・・・ゆめみる魚・・・
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#501 [向日葵]
でもつぐみさんは違った。

眼鏡をかけてなくてもどこにいるか分かった。
私みたいに、あんなにあっさりした告白じゃなく、温かさある言葉の告白だった。

一目瞭然。

今私が逃げて、見つからなかったら、真は諦めて、「あぁ家に帰れば会えるか」そう思うに違いない。

私なんてその程度。

階段を下に降りて行く。

ねぇ真知らないでしょう。
私がどれだけ、真を必要としてるか。

⏰:08/03/10 02:01 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#502 [向日葵]
ダァン!と大きな音が聞こえたかと思うと、目の前に息を切らした真がいた。

「ハァ……み、見つけたぞ……みかげ……。」

「な……んで。屋上に向かう筈」

「だったさ。そ、その途中……、違う校舎からお前を見つけて、ハァ……イチかバチか先回りしたんだよ……。」

ゆっくりおぼつかない足取りで、後ろ向きに階段を上る。

そして全力疾走。

「あ!待てボケ!!鬼ごっこしたいんじゃねぇんだぞ!!」

⏰:08/03/10 02:06 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#503 [向日葵]
当たり前だろ!

ツッコミ入れたり走る元気はあれど、真と面と向かって話す元気はどこにも無かった。

真も後ろから追いかけてくる。
鬼の形相とは正しく今の真の事。

最悪な事に私は分かりにくい場所を探す為に人がいない校舎にいた。なので逃げ回っている校舎には人1人いない。

木を隠すなら森の中。
人を隠すなら人混みの中……なのだが残念ながら無理なんだよね。今現在。

つまり標的丸見え。

⏰:08/03/10 02:12 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#504 [向日葵]
「待ちやがれぇぇ!!24歳舐めんじゃねぇぞコラ!!」

「誰も何も言ってないわよこのストーカー!!」

と言いながらも体力の限界は近い。
もともと私は音痴ではないけど体力ないんたから。

そこで目に止まった女子トイレ。

逃げ込んで個室に入り、鍵を閉める。

「き……ハァ……きったねーぞ!反則!卑怯!」

「勝手に言っとけ!!ハァ……用も無いのに、アンタが、お……追いかけて来るからじゃん!!」

⏰:08/03/10 02:18 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#505 [向日葵]
「あのなぁ……っ俺は」

「お願いだから構わないで!今ちょっと……い、イライラしてんだよね。大丈夫!1人で頭冷やせば治るから!」

心を、気持ちを、かき乱されるのが嫌だった。

どうして私が。
どうして私に。

どうして。どうして。
どうして。どうして。

しーんとした。
足音も気配も感じなくなった。

真は行ってしまったのだろうか。

⏰:08/03/11 19:13 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#506 [向日葵]
ゆっくりと、ドアを開ける。

開ければ、入口にいただろう真は、やっぱりいなくなっていた。

自分から1人にしろと言ったくせに、鋭い痛みが胸を貫いた。

仕方なく、トイレから出る。

「かかったな。」

「――っっ!!」

入口から見えない位置に、真は潜んでいた。

私が逃げないように腕を大きな掌で掴む。

⏰:08/03/11 19:16 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#507 [向日葵]
「や……いやぁ!!」

「みかげ、頼むから話聞け!」

「1人にしてって言ってんじゃない!」

「今1人にして壊れそうな顔してたのはお前だろ!!」

叫ばれて、私は暴れるのを止めた。
図星をつかれたからだ。

普通にしなくちゃいけないのに、いざ本人を前にしてうろたえてる自分は何なのだろう。

そんな事も出来ない自分。
つぐみさんはやってのけたのに。

⏰:08/03/11 19:20 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#508 [向日葵]
こちらは子供。
あちらは大人。

だから?だからなの?
だから安々と騙す事が出来るの?
騙す事が悪い事だとも思わないの?

あぁこんな事思ってる時点で私は夢を見すぎているお子さまなんだ。

だから夢を見ていたのに。
大人にしてくれようとしたのは真なのに。

でもその真は私を……。

……考えるの止めよう。
どうどう巡りするだけだ。

⏰:08/03/11 19:24 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#509 [向日葵]
「真……もういいから……。」

「何が?そうやってまた逃げるのか?」

「……そうじゃない。」

「じゃあ何?」

逃げたいのに……真と言う足枷があるの。
中途半端すぎる今の自分は、どんなに強がっても頑張っても、見直すどころか、話にもならない。

「私……知ってるよ。真がつぐみさん好きって。」

「みかげ、それは」

「本当は真を信じてなかった。」

⏰:08/03/12 01:31 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#510 [向日葵]
ポロリと出てきた言葉に、真が驚く。

廊下の向こうで、誰かが来そうな気配がした。

「ずっと、不安だった。大切なものが出来る度、いつなくなるかって。でも信じてみようって思ってた。」

けど、信じても、信じようとしても、全ては拭いきれなかった。

それはやっぱり、真の心のどこかでつぐみさんがチラついていたからかもしれない。

いつ……真は私を見なくなるだろう……って。

⏰:08/03/12 01:35 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#511 [向日葵]
「……大丈夫。真の重荷にはならないよう気をつける。そういうの、慣れてるから平気だし。……今日は、多香子の家に泊ま」

「っざけんな!」

パァン!!と乾いた音が響く。
真は壁に思いっきり手をついて、私をその場に押し留める。

「不安?平気?重荷?……勝手に話進めてんじゃねぇよ。俺がいつお前をいらねぇっつって捨てたよ!!」

真がここまで怒ったのを初めて見た。
私は驚いて、怒りの炎が宿る真の目を見つめた。

⏰:08/03/12 01:40 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#512 [向日葵]
口を開いて、何か言わないとって思うのに、頭が一気に真っ白になってしまったせいで何も出てこず、ただ餌をねだる鯉みたいにパクパクするだけになってしまう。

「俺はいつだって言ってた。お前が欲しいとねだった!すがった!信じようとしないのは、お前がはなっから諦めてたからじゃないのか!?」

はなっから……諦めてた?

そんな事ない。
信じたくて、でも信じれなくしたのはいつだって…………真の方だった。

⏰:08/03/12 01:45 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#513 [向日葵]
人の気も知らないでと、真に負けないくらいの怒りを示す。

「じゃあ真は知ってる?まだごっこの頃の話だよ。私がどんな気持ちで、つぐみさんと会ってた真を待ってたか。」

事故に逢ってないか馬鹿みたいに心配して。
失ってから気づく大きな存在を、私は知ってる。

だから恐かった。

……なのに。

「「つぐみは精神力が弱いからそっとしなくちゃいけない。」みたいな事を言ったんだ。首に赤い痕つけて……。」

⏰:08/03/12 01:49 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#514 [向日葵]
赤い痕をつけるのが簡単なのは身をもって分かった。

でもそれを断って傷つく程つぐみさんは本当に弱かったのだろうか。

つまりそれは、真がまだ揺れていた証拠なんだ。

ごっこと。
私に現実を見つめさせるからに自分は側にいると言った。

なのに当の自分は、私をそっちのけでつぐみさんに付きっきり。

そんな中でのあっさりした告白。

どうやって丸々信じると言えるだろうか。

⏰:08/03/12 01:52 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#515 [向日葵]
真を睨みつけながら、興奮してか何か分からない涙を流した。

真は、壁に突っ張っていた手をゆるゆると下ろした。

「ねぇ真。私は分からない。恋愛のかけひきを知らない。でも分かる。私達、無理なんだよ。」

そこまで話して、生徒の笑い声が近づいてきている事に気づく。

「気にしないで。普通通りに過ごせばいいだけ……。」

真は目を見開いて私を見つめたままだった。

⏰:08/03/12 01:57 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#516 [向日葵]
「じゃ……私行くから。」

足早に、そして駆け足で、その場を去る。

最後に小さな声で、私の名前を呟いた気がした。

しばらく行った所で、私は停止して、その場にズルズルとしゃがみこんだ。

スカートに滲んでいく、無数の滴達。

私の恋は、終わってしまったようだった……。

⏰:08/03/12 02:00 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#517 [向日葵]
12P・行き詰まり

くろいやみのなかで、なにかうごいたきがしました。

『だ、だれかいるの?』

魚がたずねました。

『おやおや、こんなところでなにをしてるんだい?』

くらやみのなかの魚がききました。

・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ほんの少し。
掌で充分足りるくらいの気持ち。

⏰:08/03/12 02:03 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#518 [向日葵]
少なくとも、それくらいの気持ちはあったと思う。

完璧に私を玩具としたことは、以前に比べて少なかっただろう。

それでも駄目だった。

私の気持ちだけが、1人歩きしていた。

真は、こちらなんか見ていなかったのに……。

「ねぇみかげ。本当に学校に泊まる気?」

明日の文化祭は一般公開がある為、今日より更なる準備が必要だった。

その為、皆遅くまで居残りしていたが、だんだんと数は減っていってた。

⏰:08/03/12 02:07 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#519 [向日葵]
多香子の家に泊まると真に言った。いや、言いかけたけど、多分忘れてるだろうからもういいやと思った。

多香子が言った通り、私は今日、学校に泊まる事にした。

「家に今から帰ってもなんだかんだで寝るの遅いだろうからもういいし。」

文化祭、と言う事で、私達は特別な規則を今の期間だけ儲けている。

なので学校に寝泊まりするのは私だけではないだろう。
実際、明日劇をするクラスはラストスパートで泊まる人が多いらしい。

⏰:08/03/12 02:12 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#520 [向日葵]
「そう?じゃ、気を付けてね?」

そう言って、多香子は帰って行った。
もちろんクラスには、私と同じように泊まる人がいた為1人ではない。

それでも私は、1人になりたかった。

全ての作業が終わって、皆が教室で寝静まる頃、私は屋上へと向かった。

夜中の校舎もなんのその。
「怖いよー。」などと脅える事はない。

ガチャリとドアを開ければ、そこは満天の星空だった。

⏰:08/03/12 02:16 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#521 [向日葵]
生温い風と、なんとも言えない夏の匂いが私を迎える。

私はそれらに身を任せて、冷たいコンクリートに体を沈めた。

時間が止まったように感じた。
このままずっと夜な気さえした。

でもそうならばいい。

このままなら、私は真に会う事もないだろうから。

[みかげ。]

最後に名前を呟いた真の声が、耳の中で反響する。

明日から、“真”とは呼ばないでおこう。
また前みたいに“松川”と呼ぶ。

⏰:08/03/12 02:20 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#522 [向日葵]
全て、何もかも、この気持ちも……投げ出そう。
切り替えるのがへたくそな私だけど、それは努力しよう。

行き詰まった今、そうするしかない。

導くものは……閉ざされた……。

眠くもないのに、自然と目を閉じていった。

まるでこのまま死ぬんじゃないかと思うくらい自然と……。

でも、それでもいいかもしれないと思った。

あぁでも、今死んでしまったら、“重荷”確実になってしまうかなぁ……。

⏰:08/03/12 02:24 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#523 [向日葵]
*****************

[私達、無理なんだよ。]

みかげから今日言われた言葉。

今日彼女は帰ってこない。
友人である増田の家に泊まるとか言ってた気がする。

昨日のように、家は奇妙なほど静まりかえっている。

いつもさり気なく「おかえり。」を言う人がいないと言うのは、こんなにも寂しいものなのかと気づく。

「無理……ねぇ。」

⏰:08/03/13 00:30 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#524 [向日葵]
ソファーに深く身を沈めながら、呟く。

これまで、みかげにはちゃんと好意を示してきたつもりだったし、大事にしてきたつもりだった。

・・・
……いや、つもりだから駄目だったんだ。

みかげはそれでは駄目なんだ。
直球で、ちゃんと示さなければ分からないんだ。

かけひきなんて通用しない。

「そうか……。」と、唐突に思い出した。

彼女は、もう自分に近しい者はいないのだと。

⏰:08/03/13 00:37 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#525 [向日葵]
※上の・・・は気にしないでください

⏰:08/03/13 00:38 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#526 [向日葵]
1人だから、孤独になるのを恐れていたのに。
折角自分を包んでくれる存在が出来たと思っていたのに……。

俺は、いい加減すぎたんだな……。

優しくしていた……これもつもりだ……。
だから「無理」と言われるんだ。

でもみかげ……。

俺はお前を手放すつもりなんて更々ない。

明日からだ。
明日から、みかげに俺の本気を見せなければ、いつかアイツは、俺の前から消えてしまう事だろう。

⏰:08/03/13 00:41 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#527 [向日葵]
「そんな事させねえ……。」

みかげ……俺はお前が思ってる以上に、お前が必要なんだ……。

―――――――…………


今日も満員御礼。

昨日に増して「仮装部屋」は大流行していた。

今日も店番有りなので、ハイカラな恰好をしながら接客中。
そしてやっぱり「写真を!」と引っ張りダコ……。

……何故?

冷静な自分がいる半分、もう半分では体のダルさを訴えていた。

⏰:08/03/13 00:45 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#528 [向日葵]
目覚めれば、朝日が登っていた。
と言うか、屋上で一晩を過ごしてしまった。

コンクリートのせいで体痛いわ頭痛いわで散々な上、寒気、ダルさが付いてきた。

くそ……ついてない……。

今日はつぐみさんが来るって言うのに。

朝一でメールが入り、今日来るとの事。

昨日の今日で、上手く立ち回り出来るか分からないのに体がこの状態だ。

いっそ身を潜めてしまいたい……。

⏰:08/03/13 00:48 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#529 [向日葵]
「みかげ?顔色悪いけど平気?」

多香子が私の顔を覗き込んで様子を伺う。

「……うん、まぁ……。」

「あんまりよくなかったら保健室行きなね。」

あぁ保健室かぁ……。
……ん?保健室?

私は勢いよく多香子の肩を掴んだ。

「多香子、ナイスアイディア。」

保健室に逃げ込めば問題ないかもしれない!

⏰:08/03/13 00:53 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#530 [向日葵]
ってそんな簡単に行く訳がなかった。

「着物のお姉さぁーん!写真撮りませんかー?」

「キャー!めちゃくちゃ綺麗!写メ撮らせて下さい!!」

……わしゃアキバのコスプレしてる人か。


「え、嘘、みかげちゃん?」

声がする方に首を向ければ、少し離れた所につぐみさんと歩がいた。

店番だから仕方ないとは言え、この姿を見られたのはものっすごく不本意だ。

⏰:08/03/14 00:24 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#531 [向日葵]
「すごく可愛い!あとで写真撮ろうね!ね、榊君。」

「あぁ、そうだな。」

あれ。
いつもの歩のテンションじゃない……。

不思議に思った私は、歩をじっと見た。

歩は、何に仮装しようか迷いながらもはしゃいでいるつぐみさんを優しく見守っているように見えた。

まさか……。

「歩。」

「ん?おぉう!誰かと思えばみかげちゃんじゃん!」

⏰:08/03/14 00:28 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#532 [向日葵]
ホラ。明らかに違う。

「ふざけた態度とってないで、つぐみさんに告白すればいいのに。」

「……やっぱり、みかげちゃんは面白いね。気づいたの君くらいだよ。良かったら少し話しない?」

多香子に断って、私は歩と一緒に教室を出た。

着物のせいで目立つかと思ったけど、目立ったのはむしろ歩の方で、皆(特に女子が)次々に振り向いていく。

きっと真がこれだけ柔らかいオーラ出してたら同じ事になるんだろうな……。

……昨日以来、真を目にしてない。

⏰:08/03/14 00:32 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#533 [向日葵]
目にしてない方が楽だけど、胸が痛くならないけど……。
見なきゃ、少し寂しい……。

馬鹿みたい。
欲張り。浅はか。ガキ……。

「どうかした?」

階段くらいまで来て立ち止まった歩が聞いた。

「……で、なんで私にちょっかいかけたりしたの?つぐみさんを一途に思ってれば良かったのに。」

考えてた事を話すのがなんとなく嫌で、話をそらした。

⏰:08/03/14 00:38 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#534 [向日葵]
歩は苦笑いしながら、少しずつ話出した。

「一途に想ってたよ。でも、君も気づいてるだろうけど、つぐみは松川が好きだからねぇ。」

そう。
そしてつぐみさんの願いは叶って、現在2人は付き合ってる。

歩は、それを知ってるのかな?

「俺ね、松川と君が買い物してるの、1回見た事あるんだよ。」

「え。」

「だから君と前あった時、この子いじれば松川がなんか反応するかなって。だから君にちょっかいかけたの。」

⏰:08/03/14 00:42 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#535 [向日葵]
「だけど。」と、歩は話を続ける。

「あの松川があまりにも面白い反応してくれたから、貴重だったよ。よっぽど、みかげちゃんが大切なんだね。」

私は歩をぼんやりと見つめた後、少し視線をずらして下を向いた。

「……大人ってズルイよね。」

「え?」

「大切な人扱うフリしてからかうもの。歩だって、回りくどい事なんてしてないで直球で当たればいいのに。」

⏰:08/03/14 00:46 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#536 [向日葵]
自分のムシャクシャした考えを、何も関係ない歩にぶつける。

案の定、歩は困った顔をしてしまった。

ため息をつくと、防火扉にゆっくりと背を預けてまた話出した。

「みかげちゃん。君も経験した事ない?子供の頃、出来てた事が、大人に近づくにつれて出来なくなった事、ない?」

それは例えば、人前でギャーギャー泣き叫ぶ事は子供の時出来ても、今じゃ恰好悪くて出来ないと言う事だろう。

私はゆっくり頷いた。

⏰:08/03/14 00:50 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#537 [向日葵]
「ある。」

「それと一緒。大人はね、段々と駆け引きを覚えて行ってしまうんだよ。だから言いたい事もやりたい事も上手く出来ない。分かってくれるね?」

歩はまるで先生よりも先生らしく説明してくれた。

その様はとても誠実で、本来ある筈の彼のチャラチャラした部分を消してくれたのだった。

じゃあ、歩と性質的に類似している真は……?

誠実な想いを、私に注いでくれてたのだろうか。

そろそろ考えすぎで、頭がゴチャゴチャになってきた。

⏰:08/03/14 00:54 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#538 [向日葵]
「もう嫌!気持ちがまとまってくれない!だって真は、つぐみさんが好きって言ったんだもん!」

言ってしまってから、私はハッとして口を塞いだ。

「え……。何て……?」

ヤバイ……!

気づいた時には遅かった。

歩は私の肩を力強く掴んでガクガク揺らした。
振動で、軽く歯がカチカチなる。

「それ本当?じゃあアイツら両思いかよ!?」

「いや、それはあの」

「結局俺は無理じゃねぇかよ!」

⏰:08/03/14 00:58 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#539 [向日葵]
そんなの、私だってそうだ。辛いのは、歩だけじゃない。

「私を責めても仕方ないでしょ!離して……っ!」

力一杯歩を押すと、歩は肩から手を離してくれた。

それまでは良かった。

勢い余った私の体は、引力に従うかのように後ろへといき、階段へとまっさかさま。

「……!みかげちゃん!」

ズドン!!と大きい音と共に、私は下の踊り場へ転落。

頭に鈍い痛みが広がる。

⏰:08/03/14 01:02 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#540 [向日葵]
すると体のダルさまでが私を襲い、起きたくても起きれないくらい体の自由がきかなくなった。

それから、人のざわめきが少し聞こえて、私は意識を手放した。

・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

『みかげ。貴方はどうして無理をしてしまうの?』

あ、お母さん……。

お母さんは困ったような怒ったような顔で私を見る。

無理なんてしてないよ。
ただ幸せならば幸せになって欲しいだけ。
でもね、あまりにヒドイ扱いを受けたから、腹が立ってるだけだよ。

⏰:08/03/14 01:06 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#541 [向日葵]
お母さんはため息をつく。

色白のお母さんはいつ見ても綺麗だなぁとか、怒らているにも関わらず、呑気にそんな事を考えていた。

『前、母さんが言った事覚えてる?』

ううん。
夢は起きた瞬間すぐ忘れちゃうから。

『ならね、もう一度言うわ。後悔だけは、しちゃ駄目よ。』

後……悔……?

『貴方今凄く後悔してる。彼に無理だって言ったんでしょ?』

⏰:08/03/14 01:10 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#542 [向日葵]
言った……。だって無理だもん……。
アイツ、つぐみさんが好きって……。私には、あんな真剣にも、あんな焦った姿も……見せてくれた事なんかない……っ。

ボロボロ涙が溢れる。
今にも泣き叫んでしまいそうな衝動にかられる。

『本人の口から、つぐみさんが好きって聞いた?』

聞いてないけど……でも……っ!

『それに、彼が貴方に接する時、本当に真剣じゃなかったり、焦ったりした事は無かったかしら?』

それは……。

⏰:08/03/14 01:14 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#543 [向日葵]
私の手を、柔らかく、風が包んでくれるようにお母さんが握る。

温かくて、更に涙が流れた。

『ねぇみかげ。彼からの話をもう1度、よぉく聞いてごらん?泣くのはそれからよ。』

でも……。

『それからね、これも前に言った事よ。もっと、彼を信じてあげなさい。前よりもずっとずーっと……。』

信じれるかな……私。
だってまた騙されたりするの、怖い……。

⏰:08/03/14 01:17 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#544 [向日葵]
『じゃあね、母さんの言う事なら、信じられるでしょ?』

夢と言う信憑性のない中での会話なのに、何よりお母さんの言葉は素直に受け入れる事が出来た。

なので私はコックリと頷いた。

『あの人ね、すっごく不器用。だからね、人を騙すなんて絶対出来ない。』

現に真はつぐみさんに私を好きとバレていたよね。

『だから、今から聞く彼の言葉を目で、耳で、心でよく聞いてごらんなさい。』

⏰:08/03/14 01:21 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#545 [向日葵]
『それなら、きっと彼を信じる事が出来るわ。』と言って笑うと、お母さんの姿は薄くなってしまった。

そして、私の世界は暗闇へと戻る。

・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

意識が現実に戻ったのが分かった。
今は瞼を閉じてるせいで視界はゼロ。

でも左手に温かさ感じて、私は少し目を開けた。

「……ん……?」

少しずつ状況を把握すれば、今念願の保健室にいて、私はベッドの上にいる。

⏰:08/03/14 01:26 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#546 [向日葵]
じゃあ左手の温かさは何?

頭を動かす前に、知りたかったものが視界の隅で動き、私を覗き込む。

「気が……ついたか……?」

そこには、優しく微笑む真がいた。

頭をゆっくり丁寧に撫でてくれる。

「真……。」

「階段から落ちたの覚えてるか?頭痛くないか?」

言われれば、少し重たさを感じる痛みを覚えた。

⏰:08/03/14 01:29 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#547 [向日葵]
真は握ってた手を、自分の頬に持っていく。

「無事で……良かった……。」

本当に安心して言うから、私の胸は元気に跳ねる。

『目で、耳で、心で……。』

「……。何で、真がここに?」

「運んだんだ。それで……いや、それだけが理由じゃない。」

真は真っ直ぐに私を見つめる。
そのせいで強打したせいではなく、別の意味で頭がクラクラした。

⏰:08/03/14 01:32 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#548 [向日葵]
真は何から話すか迷っているのか、息を吸っては吐きを繰り返し、眉を寄せて考えている素振りをした。

私は寝転んだまま聞くのもどうかと思い、ゆっくりと起き上がる。

すると寝ている時よりも頭に痛みが走った。

「痛……っ。」

呟くように言ったのに、真は聞こえたらしく、体を起こす私に手を貸してくれた。

「大丈夫か?」

「うん……。」

真と間近で見つめあう形になる。

⏰:08/03/14 23:51 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#549 [向日葵]
真の目の中に私が写ってるのが見えた。
私は真が何を言いたいのかを探るように見つめる。

しかし真は、目線をそらした。

「あんまり見つめんな……。考えてた事が飛びそうになる。」

気が散ると言う事だろうか。

「……なぁみかげ。俺はお前から見ればいい加減な奴かもしれない。」

突然、真が喋りだす。

「でも俺は、こう見えても欲しいもんは力づくだろうがなんだろうが得たいタイプだ。」

⏰:08/03/14 23:55 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#550 [向日葵]
真は淡々と話す。
それでも言葉の端々には力が入っているように感じた。
私は黙って、真が何を意図しているか聞き入る。

「最初に言える事。つぐみの事だ。」

心臓がドクンと跳ねる。
それでも平常を保とうと心がける。

「お前が何を聞いたかは、増田から聞かせてもらった。でもお前は勘違いしてる。最後に心を込めて好きだと言ってくれと頼まれた。」

「え……。」

声がかすれた。

⏰:08/03/15 00:00 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#551 [向日葵]
真はまた真っ直ぐに私を見つめた。
今度ばかりは、ドキリとしない訳にはいかなくなった。

「心を込めて……なんて、言える筈ない。だって俺はつぐみが好きじゃない。なんとか心を込めて言えたのは、つぐみをお前だと思ったからだ。」

「そんなの……。」

「簡単な言い訳と思うだろうな。でもこの他に言う事なんかない。」

真はあくまで真剣だった。

嘘をついたり、欺いたりする人が、ここまで強い眼差しを向けるだろうか。

⏰:08/03/15 00:04 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#552 [向日葵]
「お前は分からないだろうが、お前の予想してる範疇を遥かに超えるほど俺はお前が欲しい。」

息が、詰まりそうになった。
「嘘だ。」と切り返したかった。
でも出来なかった。

強いその言葉は、私の考えてる事全てを奪い去ってしまったからだ。

「みかげ、信じて。俺はお前に側にいて欲しい。……これも信じられないのか?」

頭のどこかで、お母さんの声が聞こえた。

『彼、嘘つけないから……。』

⏰:08/03/15 00:08 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#553 [向日葵]
私は被っていた布団に顔を埋めた。

声を殺して泣く。

どれほど、願っただろう。

肉親、それ以上に、自分を求めてくれる存在を。
自分を見つめてくれる存在を。

寂しくて、くじけそうな自分を支えて欲しくて、現実から目を背けている自分を戻して欲しくて……。

初めてだった。

誰かに奪われるのが嫌だと思ったのは。

奪われたら、何かを取って行かれたみたいに心細くて、もう何もかもおしまいだと思った。

⏰:08/03/15 00:13 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#554 [向日葵]
もう進めない。
暗闇に閉ざされた世界に、一筋の光が差し込んでくる。

「みかげ……。やっぱり俺を信用出来ない?」

真の残念そうな声が頭上から聞こえる。

布団で顔を隠したまま、なんとか頭を上げる。

「ち……がう……。私も側にいたい……。真に側にいて欲し……。」

息が上手く出来なくて声が出せない。
それでも自分の想いを、真に、真の為に聞いて欲しくて一生懸命言葉を吐き出す。

⏰:08/03/15 00:17 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#555 [向日葵]
「不安だったのは……また大事な人が離れて行くと思って、それがすごい嫌で……でも真が幸せになるなら仕方ないって……。」

そう思った。
でも……。

「それでも……真が大好きで、諦めれなくて、こんな自分凄い嫌で……っ、真が私に呆れちゃうって……」

「分かった……っ!」

真は力強く、でも優しく私を抱き締めた。
すると詰まってた気持ちが一気に溢れて、情けないぐらい涙が流れた。

「……っ真……!」

⏰:08/03/15 00:22 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#556 [向日葵]
「分かったから……。」

「側に……側にいていい……?」

「いたい……。俺も側にいたい……。」

前よりも、もっともっと強い気持ち、真が私を求めているのがよく分かる。

力をぐっと入れられて抱き締められたかと思うと、真の両手が私の顔を包んだ。

「泣くな。」

涙で滲んで見えないけど、真が笑ってるのが声音で分かる。

真の唇が、おでこに触れる。

⏰:08/03/15 00:27 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#557 [向日葵]
と思えば、唇に触れた……。

「……、ちょ……っ、真……。」

思った以上に触れている時間が長くて、真を引き離す。

「何?」

「何じゃ、なくて……。」

泣いてるせいか、真のキスのせいか、顔が赤くなるのを感じる。

「触れたくて仕方なかった俺の気持ち、分かる?まだ足りないくらいなんだけど。」

真剣に言うもんだから、驚いてる隙にまた唇を重ねられる。

⏰:08/03/15 00:30 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#558 [向日葵]
頭が混乱して、ショートする前に、顔が離れた。

「や……やりす、ぎ……。」

また目に涙がたまる。
恥ずかしいやら、苦しいやら……。

「ハハ……可愛い。」

おでこをコツンと合わせて、微笑む真はとても幸せそうだった。

私の事で幸せになってくれるなら、私も嬉しい……。

そう思って、私も微笑んだ。
そうやって、私達は幸せを噛み締めながら、しばらく笑い合っていた。

⏰:08/03/15 00:35 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#559 [向日葵]
13P・ゆめみる未来

魚がおびえているのにきづいたくらやみの魚は、やさしく魚にいいました。

『こわがらなくていいんだよ。こまっているのだろう?』

魚はおもいきって、くらやみの魚にきいてみました。

『ともだちとはぐれてさみしいんだ。それにここはくらくてこわい。どうやったらみんなにあえるか、きみはわかるかい?』

するとくらやみの魚はいいました。

『あぁ。わかるとも。このやみにこわがらず、みんなに会いたいとねがって、泳いでいってごらん。』

⏰:08/03/15 01:05 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#560 [向日葵]
『うん。ありがとう!』

魚はそういって、およぎだしました。

みんなにあいたい。
そうつよく思って……。

・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

たかが17歳。
されど17歳。

まだ高校2年生。
もう高校2年生。

考え方はそれぞれだけど、いざ現実をつきつけられると悩まずにはいられなかった。

「進路希望調査の紙、明後日にはしっかり出すようになー。以上。かいさーん。」

⏰:08/03/15 01:08 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#561 [向日葵]
担任が出ると同時に、クラスからは苦悩に満ちた声が次々と上がる。

「もうそんな時期ー?早くなぁい!?」

多香子が騒ぎながら私の元へ来る。

全くだ。

進路なんか頭の中からスコーンと抜けていた。

高校にだって、行く気は無かったのに無理矢理入らされたようなもねで。
その上の将来を左右する大学やらなんやらを決めろだなんて……。

「無理すぎ……。」

「だぁよねぇ――っ!?」

⏰:08/03/15 01:12 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#562 [向日葵]
夏休み前に、とんでもない悩みが出来たものだ。

――――――……

「ん?進路希望?」

テーブルに投げ出した紙に、帰ってきた真が気づいた。

「考えてもなかった。だって何になりたい?みたいな夢なんて小さい頃からなかったもん。」

ソファーに勢いよく寝転がりながら私は言った。
真は「懐かしいなぁ。」と言いながらネクタイを緩める。

「ねぇ、真はいつ先生になろうと思った?」

⏰:08/03/15 01:16 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#563 [向日葵]
ひょこんとソファーから顔を出して真に聞いた。
真は「そうだな……。」と考えこむ。

「中……3くらいかな。教師になってみよっかな、なりたいなって思ったの。」

早……っ。
なんの参考にもならなかった。

「いっそニートの道を歩むかなぁ……。」

そんな呟きを漏らせば、真は眉を寄せて私をジメッと睨みつけた。

「今ならまだしも、何もしない奴養う気なんてないぞ。」

「何もーなんてとんでもない。家事くらいはちゃんとしますー。」

⏰:08/03/15 01:20 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#564 [向日葵]
軽くため息をついた真は、ピンと何か閃いたのか、口元を笑みの形にして私がいるソファーに近づいてきた。

「どうせならさ……結婚する?」

「は……?」

「何もせずに家事するなら別に結婚しててもしなくても同じだろ?」

ナイスアイデアとでも思ってる真に、私はまたよくある冗談だと思って、高鳴る胸を無視して軽くあしらった。

「そうねー。いいかもねー。さ、冗談はさておき、風呂用意してくるわ。」

⏰:08/03/15 01:25 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#565 [向日葵]
私は風呂場へ向かう為、リビングをあとにした。

真が頭をポリポリかきながら呟く。

「……冗談じゃ……なかったんだけどなー……」

残念ながら、その呟きは私の耳には届かなかった。

――――――…………

「絶っっ対無理―――っ!!」

進路指導室へ向かう途中、進路希望調査の事で苛立った多香子が叫ぶ。

周りの人間は何事かと私達を見た。

⏰:08/03/16 01:38 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#566 [向日葵]
「なんで将来の事を明日までにとか限定するの!?将来なんだからもっとじっくり選ばせてよ!!」

確かに……。
でもそうやって先延ばしにすればするほど、将来がおぼろ気になってしまうから、今の内に漠然とでもいいから考えろと言う事だろう。

ただその将来をすぐに漠然とであろうがなんだろうが決めろと言うのは、いささか強引な気もする。

だから私達は進路指導室へ足をはこんでいる。

何かヒントを得る為に。

ドアを開ければ背筋を伸ばす気持ちになった。

⏰:08/03/16 01:42 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#567 [向日葵]
進路についての部屋なだけあって、中はピリピリしていた。

それでなくても、受験やらが間近の3年生がいるせいで、部屋は重苦しい空気を漂わせている。

「みかげはさ、何に興味持ってる?」

多香子が声をひそめながら私に聞いた。

「さぁ……。寝る事ぐらい」

「駄目じゃん。私はねー……アパレル関係か美容系かなって。」

「じゃあ専門か、短大?」

「そーだね。学校はまだ決められないけど」

なんだかんだ言いながら、多香子は自分の事をよく考えているらしい。

⏰:08/03/16 01:47 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#568 [向日葵]
さて……私はどうしようか……。

空いてる席を見つけて、私と多香子は「将来を見つける本」と題名がついてる本を持って座った。

パラパラめくるが、これと言って興味をそそられるような職業はなかった。

「色々あるんだねー」

「こん中から見つけろってイジメ同然な気がする……」

そういえば……。

[結婚する?]

昨日の真の言葉を思い出す。

⏰:08/03/16 01:52 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#569 [向日葵]
「ねぇ多香子」

「ん?」

「好きな人に、卒業したら結婚しようって言われたらどうする?」

「えぇっっ!?」

多香子が叫んだせいで、部屋にいた人達の怒りの視線が私達に集まった。

これはここでこんな話を持ち出した私が悪いだろう。

「まさか……松川に……?」

名前の所だけ、更に声が小さくなる。

⏰:08/03/16 01:55 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#570 [向日葵]
多香子は私と真がどのような関係かと言うのをもう理解している。

それは何故かと聞いたのは、文化祭が終わった次の日だった。

多香子がえらく私にもじもじしながら熱い視線をおくってくるものだから「何」と聞いたら……。

[んもう、みかげは本当水くさいんだからぁっ!どうして早く言ってくれなかったのよ!]

多香子は私達のたまり場であった準備室で真と喋ったらしい。
その時に真が言ったんだそうだ。

⏰:08/03/16 02:01 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#571 [向日葵]
[俺はみかげを愛してる!って、松川がねー、言ったんだよ!だから私はピンと来たね!]

多香子の妄想が入り混じっているせいで真の言葉が脚色されているなんて知らない私は、机に突っ伏して顔から湯気が出た。

何言ってんだアイツ……っ!

この場合、恥ずかしさから来る怒りをぶつけるのは明らかに多香子なのだが、多香子からのものが全て真実と思ってる私は怒りの矛先を真へ向ける。

そして決定打は私が階段から落ちた時らしい。

⏰:08/03/16 02:05 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#572 [向日葵]
私達のクラスに真が来て数秒後、私が落ちたと知らせに来た歩に詰め寄り、私の所まで全力疾走したらしい。

後夜祭が行われている時は、保健室で2人でいたから私と真の姿がなくて多香子は1人ニマニマしていたと興奮しながら言われた。

と、こんな感じだ。

「真は関係ない。ただ、どうするかなって」

本を意味もなくめくりながら、私は多香子に聞き続ける。

多香子は空(クウ)を見つめて考えている。

⏰:08/03/16 02:21 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#573 [向日葵]
「進路が決まらないって理由で結婚するのだけは避けたいかな。やっぱりするなら、この人の支えになりたいと思いながらしたいし」

支え……ねぇ……。

[お前を求めてる……]

真は私を必要としてくれてる。

必要としてくれてるなら、側にいてあげたいし、いたいとも思う。
支えて、幸せに笑ってくれるならそれだけで嬉しい。

ならば私は、真と結婚してもいいのかもしれない。

⏰:08/03/16 02:26 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#574 [向日葵]
……と言うか。

私、何で真の冗談の言葉をここまで本気にしているのだろうか。

あの時、唐突だろうが思いつきだろうが、言ってくれた事は単純に嬉しかった。
冗談でなければもっと嬉しかったんだけど……。

真は、私と結婚してもいいんだろうか。

しかし……進路希望調査に第1希望「結婚」と書くのは、いかがなものだろう……。

*******************

もちろん、俺は結婚してもいいと考えてる。

⏰:08/03/16 02:31 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#575 [向日葵]
急ぎはしないけど結婚したい。
幸せにだって絶対するし、大切に大切に温かい家庭をみかげと気づきたい。

だけどこれは24歳と言う成人男性の考え。

まだ17歳と言う若さのみかげには遠すぎて検討もつかない次元だろう。
だから無理強いしてでも「結婚しろ」などと言いはしない。

それこそ軽い気持ちに取られてしまう。

もちろん、昨日の言葉だって軽くはない。

ほんの照れ隠しをした為に軽くなってしまっただけだ。

⏰:08/03/16 02:36 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#576 [向日葵]
しかし冗談と片付けられたのは少々ヘコむ。

さぁ……どうしようか。

どうしようもこうしようも、俺は今直ぐにでも結婚していい、いや寧ろしたい。が問題はみかげだ。

ここはひとまず……同じ女の意見を聞こうではないか。

と俺は携帯を出した。

「もしもし?」

******************

先程真から連絡があった。

<つぐみと飲むから帰りは遅い。>

⏰:08/03/16 02:40 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#577 [向日葵]
つぐみさんと真は、友達に戻ったらしい。

文化祭2日目の日の夜、つぐみさんから電話が入った。

[今まで私のせいで、みかげちゃんや松川君に苦しい思いさせてごめんなさい。でも、もうふっきれたから、安心して?幸せに……なってね。]

つぐみさんの声は、とても穏やかで、私はただ「はい」とか「いえ」と、つぐみさんの言葉の間間に返事をするくらいしか出来ないくらい切なくなった。

つぐみさんこそ幸せになって下さいと思ったけど言えなかった。

⏰:08/03/16 02:45 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#578 [向日葵]
自分はそんな事言える立場の人間じゃないからだ。

つぐみさん……どうか幸せに。
悲しいくらい一途に真を想った、優しい優しい人……。

私は家に帰って、ソファーに身を沈める。

初めてこの家に来た時も、こんな風にしたなとか、思い出に浸りながら……。

あの時の私は、自分がこんな風になるとは思わなかった。

夢無しでなんて生きていけない。
現実なんか嫌い。

現実から真っ向に向き合うのを嫌っていた自分が、今はこうして現実を受け止めてながら毎日を過ごしてる。

⏰:08/03/16 02:50 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#579 [向日葵]
なんだか不思議……。

仄かに笑いながら、私は目を瞑った。

・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

―――……ーン、ゴーン……。

ん?
何か音がする。
あ、チャイムかな。

だけど学校で流れるような機械的な音ではなかった。

もっとこう……壮大と言うか盛大と言うか……。

目を瞑っていたらしい私は、ゆっくり目を開ける。

最初に目に入ったのは、白い手袋をした自分の手。

⏰:08/03/16 02:54 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#580 [向日葵]
よく見ればひじ辺りまで長さがあって、レースも蓄えられている。

そしてその手の先には、白い布。

『え?え?』

パニックを起こしている私の後ろから、声が聞こえた。

『みかげ……とっても綺麗よ』

『嬉しいなぁ……みかげがこんなに綺麗に育っただなんて』

その声の主は、もういない筈のお母さんとお父さんだった。
お母さんは私の肩に手を置いて、方向転換させる。

⏰:08/03/16 02:58 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#581 [向日葵]
そこには鏡に映った自分が。
しかも身につけている服は、明らかにウェディングドレスだった。

おいおいなんてベタな夢見てんだよ私!

と夢に突っ込む私。

しかしそんな突っ込みとは裏腹に、夢の中の私はびっくりする事を言った。

『お父さん、お母さん、今までありがとう……』

涙ながらに切々と伝える。

いやいやいや!アンタ何言っちゃってんのさ!

⏰:08/03/16 03:02 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#582 [向日葵]
ドレス姿の私と違って、そのドレス姿を傍観している私のビジョン。
だから私の思ってる事を無視して、ドレス姿の私は勝手に行動してくれてるのだ。

夢とはやっぱり説明しにくい。

場面は一変して、ドレス姿の私はもう教会へ。
神父が何か喋っていたかと思うと、誰かが私のベールを取る。

ステンドガラスから差し込む光に照らされながら微笑むのは、やっぱりと言うか真だった。

眼鏡を取った真の目力は普段の3倍。
夢の中の癖に私はクラクラしていた。

⏰:08/03/16 03:09 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#583 [向日葵]
『誓いの口づけを……』

神父がまた言う。

私はまたドレス姿の私を見る事となる。
私と真は見つめあって笑っている。

まるでドラマの1場面を見ているみたいだ。
どんどん近づいて、唇が重なる。

重なると同時に、鐘が鳴り響いた。

あぁそうか。
最初に聞こえたのは、この鐘か。

と、ドレス姿の自分のビジョンに戻った私は、真の唇を感じながら思っている。

⏰:08/03/16 03:12 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#584 [向日葵]
真の唇の感触が消えた。
なので私は目を開ける。

すると風景はまた一変して、いつもの家の中だった。

ツンツンと何かが下から服を引っ張るので下に目を動かせば、そこには子供がいた。女の子だ。

子供に目線を合わせる為にしゃがんだ私は、その子の頭を優しく撫でてやった。

撫でられた子供は嬉しそうに笑うと、驚く事を口にした。

『ママ』

ハイ?

『ママ、ご本読んで』

ママ……ママ……。…………――――っ私ぃ!?

『あ、パパー!』

⏰:08/03/17 00:46 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#585 [向日葵]
パパと呼ばれる人物を見れば、そこにいたのはやっぱり真だった。

真も笑いながら、駆け寄って来た私達の子供(らしい)を抱き上げる。

その光景に驚きながらも、私は微笑ましく眺めていた。

・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「―――げ。オイみかげ」

ゆっくり目を開けると、そこには真がいた。

「アレ……子供は?」

「子供?何寝ぼけてんだ」

⏰:08/03/17 00:50 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#586 [向日葵]
あ、何だ。これ現実か。
……ん?珍しいな。
いつも目が覚めれば夢は忘れてる筈なのに、今回はちゃんと覚えてるや。

しかも何だろう……夢から覚めたのにがっかりしてる自分がいる。

「真いつ帰って来たの?」

「今。そしたらお前が寝てたの」

「そっか。……ん?」

机の上を見れば、ブランド物のつづりが入った小さな袋を見つけた。

「真どうしたのそれ。」

⏰:08/03/17 00:54 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#587 [向日葵]
袋を指差すと、真は何とも言えない表情をした。

つぐみさんからの貰い物だろうか。

貰ったはいいものの、自分はいらないから捨てる訳にもいかず、困っているのかもしれない。

物によっちゃあ私が貰おうかな。

「ねぇ、中見せてよ」

「え!いや、あの、これは……」

珍しく真の返事が歯切れが悪い。
眉を寄せて、真を見つめる。

⏰:08/03/17 00:59 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#588 [向日葵]
真は諦めたのか、長いため息をつきながら頭をポリポリかくと、袋を私に渡した。

渡した時に中身が揺れたのか、小さくコトッと音が聞こえた。

そして中身を取る。

「おー……」

袋から、ビロードのような手触りの更に小さな箱が。
何だろう……。
よくあるのはこんな箱を開けながら「これ……給料3ヶ月分の……」みたいなドラマな場面あるけど。

自分の馬鹿な想像に心の中で笑いつつ、私は真に聞く。

⏰:08/03/17 01:07 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#589 [向日葵]
「私が開けてもいいの?」

「ん?ああ……いいんじゃね?」

なんか投げやりな真にムッとしつつ、私は箱を開けた。

するとそこには……光で反射した、綺麗な銀色の指輪が2つ並んでいた。

思わず言葉を失う。
そしてさっき心の中で笑った自分を恥じた。

「え……真。あの……」

指輪を見ながら私は真に言った。

真はまたため息を吐くと、ソファーに座ってる私の前に回り込んで、あぐらをかいた。

⏰:08/03/17 01:11 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#590 [向日葵]
「いや……あの、一応ペアリングでもって思っただけだ。別に深い意味は……」

「あ、そう……だよね」

早とちり。
馬鹿だ私。

「深い意味は……ない……つもりだけど、あるんだよな……。」

「え?」

私は真を見つめた。

真は私を見ずに、下を向いて口元を片手で隠している。

深い意味?
真、どういう事?
私と思ってる事は同じ?

⏰:08/03/17 01:15 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#591 [向日葵]
「昨日、結婚とか話しただろ?お前はどうであれ俺は本気だったんだ」

「え……」

「でも、まだ実感すら沸かないお前に、大人目線からの意見を無理矢理通すのは……って思って……」

つまりそれは……。

「でも結婚って言っちまったら、みかげとの結婚生活の事ばっかり想像しちまって……。だからその指輪が、いつか婚約、それで結婚指輪になる事を意識してくれたらって、思ったんだ」

珍しく、真の顔が少し赤くなっていた。

⏰:08/03/17 01:19 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#592 [向日葵]
そんな真に油断した私は、本音をポロリと出してしまう。

「私もしたい。真と、結婚したい……」

真はバッと顔を上げて、驚いてるのか目を見開いて私を見る。

「あのね……さっき夢みたの。真と、結婚する夢」

ベタで馬鹿馬鹿しいって思った。
あり得ない。自分はなんて夢を見てるんだって。

……でも。

夢から覚めた時のあのがっかりした感じは、きっと夢から覚めてしまったからだ。

⏰:08/03/17 01:23 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#593 [向日葵]
「子供もいたの。私達の子供。真は嬉しそうにその子を抱っこしてた。私、そんな温かい空気が嬉しかった。……ねえ真。大人目線なんて関係ない。」

だって好きな人と幸せの時間を共有出来る……これ以上の幸せはないでしょう?

「真が私を望んでくれるなら、私は喜んで真についていくよ」

「みかげ……」

私は自分から真の首に腕を巻き付ける。

こんなに誰かを愛しいと思った事があるだろうか……。
ううんこの感情は真だけしか味わった事がない。

⏰:08/03/17 01:30 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#594 [向日葵]
真は私を優しくきつく抱き締めてくれる。
それが2人の結婚の決意を固めてくれた。

少ししてから離れて、真は2つの指輪の小さい方を手に取った。

「みかげ、一生かけて幸せにする。結婚してくれますか?」

改めてプロポーズされれば、こそばゆいような、胸がキューっとなるようなそんな感覚がした。

「仕方ないから……してあげるよ。」

何故素直に「ハイ」と言えない私よ……。

⏰:08/03/17 01:34 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#595 [向日葵]
そんな私を理解してくれてる真は、ハハッと笑って左薬指にその細い輪をはめる。

はめた瞬間、胸が高鳴った。
本物の結婚指輪でもないのに、もう結婚した気分になった。

「みかげ、ホラ、お前も俺にはめてよ。」

真は私より大きい指輪を私の掌に置くと、自らの左手を私に差し出した。

指先で、小刻に震えながらその輪を掴む。

「緊張……する……」

素直に感想を述べれば、真はまた笑った。

「変なの」

⏰:08/03/17 01:40 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#596 [向日葵]
ゆっくりと、でも確かに真の指に輪をはめる。

「……」

2人して、沈黙。

真は黙ったまま私の隣に座ると、肩を優しく抱いてくれた。

「夫婦?」

「んー、まだだな。だってこれペアリングだし」

それでも嬉しい。
2人で歩む未来が待っていると思ったら、早く卒業したくてたまらなかった。

私一体どうしちゃったんだろう……。

⏰:08/03/17 01:51 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#597 [向日葵]
「なぁみかげ」

「ん?」

「子供って女?男?」

なんかもう私のお腹にいるみたいな会話だ。
生まれてくるのが楽しみで仕方ないような……そんな感じ。

「夢では女だったよ」

「じゃあ嫁には行かせないね」

「いつの時代の言葉よ」

父親になった気分の真に笑ってしまう。

「あー!早く欲しい!」

⏰:08/03/17 01:54 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#598 [向日葵]
「大丈夫よ」

未来は……すぐ側まで近づいてるから……。

・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

魚はいっしょうけんめいおよぎました。

みんなにあいたい。
はやくあいたい。

どこにいるの?
ぼくはここだよ。

ぼくわかった。

ゆめみるばかりがすべてじゃない。
げんじつのせかいで、たいせつななにかをみつけるのがだいじだって。

⏰:08/03/17 01:57 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#599 [向日葵]
どれくらいおよいだかわからないくらい、魚はずっとおよぎつづけました。

するとどうでしょう。

だんだんとやみがきえ、いつものあおいうみへともどってきたではありませんか。

『みんなー!』

魚はさけびました。

へんじがかえってこなくても、なんどもなんどもさけびつづけました。

・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

あれから、ずっと変わらない日々を送っている。

⏰:08/03/17 02:00 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#600 [向日葵]
毎日毎日、買い物、料理、掃除……。

時間がすぎるのが早いくらい、あっという間に毎日が過ぎていく。

でも決して、刺激を求めて夢へ逃げたりしない。

ううん違う。

もう刺激なんかいらないの。
だってね……。

「ママー」

足元で声がしたので、私は下を向く。
そこには小さな宝物がいた。

「なに?ゆめ」

⏰:08/03/17 02:03 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#601 [向日葵]
「あのねーご本よんでほしいのー」

可愛らしいえくぼを作りながら微笑む我が子に、満面の笑みを向けながら私は言った。

「うんいいよ。何がいい?」

「えとね、これ!」

小さな手に抱かれたそれは……。

「ゆめ、これが好きね。」

「うん!だってママがくれたもん!」

「そっか。じゃあ読もうかな。」

⏰:08/03/17 02:06 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


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