・・・ゆめみる魚・・・
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#766 [向日葵]
「挨拶に行こう。思えば、俺もお前みたいに両親に挨拶に行ってない無礼な奴になってしまうからな。まぁお前の場合は俺が1人で止めてたんだけど……」

挨拶……。
再び車が発進した時、口の中でそのくすぐったくも感じる言葉を繰り返した。

「ありがとう……」

うつ向いて言えば、静かにクスリと笑った真が頭を優しく撫でた。

私の育った町に、思いがけず旅する事になってしまった。
本当に小さい頃だから、記憶にはあまり無いけれど、田んぼがそこかしこにあって、のんびりとした雰囲気だったような気がする。

⏰:08/06/01 02:27 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#767 [向日葵]
母さんや父さんは、私達の事をどう思うのだろう。

でも何故か、反対はしてない気がしたのだった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

約2時間後。
小さな駐車場に車を止めて、お墓の場所まで行った。

久々の町は、やはりのんびりとした雰囲気をまとっていた。

正直、お墓参りは久々で、親戚にお墓の世話を任せてばかりでいた。
お母さん達が怒っていない事を願いながら桶に水をためる。

⏰:08/06/01 02:31 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#768 [向日葵]
お墓の前まで来ると、ちゃんと世話をしてくれているのだろう。
仏花が綺麗に飾られ、墓石もきらりと光っている。

なんだかホッとして、水をかけ、真と2人で並んでお墓を見つめる。

何から報告をと思っていると、真の手が優しく私の手を包んだ。
ハッとして真を見れば、真剣な顔をしていた。

「ご挨拶と報告が遅れて、申し訳ありません。俺……じゃない、僕は、松川真一と申します」

まるで本当に2人が目の前にいるかのように、形式ばって、それでいて緊張しているように真は言った。

⏰:08/06/01 02:36 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#769 [向日葵]
「みかげさんとは、丁度1年くらい前に知り合ってから、交際させて頂いてます。そして今日、みかげさんの卒業と共に籍を入れたいと思い、こちらに足を運ばさせて頂きました」

真がそんな風に話すものだから、なんだか私も緊張して真の手を握り返す力が強くなってしまった。

真は頭をお墓に向かって下げる。

「ありきたりな言葉しか言えない事を許して下さい。けれどみかげは一生かけて幸せにします。悲しい顔はさせません、笑顔と幸せに満ちた毎日を過ごせるよう努力します」

⏰:08/06/01 02:42 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#770 [向日葵]
真を見てから、私はお墓をまた見つめる。

母さん……父さん……。
この人が……私の大切な人なの。
真がいなかったら、私はずっと夢の世界で1人ぼっちでいた。

誰かをいとおしいとか、守りたいとか、そんな柔らかな感情知らなかったままだと思う。

だから……。

「幸せになります……」

私も頭を軽く下げる。

少し早い春の匂いを含んだ暖かい風が私達を包む。

それは、母さん達の返事のような気がした。

⏰:08/06/01 02:46 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#771 [向日葵]
―おめでとう―
…………と。

「みかげ……。何泣いてんの」

気がつけば頬が濡れていた。
「あれ?」と繋いでない方の手で滴を拭う。
そんな私を優しい目で見つめて真は抱き締めた。

「みかげ、改めて言うよ。俺のそばに、ずっとずっといて下さい」

その言葉に、涙がまた溢れた。
真の背中に手をまわし、上着をギュッと掴む。

「はい……。真が望むなら、ずっとそばにいます……っ」

⏰:08/06/01 02:50 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#772 [向日葵]
私達はしばらく抱き合っていた。
そんな私達を、先ほどの風が祝福するように包み込んでいた……。

―――――
――――――――……

「――かげ。みーかーげ!」

ハッと目を覚ます。
目の前にいるは相変わらずの真一。そして愛娘のゆめがいた。

あれから4年後。
現在私は22歳。ゆめを産んで3年が経とうとしていた。

ソファーで寝ていたらしい私は体を起こす。

⏰:08/06/01 02:55 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#773 [向日葵]
「ままー……こわいゆめみたのー?」

「え……?」

ゆめは起きた私の膝に乗り、キュッと抱きついた。
困惑した顔で真一を見れば、真一の指先が私の目を拭う。

「泣いてるからさっきからゆめが心配してたぞ。それに最近疲れてんじゃないか?」

優しく髪を撫でる真一に笑う。

「大丈夫よ。この頃はつわりも大分マシになったし」

実は、新しい命が、私のお腹に宿っているのだ。

⏰:08/06/01 03:00 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#774 [向日葵]
真一はゆめを抱き上げて私の隣に座る。
そしてお腹をいとおしそうに撫でた。
そんな真一を見て、ゆめも真似して小さな手で一生懸命撫でる。

私はそんな2人を見て顔をほころばせた。

「まま、あかちゃんいつゆめとあえるのー」

「さぁー。いつだろうね」

「早く会いたいな、ゆめ」

「うん!」

にばっと笑うゆめに、真一は優しいキスを額に落とす。

⏰:08/06/01 03:04 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#775 [向日葵]
母さん、父さん、私は毎日が幸せです。

運命の糸が、真一に繋がっていた事を、心から感謝します。

楽しい毎日は、まだ始まったばかりだ……。
そう思えば、これから何が起こるかワクワクしてしまう。

こんな私にしてくれたのは、真一……貴方のおかげだね。

だから私は、真一のそばにずっといることを誓います……。



*END*

⏰:08/06/01 03:09 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


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