危ナイ兄弟愛ノカタチ:)BL
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#758 [東脂ヤ転
「…そんなに心配?」

その時静兄の声で我に返った俺は顔を上げる。

「俺の話聞いてなかったろ?」

静兄はそう言って意地悪く笑う。
俺はその時初めて、静兄の話をちっとも聞いていなかったことに気付く。
「ごめん…静兄」

「そんなことで謝らなくて良いよ」

話を聞いてなかったことだけではなく、彩華に静兄を好きだと言う勇気が無いことに俺は凄く謝りたかった。

きっと静兄が逆の立場だったら、静兄は俺を好きだと言ってくれると思うから。

⏰:08/09/06 12:44 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#759 [東脂ヤ転
「…じゃあ行ってきます」

制靴に履き替えた俺は、玄関まで見送りに来てくれた静兄の方へ向き直る。

「気をつけてな」

静兄はそう言って微笑むと俺の額に軽くキスをした。

「新婚気分だろ?」

静兄の不意打ちのキスにまだ慣れなくて、顔を赤くしてる俺を見ながら静兄は笑う。

「だから…からかうなっての!!」

静兄のその余裕に腹が立ったけど、気を和らげようと静兄がしてくれているのがよく分かった。

「行ってきます」

俺は笑顔でそう言うと、優しい静兄に手を振って家を出た。

⏰:08/09/07 12:39 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#760 [東脂ヤ転
「めーいー!!」

学校に着いてすぐ、大声で名前を呼ばれた俺は立ち止まって振り返る。

「おはよ!今日はヤケに早いじゃん!!」

声を掛けてきたのは幼なじみの北原直樹だ。
まぁ振り返らなくても、俺のことを下の名前で呼ぶ奴はコイツ以外居ないから、すぐ気付いたんだけど。

⏰:08/09/07 17:22 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#761 [東脂ヤ転
「いや、今日はちょっと彩華に用事があってさ…」

「ふぅん…彼女が居る人は朝から忙しいんだねぇ〜羨まし!!」

北原はそう言って俺の肩を叩くと先に教室へ入って行った。

彩華の教室は俺等の隣。呼び出して"振る"なんて、本当だったら絶対やりたくない程気が重い。

しかも北原は彩華とも仲が良いので必ずいつかはこの事がバレてしまう。

もともと彩華の肩を持っていた北原がその事を知った時、どんな反応をするか…。
そんなことを考えたら益々胃が痛んだ。

⏰:08/09/07 21:46 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#762 [東脂ヤ転
「あのさ、林彩華居る?」

何とか教室の前まで足を動かした俺は、入り口の1番近くに居た女子に声を掛けた。

「ちょっと待ってね…
彩華ー!彼氏さんだよ!」

そんな大声で呼ばなくても良いのにそんな呼び出し方をしたもんだから、彩華は嬉しそうに教室の奥から走って来る。

「珍しいね!こんな朝早くから呼び出しなんて」


嬉しそうに笑ってそう言う彩華を見て俺の胸は更に軋んだ。

⏰:08/09/07 22:56 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#763 [東脂ヤ転
「ちょっと彩華に話があってさ…今大丈夫?」

「大丈夫大丈夫!あ、大事な話だったら屋上行かない?ここじゃ何だし」

俺の真剣な表情が伝わったのか珍しく気を利かせた彩華は、俺の手を引いて屋上につながる階段へと向かう。

こういうことは早く伝えなくちゃいけない、そう考えた俺はあえて朝一に言おうと決めていた。

その割に未だ何て言うかも決めていないんだけど、俺の中ではとにかく早く伝えることが先決だった。

階段を上る彩華の足は軽く、俺の考えていることなど微塵(ミジン)も気が付いていないようだ。

⏰:08/09/08 10:05 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#764 [東脂ヤ転
「ふわぁ…っ風が気持ち良いね鳴ちゃん!」

屋上に着くと夏の朝に相応しい涼し気な風が吹いていた。
それに合わせて彩華の茶がかかった髪が揺れる。
「で?話って何?」

彩華は楽し気に訊く。
きっと良いことを聞かされる、と思っているんだろう。

[彩華…ごめんな]

俺は小さく胸でそう呟くとゆっくりと口を開いた。

「彩華……俺達、別れよう」

「………え…?」

2人の間にさっきとは違う、裂くような強い風が吹き始める。

⏰:08/09/08 12:38 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#765 [東脂ヤ転
「……何で?」

少しの沈黙の後、彩華は俯いて言った。
さっきまであんなに笑顔だったのが嘘のように、その笑みが強張ってゆく。

「ごめん彩華…俺はもうお前を友達としてしか見れないんだ」

そんな彩華を前に、何とか俺の口から出た言葉は酷く冷たい台詞だった。
「何で…何でそんなこと急に言うの!?意味分かんないよ…!」

彩華の声が少しずつ震え出す。顔を上げた彩華の頬には、何度も涙が零れ落ちる。

⏰:08/09/08 17:42 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#766 [東脂ヤ転
[俺は…こんなにも彩華を傷付けてる…]

何度も何度も涙をこぼす彩華を見て、俺は改めて自身に問いかける。

こんなにも誰かを傷付けてまで、俺は静兄と一緒になって良いのか…?

"誰かの不幸の上に幸せなど築くことは出来ない"
良く耳にする言葉だけど、俺は昔誰かからこの言葉を聞かされたんだ。

そして今実際に俺は彩華を苦しめていて、彩華を不幸にしようとしている。

そこまでして、俺が静兄と一緒になる意味は…意味は在るんだろうか?

何も言えずただ立ち尽くしている俺を、彩華は静かに見ていた。

⏰:08/09/13 00:56 📱:W52P 🆔:☆☆☆


#767 [東脂ヤ転
「…鳴ちゃん…さぁ」

暫く続いた沈黙の後、先に口を開いたのは彩華の方だった。
不意に名前を呼ばれ、俺はまた視線を彩華に戻す。

「他に好きな人が出来たんでしょ?」

「………え?」

さっき泣いていた時のような表情とは打って変わって、彩華のは眼は真っ直ぐ俺を捉えている。

それとは逆に俺は眼を反らしたくて仕様がなかった。

「そうなんでしょ?」

少しずつ追いつめるように彩華は俺に近付く。
それでも俺は応えられない。頷いたら彩華はきっと、それが誰なのかを知りたがるだろう。

その名を俺が口にするワケにはいかないんだ。

⏰:08/09/15 16:38 📱:W52P 🆔:☆☆☆


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