*柴日記*
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#249 [向日葵]
「椿……がね……柴の事知ってるんだ」

柴が歩みを止めた。
それに気づいた私は2、3歩進んでしまってから止まり、柴を振り返った。

柴の、いつもの柔和な空気が無くなっている。
無機質な顔で、私をじっと見つめていた。

灰色のあの瞳が、ひどく冷たく見えた。

「柴……。柴は、柴じゃないんだね……。やま……」

「やめてくれない?」

私の言葉を遮って、柴は言った。

⏰:08/04/22 00:06 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#250 [向日葵]
「越はそれを知って何か得する?そう思わないなら口には出さないで。今ここにいる間は、俺は“柴”だから」

「損得なんて考えてないよ。ただ、柴の色んな事を知りたいだけで……」

「色んな事?知ってどうするの?俺にあの家から出て行けとでも言うつもり?」

「違う柴……っ!」

言葉を発する度、柴は私の言葉を遮って自分の過去を否定する。

そんな柴を初めて見たから、私は少し怖くなった。

⏰:08/04/22 00:10 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#251 [向日葵]
「俺は、過去の俺が嫌い。環境が嫌い。だから忘れたい。なのにどうして思い出したくない事をいちいち聞いてくるの?」

「それは……」

「好奇心?家族じゃない人間には何を聞いてもいいと思ってる?」

私はその言葉に鋭い痛みを感じた。

好奇心?
違うよ柴。
家族じゃない?
そんな訳ないでしょう……。

家族だと思ってるから聞いてるし、過去の事を打ち明けて心を今より開いてくれたら嬉しいって……。
ただそう思っただけ……。

⏰:08/04/22 00:14 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#252 [向日葵]
でも柴がそう思ってしまったのは、私の自己中心的な考えのせいで……。

でもなんだか……すごく突き離された感じがして……。

辛いよ……柴……。

私は傘で顔を隠した。
じゃないと、泣いてしまいそうだから……。

「ごめんなさい……。もう聞かないから……」

私は回れ右をして足を進めた。
無意識に、足が早くなる。足元をチラッと見れば、いつの間にか隣に柴が歩いていた。

⏰:08/04/22 00:17 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#253 [向日葵]
柴は、私にとてもなついてくれてたから、勘違いしていたんだ。

好奇心……。
あながち外れてないかも。
柴の事、私だけが全部知っておきたかった。
家族の誰よりも理解してあげたかった。
柴を誰よりも……独占しておきたかったんだ……。

どっちが子供……。

まるっきり子供なのは、他の人の心の傷を無理矢理開こうとし……私だったんだ……。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「あ、お姉ちゃんお帰り」

⏰:08/04/22 00:20 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#254 [向日葵]
帰れば、桜が私と柴を迎えてくれた。
さっきの事は頭から無くそうとして、桜に微笑む。

「ただいま。晩御飯今から作るね」

「あ、それがね、お母さんが久々にピザでも買っちゃいなってなんと……ジャジャーン!」

桜はピッと1万円札を2枚出してきた。

「今日は贅沢な日〜」

ルンルンな桜にもう1度笑いかけて、「着替えてくる」と言ってから柴を肩越しに見る。
普段の柴に、戻っているようだった。

⏰:08/04/22 00:25 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#255 [向日葵]
だから私も、普段の私に戻らないと……。

「迎えに来てくれてありがとう柴。濡れたとこ、ちゃんと拭くんだよ」

それだけ言って、階段を上がり、部屋に入った。

入ってドアにもたれながら、ズルズルと座りこむ。
スニーカー越しに染み込んできた雨が足を冷やし、私を余計悲しい気分にさせた。

まだ……胸が痛い……。

[本当の家族じゃない人間には何を聞いてもいいって思ってる?]

柴……。

⏰:08/04/22 00:30 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#256 [向日葵]
涙が流れた。
あとからあとから、とめどなく……。
何粒も頬を流れ、顎をつたい、ブラウスやスカートに染み込んでいく。

ごめん……。

「ごめん柴……っ」

もう聞かない。
何も知ろうとなんてしない。
だから……。
嫌いにならないで……。

*******************

越が階段を上がっていくのを柴と桜は見守っていた。
部屋のドアが閉まると共に桜は大きなため息を吐いて柴を見る。

⏰:08/04/22 00:33 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#257 [向日葵]
「お姉ちゃんずっとあんな調子?」

柴は答えに詰まる。
多分と言うか絶対、原因は自分なのだから。

歩いている間、越との会話はほとんどなかった。

時々越が「雨の匂い好きなんだ」とか「水たまりって遊びたくなるよね」と呟くように言ってた。

本人は楽しそうな声を出したつもりだろうけど、聞いてるこちらには無理してるのが分かるくらい落ち込んだ声だった。

そして帰ってくるまで、必死に傘で顔を隠して、柴には見せないようにしていた。

⏰:08/04/22 00:41 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


#258 [向日葵]
柴は自分が越につらくあたってしまった事を後悔した。

越にあんな顔をさせるつもりなんてなかったのだ。
ただ、どうしても昔の自分、とりまく環境の事を思い出せば、胸の中に苦い物が込み上げてくる感覚が襲ってきて、とても苦しかったのだ。

正直に言えば、また越は自分を受け入れてくれるとどこかで期待した部分もあった。
八つ当たりでさえ、優しく包み込んでくれるんではないかと。

でも柴は言ってしまったのだ。

⏰:08/04/26 02:00 📱:SO903i 🆔:☆☆☆


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