危ナイ兄弟愛ノカタチ:)BL
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#829 [東脂ヤ転
黒く長いまつ毛とその端正な顔に思わず見とれてしまった俺は、ハッと気が付くと静かに静兄の部屋を出た。本当はいつまでもあの寝顔の隣で一緒に寝ていたかったけど、そんな余裕が今の俺には無いことを時計が示していた。
俺は大きく溜め息をつくと急いで自分の部屋へと戻った。とりあえず新しいシャツに着替えようとクローゼットに手をかけたその時、机の上に置き直した携帯がチカチカと光っていることに気付く。
どうやらメールを受信していたようで、俺は乱暴に携帯を手に取った。
:09/02/08 21:20
:auSN3G
:☆☆☆
#830 [東脂ヤ転
しかし次の瞬間、思考回路が一瞬停止するのを感じた。
そこに表示されていた受信メールの送り主は、
「…北…原」
出来れば今最も会いたくない相手だ。その名前を見た途端昨日遭った様々なことが蘇り、再びとてつもない不安を身体が覚える。俺は微かに震える指先でボタンを押し、恐る恐る受信メールを開いた。
― 鳴、おはよう。 まだ家?
メールの内容はたったこれだけだった。しかしその1行のメールの返事に俺は戸惑う。そして少し考えた後、当たり障りの無い返事を返した。
:09/02/09 21:11
:auSN3G
:☆☆☆
#831 [東脂ヤ転
― おはよう。俺今日寝坊したから先行っといて!
送信完了の表示を見て、何故か安堵の溜め息をついた俺は新しく出したシャツに腕を通す。
この家からそう遠くない所に住んでいる北原とは、ここに越して来てから時間が合えば一緒に登校していた。
[でも…さすがに今日は…]
昨日の今日では気持ちの整理がつく筈もなく、今日は出来るなら学校も休みたい程気分は憂鬱だった。
まぁ小学生じゃあるまいし、そんなワガママが通るわけないことを分かっていた俺はなるべく急いで教科書をカバンに詰め込む。
:09/02/10 12:31
:auSN3G
:☆☆☆
#832 [東脂ヤ転
― ピピピ…ッ
「…っ!?」
突然の着信音に俺は驚き、思わず手に持っていた教科書を落としてしまった。
この音はメールの受信音。
[またメール…?]
何となく嫌な予感がしながらも、再び携帯を手に取り開くと案の定送り主は北原だ。さらにメールの内容はさっきと同じように1行だけ書かれていた。
― 今お前んちの前だから、待ってるよ。
「俺の…家の前…!?」
:09/02/10 17:20
:auSN3G
:☆☆☆
#833 [東脂ヤ転
[……なんで…]
俺の頬を嫌な汗が伝う。
恐る恐る、閉めっぱなしだったカーテンに手を掛けそっと開いてみると、丁度向かいの自販機の前に見覚えのある学生服を来た男が立っている。
「北原…」
俺はその姿に小さく呟く。
北原は下を向いたまま携帯をいじっていてこちらには気付いていない様子だ。
― ビビピ…ッ
その時、手に持っていた携帯が再び鳴り始める。
目で北原を見ながら携帯を開くと受信メールが1件。
― 早く出てこないと、インターホン鳴らすよ?
:09/07/30 18:24
:W64S
:ZTYjh7sc
#834 [東脂ヤ転
その文面にドキッとして外を見ると、さっきまで携帯を見ていた北原は真っ直ぐ俺の方を見ていた。
その笑顔から微塵も悪意は感じられず、逆に変な胸騒ぎを覚える。
― すぐ行くからそこで待ってて
素早くそれだけ打ち込んで送信ボタンを押す。
「送信しました」の画面を確認した後、急いで制服のズボンを手に取った。
インターホンなんか押されたら静兄は絶対起きてしまう。今の俺にとって、静兄に気付かれないように家をでることが重要なのだ。
:09/07/30 20:55
:W64S
:ZTYjh7sc
#835 [東脂ヤ転
「よし…っ」
簡単に制服に着替えると制カバンを手に取る。
教科書や辞書なんかは全部学校に置いてあるので、持って行く荷物など僅かなものだ。
忘れ物がもしあったとしてもそんなこと大したことじゃない。どうせ遅刻なのだ。それなら1秒でも早くこの家を出なければ。
慌て過ぎて思わず転びそうになりながらも俺はドアを開けた。
すると、
「あ…おはよ、鳴」
何も知らない笑顔の静兄がそこに居た。
:09/07/31 21:40
:W64S
:Q0uThy8w
#836 [東脂ヤ転
「静…兄」
「…ん?どうかした?」
あまりに驚いてしまったせいで声も出ず一瞬、思考回路まで止まってしまったかのように思えた。
油断してた。
寝てる、と思っていたのに。
それでも意外と早くに頭の中は動き始め、どんどん冷静になっていく自分が居た。
「ゴメン…ちょっと急いでるから」
:10/07/14 01:30
:W64S
:mhPY5WmM
#837 [東脂ヤ転
家を出なくちゃならない。
そればかりが頭の中にあったせいか、静兄が怪訝な表情で俺を見ていたことに気付かぬまま、部屋を飛び出す。
階段を駆け降りて、玄関まで後ろも振り返らずに走り出した俺の頭には北原の顔しかなかった。
焦る気持ちに比例するように心臓の音が早くなる。急いで皮靴に足を入れ、玄関の扉を開けた。その時、
「───鳴…っ!」
カバンを持つ左手がギュッと強く握られかと思うと、開けた扉をそのまま静兄によって再び閉められてしまう。
しかし、バタン、という音を立てて閉じられた扉を前にしても、俺の焦る気持ちは鎮まらない。
:12/01/06 18:39
:W64S
:qAq1Kv9g
#838 [東脂ヤ転
「静兄…離して…」
握られた左手が熱くて、痛い。
掌から伝わる温もりから静兄が俺のことを本気で心配してくれていることが伝わってくる。
いつもならこんなに嬉しいことなんて無いのに…。
「…鳴」
今はその優しさが俺を苦しめる。
「ホントに遅刻しそうなんだって…!」
何とか力を振り絞って言い訳じみたことを口にしてみたけれど、静兄の前では何の意味も果たせずに言葉だけが宙に舞って消え入ったようだった。
:12/01/10 17:25
:W64S
:p.4EmC32
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