そんな慌てた私に満足した真のニヤッとした意地悪な笑みに、更に顔の体温は上がる。

「聞いてるのに何も言わない子にはちゃんと教えてあげるのが教師だろ?」

⏰:08/04/09 00:47 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#620 [向日葵]
なんかそれ違う……。

本当はこんな関係いけない。
同居人だとは言え、私は生徒、真は教師。
それでも想いは止められず、私達はついに……

「卒業するまでにはもうちょい素直になって欲しいな。なんてったって俺達夫婦になるんだから」

そう。
私が受験と縁遠い理由。
それが今、真が言った事なのだ。

知ってるのは多香子だけ。
進路調査では、名前こそ出さなかったけれど(てか出したらえらい事になるけど)結婚するとしてある。

⏰:08/04/09 00:55 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#621 [向日葵]
……と言うか……、3年に上がって担任が真になったので、助かったのだ。

これが他の教師であれば結婚となれば相手を聞かれそうだ。
ちなみにそんな場合は「親戚の家の仕事を手伝う」とか言う予定だった。

実際、真繋がりの親戚で、旅館を経営してる人がいるらしく、嘘を言ってる訳ではないからなんとでも通るのだ。

真曰く

「あすこのおっさんとおばさんは俺が可愛いから何でも言う事聞いてくれるだろうからなー」

⏰:08/04/09 01:00 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#622 [向日葵]
と言った。

心の中で「どうなってんだよアンタの親戚」と突っ込んだのは言うまでもない。

「素直……って、私はこれで普通なんだから素直も何もないでしよ」

「もっと自分から抱きつくとか好きって囁くとかさー」

「酔っ払ってんの?」

こんなやりとりしょっちゅうだ。
真はどうにかして私を乙女チックに仕上げたいらしい。

その分真は抱きつくわ好きと囁くわ、あげくの果てにはキスだ。

⏰:08/04/09 01:05 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#623 [向日葵]
「真も知ってる通り、私は遂この間まで恋愛の“れ”の字も知らなかった小娘なの」

「“小娘”って分かるようになった辺り成長したな」

「……その“小娘”に手ぇ出したのは誰……」

真はにーっこり笑うとひらひら手を振る。

そうだ。真は私達世代には興味ないとか言ってたくせにちゃっかり私に手を出したんだった。

結局理想なんて意味も無いものなんだと真を見て感じる。

⏰:08/04/12 01:37 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#624 [向日葵]
話を元に戻そう。

真の過剰なスキンシップや愛情表現が嫌な訳ではないし、真が嫌いだから何も言わない訳じゃない。

それなりのムードがあれば、私だって後で思い出せば恥ずかしい言葉だって言ってる時はある。

ただ、私は怖い。

自分が自分でなくなってしまいそうなのがなんだか怖いのだ。

さらけ出して、真が私を嫌いになってしまうかもと考えれば、越えてしまいそうなあと1歩が踏み出せない。

⏰:08/04/12 01:42 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#625 [向日葵]
もちろん、こんな恥ずかしい事は言えないし言いたくもない。

真は机に肘をついてフゥ……とため息をつく。

「せめてさー……保健室の時みたいな可愛い事言えない?」

保健室の時とは、文化祭で私が階段から落ちて気を失ってしまった時だ。

あれこそ本気で恥ずかしい。
泣きじゃくりながら必死に「側にいたい」と言った自分がひどく滑稽に見えたからだ。

どんなドラマ展開だ。

⏰:08/04/13 12:26 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#626 [向日葵]
一度真に聞いた事がある。

いつもと変わらず、抱きついたり、甘い言葉を吐いている時だった。

何故そんな事が出来るのかと。

返ってきた言葉はこうだった。

「好きな奴には全力で自分の気持ちを知ってほしいから」

あっそう……としか言えなかった。

そんなそれが当然かのように言われてしまったら私はどうすればいいんだ。

⏰:08/04/13 12:29 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#627 [向日葵]
呆れていながら社会科準備室の時計を見れば、あと5分で休み時間が終わろうとしていたので、頭の中から少女漫画回路を追い払ってここに呼び出した訳を真に聞いた。

「用がなきゃ呼んじゃダメかよ」

「愚痴なら帰ってから聞くからさっさと何の用か言って頂戴」

渋々といった感じで真はブレザーの上着から何かを取り出した。

薄い封筒のようだ。

それをヒラヒラさすながら真は言った。

⏰:08/04/13 12:33 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#628 [向日葵]
「生物の高木先生から懸賞かなんかで1泊2日の温泉旅行が当たったらしい」

生物の高木……?
あぁ、あののほほんとした空気をまとった40代後半のおばさん先生か。

……え。
温泉旅行?

「自分は行く予定が無いから俺にどうだと聞いてきた。で……、行くか?」

つまりそれは温泉旅行のチケット。
そしてその温泉旅行に行かないかと誘われている……。

ってか、

「2人で?」

⏰:08/04/13 12:37 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#629 [向日葵]
「大人数でいけるか馬鹿」

温泉と聞いて嬉しくない訳がなかった。
この寒くなる1歩手前の温泉……露天風呂が楽しめそうじゃないか……っ!

「行く!行きたい!」

「よし決まりだな」

真も嬉しいのか、笑って私の頭をクシャッと撫でた。
私はされるがままになる。

もうすぐチャイムが鳴りそうなので、真から離れ、私は社会科準備室を後にした。

⏰:08/04/13 12:41 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#630 [向日葵]
*******************

予想外のみかげのはしゃぎっぷりに俺は嬉しさを隠せなかった。
が、その反面少し虚しくもあった。

彼女は不器用で、滅多にベタベタしてくれない。
いや別にいいんだ。
そんなところも大いに可愛いと思う。

だが、こちらとしては少し物足りないと感じる事もあるのだ。

そこでやってきた温泉旅行を譲る誘い。

この旅行を機にみかげが少し甘い雰囲気に慣れて少しでも甘えたりしてくれれば嬉しい……。
なのに……。

⏰:08/04/13 12:46 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#631 [向日葵]
どうやら彼女には温泉を楽しむ頭しかないようだ。

普通あの年代なら、旅行に行くのを緊張しながらも楽しみにしたり勝手な妄想膨らましたりすると思ったんだが……。
ずっと2人で暮らしている為みかげにはその意識が低いらしい。

……我慢出来るかねー……俺。

最近のみかげは髪が伸びたせいか一段と可愛い。
でもこちらとしては常に理性との戦いなので歯を食い縛って1日1日をしのいでる。

でも……みかげの気持ち最優先だから、嫌がる事は絶対にしない。

⏰:08/04/13 12:50 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#632 [向日葵]
それだけは肝に銘じておく。

……ま、理性が切れるまではの話だけどな。

*******************

<何の話だったの?>

授業中、多香子からメールが来た。
視線を少し横にずらせば、携帯を机の下に隠して、こちらを向いてニヒッと笑っていた。

アンタ真面目に勉強するんじゃなかったの……?

<旅行の話>

そう送った。

「り……っ!」

⏰:08/04/14 00:27 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#633 [向日葵]
多香子の呟きが大きくここまで聞こえた。

メールは驚くほど早く返ってきた。

<り、旅行!?松川と!?マジで!遂にみかげが大人の階段上るの!?シンデレラになっちゃうの!?>

なんのこっちゃ。

大人の階段?
なんでそんな展開を予想しているかが分からない。

呆れながら私はまた多香子にメールを返した。

<何言ってんの?ただ旅行にいくだけ>

多香子のくだらない妄想は際限ない。

⏰:08/04/14 00:31 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#634 [向日葵]
その豊かな想像力を勉強に回せばいいのに。

左手に持つ携帯が震えたので、私は携帯を見る。

<何言ってんのはこっちの台詞だよ!みかげなんで意識しないの!?泊まり=それっきゃないじゃん!>

やっぱり私には乙女思考は働かない。
と言うか乙女チックな考え方は私には無理みたいだ。

どうしてそうなるのかが分からない。
てかなる訳がない。
一緒に住んでるんだからそんな展開期待する方が間違いだ。

⏰:08/04/14 00:36 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#635 [向日葵]
また何かメールが来たけど、めんどくさくなって私は寝たフリをして無視をした。

……でも不思議だな。
前まではこうやって顔を伏せるだけですぐ夢の中へ旅立ってたのに、今は真がいるおかげで全然眠れない。

それほど真の存在が、私の中で大きく光輝いてるって事なのかもなぁ……。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ちょっと来てっ」

我慢出来ないと言った風に、私の元へ多香子がやって来た。

⏰:08/04/14 00:44 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#636 [向日葵]
腕を引っ張り、私と廊下に出た。

そのまま興奮したように私の肩を掴んで多香子は間近で力説しだした。

「いいみかげ。旅行って言うのはね、色んな雰囲気をまとってしまうの。そのいつもと違う空気に2人の気持ちは高まってー……って事になっちゃうかもなのゃ!」

「“かも”でしょ?私達にはそんなのないから」

「あぁーまいっ!!」

ってか何で多香子がテンション上がってるかが私には不思議で仕方ない……。

⏰:08/04/14 00:48 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#637 [向日葵]
なんか1人で身振り手振り話している多香子を心の中で鼻で笑う。

これだからいつも考えすぎの多香子は困る。

そんな訳ないって言うのに……。

――――――……

学校から帰ってきて、手を洗う時に自分の左薬指に光る銀の輪が目に入った。

台所から入る窓の光により、微かに輝いている。

私はそれを眩しそうに目を細めて見つめた。

あれからもう1年以上過ぎたと思えば、時の早さを思い知った。

⏰:08/04/15 20:15 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#638 [向日葵]
この1年、些細なケンカも確かにあったけれど、毎日が本当に温かく幸せな日々を送っていた。
この左手を見る度そう思う。

[シンデレラになっちゃうの!?]

多香子のメールを思い出す。

真はあの性格だから、確かにそれらしき雰囲気を漂わしたりした事もあったけど、私が私だからいつも“おあずけ”状態にした。

「……ハ、ハハ……まさかね」

それ目的で真が温泉に誘っただなんてまずありえない。

⏰:08/04/15 20:20 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#639 [向日葵]
だって真は真なりに考えてくれてるし、ムードに流されて無理矢理なんて事はないと思うし。

そう……。

「だから多香子の考えすぎなんだって!」

「増田がどうかしたのか?」

「ひぃっ!いたの!?」

後ろにいた真を振り返りながら自分の今の考えを振り払う。

私ばっかりこんな事考えてたら私が望んでるみたいになっちゃうじゃない……っ!!

⏰:08/04/15 20:23 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#640 [向日葵]
振り返ったはいいものの、私は何を言えばいいか分からず、下を向いてしまう。

真はと言うと、クスリと笑う声が聞こえたかと思えば、私がもたれていたシンクに手をついて私を閉じ込めるようにした。

体がさっきより近づいて、真愛用の香水の香りが漂ってくる。

これは、思いきり攻めの体勢だ。

「ちょ……何……」

うつ向いたままなんとか聞こえる音量で抗議してみる。

⏰:08/04/15 20:27 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#641 [向日葵]
「何って……楽しんでる」

本当に楽しそうな口調で言うもんだから、眉を寄せて赤くなるしかなかった。

じわじわと顔が近づいて、真の片手が私の頬に触れる。上を向くよう促されてる感じはするものの、私は頑なに上げようとはしなかった。

頭がパニックを起こす。
体はガッチリ固まってしまった。

「みかげ」

優しく呼ばれて、そろりと顔を上げれば、柔らかく微笑む真がいる。

⏰:08/04/18 00:18 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#642 [向日葵]
緊張していた体は力が抜け、真の片手が導くままに顔をしっかり上げた。
と同時に真の顔が近づく。
長いまつ毛が間近に迫れば、見つめるのが恥ずかしくなってそのまま真の唇が触れるのを目を瞑って待った。

[二人の気持ちは高まって……って事になる]

多香子の言葉がエコーがかって頭に響けば、私は叫びながら力一杯真を押し返していた。

「う……っわぁぁぁぁ!!」

「おわぁっ!!」

⏰:08/04/18 00:23 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#643 [向日葵]
突然の攻撃に容易く真は飛ばされてしまい、フローリングに尻餅をついた。
私はシンクに頼りなくもたれながら胸を押さえて心臓の音を聞く。

何急に意識しだしてんだ私……っ!さっきまでどうもなかったのにおかしい!

そこまで考えて私はハッとした。
真をほったらかしにしたまんまだった。

「ご、ごめん真っ!あの……」

「はぁ……いいよ。早く晩飯作ってくれ」

そう言うと、真はテレビをつけてソファーに身を投げ出した。

⏰:08/04/18 00:27 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#644 [向日葵]
あぁ……。真を傷つけてしまった……。
だから私は子供なんだよ。

……もういい。
全部多香子のせいにしてやる……。

頭のごちゃごちゃも、真となイザコザも、全て多香子に押し付けて私は晩御飯の準備にとりかかった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

「真ー。ご飯だよ」

台所からソファーの真に呼びかけても返事は無かった。
まだふてくされてるのかと、真に近づく。

⏰:08/04/18 00:30 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#645 [向日葵]
真を上から覗いて見れば、静かに寝息を立てて眠っていた。

いつも頑張っているし、(勝手にやってるんだとしても)学校の時と人格違うようにしてるから疲れてるのかもしれないなぁ……。

それを癒してあげるのが私の役目だと思う……のに。
突き飛ばしちゃった……。

その場で脱力するようにうなだれる。

座って、ちらりと真を見る。
相変わらず整った顔は寝ていても崩れない。

⏰:08/04/18 00:34 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#646 [向日葵]
「ごめん……なさい……」

寝返りをうった時に眼鏡を傷つけてはいけないと、眼鏡に手を触れた瞬間……。
素早く手首を掴まれた。

「ひぃっ!」

「んな化けもんに会ったみたいに驚かんでも……」

私は眼鏡に手をかけたまま固まった。

「外したいなら外せば?」

え、起きる気ないの?

特に理由もなく、せっかく外しかけたのだからと意味の分からない事を思いながら私は真の眼鏡を机に置いた。

⏰:08/04/18 00:40 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#647 [向日葵]
依然、私の手首はまだ解放されず、その掴まれてる手をぼんやりと見つめた。

「旅行行くの、やめる?」

そんな事言うもんだから、私は「え!?」と言いながら真をバッと勢いよく見た。

忘れていたけど、眼鏡を外した真の眼光は眼鏡をかけている時の2倍。
見えてるのかいないのか分からないながら見つめてくるけど、私はその視線にいつもクラクラする。

そんな事はとりあえず置いておいて、私は真に問うた。

⏰:08/04/18 00:45 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#648 [向日葵]
「な、なんで。あ、予定合わなくなった?それなら別の日……」

「じゃなくて」

私の言葉を遮って真が言った。
手を伸ばして、微笑みながら耳元を髪と一緒に撫でる。

「誰かさんが何かいやらしー事意識してるみたいだから」

理解しかねた私は首を傾げて真の言葉を口の中で繰り返した。
そして意味が分かった時、恥ずかしいようなムカつくような気分になった。
思わずそっぽを向く。

⏰:08/04/18 00:49 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#649 [向日葵]
「し……してない」

「顔真っ赤にしたくせに」

「真が迫る時はいつもでしょう」

「じゃあいつもいやらしい事考えてんだ」

「違うってば!」

ムキになればなるほど真は笑った。

笑い事じゃない……。

軽く口を尖らせていると、掴まれていた手首をぐいっと引っ張られた。

「わぁっ!」

⏰:08/04/18 00:53 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#650 [向日葵]
何をされるのかと目をギュッと瞑った。
暖かさを感じて目を上げれば、ソファーに寝転がっている真の上に、上半身だけ私の体が覆い被さっていた。

こ、この格好はマズイだろ……っ!

うろたえてる私をよそに、真は真剣なトーンで話始めた。

「何もしないよ。お前が嫌がる事は」

「べ、別に嫌がってる訳じゃ……」

ようやく手首を解放されると、今度は頭と腕を掴まれてる更に引き寄せられた。

⏰:08/04/18 00:58 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


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